(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5728208
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】印刷回路基板及びその配線方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20150514BHJP
【FI】
H05K1/02 J
【請求項の数】17
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-262797(P2010-262797)
(22)【出願日】2010年11月25日
(65)【公開番号】特開2011-119726(P2011-119726A)
(43)【公開日】2011年6月16日
【審査請求日】2013年9月20日
(31)【優先権主張番号】200910310726.4
(32)【優先日】2009年12月1日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】500080546
【氏名又は名称】鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】林 有旭
【審査官】
吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−201000(JP,A)
【文献】
特開2005−101587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H01P 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷回路基板に、信号層及び前記信号層上に位置する2つのディファレンシャル信号線対を配置するステップと、
第一距離を確定し、前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離が前記第一距離より大きい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅或いはアイ高さは大きくなり、前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離が前記第一距離より小さい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅或いはアイ高さは大きくなるステップと、
前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離を前記第一距離より小さな第二距離に設定して、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅及びアイ高さを、ディファレンシャル配線のアイパターンに対する要求に適合させるステップと、
を備えることを特徴とする印刷回路基板の配線方法。
【請求項2】
前記第一距離より小さな第三距離及び第五距離を確定するステップをさらに備え、
前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離が前記第三距離より大きい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅は小さくなり、 前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離が前記第三距離より小さい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅は小さくなり、
前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離が前記第五距離より大きい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ高さは小さくなり、
前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離が前記第五距離より小さい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ高さは小さくなり、
前記第二距離は、前記第一距離より小さく、且つ前記第三距離より大きいか又は前記第三距離に等しく、前記第五距離より大きいかまたは前記第五距離に等しいことを特徴とする請求項1に記載の印刷回路基板の配線方法。
【請求項3】
前記第二距離を設定するステップは、アイ幅により確定した第二距離及びアイ高さにより確定した第二距離を比較して、その中でより大きいほうの第二距離を前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離に設定するステップを備えることを特徴とする請求項2に記載の印刷回路基板の配線方法。
【請求項4】
前記第一距離を確定するステップにおいて、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端で、アイパターン波型におけるアイ幅或いはアイ高さと前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離との関連曲線を獲得し、該関連曲線でのアイ幅或いはアイ高さの最小値を第一距離とすることを特徴とする請求項1に記載の印刷回路基板の配線方法。
【請求項5】
前記第一距離を確定するステップにおいて、
信号発生器を各々のディファレンシャル信号線対の入力端にそれぞれ電気接続すると同時に、オシロスコープを各々のディファレンシャル信号線対の出力端にそれぞれ電気接続し、
前記信号発生器は、固定周波数の信号を発送し、前記オシロスコープは、出力信号のアイパターン波型を生成することを特徴とする請求項4に記載の印刷回路基板の配線方法。
【請求項6】
前記アイパターン波型におけるアイ幅或いはアイ高さと2つのディファレンシャル信号線対の間の距離との関連曲線は、非対称な下に凸の曲線であり、
前記非対称な下に凸の曲線の底部に対応する2つのディファレンシャル信号線対の間の距離が第一距離であることを特徴とする請求項4に記載の印刷回路基板の配線方法。
【請求項7】
信号層及び前記信号層上に位置する2つのディファレンシャル信号線対を備え、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅或いはアイ高さが前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離の変化に従って変更された印刷回路基板であって、
前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離が第一距離である場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅或いはアイ高さは、最小値になり、
前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離が前記第一距離より小さな左臨界距離より小さな第二距離である場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅及びアイ高さは、ディファレンシャル配線のアイパターンに対する要求に適合することを特徴とする印刷回路基板。
【請求項8】
前記第二距離は、前記左臨界距離より小さいか又は前記左臨界距離に等しく且つ第三距離より大きいか又は前記第三距離に等しく、第五距離より大きいか又は前記第五距離に等しく、
前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離が前記第三距離である場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅は、波峰値になり、
前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離が前記第五距離である場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ高さは、波峰値になることを特徴とする請求項7に記載の印刷回路基板。
【請求項9】
前記第二距離は、アイ幅により確定した第二距離及びアイ高さにより確定した第二距離の中のより大きいほうの値であることを特徴とする請求項8に記載の印刷回路基板。
【請求項10】
印刷回路基板に、信号層及び前記信号層上に位置する2つのディファレンシャル信号線対を配置するステップと、
前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端で、アイパターン波型におけるアイ幅或いはアイ高さと前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離との関連曲線を獲得するステップと、
前記関連曲線で左臨界点及び右臨界点を確定し、前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離が前記左臨界点に対応する2つのディファレンシャル信号線対の間の左臨界距離より小さい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅或いはアイ高さは大きくなり、前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離が前記右臨界点に対応する2つのディファレンシャル信号線対の間の右臨界距離より大きい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅或いはアイ高さは大きくなるステップと、
前記左臨界距離より小さいか又は前記左臨界距離に等しい第二距離を確定し、前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離を前記第二距離に設定して、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅及びアイ高さを、ディファレンシャル配線のアイパターンに対する要求に適合させるステップと、
を備えることを特徴とする印刷回路基板の配線方法。
【請求項11】
前記左臨界距離より小さな第三距離及び第五距離を確定するステップをさらに備え、
前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離が前記第三距離より大きい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅は小さくなり、 前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離が前記第三距離より小さい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅は小さくなり、
前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離が前記第五距離より大きい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ高さは小さくなり、
前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離が前記第五距離より小さい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ高さは小さくなり、
前記第二距離は、前記左臨界距離より小さいか又は前記左臨界距離に等しく、且つ前記第三距離より大きいか又は前記第三距離に等しく、前記第五距離より大きいかまたは前記第五距離に等しいことを特徴とする請求項10に記載の印刷回路基板の配線方法。
【請求項12】
前記第二距離を確定するステップは、アイ幅により確定した第二距離及びアイ高さにより確定した第二距離を比較して、その中でより大きいほうの第二距離を前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離に設定するステップを備えることを特徴とする請求項11に記載の印刷回路基板の配線方法。
【請求項13】
前記第三距離を確定するステップにおいて、
信号発生器を各々のディファレンシャル信号線対の入力端にそれぞれ電気接続すると同時に、オシロスコープを各々のディファレンシャル信号線対の出力端にそれぞれ電気接続し、
前記信号発生器は、固定周波数の信号を発送し、前記オシロスコープは、出力信号のアイパターン波型を生成することを特徴とする請求項11に記載の印刷回路基板の配線方法。
【請求項14】
前記第三距離を確定するステップは、前記オシロスコープが出力信号のアイパターン波型を生成した後に、アイパターンのアイ幅或いはアイ高さが2つのディファレンシャル信号線対の間の距離に従って変化する非対称的な下に凸の曲線を獲得し、選ばれた2つのディファレンシャル信号線対の間の距離が前記右臨界距離より小さい時に、前記非対称的な下に凸の曲線の波峰値に対応する2つのディファレンシャル信号線対の間の距離を第三距離とするステップをさらに備えることを特徴とする請求項13に記載の印刷回路基板の配線方法。
【請求項15】
印刷回路基板に、信号層及び前記信号層上に位置する2つのディファレンシャル信号線対を配置するステップと、
前記2つのディファレンシャル信号線対の間の左臨界距離及び右臨界距離を確定して、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅及びアイ高さをディファレンシャル配線のアイパターンに対する要求に適合させ、前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離が前記右臨界距離より大きい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅或いはアイ高さは大きくなり、前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離が前記右臨界距離より小さい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅或いはアイ高さは小さくなるステップと、
前記左臨界距離より小さな第二距離を確定して、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅及びアイ高さをディファレンシャル配線のアイパターンに対する要求に適合させ、前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離を前記第二距離より小さいか又は前記第二距離に等しくするステップと、
を備えることを特徴とする印刷回路基板の配線方法。
【請求項16】
前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離が前記第二距離より大きく且つ前記右臨界距離より小さい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅及びアイ高さは、ディファレンシャル配線のアイパターンに対する要求に適合しないことを特徴とする請求項15に記載の印刷回路基板の配線方法。
【請求項17】
前記第二距離より小さいか又は前記第二距離に等しい第三距離及び第五距離を確定するステップをさらに備え、
前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離が前記第三距離より大きい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅は小さくなり、
前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離が前記第三距離より小さい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅は小さくなり、
前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離が前記第五距離より大きい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ高さは小さくなり、
前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離が前記第三距離より小さい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅は小さくなることを特徴とする請求項16に記載の印刷回路基板の配線方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディファレンシャル信号線対の配線空間を節約できる印刷回路基板及びその配線方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クロストーク(cross talk)は、1つの信号がチャンネルで伝送されている時、電磁気カップリングによって近接する信号転送線に影響を及ぼす。即ち、干渉される信号に一定のカップリング電圧及びカップリング電流が生じる。デジタル回路の設計領域において、クロストーク現象が広範に存在している。しかも、信号伝送速度の向上及び電子製品のコンパクト化に従って、デジタルシステムのクロストーク問題もさらに深刻になる。過大なクロストークは、システムの性能を害するだけではなく、回路の誤作動を引き起こし、システムが正常的に動作できないという結果を招く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の問題を解決するために、当業界では、通常、信号線のピッチを増大する方法でクロストーク現象を低減させ、信号アイパターン(eye pattern)波型におけるアイ幅(width of eye)及びアイ高さ(height of eye)を全てより大きい値にする。しかし、信号線のピッチの増大に伴って、配線空間が大きく費やされ、印刷回路基板の配線密度が低くなり、通信製品のコンパクト化が困難となる。
【0004】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、ディファレンシャル信号線対の配線空間を節約できる印刷回路基板及びその配線方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記問題を解決するために、本発明に係る印刷回路基板の配線方法は、印刷回路基板に信号層及び前記信号層の上に位置する2つのディファレンシャル信号線対を配置するステップと、第一距離を確定して、前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離が前記第一距離より大きい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅或いはアイ高さは大きくなり、また、前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離が前記第一距離より小さい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅或いはアイ高さは
大きくなるステップと、前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離を前記第一距離より小さな第二距離に設定して、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅及びアイ高さを、ディファレンシャル配線のアイパターンに対する要求に適合させるステップと、を備える。
【0006】
また、本発明に係る印刷回路基板は信号層を備え、前記信号層の上に2つのディファレンシャル信号線対を配置する。前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅或いはアイ高さは、前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離の変化に従って変更される。前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離が第一距離である場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅或いはアイ高さは最小値になる。前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離は前記第一距離より小さな
左臨界距離より小さな第二距離である場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅及びアイ高さは、ディファレンシャル配線のアイパターンに対する要求に適合する。
【0007】
また、本発明に係る印刷回路基板の配線方法は、印刷回路基板に信号層及び前記信号層の上に位置する2つのディファレンシャル信号線対を配置するステップと、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端で、アイパターン波型におけるアイ幅或いはアイ高さと前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離との関連曲線を獲得するステップと、前記関連曲線に対して左臨界点及び右臨界点を確定して、前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離は前記左臨界点に対応する2つのディファレンシャル信号線対の間の左臨界距離より小さい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅或いはアイ高さが大きくなり、前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離は前記右臨界点に対応する2つのディファレンシャル信号線対の間の右臨界距離より大きい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅或いはアイ高さが大きくなるステップと、前記左臨界距離より小さいか
又は前記左臨界距離に等しい第二距離を確定して、前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離を前記第二距離に設定して、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅及びアイ高さを、ディファレンシャル配線のアイパターンに対する要求に適合させるステップと、を備える。
【0008】
また、本発明に係る印刷回路基板の配線方法は、印刷回路基板に信号層及び前記信号層の上に位置する2つのディファレンシャル信号線対を配置するステップと、前記2つのディファレンシャル信号線対の間の
左臨界距離及び右臨界距離を確定して、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅及びアイ高さをディファレンシャル配線のアイパターンに対する要求に適合させる。前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離は前記右臨界距離より大きい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅或いはアイ高さは大きくなる。また、前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離は前記右臨界距離より小さい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅或いはアイ高さは小さくなるステップと、前記
左臨界距離より小さい第二距離を確定して、前記2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅及びアイ高さをディファレンシャル配線のアイパターンに対する要求に適合させ、前記2つのディファレンシャル信号線対の間の距離を前記第二距離より小さ
いか又は前記第二距離に等しくするステップと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る印刷回路基板及びその配線方法において、2つのディファレンシャル信号線対の間の距離を第二距離に設定して、2つのディファレンシャル信号線対の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅及びアイ高さをディファレンシャル配線のアイパターンに対する要求に適合させることによって、印刷回路基板におけるディファレンシャル信号線対の配線空間を大幅に節約する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る印刷回路基板の断面図であり、前記印刷回路基板内には少なくとも2つのディファレンシャル信号線対が配置されている。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る印刷回路基板の配線方法により得たアイパターン波型におけるアイ幅と2つのディファレンシャル信号線対の間のピッチとの関係を示す曲線図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係る印刷回路基板の配線方法により得たアイパターン波型におけるアイ高さと2つのディファレンシャル信号線対の間のピッチとの関係を示す曲線図である。
【
図4】本発明の第二実施形態に係る印刷回路基板の配線方法により得たアイパターン波型におけるアイ幅と2つのディファレンシャル信号線対の間のピッチとの関係を示す曲線図である。
【
図5】本発明の第二実施形態に係る印刷回路基板の配線方法により得たアイパターン波型におけるアイ高さと2つのディファレンシャル信号線対の間のピッチとの関係を示す曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示したように、本発明の印刷回路基板100は、下から上に向かって順次に配置される接地ベース層10、信号層20及び溶接阻止層40を備える。前記信号層20の上には、少なくとも2つのディファレンシャル(differential)信号線対31が配列されている。各々のディファレンシャル信号線対31は、第一信号線311及び第二信号線312を備える。前記第一信号線311の幅、厚さ及び長さは、それぞれW、T、Lであり、前記第二信号線312の幅、厚さ及び長さは、それぞれ前記第一信号線311と等しい。各々のディファレンシャル信号線対31の第一信号線311と第二信号線312との間のピッチは、Sであり、前記2つのディファレンシャル信号線対31の間のピッチは、DSである。前記信号層20の厚さは、Hであり、前記溶接阻止層40の厚さは、Tmである。
【0012】
第一実施形態において、各々のディファレンシャル信号線対31の第一信号線311及び第二信号線312の幅Wは、5mil(ミル)であり、厚さTは、1.9milであり、長さLは、12inch(インチ)である。各々のディファレンシャル信号線対31の第一信号線311と第二信号線312との間のピッチSは、7milである。前記信号層20において、厚さHは、4.2milであり、誘電率(permittivity)は、4.1である。前記溶接阻止層40において、厚さTmは、0.7milであり、誘電率は、3.4である。各々のディファレンシャル信号線対31の第一信号線311と第二信号線312との間のピッチSは、固定値である。ディファレンシャル信号の特質抵抗に対する要求を満たすために、前記ピッチSは、前記第一信号線311の幅W及び厚さT、前記信号層20の厚さH及び誘電率、前記溶接阻止層40の厚さTm及び誘電率などに応じて決める。
【0013】
各々のディファレンシャル信号線対31の入力端をそれぞれ1つの信号発生器に接続すると同時に、各々のディファレンシャル信号線対31の出力端をそれぞれ1つのオシロスコープに接続する。前記信号発生器のデータ伝送率は、8bit/秒であり、前記オシロスコープのデータ接取のビット・エラー・レート(Bit Error Rate,BER)は、1E−12である。
【0014】
図2及び
図3に示したように、テストする時に、前記2つのディファレンシャル信号線対31の間のピッチDSを変更すると、
図2に示したアイパターン波型におけるアイ幅とピッチDSとの関連図、及び
図3に示したアイパターン波型におけるアイ高さとピッチDSとの関連図を得る。
図2を参照すると、前記ピッチDSは、前記アイパターン波型のアイ幅を波谷(wave trough)値にさせる第一距離を有する。本実施形態おいて、前記第一距離は、7milである。前記2つのディファレンシャル信号線対31の間の距離が前記第一距離より大きい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対31の信号出力端のアイパターン波型のアイ幅或いはアイ高さは大きくなる。また、前記2つのディファレンシャル信号線対31の間の距離が前記第一距離より小さい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対31の信号出力端のアイパターン波型のアイ幅或いはアイ高さは小さくなる。前記ピッチDSは、前記第一距離より小さな第三距離を有し、前記第三距離は、前記出力信号アイパターン波型における前記第一距離より小さな距離に対応するアイ幅の値を最大にする。前記ピッチDSは、前記第一距離より大きな第四距離をさらに有し、前記第四距離に対応するアイ幅は、前記第三距離に対応するアイ幅と等しい。本実施形態において、前記第三距離は、3milであり、前記第四距離は、27.5milである。
【0015】
前記アイパターン波型におけるアイ幅とピッチDSとの関連図は、非対称な
下に凸の曲線である。前記非対称な
下に凸の曲線は、左臨界点A及び右臨界点Bを有する。前記左臨界点Aに対応する2つのディファレンシャル信号線対31間のピッチDSは、左臨界距離であり、前記右臨界点Bに対応する2つのディファレンシャル信号線対31間のピッチDSは、右臨界距離である。前記左臨界点A及び右臨界点Bに対応するアイ幅は、ディファレンシャル配線のクロストークに対する要求にちょうど適合するが、前記左臨界点Aと右臨界点Bとの間の他の点は、ディファレンシャル配線のクロストークに対する要求に適合しない。このため、前記ピッチDSを第二距離に設定し、前記第二距離を上述した左臨界距離より小さいか等しくすると共に、前記第三距離より大きいか等しくする。従来の配線において、通常信号線のピッチを増大する方法によりアイ幅を増大し、即ち、27.5milである第四距離をピッチDSとする。本発明においては、前記第三距離を採用して、27.5−3=24.5milの配線空間を節約でき、印刷回路基板の体積を大幅に減少させることが出来る。
【0016】
再び
図3を参照すると、前記ピッチDSは、前記第一距離より小さな第五距離を有し、前記第五距離は、前記出力信号アイパターン波型における前記第一距離より小さな距離に対応するアイ高さの値を最大にする。前記ピッチDSは、前記第一距離より大きな第六距離をさらに有し、前記第六距離に対応するアイ高さは、前記第五距離に対応するアイ高さと等しい。本実施形態において、前記第五距離は、3.5milであり、前記第六距離は、27milである。前記アイパターン波型におけるアイ高さとピッチDSとの関連図は、非対称な
下に凸の曲線である。前記非対称な
下に凸の曲線は、左臨界点C及び右臨界点Dを有する。前記左臨界点Cに対応する2つのディファレンシャル信号線対31間のピッチDSは、左臨界距離であり、前記右臨界点Dに対応する2つのディファレンシャル信号線対31間のピッチDSは、右臨界距離である。前記左臨界点C及び右臨界点Dに対応するアイ高さは、ディファレンシャル配線のアイパターンに対する要求にちょうど適合するが、前記左臨界点Cと右臨界点Dとの間の他の点は、ディファレンシャル配線のアイパターンに対する要求に適合しない。このため、前記ピッチDSを第二距離に設定し、前記第二距離を上述した左臨界距離より小さいか等しくすると共に、前記第五距離より大きいか等しくする。従来の配線において、通常信号線のピッチを増大する方法によりアイ高さを増大し、即ち、27milである第六距離を前記ピッチDSとする。本発明においては、前記第五距離を採用して、27−3.5=23.5milの配線空間を節約でき、印刷回路基板の体積を大幅に減少させることが出来る。通常、アイ幅に対応する第二距離とアイ高さに対応する第二距離とは、ほぼ等しい。前記アイ幅に対応する第二距離と前記アイ高さに対応する第二距離とが異なる場合、前記第二距離は、両者の中のより大きいほうの値に設定される。
【0017】
上述した第一実施形態によって、印刷回路基板100上に2つのディファレンシャル信号線対31を配置する場合、前記2つのディファレンシャル信号線対31の間の距離を3mil或いは3.5milに設定することができる。これにより、前記ディファレンシャル信号線対31間のクロストークを低減させるだけではなく、配線空間を大幅に節約できる。
【0018】
本発明の第二実施形態において、各々のディファレンシャル信号線対31の第一信号線311及び第二信号線312の幅Wは、5milであり、厚さTは、1.9milであり、長さLは、12inch(インチ)である。各々のディファレンシャル信号線対31の第一信号線311及び第二信号線312の間のピッチSは、10milである。前記信号層20において、厚さHは、4.2milであり、誘電率は、4.1である。前記溶接阻止層40において、厚さTmは、0.7milであり、誘電率は、3.4である。
【0019】
各々のディファレンシャル信号線対31の入力端をそれぞれ1つの信号発生器に接続すると同時に、各々のディファレンシャル信号線対31の出力端をそれぞれ1つのオシロスコープに接続する。前記信号発生器のデータ伝送率は、8bit/秒であり、前記オシロスコープのデータ接取のビット・エラー・レートは、1E−12である。
【0020】
図4及び
図5に示したように、テストする時に、前記2つのディファレンシャル信号線対31の間のピッチDSを変更すると、
図4に示したアイパターン波型におけるアイ幅とピッチDSとの関連図、及び
図5に示したアイパターン波型におけるアイ高さとピッチDSとの関連図を得る。
【0021】
図4を参照すると、前記ピッチDSは、前記アイパターン波型のアイ幅を波谷値にする第一距離を有する。本実施形態おいて、前記第一距離は、10milである。前記2つのディファレンシャル信号線対31の間の距離が前記第一距離より大きい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対31の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅或いはアイ高さが大きくなる。また、前記2つのディファレンシャル信号線対31の間の距離が前記第一距離より小さい場合、前記2つのディファレンシャル信号線対31の信号出力端のアイパターン波型におけるアイ幅或いはアイ高さが小さくなる。前記ピッチDSは、前記第一距離より小さな第三距離をさらに有し、前記第三距離は、前記出力信号アイパターン波型における前記第一距離より小さな距離に対応するアイ幅の値を最大にする。前記ピッチDSは、前記第一距離より大きな第四距離をさらに有し、前記第四距離に対応するアイ幅は、前記第三距離に対応するアイ幅と等しい。本実施形態において、前記第三距離は、3milであり、前記第四距離は、25milである。
【0022】
前記アイパターン波型におけるアイ幅とピッチDSとの関連図は、非対称な
下に凸の曲線である。前記非対称な
下に凸の曲線は、左臨界点E及び右臨界点Fを有する。前記左臨界点Eに対応する2つのディファレンシャル信号線対31間のピッチDSは、左臨界距離であり、前記右臨界点Fに対応する2つのディファレンシャル信号線対31間のピッチDSは、右臨界距離である。前記左臨界点E及び右臨界点Fに対応するアイ幅は、ディファレンシャル配線のアイパターンに対する要求にちょうど適合するが、前記左臨界点Eと右臨界点Fとの間の他の点は、ディファレンシャル配線のアイパターンに対する要求に適合しない。このため、前記ピッチDSを第二距離に設定し、前記第二距離を上述した左臨界距離より小さいか等しくすると共に、前記第三距離より大きいか等しくする。従来の配線において、通常、信号線のピッチを増大する方法によりアイ幅を増大し、即ち、25milである第四距離をピッチDSとする。本発明おいては、前記第三距離を採用して、25−3=22milの配線空間を節約でき、印刷回路基板の体積を大幅に減少させることが出来る。
【0023】
再び
図5を参照すると、前記ピッチDSは、前記第一距離より小さな第五距離をさらに有し、前記第五距離は、前記出力信号アイパターン波型における前記第一距離より小さな距離に対応するアイ高さの値を最大にする。前記ピッチDSは、前記第一距離より大きな第六距離をさらに有し、前記第六距離に対応するアイ高さは前記第五距離に対応するアイ高さと等しい。前記アイパターン波型におけるアイ高さとピッチDSとの関連図は、非対称な
下に凸の曲線である。前記非対称な
下に凸の曲線は、左臨界点G及び右臨界点Hを有する。前記左臨界点Gに対応する2つのディファレンシャル信号線対31間のピッチDSは、左臨界距離であり、前記右臨界点Hに対応する2つのディファレンシャル信号線対31間のピッチDSは、右臨界距離である。前記左臨界点G及び右臨界点Hに対応するアイ高さは、ディファレンシャル配線のアイパターンに対する要求にちょうど適合するが、前記左臨界点Gと右臨界点Hとの間の他の点は、ディファレンシャル配線のアイパターンに対する要求に適合しない。このため、前記ピッチDSを第二距離に設定し、前記第二距離を上述した左臨界距離より小さいか等しくすると共に、前記第五距離より大きいか等しくする。本発明においては、前記第二距離を採用して、25−3=22milの配線空間を節約でき、印刷回路基板の体積を大幅に減少させることが出来る。
【0024】
上述した第二実施形態によって、印刷回路基板100上に2つのディファレンシャル信号線対31を配置する場合、前記2つのディファレンシャル信号線対31の間の距離を3milに設定することができる。これにより、前記ディファレンシャル信号線対31間のクロストークを低減させるだけではなく、配線空間を大幅に節約できる。
【0025】
本発明の2つの実施形態から明らかなように、相隣するディファレンシャル信号線対に対して配線する時に、まず、アイパターン波型中のアイ幅と相隣するディファレンシャル信号線対のピッチDSとの関連図、及びアイ高さと前記ピッチDSとの関連図を獲得する。次に、前記関連図を介して、適宜なピッチDSを見い出す。このピッチDSにおいて、アイパターン波型におけるアイ幅及びアイ高さがより大きく、相隣するディファレンシャル信号線対の間のクロストークがより小さいだけではなく、相隣するディファレンシャル信号線対の間の距離がより小さくて、配線空間を節約することができる。
【0026】
なお、本発明は、前記信号層20上に2つのディファレンシャル信号線対を配置することに限定されず、その上に同じピッチDSに複数対のディファレンシャル信号線対を配置してもよい。
【0027】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形又は改良が可能であり、該変形又は改良も、本発明の特許請求の範囲内に含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0028】
10 接地ベース層
20 信号層
31 ディファレンシャル信号線対
40 溶接阻止層
100 印刷回路基板
311 第一信号線
312 第二信号線