【実施例】
【0012】
<1>前提条件
本願発明は、道路橋の継手の構造に関するものである。
道路橋のコンクリート床版1は
図1に示すように橋脚Aの上に配置した鋼材の桁Bの上に設置してある。
そして隣接するコンクリート床版1との継手部分は、コンクリート床版1の伸縮を吸収できるだけの隙間を介在して位置している。
本発明は、このコンクリート床版1の端面である継手部分の改良に関するものである。
【0013】
<2>鉛直曲面
本発明のコンクリート床版1では、その道路の中心軸方向と直交する端面である継ぎ目を、曲線を連続した鉛直曲面2によって構成する。
そして、実際に道路橋として鋼材の桁Bの上に設置する場合には、一方のコンクリート床版1の鉛直曲面2の凹部を、隣接する他方のコンクリート床版1の鉛直曲面2の凸部に組み合わせ、隙間を介して対向する状態で設置する。
あるいは一方のコンクリート床版1の鉛直曲面2を、橋台側の継手の鉛直曲面2の凹凸に合わせ、隙間を介して対向する状態で設置する。
【0014】
<3>FRPで構成
この鉛直曲面2の表面をFRP板で構成する。
実際の床版1の構築に際しては、鉛直曲面2を構成するFRP板を、コンクリート床版1の妻板としての型枠として配置する。
そしてFRP板の裏側に鉄筋を配置し、コンクリートを打設してコンクリート床版1を形成する。
【0015】
<4>控え板
FRP板の鉛直曲面2の背面には、複数個所に控え板3を突出する。
この控え板3は床版1のコンクリートの内部に配置されることになる。
各控え板3には貫通孔31を開口して、これらの貫通孔31を貫通させて鉄筋などを配置する。
この貫通させた鉄筋は、道路橋の中心軸を横断する方向に配置することになる。
さらに、FRP板の鉛直曲面2の背面や、控え板3の表面には砂などの粒子を接着剤で塗布すると、コンクリート床版1とコンクリートとの付着を大きくすることもできる。
【0016】
<5>係合溝
FRP製の鉛直曲面2には、水平方向に係合溝4を連続して形成する。
FRP製の鉛直曲面2が連続した曲面を形成しているから、係合溝4もまた連続した曲線を形成することになる。
この係合溝4の溝底41と縁板は、鉛直曲面2から外側に向けて突出して状態で位置している。
実際の道路橋においてコンクリート床版1を鋼桁Bの上に配置する場合には、一方のコンクリート床版1の鉛直曲面2の係合溝4と、隣接する他方のコンクリート床版1の鉛直曲面2の係合溝4は対向する位置に配置されることになる。
【0017】
<6>止水帯
止水帯5は、ゴムなどの柔軟性、耐久性のある材料の薄い膜によって構成した断面V字状の長い部材である。
そしてその断面の両端には、折り返し縁51を形成する。
すなわち断面でみると、中央のV字状の両縁に、逆V字状の折り返し縁51を形成した形状を呈する。
この折り返し縁51の寸法は、前記した係合溝4の内部に、上から挿入できる厚さ、幅を備えている。
そして、実際にコンクリート床版1を鋼桁Bの上に配置した場合に、対向する場所に位置する両側の係合溝4の内部に、断面V字形の止水帯5の折り返し縁51を嵌合する。
この止水帯5の設置は、コンクリート床版1の配置後に行うから、狭い隙間からの作業になる。
しかし本発明の係合溝4は上向きの空間であり、止水帯5の折り返し縁51は下向きの単片であるから、何らかの治具を使用して上から押込めるだけで、両者をパチッと嵌合することができる。
【0018】
<7>止水帯の撤去と再設置
図4に示すように、道路橋Iと、道路橋IIのコンクリート床版1の継手部Cには隙間が存在する。
そのために、この隙間から砂や塵埃が挿入し、それらがタイヤで押込められるので止水帯5は破損しやすい。
破損したら撤去して再設置をする必要があるが、その場合に、道路橋の交通の支障になる時間を短くするために、破損した止水帯5の撤去と、再設置の作業は簡単で短時間に完了する作業であることが要求される。
その点で本発明の止水帯5の設置構造は、前記したように係合溝4は上向きの空間であり、止水帯5の折り返し縁51は下向きの単片であるから、何らかの治具を使用して上から引き揚げるだけで容易に止水帯5を係合溝4から引き出すことができる。
再設置の際には、引き出して撤去した後に、何らかの治具を使用して上から押込めるだけで、再度、両者をパチッと嵌合することができる。
【0019】
<8>均一な摩耗(
図5)
上記したように本願発明の継手では、その端面はFRP製の鉛直曲面2で構成してある。
そのために、従来の鋼材と比較して、タイヤの通過による摩擦に対する抵抗が大きくない。
そのために、
図5に示すように、FRP製の端面の鉛直曲面2はコンクリート1の摩耗と同時に摩耗してゆく。
したがって従来の鋼板製の継手構造のように、端面の板だけが地上部分へ突出することがない。
その結果、端面とコンクリートとの一体化が長く維持され、両者間に隙間が生じたり、その隙間に雨水や塩水が浸入することがない。