(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術には、以下の課題がある。
・ピーク点を示すための電子透かしの埋め込みとビット情報を示すための電子透かしの埋め込みという二重の埋め込みが必要である。そのため、電子透かしの埋め込み時に生じる画質劣化の度合が大きい。
・画像の「ずれ」補正、電子透かしの検出という二段階の処理が必要である。そのため、電子透かしの検出時の処理量が多い。また、画像の「ずれ」補正の処理に伴う画像劣化を原因として検出精度が低下する。
【0005】
本発明は、例えば、電子透かしの埋め込み時の画質劣化を抑制することを目的とする。また、本発明は、例えば、電子透かしの検出時の処理量を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様に係る、入力画像に電子透かしを埋め込む電子透かし埋め込み装置は、
複数の第1周波数成分で構成され前記電子透かしのデータ量に応じた数の第1周波数成分のベクトル方向が第1方向である第1周波数信号を周波数逆変換して第1成分の画像信号を得る第1変換部と、
複数の第2周波数成分で構成され前記電子透かしのデータ量に応じた数の第2周波数成分のベクトル方向が前記第1方向に対して前記電子透かしのデータ値に応じた側に所定角度ずれた第2方向である第2周波数信号を周波数逆変換して第2成分の画像信号を得る第2変換部と、
前記第1変換部で得られた前記第1成分の画像信号と、前記第2変換部で得られた前記第2成分の画像信号と、前記入力画像のデータに前記第1成分及び前記第2成分のほかに含まれる成分の画像信号とを合成する合成部とを備える。
【0007】
例えば、前記電子透かし埋め込み装置は、
前記入力画像のデータから前記第1成分の画像信号と前記第2成分の画像信号とを分離する信号成分分離部をさらに備え、
前記第1変換部は、前記信号成分分離部で得られた前記第1成分の画像信号を周波数信号に変換し、その周波数信号を構成する複数の周波数成分のうち前記電子透かしのデータ量に応じた数の周波数成分のベクトル方向を調整して前記第1周波数信号を生成し、前記第1周波数信号を前記第1成分の画像信号に逆変換し、
前記第2変換部は、前記信号成分分離部で得られた前記第2成分の画像信号を周波数信号に変換し、その周波数信号を構成する複数の周波数成分のうち前記電子透かしのデータ量に応じた数の周波数成分のベクトル方向を調整して前記第2周波数信号を生成し、前記第2周波数信号を前記第2成分の画像信号に逆変換する。
【0008】
或いは、前記電子透かし埋め込み装置は、
前記入力画像とは別の画像のデータから前記第1成分の画像信号と前記第2成分の画像信号とを分離する信号成分分離部をさらに備え、
前記第1変換部は、前記信号成分分離部で得られた前記第1成分の画像信号を周波数信号に変換し、その周波数信号を構成する複数の周波数成分のうち前記電子透かしのデータ量に応じた数の周波数成分のベクトル方向を調整して前記第1周波数信号を生成し、前記第1周波数信号を前記第1成分の画像信号に逆変換し、
前記第2変換部は、前記信号成分分離部で得られた前記第2成分の画像信号を周波数信号に変換し、その周波数信号を構成する複数の周波数成分のうち前記電子透かしのデータ量に応じた数の周波数成分のベクトル方向を調整して前記第2周波数信号を生成し、前記第2周波数信号を前記第2成分の画像信号に逆変換し、
前記合成部は、前記第1変換部で得られた前記第1成分の画像信号と、前記第2変換部で得られた前記第2成分の画像信号と、前記別の画像のデータに前記第1成分及び前記第2成分のほかに含まれる成分の画像信号とを合成し、得られた画像と、前記入力画像とを合成する。
【0009】
本発明の一の態様に係る、入力画像に電子透かしを埋め込む電子透かし埋め込みプログラムは、
コンピュータに、
複数の第1周波数成分で構成され前記電子透かしのデータ量に応じた数の第1周波数成分のベクトル方向が第1方向である第1周波数信号を周波数逆変換して第1成分の画像信号を得る第1変換処理と、
複数の第2周波数成分で構成され前記電子透かしのデータ量に応じた数の第2周波数成分のベクトル方向が前記第1方向に対して前記電子透かしのデータ値に応じた側に所定角度ずれた第2方向である第2周波数信号を周波数逆変換して第2成分の画像信号を得る第2変換処理と、
前記第1変換処理で得られた前記第1成分の画像信号と、前記第2変換処理で得られた前記第2成分の画像信号と、前記入力画像のデータに前記第1成分及び前記第2成分のほかに含まれる成分の画像信号とを合成する合成処理とを実行させる。
【0010】
本発明の一の態様に係る、入力画像に埋め込まれた電子透かしを検出する電子透かし検出装置は、
前記入力画像のデータから第1成分の画像信号と第2成分の画像信号とを分離する信号成分分離部と、
前記信号成分分離部で得られた前記第1成分の画像信号を周波数変換して第1周波数信号を得る第1周波数変換部と、
前記信号成分分離部で得られた前記第2成分の画像信号を周波数変換して第2周波数信号を得る第2周波数変換部と、
前記第1周波数変換部で得られた前記第1周波数信号を構成する複数の第1周波数成分と、前記第2周波数変換部で得られた前記第2周波数信号を構成する複数の第2周波数成分とについて、周波数空間内の座標が同じ第1周波数成分と第2周波数成分とのベクトル外積を計算するベクトル外積計算部と、
前記ベクトル外積計算部で計算されたベクトル外積の絶対値に基づいて、前記周波数空間内の座標のうち前記電子透かしのデータ量に応じた数の座標を選択し、選択した座標ごとに、前記ベクトル外積計算部で計算されたベクトル外積の正負に基づいて、前記電子透かしのデータ値を判定する判定部とを備える。
【0011】
本発明の一の態様に係る、入力画像に埋め込まれた電子透かしを検出する電子透かし検出プログラムは、
コンピュータに、
前記入力画像のデータから第1成分の画像信号と第2成分の画像信号とを分離する信号成分分離処理と、
前記信号成分分離処理で得られた前記第1成分の画像信号を周波数変換して第1周波数信号を得る第1周波数変換処理と、
前記信号成分分離処理で得られた前記第2成分の画像信号を周波数変換して第2周波数信号を得る第2周波数変換処理と、
前記第1周波数変換処理で得られた前記第1周波数信号を構成する複数の第1周波数成分のうち前記電子透かしのデータ量に応じた数の第1周波数成分と、前記第2周波数変換処理で得られた前記第2周波数信号を構成する複数の第2周波数成分のうち前記電子透かしのデータ量に応じた数の第2周波数成分とについて、周波数空間内の座標が同じ第1周波数成分と第2周波数成分とのベクトル外積を計算するベクトル外積計算処理と、
前記ベクトル外積計算処理で計算されたベクトル外積に基づいて、前記電子透かしのデータ値を判定する判定処理とを実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電子透かしの埋め込み時の画質劣化を抑制することができる。また、本発明によれば、電子透かしの検出時の処理量を削減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。
【0015】
実施の形態1.
まず、本実施の形態による電子透かしの埋め込みについて説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態に係る電子透かし埋め込み装置100の構成を示すブロック図である。
図2は、電子透かし埋め込み装置100が入力画像に電子透かしを埋め込む電子透かし埋め込み処理の一例を示す図である。
【0017】
図1において、電子透かし埋め込み装置100は、信号成分分離部101、第1変換部110、第2変換部120、合成部130を備える。
【0018】
信号成分分離部101には、入力画像のデータとして、静止画像のデータ、或いは、動画像のデータ(例えば、映像データの各フレーム)が外部から入力される。
【0019】
信号成分分離部101は、入力画像のデータからU成分の画像信号(画素信号)とV成分の画像信号(画素信号)とY成分の画像信号とを分離する。信号成分分離部101は、U成分の画像信号を第1変換部110に入力し、V成分の画像信号を第2変換部120に入力し、Y成分の画像信号を合成部130に入力する。ここで、Y成分は輝度信号、U成分は輝度信号と青色成分との差分(色差信号)、V成分は輝度信号と赤色成分との差分(色差信号)である。本実施の形態において、U成分は第1成分の例であり、V成分は第2成分の例であり、Y成分は入力画像のデータに第1成分及び第2成分のほかに含まれる成分の例である。なお、U成分とV成分とを入れ替えても(即ち、V成分を第1成分、U成分を第2成分としても)、本実施の形態を適用することができる。また、YUV形式以外の形式を使用しても、本実施の形態を適用することができる。例えば、RGB形式を使用するのであれば、R成分とG成分とB成分とのうち、いずれか1つを第1成分、他のいずれか1つを第2成分とすればよい。YUV形式以外の形式を使用する場合に、入力画像のデータに含まれる第1成分及び第2成分以外の成分が2つ以上あれば、合成部130には、これら2つ以上の成分の画像信号が入力されることになる。
【0020】
電子透かしのデータ量(例えば、透かしデータのビット数)が予め決まっている場合は不要であるが、決まっていない場合、第1変換部110には、電子透かしのデータ量の情報が外部から入力される。また、前述したように、第1変換部110には、信号成分分離部101からU成分の画像信号が入力される。
【0021】
第1変換部110は、複数の第1周波数成分で構成され電子透かしのデータ量に応じた数(例えば、透かしデータのビット数と同数)の第1周波数成分のベクトル方向が第1方向である第1周波数信号を周波数逆変換してU成分の画像信号を得る。後述するように、第1周波数信号は、信号成分分離部101から入力されたU成分の画像信号を基に生成される。即ち、第1変換部110は、信号成分分離部101から入力されたU成分の画像信号を、電子透かしのデータ量に合わせてベクトル調整を施したU成分の画像信号に変換する。
【0022】
第2変換部120には、電子透かしのデータ(透かしデータ)が外部から入力される。また、前述したように、第2変換部120には、信号成分分離部101からV成分の画像信号が入力される。
【0023】
第2変換部120は、複数の第2周波数成分で構成され電子透かしのデータ量に応じた数(例えば、透かしデータのビット数と同数)の第2周波数成分のベクトル方向が前述した第1方向に対して電子透かしのデータ値に応じた側(例えば、透かしデータのビット値が0であればプラス側、1であればマイナス側)に所定角度(例えば、90度)ずれた第2方向である第2周波数信号を周波数逆変換してV成分の画像信号を得る。後述するように、第2周波数信号は、信号成分分離部101から入力されたV成分の画像信号を基に生成される。即ち、第2変換部120は、信号成分分離部101から入力されたV成分の画像信号を、電子透かしのデータ量及びデータ値に合わせてベクトル調整を施したV成分の画像信号に変換する。
【0024】
合成部130は、第1変換部110で得られたU成分の画像信号と、第2変換部120で得られたV成分の画像信号と、信号成分分離部101から入力されたY成分の画像信号とを合成して出力する。これにより、入力画像に電子透かしを埋め込んだ出力画像が得られる。
【0025】
以下では、第1変換部110の詳細について説明する。
【0026】
第1変換部110は、周波数変換部102、ベクトル調整部104、周波数逆変換部106を有する。
【0027】
周波数変換部102は、信号成分分離部101で得られたU成分の画像信号を周波数信号に変換する。例えば、
図2に示すように、周波数変換部102は、二次元フーリエ変換を用いて、信号成分分離部101で得られたU成分の画像信号を二次元フーリエ係数に変換し、この二次元フーリエ係数を周波数信号として出力する。この場合、周波数信号は、周波数空間内の座標ごとに実部x及び虚部yの2つの要素を周波数成分として持つ。各周波数成分は、これら2つの要素で構成されるベクトル(又は複素数x+yi)で表すことができる。
【0028】
ベクトル調整部104は、周波数変換部102で得られた周波数信号を構成する複数の周波数成分のうち、電子透かしのデータ量に応じた数(例えば、透かしデータのビット数と同数)の周波数成分のベクトル方向を調整して、前述した第1周波数信号を生成する。例えば、
図2に示すように、ベクトル調整部104は、U成分の周波数空間内の特定座標に位置する周波数成分のベクトルについて、ベクトルの方向を予め設定した一定方向(即ち、第1方向)に揃えたベクトルU(x
u,y
u)を得る。特定座標は、透かしデータのビット数と同じ数だけ設定される。
【0029】
周波数逆変換部106は、ベクトル調整部104により生成された第1周波数信号をU成分の画像信号に逆変換する。例えば、周波数逆変換部106は、周波数変換部102と逆の二次元フーリエ変換により、U成分の周波数信号(即ち、第1周波数信号)を画像信号(画素信号)に戻す。
【0030】
以下では、第2変換部120の詳細について説明する。
【0031】
第2変換部120は、周波数変換部103、ベクトル調整部105、周波数逆変換部107を有する。
【0032】
周波数変換部103は、信号成分分離部101で得られたV成分の画像信号を周波数信号に変換する。例えば、
図2に示すように、周波数変換部103は、周波数変換部102と同様の二次元フーリエ変換を用いて、信号成分分離部101で得られたV成分の画像信号を二次元フーリエ係数に変換し、この二次元フーリエ係数を周波数信号として出力する。
【0033】
ベクトル調整部105は、周波数変換部103で得られた周波数信号を構成する複数の周波数成分のうち、電子透かしのデータ量に応じた数(例えば、透かしデータのビット数と同数)の周波数成分のベクトル方向を調整して、前述した第2周波数信号を生成する。例えば、
図2に示すように、ベクトル調整部105は、V成分の周波数空間内の特定座標と同一の座標に位置する周波数成分のベクトルについて、ベクトルの方向を一定方向(即ち、第2方向)に揃えたベクトルV
0(x
v0,y
v0)又はV
1(x
v1,y
v1)を得る。特定座標は、ベクトル調整部104で用いられた特定座標と同一である。揃える方向については、入力された透かしデータの各ビット値によって変わる。特定座標ごとに、その特定座標に対応するビット値が0の場合には、ベクトル調整部104で揃えられたU成分の周波数成分のベクトル方向に対して、右回りに90度回転した方向にV成分の周波数成分のベクトル方向が揃えられる。その特定座標に対応するビット値が1の場合には、ベクトル調整部104で揃えられたU成分の周波数成分のベクトル方向に対して、左回りに90度回転した方向にV成分の周波数成分のベクトル方向が揃えられる。
【0034】
本実施の形態の変形例(以下、第1変形例という)として、ベクトル調整部105は、予め設定した一定方向へベクトルを揃えるのではなく、特定座標に対応するビット値が0の場合には、周波数変換部102より得られた同一座標のU成分の周波数成分のベクトル方向に対して、右回りに90度回転した方向にV成分の周波数成分のベクトル方向を揃え、また、その特定座標に対応するビット値が1の場合には、周波数変換部102より得られた同一座標のU成分の周波数成分のベクトル方向に対して、左回りに90度回転した方向にV成分の周波数成分のベクトル方向を揃えるように構成することができる。その場合、ベクトル調整部104ではU成分の周波数成分のベクトル調整は行わないようにしても、同等の効果が得られる。つまり、この第1変形例では、ベクトル調整部104を省略することができる。この第1変形例において、周波数変換部102の出力は、ベクトル調整部104(ベクトル調整部104を省略する場合は周波数逆変換部106)だけでなく、ベクトル調整部105へも渡される。なお、第1変形例では、周波数変換部102から出力されるU成分の周波数成分のベクトル方向を見て、ベクトル調整部105が同一座標のV成分の周波数成分のベクトル方向を補正するが、さらなる変形例(以下、第2変形例という)として、周波数変換部103から出力されるV成分の周波数成分のベクトル方向を見て、ベクトル調整部104が同一座標のU成分のベクトル方向を補正するように構成することができる。この場合は、ベクトル調整部105でV成分の周波数成分のベクトル調整を行わないようにしてもよいし、ベクトル調整部105を省略してもよい。この第2変形例において、周波数変換部103の出力は、ベクトル調整部105(ベクトル調整部105を省略する場合は周波数逆変換部107)だけでなく、ベクトル調整部104へも渡される。
【0035】
周波数逆変換部107は、ベクトル調整部105により生成された第2周波数信号をV成分の画像信号に逆変換する。例えば、周波数逆変換部107は、周波数変換部103と逆の二次元フーリエ変換により、V成分の周波数信号(即ち、第2周波数信号)を画像信号(画素信号)に戻す。
【0036】
以下では、合成部130の詳細について説明する。
【0037】
合成部130は、信号成分合成部108を有する。
【0038】
信号成分合成部108は、周波数逆変換部106から出力されるU成分の画像信号と、周波数逆変換部107から出力されるV成分の画像信号と、信号成分分離部101から入力されたY成分の画像信号とを合成して出力画像を得る。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態では、電子透かし埋め込み装置100が、以下の方法により画像に電子透かしを埋め込む。
・元画像(若しくは映像フレーム)内の2つの信号成分(例えば、U成分とV成分)を各々周波数変換(フーリエ変換等)した信号について、周波数空間内の特定座標において、第1成分のベクトル(周波数成分の実部と虚部とをそれぞれ要素に持つ二次元ベクトル)と第2成分のベクトルとが直交するように係数を変更する(例えば、
図2参照)。
・値が1のビットを埋め込む場合は、二次元平面上で第1成分のベクトルが第2成分のベクトルに対して左回りに90度回転、値が0のビットを埋め込む場合は、右回りに90度回転するように設定する。なお、ビットの値(0又は1)とベクトルの回転方向(右又は左)との対応関係は逆でもよい。また、ベクトルの回転角度は90度でなくてもよい。ただし、ベクトルの回転角度が90度に近いほど、同座標における第1成分のベクトルと第2成分のベクトルとの外積が大きくなる。即ち、同座標における第1成分のベクトルと第2成分のベクトルとのなす平行四辺形(回転角度が90度の場合は四角形)の面積が大きくなる。よって、電子透かしの検出時に、当該座標にピークが発生する確度が上がる。
【0040】
上記の方法により、従来技術のような、ピーク点を示すための電子透かしの埋め込みとビット情報を示すための電子透かしの埋め込みという二重の埋め込みが不要となる。即ち、ビット情報を示すための電子透かしとは独立した、画像補正に必要なピーク点を示すための電子透かしの埋め込みを回避できる。したがって、本実施の形態によれば、電子透かしの埋め込み時の画質劣化を抑制することができる。
【0041】
次に、本実施の形態による電子透かしの検出について説明する。
【0042】
図3は、本実施の形態に係る電子透かし検出装置200の構成を示すブロック図である。
図4は、電子透かし検出装置200が入力画像に埋め込まれた電子透かしを検出する電子透かし検出処理の一例を示す図である。
【0043】
図3において、電子透かし検出装置200は、信号成分分離部201、第1周波数変換部202、第2周波数変換部203、ベクトル外積計算部204、判定部210を備える。
【0044】
信号成分分離部201には、入力画像のデータとして、電子透かし埋め込み装置100で得られた出力画像のデータが外部から入力される。
【0045】
信号成分分離部201は、入力画像のデータからU成分の画像信号(画素信号)とV成分の画像信号(画素信号)とを分離する。電子透かし埋め込み装置100の信号成分分離部101とは異なり、Y成分の画像信号を分離する必要はない。信号成分分離部201は、U成分の画像信号を第1周波数変換部202に入力し、V成分の画像信号を第2周波数変換部203に入力する。
【0046】
第1周波数変換部202は、信号成分分離部201で得られたU成分の画像信号を周波数変換して第1周波数信号を得る。
【0047】
第2周波数変換部203は、信号成分分離部201で得られたV成分の画像信号を周波数変換して第2周波数信号を得る。
【0048】
ベクトル外積計算部204は、第1周波数変換部202で得られた第1周波数信号を構成する複数の第1周波数成分と、第2周波数変換部203で得られた第2周波数信号を構成する複数の第2周波数成分とについて、周波数空間内の座標が同じ第1周波数成分と第2周波数成分とのベクトル外積を計算する。例えば、
図4に示すように、ベクトル外積計算部204は、第1周波数変換部202の出力である第1周波数信号と第2周波数変換部203の出力である第2周波数信号とにおいて、互いの座標が同一な周波数成分のベクトル同士の外積(二次元ベクトルを三次元ベクトルにマッピングした(x,y成分はそのままでz成分を0にする)ものの外積)を計算し、そのz成分を当該座標での計算結果(ベクトル外積データ)とする。
【0049】
判定部210は、ベクトル外積計算部204で計算されたベクトル外積の絶対値に基づいて、周波数空間内の座標(例えば、全ての座標)のうち、電子透かしのデータ量に応じた数(例えば、透かしデータのビット数と同数)の座標(前述した特定座標に相当)を選択する。判定部210は、選択した座標ごとに、ベクトル外積計算部204で計算されたベクトル外積の正負に基づいて、電子透かしのデータ値(例えば、透かしデータのビット値)を判定する。
【0050】
以下では、判定部210の詳細について説明する。
【0051】
判定部210は、ピーク抽出部205、ビット判定部206を有する。
【0052】
ピーク抽出部205は、ベクトル外積計算部204の出力であるベクトル外積データの座標空間内において、絶対値がピークとなる座標(埋め込みビット数分のピーク座標)を抽出する。ピーク抽出部205は、その手段として、例えば、電子透かし埋め込み装置100で設定された複数の特定座標に対して、適宜、ベクトルの拡大及び縮小、予め設定された角度ずつの回転の処理を行いながら、座標値の絶対値合計を計算し、それが最大になる位置を算出する。これにより、入力画像が拡大又は縮小されたり、回転されたりしていても、電子透かしを検出することが可能となる。なお、入力画像が平行移動されていても影響はないため、ベクトルの平行移動の処理は不要である。
【0053】
ビット判定部206は、ピーク抽出部205で得られたピーク座標の各々に対して、ベクトル外積データの座標値の正負を見て、正であればビットの値が1、負であればビットの値が0であると判定する。ビット判定部206は、全てのピーク座標のビット判定結果を集めて、電子透かしの検出データとして出力する。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態では、電子透かし検出装置200が、以下の方法により画像から電子透かしを検出する。
・検出対象画像(若しくは映像フレーム)の2つの信号成分(例えば、U成分とV成分)を各々周波数変換(フーリエ変換等)した信号において、同一座標同士の第1成分のベクトルと第2成分のベクトルとの外積(のz成分、即ち「外積値」)を計算し、ベクトル外積データを得る(例えば、
図4参照)。
・互いのベクトルのなす角が90度に近くなるほど、外積値(の絶対値)は大きくなる。また、第1成分のベクトルに対し、第2成分のベクトルが左回りなら外積値は正となり、右回りなら負になる。この性質を利用して、ベクトル外積データの絶対値がピークとなる座標を抽出し、絶対値ピーク座標において、外積値の正負よりビット値が0か1かを判定する。
【0055】
上記の方法により、従来技術のような、画像の「ずれ」補正、電子透かしの検出という二段階の処理が不要となる。即ち、電子透かしの検出の前処理として画像の「ずれ」補正の処理が不要で、画像の周波数変換データから直接電子透かしの検出が可能となる。したがって、本実施の形態によれば、電子透かしの検出時の処理量を削減することができる(処理が高速化される)。また、画像の「ずれ」補正の処理に伴う画像劣化を原因とした検出精度の低下を防ぐことができる。
【0056】
実施の形態2.
本実施の形態について、主に実施の形態1との差異を説明する。
【0057】
実施の形態1による電子透かしの埋め込みでは、入力画像のデータを基にして周波数ベクトルを調整するが、本実施の形態による電子透かしの埋め込みでは、予め生成された画像を基にして周波数ベクトルを調整することで入力画像とは独立した電子透かし信号を生成し、その信号を入力画像に重畳する。
【0058】
以下、本実施の形態による電子透かしの埋め込みについて説明する。
【0059】
図5は、本実施の形態に係る電子透かし埋め込み装置100aの構成を示すブロック図である。
【0060】
図5において、電子透かし埋め込み装置100aは、実施の形態1に係る電子透かし埋め込み装置100と同様の信号成分分離部101、第1変換部110、第2変換部120のほか、合成部130a、画像生成部140を備える。
【0061】
画像生成部140は、入力画像とは別の画像のデータを生成する。この別の画像は、任意の画像でよい。好適な画像の一例としては、全画素値が均一の画像(即ち、全ての画素でU成分が同一、V成分が同一、Y成分が0となる画像)が挙げられる。
【0062】
信号成分分離部101には、入力画像とは別の画像のデータが画像生成部140から入力される。
【0063】
信号成分分離部101は、入力画像とは別の画像のデータからU成分の画像信号(画素信号)とV成分の画像信号(画素信号)とY成分の画像信号とを分離する。信号成分分離部101は、実施の形態1と同様に、U成分の画像信号を第1変換部110に入力し、V成分の画像信号を第2変換部120に入力し、Y成分の画像信号を合成部130aに入力する。
【0064】
第1変換部110及び第2変換部120の動作については、実施の形態1のものと同様である。
【0065】
合成部130aは、第1変換部110で得られたU成分の画像信号と、第2変換部120で得られたV成分の画像信号と、信号成分分離部101から入力されたY成分の画像信号とを合成する。そして、合成部130aは、得られた画像と、入力画像とを合成して出力する。これにより、入力画像に電子透かしを埋め込んだ出力画像が得られる。
【0066】
以下では、合成部130aの詳細について説明する。
【0067】
合成部130aは、信号成分合成部108、画像重畳部109を有する。
【0068】
信号成分合成部108は、実施の形態1と同様に、周波数逆変換部106から出力されるU成分の画像信号と、周波数逆変換部107から出力されるV成分の画像信号と、信号成分分離部101から入力されたY成分の画像信号とを合成する。これにより、画像生成部140により生成された画像(即ち、入力画像とは別の画像)に電子透かしを埋め込んだ画像が得られる。信号成分合成部108は、得られた画像を画像重畳部109に対して出力する。
【0069】
画像重畳部109は、入力画像のデータに対して、信号成分合成部108から出力された画像のデータを重畳し(即ち、画素値加算を行い)、出力画像を生成する。
【0070】
本実施の形態では、実施の形態1と同様の効果が得られる。さらに、例えば、入力画像が電子透かし埋め込み装置100aに入力される前に、これとは別の画像に予め電子透かしを埋め込んでおき、入力画像が入力されると、即座に画像重畳部109で出力画像を生成するということもできる。そのため、電子透かしの埋め込み時の処理を高速化できる。
【0071】
なお、信号成分合成部108は、合成した画像の信号を増幅してから、当該画像を画像重畳部109に対して出力してもよい。そのようにすることで、電子透かしの検出精度を高めることができる。
【0072】
また、画像重畳部109は、信号成分合成部108から出力された画像と、入力画像とを画素ごとに比較し、対応する画素間でU成分、V成分又はY成分の差分が閾値を超えている場合に、差分が閾値を超えないように補正処理を行ってもよい。そのようにすることで、画像劣化を抑えることができる。
【0073】
また、信号成分分離部101には、入力画像とは別の画像のデータが外部から入力されてもよい。その場合、画像生成部140は省略することができる。
【0074】
図6は、本発明の実施の形態に係る電子透かし埋め込み装置100,100a及び電子透かし検出装置200のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0075】
図6において、電子透かし埋め込み装置100,100a及び電子透かし検出装置200は、それぞれコンピュータであり、出力装置910、入力装置920、記憶装置930、処理装置940といったハードウェアを備える。ハードウェアは、電子透かし埋め込み装置100,100a及び電子透かし検出装置200の各部(本発明の実施の形態の説明において「部」として説明するもの)によって利用される。
【0076】
出力装置910は、例えば、LCD(Liquid・Crystal・Display)等の表示装置、プリンタ、通信モジュール(通信回路等)である。出力装置910は、本発明の実施の形態の説明において「部」として説明するものによってデータ、情報、信号の出力(送信)のために利用される。
【0077】
入力装置920は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、通信モジュール(通信回路等)である。入力装置920は、本発明の実施の形態の説明において「部」として説明するものによってデータ、情報、信号の入力(受信)のために利用される。
【0078】
記憶装置930は、例えば、ROM(Read・Only・Memory)、RAM(Random・Access・Memory)、HDD(Hard・Disk・Drive)、SSD(Solid・State・Drive)である。記憶装置930には、プログラム931、ファイル932が記憶される。プログラム931には、本発明の実施の形態の説明において「部」として説明するものの処理(機能)を実行するプログラムが含まれる。ファイル932には、本発明の実施の形態の説明において「部」として説明するものによって演算、加工、読み取り、書き込み、利用、入力、出力等が行われるデータ、情報、信号(値)等が含まれる。
【0079】
処理装置940は、例えば、CPU(Central・Processing・Unit)である。処理装置940は、バス等を介して他のハードウェアデバイスと接続され、それらのハードウェアデバイスを制御する。処理装置940は、記憶装置930からプログラム931を読み出し、プログラム931を実行する。処理装置940は、本発明の実施の形態の説明において「部」として説明するものによって演算、加工、読み取り、書き込み、利用、入力、出力等を行うために利用される。
【0080】
本発明の実施の形態の説明において「部」として説明するものは、「部」を「回路」、「装置」、「機器」に読み替えたものであってもよい。また、本発明の実施の形態の説明において「部」として説明するものは、「部」を「工程」、「手順」、「処理」に読み替えたものであってもよい。即ち、本発明の実施の形態の説明において「部」として説明するものは、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせで実現される。ソフトウェアは、プログラム931として、記憶装置930に記憶される。プログラム931は、本発明の実施の形態の説明において「部」として説明するものとしてコンピュータを機能させるものである。或いは、プログラム931は、本発明の実施の形態の説明において「部」として説明するものの処理をコンピュータに実行させるものである。
【0081】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、これらの実施の形態のうち、いくつかを組み合わせて実施しても構わない。或いは、これらの実施の形態のうち、いずれか1つ又はいくつかを部分的に実施しても構わない。例えば、これらの実施の形態の説明において「部」として説明するもののうち、いずれか1つのみを採用してもよいし、いくつかの任意の組み合わせを採用してもよい。なお、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【解決手段】電子透かし埋め込み装置100は、元画像(若しくは映像フレーム)内の2つの信号成分(例えば、U成分とV成分)を各々周波数変換(フーリエ変換等)した信号について、周波数空間内の特定座標において、第1成分のベクトル(周波数成分の実部と虚部とをそれぞれ要素に持つ二次元ベクトル)と第2成分のベクトルとが直交するように係数を変更する。値が1のビットを埋め込む場合は、二次元平面上で第1成分のベクトルが第2成分のベクトルに対して左回りに90度回転、値が0のビットを埋め込む場合は、右回りに90度回転するように設定する。