(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
図1はこの発明の第1実施形態にかかる撮像装置の概略構成を示す図である。より具体的には、
図1は第1実施形態の撮像装置1の主要部の側面断面図および制御ユニットの構成を示すブロック図である。この撮像装置1は、例えば後述するマイクロプレートMのウェルW内で培養された細胞や生体組織等の生物試料の分析に供する画像を撮像する用途に用いられるものである。撮像装置1は、試料を光学的に読み取るとともに、該読み取りにより得られた画像データに対して所定の演算を行う。撮像装置1は、試料を照明する照明ユニット10と、試料およびカメラ113を収容する撮像ユニット11と、装置各部を制御して撮像処理を実行する制御ユニット15とを備えている。
【0023】
照明ユニット10は、チャンバ100の内部空間SP1に、試料照明用の光(可視光線、例えば白色光)を出射する照明光源101と、殺菌作用を有する光、例えばUV光(紫外線)を出射する殺菌光源103,104と、チャンバ内部空間SP1内の気圧を測定する気圧センサ105とを収容した構造となっている。チャンバ100の底面には、照明および殺菌用の光(すなわち可視光およびUV光)に対して透明な透明窓102が設けられる。一方、この部分を除くチャンバ壁面は、少なくともUV光に対しては不透明な材料により構成される。UV光に対して高い反射率を有する材料であることがより好ましい。照明光源101から出射される可視光線および殺菌光源103,104から出射されるUV光は、透明窓102を介して下方へ照射される。
【0024】
撮像ユニット11は、上面中央部分が下方側へバスタブ状に窪んだチャンバ110を備える。その上面中央部は照明および殺菌用の光に対して透明な透明窓112となっており、該透明窓112はチャンバ110の内部を上部空間SP2と下部空間SP3とを隔てる隔壁としての機能も有している。
【0025】
チャンバ110の上部を覆うように照明ユニット10が取り付けられ、照明ユニット10がチャンバ110に対し離当接することで、チャンバ110の上部空間SP2が開閉される。すなわち、チャンバ110の上部にパッキン12を介して照明ユニット10が取り付けられることにより、チャンバ110の上部空間SP2は密閉空間となる。この密閉空間内に撮像対象物である試料を保持したマイクロプレートMが設置された状態で、撮像処理が行われる。すなわち、チャンバ110の上部空間SP2は、照明ユニット10によって上部を塞がれることにより、撮像時に試料が収容される試料収容空間として機能する。一方、照明ユニット10が上方に退避した状態では、チャンバ110の上部空間SP2は外部空間に開放されて、マイクロプレートMの出し入れが可能な状態となる。
【0026】
試料収容空間SP2内には、マイクロプレートMを略水平姿勢に保持するためのホルダ111が設けられている。このほか、試料収容空間SP2内の気圧を測定するための気圧センサ117と、試料収容空間SP2内に所定の気体を吐出する気体吐出ノズル118とが設けられる。
【0027】
一方、チャンバ110の下部空間SP3には、試料を撮像するためのカメラ113が収容される。より具体的には、例えばCCDからなる受光素子を備えるカメラ113と、カメラ113を水平方向(
図1に示す破線矢印方向)に走査移動させるカメラ駆動機構114とが下部空間SP3内に設けられている。
【0028】
照明光源101から出射された光Liは透明窓102を透過してマイクロプレートMに落射され、ウェルWに保持された試料に入射する。マイクロプレートMの下方に透過した透過光Ltは透明窓112を透過してカメラ113に入射する。カメラ113はマイクロプレートMを透過してくる透過光Ltを受光することで、マイクロプレートMの画像を撮像する。カメラ113はカメラ駆動機構114に連結されており、カメラ駆動機構114は、ホルダ111に保持されたマイクロプレートMの下面に沿ってカメラ113を水平面内で走査移動させる。カメラ113は受光素子として例えばラインセンサを備えており、ラインセンサの長手方向と交わる方向に走査移動されることで、マイクロプレートMを下方から光学的に読み取ってその二次元画像を取得する。
【0029】
すなわち、この撮像ユニット11では、カメラ113がマイクロプレートMの下面に沿って走査移動可能となっている。なお、ここではカメラ113がマイクロプレートMに対して移動するが、カメラ113とマイクロプレートMとの間の相対移動が実現されれば足り、この意味でマイクロプレートMをカメラ113に対して移動させるようにしてもよい。
【0030】
また、下部空間SP3にはさらに、透明窓112を介して上部の試料収容空間SP2に向けて殺菌用の光、例えばUV光を照射する殺菌光源115,116と、下部空間SP3内の気圧を測定するための圧力センサ119とが設けられている。またチャンバ110の外側に撮像装置1の外部の大気圧を測定する圧力センサ120が設けられている。
【0031】
カメラ113により取得された画像データは、制御ユニット15に設けられた画像処理部151に与えられる。画像処理部151は、カメラ113からの画像データに対して、ノイズ除去や色分解などの適宜の画像処理を施す。処理前後のデータは必要に応じて記憶部152に記憶保存される。こうして処理された画像データに基づき、検出処理部155が所定の検出処理を実行する。
【0032】
また、制御ユニット15には、それぞれ圧力センサ105,117,119,120の出力信号に基づき各空間SP1,SP2,SP3の内部気圧および大気圧を検出する圧力制御部154と、圧力制御部154からの制御指令に応じて気体吐出ノズル118に気体を送出する気体供給部158とが設けられている。圧力制御部154は、気体供給部158を制御して、試料収容空間SP2の内部気圧が他の内部空間SP1、SP2および外部空間よりも僅かに高い状態とする。具体的には、気体供給部158から供給させた気体を気体吐出ノズル118から試料収容空間SP2内に放出させることで、試料収容空間SP2の気圧を周囲よりも高い状態に維持する。好ましくは、上部空間SP1および下部空間SP3の圧力を大気圧より僅かに高くし、かつ試料収容空間SP2の圧力が最も高くなるようにする。このように試料収容空間SP2に周囲空間の気圧に対する陽圧を付与することで、外部から試料収容空間SP2へのカビや菌等の汚染原因物の混入を回避することができる。なお、この撮像装置1が細菌培養を行う部屋やチャンバの内部に設置される場合、その室内圧力が大気圧と異なる設定とされることがある。例えば室外からのカビや細菌の侵入リスクを低減するため室内圧力が大気圧よりも高めに設定されることがある。その場合、大気圧センサ120により検出される室内圧力に応じて各空間の圧力を設定することで、上記圧力差バランスを保つことができる。
【0033】
上記のほかに制御ユニット15には、カメラ駆動機構114を制御してカメラ113の走査移動を実行させるカメラ制御部153、照明光源101の点灯制御を行う照明光源制御部156、殺菌光源103,104,115,116の点灯制御を行う殺菌光源制御部157などが設けられている。これらの各構成要素が連携しながら装置各部を制御することにより、種々の処理動作が実現される。なお、これらの各構成要素はハードウェア、ソフトウェアのいずれで実現されてもよい。
【0034】
さらに、この撮像装置1は、ユーザからの操作指示入力を受け付ける入力受付部16と、ユーザに対する所定のメッセージを表示する表示部17とを備えている。入力受付部16は、図示を省略しているが、例えばキーボード、タッチパネルあるいは操作ボタン群のような操作入力デバイスを有し、実行すべき処理の内容やパラメータ設定等に関するユーザからの指示入力を受け付ける。また、表示部17は、処理メニューや処理の進行に伴うユーザへのメッセージ、撮像された画像などの視覚情報を随時ユーザに提示する。
【0035】
図2はマイクロプレートの構造の一例を示す図である。マイクロプレートMは、複数の、例えば96個(12×8のマトリクス配列)の窪み(ウェル)Wが上面に形成されたプレート状の器具である。
図2(a)に示すように、マイクロプレートMは、略円筒状(より厳密には、底面に向けて断面積が漸減するテーパー付き)の側面形状を有する貫通孔M1が一定のピッチで規則的に二次元マトリクス配置された上部プレートM2と、上部プレートM2の下面に各貫通孔M1を塞ぐように貼付された下面シートM3とを有している。
【0036】
図2(b)に示すように、下面シートM3は上部プレートM2の下面にぴったりと密着されており、上部プレートM2の貫通孔M1の側面と、下面シートM3とによって囲まれた空間に液体を保持することが可能となっている。すなわち、この空間が生物試料を含む培地を保持するウェルWとして機能し、貫通孔M1の側面がウェルWの側壁面を、また下面シートM3がウェルWの底面をそれぞれなしている。下面シートM3は透明な樹脂、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂により形成されたシート体である。
【0037】
マイクロプレートMにおける各ウェルWの直径および深さは代表的には数mm程度であり、ウェルWそれぞれには、例えば培養液、培地、試薬などの液体等(
図1では一部のみ図示)が注入されている。なお、この撮像装置1が対象とするマイクロプレートのウェル数およびそのサイズはこれらに限定されるものではなく任意である。
【0038】
こうして形成されるウェルWの内部に、生体組織や細胞等を含む培地が注入され、一定の温湿度環境で所定時間培養されることで、ウェルW内部に撮像対象となる試料Sが作成される。撮像に供されるまで、マイクロプレートMは一定の温湿度環境下で保管されている。マイクロプレートMが撮像装置1の試料収容空間SP2に収容されると、
図2(b)に示すように、照明光源101から出射される光がマイクロプレートMの上方から入射光Liとして入射する。そして、ウェルW内の試料Sを透過した透過光Ltがカメラ113により受光されることで、試料Sの画像が取得される。
【0039】
また、マイクロプレートMの上面、下面または側面には、ウェルWの内容物や培養条件等に関する情報を記録した、文字や記号が記されたラベル、バーコード、無線通信タグなどの記録媒体を貼り付ける貼付スペースM4が設けられる。このような記録媒体に記録された情報を光学的あるいは電磁的に読み出すことにより、撮像装置1ではマイクロプレートMに保持された試料の内容を把握することができる。特に、光学的に読み取り可能な記録媒体をマイクロプレートMの下面に取り付けた場合には、カメラ113によってその情報を読み取ることが可能である。
【0040】
上記のように構成された撮像装置1では、ユーザからの指示を受けると、制御ユニット15が装置各部を制御して、カメラ113による試料の撮像を含む一連の撮像処理を実行する。以下、撮像処理の一例について、その処理内容を説明する。
【0041】
図3は第1実施形態における撮像処理の流れを示すフローチャートである。まず、試料の搬入に先立って、撮像前の殺菌処理(ステップS102)を行う。より具体的には、照明ユニット10を撮像ユニット11の上部に載置し試料収容空間SP2を密閉する(ステップS101)。この状態で、殺菌光源103,104,115,116を点灯させて試料収容空間SP2内にUV光を所定時間照射することで、試料収容空間SP2内、特にマイクロプレートMを保持するホルダ111の殺菌を行う(ステップS102)。こうすることで、次いで搬入されるマイクロプレートMに保持される試料が試料収容空間SP2内に残留する汚染原因物によって汚染されるのを防止する。このとき、チャンバ100,110の壁面がUV光をよく反射する材料で構成されていると、試料収容空間SP2内の部材で遮蔽されて殺菌光源103等からの直接光が届かない部分にまで光を行き届かせることができる。殺菌光源103等の消灯により、撮像前殺菌処理は終了する。
【0042】
次に、試料を保持するマイクロプレートMを試料収容空間SP2にセットする(ステップS103)。具体的には、照明ユニット10を上方または側方の退避位置に退避させて試料収容空間SP2の上部を開放し、開口部分からマイクロプレートMを搬入してホルダ111に載置する。ホルダ111へのマイクロプレートMの設置後、照明ユニット10を撮像ユニット11の直上位置へ移動させて試料収容空間SP2を密閉する。照明ユニット10の移動およびマイクロプレートMの搬入については、オペレータの手作業によってもよく、また適宜の移動機構により行ってもよい。
【0043】
なお、試料収容空間SP2が開放された状態では、気体吐出ノズル118から気体が試料収容空間SP2に供給されることが望ましい。こうすることで、試料収容空間SP2から外部へ向かう気流を生成し、外部空間から細菌等の汚染原因物が試料収容空間SP2に侵入するのを抑制することができる。また、試料収容空間SP2が密閉された状態においても、試料収容空間SP2を外部空間より僅かに気圧の高い状態とすることで、外部空間からの汚染原因物の侵入を防止することが可能である。
【0044】
続いて、カメラ113による撮像を行う(ステップS104)。具体的には、照明ユニット10の照明光源101を点灯させ、カメラ113を水平方向に走査移動させながら撮像を行い、最終的にマイクロプレートMの全ウェルWについての画像を取得する。
【0045】
撮像が終了すると、照明ユニット10を退避させて再び試料収容空間SP2を開き、試料をマイクロプレートMとともに搬出する(ステップS105)。そして、撮像後の殺菌処理として、撮像前殺菌処理と同様に、試料収容空間SP2を密閉した状態で所定時間殺菌光源103,104,115,116からのUV光を照射する(ステップS106)。これにより、たとえマイクロプレートMから試料の一部が離脱してホルダ111や試料収容空間SP2に残留付着していたとしても、該離脱物が以後の撮像において他の試料を汚染することが回避される。こうして一連の撮像処理が完了する。
【0046】
以上のように、この実施形態では、撮像装置1に殺菌作用を有する光(具体的にはUV光)を出射する殺菌光源103等を設け、試料を保持するマイクロプレートMが載置されるホルダ111およびこれを収容する試料収容空間SP2のUV光による殺菌処理を行う。こうすることで、試料収容空間SP2内、特にホルダ111に付着したカビ、細菌等の汚染原因物によって撮像対象となる試料が汚染されるのを効果的に回避することができる。
【0047】
ここで、撮像対象である試料が搬入される前に殺菌処理を行うと、装置に残留する汚染原因物が搬入される試料に付着し試料を汚染することが防止される。このため、撮像時に汚染原因物の影響が及ぶことが回避されるとともに、撮像後には、搬入時の清浄な状態を保ったまま試料を搬出することができる。このため、撮像の前後における試料の変化を最小限に抑えることができる。したがって、培養容器に保管されていた試料を撮像のために一時的に取り出し、撮像後に再び培養容器に戻す場合でも、該取り出しが試料に与える影響が抑えられる。このことは、所定の環境で継続的に培養した試料を一定時間間隔で複数回撮像を行うタイムラプス撮像において特に好適である。
【0048】
そして、撮像の直前に殺菌処理を行うことで、撮像装置1に付着した状態で放置されることで細菌等が増殖した場合であっても、これによる汚染を確実に防止することが可能となる。
【0049】
一方、撮像が終了した試料が搬出された直後に殺菌処理を行った場合、マイクロプレートMから離脱した試料の一部、あるいは試料の出し入れの際に外部から混入した細菌等の汚染原因物を殺菌することで、これらが装置に残留して増殖するのを未然に回避することができる。
【0050】
また、この実施形態では、試料収容空間SP2に対して周囲空間に比しての陽圧を与えることにより、外部空間から飛来する汚染原因物が試料収容空間SP2に侵入するのを効果的に防止することができる。
【0051】
<第2実施形態>
次に、この発明にかかる撮像装置の第2実施形態について説明する。この実施形態において、装置主要部の基本的な構成は第一実施形態のものと共通である。以下の説明では、第1実施形態と同一の構成については同一符号を付して詳しい説明を省略する。また、説明の便宜上、一部構成の図示および説明を省略するが、以下において特に断りのない限り、上記した第1実施形態が有する各構成は第2実施形態にも装備されているものとする。
【0052】
図4はこの発明の第2実施形態にかかる撮像装置の概略構成を示す図である。より具体的には、
図4は第2実施形態の撮像装置2の主要部の側面断面図および制御ユニットの構成を示すブロック図である。まず、照明ユニット10の構成は、上記した第1実施形態のものと同一である。
【0053】
一方、この実施形態の撮像ユニット21では、試料収容空間SP2に向けて所定の薬剤を吐出する薬剤吐出ノズル211と、同空間SP2に向けて乾燥気体を吐出する乾燥気体吐出ノズル212とが追加されている。なお、乾燥気体吐出ノズル212は気体吐出ノズル118(
図1)と兼用されてもよい。また乾燥気体供給部供給部252は気体供給部158と兼用されてもよい。
【0054】
この実施形態の制御ユニット25には、第1実施形態の制御ユニット15に設けられている各制御ブロックに加えて、薬剤吐出ノズル211に薬剤を供給する薬剤供給部251と、乾燥気体吐出ノズル212に乾燥気体を供給する乾燥気体供給部252とを備えている。
【0055】
薬剤供給部251は、殺菌作用を有する薬剤として、以下に例示する液体または気体のいずれかをまたはそれらを選択的にもしくは適宜混合して、定められた供給量を維持しつつ薬剤吐出ノズル211に対して送出する。薬剤は薬剤吐出ノズル211から試料収容空間SP2に吐出され、これにより試料収容空間SP2の殺菌処理が行われる。薬剤供給部251が薬剤の温度を調整する機能を有してもよい。
【0056】
液体の薬剤としては、例えばアルコール、殺菌成分としての塩素を含む化合物(例えば次亜塩素酸ソーダ)またはそれを含む溶液などを用いることができる。この他にも、種々の細菌に対してあるいは特定の細菌に対して殺菌作用を示す液体を薬剤として用いることができる。特に、試料に含まれるまたは混入の可能性のある細菌等の種類が既知である場合には、その細菌等に対して有効な薬剤を適宜選択して用いることができる。
【0057】
また気体の薬剤としては、気化させたアルコール、殺菌成分としての塩素を含む化合物(塩素ガス)、酸化エチレン、オゾンガスなどを用いることができる。このうちオゾンガスについては、薬剤供給部251から供給してもよく、また殺菌光源103等の点灯により試料収容空間SP2内で発生させるようにしてもよい。
【0058】
なお、試料収容空間SP2を取り囲む隔壁としての各部材、すなわちチャンバ100,110、透明窓102,112およびパッキン12と、各種のノズルやセンサ類については、使用される薬剤に対する耐腐食性を有する材料により構成されることが望ましい。例えば透明窓102,112については石英ガラスを用いることができる。また例えば、パッキン12としてはシリコン樹脂またはフッ素樹脂を用いることができる。また光透過性を必要としない部材については例えばステンレス素材のものを用いることができ、薬剤やオゾンに対する耐腐食性をより高めるために、フッ素樹脂コーティングされたものでもよい。
【0059】
また、制御ユニット25には気液回収部253が設けられており、気液回収部253は排出経路213を介して試料収容空間SP2と連通している。試料収容空間SP2に供給された薬剤や気体は、排出経路213を介して気液回収部253に回収される。排出経路213上に吸引ポンプ等の吸引手段を適宜設けてもよい。この場合、回収効率を高めるために、各空間SP2,SP3の気圧と大気圧との圧力差を維持したまま回収を行うようにしてもよい。気液回収部253は気液分離手段を備えており、回収した流体を液体成分と気体成分とに分離して個別に回収する。チャンバから気体等を排出するためのドレイン構造および気液分離手段は公知であるため、ここでは詳しい説明を省略する。
【0060】
上記のように構成された撮像装置2では、第1実施形態と同様、
図3に示すフローチャートに沿って撮像処理が行われる。ただし、殺菌処理(ステップS102の撮像前殺菌処理およびステップS105の撮像後殺菌処理)の処理内容が、第1実施形態のものとは相違している。
【0061】
図5は第2実施形態における殺菌処理を示すフローチャートである。最初に、制御ユニット25は、予め複数用意された殺菌処理レシピの中から状況に応じた1つを選択し、実行すべき処理レシピとして決定する(ステップS201)。複数の処理レシピの間では、使用する薬剤の選択、UV光を使用するか否か、薬剤の濃度および温度、処理時間などの処理パラメータの組み合わせからなる処理条件が互いに異なっており、試料の種類や目的に応じていずれかが選択される。
【0062】
撮像すべき試料が搬入される前の撮像前殺菌処理(
図3のステップS102)では、例えば、当該撮像処理に先立つ直近の撮像処理において用いられた試料の種類に応じた処理レシピを選択することで、先の撮像における残留物の影響を確実に排除し後の試料の汚染を防止するようにすることができる。また、次の撮像処理に用いられる試料の種類に応じた処理レシピを選択するようにすれば、当該試料への影響が少ない処理条件を適用することが可能となる。一方、撮像終了後の撮像後殺菌処理(
図3のステップS105)では、撮像に用いられた試料が装置内で増殖したり次の試料を汚染するのを防止するために必要な処理レシピを選択することができる。
【0063】
これらの目的のために、マイクロプレートMの貼付領域M4に付された記録媒体の情報を用いることが可能である。また、表示部17に選択可能な処理レシピのリストを表示し、目的に応じてユーザにいずれかを選択させるようにしてもよい。レシピの選択入力については入力受付部16により受け付けることができる。また、処理条件をユーザにより指定させるようにしてもよい。
【0064】
処理レシピが決定されると、決定された処理レシピにしたがい試料収容空間SP2の殺菌が行われる(ステップS202)。具体的には、処理レシピにおいて薬剤の吐出が定められている場合には、指定された薬剤を薬剤供給部251から薬剤吐出ノズル211に送出し、薬剤吐出ノズル211から試料収容空間SP2に向けて吐出させる。これに代えて、あるいはこれに加えてUV光の照射が処理レシピで定められている場合には、殺菌光源103等を点灯させて試料収容空間SP2にUV光を照射する。また、薬剤とUV光とを併用することで、より殺菌効果を高めるようにしてもよい。
【0065】
薬剤の吐出および/またはUV光の照射を所定時間継続した後これを停止し、続いて乾燥気体供給部252から乾燥気体吐出ノズル212に向けて所定の乾燥気体、例えば乾燥空気または窒素ガス等の不活性ガスを供給し、乾燥気体吐出ノズル212から試料収容空間SP2に乾燥気体を吐出させる(ステップS203)。これにより、試料収容空間SP2に残留する薬剤は排出経路213から排出されて気液回収部253に回収される。特に殺菌に使用される薬剤が液体である場合には、加熱した気体を試料収容空間SP2に供給するようにすれば、薬剤の乾燥をより促進することが可能である。
【0066】
こうして試料収容空間SP2に残留する殺菌成分が必要十分なレベルまで低減され、かつ試料収容空間SP2が細胞等の生存に適した温湿度環境まで戻れば、新たな試料の受け入れが可能となる。この状態になれば(ステップS204)、殺菌処理は終了し、
図3の処理に戻る。
【0067】
以上のように、この実施形態の撮像装置2では、第1実施形態の撮像装置1が有する構成に加えて、殺菌作用を有する薬剤を試料収容空間SP2に供給する機能と、処理条件が異なる複数の処理レシピが用意されそれらを選択的に実行する機能とを実現するための構成が付加されている。これにより、第1実施形態の撮像装置1が奏する作用効果に加えて、この実施形態では、薬剤による殺菌が可能となり、UV照射のみで十分な殺菌効果を上げることが困難な汚染原因物に対しても有効な殺菌処理を行うことができる。
【0068】
また、処理条件が互いに異なる複数の処理レシピを選択的に実行することで、殺菌処理の前に用いられた試料、あるいは殺菌処理の後に用いられる試料の種類に応じた殺菌処理レシピを適用することが可能となり、殺菌処理の効果をより確実なものとすることができる。また、殺菌の実行後、細胞等の生存が可能な状況となってから次の処理を実行することで、新たに試料収容空間SP2に搬入される試料に残留薬剤等の影響が及ぶのを防止することができる。
【0069】
<第3実施形態>
次に、この発明にかかる撮像装置の第3実施形態について説明する。以下に説明する第3実施形態の撮像装置は、上記した第1または第2実施形態の撮像装置に新たな構成を付加することによって、これらの実施形態の撮像装置が有する機能に加えてさらなる機能を実現しようとするものである。ここでは第1実施形態の撮像装置1をベースにした場合を採り上げ、第3実施形態において新たに付加された構成について主に説明する。なお、第1実施形態と同一の構成については同一符号を付して詳細な説明を省略する。また説明の便宜上、第1実施形態の装置と共通する一部構成の図示および説明を省略するが、以下において特に断りのない限り、上記した第1実施形態が有する各構成は第3実施形態にも装備されているものとする。
【0070】
また、ここでは第1実施形態の装置に新たな構成を付加することで新たな作用効果をもたらしたものを第3実施形態としているが、当該新たな構成を第2実施形態の装置に付加した態様においても同様に、以下に説明する新たな作用効果が奏される。
【0071】
図6はこの発明の第3実施形態にかかる撮像装置の概略構成を示す図である。より具体的には、
図6は第3実施形態の撮像装置3の主要部の側面断面図および制御ユニットの構成を示すブロック図である。この実施形態において、照明ユニット10の構成は、上記した第1実施形態のものと同一である。
【0072】
一方、この実施形態の撮像ユニット31では、チャンバ310の形状が第1実施形態のもの(チャンバ110)とは異なっている。具体的には、チャンバ310の側部であって試料収容空間SP2の側方には開口部311が設けられている。開口部311はマイクロプレートMを水平姿勢に維持したまま通過させることができる程度の開口サイズを有しており、該開口部311に対して開閉自在のゲート部材312が取り付けられている。ゲート部材312が開口部311に対して閉じられた状態では、開口部311がゲート部材312により塞がれて試料収容空間SP2が密閉状態となる。一方、ゲート部材312が開かれた状態では、開口部311を介してマイクロプレートMが試料収容空間SP2に対し出し入れ可能な状態となる。ゲート部材312は制御ユニット35に設けられたゲート制御部352により開閉制御される。
【0073】
開口部311を挟んで試料収容空間SP2とは反対側に、内部空間SP4が一定の温湿度環境に保たれたインキュベータユニット32が設けられている。インキュベータユニット32の構成としては公知のインキュベータシステムを適用することができるので、ここでは詳しい説明を省略する。例えば公知のグローブボックス型インキュベータシステムを適用することで、外部空間に露出させることなくインキュベータユニット32内で試料の操作を行うことが可能である。
【0074】
インキュベータユニット32はパッキン33を介してチャンバ310の開口部311を塞ぐように取り付けられており、その内部空間SP4は開口部311を介して試料収容空間SP2と連通している。より詳しくは、ゲート部材312の閉状態では該ゲート部材312によって試料収容空間SP2とインキュベータユニット32の内部空間SP4とが隔てられる一方、ゲート部材312の開状態では開口部311を介して試料収容空間SP2とインキュベータユニット32の内部空間SP4とが連通した状態となる。
【0075】
また、撮像ユニット31では、試料収容空間SP2内でマイクロプレートMを保持するホルダ111に支持ロッド313が取り付けられるとともに、支持ロッド313は進退駆動機構314に取り付けられている。進退駆動機構314は、制御ユニット35に設けられた進退制御部351からの制御指令に応じて、支持ロッド313を水平方向(図の左右方向)に進退移動させる。これによりホルダ111は水平方向に移動可能となっている。この進退移動はゲート部材312の開閉と連動しており、ホルダ111はマイクロプレートMを保持して進退移動することで、開口部311を介して試料収容空間SP2とインキュベータユニット32との間でマイクロプレートMを搬送可能となっている。
【0076】
支持ロッド313は試料収容空間SP2の側壁を貫通して設けられており、該側壁と支持ロッド313との間には気密を保持するパッキン315が設けられる。また、支持ロッド313のうち試料収容空間SP2の内部と外部とを行き来する部分を殺菌するための殺菌光源318が、チャンバ311の内部空間SP3に設けられている。これにより、支持ロッド313からホルダ111を介した試料の汚染が防止される。
【0077】
この実施形態の制御ユニット35は、上記の他に、インキュベータユニット32の内部空間SP4の温湿度および大気ガス濃度(O
2,CO
2,N
2等)環境を制御する環境制御部353と、前記した第1実施形態の制御ユニット15が有する各構成とを備えている。
【0078】
このような構成では、インキュベータユニット32の内部空間SP4に静置したマイクロプレートM内で試料の培養または保管を行いつつ、必要に応じてマイクロプレートMを撮像ユニット31の試料収容空間SP2に移動させることにより、試料の撮像を行うことができる。また、撮像の終了後には試料を保持するマイクロプレートMをインキュベータユニット32に戻すことができる。この間、試料が外部雰囲気に触れることがないので、撮像に起因する試料の汚染が効果的に防止される。なお、撮像装置3が他の試料の撮像に供されることもあり、また試料の汚染防止に万全を期すために、この装置における撮像処理は以下のように構成される。
【0079】
図7は第3実施形態における撮像処理の流れを示すフローチャートである。撮像処理が実行される前の段階では、マイクロプレートMはインキュベータユニット32に保管されており、ゲート部材312は閉じられた状態となっている。この状態で、撮像前殺菌処理を行う(ステップS301)。
【0080】
続いてゲート部材312を開き、開口部311を介してインキュベータユニット32の内部空間SP4から試料収容空間SP2へマイクロプレートMを搬入する(ステップS302)。搬入後はゲート部材312を閉じ、第1実施形態と同様にして試料の撮像処理を行う(ステップS303)。
【0081】
撮像終了後、再びゲート部材312を開いてマイクロプレートMをインキュベータユニット32に搬出し(ステップS304)、ゲート部材312を閉じた後、撮像後殺菌処理を実行する(ステップS305)。上記処理を定期的に繰り返せば、1つの試料を時間を異ならせて複数回撮像するタイムラプス撮像を行うことが可能である。
【0082】
以上のように、この実施形態では、撮像装置3にインキュベータユニット32を内蔵させるとともに、インキュベータユニット32の内部空間SP4と撮像ユニット31の試料収容空間SP2とを連結させて両空間の間で試料を搬送する構成となっている。このような構成によれば、試料を保管するインキュベータユニット32と試料の撮像を行う撮像ユニット31との間で外部空間に触れさせることなく試料を搬送することができ、試料の汚染をより効果的に防止することが可能である。
【0083】
<第4実施形態>
図8はこの発明の第4実施形態にかかる撮像装置の動作を示すフローチャートである。以下に説明する第4実施形態の撮像装置の構成は上記した第1実施形態のもの(
図1)と基本的に同一であり、その動作が一部異なっている。ただし、殺菌光源103等については出射するUV光の波長を切り換え可能なものとする。
図8に示す処理は、第1実施形態における撮像前殺菌処理および撮像後殺菌処理に代えてこの第4実施形態で実行される殺菌処理である。撮像前殺菌処理、撮像後殺菌処理の両方が
図8の処理に置き換えられてもよく、いずれか一方のみが置き換えられてもよい。
【0084】
この実施形態の殺菌処理では、殺菌作用を有する薬剤としての気体や液体を外部から供給するのではなく、試料収容空間SP2内において殺菌作用を有する物質を生成する。例えば試料収容空間SP2内に存在する酸素をオゾン化することで、殺菌作用のあるオゾンガスを試料収容空間SP2内に供給することができる。具体的には、第1実施形態と同様に試料収容空間SP2が密閉された後(ステップS401)、まずオゾン発生用のUV光として中心波長が185nmである光を殺菌光源103等から試料収容空間SP2に照射する(ステップS402)。UV光(紫外線)にはオゾンを発生させる波長と分解する波長とがあることが知られており、ここではオゾンを発生させる波長のUV光を照射する。これにより、試料収容空間SP2内の酸素がオゾン化して試料収容空間SP2内にオゾンが発生する。
【0085】
続いて、殺菌光源103等からのUV光の波長をより殺菌効果の高い255nm〜260nmに変更する(ステップS402)。これにより、試料収容空間SP2内ではオゾンによる殺菌作用に加えてUV光による殺菌作用が発揮され、より高い殺菌効果を得ることができる。この状態を所定時間維持した後、殺菌光源103等からのUV光の波長をオゾン分解用の254nmに変更する(ステップS404)。この波長はオゾンを分解する作用を有するものであり、試料収容空間SP2内のオゾンが分解されて無害化され、以後に搬入される試料への影響を防止することができる。なお、殺菌用UV光とオゾン分解用UV光については同じ波長としてもよい。
【0086】
以上のように、この実施形態では、殺菌光源103等からのUV光の波長を適宜切り換えて、オゾン発生用のUV光、殺菌用のUV光およびオゾン分解用のUV光を順次試料収容空間SP2内に照射する。これにより、UV光とオゾンとによる殺菌作用で試料収容空間SP2内の殺菌をより確実に行うことができるとともに、殺菌処理後の試料収容空間SP2内に試料にとって有害なオゾンを残留させないようにすることができる。
【0087】
<第5実施形態>
図9はこの発明の第5実施形態にかかる撮像装置の主要構成を示す図である。なお、
図9および以下の説明では、第1実施形態と共通の構成については同一の符号を付しまたは記載を省略している。以下において特に断りのない限り、上記した第1実施形態が有する各構成は第5実施形態にも装備されているものとする。
【0088】
この実施形態においても、第4実施形態と同様に試料収容空間SP2において殺菌作用を有する物質を生成する。具体的には、試料収容空間SP2に該空間SP2中の酸素を原料として殺菌成分であるオゾンを生成することができる例えば放電式のオゾン発生器501と、オゾン濃度を測定するオゾン濃度計502と、試料収容空間SP2内で気体を循環させる循環ファン503とが設けられている。オゾンは空気より比重が大きいことから、オゾン発生器501は試料収容空間SP2の上部に、またオゾン濃度計503は試料収容空間SP2の下部に設けられる。また図中の一点鎖線で示す矢印は、循環ファン503により試料収容空間SP2内に形成される気流を模式的に示している。
【0089】
さらに、各種の気体を試料収容空間SP2内に供給する気体供給ノズル511が設けられるとともに、試料収容空間SP2内の気体を外部に放出するための排気ファン513が設けられている。排気ファン513を使用しないときに外気の流入を防止する逆流防止手段として逆止弁または密閉シャッターなどが備えられることが好ましい。
【0090】
オゾン発生器501はオゾン発生制御部504により制御されており、オゾン発生制御部504はオゾン濃度計502からの出力に基づきオゾン発生器501を制御して、試料収容空間SP2内に所定濃度のオゾンを発生させる。また気体供給ノズル511は雰囲気制御部512に接続されており、処理レシピに応じて雰囲気制御部512から供給される各種の気体を試料収容空間SP2内に供給する。例えば試料収容空間SP2内におけるオゾンの生成量を増大させるために、試料収容空間SP2内に酸素を供給することができる。
【0091】
このような構成によれば、オゾン発生器501により効率的に生成されるオゾンガスが循環ファン503の動作によって試料収容空間SP2内に行き渡り、試料収容空間SP2内をオゾンにより短時間で強力に殺菌することができる。もちろん殺菌光源103等からのUV光照射と併用することが可能である。そして、オゾン濃度計502およびオゾン発生制御部504によりオゾン濃度が適正に制御されることで、過剰なオゾン生成を未然に防止し、殺菌に要する時間を短縮するとともに、周囲環境への影響も防止することができる。
【0092】
試料収容空間SP2内に効率的にオゾンを発生させるために、オゾン発生器501の動作に先立って、または該動作とともに、気体供給ノズル511から酸素ガスを試料収容空間SP2内に導入してもよい。また、殺菌処理の終了後は気体供給ノズル511から清浄な空気を導入しつつ排気ファン513を作動させて排気を行うことにより、試料収容空間SP2内に残留するオゾンを短時間で排出し、以後の撮像処理に適した環境とすることができる。このときオゾン濃度計502により試料収容空間SP2内のオゾン濃度を観測しておくことで、オゾンの排出をより確実にすることができる。具体的な殺菌処理の動作としては、例えば以下のようにすることができる。
【0093】
図10は第5実施形態における殺菌処理を示すフローチャートである。この殺菌処理では、第1実施形態等と同様に、試料が搬入されていない試料収容空間SP2が密閉された後(ステップS501)、気体供給ノズル511から水分を含む酸素が試料収容空間SP2に導入されるとともに、循環ファン503の動作が開始される(ステップS502)。続いてオゾン発生器501の動作が開始されて(ステップS503)、試料収容空間SP2内がオゾン雰囲気となる。水分を含む酸素を導入するのは、オゾン源となる酸素を供給するためと、水分子をイオン化することによるさらなる殺菌作用を得るためである。
【0094】
オゾン濃度計502により計測されるオゾン濃度が十分な殺菌作用を奏する規定濃度に達すると(ステップS504)、殺菌光源103等から殺菌用のUV光の照射が開始される(ステップS505)。この状態を所定時間継続することで、オゾンによる殺菌作用およびUV光による殺菌作用で試料収容空間SP2が殺菌される。所定時間経過後、オゾン発生器501によるオゾン発生および殺菌光源103等からのUV光照射が停止され(ステップS506)、続いて、試料収容空間SP2を乾燥させるとともにオゾンを希釈するために、気体供給ノズル511から乾燥空気が導入される(ステップS507)。なお、乾燥空気の導入は必須ではなく、例えば殺菌処理後、引き続いて次の撮像処理が行われない場合には試料収容空間SP2をオゾン雰囲気のまま放置してもよい。
【0095】
以後の動作は、引き続き撮像処理が実施されるか否かによって異なる(ステップS508)。撮像処理を行わない場合には、循環ファン503を停止させて処理を終了する(ステップS509)。一方、続けて撮像処理が行われる場合には、乾燥空気の導入に続いて排気ファン513を作動させ(ステップS511)、試料収容空間SP2内のオゾン雰囲気を乾燥空気に置換させる。
【0096】
オゾン濃度が試料に影響を与えない規定濃度以下まで低下すれば(ステップS512)、温度および湿度が調整された炭酸ガス(CO
2)が気体供給ノズル511から試料収容空間SP2に導入される(ステップS513)。ガス温度は試料を培養するインキュベータ内の温度と同程度が好ましく、例えば細胞の培養に好適な37℃前後とされる。また乾燥雰囲気での細胞の死滅を防止するために、ガスには適度な湿度が与えられる。特に高解像度での撮像を行う場合には撮像に時間がかかるため、撮像処理中の細胞の衰弱や死滅を防ぐために、試料収容空間SP2内の温湿度を含む雰囲気をインキュベータでの培養条件に近いものとしておくことが望ましい。この目的のために、試料収容空間SP2内に温度または湿度を検出するための手段を設けてもよい。
【0097】
試料収容空間SP2の内部雰囲気が撮像に適した条件にされた後、循環ファン503および排気ファン513が停止されて(ステップS509)、殺菌処理が終了し、撮像のための試料の搬入が可能な状態となる。
【0098】
以上のように、この実施形態では、放電式のオゾン発生器501と循環ファン503とを試料収容空間SP2内に設置することで、オゾンによる試料収容空間SP2内の殺菌を短時間で強力に行うことができる。また、殺菌処理後のオゾンガスを短時間で排気し、細胞等の生存に適した環境とすることで、試料に影響を与えることなく撮像処理を行うことができる。なお、この実施形態では試料収容空SP2内でのオゾンの循環のために循環ファン503を設けているが、試料収容空間SP2内の気体を撹拌する撹拌手段としてはこれに限定されず、例えば外部から気体を流入させることによって試料収容空間SP2に気流を生じさせる構成であってもよい。
【0099】
<第6実施形態>
図11はこの発明の第6実施形態にかかる撮像装置の概略構成を示す図である。より詳しくは、
図11はこの発明にかかる撮像装置を備えた観察システムの一例を示す側面図である。この観察システム6は、撮像ユニット61と、プレートストッカー62とが試料移送室63を介して接続された構造を有している。撮像ユニット61としては、例えば上記した第5実施形態の撮像装置5と同一構造のものを用いることができる。その構成については先に説明した通りであり、
図11では記載を省略してシステムの全体構成のみを示している。
【0100】
プレートストッカー62は、撮像処理に供される1枚または複数枚のマイクロプレートMを雰囲気制御された密閉空間に一時的に保管するための保管手段である。第3実施形態のインキュベータユニット32の内部空間SP4と同様に、その内部空間SP5が細胞の培養に適した雰囲気および温湿度環境に維持され、インキュベータとしての機能を兼備したものであってもよい。また、複数のマイクロプレートMが互いに隔離された状態で保管されてもよい。
【0101】
試料移送室63の内部空間SP6には、プレートストッカー62と撮像装置61との間でマイクロプレートMを移送する移送ユニット630が設けられている。移送ユニット630は、試料移送室63内に固定されたベース部631に対して水平方向に移動自在に立設された柱部材632を有しており、この柱部材632に対してスライドステージ633が上下動自在に取り付けられている。スライドステージ633の上部には試料保持ステージ634が設けられて、試料保持ステージ634はスライドステージ633に対して水平方向に移動可能に構成されている。
【0102】
プレートストッカー62と試料移送室63との間の隔壁には開口が設けられ、該開口を覆ってシャッター部材64が開閉自在に設けられている。図において点線で示すようにシャッター部材64が上方へ移動した状態ではプレートストッカー62の内部空間SP5と試料移送室63の内部空間SP6とが連通する。そして、両者の間の開口を介して試料保持ステージ634が試料移送室63からプレートストッカー62の内部空間SP5に進出し、プレートストッカー62に保管されたマイクロプレートMのうち1枚を搬出する。また、試料保持ステージ634に載置されているマイクロプレートMをプレートストッカー62に搬入する。
【0103】
一方、撮像ユニット61と試料移送室63との間の隔壁にも開口が設けられ、該開口を覆ってシャッター部材65が開閉自在に設けられている。そして、シャッター部材65が上方に移動した状態では、撮像ユニット61の試料収容空間SP2と試料移送室63の内部空間SP6とが連通する。そして、両者の間の開口を介して試料保持ステージ634が試料収容空間SP2に進出することで、試料収容空間SP2へのマイクロプレートMの搬入および同空間SP2からのマイクロプレートMの搬出を行う。
【0104】
このように構成された観察システム6では、プレートストッカー62に保管された1枚または複数枚のマイクロプレートMを順次撮像ユニット61に移送して撮像し、撮像後にマイクロプレートMをプレートストッカー62に戻すことができる。この間、マイクロプレートMが外気に曝されることがない。
【0105】
ここで、試料の汚染を防止するために、試料移送室63の内部空間SP6についても殺菌を行う必要がある。そのために試料移送室63内に殺菌手段を設置してもよいが、この実施形態では次のようにしている。すなわち、プレートストッカー62と試料移送室63とを隔てるシャッター部材64を閉じる一方、撮像ユニット61と試料移送室63との間に設けられたシャッター部材65を開放した状態で、上記した第5実施形態の殺菌処理(
図10)を実行する。
【0106】
試料移送室63の内部空間SP6は撮像ユニット61の試料収容空間SP2と連通した状態であり、試料収容空間SP2と一体的に試料移送室63の内部空間SP6も殺菌処理される。より具体的には、試料収容空間SP2に設けられたオゾン発生器501により発生されたオゾンガスが循環ファン503により送気されて、試料移送室63の内部空間SP6もオゾンガスに満たされて殺菌が行われる。この際、シャッター部材64が閉じられることで、プレートストッカー62内のマイクロプレートMに保持される試料への影響は回避される。この目的のために、プレートストッカー62と試料移送室63との間の隔壁およびシャッター部材64については紫外線に対する透過性を有さない材料により構成されることが望ましい。
【0107】
なお、試料移送室63の内部空間SP6と試料収容空間SP2とを一体的に殺菌することを前提とするシステムにおいては、殺菌のために試料収容空間SP2内に設置された手段、例えばオゾン発生器を試料移送室63の内部空間SP6に設置するようにしてもよい。
【0108】
以上のように、この実施形態では、マイクロプレートMを保管するプレートストッカー62と撮像ユニット61との間に、移送ユニット630を有する試料移送室63を設けることにより、複数枚のマイクロプレートMを外気に曝すことなく順次撮像することが可能となっている。そして、プレートストッカー62と試料移送室63との間にシャッター部材64を、また撮像ユニット61と試料移送室63との間にシャッター部材65をそれぞれ設けている。これにより、プレートストッカー62に保管された試料に影響を与えることなく、試料移送室63の内部空間SP6と撮像ユニット61の試料収容空間SP2とを一体的に殺菌することができる。
【0109】
<その他>
以上説明したように、上記各実施形態においては、マイクロプレートMが本発明の「試料容器」に相当しており、これを保持するホルダ111が本発明の「保持手段」として機能している。また、上記各実施形態では、カメラ113が本発明の「撮像手段」として機能している。また第1、第2および第3実施形態の制御ユニット15、25および35がそれぞれ本発明の「制御手段」として機能している。また、互いに組み合わさることで試料収容空間SP2を形成するチャンバ100および110が一体として本発明の「チャンバ」として機能している。
【0110】
また、各実施形態における殺菌光源103,104,115,116,318がそれぞれ本発明の「殺菌手段」として機能すると同時に本発明の「電磁波照射部」として機能している。また、第2および第3実施形態では、薬剤供給部251および薬剤吐出ノズル211が、本発明の「殺菌手段」として機能している。また、第5実施形態において、オゾン発生器501が殺菌光源103等とともに本発明の「殺菌手段」として機能している。また、圧力センサ105,117,119,120、気体供給部158および気体吐出ノズル118が一体として、本発明の「陽圧付与手段」として機能している。
【0111】
また第2実施形態においては、排出経路213および気液回収部253が本発明の「排出手段」として機能している。また第3実施形態においては、インキュベータユニット32が本発明の「試料保管部」として機能する一方、ゲート部材312が本発明の「開閉部材」として機能している。さらに、支持ロッド313、進退駆動機構314および進退制御部351が一体として、本発明の「搬送手段」として機能している。また第6実施形態においては、プレートストッカー62が本発明の「試料保管部」として機能する一方、移送ユニット630が本発明の「搬送手段」として機能している。
【0112】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記各実施形態ではいずれも殺菌手段としての殺菌光源103等が設けられているが、例えば殺菌光源を設けず、薬剤のみによって殺菌を行うようにしてもよい。また殺菌目的で保持手段に照射する電磁波はUV光に限定されず殺菌作用を有する任意の電磁波を用いることができる。例えばマイクロ波を用いてもよい。
【0113】
また、上記した第4実施形態ではオゾン分解用のUV光照射によって、また第5実施形態では排気ファン513を設けることによって試料収容空間SP2内に残留するオゾンを減少させているが、これに代えて、オゾンを分解する機能を有する触媒を試料収容空間SP2内に設置してもよい。例えば二酸化マンガン系の触媒は40℃付近で最も活性となり高いオゾン分解効果を有することから、試料の培養温度条件で作用する触媒として好適である。
【0114】
また、上記各実施形態は、撮像の前後にそれぞれ殺菌処理を行うように構成されている。しかしながら、前記した通り、撮像前の殺菌処理と撮像後の殺菌処理とはそれぞれ独立した作用を有するものであり、常にこれらが対となっていることを要するものではない。すなわち、撮像前または撮像後のいずれか一方のみにおいて殺菌処理が実行される態様であってもよい。
【0115】
また、上記各実施形態では、照明ユニット10の下面と撮像ユニット11等の上面とで囲まれた空間が試料収容空間SP2となっている。しかしながら、試料(マイクロプレートM)を収容する空間を形成するための構成はこのようなものに限定されない。例えば、内部に空洞を有し上面および下面が透明となったチャンバの内部に試料を収容し、その上方から照明し下方で撮像を行う構成としてもよい。また照明および撮像の方向も上記実施形態に限定されず、照明光源およびカメラについてはそれぞれ試料の上方、下方のいずれに配置されてもよい。また、上記実施形態では装置内外の各空間に圧力センサを設けて各空間の気圧を調整しているが、各空間における圧力バランスを上記したものに保つことができれば足り、上記構成に限定されるものではない。例えば試料収容空間SP2内に簡易的な陽圧付与手段を設けて試料収容空間SP2の気圧を他の空間よりも高く維持することで、圧力センサを省くことも可能である。
【0116】
また、本発明の試料容器についても、上記実施形態のようなマイクロプレートに限定されず任意のものを使用可能であり、例えば試験管内で培養した試料を側方から撮像する装置に対しても、本発明を適用することが可能である。