(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の運搬機は、コンテナ内の物品を吸着するため、鉛直方向にくの字に折れ曲がった2本のアームを折り曲げて、山積みされた物品の高さに応じてバキュームパットの高さを毎回調整しなければならない。そのため、例えば、山積みされた物品を順次積み下ろし、パレット等の上に順次積み上げていく作業の場合、アームを操作している時間が長くなり、作業時間の短縮化が難しくなる。
【0007】
また、この種の運搬機の場合、作業範囲が狭いコンテナ内でアームを旋回させて物品を移送させるためには、アームの旋回半径を小さくしなければならず、そのためにアームをくの字に大きく折り曲げなければならない。しかし、このようにアームを大きく折り曲げると、アームの折り曲げ部が立ち上がり、コンテナの天井に衝突するおそれがある。反対に、アームの旋回半径を大きくすれば、アームの折り曲げ部の位置は低くなるが、アームの先端部がコンテナの内壁に衝突しやすくなる。
【0008】
一方、コンテナのような狭い空間内で使用する運搬機は、操作性や作業性の観点から、できるだけコンパクトであることが望ましいが、その分、運搬機自体の重量が軽くなるため、高荷重の物品をアームで移送させた場合、運搬機の重心が移動して転倒するおそれがある。
【0009】
本発明は、大きさが制限された空間内での作業員による荷役作業を機械化により支援し、作業員の負担を軽減するとともに、作業時間の短縮化を図ることができる荷役作業支援装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の荷役作業支援装置は、走行台車と、走行台車に支持された荷役作業補助手段と、走行台車に取り付けられたアウトリガーとを備えた荷役作業支援装置であって、走行台車は、平行に設けられた二条の無限軌道輪を有する台車と、該台車上の鉛直軸周りに回転可能に支持され無限軌道輪を操作する運転台とを備え、荷役作業補助手段は、運転台に鉛直に支持された支軸と、該支軸周りに回転自在に支持された第1のアームと、該第1のアームの先端部に前記支軸と平行な軸周りに回転自在に支持された第2のアームと、該第2のアームの先端部に回転自在に取り付けられた巻取部を回転駆動する駆動機を有するホイストと、巻取部に巻き付けられたワイヤの先端に取り付けられ荷物を吸着する吸着部を有する吸着具と、吸着部の空気を吸引して吸着力を発生する空気吸引手段
とを備え、アウトリガーは、
台車上の鉛直軸周りに回転可能に支持された運転台に鉛直方向へ移動可能に支持された軸部を有し、該軸部は、運転台の回転軸中心から走行台車の外側縁よりも外側に位置するように運転台に取り付けられてなることを特徴とする。
【0011】
本発明の荷役作業支援装置は、走行台車を自走させることにより、コンテナ内部或いは倉庫内の狭い作業空間に設置する。その際に、走行台車の一方の側面をコンテナの内壁或いは倉庫内の壁又は物品に近接させて設置する。また、走行台車の他の側面、前方及び後方に荷役作業に必要な荷役領域を確保する。そして、運転台を回転してアウトリガーの軸部を台車の荷役領域側の側面(望ましくは、真横)に移動させ、アウトリガーを進出させてコンテナ等の床面にしっかりと当接させる。このとき、運転台に支持された荷役作業補助手段の支軸も荷役領域側に回動される。つまり、運転台を台車に対して所定の角度で回動させることにより、例えば、運転台の回転軸を中心として、台車の進行方向と直交する方向で、かつ、アームの旋回領域の範囲内に、アウトリガーを接地させることができる。これにより、アームを旋回させて物品を移送する際の装置の転倒を効果的に抑制することができる。
【0012】
このようにして、荷役作業支援装置を荷役場所に設置した後、作業員は荷役作業補助手段の第1と第2のアームを回転ないし屈曲させながら、ホイストのワイヤを適宜巻き出して、吸着具を荷役対象の荷物の位置に移動して、吸着具に荷物を吸着させる。そして、作業員は吸着具に吸着された荷物を、搬出場所ないし搬出具(例えば、パレット等)に積み上げて、吸着具を開放する。
【0013】
ここで、本発明によれば、第1のアームと第2のアームを水平方向に自在に折り曲げることができるため、第2のアームの先端部を、移送対象の荷物の上まで手動で動かすことができる。また、吸着具は、ホイストの巻取部に巻き付けられたワイヤに吊り下げられ、巻取部の回転は制御手段により制御されるため、吸着具を上下方向に手動で動かすことにより、その動きに追従するように吸着具が所定の高さまで昇降する。つまり、荷役作業補助手段は、いわゆるバランスアームとして周知の手段である。例えば、ワイヤの巻取部の回転を制御する制御手段は、荷物の重量に相当するトルクを巻取部に発生させるように制御し、作業員により荷物に正又は負の力が加えられたときは、その力を吸収するトルクを発生するように制御する。これにより、吸着部の位置出し操作が手動で簡単にできるため、作業員の負担を軽減し、かつ作業時間の短縮化を図ることができる。
【0014】
また、第1のアームと第2のアームは水平方向に折り曲げて使用されるため、これらのアームの旋回半径と関係なく、アームの高さを一定に保つことができる。つまり、荷役領域の高さは、第1アームと第2のアームが回動可能な高さが有ればよい。さらに、第1のアームと第2のアームを適宜折り曲げることにより、旋回半径を小さくして物品を移送させることができる。このため、作業空間の天井や側壁にアームを衝突させることなく、狭い空間においても高い安全性と作業性を確保することができる。つまり、走行台車の側面の作業領域は、少なくとも第1のアームの旋回半径を確保できれば、第1のアームに対して第2のアームを折り曲げることにより、狭い領域でも荷役作業を行うことができる。なお、走行台車の前後方向は、第1のアームに対して第2のアームを伸ばした領域まで、荷役範囲を広げることができる。
【0015】
本発明において、アウトリガーは、軸部の下端に車輪が設けられてなるものとすることが好ましい。つまり、荷役作業支援装置は、コンテナ等に積み上げられた荷物の手前側から奥側に向かって積み下ろし作業が進行するため、作業の進行に応じて奥側に前進する。そのため、軸部の下端に車輪を設けることにより、アウトリガーを接地させたままの状態で移動させることが可能となるため、移動の度にアウトリガーの軸部を昇降させなくてもよく、作業時間の短縮化を図ることができる。
【0016】
また、第1のアームの軸方向の長さは、第2のアームの軸方向の長さよりも短く形成されてなるものとする。これによれば、第1のアームと第2のアームとの折り曲げ部が作業空間の側壁に衝突するのを回避しつつ、物品の移送範囲を広く確保することができる。また、第1のアームに対する第2のアームの折り曲げ角度は、機械的に180°以下に規制されてなるものとする。これによれば、第1のアームと第2のアームとの折り曲げ方向が逆転することがないため、狭い空間におけるアームの操作性を高めることができる。
【0017】
また、ホイストは、荷役作業支援装置から離れた位置に配設されたコンプレッサの吐出口から駆動用の高圧空気が供給されてなるものとする。すなわち、荷役作業支援装置には、コンプレッサから高圧空気が供給されるため、電力さえ供給されていれば、例えば荷役作業支援装置のエンジンを停止させた状態でもホイストを作動させることができる。これにより、作業中は荷役作業支援装置のエンジンを停止させることができるため、コンテナ内にエンジンの排気ガスが充満するのを防ぐことができ、作業環境の悪化を抑制することができる。また、コンプレッサからの吐出空気でコンテナ内の温度が上がることもない。この場合、荷役作業支援装置は、コンプレッサとともに、該装置と離間した位置に配設された発電機から給電されるようになっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、大きさが制限された空間内での物品の作業員による荷役を機械化により支援し、作業員の負担を軽減するとともに、作業時間の短縮化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用してなる荷役作業支援装置の一実施形態について説明する。本実施形態では、荷役作業支援装置を用いる場面として、コンテナ船などにより輸送されてきたコンテナに積み込まれた物品を積み下ろすとともに、その積み下ろした物品をコンテナの上の所定位置に積み付けるまでの作業を例に説明するが、荷役作業支援装置を用いる場面としては、これに限定されるものではない。例えば、トラックの荷台や倉庫等のように狭い空間内に積み込まれた物品を積み下ろす作業等にも使用することができる。ここで、物品としては、海藻品等が封入された1体約50kgの袋状の包装体を想定して説明するが、これ以外にも定型や不定形をなす物品が入れられた包装体、箱体等を物品として扱うこともできる。
【0021】
本実施形態の荷役作業支援装置100は、
図1、2に示すように、走行台車1と、荷役作業補助手段3と、アウトリガー5を備えて構成される。走行台車1は、平行に設けられた二条の無限軌道輪7を駆動させて走行する台車9と、この台車9の上の鉛直軸10の周りに回転可能に支持された運転台11を備えている。運転台11には一人用の操縦席13が設けられ、この操縦席13からは台車9の進行方向と台車9に対する運転台11の回転角度等が操作されるようになっている。操縦席13から正面を見たときの左側(
図1の右側)には、冷風扇15と、ブロア17が設けられている。冷風扇15は、小型のエアコンに相当するものであり、例えば冷媒を循環させる周知の冷凍サイクルを備え、冷媒と周囲の空気を熱交換することにより冷風を発生させるようになっている。
【0022】
荷役作業補助手段3は、運転台11に鉛直に支持された支軸19と、この支軸19の上部に一端部が回転自在に支持された第1のアーム21と、第1のアーム21の他端部に支軸19と平行な軸周りで一端部が回転自在に支持された第2のアーム23を備えている。第1のアーム21と第2のアーム23はいずれも直状に形成され、互いに水平方向に手動で折れ曲がるようになっている。第2のアーム23は、第1のアーム21よりも全長が長く形成されている。
【0023】
第2のアーム23の他端部にはホイスト25が取り付けられている。ホイスト25は、第2のアーム23の他端部に回転自在に取り付けられた巻取ドラム(図示せず)と、巻取ドラムに巻き回されたワイヤ27と、巻取ドラムを回転させるモータ(図示せず)を有しており、ワイヤ27の先端には、包装体を吸着する吸着具29が取り付けられている。ホイスト25は、制御ボックス31を介してエアホース33(
図2)から供給される高圧空気の供給量を図示しない制御手段で制御することにより、モータの駆動が制御されるようになっている。制御手段としては、例えば、高圧空気の供給量を調整する調整弁と、巻取ドラムにかかる回転トルク等の検出結果に応じて調整弁の開度を制御する回路等から構成される。具体的には、吸着具29に吸着された包装体及び包装体に加えられた荷重が変化することにより巻取ドラムの回転トルク等に変化が生じると、この変化を検出した回路からの信号により高圧空気の供給量が調整され、モータ及び巻取ドラムが回転する。その結果、ワイヤ27に吊り下げられた包装体が任意の高さ位置に保持されるようになっている。
【0024】
吸着具29は、ワイヤ27が連結された上面と反対側の下面に、包装体を吸着する吸着部29aが設けられている。この吸着部29aは、包装体との密着性を高めるため、吸引口の周囲を弾性部材等で包囲して形成される。吸着具29の上面には、吸引ホース35の一端が接続されるとともに、吸着を開始するとき又は開放するときに用いる切替スイッチ37、吸引口の圧力を表示する圧力計等が設けられている。
【0025】
図3に示すように、吸引ホース35は、吸着具29の上面に一端が接続され、第2のアーム23及び第1のアーム21に沿って配設された後、ブロア17の吸引口17aに他端が接続されている。また、エアホース33は、ホイスト25のモータに一端が接続され、制御ボックス31を経由して吸引ホース35に沿って配設された後、コンテナの外に設置されたコンプレッサ(後述)の吐出口から延びるエアホースとコネクタ等を介して接続されている。なお、エアホース33の他端は、運転台11を介してコンプレッサ側のエアホースと接続されるようになっていてもよい。
【0026】
アウトリガー5は、円柱状又は円筒状の軸部39の下端に車輪41が取り付けられて構成される。軸部39は、運転台11の前方に配置され、台車9に対する運転台11の回転する位置に関係なく、回転中心から台車9の外側縁よりも外側に位置するように配置されている。また、軸部39は、その長手方向の一部の外周面に螺旋状の溝又は突起が形成され、これが軸部39の外周面を包囲する支持部材43の内周面に形成された螺旋状の突起又は溝と螺合することにより、支持部材43に保持されながら鉛直方向に移動するようになっている。
【0027】
ここで、アウトリガー5が昇降する構造について図面を参照して説明する。
図4に示すように、支持部材43は、運転台11の一部となる取付部材45に連結されている。支持部材43の上には4方向に回転操作用の穴46が開けられたロックナット47が軸部39に螺合して取り付けられている。取付部材45には、軸部39の下降確認用のリミットスイッチ49が取り付けられている。軸部39の上端には折り畳み可能なハンドル51が取り付けられており、このハンドル51を起こし(
図4(b))、軸部39を軸芯周りに矢印(
図4(c))の方向に回すことにより、軸部39を下方に移動させることができる。また、軸部39の外周面には周状に突出する鍔部53が形成されており、この鍔部53がリミットスイッチ49に当接してスイッチが作動することにより、車輪41が適正な位置まで下降したことを検知できるようになっている。さらに、車輪41が適正な位置まで下降したときには、ロックナット47を回転させて締め付けることにより、軸部39を鉛直方向で固定することができる。
【0028】
ところで、荷役作業支援装置100が目的位置に到達する前は、
図2に示すように、第1のアーム21と第2のアーム23が折り曲げられて、互いに固定された状態となっているのに対し、荷役作業支援装置100が目的位置に到着し、包装体の移送作業を開始するときには、
図1に示すように、第1のアーム21と第2のアーム23が互いに固定された状態から解放される。また、このように固定された状態から解放されたとしても、第2のアーム23の回動範囲は、第1のアーム21に対して設定範囲に制限されている。
【0029】
図5に示すように、第1のアーム21と第2のアーム23を固定するときには、固定用治具55が用いられる。固定用治具55は、略矩形の金属板材で形成されており、長手方向が第1のアーム21の延在方向と直交するように第1のアーム21の上に固定されるとともに、その両端部にそれぞれ貫通穴57が形成されている。固定用治具55の下面には、固定用ピン59が収納されるピンホルダ61が取り付けられている。第2のアーム23の下面部には固定用ピン59が挿入される穴63が形成されており、第2のアーム23を折り曲げた状態で、固定用治具55の下方から固定用ピン59が貫通穴57に差し込まれ、その差し込まれた固定用ピン59の先が第2のアーム23の穴63に差し込まれた状態で周知の方法により固定用ピン59の抜け止めが施される。このような構造により、第1のアーム21と第2のアーム23は固定された状態となる。なお、固定用ピン59は、第1のアーム21と第2のアーム23が固定状態から解放されているときには、ピンホルダ61に収納された状態となっている。
【0030】
次に、第1のアーム21と第2のアーム23の回転角度を規制する構造について説明する。
図5に示すように、第1のアーム21の他端部には、鉛直方向の上向きに延在する支軸65が取り付けられ、この支軸65には、軸受67を介して第2のアーム23が回転自在に支持されている。支軸65を軸中心とする第1のアーム21と第2のアーム23の隙間の位置には、支軸65と同軸で円盤状の回転規制部材69が、第1のアーム21の上にボルトで固定された状態で設けられている。回転規制部材69は、周方向に等間隔で複数のねじ穴を有しており、第2のアーム23の回転規制角度に応じた2箇所のねじ穴にブロック状又はピン状のストッパ71がねじで固定されている。一方、第2のアーム23の回転規制部材69と対向する面には、回転規制部材69に固定された2箇所のストッパ71の間を回動する突起部73が設けられている。このように突起部73が回動する領域を2つのストッパ71で挟むことにより、第2のアーム23の回転角度が調整可能となる。第1のアーム21と支軸19との間にも同様の構造を適用して回転規制することができるが、本実施形態では、第1のアーム21の回転角度については特に規制を設けていない。また、第1のアーム21と第2のアーム23の回転角度を規制できる構造であれば、本実施形態の構造に限られるものではない。
【0031】
次に、荷役作業支援装置100に係るその他の構成について説明する。荷役作業支援装置100が接地される床面は常に水平面とは限らず、水平面から所定の角度だけ傾いていることがある。このような場合、床面と鉛直方向に延在する支軸19に支持されて回動する第1のアーム21と第2のアーム23は、床面に対して傾斜して回動することになる。本実施形態では、このような床面の傾斜の影響を受けることなく、第1のアーム21と第2のアーム23を水平方向に回動させるため、支軸19の傾きを調整する機構を備えている。
【0032】
図1に示すように、支軸19は、その下端面の中央を支点として、円筒状の壁75の内側に傾動可能に収容されており、壁75の周方向に等間隔で配置された4本の棒材77が壁75を貫いて四方から支軸19を押し付けるようになっている。棒材77は、壁75の外側からハンドル79を回すことにより、壁75の内側に延出する長さが調整される。このような機構によれば、壁75の内側に延出する各棒材77の長さをハンドル79の回転で調整することにより、支軸19の傾きを手動で自在に調整することができる。
【0033】
冷風扇15には、冷風が吹き出される排気口に略L字状のダクトが接続されている。ダクト81は、作業環境に応じて冷風の吹き出し方向が変えられるように方向が調整可能になっている。また、ブロア17の排気口には略L字状のダクト83が接続されており、排気される空気の吹き出し方向が例えばコンテナの外に向くように吹き出し方向が調整可能になっている。
【0034】
また、制御ボックス31の下面付近には、照明用ランプ85が取り付けられており、例えば吸着具29の周辺等をスポット的に照明できるようになっている。なお、照明用ランプ85は、この1箇所に限らず、所定の位置に複数設けることが可能である。また、本実施形態では、荷役作業支援装置100のエンジンを停止させた状態で、ホイスト25、冷風扇15、ブロア17、照明用ランプ85等を作動させるため、コンテナの外に設置された発電機(後述)から給電するようになっている。
【0035】
次に、このようにして構成される荷役作業支援装置100を用いたときの動作及び作業手順について説明する。
図7、8に、荷役作業支援装置100をコンテナ87内に導いて作業する様子を示す。コンテナ87の中には、荷役作業支援装置100が配設されている。コンテナ87の開口する入口には、コンテナ87の床面と同じ高さの作業台89及び傾斜面を備えたバンニングスロープ91が設置されている。バンニングスロープ91の近傍には、発電機93とコンプレッサ95が設置され、発電機93から延びる電源ケーブル93aは、作業台89よりも高所に立設する中継部96を経由して荷役作業支援装置100の専用コンセントに接続されている。コンプレッサ95から延びるエアホース95aは、荷役作業支援装置100側のエアホース33とコネクタを介して接続されている。
【0036】
コンテナ87内において、荷役作業支援装置100の前方(
図7の左側)には、包装体Aが7段積み上げられた山がコンテナ87の幅方向(
図7の縦方向)に5つ並べて列をなし、この列が奥行方向に向かって複数設けられている。一方、荷役作業支援装置100の後方にはパレット97が配置されており、このパレット97の上には包装体Aが俵状に積み上げられている。包装体Aが積み上げられたパレット97は、待機していたフォークリフト99によって後方に搬送される。
【0037】
次に、荷役作業支援装置100にかかわる動作について詳細に説明する。荷役作業支援装置100は、
図2に示すように、進行方向に対して左側に向けられた第1のアーム21と進行方向に折り曲げられた第2のアーム23とが固定用治具55を介して固定されている。荷役作業支援装置100の専用コンセントには、発電機93から延びる電源ケーブル93aが接続されており、ホイスト25に接続されたエアホース33のコネクタには、コンプレッサ95から延びるエアホース95aの一端が接続されている。コンテナ87の中まで走行した荷役作業支援装置100は、積み上げられた包装体Aから所定距離だけ離れた位置で走行を停止する。本実施形態では、
図7に示すように、荷役作業支援装置100の停止位置をコンテナ87内の幅方向に対して右寄りに停止する。
【0038】
次に、荷役作業支援装置100は、運転台11を台車9の進行方向に対して90°回動させて、操縦席13の正面がコンテナ87の幅方向に対して内側(
図7の下側)を向くように配置する。その後、エンジンを停止させる。
【0039】
続いて、アウトリガー5を接地させるため、作業員がハンドル51を回して軸部39を下方に移動させ、車輪41を床面に接地させた状態でロックナット47を手で回し固定する。ロックナット47には側面の4方向に穴が開いており、緩められなくなったときなど、手回しよりも大きな力で回転させることが必要となった場合には、その穴に棒状の治具を差し込むことにより回転させることができる。
【0040】
次に、冷風扇15とブロア17を稼働させ、照明用ランプ85を点灯させる。このとき、荷役作業支援装置100は、発電機93から給電される状態となっているため、エンジンが停止した後でも、冷風扇15やブロア17、照明用ランプ85、ホイスト25等が作動する。冷風扇15のダクト81は、操縦席13の前方、つまり作業員の通路側に向けられており、ブロア17のダクト83は、空気の循環を目的としコンテナ87の出口側又は操縦席13の後方の壁面側に向けられている。なお、冷風扇15とブロア17を作動させるタイミングは、この例に限られるものではない。
【0041】
次に、
図6に示すように、第2のアーム23を固定用治具55から外してフリーとした後、第2のアーム23の先端、つまりホイスト25の部分を、移送対象となる最初の包装体Aの上まで手動で水平に移動させる。このとき、第2のアーム23の動きに追従するように、第1のアーム21が支軸19の周りを回動する。
【0042】
続いて、ホイスト25から吊り下げられた吸着具29を手動で引き下ろし、吸着部29aを包装体Aに押し付けた状態で、切替スイッチ37をオンにする。これにより、吸引口から空気が吸い込まれ、包装体Aと吸着部29aとの間の空間が減圧されるため、包装体Aは吸着部29aに吸着された状態となる。ここで、吸着具29を引き上げるタイミングは、減圧状態が設定レベルに達したときに報知するランプや圧力計等で検知することができる。
【0043】
ランプ等が点灯して真空状態が設定レベルに達したことが確認されると、吸着具29を引き上げる。このとき、ワイヤ27は、吸着具29を巻取ドラム側に引っ張る状態となっているため、作業員が吸着具29を持ち上げようとすると、巻取ドラムに係る回転トルクが変化する。この回転トルクの変化を制御手段が検知すると、ホイスト25に所定量の高圧空気が供給され、モータと巻取ドラムが回転する。これにより、作業員が吸着具29を引き上げる力に追従するようにして包装体Aが任意の高さ位置まで持ち上げられる。包装体Aが持ち上げられると、作業員は、第2のアーム23を手動で動かし、吸着部29aに吸着させた状態の包装体Aをパレット97の上の所定位置まで移送する。ここで、第1のアーム21に対する第2のアーム23の折り曲げ角度は、最大180°以下の所定の角度範囲に規制されているため、
図6に示すように、第2のアーム23は、第1のアーム21に対して常に同じ方向に折れ曲がった状態で移動する。
【0044】
包装体Aがパレット97の上の所定位置まで移送されると、作業員は吸着具29を手動で引き下ろす。このとき、巻取ドラムに係る回転トルクが変化するため、制御手段がこれを検知することにより、モータと巻取ドラムを回転させる。これにより、作業員が吸着具29を引き下げる力に追従するようにして包装体Aが任意の高さ位置まで下ろされる。包装体Aが所定の位置に載置されると、切替スイッチ37をオフにする。これにより、吸着具29による吸引状態が解放されるため、吸着部29aから包装体Aが積み下ろされ、移送が完了する。その後、必要であれば、吸着具29を手動で持ち上げて上方に移動させ、第2のアーム23を再び山積みされた次の包装体Aの位置まで移動させる。
【0045】
ここで、荷役作業支援装置100は、
図6に示すように、第2のアーム23の先端の旋回領域に前方の1列分の山積みされた包装体Aのすべてが含まれているため、この1列分の山の包装体Aが移送される間は停止した状態であるが、その後方の列には第2のアーム23の先端の旋回領域から外れる山が存在する。このため、荷役作業支援装置100は、前方の1列分の山の包装体Aの移動が完了すると、エンジンを始動させて台車9を走行させ、前方、つまりコンテナ87の奥側へ移動させる必要がある。このとき、アウトリガー5は接地されているが、車輪41が接地する構造であるため、アウトリガー5を接地させたままの状態で移動することができる。これにより、移動の度にアウトリガー5の軸部39を昇降させる必要がなく、作業時間の短縮を図ることができる。
【0046】
本実施形態によれば、台車9の進行方向に対して運転台11を90°回転させることにより、運転台11の鉛直軸10を中心として、台車9の進行方向と直交する方向にアウトリガー5を接地させることができる。このようにアウトリガー5を第1のアーム21と第2のアーム23の旋回領域に配置することにより、高荷重の包装体Aを移送する際の装置の転倒を効果的に抑制することができる。ここで、アウトリガー5は、軸部39が、鉛直軸10の回転中心から台車9の外側縁よりも外側に位置させるように配置されるため、台車9に対する運転台11の回転位置に関係なく、接地することができる。このため、アウトリガー5の接地位置は、荷役領域、つまりアームの旋回領域等に応じて、適宜設定することが可能である。
【0047】
また、本実施形態では、第1のアーム21の軸方向の全長は、第2のアーム23の軸方向の全長よりも短く形成されている。第1のアーム21は、
図6に示すように、台車9に対して運転台11を90°回転させてコンテナ87内の幅方向(
図6の上下方向)の略中央に支軸19を位置させたとき、第1のアーム21の先端部、つまり第2のアーム23との折り曲げ部がコンテナ87の内壁に衝突しない範囲の長さに設定されていればよい。一方、第2のアーム23は、短すぎると作業領域の幅(
図6の左右方向)が小さくなり、長すぎると大きく折り曲げた状態で作業しなければならなくなるため、いずれも作業性が低下する。このため、本実施形態において、第2のアーム23は、作業性を考慮して、第1のアーム21よりも長い所定の長さに設定される。これにより、第1のアーム21と第2のアーム23との折り曲げ部がコンテナ87の側壁に衝突するのを回避しつつ、包装体Aの移送領域を広く確保することができる。なお、第2のアーム23の長さの目安としては、荷役作業支援装置100が停止した状態で、少なくとも、前方の1列分の包装体Aの山のすべてに第2のアーム23の先端が届く程度の長さを備えていることが好ましい。
【0048】
本実施形態では、第1のアーム21に対する第2のアーム23の折り曲げ角度が、最大180°以下の所定の角度範囲に規制されている。したがって、作業員は、第2のアーム23を第1のアーム21に対して、常に同じ方向に折り曲げた状態で動かすことができるため、作業性を向上させることができる。加えて、本実施形態では、第1のアーム21と第2のアーム23が水平方向に回動し、上下方向には回動しないため、コンテナ87内の天井に第2のアーム23が衝突することがない。したがって、本実施形態の構成によれば、特に狭い空間内において高い安全性と作業性を確保することができる。
【0049】
加えて、本実施形態では、第1のアーム21と第2のアーム23をそれぞれ手動で動かすとともに、包装体Aの吸着の有無にかかわらず、吸着具29を手動で昇降させることができるため、一人の作業員がすべての作業を行うことができ、作業員の負担を軽減することができる。
【0050】
また、本実施形態では、コンテナ87の外部にコンプレッサ95と発電機93を配置し、コンプレッサ95から供給される高圧空気を用いてホイスト25を駆動させるとともに、発電機93からの給電により、冷風扇15、ブロア17、ホイスト25等を駆動させるようにしている。このため、作業中は、荷役作業支援装置100のエンジンを停止させることができるため、コンテナ87内にエンジンの排気ガスが充満するのを防ぐことができる。さらに、冷風扇15のダクト81からは適当な方向に冷風が吹き出され、ブロア17のダクト83からは荷役領域と反対側等に空気が吹き出されるため、コンテナ87内で冷風が循環するとともに換気が施される。したがって、作業員の作業環境の悪化を防ぐことができる。