(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
X線源及び被検体を介してX線源に対向配置されたX線検出器を有し、被検体の周囲を周回しながら各位相において前記被検体を透過するX線量を検出するスキャナと、前記スキャナに対し相対的に移動可能な寝台と、前記各位相の透過X線量を投影データとして収集し、前記投影データを逆投影する処理を含む再構成処理を行う画像再構成装置と、を備えたX線CT装置において、
前記逆投影で使用する投影データの位相範囲である逆投影位相幅の決定方法を指定するためのモードである再構成モードを複数有し、
撮影範囲に含まれる各部位に対して、複数の前記再構成モードの中からある再構成モードを選択して設定可能とするモード設定手段を備え、
前記画像再構成装置は、
前記モード設定手段によって設定された再構成モードに応じて、部位毎に異なる逆投影位相幅を算出し、算出された逆投影位相幅の投影データを使用して前記逆投影を行うことを特徴とするX線CT装置。
前記再構成モードには、撮影FOV及び再構成中心位置によって前記逆投影位相幅を決定するモードが含まれることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のX線CT装置。
選択可能ならせんピッチの候補を撮影FOVに応じて変更して提示するらせんピッチ候補提示手段を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のX線CT装置。
前記モード設定手段によって設定された再構成モードに応じて算出された逆投影位相幅に応じて管電流量を修正し、部位毎に最適な管電流値にて前記X線を照射する照射X線量修正手段を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のX線CT装置。
設定された再構成FOV、及び前記モード設定手段によって設定された再構成モードに応じて算出された逆投影位相幅に応じて、ハイレゾ再構成の可否を判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果を本撮影の前にユーザに提示する提示手段と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載のX線CT装置。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置は、複数の方向から撮影した被写体のX線透過像(以下、投影データと記す)からX線吸収係数を算出し、被写体の断層像を得る装置であり、医療や非破壊検査の分野で広く用いられている。特に近年は、医療の現場においてX線検出器の回転軸方向への多段化(マルチスライス化)が進み、これにより1回転で広範囲の撮影が可能となり、撮影時間を短縮できるようになってきている。撮影の手順としては、まず、本撮影の前に位置決め用のスキャノグラム撮影を行い、スキャノグラム上で本撮影の撮影条件や画像の再構成条件を操作者が設定すると、設定された撮影条件及び再構成条件に従って本撮影を開始し、本撮影の投影データを取得して画像の再構成処理を行う。
【0003】
ところで、従来よりX線CT装置では広範囲を短時間に撮影することを目的として、らせんスキャンを行うことが可能となっている。らせんスキャンとは、寝台を移動させながらX線源を被写体の周りにらせん軌道状に周回させる撮影のことであり、ヘリカルスキャンやスパイラルスキャン等とも呼ばれる。多段に検出素子が配列されたマルチスライスCTでは、一度のらせんスキャンで、頭部、頚部、肩部、胸部、腹部、下腹部、脚部までの全身を撮影することも可能である。そして、マルチスライスCTにおける再構成処理としては、シングルスライスCT(1列の検出器)で用いられていた2次元再構成法を拡張したフェルドカンプ再構成法と呼ばれる方法、もしくはこれを応用した方法が主に用いられている。フェルドカンプ法では、マルチスライスCTにて得られた投影データに対して体軸方向のX線ビーム傾斜を正確に扱い、ビームの経路に沿って投影値を画素に割り当て、逆投影の際には画素毎にX線が照射されている角度範囲の投影データを逆投影に使用する。この再構成に使用する投影データのビュー角度幅のことを以下、逆投影位相幅という。特許文献1には、逆投影の手法が記述されている。
しかしながら、一般的には画素毎に逆投影位相幅を変更せず、画像位置によらず同一の逆投影位相幅を用いて再構成が行われている。なぜなら、使用可能なビュー角度幅は周回中心からの距離や寝台移動速度(らせんピッチ)に依存し、非常に高い非線形性を有するため処理が複雑化してしまい、実用的ではないからである。また画素毎に逆投影位相幅を変更すると画質ムラを生じてしまう。したがって、一般には画像位置によらず同一の逆投影位相幅を用いて再構成が行われる。具体的には、画像内で最も狭い逆投影位相幅を用いて再構成が行われる。このため、周回中心付近では中心から離れた位置よりも多くのビュー角度幅の投影データを取得するが、撮影されたすべての投影データは使用されず一部しか用いずに再構成されることとなる。
【0004】
ここで、
図13を参照して逆投影位相幅について説明する。
図13において、符号41a、41b、41c、41dは逆投影位相幅を示し、符号42a、42bの矢印は、対向するビュー角度(位相)の投影データ(以下、対向データ)のない位相を示している。例えば、
図13(a)に示すように、180度分(半周)の投影データ41aを使用した再構成処理では、使用する投影データの時間方向の成分が少ないため時間分解能が高くなる。一方、投影データの冗長性がないため被写体に動きに対して敏感にアーチファクトを生ずる。また、
図13(b)に示すように、逆投影位相幅41bが270度の場合、対向データが存在しない位相42bは90度分となる。また、
図13(c)、(d)に示すように、360度分以上(1周分以上)のデータを使用した再構成では、時間分解能は悪化するが、どの位相に対しても対向する位相(ビュー角度)で取得されたデータが存在するため、クォーターオフセットを利用したハイレゾ再構成を行うことが可能になり、空間分解能に優れる。クォーターオフセット及びハイレゾ再構成については、特許文献2、3に記述されている。
【0005】
また、画質はらせんピッチにも依存する。マルチスライスCTによるらせんスキャンでは、らせんピッチが大きい場合には、周回中心に近い位置と遠い位置とでX線の照射時間が異なり、周回中心から遠い位置ではX線照射回数が少なくなる。言い換えれば、周回中心に近い位置では再構成に使用可能な投影データは多くの角度幅に渡って集まり、周回中心から離れた位置ではより少ない角度幅となる。したがって、高速らせんスキャンを行った場合は、再構成する画像のサイズ(再構成FOV)が小さい場合にはデータ欠損が生じないが、大きな再構成FOVが必要な場合にはデータ欠損が生じ、アーチファクトが生じる恐れがある。
【0006】
また、従来より、個々の部位の撮影ではその部位の被写体サイズや診断目的等に応じてFOV(Field Of View;有効視野)やらせんピッチ(寝台移動速度)を設定し、部位に応じた逆投影位相幅が決定されていた。例えば、頭部の撮影では、被写体サイズが小さく、特に耳小骨等を対象とする検査では高い空間分解能が必要とされる。また、腹部や肩部については被写体サイズが大きく、あまり高い空間分解能が必要とされない。また、胸部では、診断の目的によって必要な画像サイズも空間分解能も異なる。このため、個々の部位で適切なFOVやらせんピッチを設定していた。
しかし、広範囲にわたって一度に撮影する場合や、3次元画像を再構成する場合には個別の設定を行っておらず、一般には最大FOV(設定可能な最大の有効視野。個々のX線CT装置の検出器のサイズ(チャネル数及び列数)によって決定される。)に基づいて逆投影位相幅を決定することが多かった。これは、大きな再構成FOV(再構成画像の有効視野)が必要とされる場合にデータ欠損によるアーチファクトが発生してしまうのを避けるためである。全部位について最大FOVに基づいて逆投影位相幅を決定すると、逆投影位相幅は再構成スライス位置や撮影FOV(撮影時の有効視野)に影響されず一定の値となるためノイズ量が安定し、時間分解能を比較的高くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の説明及び添付図面において、同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略することにする。
最初に、
図1を参照しながら、X線CT装置1の構成を説明する。
【0015】
X線CT装置1は、例えば、マルチスライスCT装置である。スキャン方式は、例えば、ローテート−ローテート方式(第3世代)である。X線CT装置1は、スキャナ2と操作ユニット3と寝台7とによって構成される。
スキャナ2が、操作ユニット3による指示に従って、寝台7に戴置される被検体4のスキャン処理を行う。
【0016】
スキャナ2は、X線発生装置5、コリメータ6、検出器8、中央制御装置11、X線制御装置12、スキャナ制御装置13、高電圧発生装置14、コリメータ制御装置15、寝台制御装置16、寝台移動計測装置17、駆動装置18、プリアンプ19、A/Dコンバータ20等を備える。
操作ユニット3は、入出力装置31、演算装置32等を備える。入出力装置31は、表示装置33、入力装置34、記憶装置35等を含む。演算装置32は、再構成演算装置36、画像処理装置37等を含む。
操作ユニット3における入力装置34は、マウス、キーボード、タッチパネル等によって構成され、寝台移動速度情報や再構成位置など撮影条件、再構成条件の入力を受け付ける。表示装置33は、液晶ディスプレイ等のディスプレイ装置によって構成される。記憶装置35は、ハードディスクや各種の記憶媒体のドライブ装置によって構成される。
【0017】
ユーザは、操作ユニット3における入力装置34から撮影条件(寝台移動速度、管電流、管電圧、自動露光制御時の画質指標(画像ノイズやコントラストノイズ比)、撮影FOV(Field Of View;撮影時の有効視野)等)や再構成条件(再構成法、ハイレゾ処理のON/OFF、画像スライス厚、逆投影位相幅の決定方法(後述する再構成モード)、再構成FOV(再構成画像のサイズ)、再構成画像マトリクスサイズ、再構成フィルタ関数、逐次近似処理の最大反復回数や収束条件等)を入力する。
中央制御装置11は、入力される指示に基づいて、X線制御装置12、スキャナ制御装置13、寝台制御装置16に対して撮影に必要な制御信号を送り、撮影スタート信号を受けて撮影を開始する。
【0018】
撮影が開始されると、X線制御装置12によって高電圧発生装置14に制御信号が送られ、高電圧がX線発生装置5に印加され、X線発生装置5からX線9が被検体4に照射される。同時に、スキャナ制御装置13から駆動装置18に制御信号が送られ、X線発生装置5、検出器8、プリアンプ19等を搭載するガントリが、被検体4の周りを周回する。一方、被検体4が載置される寝台7が、寝台制御装置16からの制御信号に従って、静止(ノーマルスキャン時)、又は被写体4の体軸方向に平行移動(らせんスキャン時)を行う。X線9は、コリメータ6により照射領域が制限され、被検体4内の各組織において吸収(減衰)され、被検体4を通過し、検出器8によって検出される。検出器8によって検出されるX線9は、電流に変換され、プリアンプ19によって増幅され、A/Dコンバータ20によってデジタルデータに変換され、LOG変換され、キャリブレーションが行われて投影データ信号として演算装置32に入力される。
【0019】
演算装置32に入力される投影データ信号は、再構成演算装置36によって行われる画像再構成処理の入力データとなる。再構成画像は、記憶装置35に保存され、表示装置33によってCT画像として表示される。もしくは、画像処理装置37によって画像処理がなされた後、表示装置33によってCT画像として表示される。
【0020】
ここで、X線CT装置1による撮影処理と画像再構成処理の概要について説明する。
X線CT装置1では、スキャナ2に接続される操作ユニット3の入力装置34から入力される撮影条件に基づき、X線発生装置5であるX線管に管電圧、管電流が印加される。また、X線CT装置1では、陰極から放出された電子が管電圧によって加速され、管電圧に応じたエネルギーを持ってターゲット(陽極)に衝突することによって、電子エネルギーに応じたエネルギー分布のX線9がX線管のX線源から照射される。照射されるX線9は、被検体4を透過し、透過する被検体4内の物質(組織)のX線減弱係数に応じて減衰するX線9をX線源に対向する位置に配置される検出器8によって受光し、投影データを得る。
フィルタ補正逆投影法の場合、X線CT装置1の再構成演算装置36は、投影データに再構成フィルタを重畳してフィルタ補正投影データを得て、フィルタ補正投影データに対して、撮影条件によって決定され断層像の位置によらずビュー方向に略同一の形状の重み(以下、「ビュー重み」という。)を加重しながら逆投影(画像再構成)することによって、被検体4内部のX線減弱係数の分布図として非破壊的に断層像を画像化する。
【0021】
X線CT装置1の検出器8は、広範囲を短時間に撮影することを目的として、周回方向の1次元に配置される1次元検出器(「単列検出器」、「シングルスライス」とも言う。)を周回軸方向に拡張した2次元検出器(「多列検出器」、「マルチスライス検出器」とも言う。)を採用する。一般に、検出器8が周回方向の1次元に配置されるX線CT装置1は「シングルスライスCT」、2次元に配置されるX線CT装置1は「マルチスライスCT」と呼ばれる。シングルスライスCTでは、X線発生装置5(X線源)から扇状に広がるX線ビームが照射され、マルチスライスCTでは、検出器8に合わせてX線発生装置5(X線源)から円錐状、もしくは角錐状に広がるX線ビームが照射される。
X線CT装置1では、寝台7に載置される被写体4の周りを周回しながらX線照射が行われる。この際、寝台7が固定され、X線発生装置5(X線源)が被写体4の周りを円軌道状に周回する撮影は、「ノーマルスキャン」や「アキシャルスキャン」などと呼ばれる。また、寝台7が移動し、X線発生装置5(X線源)が被写体4の周りをらせん軌道状に周回する撮影は、「らせんスキャン」や「ヘリカルスキャン」などと呼ばれる。本発明は、「らせんスキャン」時に適用される。
【0022】
また、逐次近似法の場合、X線CT装置1は、初期画像としてフィルタ補正逆投影法にて生成される画像を用いることが高速化のために優位である。逐次近似法における反復処理では、X線CT装置1は、高周波誤差等の理由により距離駆動型の逆投影処理を適用する方が優位である。距離駆動型の逆投影処理に基づきハイレゾ再構成を行うことによって、フィルタ補正逆投影法と逐次近似法の反復処理において、同じ方式の逆投影処理を適用することができる。これによって、逆投影処理に関して相違がない断層像が得られるとともに、開発コストの低減を図ることができる。
【0023】
ここで、本発明の概要を説明する。
本発明では、再構成処理における逆投影に使用する投影データのビュー角度範囲(逆投影位相幅)を操作者が部位毎に決定できるようにする。また、その設定も容易に行えるようにする。
このため、X線CT装置1は、複数の再構成モードを有し、各再構成モードに応じて適用する逆投影位相幅の決定方法を指定する。また、撮影範囲に含まれる複数の部位に対して、部位別にいずれかの再構成モードを設定可能とする。或いは、スライス毎に再構成モードを設定可能としてもよい。画像再構成装置36は、設定された再構成モードに応じて、部位毎(スライス毎)に再構成処理における逆投影位相幅を決定し、決定した逆投影位相幅の投影データを使用して画像を再構成する。
本実施の形態で扱う再構成モードについては後述する。
【0024】
以下、
図2〜
図5を参照し、本発明に係る撮影処理の第1の実施の形態について説明する。
図2のフローチャートに示すように、まず、本撮影する範囲の位置決め用に用いられるスキャノグラム像を得るため、スキャノグラム撮影条件の設定を受け付ける(ステップS101)。X線CT装置1の中央制御装置11は設定されたスキャノグラム撮影条件に基づき、スキャナ2の各部を制御してスキャノグラム撮影を行う(ステップS102)。次に、ステップS102で撮影したスキャノグラムを用いて、スライス方向の撮影範囲を撮影部位や撮影目的に応じて複数の部位に分割する(ステップS103)。撮影範囲の分割は、ユーザにより手動設定されてもよいし、中央制御装置11により自動設定されてもよい。
【0025】
撮影範囲の分割を手動で行う場合は、中央制御装置11は、部位毎に撮影FOVを手動設定するためのユーザインターフェースを提供する。例えば、表示装置33に
図3に示す部位別撮影FOV設定画面40を表示する。
部位別撮影FOV設定画面40には、ステップS102で撮影したスキャノグラム51が表示されるとともに、体軸方向と垂直に分割線52が所定数表示される。例えば、全身に対して頭部、頚部、肩部、胸部、腹部、脚部を分割する各分割線52が表示される。また、分割線52にて分割された各部位が矢印53の範囲で示されるとともに、部位名称54が表示される。また、各部位に対してそれぞれ撮影FOVのサイズを設定するための入力欄55が設けられる。入力欄55は、撮影FOVサイズ(
図3では「直径」と表示)と体軸方向長さ(
図3では「高さ」と表示)が入力可能となっている。入力欄55に対して各部位の撮影FOVのサイズが入力されると中央制御装置11は、入力されたサイズに応じて分割線52の位置を変更する。また、撮影FOVの大きさを示す円または正方形等のマークをスキャノグラム51上に示すようにしてもよい。
このように、撮影範囲の分割を手動で受け付けるようにすれば、操作者が自由に部位を分割して所望の撮影FOVを設定できる。また、ユーザインターフェースとして部位別撮影FOV設定画面40を提供するため、設定が容易となる。
【0026】
また、撮影範囲の分割を自動で行う場合は、中央制御装置11は、スキャノグラムを解析することで推定された被検体サイズに基づいて、部位毎に撮影FOVを自動設定する。スキャノグラムの解析では、例えば、特徴量を抽出することで部位を認識し、体幅の長さを長径として断面形状を示す楕円のサイズが推定される。部位の認識に関しては特開2007−202700号、特開2007−229023号に示されるような公知の技術を利用することができる。この場合には撮影範囲が自動的に分割されるため、手間を省くことができる。
【0027】
次に、中央制御装置11は、分割した部位毎に本撮影時の撮影条件及び再構成条件の設定を受け付ける(ステップS104)。
撮影条件を設定する際、中央制御装置11は、設定された撮影FOVに応じて選択可能ならせんピッチの候補を変更して提示するようにしてもよい。すなわち、小さい撮影FOVが設定された場合は、より高速ならせんピッチを選択可能とし、また、大きい撮影FOVが設定された場合は、低速ならせんピッチを選択可能とする。このように、設定された撮影FOVに応じて選択可能ならせんピッチの候補を変更して提示すれば、小さい撮影FOVが設定されたときに、より高速ならせんピッチが選択されやすくなるため、撮影時間の短縮を図ることができる。また、極端なデータ欠損をなくすことができる。
【0028】
次に、中央制御装置11は再構成モードの設定を受け付ける(ステップ105)。
ここで、再構成モードとは、逆投影位相幅の決定方法を指定するモードである。例えば、本実施の形態では、以下の4つのモードから選択的に設定可能である。
(モードA)撮影FOVに基づいて逆投影位相幅を算出するモード
(モードB)再構成FOV及び再構成中心位置に基づいて逆投影位相幅を算出するモード
(モードC)最大FOVに基づいて逆投影位相幅を算出するモード
(モードD)画質を許容できる最も狭い逆投影位相幅を設定するモード(時間分解能優先)
【0029】
撮影FOVとは、撮影時の有効視野であり、再構成FOVとは、再構成処理時の有効視野であり、最大FOVとは、設定可能な最大の撮影FOVである。最大FOVはX線CT装置1の検出器8のサイズによって決定される。
【0030】
再構成モードを設定するための操作画面として、
図4に示す再構成モード設定画面43を提供するようにしてもよい。再構成モード設定画面43では、スキャノグラム像51と、各部位の分割線52、分割サイズを示す矢印53、部位名称54等の他、各部位に対してそれぞれ再構成モードを選択入力するモード入力欄57が設けられている。モード入力欄57は、選択可能なモードを例えばプルダウンリストの形式で提示する。
【0031】
ここで、各モードの特徴を説明する。
(モードA)
撮影FOVに基づいて逆投影位相幅を算出するモードでは、撮影FOV内は再構成に必要な投影データが完全に集まり、撮影FOV外はデータが不足するため検出器の列方向に外挿して再構成を行う。この場合、被写体が撮影FOV内のみに存在すれば撮影FOV外で外挿誤差を生じても問題ないことになる。また、撮影FOV外に被写体が存在する場合においても診断すべき部分が撮影FOV内に存在すれば撮影FOV外で外挿誤差を生じても問題ないことになる。このように、撮影FOVに基づいて逆投影位相幅を決定する場合には、再構成に不要な領域を考慮しなくてよく比較的逆投影位相幅を広くとることができるためノイズを比較的低減でき、また再構成FOVを変えた場合にもノイズ変化のない定常性の高い画像が得られる。その半面、スライス毎に撮影FOVが異なる場合、設定した撮影FOVに応じてノイズや時間分解能が変化する。
【0032】
(モードB)
再構成FOV及び再構成中心位置に基づいて逆投影位相幅を算出するモードでは、再構成FOV内の画像を生成するのに使用可能な投影データを最大限使用できる(逆投影位相幅を広くできる)ため、大きくノイズ低減できる。その反面、再構成FOVに応じてノイズや時間分解能の異なる画像となり、画質の定常性が損なわれる。言い換えれば、広い再構成FOVで再構成した後、狭いFOVにて局所領域を拡大して再構成した場合には画質が変わることがある。
【0033】
(モードC)
最大FOVに基づいて逆投影位相幅を算出するモードでは、逆投影位相幅は再構成スライス位置や撮影FOVに影響されず一定の値となるためノイズ量が安定し、かつ逆投影位相幅が狭くなることから時間分解能が高くなる反面、使用する逆投影位相幅が狭いため全体的にノイズが多くなることがある。
【0034】
(モードD)
画質を許容できる最も狭い逆投影位相幅を設定するモードでは、X線CT装置毎に予め定められている値を逆投影位相幅とする。理論上は、最低180°分のデータがあれば画像を再構成することができるが、体動等によるデータ間の矛盾を補正するため、若干余分のデータを含ませることが望ましい。このモードでは、時間分解能が優先されるため、被写体動きの影響の少ない画像が得られ、また再構成スライスによらず安定したノイズの画像が得られるといった利点がある反面、使用できるにも関わらず使用されない投影データが存在し、ノイズが多くなることがある。
【0035】
再構成モードが設定されると、次に、中央制御装置11は、設定された再構成モードに基づいて、部位毎(スライス毎)に逆投影位相幅を算出する(ステップS106)。逆投影位相幅は例えば以下の式(1)から算出することができる。
【0037】
ここで、fは逆投影位相幅、dappは検出器素子サイズ[mm]、rowは外挿列を含む総検出器列数[row]、SODは線源−回転中心間距離[mm]、SIDは線源−検出器間距離[mm]、Tは寝台移動速度[mm/rotation]、FOMは指定されたFOVの画像を得るために用いる領域であり計算FOV範囲ともいう。FOMは、回転中心を中心座標とし、再構成FOVを含む最小の直径を持つ円となる。
【0038】
逆投影位相幅fは、例えば、2π[rad]の範囲を逆投影する場合にf=1、π[rad]の範囲を逆投影する場合にf=0.5となる。
【0039】
中央制御装置11は、ステップS105で設定された各モードに応じて適用する演算式を切り替え、逆投影位相幅を算出する。
図4は、モード別の逆投影位相幅算出方法について説明するフローチャートである。
上述のように再構成モードが設定されると(ステップS105、ステップS201)、中央制御装置11は設定された再構成モードに応じて、上述の式(1)に含まれるFOMの演算式を変更する。
「モードA」を選択した場合、撮影FOVに基づいて逆投影位相幅を算出するため、FOMに以下の式(2)の値を使用して逆投影位相幅fを算出する(ステップS202、ステップS206)。ここで、FOVmとは、撮影FOV[mm]のことである。
【0041】
モードBを選択した場合、再構成FOV及び再構成中心位置から逆投影位相幅を算出するため、FOMに以下の式(3)を使用して逆投影位相幅fを算出する(ステップS203、ステップS206)。ここで、FOVrは再構成FOV[mm]、x
0、y
0はX方向およびY方向の再構成中心位置[mm]である。
【0043】
また、モードCを選択した場合、最大FOVから逆投影位相幅を算出するため、FOMに以下の式(4)を使用して逆投影位相幅を算出する(ステップS204、ステップS206)。
【0045】
ここで、FOVwは再構成可能な最大のFOV[mm]の意味であり、一例として、以下の式(5)のように算出することができる。ここで、Δαは1素子あたりのチャネル方向ビーム開き角度[rad]、Nchは検出器チャネル数である。
【0047】
モードDでは、FOMに予め設定されている所定値を使用して逆投影位相幅を算出する(ステップS205、ステップS206)。
【0048】
なお、逆投影位相幅を求める式は必ずしも上述の式(1)を用いなくてもよく、FOVや寝台移動速度に応じた逆投影位相幅の近似関数を事前に作成しておき、使用してもよい。
【0049】
図2の説明に戻る。ステップS106の逆投影位相幅算出処理の後、中央制御装置11は、再構成モードに応じて得られた逆投影位相幅からノイズ量を推定し、従来の最大FOVから算出した逆投影位相幅を用いた場合のノイズ量との比に応じて、自動露光制御(AEC;Automatic Exposure Control)で使用するmA変調曲線を修正する(ステップS107)。
mA変調曲線を修正する際、一般には、最大FOVから算出した逆投影位相幅を使用した場合にノイズが所望の値になるように管電流を制御する。具体的には、最大FOVから算出した逆投影位相幅で再構成した際のノイズ量と、設定された再構成モードで再構成した際のノイズ量とのノイズ比の2乗の値を、最大FOVを対象として作成されたmA変調曲線に対して乗ずることで所望のノイズ量を実現できる。
【0050】
その後、X線CT装置1は、得られたmA変調曲線に基づきX線を照射しながら本撮影を行い、取得した投影データを再構成演算装置36へ送出する(ステップS108)。そして再構成演算装置36は、各再構成スライスに対して、算出された逆投影位相幅の投影データを用いて再構成処理を行う。
【0051】
ここで、再構成に使用可能な投影データ、すなわち算出された逆投影位相幅が2π以上あるかを判定し(ステップS109)、2π以上である場合には対向データが存在するため、ハイレゾ再構成を行うようにしてもよい。
【0052】
ハイレゾ再構成とは、検出器のチャネル方向の1/4チャネル分のオフセット(クォーターオフセットとも呼ばれている)による、対象とする位相のデータと対向位相のデータとのビーム経路のずれを利用し、ビームのチャネル方向のサンプリング密度を実効的に向上させる再構成方法である。このように得られた投影データは、対向データを考慮して再構成することで高分解能な画像を得ることができる。そのため、高分解能な画像を得るためには対向データを含めた最近接ビームから逆投影する必要がある。このような、このクォーターオフセットにより対向データとのチャネル方向のサンプリングズレを考慮した再構成を、高分解能再構成(ハイレゾ再構成)と呼んでいる。このハイレゾ再構成は、頭部撮影時(特に、内耳などの微小組織の診断の際)に有用な技術として広く用いられている。クォーターオフセットを利用してハイレゾ再構成を行うためには、対向データが存在する必要がある。シングルスライスCTのアキシャルスキャンの場合は常に対向データは存在するが、マルチスライスCTのらせんスキャンの場合にフェルドカンプ再構成を行う場合には使用できるビュー幅(逆投影位相幅)が限定され、対向データが一部の位相にしか存在しない場合がある。具体的には、寝台移動速度が遅い場合には、逆投影に使用可能な位相幅(ビュー幅)は360度分集まるため、どの位相においても対向データは存在する。一方、寝台移動速度が速い場合には、逆投影に使用可能な位相幅は360度集まらないため、一部の位相しか対向データは存在しない。そのため、逆投影可能な位相幅が360度以上集まり、対向データがどの位相においても存在する場合のみ、ハイレゾ再構成を行うことができる。マルチスライスCTによって得られる投影データの場合、対向挿入によるハイレゾ再構成を行うことができないが、0挿入法やデータ補間法を用いて、ハイレゾ再構成を行うことができる。
0挿入法では、再構成演算装置36は、チャネル間に対向データを挿入する代わりに0データを挿入(以下、「0挿入」という。)することにより、チャネル方向のサンプリングを高密度化し、通常の再構成処理と同じ逆投影位相幅分を逆投影する。0挿入法は、対向データが必要であるため、対向データが存在する位相範囲にのみ適用できる。0挿入法は、単純にチャネル間に0挿入するのみであるため、マルチスライスCTによって得られる投影データに対しても適用可能である。0挿入法では、逆投影位相幅が360度以下の場合、逆投影時にビュー重みを1(「1」は、ビュー重みを使用していない場合と等価である。)、もしくはビュー重みを使用せずに再構成する必要がある。一方、360度以上の場合、公知のビュー重みを使用することができる。ビュー重みを使用することによって、被写体動きによるモーションアーチファクトや、らせんスキャンによるヘリカルアーチファクトを低減することができる。
【0053】
データ補間法は、例えば360度分の投影データを準備し、対象とする位相の投影データから補間により作成したデータを埋め込むことによって2倍サンプリング化する方法である。X線CT装置1は、データ補間法によってチャネル数が2倍かつチャネル間隔が半分である360度分の投影データを生成し、チャネル数が2倍の仮想的な検出器によって得られたものと仮定して、画素中心を通過するビームを最近接ビーム間の補間により生成しながら、360度分の投影データを画素に埋め込む(逆投影する)ことによって高分解能画像を得ることができる。データ補間法では、対向データがなくても適用可能であり、らせんスキャンの場合、比較的高速のらせんピッチを使用することができる。また、データ補間法では、0挿入法と同様に補間データをチャネル間に挿入するのみであるため、マルチスライスCTによって得られる投影データに対しても適用可能であり、逆投影時には逆投影位相幅に関わらず、公知のビュー重みを使用することができる。
尚、データ補間法では、対象データ間での補間によってサンプリングを高密度化することから、対向挿入法や0挿入法と比較して、空間分解能は劣る。
【0054】
ステップS109のハイレゾ再構成の可否判定の後、中央制御装置11は、ハイレゾ再構成可能である範囲をスキャノグラム上に示し、表示装置33に表示するようにしてもよい(ステップS110)。ハイレゾ再構成が可能であって、ハイレゾ再構成を行う指示がなされた場合は(ステップS111;Yes)、ハイレゾ再構成を行い(ステップS112)、それ以外の場合には(ステップS111;No)、通常再構成を行う(ステップS113)。
このように、ハイレゾ再構成の可否を判定し、可能である範囲を提示すれば、本撮影の前に、操作者がハイレゾ再構成の可否を認識でき、画質を推定できる。また、この結果に基づいて撮影条件を修正する等、本撮影の前に、理想に近い撮影条件を設定できるようになる。
【0055】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態によれば、マルチスライスCTにおいてらせんスキャンによって複数部位にわたる広範囲を撮影する場合、逆投影位相幅を決定する方法を再構成モードとして部位毎に指定可能としている。これにより、スライス毎(部位毎)に被写体サイズや診断目的に応じた画質を生成できるようになる。そのため、各部位の画像の画質や空間分解能を操作者の判断で作成することができ、画像作成の自由度が向上する。
【0056】
また、撮影条件を設定する際に、スキャノグラムを解析して自動で部位を分割したり、また、部位別撮影FOV設定画面40を提供して、操作者がスキャノグラム上で部位毎に撮影FOVを自由に設定できるようにしている。
被写体サイズや診断目的に応じて適切な撮影FOVを部位毎に設定し、更に、撮影FOVによって逆投影位相幅を決定するモード(モードA)を設定すれば、撮影FOV内は再構成に必要な投影データが完全に集まるため、再構成に不要な領域を撮影せずにすむ。また比較的逆投影位相幅を広くとることも可能であるため、ノイズを比較的低減できる。また再構成FOVを変えた場合にもノイズ変化のない定常性の高い画像が得られる。
また、再構成FOV及び再構成中心位置によって逆投影位相幅を決定するモード(モードB)を設定すれば、再構成FOV内の画像を生成するのに使用可能な投影データを最大限使用できる(逆投影位相幅を広くできる)ため大きくノイズ低減できる。
また、最大FOVによって逆投影位相幅を決定するモード(モードC)を設定すれば、大きな再構成FOVが必要とされる場合にデータ欠損によるアーチファクトの発生を避けることができ、ノイズ量が安定し、時間分解能を比較的高くすることができる。
また、許容可能な範囲で逆投影位相幅を狭く設定するモード(モードD)を設定すれば、時間分解能が向上し、被写体動きの影響の少ない画像が得られ、また再構成スライスによらず安定したノイズの画像が得られる。
【0057】
[第2の実施の形態]
次に、
図6〜
図8を参照して本発明の第2の実施の形態のX線CT装置1について説明する。
なお、第2の実施の形態のX線CT装置1において、第1の実施の形態のX線CT装置1と同一の各部については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0058】
第2の実施形態において、スキャノグラムの撮影条件設定(ステップS301)から再構成モードの設定(ステップ305)までの処理は第1の実施の形態のステップS101〜ステップS105と同様である。
第2の実施の形態では、ステップS305において再構成モードが設定されると、中央制御装置11は、設定された再構成モードに応じた逆投影位相幅P2(不図示)を求めるとともに、ステップS304の再構成条件設定の際に設定された再構成FOVに基づいて逆投影位相幅P1(不図示)を求める(ステップS306)。
その後、再構成モードに応じて求めた逆投影位相幅P1からノイズ量を推定し、ステップS107と同様に、従来の最大FOVから算出した逆投影位相幅を用いた場合のノイズ量との比に応じて、自動露光制御(AEC)で使用するmA変調曲線を修正する(ステップS307)。中央制御装置11は、ステップS307で得られたmA変調曲線に基づきX線を照射しながら本撮影を行い、得られた投影データを再構成演算装置36へ送出する(ステップS308)。
【0059】
再構成演算装置36は、各再構成スライスに対して、ステップS306で算出した逆投影位相幅P1、P2のそれぞれにて画像を再構成し、設定された再構成モードに応じて算出した逆投影位相幅P2にて再構成した再構成画像Image2、及び再構成FOVから算出した逆投影位相幅P1にて再構成した再構成画像Image1を生成する(ステップS309、S310)。そして再構成演算装置36は、得られた再構成画像Image1、Image2を混合して最終的な再構成画像10を得る。具体的には、
図7に示すように、再構成モードで設定されたFOV内は再構成画像Image2(設定された再構成モードのFOVの画像)を用い、その外側は再構成画像Image1(設定された再構成FOVの画像)を用いて構成する(ステップS311)。このようにすることで、再構成モードで設定されたFOV外でも外挿誤差のない画像を得ることができる。
このとき、
図8に示すように、2つの画像Image1、Image2の境目付近の領域61を重複させ、両画像の補間により画質の境界を生じないように混合するのが望ましい。
【0060】
なお、再構成モードとして、モードB(再構成FOV及び再構成中心位置に基づいて逆投影位相幅を決定するモード)の場合は、ステップS306において算出する逆投影位相幅P1、P2は同じものとなる。また、ステップS309及びステップS310で生成される再構成画像Image1、Image2の再構成FOVサイズは同じものであり、ステップS310の画像の混合を行う必要はない。したがって、本第2の実施の形態の処理は、特に、再構成FOVよりも撮影FOVが小さい場合であって、モードA(撮影FOVに基づいて逆投影位相幅を算出するモード)が選択された場合に特に有効である。
【0061】
[第3の実施の形態]
次に、
図9〜
図11を参照して本発明の第3の実施の形態のX線CT装置1について説明する。
なお、第3の実施の形態のX線CT装置1において、第1の実施の形態のX線CT装置1と同一の各部については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0062】
図9に示すように、第3の実施形態において、スキャノグラムの撮影条件設定(ステップS401)からmA変調曲線の算出(ステップ407)までの処理は第1の実施の形態のステップS101〜ステップS107と同様である。
第3の実施の形態では、ステップS407においてmA変調曲線を算出後、撮影部位毎にハイレゾ再構成可能なFOVサイズを算出する(ステップS408)。具体的にはハイレゾ再構成可能なFOVサイズは上述の式(1)においてf>1となるFOVとして算出できる。
その後、中央制御装置11は、第1及び第2の実施の形態と同様に本撮影(ステップS409)を行い、投影データを取得し、再構成演算装置36へ送出する。
【0063】
再構成演算装置36は、ステップS406によって算出された再構成モードに基づく逆投影位相幅にて再構成を行い、再構成画像Image3を得るとともに、同じスライス位置でハイレゾ再構成を行い、再構成画像Image4を得る(ステップS410、ステップS411)。そして、得られた再構成画像Image3、Image4を混合して最終的な再構成画像Image11を得る(ステップS412)。具体的には、
図10に示すように、ステップS408で求められたハイレゾ再構成可能なFOV内は再構成画像Image4を用いて、その外側は再構成画像Image3を用いて構成する。このようにすることで、再構成FOV内全体がハイレゾ再構成できない場合においても、可能な範囲に限定してハイレゾ再構成画像を得ることができる。このとき、
図11に示すように、2つの画像Image3、Image4の境目付近の領域62を重複させ、両画像の補間により画質の境界を生じないように混合するのが望ましい。更に、ハイレゾ再構成可能な範囲を本撮影の前(例えば、ステップS408とステップS409の間)にスキャノグラム上で提供できることが望ましい。
【0064】
図12を参照してFOVサイズとハイレゾ再構成範囲の関係について説明する。
図12(a)は、高速らせんピッチにおける周回中心からの距離と逆投影位相幅との関係について説明する図、(b)は、(a)に示す関係に対応してハイレゾ再構成可能なFOVについて説明する図、(c)は、低速らせんピッチにおける周回中心からの距離と逆投影位相幅との関係について説明する図、(d)は、(c)に示す関係に対応してハイレゾ再構成可能なFOVについて説明する図である。
らせんスキャンでは、周回中心に近い位置でX線照射時間が長く、周回中心から離れるとX線照射時間が短くなる。そのため、周回中心に近い範囲では逆投影位相幅を広くとることができ、対向データが存在するためハイレゾ再構成が可能となる。一方、周回中心から離れた範囲では逆投影位相幅は狭くなり、ハイレゾ再構成を行うための対向データがない。そのため、通常再構成のみを行える。また、
図12(b)、(d)に示すように、らせんピッチが高速であるほど、ハイレゾ再構成できる範囲(FOV)は狭くなる。
【0065】
このように、撮影条件設定時に設定された再構成FOV内のすべてをハイレゾ再構成できない場合でも、第3の実施の形態によれば、ハイレゾ再構成ができるFOVが算出されてそのFOV内はハイレゾ再構成されるため、高速でらせんスキャンを行っても、周回中心付近でより空間分解能の高い画像を得ることが可能となり、また、より外側の領域は操作者の所望の画質の画像を得ることができる。
【0066】
以上説明したように、第3の実施の形態のX線CT装置1によれば、第1の実施の形態の処理による効果に加え、ハイレゾ再構成できる範囲についてはハイレゾ再構成され、ハイレゾ再構成できない範囲については、設定されたモードに応じた再構成処理が行われるため、操作者の所望の画質を提供できるだけでなく、より空間分解能の高い画像を生成できる。
【0067】
以上の記述から、本発明の目的が達成されたことは明らかである。本発明を詳細にわたって記述すると共に図示したが、これらは説明及び例示のみを意図したものであって、これらに限定されるものではない。本発明の要旨は、特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。