特許第5728173号(P5728173)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5728173
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】制振装置、鉄塔及び構造物
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20150514BHJP
   E04H 12/00 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   E04H9/02 351
   E04H9/02 321B
   E04H12/00 B
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2010-146900(P2010-146900)
(22)【出願日】2010年6月28日
(65)【公開番号】特開2012-7451(P2012-7451A)
(43)【公開日】2012年1月12日
【審査請求日】2013年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】591115981
【氏名又は名称】石丸 辰治
(73)【特許権者】
【識別番号】504004083
【氏名又は名称】株式会社i2S2
(73)【特許権者】
【識別番号】000221546
【氏名又は名称】東電設計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】石丸 辰治
(72)【発明者】
【氏名】公塚 正行
(72)【発明者】
【氏名】真下 貢
【審査官】 渋谷 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−229663(JP,A)
【文献】 特開2009−203764(JP,A)
【文献】 特開2008−002165(JP,A)
【文献】 特開平04−247174(JP,A)
【文献】 実開昭60−110509(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1連結部に回転可能に連結された一対の第1腕部材と、
第2連結部に回転可能に連結された一対の第2腕部材と、
構造物の第1構造部である、鉄塔の脚部の側面の上側に固定される取付部を備え、前記第1腕部材の一方と前記第2腕部材の一方を回転可能に連結する第1連結手段と、
外乱により前記第1構造部と相対移動する前記構造物の第2構造部である、前記鉄塔の前記脚部の前記側面の下側に固定される取付部を備え、前記第1腕部材の他方と前記第2腕部材の他方を回転可能に連結する第2連結手段と、
前記第1連結部と前記第2連結部を外側に折り曲げて前記第1連結部と前記第2連結部との間に回転可能に連結され、前記第1連結部と前記第2連結部の距離が変化したとき、前記変化に伴う軸体の直線変位を、回転慣性質量の前記軸体回りの回転変位に変換する回転ダンパーと、
を有する制振装置。
【請求項2】
一対の前記第1腕部材と一対の前記第2腕部材は同一平面上に配置され、前記取付部は、前記平面と平行な取付面を有し、
前記回転ダンパーは、前記軸体と、前記軸体が挿入される回転体と、前記回転体を回転可能に保持する保持体と、前記軸体の外周面と前記回転体の内周面とに設けられ、前記軸体の軸線方向の直線変位を前記回転体の前記軸体回りの回転変位に変換する螺合手段と、前記回転体と一体となって前記軸体の軸線回りに回転する回転慣性質量体と、を有し、
前記軸体を前記第1連結部に連結し、前記保持体を前記第2連結部に連結した請求項1に記載の制振装置。
【請求項3】
前記回転体の外周面と前記保持体の内周面との間には、前記回転体の回転に抵抗を与える抵抗体が設けられている請求項2に記載の制振装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の制振装置を、外乱によって相対移動する脚部の上部と下部であり、前記脚部の両側に配置し、請求項1〜3のいずれか1項に記載の第1連結部同士及び第2連結部同士を面外拘束部材で連結した鉄塔。
【請求項5】
第1連結部に回転可能に連結された一対の第1腕部材と、
第2連結部に回転可能に連結された一対の第2腕部材と、
構造物の第1構造部である、超高層構造物の柱の側面の上側に固定される取付部を備え、前記第1腕部材の一方と前記第2腕部材の一方を回転可能に連結する第1連結手段と、
外乱により前記第1構造部と相対移動する前記構造物の第2構造部である、前記超高層構造物の前記柱の前記側面の下側に固定される取付部を備え、前記第1腕部材の他方と前記第2腕部材の他方を回転可能に連結する第2連結手段と、
前記第1連結部と前記第2連結部を外側に折り曲げて前記第1連結部と前記第2連結部との間に回転可能に連結され、前記第1連結部と前記第2連結部の距離が変化したとき、前記変化に伴う軸体の直線変位を、回転慣性質量の前記軸体回りの回転変位に変換する回転ダンパーと、
を有する制振装置。
【請求項6】
一対の前記第1腕部材と一対の前記第2腕部材は同一平面上に配置され、前記取付部は、前記平面と平行な取付面を有し、
前記回転ダンパーは、前記軸体と、前記軸体が挿入される回転体と、前記回転体を回転可能に保持する保持体と、前記軸体の外周面と前記回転体の内周面とに設けられ、前記軸体の軸線方向の直線変位を前記回転体の前記軸体回りの回転変位に変換する螺合手段と、 前記回転体と一体となって前記軸体の軸線回りに回転する回転慣性質量体と、を有し、
前記軸体を前記第1連結部に連結し、前記保持体を前記第2連結部に連結した請求項5に記載の制振装置。
【請求項7】
前記回転体の外周面と前記保持体の内周面との間には、前記回転体の回転に抵抗を与える抵抗体が設けられている請求項6に記載の制振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振装置、鉄塔及び構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物は、地震や風等の外力によって振動し、柱と梁とで囲まれた架構に変形が生じる。この変形を抑えるために(制振するために)、架構内にエネルギーを吸収する制振用ダンパーを設置した制振装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
更に、制振用ダンパーの効果を飛躍的に向上させるために、トグル機構を用いた制振装置が提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−256045号公報
【特許文献2】特開平10−169244号公報
【特許文献3】特開2008−002165号公報 しかし、これらの制振用ダンパーは、いずれもトグル機構を使用しているため、構造物への取り付け場所に制限がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実に鑑み、構造物への取り付け場所の自由度が大きい制振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係る制振装置は、 第1連結部に回転可能に連結された一対の第1腕部材と、第2連結部に回転可能に連結された一対の第2腕部材と、構造物の第1構造部である、鉄塔の脚部の側面の上側に固定される取付部を備え、前記第1腕部材の一方と前記第2腕部材の一方を回転可能に連結する第1連結手段と、外乱により前記第1構造部と相対移動する前記構造物の第2構造部である、前記鉄塔の前記脚部の前記側面の下側に固定される取付部を備え、前記第1腕部材の他方と前記第2腕部材の他方を回転可能に連結する第2連結手段と、前記第1連結部と前記第2連結部を外側に折り曲げて前記第1連結部と前記第2連結部との間に回転可能に連結され、前記第1連結部と前記第2連結部の距離が変化したとき、前記変化に伴う軸体の直線変位を、回転慣性質量の前記軸体回りの回転変位に変換する回転ダンパーと、を有することを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、外乱によって構造物の第1構造部と第2構造部が相対移動したとき、構造物の第1構造部に固定された第1連結手段と、構造物の第2構造部に固定された第2連結手段が相対移動する。そして、第1腕部材と第2腕部材が回転可能に連結されているため、第1連結手段と第2連結手段の相対移動により、外側に折り曲げて連結された第1連結部と第2連結部の距離が変化する。
【0008】
第1連結部と第2連結部の間には、第1連結部と第2連結部の距離の変化に伴う軸体の直線変位を、回転慣性質量の回転変位に変換する回転ダンパーが取り付けられており、回転慣性質量が回転して構造物の振動を抑制する。
本実施の形態によれば、第1連結手段の取付部が第1構造部の側面に固定され、第2連結手段の取付部が第2構造部の側面にそれぞれ固定される。このとき、第1構造部の側面及び第2構造部の側面への取付部の固定作業は、横方向に向いた作業となる。この結果、例えば、水平部材の底面に下方から固定する作業に比べ作業性が改善される。また、さらに、回転ダンパーの両端部が、第1腕部材と第2腕部材に取り付けられているため、構造物への制振装置の取り付けの自由度が大きい。
鉄塔の脚部の上部に第1構造部が、下部に第2構造部が設けられ、第1構造部に第1連結手段が固定され、第2構造部に第2連結手段が固定される。これにより、地震によって鉄塔に曲げ変形が発生しても、鉄塔の脚部の上部と下部の間に取り付けられた制振装置が、鉄塔の脚部の相対移動を抑制し鉄塔の振動を抑制することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の制振装置において、一対の前記第1腕部材と一対の前記第2腕部材は同一平面上に配置され、前記取付部は、前記平面と平行な取付面を有し、前記回転ダンパーは、前記軸体と、前記軸体が挿入される回転体と、前記回転体を回転可能に保持する保持体と、前記軸体の外周面と前記回転体の内周面とに設けられ、前記軸体の軸線方向の直線変位を前記回転体の前記軸体回りの回転変位に変換する螺合手段と、前記回転体と一体となって前記軸体の軸線回りに回転する回転慣性質量体と、を有し、前記軸体を前記第1連結部に連結し、前記保持体を前記第2連結部に連結したことを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、取付部の取付面が、第1腕部材と第2腕部材により形成される平面と平行とされている。これにより、第1腕部材と第2腕部材を、第1構造部の側面及び第2構造部の側面と平行な平面上で、第1連結部及び第2連結部を中心に回転させることができる。
また、第1連結部と第2連結部の距離が変化したとき、第1連結部と第2連結部の距離の変化に伴い軸体が直線変位する。軸体が直線変位すると、軸体と螺合手段で接合された回転体が回転変位を開始する。このとき、回転慣性質量体も回転体と一体となって軸体回りに回転する。この回転体と回転慣性質量体の回転変位により、軸体の直線変位が抑制され、構造物の振動が抑制される。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の制振装置において、前記回転体の外周面と前記保持体の内周面との間には、前記回転体の回転に抵抗を与える抵抗体が設けられていることを特徴としている。
この抵抗体により、回転体と回転慣性質量体の回転変位による回転エネルギーを短時間で吸収できる。この結果、外乱に対する応答値が小さくなる。
【0014】
請求項に記載の発明に係る鉄塔は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の制振装置を、外乱によって相対移動する脚部の上部と下部であり、前記脚部の両側に配置し、請求項1〜3のいずれか1項に記載の第1連結部同士及び第2連結部同士を面外拘束部材で連結したことを特徴としている。
【0015】
請求項に記載の発明によれば、2つの制振装置を同じ脚部の両側に、脚部を挟んで取り付け、更に、第1連結部同士及び第2連結部同士を面外拘束部材で連結している。これにより、面外方向への移動が面外拘束部材で抑制され、制振装置の制振効果を保証できる。
【0016】
請求項に記載の発明に係る制振装置は、第1連結部に回転可能に連結された一対の第1腕部材と、第2連結部に回転可能に連結された一対の第2腕部材と、構造物の第1構造部である、超高層構造物の柱の側面の上側に固定される取付部を備え、前記第1腕部材の一方と前記第2腕部材の一方を回転可能に連結する第1連結手段と、外乱により前記第1構造部と相対移動する前記構造物の第2構造部である、前記超高層構造物の前記柱の前記側面の下側に固定される取付部を備え、前記第1腕部材の他方と前記第2腕部材の他方を回転可能に連結する第2連結手段と、前記第1連結部と前記第2連結部を外側に折り曲げて前記第1連結部と前記第2連結部との間に回転可能に連結され、前記第1連結部と前記第2連結部の距離が変化したとき、前記変化に伴う軸体の直線変位を、回転慣性質量の前記軸体回りの回転変位に変換する回転ダンパーと、を有することを特徴としている。
【0017】
請求項に記載の発明によれば、圧縮力又は引張力が作用する柱の上部と下部に第1構造部と第2構造部が設けられ、第1構造部に第1連結手段が固定され、第2構造部に第2連結手段が固定される。これにより、地震によって曲げ変形が発生する構造物において、柱に圧縮力又は引張力が作用しても、柱の上部と下部の間に取り付けた制振装置が、柱に作用する圧縮力又は引張力を吸収し、構造物の振動を抑制することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の制振装置において、一対の前記第1腕部材と一対の前記第2腕部材は同一平面上に配置され、前記取付部は、前記平面と平行な取付面を有し、前記回転ダンパーは、前記軸体と、前記軸体が挿入される回転体と、前記回転体を回転可能に保持する保持体と、前記軸体の外周面と前記回転体の内周面とに設けられ、前記軸体の軸線方向の直線変位を前記回転体の前記軸体回りの回転変位に変換する螺合手段と、前記回転体と一体となって前記軸体の軸線回りに回転する回転慣性質量体と、を有し、前記軸体を前記第1連結部に連結し、前記保持体を前記第2連結部に連結したことを特徴としている。
請求項6に記載の発明によれば、取付部の取付面が、第1腕部材と第2腕部材により形成される平面と平行とされている。これにより、第1腕部材と第2腕部材を、第1構造部の側面及び第2構造部の側面と平行な平面上で、第1連結部及び第2連結部を中心に回転させることができる。
また、第1連結部と第2連結部の距離が変化したとき、第1連結部と第2連結部の距離の変化に伴い軸体が直線変位する。軸体が直線変位すると、軸体と螺合手段で接合された回転体が回転変位を開始する。このとき、回転慣性質量体も回転体と一体となって軸体回りに回転する。この回転体と回転慣性質量体の回転変位により、軸体の直線変位が抑制され、構造物の振動が抑制される。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の制振装置において、前記回転体の外周面と前記保持体の内周面との間には、前記回転体の回転に抵抗を与える抵抗体が設けられていることを特徴としている。
この抵抗体により、回転体と回転慣性質量体の回転変位による回転エネルギーを短時間で吸収できる。この結果、外乱に対する応答値が小さくなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、上記構成としてあるので、構造物への取り付け場所の自由度が大きい制振装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る制振装置の基本構成を示す図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る回転ダンパーの基本構成を示す断面図である。
図3】本発明の第1の実施の形態に係る回転ダンパーの基本構成を示す断面図である。
図4】本発明の第1の実施の形態に係る制振装置の上下倍率の試算例を示す図である。
図5】本発明の第1の実施の形態に係る制振装置の水平倍率の試算例を示す図である。
図6】本発明の第2の実施の形態に係る制振装置を備えた鉄塔の基本構成を示す図である。
図7】本発明の第2の実施の形態に係る制振装置を備えた鉄塔の曲げ変形を説明する図である。
図8】本発明の第2の実施の形態に係る制振装置を備えた鉄塔の他の構成を示す図である。
図9】本発明の第2の実施の形態に係る制振装置を備えた鉄塔の他の構成を示す図である。
図10】本発明の第3の実施の形態に係る制振装置を備えた構造物の基本構成を示す図である。
図11】本発明の第4の実施の形態に係る制振装置を備えた構造物の基本構成を示す図である。
図12】本発明の第5の実施の形態に係る制振装置を備えた構造物の基本構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、第1の実施の形態に係る制振装置10は、第1連結部22で回転可能に連結された鋼製の2本の第1アーム12、14と、第2連結部26で回転可能に連結された鋼製の2本の第2アーム16、18を有している。第1連結部22と第2連結部26は、例えばピン接合とされ、それぞれのアームの回転を確保している。
第1アーム12の第1連結部22側の端部は平板状とされ、第1連結部22を構成する貫通孔が設けられている。先端部は貫通孔を中心にして内側に向けてL字状に折り曲げられ、折り曲げられた先端部36にはピン接合用の貫通孔が設けられている。
同様に、第2アーム18の第2連結部26側の端部も平板状とされ、第2連結部26を構成する貫通孔が設けられている。先端部は貫通孔を中心にして内側に向けてL字状に折り曲げられ、折り曲げられた先端部38にはピン接合用の貫通孔が設けられている。
【0025】
第1アーム12と第2アーム18の他端は、第1取付金具21と、それぞれ回転可能にピン接合20されている。また、第1アーム14と第2アーム16の他端は、第2取付金具25と、それぞれ回転可能にピン接合24されている。
【0026】
第1連結部22と第2連結部26の間には、第1連結部22と第2連結部26を外側に押し広げて、回転ダンパー100が取り付けられている。回転ダンパー100の一方の端部は、第1アーム12の先端部36と貫通孔を利用してピン37でピン接合されている。回転ダンパー100の他方の端部は、第2アーム18の先端部38と貫通孔を利用してピン39でピン接合されている。
【0027】
これにより、第1アーム12、14と第2アーム16、18で、略菱形の枠体30が形成される。枠体30の対向する第1取付金具21と第2取付金具25は、後述する構造物の第1固定部及び第2固定部に取り付けられ、制振装置10を構造物に固定する。
【0028】
枠体30が略菱形とされていることから、第1取付金具21と第2取付金具25の距離Hが変化したとき、第1連結部22と第2連結部26の距離Wも変化する。
【0029】
次に、回転ダンパー100について説明する。
図2及び図3(A)の断面図に示すように、回転ダンパー100の中心部にはシャフト102が設けられ、シャフト102は円筒状の回転体110に挿入されている。シャフト102の外周面には雄ネジ102Aが形成され、回転体110の内周面には雌ネジ110Aが形成されている。この雄ネジ102Aは雌ネジ110Aと螺合されている。
【0030】
回転体110は、一方が開口した円筒状のホルダー104の内部に回転可能に保持されている。また、回転体110は円柱部111Dと、円柱部111Dより径が大きな第一円盤部111A、第二円盤部111B、第三円盤部111Cから構成されている。
【0031】
回転体110の一方の端部はホルダー104の開口から突出しており、突出した先端部には第一円盤部111Aが形成されている。また、回転体110の他方の先端部には第三円盤部111Cが形成されている。また、ホルダー104の内部に、第二円盤部111Bと第三円盤部111Cが配置されている。
【0032】
また、第二円盤部111B、第三円盤部111Cに対応するホルダー104の両端部分には、第二円盤部111B、第三円盤部111Cが嵌る凹部114、115が形成されている。そして、凹部114、115には軸受け112、113が設けられている。このような構成により回転体110は、矢印Kで示す軸回りには回転可能であるが、矢印Sで示す軸方向への移動は規制されている。
【0033】
なお、前述したように回転ダンパー100は、枠体30の第1連結部22と第2連結部26の間に配置され、例えばシャフト102の端部101が第1アームの先端部36とピン37で連結され、ホルダー104の端部105が第2アームの先端部38とピン39で連結される。
【0034】
回転体110の第一円盤部111Aには、円盤状の回転慣性質量体120がボルト122で締結されている。回転慣性質量体120の中央部には円形の開口部120Aが形成され、この開口部120Aの中をシャフト102が通っている。なお、開口部120Aの内径はシャフト102の外径より十分に大きいので、開口部120Aとシャフト102とは接していない。また、回転体110(第一円盤部111A、第二円盤部111B、第三円盤部111C、円筒部111D)の軸心、回転慣性質量体120の軸心、シャフト102の軸心は同一軸線上にある。
【0035】
図3(C)に示すように、回転慣性質量体120の変形例として、回転慣性質量体120が半円形状の質量体120Bと、質量体120Cとの二つの部材で構成されていても良い。このような構成とすれば、回転ダンパー100を第1連結部22と第2連結部26の間に取り付けた状態のまま、質量体120B、120Cのみを着脱可能となる。
【0036】
回転ダンパー100は、上述したような構成をしているので、図2図3(A)で示すように、シャフト102が矢印Sで示すように軸方向に移動すると、シャフト102の外周面の雄ネジ102Aと回転体110の雌ネジ110Aとが螺合して、回転体110がシャフト102の周りに回転する。更に、図2図3(B)とに示すように、回転体110とボルト122で締結された回転慣性質量体120が、矢印Kで示すようにシャフト102の回りに回転する(回転体110と回転慣性質量体120とが一体(回転慣性質量と呼ぶ)となって回転する)。
【0037】
つまり、回転ダンパー100は、シャフト102の軸方向の直線変位(矢印S)を、回転慣性質量である回転慣性質量体120と回転体110の回転変位(矢印K)に変換する機構を有するダンパーとなっている。これにより、外乱でシャフト102の軸方向に直線変位が生じても、回転慣性質量体120の回転変位に変換され、それ以上の直線変位が抑制される。
【0038】
なお、図示は省略するが、回転ダンパー100のホルダー104の内周面と回転体110の円柱部111Dの外周面との間に、回転体の回転に抵抗を与える抵抗体を設ければ、回転体110と回転慣性質量体120が回転することによる回転エネルギーの吸収効果が向上し、吸収時間が短縮され応答値が小さくなる。
【0039】
このとき、ホルダー104の内周面と回転体110の円柱部111Dの外周面との間に、抵抗体として粘性体を注入すれば、質量(M)+粘性(C)の効果を持つダンパーとなる。また、ホルダー104の内周面と回転体110の円柱部111Dの外周面との間に抵抗体として、摩擦パット等を組み込めば質量(M)+剛性(K)の効果を持つダンパーとなる。更にこれらを二つ組み合わせれば、質量(M)+粘性(C)+剛性(K)の効果を持つダンパーとなり、振動方程式の全てを制御できるようになる。
【0040】
なお、ホルダー104の内周面と回転体110の円柱部111Dの外周面との間に設ける抵抗体は、回転エネルギーを吸収できれば上記以外のものであっても良い。
【0041】
次に、本実施の形態の作用について説明する。
先ず、図4を用いて、制振装置10に鉛直方向の変位yが生じた場合について説明する。
図4(A)の実線に示すように、制振装置10の第1取付金具21と第2取付金具25を上下方向に向け、上部部材32に第1取付金具21を固定し、下部部材34に第2取付金具25を固定する。このとき、第1連結部20と第3連結部22の間の距離をN1、第2連結部24と第3連結部22の間の距離をN2、第3連結部22と第4連結部26の間の距離をd1とする。
【0042】
この状態で、上部部材32を距離yだけ上方に移動(変形)させる。移動により、2点鎖線で示すように、枠体30が変形して第1連結部22と第2連結部26の間の距離d1は、狭められて距離d2となる。
【0043】
上部部材32の上下方向の移動量(上下変形量)yに対する、第1連結部22と第2連結部26の距離の変化|d1−d2|の比Rvを上下倍率としたとき、比Rvは下記(1)式で表される。なお、移動量yは正負の値をとるため、第3連結部22と第4連結部26の距離の変化は絶対値で示している。
Rv=|d1−d2|/y (1)
【0044】
図4(B)には、第1連結部20と第3連結部22の間の距離N1が4.5m、第2連結部24と第3連結部22の間の距離N2が4.5m、第3連結部22と第4連結部26の間の距離d1が4mの条件で、上下方向の変形量yを±50mmの範囲で変化させたときの上下倍率Rvを(1)式を用いて試算した結果を示している。結果から、上下倍率Rvは2前後となる。これにより、回転ダンパー100の位置(第1連結部22と第2連結部26の間)において、上下方向の変位の2倍前後の変位が生じることがわかる。
なお、上下倍率Rvの値は、制振装置10の各部の寸法により異なる値となる。制振装置10の各部の寸法を調整することで、上下倍率Rvの値を選択できる。
【0045】
次に、図5を用いて、制振装置10に水平方向の変位xが生じた場合について説明する。
図5(A)の実線に示すように、制振装置10の第1取付金具21と第2取付金具25を結ぶ線Lを鉛直線に対して45度傾斜させる。そして、上部部材32に第1取付金具21を固定し、下部部材34に第2取付金具25を固定する。このとき、第1連結部20と第3連結部22の間の距離をN1、第2連結部24と第3連結部22の間の距離をN2、第1連結部22と第2連結部26の間の距離をd1とする。
【0046】
この状態で、上部部材32を距離xだけ水平方向に移動させる。水平方向への移動により枠体30が変形し、2点鎖線で示すように第1連結部22と第2連結部26の間の距離d1は狭められ、距離d2となる。
【0047】
上部部材32の水平方向の移動量(水平変形量)xに対する、第1連結部22と第2連結部26の距離の変化|d1−d2|の比Rhを水平倍率としたとき、比Rhは下記(2)式で表される。なお、水平方向の移動量xも正負の値をとるため、第1連結部22と第2連結部26の距離の変化は絶対値で示している。
Rh=|d1−d2|/x (2)
【0048】
図5(B)には、第1連結部20と第3連結部22の間の距離N1が4.5m、第2連結部24と第3連結部22の間の距離N2が4.5m、第3連結部22と第4連結部26の間の距離d1が4mの条件で、水平方向の変形量xを±50mmの範囲で変化させたときの、水平倍率Rhを式(2)を用いて試算した結果を示している。結果から、水平倍率Rhは1.4前後となる。これにより、回転ダンパー100の位置(第1連結部22と第2連結部26の間)で、水平方向の変位の1.4倍前後の変位が生じることがわかる。
なお、水平倍率Rhの値は、制振装置10の各部の寸法により異なる値となる。制振装置10の各部の寸法を調整することで、水平倍率Rhの値を選択できる。
また、上記本試算は、制振装置10を鉛直線に対して45度傾斜させた条件で行った。この角度は1例であり、傾斜角度を調整することで水平倍率Rhの値を選択できる。
【0049】
以上説明したように、本実施の形態に係る制振装置10によれば、外乱によって構造物の上部部材32と下部部材34が相対移動したとき、上部部材32と下部部材34に取り付けられた第1取付金具21と第2取付金具25の距離も変化する。このとき、同時に発生する枠体30の変形により、第1連結部22と第2連結部26の間の距離d1が増幅されて変化し、回転ダンパー100の軸体102が直線変位を生じ、回転体110と回転慣性質量体120を回転変位させる。
【0050】
この回転変位により、上部部材32と下部部材34の相対移動(振動)が抑制される。即ち、構造物への取り付け場所は上下方向の2箇所でよく、取り付けの自由度が大きい制振装置10を提供できる。
【0051】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る制振装置を備えた鉄塔は、図6に示すように、第1の実施の形態で説明した制振装置10が、鉄塔40の脚部42に取り付けられている。
【0052】
鉄塔40は、4本の脚部42で自立しており、脚部42の間には横方向に横部材44が架け渡されている。横部材44は、鉄塔40の頂部まで所定の間隔で設けられている。
脚部42と最下部の横部材44の接合部に第1固定部46が取り付けられ、第1固定部46には、制振装置10の第1取付金具21が固定されている。
【0053】
また、脚部42と地盤に設けられた基礎50との接合部に第2固定部48が取り付けられ、第2固定部48には、制振装置10の第2取付金具25が固定されている。
これにより、制振装置10は、第1取付金具21及び第2取付金具25を上下方向に向けて脚部42の側面に固定される。
【0054】
これにより、図7に誇張して示すように、地震や強風等の外乱によって、曲げ変形が発生したとき、鉄塔40の一方の脚部42には引張力が作用し、他方の脚部42には圧縮力が作用する。この結果、第1固定部と第2固定部の距離が上下方向に相対移動する。そして、この相対移動を抑制する方向に制振装置10が作用する。即ち、引張力が作用した脚部42では引張力が減衰され、圧縮力が作用した脚部42では圧縮力が減衰される。これにより、鉄塔40の振動が抑制される。
【0055】
なお、制振装置10の固定場所は脚部42の最下部で説明したが、これに限定されることはなく、脚部42の高さ方向の途中に設けてもよい。
また、図8に示すように、脚部42を挟んで、脚部42の両側に制振装置10を接合してもよい。このとき、第1連結部22同士、第2連結部26同士を面外拘束材41で回転可能に接合する。これにより、制振装置10の面外方向への移動が抑制され、制振効果が担保される。
【0056】
更に、図9に示すように、同じ脚部42において、高さの異なる位置に制振装置10を2段に取り付けてもよい。
即ち、上述した、脚部42の最下部への制振装置10の取り付けに加えて、最下段の横部材44と、下から2番目の横部材44の間にも制振装置10を取り付ける。これにより、鉄塔40に曲げ変形が作用したとき、鉄塔40の一方の脚部42に作用する引張力、及び他方の脚部42に作用する圧縮力をより大きく減衰させることができる。
なお、2個の制振装置10の取り付け場所は、脚部42の最下部及びその上部に限定されることなく、任意の高さに取り付けることができる。更に、それぞれの取り付け位置において、脚部42を挟んで、脚部42の両側に制振装置10を接合してもよい。
本実施の形態においては、4本の脚部42で自立させた鉄塔40を用いて説明したが、これに限定されることはない。脚部42の数には関係なく、鉄塔40が自立していればよい。
【0057】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係る構造物は、図10に示すように、第1の実施の形態で説明した制振装置10が、柱54に取り付けられた超高層構造物52である。即ち、制振装置10が、第1取付金具21及び第2取付金具25を上下方向に向けて、超高層構造物52の柱54の最下階部分に取付られている。
【0058】
超高層構造物52は、図10に誇張して描かれたように、地震等の外乱によって曲げ変形を生じ、一方の柱54は引張力を受け、他方の柱54は圧縮力を受ける。そこで、引張力を受ける柱54と圧祝力を受ける柱54に、それぞれ制振装置10を取付ける。
【0059】
取り付け高さは、変形量の最も大きい、最下階部分に取り付けるのが最も望ましい。また、取り付け位置は、超高層構造物52の柱56と梁60で構成された柱梁架構に第1固定部56を取り付け、第1固定部56と第1取付金具21を固定する。そして、柱54と基礎の接合部に第2固定部58を取り付け、第2固定部58と第2取付金具25を固定する。
【0060】
これにより、地震等によって柱54に曲げ変形が発生しても、制振装置10が、柱54の引張力又は圧縮力をそれぞれ減衰させ、超高層構造物52の振動を抑制することができる。
なお、制振装置10の柱54への固定場所は、上述した柱54の最下部に限定されることなく、柱54の最下部より高い位置(中間階部分)に設けてもよい。
【0061】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態に係る構造物は、図11に示すように、第1の実施の形態で説明した制振装置10が上階の梁72と下階の梁74の間に、鉛直方向に対して傾斜して取り付けられた中低層構造物70である。
【0062】
即ち、中低層構造物70の上下階の梁のそれぞれに第1固定部と第2固定部が設けられている。例えば、第1固定部73は上階の梁72に取り付けられ、第2構造部75は下階の梁74に取り付けられている。このとき、第1固定部73と第2固定部75は、水平方向に階高に等しい距離だけ相対的にずれた位置に取り付けられている。第1固定部73には第1取付金具21が固定され、第2固定部75には第2取付金具25が固定されている。
これにより、制振装置10を、第1取付金具21と第2取付金具25を結ぶ線が鉛直栓に対して45度となるように、傾斜して取り付けることができる。
【0063】
これにより、地震等によって中低層構造物70がせん断変形し、梁72と梁74が相対移動しても、制振装置10が上下階の梁72、74の相対移動を抑制し、中低層構造物70の振動を抑制することができる。
なお、本実施の形態では、制振装置10を鉛直線に対して45度傾斜させたて取り付けたが、この角度は1例であり45度に限定されることはない。要求される制振性能から傾斜角度を選択すればよい。
また、本実施の形態では、制振装置10を上下階の梁のそれぞれに第1固定部と第2固定部を設けて取り付けたが、これに限定されることはなく、例えば、制振装置10の上部を柱の上部に、下部を梁に固定してもよい。又、制振装置10の下部を柱の下部に、上部を梁に固定してもよい。
【0064】
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態に係る構造物は、図12に示すように、第1の実施の形態で説明した制振装置10が、柱66の最下階部分の下端部と梁68の間に、鉛直方向に対して傾斜して取り付けられた高層構造物76である。
【0065】
即ち、高層構造物76の最下階の上梁に第1固定部78が取り付けられ、柱66の下部に第2固定部79が取り付けられている。即ち、上梁68の柱66から階高に相当する距離だけ室内側に離れた位置に第1固定部78が取り付けられ、第1固定部78には、制振装置10の第1取付金具21が固定されている。
そして、柱66の基礎部に第2構造部79が取り付けられ、第2構造部79には、制振装置10の第2取付金具25が固定されている。これにより、制振装置10を、第1取付金具21と第1構造部73を結ぶ線が鉛直線に対して45度に傾斜して取り付けることができる。
【0066】
このような構成とすることにより、地震等によって、高層構造物76に曲げ変形とせん断変形が同時に発生しても、制振装置10が、高層構造物76の柱54に生じる引張力、又は圧縮力を減衰させると共に、上階の梁68の相対移動を抑制する。この結果、高層構造物76の振動を抑制することができる。
なお、制振装置10の高層構造物76への取り付け場所は、上述した最下階に限定されることはなく、他の中間階の柱と梁に傾斜して設けることもできる。
また、制振装置10の取り付け角度を、鉛直線に対して45度に傾斜させた場合について説明したが、これに限定されることはなく、要求される制振性能に対応させて任意の角度で傾斜させることができる。
【符号の説明】
【0067】
10 制振装置
12 第1アーム(第1腕部材)
14 第1アーム(第1腕部材)
16 第2アーム(第2腕部材)
18 第2アーム(第2腕部材)
21 第1取付金具(第1連結手段)
22 第1連結部
25 第2取付金具(第2連結手段)
26 第2連結部
40 鉄塔
41 面外拘束材(面外拘束部材)
42 脚部
46 第1固定部(第1構造部)
48 第2固定部(第2構造部)
52 超高層構造物(構造物)
54 柱
70 中低層構造物(構造物)
72 上梁
74 下梁
76 高層構造物(構造物)
100 回転ダンパー
102 軸体
102A 軸体外周面の雄ネジ(螺合手段)
104 ホルダー(保持体)
110 回転体(回転慣性質量)
110A 回転体内周面の雌ネジ(螺合手段)
120 回転慣性質量体(回転慣性質量)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12