特許第5728255号(P5728255)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5728255
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】道路橋の継手の構造
(51)【国際特許分類】
   E01C 11/02 20060101AFI20150514BHJP
   E01D 19/06 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   E01C11/02 A
   E01D19/06
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-47645(P2011-47645)
(22)【出願日】2011年3月4日
(65)【公開番号】特開2012-184577(P2012-184577A)
(43)【公開日】2012年9月27日
【審査請求日】2013年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000161356
【氏名又は名称】宮地エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505398963
【氏名又は名称】西日本高速道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】久保 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】桑山 豊六
(72)【発明者】
【氏名】福永 靖雄
(72)【発明者】
【氏名】今村 壮宏
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−018615(JP,A)
【文献】 実公昭51−034747(JP,Y2)
【文献】 特開平05−272104(JP,A)
【文献】 特開2008−280728(JP,A)
【文献】 特開昭54−071825(JP,A)
【文献】 実開昭59−107609(JP,U)
【文献】 特許第3442362(JP,B2)
【文献】 米国特許第04332504(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 11/02
E01D 19/06
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路橋のコンクリート床版の道路の中心軸横断方向の端面を、曲線を連続した鉛直曲面によって構成し、
その表面は摩擦に対する抵抗が大きくなく、コンクリートの摩耗とともに摩耗してゆくFRPの鉛直曲面で構成し、
FRP板の鉛直曲面の背面には控え板を突出し、
控え板はコンクリートの内部に配置した、
道路橋の継手の構造。
【請求項2】
道路橋のコンクリート床版の道路の中心軸横断方向の端面を、曲線を連続した鉛直曲面によって構成し、
その表面は摩擦に対する抵抗が大きくなく、コンクリートの摩耗とともに摩耗してゆくFRPの鉛直曲面で構成し、
その表面のFRP製の鉛直曲面には、水平方向に鉛直曲面から突出した状態の係合溝を連続して形成し、
ひとつのコンクリート床版を隣接するコンクリート床版と端面を対向して設置した場合に、
一方の鉛直曲面の係合溝と他方の鉛直曲面の係合溝は、相互に対向する位置に配置でき、
両側の係合溝の内部に断面V字形の止水ゴムの折り返し端部を嵌合し得るように構成した、
道路橋の継手の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路橋の継手の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート床版で構成した道路橋は、コンクリートの伸縮を吸収するために継手部に間隔を設けてある。
しかしその間隔から雨水などが落下しては不都合なので、落下しないような工夫を施してある。
例えば図6に示すように、床版コンクリートaの端面の鋼製の端面板bの間の継手部cに伸縮性の膜dを取り付けたり、シール材を充填して構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3442362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記したような従来の道路橋の継手の構造にあっては、次のような問題点がある。
【0005】
まず、継手部の端面板bを鋼製の板材で構成したことによる問題は以下の通りである。
<1> 継手の端面板bが鋼製の板材であるために大きい耐摩耗性を備えている。
<2> 一方、コンクリート版aの路面やその上の舗装面はタイヤの通過、打撃で摩耗しやすい。
<3> そのために、摩耗しにくい鋼製の端面板bと、コンクリートaとの間に、図7に示すように、摩耗の結果による段差が生じてしまう。
<4> すると、先に摩耗したり破損したコンクリートaと、摩耗の遅れる鋼製の端面板bとの段差で、端面板bが突出した状態となり、その端面板bの側面に、通行する自動車のタイヤが乗り上げてジャンプして落下する。その繰り返しの衝撃によってコンクリートaが損傷を受け続ける。
<5> その繰り返しの打撃によって、コンクリートaが損傷を受けると、コンクリートaの摩耗部分に雨水が溜まり、溜まった水が端面板bとの隙間から浸入して、端面板bを錆びさせる結果となる。
<6> 特に凍結防止のために塩を散布する地域では、塩分がコンクリートaと鋼製の端面板bとの隙間に浸入して鋼材の腐食を早める。
【0006】
次に継手部の止水の問題は次の通りである。
<1> 従来の継手の止水は、継手間に充填した膨張材や、図6に示すように両者間に張り渡した伸縮膜dによって行っている。
<2> この伸縮膜dが破損した場合に、交換する必要があるが、破損した膜dの撤去と新たな膜dの取り付けを行う際に、わずか数cmの狭い継ぎ目の隙間から行なわなければならず、非常に困難な作業であり、信頼性の低いものだった。
<3> さらに伸縮膜dの両端部を、鉛直な端面板dに取り付けているだけであるから、冬季にコンクリートaが収縮して継手部cの間隔が開くと、剥離しやすい構造であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような課題を解決する本発明の道路橋の継手の構造は、道路橋のコンクリート床版の道路の中心軸横断方向の端面を、曲線を連続した鉛直曲面によって構成し、その表面は摩擦に対する抵抗が大きくなく、コンクリートの摩耗とともに摩耗してゆくFRPの鉛直曲面で構成し、FRP板の鉛直曲面の背面には控え板を突出し、控え板はコンクリートの内部に配置したものである。
また本発明の道路橋の継手の構造は、道路橋のコンクリート床版の道路の中心軸横断方向の端面を、曲線を連続した鉛直曲面によって構成し、その表面は摩擦に対する抵抗が大きくなく、コンクリートの摩耗とともに摩耗してゆくFRPの鉛直曲面で構成し、その表面のFRP製の鉛直曲面には、水平方向に鉛直曲面から突出した状態の係合溝を連続して形成し、ひとつのコンクリート床版を隣接するコンクリート床版と端面を対向して設置した場合に、一方の鉛直曲面の係合溝と他方の鉛直曲面の係合溝は、相互に対向する位置に配置でき、両側の係合溝の内部に断面V字形の止水ゴムの折り返し端部を嵌合し得るように構成したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の道路橋の継手の構造は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
まずFRP板を使用したための効果は次の通りである。
<1> FRP製の鉛直曲面は、摩擦に対する抵抗が大きくないから、コンクリートの摩耗とともに摩耗してゆき、鋼板のように突出することがない。
<2> そのためにコンクリートとの一体化が維持され、隙間が生じたり、その隙間に雨水や塩水が浸入することがない。
<3> 鋼板と異なって塩水によっても腐食することがない。
<4> 軽量であるから、設置作業、交換作業が容易である。
【0009】
また係合溝を設けたための効果は次の通りである。
<1> わずか数cmの狭い隙間からの止水帯の撤去も嵌合も、すべて鉛直方向の作業であるから、作業が容易であり、嵌合後の信頼性が高い。
<2> 係合溝が鉛直方向に形成してあるから、冬季に鉛直面間の間隔が開いた場合にも止水帯が鉛直面から剥離することがない。
<3> したがって長期にわたって継手部分における止水性について、高い信頼性を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の道路橋の継手の構造の全体の説明図。
図2】鉛直曲面の実施例の背面から見た説明図。
図3】継手の部分の断面図。
図4】継手の部分の平面図。
図5】コンクリートともに曲面を構成するFRP板も摩耗する状態の説明図。
図6】従来の継手の止水構造の一例の説明図。
図7】従来の鋼製の継手とコンクリートの摩耗状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面を参照にしながら本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0012】
<1>前提条件
本願発明は、道路橋の継手の構造に関するものである。
道路橋のコンクリート床版1は図1に示すように橋脚Aの上に配置した鋼材の桁Bの上に設置してある。
そして隣接するコンクリート床版1との継手部分は、コンクリート床版1の伸縮を吸収できるだけの隙間を介在して位置している。
本発明は、このコンクリート床版1の端面である継手部分の改良に関するものである。
【0013】
<2>鉛直曲面
本発明のコンクリート床版1では、その道路の中心軸方向と直交する端面である継ぎ目を、曲線を連続した鉛直曲面2によって構成する。
そして、実際に道路橋として鋼材の桁Bの上に設置する場合には、一方のコンクリート床版1の鉛直曲面2の凹部を、隣接する他方のコンクリート床版1の鉛直曲面2の凸部に組み合わせ、隙間を介して対向する状態で設置する。
あるいは一方のコンクリート床版1の鉛直曲面2を、橋台側の継手の鉛直曲面2の凹凸に合わせ、隙間を介して対向する状態で設置する。
【0014】
<3>FRPで構成
この鉛直曲面2の表面をFRP板で構成する。
実際の床版1の構築に際しては、鉛直曲面2を構成するFRP板を、コンクリート床版1の妻板としての型枠として配置する。
そしてFRP板の裏側に鉄筋を配置し、コンクリートを打設してコンクリート床版1を形成する。
【0015】
<4>控え板
FRP板の鉛直曲面2の背面には、複数個所に控え板3を突出する。
この控え板3は床版1のコンクリートの内部に配置されることになる。
各控え板3には貫通孔31を開口して、これらの貫通孔31を貫通させて鉄筋などを配置する。
この貫通させた鉄筋は、道路橋の中心軸を横断する方向に配置することになる。
さらに、FRP板の鉛直曲面2の背面や、控え板3の表面には砂などの粒子を接着剤で塗布すると、コンクリート床版1とコンクリートとの付着を大きくすることもできる。
【0016】
<5>係合溝
FRP製の鉛直曲面2には、水平方向に係合溝4を連続して形成する。
FRP製の鉛直曲面2が連続した曲面を形成しているから、係合溝4もまた連続した曲線を形成することになる。
この係合溝4の溝底41と縁板は、鉛直曲面2から外側に向けて突出して状態で位置している。
実際の道路橋においてコンクリート床版1を鋼桁Bの上に配置する場合には、一方のコンクリート床版1の鉛直曲面2の係合溝4と、隣接する他方のコンクリート床版1の鉛直曲面2の係合溝4は対向する位置に配置されることになる。
【0017】
<6>止水帯
止水帯5は、ゴムなどの柔軟性、耐久性のある材料の薄い膜によって構成した断面V字状の長い部材である。
そしてその断面の両端には、折り返し縁51を形成する。
すなわち断面でみると、中央のV字状の両縁に、逆V字状の折り返し縁51を形成した形状を呈する。
この折り返し縁51の寸法は、前記した係合溝4の内部に、上から挿入できる厚さ、幅を備えている。
そして、実際にコンクリート床版1を鋼桁Bの上に配置した場合に、対向する場所に位置する両側の係合溝4の内部に、断面V字形の止水帯5の折り返し縁51を嵌合する。
この止水帯5の設置は、コンクリート床版1の配置後に行うから、狭い隙間からの作業になる。
しかし本発明の係合溝4は上向きの空間であり、止水帯5の折り返し縁51は下向きの単片であるから、何らかの治具を使用して上から押込めるだけで、両者をパチッと嵌合することができる。
【0018】
<7>止水帯の撤去と再設置
図4に示すように、道路橋Iと、道路橋IIのコンクリート床版1の継手部Cには隙間が存在する。
そのために、この隙間から砂や塵埃が挿入し、それらがタイヤで押込められるので止水帯5は破損しやすい。
破損したら撤去して再設置をする必要があるが、その場合に、道路橋の交通の支障になる時間を短くするために、破損した止水帯5の撤去と、再設置の作業は簡単で短時間に完了する作業であることが要求される。
その点で本発明の止水帯5の設置構造は、前記したように係合溝4は上向きの空間であり、止水帯5の折り返し縁51は下向きの単片であるから、何らかの治具を使用して上から引き揚げるだけで容易に止水帯5を係合溝4から引き出すことができる。
再設置の際には、引き出して撤去した後に、何らかの治具を使用して上から押込めるだけで、再度、両者をパチッと嵌合することができる。
【0019】
<8>均一な摩耗(図5
上記したように本願発明の継手では、その端面はFRP製の鉛直曲面2で構成してある。
そのために、従来の鋼材と比較して、タイヤの通過による摩擦に対する抵抗が大きくない。
そのために、図5に示すように、FRP製の端面の鉛直曲面2はコンクリート1の摩耗と同時に摩耗してゆく。
したがって従来の鋼板製の継手構造のように、端面の板だけが地上部分へ突出することがない。
その結果、端面とコンクリートとの一体化が長く維持され、両者間に隙間が生じたり、その隙間に雨水や塩水が浸入することがない。
【符号の説明】
【0020】
1:床版コンクリート
2:鉛直曲面
3:控え板
4:係合溝
5:止水帯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7