(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5728176
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】地雷除去装置及び地雷除去方法
(51)【国際特許分類】
F41H 11/14 20060101AFI20150514BHJP
【FI】
F41H11/14
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-165879(P2010-165879)
(22)【出願日】2010年7月23日
(65)【公開番号】特開2012-26647(P2012-26647A)
(43)【公開日】2012年2月9日
【審査請求日】2013年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】穴井 隆祐
【審査官】
鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第03087427(US,A)
【文献】
特開2001−341696(JP,A)
【文献】
特開昭60−152900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41H 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地雷原に埋没する地雷を爆破処理して除去する地雷除去装置であって、
互いに時間をずらして発射される2発のロケット弾を備え、
前記2発のロケット弾のうちの先に発射される先発ロケット弾は、複数個の爆薬ブロックと、一端側が該先発ロケット弾に連結されて前記複数の爆薬ブロックを適宜間隔をおいて直列に繋ぐ連結索を具備し、
前記2発のロケット弾のうちの後に発射される後発ロケット弾には、前記先発ロケット弾の連結索の他端側が連結され、
前記後発ロケット弾は、前記先発ロケット弾の複数の爆薬ブロックを直列に繋ぐ前記連結索を牽引しながら飛翔し、
前記先発ロケット弾は、前記後発ロケット弾が前記複数の爆薬ブロックを直列に繋ぐ前記連結索を牽引しながら飛翔する段階でアンカーとして機能する
ことを特徴とする地雷除去装置。
【請求項2】
前記先発ロケット弾は、前記地雷原における前記発射地点に近い部位に弾着してアンカーとして機能する請求項1に記載の地雷除去装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の地雷除去装置によって、地雷原に埋没する地雷を除去するに際して、
前記先発ロケット弾を発射するのに続いて地雷原近傍位置に弾着させて、該先発ロケット弾の弾着地点と前記後発ロケット弾との間に前記複数の爆薬ブロックを直列に繋いだ連結索を敷き、
次いで、前記先発ロケット弾が敷いた連結索の他端側と連結する前記後発ロケット弾を発射して、前記連結索により直列に繋がれた複数の爆薬ブロックを順次引き上げながら飛翔させ、
前記後発ロケット弾が前記先発ロケット弾の弾着点を越えた段階から、前記連結索により直列に繋がれた複数の爆薬ブロックを順次着地させつつ前記後発ロケット弾を前記地雷原に弾着させた後、
この後発ロケット弾の弾着地点と前記先発ロケット弾との間に展開した前記複数の爆薬ブロックをそれぞれ爆発させ、前記地雷原に埋没する地雷を誘爆させて除去する
ことを特徴とする地雷除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地雷原に埋没する地雷を爆破処理して除去するのに用いられる地雷除去装置及び地雷除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記したような地雷除去装置としては、例えば、特許文献1に記載された地雷除去弾がある。
この地雷除去弾は、連結索により適宜間隔をおいて直列に繋がれて同期起爆可能とした複数の爆薬ブロックと、連結索の一端が連結されると共に複数の爆薬ブロックが収容される円筒状を成すコンテナと、このコンテナの周囲に配置された複数のロケットモータを備えている。この地雷除去弾において、連結索で繋がれた複数の爆薬ブロックを地雷原で直線状に展開させる手段として、連結索と発射地点との間に係留索を配置したり、複数の爆薬ブロックのうちの最後方の爆薬ブロックに空気抵抗体を配置したりする手段が採用されている。
【0003】
この地雷除去弾は、地雷が多数埋没された地雷原に向けて発射され、目標飛距離に到達した時点でコンテナに収容した複数の爆薬ブロックを空中に放出する。
そして、このように放出されて互いに連結索により直列に繋がれた複数の爆薬ブロックが地雷原で直線状に展開した後に、複数の爆薬を一斉に爆発させることで地雷原の埋没地雷を誘爆させて除去するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭63-064718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記した従来の地雷除去弾は、地雷原に多数埋没された地雷を除去するにあたって複数発携行される都合上、一発あたりの重量が制限される。つまり、上記した地雷除去弾において、一発あたりの地雷除去能力を維持するためには推進薬の搭載量を増やせないことから、飛翔距離を伸ばすことができず、遠方に位置する地雷原の地雷を除去することができないという問題を有しており、この問題を解決することが従来の課題となっていた。
【0006】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、近づかなくては除去し得なかった地雷原の地雷を遠方にいながらにして除去することが可能である地雷除去装置及び地雷除去方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る発明は、地雷原に埋没する地雷を爆破処理して除去する地雷除去装置であって、互いに時間をずらして発射される2発のロケット弾を備え、前記2発のロケット弾のうちの先に発射される先発ロケット弾は、複数個の爆薬ブロックと、一端側が該先発ロケット弾に連結されて前記複数の爆薬ブロックを適宜間隔をおいて直列に繋ぐ連結索を具備し、前記2発のロケット弾のうちの後に発射される後発ロケット弾には、前記先発ロケット弾の連結索の他端側が連結され、前記後発ロケット弾は、前記先発ロケット弾の複数の爆薬ブロックを直列に繋ぐ前記連結索を牽引しながら飛翔
し、前記先発ロケット弾は、前記後発ロケット弾が前記複数の爆薬ブロックを直列に繋ぐ前記連結索を牽引しながら飛翔する段階でアンカーとして機能する構成としたことを特徴としており、この構成の地雷除去装置を前述の従来の課題を解決するための手段としている。
【0009】
本発明の請求項
2に係る地雷除去装置において、前記先発ロケット弾は、前記地雷原における前記発射地点に近い部位に弾着してアンカーとして機能する構成としている。なお、先発ロケット弾の弾着位置は、処理する地雷原の大きさに基づいて任意に設定することができる。
【0010】
一方、本発明の請求項
3に係る発明は、請求項1
又は2に記載の地雷除去装置によって、地雷原に埋没する地雷を除去するに際して、前記先発ロケット弾を発射するのに続いて地雷原近傍位置に弾着させて、該先発ロケット弾の弾着地点と前記後発ロケット弾との間に前記複数の爆薬ブロックを直列に繋いだ連結索を敷き、次いで、前記先発ロケット弾が敷いた前記連結索の他端側と連結する前記後発ロケット弾を発射して、前記連結索により直列に繋がれた複数の爆薬ブロックを順次引き上げながら飛翔させ、前記後発ロケット弾が前記先発ロケット弾の弾着点を越えた段階から、前記連結索により直列に繋がれた複数の爆薬ブロックを順次着地させつつ前記後発ロケット弾を前記地雷原に弾着させた後、この後発ロケット弾の弾着地点と前記先発ロケット弾との間に展開した前記複数の爆薬ブロックをそれぞれ爆発させ、前記地雷原に埋没する地雷を誘爆させて除去する構成としている。
【0011】
本発明に係る地雷除去装置において、先発ロケット弾の連結索には、特に限定しないが柔軟なワイヤロープやナイロンロープを用いることができ、軽量で且つ高強度のものを採用することが望ましい。
【0012】
また、本発明に係る地雷除去装置において、先発ロケット弾における複数の爆薬ブロックの起爆は、先発ロケット弾及び後発ロケット弾のいずれかに搭載したタイマ付き起爆装置により行ってもよいし、遠隔操作によって行ってもよい。
【0013】
本発明に係る地雷除去装置及び地雷除去方法では、地雷原に埋没する地雷を除去する場合、まず、先発ロケット弾を発射して地雷原近傍位置に弾着させ、この先発ロケット弾の弾着地点と発射前の後発ロケット弾との間に複数の爆薬ブロックを直列に繋いだ連結索を敷く。
【0014】
これに続いて、後発ロケット弾を地雷原に向けて発射すると、この後発ロケット弾には先発ロケット弾が敷いた前記連結索の他端側が連結されているので、後発ロケット弾は、連結索によって直列に繋がれた複数の爆薬ブロックを順次引き上げながら飛翔する。
【0015】
そして、後発ロケット弾が先発ロケット弾の弾着点を越えて弾着体勢に入り、この後発ロケット弾が弾着するのに続いて、前記連結索により直列に繋がれた複数の爆薬ブロックが順次着地する。
【0016】
この弾着した後発ロケット弾と先発ロケット弾との間には、先発ロケット弾の連結索で繋がれた複数の爆薬ブロックが展開しており、これらの爆薬ブロックを一斉に爆発させると、この地雷原に埋没する地雷が誘爆して除去されることとなる。
【0017】
このように、本発明に係る地雷除去装置及び地雷除去方法において、後発ロケット弾には、先発ロケット弾の複数の爆薬ブロックを直列に繋ぐ連結索の他端側が連結されているだけなので、推進薬を余分に搭載し得ることとなる。つまり、後発ロケット弾は、複数の爆薬ブロックを直列に繋ぐ前記連結索を牽引しつつ、先発ロケット弾の弾着点を越えて飛翔して、先発ロケット弾よりも遠方に複数の爆薬ブロックを展開させ得ることとなり、その結果、近づかなくては除去し得なかった遠方の地雷原の地雷を除去し得ることとなる。
【0018】
この際、後発ロケット弾が複数の爆薬ブロックを直列に繋いだ前記連結索を牽引しながら飛翔する段階において、先発ロケット弾をアンカーとして機能させる。例えば、地雷原の発射地点に近い部位に弾着させた先発ロケット弾をアンカーとして機能させるようになすと、発射地点から発射された後発ロケット弾を単に先発ロケット弾よりも遠方に弾着させる場合と比較して、先発ロケット弾をアンカーとする分だけ風の影響を少なく抑え得ることとなり、したがって、飛翔距離が伸びることとなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1に係る地雷除去装置及び請求項
3に係る地雷除去方法では、上記した構成としているので、複数の爆薬ブロックを搭載した従来のロケット弾と比較して、より遠方に複数の爆薬ブロックを展開させることができ、その結果、近づかなくては除去し得なかった地雷原の地雷を遠方にいながらにして除去することが可能になるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0020】
また、本発明の請求項
1に係る地雷除去装置では、上記した構成としているので、風の影響を少なく抑え得る分だけ、より一層遠方に複数の爆薬ブロックを展開させることができ、本発明の請求項
2に係る地雷除去装置では、複数の爆薬ブロックを地雷原で確実に展開させることが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施例による地雷除去装置の先発ロケット弾側を断面で示した側面説明図(a)及び後発ロケット弾側を断面で示した部分側面説明図(b)である。
【
図2】
図1の地雷除去装置による地雷除去要領を示す先発ロケット弾の発射時における斜視説明図である。
【
図3】
図1の地雷除去装置による地雷除去要領を示す後発ロケット弾の発射時における斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る地雷除去装置及び地雷除去方法を図面に基づいて説明する。
図1〜
図3は、本発明に係る地雷除去装置及び地雷除去方法の一実施例を示している。
【0023】
図1に示すように、この地雷除去装置1は、移動ランチャ2の2本のキャニスタ3,3に収納された2発のロケット弾10A,10Bを備えており、これらのロケット弾10A,10Bは、いずれも円筒状を成すコンテナ11と、このコンテナ11の周囲に配置された複数のロケットモータ12を具備している。
【0024】
上記2発のロケット弾10A,10Bは、互いに時間をずらして発射されるようになっている。先に発射される先発ロケット弾10Aは、
図1(a)に示すように、複数個の爆薬ブロック14と、一端側がコンテナ11に連結されて複数の爆薬ブロック14を適宜間隔をおいて直列に繋ぐ連結索15を具備しており、複数の爆薬ブロック14は連結索15とともにコンテナ11に収容され、同期起爆可能となっている。
【0025】
一方、2発のロケット弾10A,10Bのうちの後に発射される後発ロケット弾10Bのコンテナ11には、
図1(b)に示すように、複数の爆薬ブロック14を直列に繋ぐ前記連結索15の他端側が連結されている。この連結索15は、
図1(a),(b)における(※)で接続している。
【0026】
上記した地雷除去装置1では、地雷原に埋没する地雷を除去する場合、まず、
図2に一点鎖線で示すように、ロットモータ12を作動させて移動ランチャ2から先発ロケット弾10Aを地雷原Xに向けて発射する。このとき、先発ロケット弾10Aの弾着位置は、発射前の段階で地雷原Xの移動ランチャ2に近い部位に設定される。
【0027】
この先発ロケット弾10Aの発射により、複数の爆薬ブロック14を直列に繋いだ連結索15がコンテナ11から引き出され、
図2に実線で示すように、先発ロケット弾10Aが地雷原Xの移動ランチャ2に近い部位に弾着すると、この弾着した先発ロケット弾10Aと移動ランチャ2における発射前の後発ロケット弾10Bとの間に、複数の爆薬ブロック14を直列に繋いだ連結索15が敷かれることとなる。
【0028】
これに続いて、
図3に一点鎖線で示すように、ロットモータ12を作動させて移動ランチャ2から後発ロケット弾10Bを地雷原Xに向けて発射する。この際、この後発ロケット弾10Bには先発ロケット弾10Aが敷いた連結索15の他端側が連結されているので、後発ロケット弾10Bは、
図3に二点鎖線で示すように、連結索15によって直列に繋がれた複数の爆薬ブロック14を順次引き上げながら飛翔する。
【0029】
そして、後発ロケット弾10Bが先発ロケット弾10Aの弾着点を越えて弾着体勢に入り、この後発ロケット弾10が地雷原Xに弾着するのに続いて、連結索15により直列に繋がれた複数の爆薬ブロック14が地雷原Xに順次着地する。
【0030】
この弾着した後発ロケット弾10Bと先発ロケット弾10Aとの間には、
図3に細線で示すように、先発ロケット弾10Aの連結索15で繋がれた複数の爆薬ブロック14が展開しており、これらの爆薬ブロック14を一斉に爆発させると、この地雷原Xに埋没する地雷が誘爆して除去されることとなる。
【0031】
このように、上記した地雷除去装置1及び地雷除去方法において、後発ロケット弾10Bには、先発ロケット弾10Aの複数の爆薬ブロック14を直列に繋ぐ連結索15の他端側が連結されているだけなので、推進薬を余分に搭載し得ることとなる。つまり、後発ロケット弾10Bは、複数の爆薬ブロック14を直列に繋ぐ前記連結索15を牽引しつつ、先発ロケット弾10Aの弾着点を越えて飛翔して、先発ロケット弾10Aよりも遠方に複数の爆薬ブロック14を展開させ得ることとなり、その結果、近づかなくては除去し得なかった遠方の地雷原Xの地雷を除去し得ることとなる。
【0032】
また、上記した地雷除去装置1及び地雷除去方法において、先発ロケット弾10Aを地雷原Xの移動ランチャ2に近い部位に弾着させるようにしているので、複数の爆薬ブロック14を地雷原Xで確実に展開させ得ることとなる。
【0033】
この際、後発ロケット弾10Bが先発ロケット弾10Aの弾着点を越えて飛翔する段階において、先発ロケット弾10Aをアンカーとして機能させるようになすと、移動ランチャ2から発射された後発ロケット弾10Bを単に先発ロケット弾10Aよりも遠方に弾着させる場合と比較して、風の影響を少なく抑え得ることとなり、したがって、後発ロケット弾10Bの飛翔距離が伸びることとなる。
【0034】
本発明に係る地雷除去装置及び地雷除去方法の構成は、上記した実施例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0035】
1 地雷除去装置
10A 先発ロケット弾
10B 後発ロケット弾
14 爆薬ブロック
15 連結索
X 地雷原