特許第5728303号(P5728303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5728303
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】打撃工具
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/02 20060101AFI20150514BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   B25B21/02 G
   B25F5/00 A
   B25B21/02 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-133487(P2011-133487)
(22)【出願日】2011年6月15日
(65)【公開番号】特開2013-828(P2013-828A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2014年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】長坂 英紀
(72)【発明者】
【氏名】清原 隆志
【審査官】 橋本 卓行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−278907(JP,A)
【文献】 特開2010−058186(JP,A)
【文献】 特開2010−036260(JP,A)
【文献】 特開2007−330065(JP,A)
【文献】 特開平11−333763(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0263008(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/02
B25F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータのステータコイルが巻装されるステータコアを収容するハウジングの前方に、前記モータの出力軸が挿入されるハンマケースを組み付けて、前記ハンマケースに、前記出力軸から回転伝達されるスピンドルと、前記スピンドルの出力を回転方向への間欠的な打撃作動に変換可能な打撃機構と、を内設して、前記ハンマケースの後端に、前記出力軸が貫通する蓋部材を一体に結合し、前記ハウジング内に、前記ステータコア側と前記ハンマケース側との間を仕切り前記出力軸が貫通する仕切壁を設け、前記ハウジングの側面に前記モータの冷却用空気の吸気口を設けた打撃工具であって、
前記ステータコアの前面に、前記出力軸が貫通して前記ステータコアの前面を閉塞する閉塞体を設け、前記閉塞体と前記仕切壁との間に、前記出力軸が貫通して前記閉塞体と前記仕切壁との間の隙間を塞ぐリング状の防水部材を備えることを特徴とする打撃工具。
【請求項2】
前記蓋部材の後面に、前記出力軸を軸支する軸受を保持して前記閉塞体側へ向けて環状に突出形成された軸受部を設けて、
前記閉塞体と前記仕切壁との間で前記軸受部の外周に、前記防水部材を取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の打撃工具。
【請求項3】
前記閉塞体は電気回路基板であることを特徴とする請求項1又は2に記載の打撃工具。
【請求項4】
前記ステータコアにおける前記閉塞体よりも後方位置に、前記吸気口から前記ハウジング内に導入された前記冷却用空気を前記ステータコア内に取り入れる空気取入口を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の打撃工具。
【請求項5】
前後方向に延設される胴体部と、前記胴体部から該胴体部の下方に延びるハンドル部と、を有するハウジングと、
前記胴体部の内部に配置されるベアリングボックスと、
前記胴体部の内部であって前記ベアリングボックスの後方に配置されるブラシレスモータと、
前記胴体部に設けられて、前記ブラシレスモータの冷却用空気を該胴体部の内部に導入する吸気口と、
前記胴体部に設けられて、前記冷却用空気を前記胴体部の外部へ排出する排気口と、
前記ブラシレスモータの前面に固定されて該ブラシレスモータの出力軸が貫通する基板と、
前記基板の前方で前記ベアリングボックスの後面に保持される軸受と、を有し、
前記基板を貫通した前記出力軸が前記軸受に軸支される電動工具であって、
前記基板の前面と前記軸受との間の隙間を塞ぐ防水部材を設けたことを特徴とする電動工具。
【請求項6】
前後方向に延設される胴体部と、前記胴体部から該胴体部の下方に延びるハンドル部と、を有するハウジングと、
前記胴体部の内部に配置されるベアリングボックスと、
前記胴体部の内部であって前記ベアリングボックスの後方に配置されるブラシレスモータと、
前記胴体部に設けられて、前記ブラシレスモータの冷却用空気を該胴体部の内部に導入する吸気口と、
前記胴体部に設けられて、前記冷却用空気を前記胴体部の外部へ排出する排気口と、
前記ブラシレスモータの前面に固定されて該ブラシレスモータの出力軸が貫通する基板と、
前記基板の前方で前記ベアリングボックスの後面に保持される軸受と、を有し、
前記基板を貫通した前記出力軸が前記軸受に軸支される電動工具であって、
前記基板の前方側から前記軸受へと水が浸入することを防ぐ防水部材を設けたことを特徴とする電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータを収容するハウジングの前方に、打撃機構等を内設するハンマケースを組み付けた打撃工具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、回路基板のスイッチング素子を効果的に冷却してモータの安定した動作を可能としたインパクトドライバが開示されている。特許文献1のインパクトドライバでは、モータを収容するハウジングに、モータの冷却用空気を導入する吸気口を設けて、前記吸気口の近傍におけるハウジングの内壁に沿って、ハウジングの内方へ延びるリング状の気流制御リブを形成している。特許文献1のインパクトドライバによれば、気流制御リブによって、冷却用空気がモータを構成する回路基板のスイッチング素子の近傍を通過するようにして、スイッチング素子が冷却用空気によって効率良く冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−72867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のインパクトドライバに代表される打撃工具を屋外に放置した状態で雨が降り出した場合等には、吸気口から雨水等がハウジング内に浸入することがあった。このような場合には、ハウジング内に浸入した雨水等が、ハウジングの前方に組み付けてモータの出力軸が挿入されるハンマケース内に、前記出力軸を挿入可能な貫通孔から浸入することが考えられる。その結果、ハンマケース内でモータの出力軸から回転伝達されるスピンドルの軸受や、ハンマケース内の打撃機構に動作不良等の不具合が生じることが懸念される。
【0005】
この発明は、このような状況に鑑み提案されたものであって、打撃機構等を内設するハンマケースに対する防水性を高めた打撃工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る打撃工具は、モータのステータコイルが巻装されるステータコアを収容するハウジングの前方に、前記モータの出力軸が挿入されるハンマケースを組み付けて、前記ハンマケースに、前記出力軸から回転伝達されるスピンドルと、前記スピンドルの出力を回転方向への間欠的な打撃作動に変換可能な打撃機構と、を内設して、前記ハンマケースの後端に、前記出力軸が貫通する蓋部材を一体に結合し、前記ハウジング内に、前記ステータコア側と前記ハンマケース側との間を仕切り前記出力軸が貫通する仕切壁を設け、前記ハウジングの側面に前記モータの冷却用空気の吸気口を設けた打撃工具であって、前記ステータコアの前面に、前記出力軸が貫通して前記ステータコアの前面を閉塞する閉塞体を設け、前記閉塞体と前記仕切壁との間に、前記出力軸が貫通して前記閉塞体と前記仕切壁との間の隙間を塞ぐリング状の防水部材を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、前記蓋部材の後面に、前記出力軸を軸支する軸受を保持して前記閉塞体側へ向けて環状に突出形成された軸受部を設けて、前記閉塞体と前記仕切壁との間で前記軸受部の外周に、前記防水部材を取り付けたことを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記閉塞体は電気回路基板であることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記ステータコアにおける前記閉塞体よりも後方位置に、前記吸気口から前記ハウジング内に導入された前記冷却用空気を前記ステータコア内に取り入れる空気取入口を設けたことを特徴とする。
請求項5の発明に係る電動工具は、前後方向に延設される胴体部と、前記胴体部から該胴体部の下方に延びるハンドル部と、を有するハウジングと、前記胴体部の内部に配置されるベアリングボックスと、前記胴体部の内部であって前記ベアリングボックスの後方に配置されるブラシレスモータと、前記胴体部に設けられて、前記ブラシレスモータの冷却用空気を該胴体部の内部に導入する吸気口と、前記胴体部に設けられて、前記冷却用空気を前記胴体部の外部へ排出する排気口と、前記ブラシレスモータの前面に固定されて該ブラシレスモータの出力軸が貫通する基板と、前記基板の前方で前記ベアリングボックスの後面に保持される軸受と、を有し、前記基板を貫通した前記出力軸が前記軸受に軸支される電動工具であって、前記基板の前面と前記軸受との間の隙間を塞ぐ防水部材を設けたことを特徴とする。
請求項6の発明に係る電動工具は、前後方向に延設される胴体部と、前記胴体部から該胴体部の下方に延びるハンドル部と、を有するハウジングと、前記胴体部の内部に配置されるベアリングボックスと、前記胴体部の内部であって前記ベアリングボックスの後方に配置されるブラシレスモータと、前記胴体部に設けられて、前記ブラシレスモータの冷却用空気を該胴体部の内部に導入する吸気口と、前記胴体部に設けられて、前記冷却用空気を前記胴体部の外部へ排出する排気口と、前記ブラシレスモータの前面に固定されて該ブラシレスモータの出力軸が貫通する基板と、前記基板の前方で前記ベアリングボックスの後面に保持される軸受と、を有し、前記基板を貫通した前記出力軸が前記軸受に軸支される電動工具であって、前記基板の前方側から前記軸受へと水が浸入することを防ぐ防水部材を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明に係る打撃工具によれば、冷却用空気の吸気口からハウジング内に浸入した雨水等が、リング状の防水部材によって、閉塞体と仕切壁との間から蓋部材におけるモータの出力軸の貫通部分を通じてハンマケース内に浸入することを防止できる。したがって、ハンマケースに対する防水性を高めることができる。
請求項2の発明によれば、突出部の外周に防水部材を取り付けるだけで、閉塞板と仕切壁との間で防水部材を容易に位置決めできる。
請求項3の発明によれば、電気回路基板を閉塞体と兼用する合理的な構成となる。
請求項4の発明によれば、閉塞体でステータコアの前面を閉塞しても、空気取入口からステータコア内に取り入れられた冷却用空気で、ステータコアを内側から冷却することが可能になる。これに伴ってモータの冷却効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態1のインパクトドライバを後方から見たときの斜視図である。
図2】同インパクトドライバの縦断面図である。
図3】同インパクトドライバの横断面図である。
図4】空気取入口を形成したステータコアを収容した本体ハウジングの部分縦断面である。
図5】ベアリングボックスの軸受部が仕切壁から突出した本体ハウジングと、防水部材と、モータとの分解斜視図である。
図6】実施形態2の吸気口カバーを取り付けたインパクトドライバを後方から見たときの斜視図である。
図7】同吸気口カバーを取り外した同インパクトドライバの側面図である。
図8】実施形態3のインパクトドライバの本体ハウジングを構成する半割ハウジングの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図5を参照しつつ説明する。図1ないし図3に示すようにインパクトドライバ1は、本体ハウジング10とハンマケース20と防水部材50とを備えている。なお、インパクトドライバ1は本発明の打撃工具の一例である。
【0013】
本体ハウジング10は、樹脂製の左右の半割ハウジングを組み付けて形成されて、胴体部11と、ハンドル部12と、バッテリーパック装着部13とを有する。胴体部11は、筒状に形成されてインパクトドライバ1の前後方向(図2及び図3の左右方向)に延設されている。胴体部11内の後方(図2及び図3の左側)にはモータMが収容されている。前記左右の半割ハウジングの内面には、図5に示すように半円形状のリブ11L、11Rが突設されている。各リブ11L、11Rには縦方向の中心付近に半円形の切り欠きが設けられている。左右の半割ハウジングの組み付け状態では、リブ11L、11Rが対向することで胴体部11内に、中心に貫通孔14を有する仕切壁15が形成される。胴体部11内は、仕切壁15によって胴体部11の前後方向で、モータMのステータコア2を収容するステータコア2側と、ハンマケース20を組み付けるハンマケース20側とに仕切られる。
【0014】
また胴体部11の左右の側面には、図1及び図3、4に示すように吸気口11Aが複数設けられている。複数の吸気口11Aは、胴体部11内にモータMの冷却用空気を導入するために用いられる。前記左右の側面で複数の吸気口11Aの後方には、排気口11Bが複数設けられている。複数の排気口11Bは、前記冷却用空気を胴体部11外へ排出するために用いられる。なお、本体ハウジング10は本発明のハウジングの一例である。
【0015】
上記のモータMは、図2ないし図5に示すように、ステータコア2と、ステータコイル3と、ロータ4とを備えている。ステータコア2は、胴体部11の軸方向に延びる略円筒形状とされている。図3及び図4に示すようにステータコア2内には、内壁面から軸方向に延びるコイル巻付部材3Aに巻装された状態で周方向に沿ってステータコイル3が複数配置されている。ステータコア2にはモータMの出力軸5が貫通し、この出力軸5には、複数のステータコイル3と対向するように円筒状のロータ4が支持されている。
【0016】
図2、3及び図5に示すように、ステータコア2の前端面には電気回路基板7がネジ止めされている。この電気回路基板7は、各ステータコイル3に電流を供給してロータ4を回転させるために用いられる。この電気回路基板7には貫通孔8(図2参照。)が設けられている。ステータコア2の前方側は、貫通孔8を除いて閉塞されている。モータMの出力軸5の前端は、貫通孔8からステータコア2の外部に突出する。出力軸5の後端側の外周面にはファンFが嵌着されている。また図4及び図5に示すように、ステータコア2の左右の側面には、電気回路基板7よりも後方位置(図5の左側)に空気取入口9、9が形成されている。各空気取入口9は、各吸気口11Aから胴体部11内に導入された前記冷却用空気をステータコア2内に取り入れるために用いられる。なお、電気回路基板7は本発明の閉塞体の一例である。
【0017】
ハンドル部12は、図2に示すように、インパクトドライバ1の側面視で略T字形状となるように胴体部11から連設されている。図2及び図5に示すようにハンドル部12の内部には、トリガ12Aを有するスイッチ12Bが収容されている。バッテリーパック装着部13は、図1、2及び図5に示すようにハンドル部12の下端に形成されている。バッテリーパック装着部13にはバッテリーパックBが着脱自在に装着される。バッテリーパックBは、トリガ12Aをハンドル部12内に押し込むことでスイッチ12Bがオン状態になるとモータMへ給電する。
【0018】
ハンマケース20は、金属(例えばアルミニウム)によって釣り鐘状の筒状体に形成されて胴体部11の前方(図2及び図3の右方向)に組み付けられている。図2及び図3に示すようにハンマケース20は、前端に小径の筒部21を有する。さらにハンマケース20の後端の開口部には、円形キャップ状のベアリングボックス22が一体に結合されている。ベアリングボックス22は、後面から後方に当たる電気回路基板7へ向けて環状に突出形成された軸受部23を有する。この軸受部23にはボールベアリング24Aが保持されている。軸受部23は図5に示すように仕切壁15の貫通孔14を通じてステータコア2側に進入する。さらに軸受部23の後端面には、出力軸5の挿入孔25が設けられている。ハンマケース20内には、挿入孔25からピニオン6を装着したモータMの出力軸5が挿入されて、出力軸5は仕切壁15を貫通してボールベアリング24Aで軸支される。ハンマケース20の前方外周で胴体部11から露出する部分にはカバー30が装着されている。加えてバンパー35が、カバー30の前端に組み付けられて前記露出する部分に装着される。なお、ベアリングボックス22は本発明の蓋部材の一例であり、ボールベアリング24Aは本発明の出力軸を軸支する軸受の一例である。
【0019】
ハンマケース20には、図2及び図3に示すようにスピンドル26と打撃機構40とが収容されている。スピンドル26の後端には中空部26Aが形成されて、スピンドル26はハンマケース20内に同軸で収容されている。スピンドル26の後端外周は、ベアリングボックス22内に保持されたボールベアリング24Bで軸支されている。スピンドル26におけるボールベアリング24Bの前方部位には、2つの遊星歯車28、28が点対称位置で軸支されている。さらに遊星歯車28、28は、ハンマケース20内に保持されるインターナルギヤ27と噛合する。加えて遊星歯車28、28は、中空部26A側に露出して、中空部26A内に挿入されたピニオン6と噛合する。
【0020】
打撃機構40は、ハンマ41と、アンビル42と、コイルバネ43とを備えている。ハンマ41はスピンドル26に外装されている。このハンマ41の前端内周には、軸方向へ凹設した案内溝41A、41Aが形成されている。この案内溝41A、41Aを、スピンドル26の外周のカム溝に嵌合されたボール44、44に嵌合させることで、ハンマ41はスピンドル26と一体回転可能かつ軸方向へ移動可能に連結されている。アンビル42は、ハンマ41の前方で筒部21によってハンマ41と同軸で軸支されている。アンビル42の先端には、ビットを装着可能なチャック42Aが設けられている。コイルバネ43は、スピンドル26の外周に嵌め合わされて、ハンマ41をアンビル42に係合させる前進位置へ付勢する。
【0021】
打撃機構40は、次のようにしてアンビル42に回転方向への間欠的な打撃を加える。上記のトリガ12Aをハンドル部12内へ押し込むことで、モータMが駆動してスピンドル26が回転すると、ハンマ41を介してアンビル42が回転し、アンビル42に装着したビットでネジ締めが可能になる。ネジの締付作業に伴ってアンビル42への負荷が高まると、ボール44、44のカム溝に沿った後退と共に、ハンマ41がコイルバネ43の付勢に抗して後退することでアンビル42との係合を解除する。これと同時にコイルバネ43の付勢によって、ハンマ41がスピンドル26と共に回転しつつ前進してアンビル42と再係合する。この係脱の繰り返しによってアンビル42に回転方向への間欠的な打撃が加えられて、ネジの増し締めが可能になる。
【0022】
図2、3及び図5に示すように、仕切壁15の貫通孔14を通じてステータコア2側に進入した軸受部23の外周面には、リング状の防水部材50が嵌められている。この防水部材50は合成樹脂で形成されている。胴体部11内でモータMの出力軸5をハンマケース20内に挿入することでハンマケース20の後方にモータを連結した状態では、図2及び図3に示すように胴体部11の前後方向で、電気回路基板7と仕切壁15とが、前記外周面に嵌められた防水部材50に押し付けられる。その結果防水部材50は、出力軸5を貫通させた状態で電気回路基板7と仕切壁15とに密着して前記前後方向における電気回路基板7と仕切壁15との間の隙間を塞ぐ。
【0023】
本実施形態のインパクトドライバ1では、例えば吸気口11A(図1及び図3、4参照。)から雨水等が本体ハウジング10内に浸入した場合であっても、次のようにしてハンマケース20内に雨水等が浸入することを防止できる。吸気孔11Aから浸入した雨水等は、胴体部11内を通ってハンドル部12側へ流下しようとする。これに伴って雨水等は、電気回路基板7と仕切壁15との間を流下して防水部材50に到達する。このとき軸受部23の外周面では防水部材50によって電気回路基板7と仕切壁15との間の隙間が塞がれているため、雨水等は、電気回路基板7と仕切壁15との間からベアリングボックス22におけるモータMの出力軸5の挿入孔25に浸入することができない。よって、例えばベアリングボックス22内のロータ4用のボールベアリング24Aの不具合による回転不良やハンマケース20内に収容された打撃機構40が動作不良を起こしたりすることを防止できる。
【0024】
さらに本実施形態では、出力軸5の回転に伴ってファンFが回転すると、本体ハウジング10の外部から冷却用空気が、図4の実線矢印で示すように各吸気口11Aから胴体部11内に導入された後に各空気取入口9からステータコア2内に取り入れられる。その後冷却用空気は、ステータコア2内を流通してファンFに導かれる。したがって冷却用空気でステータコア2を内側から冷却できる。これに加えて各吸気口11Aから胴体部11内に導入された冷却用空気は、ステータコア2と胴体部11の内面との間も流通してファンFに導かれる。したがって、ステータコア2を外側から冷却用空気で冷却することもできる。ファンFに導かれた冷却用空気は、ファンFの羽根の間を通って各排気口11Bから本体ハウジング10の外部へ排出される。
【0025】
<実施形態1の効果>
本実施形態のインパクトドライバ1では、モータMの冷却用空気の各吸気口11Aから胴体部11内に浸入した雨水等は、リング状の防水部材50によって、電気回路基板7と仕切壁15との間からベアリングボックス22におけるモータMの出力軸5の挿入孔25を通じてハンマケース20内に浸入することを防止できる。したがってハンマケース20に対する防水性を高めることができる。
【0026】
また、ベアリングボックス22の後面から電気回路基板7へ向けて突出形成されて仕切壁15を通じてステータコア2側に進入した軸受部23の外周に、防水部材50を嵌めるだけで、電気回路基板7と仕切壁15との間で防水部材50を容易に位置決めできる。
【0027】
さらにステータコア2の前方側を電気回路基板7で閉塞したため、電気回路基板7を前記前方側を閉塞する閉塞体と兼用する合理的な構成となる。
【0028】
加えて電気回路基板7でステータコア2の前端面を閉塞しても、各空気取入口9からステータコア2内に取り入れられた冷却用空気で、ステータコア2を内側から冷却することが可能になる。これに伴ってモータMの冷却効果を高めることができる。
【0029】
<実施形態2>
本発明の実施形態2を図6及び図7を参照しつつ説明する。ここでは実施形態1と同一の構成は同一の符号を付しその説明を省略する。本実施形態のインパクトドライバ1Aでは、各吸気口11Aを外側から覆って胴体部11に取り付けられる吸気口カバー60を備えている。この吸気口カバー60は、胴体部11の周面に沿って円弧状に湾曲した断面形状を有し正面視で前方側が後方側よりも短くなる略台形状の本体部61と、本体部61の上端部及び下端部からそれぞれ突出した横長形状の係止爪部62、62とで構成されている。胴体部11の左右の外側面には、各係止爪部62が嵌まる係止溝63(図7参照。)がそれぞれ設けられている。吸気口カバー60は、係止爪部62、62を係止溝63、63に嵌めることで図6に示すように、吸気口カバー60の内面と各吸気口11Aとの間に隙間を設けた状態で胴体部11に取り付けられる。
【0030】
<実施形態2の効果>
本実施形態では、吸気口カバー60で各吸気口11Aを外側から覆うため、雨水等が吸気口カバー60で遮られて各吸気口11Aから胴体部11内に浸入することを抑制する。さらに、吸気口カバー60を胴体部11に取り付けた場合でも、モータMの冷却用空気は、本体ハウジング10の外部から吸気口カバー60の内面と各吸気口11Aとの間の隙間を通過した後に各吸気口11Aから胴体部11内に導入することが可能になる。さらに従来のインパクトドライバでは複数の吸気口11Aに挟まれた胴体部11の左右の外表面の中央付近の領域に、例えば商品番号や会社名のロゴマークを記載したラベルを貼り付けたり、ロゴマークを一体成形していたが、本実施形態のインパクトドライバ1Aでは、複数の吸気口11Aを跨ぐ各吸気カバー60の外表面に前記ラベルを貼り付けたりロゴマークを一体成形することが可能になる。したがって、従来よりも前記ラベルを貼り付けたりロゴマークを一体成形できる領域が広がるため、商品番号の表示サイズやロゴマークの表示サイズを拡大することが可能になる。
【0031】
<実施形態3>
本発明の実施形態3を図8を参照しつつ説明する。ここでは実施形態1、2と同一の構成は同一の符号を付しその説明を省略する。本実施形態のインパクトドライバの本体ハウジング10を構成する半割ハウジング16の側面には、複数の吸気口11Aが、胴体部11の軸方向に対して胴体部11の後方に設けられた複数の排気口11B側に向けて下り傾斜した状態で設けられている。
【0032】
<実施形態3の効果>
本実施形態では、複数の吸気口11Aが、複数の排気口11B側に向けて下り傾斜した状態で設けられることで、雨水等は前記下り傾斜に沿って半割ハウジング16の側面を流れ、雨水等が各吸気口11Aから胴体部11内に浸入することを抑制できる。また、仮に雨水等が各吸気口11Aから胴体部11内に浸入した場合でも、雨水等を各排気口11Bに導き易くすることができる。特にインパクトドライバ等の打撃工具においては、アンビル等の最終軸が水平となる姿勢で使用される頻度が高い。したがって、雨水等を各排気口11Bから胴体部11の外部に排出し易くすることが可能になる。これに伴って、例えば雨水等による胴体部11内に収容されたモータMの絶縁不良を抑制できる。
【0033】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨を逸脱しない範囲内において構成の一部を適宜変更して実施できる。例えば上述した実施形態1ないし3とは異なり、防水部材は合成ゴム等の弾性部材で形成したものであってもよい。また電気回路基板7に代えて例えば電気回路を搭載しない合成樹脂板やプラスチック板で、ステータコア2の前方側を閉塞してもよい。さらに上述した実施形態では、本発明を充電式のインパクトドライバに適用する例を示したが、これに限らず、例えば本発明を交流駆動式又は充電式のソフトインパクトドライバに適用してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1、1A・・インパクトドライバ、2・・ステータコア、3・・ステータコイル、5・・モータの出力軸、7・・電気回路基板、9・・空気取入口、10・・本体ハウジング、11・・胴体部、11A・・吸気口、15・・仕切壁、20・・ハンマケース、22・・ベアリングボックス、23・・軸受部、24A・・ボールベアリング、26・・スピンドル、40・・打撃機構、50・・防水部材、M・・モータ。
図1
図2
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図5
図6
図7
図8