【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の通り、従前においても加圧エアーを利用し、そのエゼクタ作用(流体の流れる向きに周囲の流体が引き込まれる事により発生する吸引作用)を利用して塵埃、切削屑、又は切削油等を吸引するクリーナーは公知であり、またクリーナーの吸引用ファンと空気圧縮機の双方を同時に動かすことのできるクリーナーも提案されている。
【0009】
しかしながら、従来提供されているクリーナーでは、吸引力が限られているだけでなく、加圧エアーを吐出する位置が固定されており、溝や穴の形状、大きさ、或いは深さに応じて、当該加圧エアーの吐出位置を変更することができなかった。
【0010】
そこで本発明は、加圧エアーの吐出位置を変更できるようにし、従前の吸引式のクリーナーでは除去できないような溝や穴に入り込んだ塵埃、切削屑、又は切削油等であっても、これを効果的に吸引して除去できるようにした吸引機器の先端構造、および当該先端構造を具備する吸引用アダプター並びに吸引式洗浄ガンを提供することを第1の課題とする。
【0011】
そしてかかる第1の課題を前提とした上で、その操作性を向上させることも必要である。より具体的には、塵埃、切削屑、又は切削油等を吸引除去する穴や溝は、必ずしも同じ深さに形成されているとは限らないことから、クリーニング操作中においても、その吸引具合に応じて加圧エアーの突出を調整し、最適なクリーニング効果を得られるようにすることが望ましい。そこで本発明は、前記第1の課題を解決すると共に、更に操作性を向上させた吸引機器の先端構造、および当該先端構造を具備する吸引用アダプター並びに吸引式洗浄ガンを提供することを第2の課題とする。
【0012】
更に、前記特許文献2で提案されているクリーナーは、吸引用ファンと空気圧縮機の双方を同時に動かすことができるものとなっているが、その請求項2に記載されている通り、空気噴射ノズルは広い底面を開口部としたクリーナー用の円錐形吸引部の中心を通り上記円錐底面開口部に達することから、吸引できる物の大きさは円錐形吸引部開口径の半分以下の大きさが限界となっている。
【0013】
そこで本発明は、吸引部分の内径程度の大きさの物でも吸引可能にした吸引機器の先端構造、および当該先端構造を具備する吸引用アダプター並びに吸引式洗浄ガンを提供することを第3の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題の少なくとも何れかを解決するため、本発明では、吸引式のクリーナーの吸引領域に対して加圧エアー等の流体を吐出するノズルを、進退自在に設けることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0015】
即ち本発明にかかる吸引機器の先端構造は、吸引構造を具備する掃除機や加圧エアーを利用したクリーナー等の吸引機器における吸引部分先端の吸引構造であって、筒状に構成されている吸引部分の先端側に開口する吸引口と、当該吸引口内又はその近傍に配設されて、前記吸引口の鉛直投影面内に流体を吐出する噴射ノズルとを具備し、当該噴射ノズルの先端部分は、前記吸引部分の吸引口よりも突出可能な程度に進退自在に設けられていることを特徴とする。
【0016】
かかる吸引機器の先端構造によれば、クリーニングする溝や穴の深さ、或いは大きさに応じて、前記噴射ノズルを溝又は穴内に侵入させ、当該噴射ノズルから吐出される流体によって、溝又は穴内に入り込んだ塵埃、切削屑又は切削油等を吐き出させ、これを吸引部分の吸引口で吸い込むことができる。即ち、穴や溝の深さや大きさに応じて噴射ノズルの(溝や穴内への)進入具合を調整することができ、これによりクリーニング対象となる溝や穴に応じた、塵埃、切削屑又は切削油等を吐き出させるための最適なエアーを含む流体の流れを生じさせることができ、クリーニング効果を向上させることができる。
【0017】
上記本発明の吸引機器の先端構造において、噴射ノズルは、少なくとも吸引部分の吸引口よりも突出可能な程度に進退自在であれば良く、吸引機器において筒状に形成された吸引部分の内側に設置する他、当該吸引部分の外側に配置することもでき、更に当該吸引部分を構成する壁面内に配置することもできる。
【0018】
噴射ノズルを吸引部分の内側に設置する場合には、噴射ノズルを吸引部分の中心に配置することもできるが、望ましくは、当該噴射ノズルは、前記吸引部分の軸芯に対して偏心した位置、更に望ましくは吸引部分の内壁面に沿う位置に、進退自在に設ける。噴射ノズルを吸引部分内に偏芯させて配置することにより、当該吸引部分の水平断面径程の大きさのもの迄であれば吸引することが可能になる為である。よって、例えば吸引される対象が専ら粉状物、液体などの様に流動性の高いものの場合には、この噴射ノズルは吸引部分の中央に配置されていても良い。
【0019】
そして本発明において、前記噴射ノズルは、吸引口の鉛直投影面内に流体を吐出するものであり、かつ進退自在に配置されるものであることから、当該噴射ノズルに対して流体を供給する手段が必要になる。かかる流体を供給する手段として、本発明では管状部材を使用することが望ましい。
【0020】
即ち、前記噴射ノズルは流体を案内する管状部材の先端に設置されており、前記筒状に構成されている吸引部分には、その壁面内に管状部材を軸方向にスライド自在に収容するガイド孔が形成されている「吸引部分先端の吸引構造」とすることが望ましい。
【0021】
この噴射ノズルが設置される管状部材は、少なくとも流体を吐出した際に、その反作用で変形したりブレたり揺動することの無い程度の強度乃至は定型性を備えていることが望ましい。その為には、例えば金属製の管として形成する他、これと同程度の硬さを有する樹脂製の管で構成することができる。なお、この管状部材は、その一部が柔軟性を有する樹脂製のチューブで形成されていても良いが、少なくとも吸引部分の吸引口よりも突出する領域は、金属製または十分な硬さを有する樹脂製の管(即ち硬質の管)で構成されるのが望ましい。但し溝や穴の形状或いは溝や穴の開口する向きによっては、当該溝や穴に沿って任意に変形させた方が望ましい場合もある。よって、このように溝や穴の形状などに沿って変形させる場合には、樹脂などを用いて適宜柔軟性を有する管として形成することも可能である。なお、この管の硬さについては、吐出する加圧エアーの量や流速に応じて適宜変更することもできる。
【0022】
また、この噴射ノズルは、吸引口の鉛直投影面内に流体を吐出するものであることから、少なくとも流体を吐出するための開口を備える。この吸引口の鉛直投影面内とは、吸引口の開口面をクリーニング対象物に投影した領域のことであり、前記噴射ノズルは、当該領域の少なくとも何れかの部分に、噴射の向きを問わず加圧エアーを供給する様に構成される。
【0023】
この流体を吐出するための開口は、噴射ノズルの先端側に設けられ、噴射ノズルの軸方向に吐出させる向きの開口を形成する他、当該噴射ノズルの放射方向に吐出させる向きの開口を形成することもできる。更に、当該噴射ノズルの放射方向斜め後方に向かって、或いは当該噴射の放射方向斜め前方に向かって流体を吐出させる向きの開口を形成することもできる。かかる流体を吐出するための開口の向きは、溝又は穴内において重点的にクリーニングする部分が何れの部位か、或いは除去する物の容積や質量によって適宜選定することができる。例えば溝又は穴の底面に蓄積した塵埃や切削屑などを除去する場合には、管の軸方向に吐出させる向きの開口とすることができ、一方で溝又は穴の側面に付着した塵埃や切削屑などを除去する場合には、管の放射方向に吐出させる向きの開口とすることができる。
【0024】
更に当該流体を吐出するための開口を備える噴射ノズルは、複数の形状・構造のものを用意し、管状部材に対して適宜着脱自在に構成することもできる。この場合、当該噴射ノズルは、管状に形成された管状部材と、この管状部材の先端に着脱自在に形成された噴射ノズルとで構成することができ、前記流体を吐出するための開口は、この噴射ノズルに形成することができる。
【0025】
なお、上記噴射ノズルと管状部材とは必ずしも2つの部材を組み合わせたものだけに限らず、例えば管状部材の先端側を加工して噴射ノズルとしたものも含まれ、また噴射ノズルの末端側を延長させて、この延長させた部分を管状部材としたものも含まれる。即ちこれらの技術は本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0026】
上記本発明において、噴射ノズルから吸引口の鉛直投影面内(即ち吸引口の先端側)に向けて流体を吐出する流体は、多くの場合はコンプレッサーなどから供給される空気であるが、必ずしも此れに限定されるものではなく、例えば窒素やヘリウム等の不活性ガスであっても良く、また防爆などの処置を施した上で、水素や酸素、或いはプロパンガスなどの活性ガスであっても良い。更に当該流体は必ずしも気体である必要は無く、例えば水や各種洗浄液、或いはアルコールその他の炭化水素油などの液体であったり、これら液体をミスト状にしたものであっても良い。
【0027】
また上記吸引構造が採用される吸引機器は、必ずしも吸引構造を具備する掃除機や加圧エアーのエゼクタ効果を利用したクリーナー等に限られるものではなく、気体、液体又は固体を吸引するために使用される各種の機械器具における吸引部分の構造として採用することができ、当該機械器具は家庭用であるか産業用であるかを問わず実施することができる。
【0028】
次に、本発明では上記の吸引機器の先端構造に関連するものとして、当該先端構造を具備する吸引用アダプターを提供し、当該吸引用アダプターにより前記課題の少なくとも何れかを解決する。
【0029】
即ち、本発明では、筒状に形成された吸引筒の軸方向一端側に吸引口、他端側に排出口を形成すると共に、当該吸引筒の吸引口に形成される吸引部分は、上記本発明の吸引構造を具備しており、当該吸引構造における噴射ノズルには、加圧エアーその他の加圧流体を供給するラインと接続可能な加圧ライン接続手段が形成されていることを特徴とする吸引用アダプターも提供する。
【0030】
かかる吸引用アダプターは、加圧エアーを供給するエアーガンなどに取り付けて使用することができ、エアーガンから供給された加圧エアーを、加圧ライン接続手段から噴射ノズルに導入することで、当該噴射ノズルは溝や穴内に加圧エアーを吐出させることができる。そして加圧エアーで吐き出された塵埃や切削屑あるいは切削油などは、吸引口の吸引部分で吸い取られ、排出口から排出することができる。ここで、吸引口における吸引力は、吸引筒内において、加圧エアーを排出側開口に向けて吐出させることにより、そのエゼクタ作用(流体の流れる向きに周囲の流体が引き込まれる事により発生する吸引作用)を利用して塵埃、切削屑、又は切削油等を吸引する吸引力を得ることができる。その他にも、排出側開口から掃除機などにより吸引することで吸引力を得ることもできる。
【0031】
特に、当該吸引用アダプターがエアーガンその他の加圧エアーを供給可能な加圧エアー供給器具に繋げて使用される吸引用のアダプターである場合には、その吸引口に存在する吸引部分は、上記した本発明の吸引構造を具備し、当該吸引構造における噴射ノズルには、加圧エアー供給器具から加圧エアーが供給されて、その先端からエアーを吐出させる吸引用アダプターとすることができる。
【0032】
この吸引用アダプターを使用することにより、エアーガンを始めとする加圧ガスを吐出させる各種のエアーツール単体で、或いはエアーツールと吸引式の掃除機とを組み合わせて使用することにより、狭いか或いは深い溝や穴においても、効率的にクリーニングを行うことが可能になる。
【0033】
そして本発明では、前記吸引機器の先端構造に関連する発明として、従前におけるエアーガンを用いて構成されて、エアーガンから供給される加圧エアーを噴射ノズルから吐出させることで、深いか或いは狭い溝や穴に入り込んだ塵埃、切削屑、又は切削油等を吐き出させることのできる吸引式洗浄ガンを提供し、前記課題の少なくとも何れかを解決する。
【0034】
即ち、本発明では、加圧エアーが導入されて此れを先端から吐出させる流体路を具備するエアーガン本体と、当該エアーガン本体の先端側に接続される吸引筒とからなり、当該吸引筒の先端側に存在する吸引部分は、本発明にかかる吸引構造を具備し、エアーガン本体に導入された加圧エアーは、少なくとも吸引構造を構成する噴射ノズルに供給されて、その先端からエアーを吐出させることを特徴とする吸引式洗浄ガンも提供する。
【0035】
かかる吸引式洗浄ガンでは、エアーガン本体から供給される加圧エアーが噴射ノズルに案内され、当該噴射ノズルは洗浄対象となる溝内又は穴内に進入可能に形成されていることから、加圧エアーの噴出により空気の流れを生じさせ、この溝内又は穴内に入り込んでいる塵埃や切削屑、或いは切削油と言った異物を効率的に吐き出させることができる。そして吐き出された異物は、エアーガンから分岐して吸引筒内に供給される加圧エアーのエゼクタ効果による吸引、或いは別途準備された掃除機その他の吸引装置による吸引によって吸引・排出されることになる。
【0036】
上記の吸引式洗浄ガンにおいて、エアーガン本体と吸引筒との構成は、例えば以下のように構成することができる。
即ち、グリップの先端適宜角度姿勢に一体化してなる吸引筒の先端側に、その先端側方向に向けて気体を噴射可能とする噴射ノズルを偏芯配置し、当該グリップの基端から該噴射ノズルに渡る管路の中途適所に同グリップを把持した手指で操作可能となる外壁に操作入力部を露出するよう噴射スイッチを配した圧縮気回路を内蔵すると共に、該圧縮気回路の噴射スイッチと噴射ノズルとの間適所から分岐した負圧誘導回路の末端を、当該吸引筒内の、該噴射ノズルとは反対側方向(即ち吸引筒末端側)に向けて開口するよう設け、後端部前適所にR形状の湾曲形状で進行方向を変更する流路を設けてあるものとすることができる。
【0037】
また、噴射ノズルがその基端部に共通の着脱機構の一部を設けた少なくとも2個準備し、各噴射ノズルは互いのノズルの長さを、長、短の関係とするよう設定することもできる。
【0038】
また、噴射ノズルが、その基端部に着脱機構の一部を設け、吸引筒先端側の着脱機構部に装着した場合に、同噴射ノズルの先端が、該吸引筒先端から突出配置するよう固定されていても良い。また、噴射ノズルが、その基端部に着脱機構の一部を設け、吸引筒先端側の着脱機構部に装着した場合に、同噴射ノズルの先端が、該吸引筒先端より奥側に後退配置するよう固定されても良い。
【0039】
また、吸引筒先端部に、吸引口部のサイズを広くし、且つ全体の長さを長く設けた広口タイプの吸引ノズル、及び同ノズルに適合する長いタイプの噴射ノズルを装着可能としても良い。
【発明の効果】
【0040】
上記本発明にかかる吸引部分先端の吸引構造によれば、吸引口の先端側に向けて加圧エアーなどの流体を吐出する噴射ノズルが進退自在に設けられていることから、深い溝や穴、或いは開口が狭い溝や穴内にも当該噴射ノズルを進入させることができる。そしてこの噴射ノズルから加圧エアーを噴射乃至は吐出させる事により、溝や穴内に空気の流れを生じさせ、溝や穴内の塵埃、切削屑或いは切削油などの異物を吐き出させることができる。溝や穴内の異物が吐き出されることから、吸引口が溝や穴内に入り込めない場合でも、確実に異物を吸い込み・除去することができる。
【0041】
よって本発明により、加圧エアーの吐出位置を変更できるようにし、従前の吸引式のクリーナーでは除去できないような溝や穴に入り込んだ塵埃、切削屑、又は切削油等であっても、これを効果的に吸引して除去できるようにした吸引機器の先端構造、および当該先端構造を具備する吸引用アダプター並びに吸引式洗浄ガンが提供される。
【0042】
また、この噴射ノズルを管状に形成することにより、当該管の抜き差し動作により、溝や穴に対する加圧エアーの噴出し又は吐出位置を自在に調整することができ、操作性が向上することになる。よって本発明では、塵埃、切削屑、又は切削油等を吸引除去する穴や溝が同じ深さに形成されていない場合であっても、クリーニング操作中においても、その吸引具合に応じて加圧エアーの突出を調整し、最適なクリーニング効果を得られるようにした吸引機器の先端構造、および当該先端構造を具備する吸引用アダプター並びに吸引式洗浄ガンを提供することができる。
【0043】
更に噴射ノズルを吸引部分の軸芯に対して偏心した位置に、進退自在に設けた場合には、塵埃、切削屑又は切削油等の異物を吸引するための空間を最大限に大きくすることができ、これにより吸引部分の内径程度の大きさの物でも吸引可能にした吸引機器の先端構造、および当該先端構造を具備する吸引用アダプター並びに吸引式洗浄ガンを提供することができる。
【0044】
そして噴射ノズルを管状に形成し、筒状に構成されている吸引部分の壁面内に管状の噴射ノズルを軸方向にスライド自在に収容するガイド孔を形成した場合には、当該噴射ノズルから噴射する流体の反作用、或いは吸引部分における吸引力によっても、当該噴射ノズルがブレたり揺動したりすることが無く、安定して目的の場所に進入させることができる。更に、吸引される異物が噴射ノズルに引っかかって詰まらせる虞をなくして、メンテナンスしやすい吸引機器の先端構造、および当該先端構造を具備する吸引用アダプター並びに吸引式洗浄ガンを提供することができる。