(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5728209
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】遠心式ファン
(51)【国際特許分類】
F04D 29/44 20060101AFI20150514BHJP
F04D 29/42 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
F04D29/44 Q
F04D29/44 X
F04D29/42 J
【請求項の数】1
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2010-263053(P2010-263053)
(22)【出願日】2010年11月26日
(65)【公開番号】特開2012-112336(P2012-112336A)
(43)【公開日】2012年6月14日
【審査請求日】2013年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベア株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福田 貴子
(72)【発明者】
【氏名】小串 正樹
(72)【発明者】
【氏名】藤本 征也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 譲
【審査官】
加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第02201867(US,A)
【文献】
英国特許出願公告第01512294(GB,A)
【文献】
特開2000−341902(JP,A)
【文献】
特開平10−153196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/42−29/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状の主板と環状のシュラウドとの間に円周方向に多数の羽根を配設した羽根車をケーシング内に格納し、吸込み口から吸入した空気を前記羽根車の回転に伴う遠心力によって前記羽根車の径外方に向けて吹き出し、前記ケーシングから吹き出すようにした遠心式ファンであって、
前記ケーシングは四角形で、上板と下板と、前記上板と前記下板の間に介装した複数の支柱からなり、前記上板の4箇所のコーナー部近傍にはそれぞれ前記支柱が前記上板と一体成形にて形成され、前記ケーシングの側面は前記支柱のみを備えて開口を形成し、
前記羽根車の径外方に向けて吹き出された前記空気を前記開口から吹き出し、
前記羽根車は回転方向に対して後ろ向き羽根を備え、
前記複数の支柱は円筒形状であって、前記上板と前記下板を連結するための連結材を挿通し、
前記複数の支柱は側面を備えてなることを特徴とする遠心式ファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠心式ファンに係り、特に送風による騒音を低減した遠心式ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の遠心式ファンはモータの回転軸周りに多数の翼を配置した羽根車を吸込み口と吐出し口を有するスクロールケーシング内に格納した構成からなり、吸込み口から吸入された空気を羽根車の中心から翼間に流入させ、羽根車の回転に伴う遠心作用による流体力で羽根車の径外方に向けて噴出させる。そして羽根車の外周外側から噴出された空気はスクロールケーシング内部を通過し、高圧の空気となって吐出し口から噴出される。
【0003】
この遠心式ファンは、家電機器、OA機器、産業機器の冷却、換気、空調や、車両用の送風機などに広く用いられているが、この遠心式ファンはその構造から、送風性能と騒音は、羽根車の翼形状とスクロールケーシング形状に大きく影響される。
【0004】
このため、騒音を低減させ、送風性能の向上を図るために、羽根車の形状やスクロールケーシング構造を最適化することが行われており、いろいろな提案がなされている。羽根車においては、従来から翼形状を最適化することによって低騒音化を図る遠心式ファンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図11は特許文献1に記載の遠心式ファンを示す平面図、
図12は
図11の羽根車を示す斜視図である。遠心式ファンの羽根車120は、主板121と副板122の間に複数枚の翼123を設置したもので、翼123の内周側よりも外周側が羽根車120の回転方向に対して遅れて回転していくもので、羽根車120に渦巻状のケーシング127を取り付けて送風する。
【0006】
送風される空気は羽根車120の吸込口140から吸込まれ、羽根車120の翼123によって遠心作用による流体力を受けて羽根車120の外周から吐き出され、羽根車120の外周を囲繞する渦巻状のケーシング127によってケーシング127の吹出口141へ導出されて吹き出される。このように翼123の内周側よりも外周側が羽根車120の回転方向に対して遅れて回転していく羽根構造は後向き羽根で、回転方向に対して後向きに湾曲傾斜した羽根形状となっており、このような羽根形状を備えた遠心式ファンは、一般にターボファンと呼ばれる。
【0007】
図11に示すターボファンでは、同外径の主板121と副板122の間に複数枚の翼123を挟持し、翼123は副板側の翼円弧134よりも主板側の翼円弧135の方が短い円弧となるように切断した後縁にすることによって、主板側に位置する後縁131と副板側に位置する後縁132がケーシング舌部129を横切る時刻に時間差を設けることができ、翼123がケーシング舌部129を横切ることにより生じる圧力変動が時間的に分散され、音の発生エネルギーが分散されて騒音の発生が抑制されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭63−289295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、家電機器、OA機器、車両などの送風機に組み込まれる遠心式ファンには低騒音化及び小型化が強く求められている。
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載のターボファンでは、翼123の形状を検討して送風時の騒音の抑制を図ったものであるが、羽根車の外周から吐出された空気は渦巻状のケーシング127の内壁面に沿って吹出口141から吹き出す構成となっているため、渦巻状のケーシング127の内壁面や吹出口141付近で空気の流れに乱れが生じ易く、この空気の流れの乱れが騒音の要因となっている。
【0011】
また、渦巻状のケーシング127は羽根車120の外周に空気を吹出口に導くための流路を形成する必要があるため、渦巻状のケーシング127の外径は通常、羽根車120の外径の2倍程度の大きさを要する結果、ターボファンの小型化が難しいという問題がある。
【0012】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたもので、遠心式ファンのケーシング形状を改良することにより送風時の低騒音化を図ると共に、小型化を図った遠心式ファンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、遠心式ファンにおけるケーシング構造と騒音との関係について鋭意検討した。その結果、特にケーシング構造を最適化することによって遠心式ファンの低騒音化を図ることができることを知見した。
【0014】
具体的には、円板状の主板と環状のシュラウドとの間に円周方向に多数の羽根を配設した羽根車をケーシング内に格納し、吸込み口から吸入した空気を前記羽根車の回転に伴う
遠心力によって前記羽根車の径外方に向けて吹き出し、前記ケーシングから吹き出すようにした遠心式ファンであって、前記ケーシングは
四角形で、上板と下板と、前記上板と前記下板の間に介装した複数の支柱からなり、
前記上板の4箇所のコーナー部近傍にはそれぞれ前記支柱が前記上板と一体成形にて形成され、前記ケーシングの側面は前記支柱のみを備えて開口を形成し、前記羽根車の径外方に向けて吹き出された前記空気を前記開口から吹き出し、
前記羽根車は回転方向に対して後ろ向き羽根を備え、前記複数の支柱は円筒形状であって、前記上板と前記下板を連結するための連結材を挿通し、前記複数の支柱は側面を備え
てなることを特徴とする遠心式ファンである。
【発明の効果】
【0017】
本願請求項1に係る発明によれば、上板と下板を支柱で連結したケーシングの中に遠心式ファンの羽根車を格納し、前記ケーシングは側壁を備えておらず、側壁が開口を構成している。このため、羽根車の径外方に向けて吹き出した空気はケーシングの側壁によって乱れることがないため、送風時の空気の乱れによる騒音を大幅に抑制することができる遠心式ファンを提供できる。また、ケーシングは羽根車の外形寸法と略同じ寸法にて形成することができるため、従来の渦巻状のケーシングを用いた遠心式ファンに比べて小型化を図ることができる遠心式ファンを提供できる。
また、複数の支柱は円筒形状であって、上板と下板を連結するための連結材を挿通してなる構成のため、羽根車より吹き出された空気がほとんど抵抗を受けることなくケーシングの側面から外方に吹き出すことができるため、より低騒音化を図ることができる遠心式ファンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る遠心式ファンを示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す遠心式ファンにおけるケーシングの下板を取り除いた状態を示した平面図である。
【
図3】
図1に示す遠心式ファンの羽根車を示す図である。
【
図4】本発明の遠心式ファンにおける風量のシミュレーション結果を示した図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る遠心式ファンにおけるケーシングの下板を取り除いた状態を示した平面図である。
【
図7】
図4に示す遠心式ファンの断面図の一部を示した図である。
【
図8】従来の遠心式ファンにおける風量のシミュレーション結果を示した図である。
【
図9】
図8に示す従来の遠心式ファンの断面図の一部を示した図である。
【
図10】発明の遠心式ファンと従来の渦巻き状ケーシングを備えた遠心式ファンにおける静圧−風量特性を示した図である。
【
図12】
図11に示す遠心ファンの羽根車を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施形態に係る遠心式ファンを示す斜視図、
図2は
図1におけるケーシングの下板を取り外した状態を示した底面図、
図3は
図1における羽根車の平面図である。
【0022】
遠心式ファン1は多数の羽根4を配置した羽根車3と羽根車3を格納したケーシング10により構成されており、モータ2によって羽根車3が回転駆動される。
【0023】
羽根車3は、円周方向に等間隔で、多数の羽根4を配置し、これらの羽根4の一端側を主板5で支持し、羽根4の他端側を環状のシュラウド6で支持したもので、羽根4は主板5とシュラウド6とで挟持された構成となっている。主板5は円板状でその中央にカップ状のボス部7を有している。羽根4は所定の曲率で湾曲した形状であって、すべて同じ形状に形成されている。そして、カップ状のボス部7の内側にモータ2のロータ部を接合し、ロータ部の回転に伴って羽根車3が回転する。
【0024】
ケーシング10は正四角形であって、中央には円形の開口が形成された合成樹脂製の上板11と合成樹脂製の下板12から構成され、上板11の4箇所のコーナー部近傍にはそれぞれ支柱13が上板11と一体成形にて形成されている。そして、上板11と下板12の間には4箇所の支柱13を介装した構成で連結されている。上板11と下板12は、貫通孔14に挿通した連結材(例えば、ボルトやリベットなど)を締結することで連結される。上板11と下板12は4箇所の支柱13を挟持した構成で連結しているため、ケーシング10は側壁を備えていない。このため、ケーシング10の側面には支柱13のみを備えて開口が形成されている。そして、ケーシング10の内部には羽根車3が格納されている。支柱13の側面20は羽根4が有する円弧面の曲率半径の中心点(図示省略)と羽根4の外周縁の前縁24を通る線分Pが、支柱13の側面20と略一致するように形成している。これによって、支柱13の近傍にあっては羽根車3の外周縁から外方に吹き出される空気の吹き出し方向が支柱13の側面20と略一致させることができるため、羽根車3の外周縁から外方に吹き出される空気が支柱13によって乱されることなく側面20に沿って円滑にケーシング10の外方に吹き出される。
【0025】
羽根車3の外径寸法はケーシング10の一辺の寸法より小さく設定している。なお、羽根車3の外径寸法がケーシング10の一辺の寸法より大きい場合、回転する羽根車3がケーシング10の外縁より突出してしまうため、他部材との接触や接触による破損等の虞があり、好ましくない。このため、羽根車3の外径はケーシング10の外縁から突出しないように設定することが好ましい。
【0026】
上板11の上面の中央に形成された開口は吸込み口15となり、モータ2を駆動によるロータ部の回転に伴って羽根車3が回転することにより、吸込み口15から吸入された空気は羽根車3の回転に伴う遠心作用による流体力で羽根車3の径外方に向けて吹き出され、ケーシング10の側面の開口から外方に吹き出される。
【0027】
図3は
図1に示す羽根車3の平面図である。羽根車3の外径D2は120mm、内径D1は50mmで、羽根4は円周方向に等ピッチで配置され、羽根4の枚数は21枚に設定している。羽根4の出口角βは、ファンの回転軸中心Cと羽根4の外周縁とを結ぶ線分を半径とする円の接線と、羽根4との成す角度を出口角βと定義するとき、出口角βは45°に設定している。羽根6の入口角は、ファンの回転軸中心Cと羽根6の内周縁とを結ぶ線分を半径とする円の接線と、羽根4との成す角度を入口角αと定義するとき、入口角αは40°に設定しており、羽根車3の羽根4は回転方向に対して後向き羽根で、ターボファンとなっている。
【0028】
図4は
図1に示す本発明の遠心式ファンにおける風量のシミュレーション結果を示した図、
図5は
図4に示す支柱近傍の詳細図、
図7は
図4に示す図の断面図である。
【0029】
図8と
図9は従来の渦巻き状ケーシングを備えた遠心式ファンにおける風量のシミュレーション結果を示した図である。本発明の遠心式ファンおよび従来の渦巻き状ケーシングを備えた遠心式ファンにおける羽根車はいずれも
図3に示す構造を用いている。上記の図における風量のシミュレーションは静圧Pa=0における風量を示したものである。
【0030】
図4に示すように、本願発明の遠心式ファンでは、羽根車3の回転に伴って吸込み口15から吸い込まれた空気は羽根車3の羽根4の間を通過して羽根車3の外周縁から外方に吹き出される。このとき、ケーシング10の4つの側面はすべて支柱13のみを備えて開口を形成しているため、羽根車3から吹き出された空気はケーシング10の4つの側面の開口からケーシング10の外方に吹き出される。
【0031】
図5は
図4における支柱近傍の詳細図であり、支柱13の近傍における風量の状況を示している。
図5に示すように、羽根車3の羽根4の間を通過した空気は羽根車3の外周縁から外方に吹き出される。支柱13の側面20は羽根車3の外周縁から外方に吹き出される空気の吹き出し方向に一致するように形成されている。このため、支柱13の近傍にあっては、羽根車3の外周縁から外方に吹き出された空気は支柱13の側面20に沿って円滑に流れるので、支柱13の近傍での空気の流れに乱れが生じない。この結果、吹き出された空気の乱れによる騒音が大幅に抑制され、低騒音化できる。
【0032】
図2に示すように支柱13は、その外周側では上板11と下板12を連結するための連結材(例えば、ボルト、リベットなど)を逃げるために凹部21を形成しているが、これに限定されるものではなく、例えば、
図6に示すように、支柱13は、その外周側に凹部21に代えて円弧状の側壁25を形成し、支柱13に連結材を挿通のための貫通孔14を設けた構成であってもよい。円弧状の側壁25を形成することによって、凹部21に巻き込まれる空気の流れを防止することができるため、支柱13の外周面での空気の乱れを抑制できる。
【0033】
また、羽根車3の外周縁と、これに対向する支柱13の面との間の隙間は一定に形成されているが、支柱13の側面20から反対側の側面に向かって(
図5に示す角部22から角部23に向かって)、隙間が漸増するように形成してもよく、この場合、角部23近傍での空気の流れの集中を抑制でき、より低騒音を図ることができる。
【0034】
図7は
図4に示す遠心式ファンの断面図の一部である。
図7に示すように、羽根車3の回転に伴ってから吸込まれた空気は、吸込み口15付近での空気に乱れが生じることなく、効率よく羽根車3の羽根4の間に吸い込まれて通過していく様子がわかる。
【0035】
図8に示すように、従来の渦巻き状ケーシングを備えた遠心式ファンでは、羽根車3の回転に伴って吸込み口45から吸込まれた空気は羽根車3の羽根4の間を通過して羽根車3の外周縁から外方に吹き出される。羽根車3から吹き出された空気は渦巻き状ケーシング50の内壁51に案内されてケーシング50の吐出し口52から外方に吹き出されるが、
図4に示すように、羽根車3の外周縁から外方に吹き出されたた空気の一部は渦巻き状ケーシング50の内壁51に衝突して空気に乱れが生じており、この乱れた空気によってケーシング50の吐出し口52付近でも空気に乱れが生じている。この結果、吐出し口52付近での空気の乱れによって騒音が生じている。
【0036】
図9は
図8に示す図の断面図の一部である。
図9に示すように、羽根車3の回転に伴って吸込み口45から吸込まれた空気は、吸込み口45付近で空気に乱れが生じていることを示している。この空気の乱れは吸込み口45から吸込まれた空気が羽根車3の羽根4の間に吸い込まれた後、一部の空気が逆流していることを示している。このように、吸込み口45から吸込まれた空気の一部が環状のシュラウド6と羽根4との間から吸込み口45に逆流しているもので、この逆流によって、羽根車3の外周縁から外方に吹き出される空気の風量の減少につながっている。
【0037】
図1に示す本発明の遠心式ファンと
図8に示す従来の渦巻き状ケーシングを備えた遠心式ファンにおける騒音をJIS B8340に準拠して測定した結果、従来の渦巻き状ケーシングを備えた遠心式ファンが61dB(A)であるのに対して、本発明の遠心式ファンは54dB(A)であった。このように、本発明の遠心式ファンは従来の渦巻き状ケーシングを備えた遠心式ファン比べて大幅に騒音を抑制することができる。
【0038】
図10は
図1に示す本発明の遠心式ファンと
図8に示す従来の渦巻き状ケーシングを備えた遠心式ファンにおける静圧−風量特性(P−Q)特性を示した図である。羽根車はいずれも
図3に示す構造を用いている。
図10に示すように、本発明の遠心式ファンは従来の渦巻き状ケーシングを備えた遠心式ファン比べて最大静圧は低いが、逆に最大風量は従来の渦巻き状ケーシングを備えた遠心式ファンに比べて高くなっている。最大静圧が低い理由は本発明の遠心式ファン1が羽根車3から吹き出された空気の圧力を高めるための渦巻き状ケーシングを備えていないためによる。
【0039】
また、
図9に示すように、従来の渦巻き状ケーシング50を備えた遠心式ファンでは羽根車3から吹き出された空気が渦巻き状ケーシング50の内壁51に衝突し、その一部が羽根車3の中を逆流して吸込み口45に流れて込む現象が生じているが、本発明の遠心式ファンでは羽根車3から吹き出された空気がケーシング10の側面に形成された開口から吹き出されるため、空気が羽根車3の中を逆流して吸込み口15に流れて込む現象が生じない結果、風量を損なうことなく、最大風量を大きくできる。両者の羽根車の形状はいずれも同じで外径が120mmφであり、本発明の遠心式ファンのケーシングは一辺が120mm角である。一方、従来の渦巻き状ケーシングの外径は略190mmφである。したがって、本発明の遠心式ファンのケーシングを従来の渦巻き状ケーシングの外径と同じ190mm角にした場合には、
図10に示すP−Q特性がほぼ上方に平行移動する傾向を示すことになり、最大静圧は従来の渦巻き状ケーシングとほぼ同等となるため、最大風量は大幅に増加することができ、従来の渦巻き状ケーシングを備えた遠心式ファン比べてP−Q特性を大幅に向上することができる。このため、本発明の遠心式ファンは高い風量特性を有したファンを提供できる。
【0040】
本発明の遠心式ファンにおける用途は特に限定するものではなく、広範に利用可能であり、家電機器、OA機器、産業機器の冷却、換気、空調や、車両の送風機などに用いた場合には、従来の渦巻き状ケーシングを備えた遠心式ファン比べて騒音を抑制できると共に、高い風量特性を備えた遠心式ファンを提供することができる。
【0041】
本実施の形態では、ケーシング10は正四角形にて形成しているが、これに限定されるものではなく、多角形、円形、非対称形状を含め、任意のどのような形状であってもよい。支柱の形状は本実施の形態に限定されるものではなく、風量のシミュレーション結果に基づき、適宜、設定されるが、連結材を挿通できる程度の大きさを有する円筒形状であってもよい。連結材を挿通できる程度の大きさを有する円筒形状であれば、羽根車3より吹き出された空気がほとんど抵抗を受けることなくケーシング10の側面から外方に吹き出すことができるため、より低騒音化を図ることができる遠心式ファンを提供することができる。
【0042】
また、支柱の形状は連結材を挿通できる程度の大きさを有する翼形状であってもよく、翼形状を適切に設定することによって、羽根車3より吹き出された空気がほとんど抵抗を受けることなくケーシング10の側面から外方に吹き出すことができ、そして羽根車3より吹き出された空気の静圧を高めることができる遠心式ファンを提供することができる。
【0043】
本実施の形態における羽根車の羽根構造は後向き羽根で、回転方向に対して後向きに湾曲傾斜した羽根形状を有するターボファンであるが、渦巻き状ケーシングに起因する騒音を抑制できるという点では、羽根車の羽根構造は回転方向に対して前向きに湾曲傾斜した羽根形状を有するシロッコファンであってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 遠心式ファン
2 モータ
3 羽根車
4 羽根
5 主板
6
シュラウド
7 ボス部
10 ケーシング
11 上板
12 下板
13 支柱
14 貫通孔
15 吸込み口
20 側面
21 凹部
22 角部
23 角部
24 前縁
25 側壁