(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
また、以下の実施形態では、
図2において玄関土間部側から収納壁部に対面した状態を基準として、手前側を前方、手前側の面を前面とし、その逆側をそれぞれ後方、背面(後面)として説明し、また、左右方向等の方向を原則的に説明する。
さらに、各図では、壁体や各扉体(引戸)等を模式的に示しており、後記する各空間、スペース等を区画するものであればどのような構造のものでもよい。
【0012】
図1〜
図5は、本実施形態に係る玄関構造の一例について説明するための概念的な説明図である。
本実施形態では、
図1及び
図2に示すように、住居等の建物2の壁体3,7によって区画された建物内空間に、本実施形態に係る玄関構造1を適用した例を示している。
建物2の屋外空間側に面する外側壁体3には、屋外と建物内空間とを連通させる玄関出入口4が設けられており、この玄関出入口4には、この玄関出入口4を開閉する玄関扉5が設けられている。図例では、玄関扉5として、一側部が開口枠に蝶番等の連結部材で連結支持された開き戸を示している。なお、玄関扉5を引戸等としてもよい。
【0013】
玄関出入口4の後方側(建物内空間側)には、この玄関出入口4に連なるように玄関土間部13が設けられている。この玄関土間部13上の空間は、玄関土間部側の空間としての主玄関スペース8となる。
この玄関土間部13の手前側は、玄関出入口4を設けた外側壁体3で区画されており、その左右両側は、それぞれ壁体(図例では、外側壁体3及び間仕切壁等の内側壁体7)によって区画されている。
この玄関土間部13の後方側には、
図1〜
図4に示すように、この玄関土間部13から段上がり状に形成されたフロアー部15が設けられている。
【0014】
また、この玄関土間部13とフロアー部15との直線状の境界部分に沿うように、中央に収納壁部30を設けるとともに、この収納壁部30の両側に一対の開口部21,22を横並びに設けている。図例では、左右方向に延びる玄関土間部13とフロアー部15との直線状の境界部分に沿うように、左右方向中央に収納壁部30を設けた例を示している。また、この収納壁部30の左側に一方の開口部としての家人用開口部21を設け、収納壁部30の右側に他方の開口部としての客人用開口部22を設けた例を示している。これら一対の開口部21,22のそれぞれの幅寸法は、収納壁部30の幅寸法と略等しい寸法とされている。また、収納壁部30の玄関土間部13側に向く面、つまり前面30aに沿うようにスライド自在に一枚の引戸40を配設している。本実施形態では、この一枚の引戸40によって、一対の開口部21,22を選択的に開閉可能としている。
【0015】
また、家人用開口部21側には、
図2に示すように、玄関土間部13をフロアー部15側、つまり図例では、後方側へ入り込ませるようにして連続的に延出させた補助土間部14を設けている。図例では、平面視して略方形状で左右に長い玄関土間部13の左右一方側の略半分の部位を後方側に延設するようにして補助土間部14を設け、この補助土間部14と玄関土間部13とによって平面視して略L字状の一連の土間部を形成している。
この補助土間部14上の空間は、主玄関スペース8の後方側の居室空間の一部となり、また、補助土間部側の空間としての補助玄関スペース10となる。また、客人用開口部22側のフロアー部15上の空間は、主玄関スペース8の後方側の居室空間の一部となり、客人用開口部側居室空間9となる。
収納壁部30及び一対の開口部21,22は、これら居室空間としての客人用開口部側空間9及び補助玄関スペース10と、主玄関スペース8とを区画するように設けられている。
【0016】
これら収納壁部30及び一対の開口部21,22は、
図3に示すように、玄関土間部13の左右両側を区画する外側壁体3及び内側壁体7と、天井6と、フロアー部15及び補助土間部14とによって区画された開口部20に設けられている。
この開口部20の左右両側には、一対の縦枠27,27が上下方向に沿って配設されている。これら縦枠27,27の上端は、本実施形態では、天井6に至ることなく天井6から空間を隔てて下方に位置している。フロアー部15側に配設された縦枠27は、内側壁体7に沿うように配設され、下端がフロアー部15に当接している。補助土間部14側に配設された縦枠27は、外側壁体3に沿うように配設され、下端が補助土間部14に当接している。収納壁部30は、本実施形態では、その天板34の上面がこれら縦枠27,27の上端と同高さ位置となるような高さ寸法とされている。なお、補助土間部14側に配設された縦枠27の下端を補助土間部14に当接させずに、フロアー部15側に配設された縦枠27の下端と略同高さに位置させてもよい。
【0017】
また、これら縦枠27,27間に架け渡されるようにして、引戸40をスライド自在に吊り下げ支持する上レール部材としての上枠25が配設されている。上枠25は、長手方向両端部が縦枠27,27のそれぞれの上端に連結固定されている。この上枠25は、
図3及び
図4に示すように、天井6との間に、主玄関スペース8側と居室空間9,10側とを連通させる上側空間部23を形成するように収納壁部30の手前側の上縁に沿うように設けられている。本実施形態では、縦枠27,27の上端と同高さ位置とされた収納壁部30の天板34の上面の手前縁に上枠25の長手方向途中部位を載置するようにして固定している(
図5(a)も参照)。
【0018】
家人用開口部21は、
図3(b)に示すように、左右両側が左側の縦枠27及び収納壁部30の左側部によってそれぞれ区画され、上側が上枠25によって区画され、下側が補助土間部14によって区画されている。
客人用開口部22は、
図3(a)に示すように、左右両側が収納壁部30の右側部及び右側の縦枠27によってそれぞれ区画され、上側が上枠25によって区画され、下側がフロアー部15によって区画されている。
これら一対の開口部21,22の中央に配設された収納壁部30は、本実施形態では、フロアー部15と補助土間部14とに跨るように設けられている。図例では、収納壁部30の略右側半部をフロアー部15上に位置させ、略左側半部を補助土間部14上に位置させた例を示している。
【0019】
収納壁部30は、
図1及び
図4に示すように、主玄関スペース8側に向けて開口した飾り棚状凹所32と、後方側、つまり主玄関スペース8側とは反対側の補助玄関スペース10側に向けて開口した収納凹所31,33とを有している。本実施形態では、これら複数の凹所31,32,33を水平方向で重合しないように、かつ、上下に隣接するように設けている。図例では、中段に飾り棚状凹所32を設け、その上下に収納凹所31,33を設けた例を示している。つまり、収納壁部30は、主玄関スペース8側に設けた飾り棚状凹所32が設けられた部位とは異なる補助玄関スペース10側における上側部位及び下側部位のそれぞれに上段収納凹所31及び下段収納凹所33を設けた構造とされている。
【0020】
この収納壁部30は、
図3及び
図4に示すように、天板34、左右の側板35,35及び底板(地板)36によって前後に開口する略箱形状とされ、その上下を複数枚の仕切板37,37によって区画することで、上下の各凹所31,32,33を区画している。
上段収納凹所31及び下段収納凹所33の手前側(主玄関スペース8側)は、前板38,38によって閉塞され、これら前板38,38は、収納壁部30の前面30aの化粧板となり、また、上段収納凹所31及び下段収納凹所33の背板となる。
飾り棚状凹所32の後方側(補助玄関スペース10側)は、後板38Aによって閉塞され、収納壁部30の後面の化粧板となり、また、飾り棚状凹所32の背板となる。
なお、このように各凹所の背板と収納壁部30の前後面の化粧板とを兼用する態様に代えて、各凹所に別途、背板及び化粧板を設けるようにしてもよい。また、上段収納凹所31及び下段収納凹所33を区画する前板38,38の一方または両方を、開き戸としてもよい。これによれば、前面側からも上段収納凹所31乃至は下段収納凹所33に収納物を出し入れすることができる。
【0021】
飾り棚状凹所32には、当該飾り棚状凹所32に陳列乃至は載置された物品を照らす照明32aが設けられている。
また、下段収納凹所33には、複数枚の棚板37A,37Aが設けられ、さらに上下に区画されている。
また、この収納壁部30の下端には、台輪39が配設され、その略右側半部がフロアー部15に載置されるようにして固定されている。台輪39の略左側半部は、補助土間部14から浮くように配置されている。収納壁部30の略左側半部の下端には、補助土間部14に接地された支持脚17,17が設けられ、補助土間部14上に支持されている。支持脚17,17は、
図4(a)に示すように、前後に間隔を空けて設けられており、その上端が台輪39乃至は底板36に固定されている。
【0022】
上記のように、収納壁部30は、主玄関スペース8側に飾り棚状凹所32を設けているので、この飾り棚状凹所32を利用して、絵画や写真、花瓶等の物品を飾ったり、鏡を設けたりすることができる。
また、収納壁部30に上下の収納凹所31,33を設けているので、これら収納凹所31,33に靴等の履物や鞄等を収納することができる。また、これら収納凹所31,33は、補助玄関スペース10側に向けて開口して設けられているので、これら収納凹所31,33に収納した物品を主玄関スペース8側から目立ち難くすることができる。
さらに、これら収納凹所31,33は、収納壁部30の補助玄関スペース10側における飾り棚状凹所32が設けられた部位とは異なる部位の上下に設けられているので、収納壁部30を効率的に薄型化することができ、玄関スペースを有効に利用することができる。
さらにまた、飾り棚状凹所32を中段の目立ち易い目の高さ位置等に設け、その背面側の下側部位を下段収納凹所33として利用でき、靴等を出し入れする際における使い勝手を向上させることができる。
なお、上段収納凹所31を設けずに、下段収納凹所33のみを補助玄関スペース10側に設けた態様としてもよい。
【0023】
引戸40は、上端面が上枠25の下面に近接対面し、下端面がフロアー部15の上面に近接対面し、背面が収納壁部30の前面30aに近接対面するように配設されている。本実施形態では、引戸40の高さ寸法を、
図3に示すように、収納壁部30の高さ寸法と略同寸法としている。つまり、引戸40は、フロアー部15から上枠25までの高さ寸法に応じた高さ寸法とされ、家人用開口部21側では、補助土間部14との間に、主玄関スペース8側と補助玄関スペース10側とを連通させる下側空間部24が形成される高さ寸法とされている。図例では、略左側半部を補助土間部14から浮かせるように配設した収納壁部30の下方側にも主玄関スペース8側と補助玄関スペース10側とを連通させる下側空間部24を形成した例を示している。
【0024】
この引戸40の上端部の戸幅方向(左右方向)両側端部近傍には、
図3に示すように、ランナー部材43,43が連結固定されている。このランナー部材43は、公知のもので、
図5(a)に示すように、引戸40の上端部に設けられたカップ部等に連結固定される連結固定部やこの連結固定部に回動自在に設けられた転動部(ローラー)43a等を備えている。本実施形態では、上枠25に埋め込まれるように設けられた上レール26に、ランナー部材43の転動部43aが転動自在に収容保持されて当該引戸40が開閉自在に支持される上吊り構造とされている。
【0025】
このような上吊り構造の引戸40とすることで、下レールが不要となり、開放側下部の見栄えを向上させることができる。また、戸車等を下端に設けた下荷重構造とした場合において、フロアー部15と補助土間部14とに亘って開閉されるものとした場合には、段差が形成されるため、下レールの敷設が困難となる場合がある。また、玄関土間部13に下レールを敷設することも考えられるが、見栄えが悪くなり、砂利等の噛み込み等の発生が考えられる。本実施形態のように、上吊り構造とすることで、開口部の下側に段差が形成されるような場合にも簡易な構造で引戸40を設けることができる。
【0026】
上レール26は、
図5(a)に示すように、上板部26aと、この上板部26aの幅方向両側縁から垂れ下がるように連成された両側板部26b,26bとを備え、これらによって下方に向けて開口する形状とされている。この上レール26の開口内にランナー部材43の転動部43a等が収容される。また、上レール26の両側板部26b,26bの下端縁には、当該上レール26の幅方向内方側に向けて突出する案内片26c,26cがそれぞれに設けられており、これら案内片26c,26cに、ランナー部材43の転動部43aが転動自在に支持される。
なお、この上レール26の長手方向両端部には、長手方向外方側への引戸40の移動を防止するストッパー片等のストッパー部が設けられている。
【0027】
また、引戸40の下端部には、
図5(b)、(c)に示すように、下方に向けて開口したガイド凹溝44が当該引戸40の戸幅方向に沿って形成されている。このガイド凹溝44には、引戸40の下端側を開閉方向に沿ってガイドする下ガイド部28,29の各ガイドピン28b,29bが挿入(遊挿)される。
下ガイド部28,29は、
図1及び
図2に示すように、引戸40の移動軌跡に沿って間隔を空けて設けられており、図例では、2つの下ガイド部28,29を設けた例を示している。一方の下ガイド部28は、客人用開口部22を閉鎖した状態における引戸40の戸尻側端部(図例では左側端部)41の下方側に位置するように収納壁部30の客人用開口部22側手前角部の前方に配設されている。他方の下ガイド部29は、家人用開口部21を閉鎖した状態における引戸40の戸尻側端部(図例では右側端部)42の下方側に位置するように収納壁部30の家人用開口部21側手前角部の前方に配設されている。
【0028】
客人用開口部22側に設けられた下ガイド部28は、マグネット式のガイド部とされている。この下ガイド部28は、
図5(c)に示すように、フロアー部15に埋め込まれるように配設されたガイドケース28aと、このガイドケース28aから出没自在とされたガイドピン28b,28dとを備えている。ガイドピン28b,28dは、筒状の外側ピン28dとこの外側ピン28dに嵌め込まれるように設けられた内側ピン28bとからなる二段階伸縮構造とされている。内側ピン28bの上端には、磁石28cが埋め込まれている。この下ガイド部28は、引戸40のガイド凹溝44に設けられた磁石乃至は鉄板等に内側ピン28bの磁石28cが吸引され、上方に向けて突出し、ガイド凹溝44に挿入され、引戸40の下端部側をガイドする。また、引戸40が上方側に位置しない場合には、磁力による吸引がなくなり、自重によってガイドピン28b,28dがガイドケース28a内に没入し、当該下ガイド部28とフロアー部15とが僅かな段差となる。このようなマグネット式の下ガイド部28を客人用開口部22側に設けることで、目立ち難くなり、見栄えを向上させることができる。
【0029】
家人用開口部21側に設けられた下ガイド部29は、
図5(b)に示すように、収納壁部30の下端部(図例では、台輪39)に固定されて設けられている。この下ガイド部29は、収納壁部30に後端が固定され、前方に向けて突出するように配設されたピン支持部29aと、このピン支持部29aの前端に上方に向けて突出するように固定的に形成されたガイドピン(固定ピン)29bとを備えている。この固定ピン29bは、上端部を先細り状に面取りした略円柱形状とされ、引戸40のガイド凹溝44に挿入され、引戸40の下端部側をガイドする。
【0030】
なお、上記では、2つの下ガイド部28,29を設けた例について説明したが、3つ以上の下ガイド部を設けるようにしてもよい。例えば、収納壁部30の左右方向中央の前方や右側縦枠27近傍に上記同様のマグネット式の下ガイド部28を更に設けたり、左側縦枠27近傍に上記同様の固定ピン29bを有した下ガイド部29を更に設けたりしてもよい。
また、マグネット式の下ガイド部28に代えて、フロアー部15上に固定的に設けられた固定ガイドピンを設けるようにしてもよい。さらには、これら各下ガイド部28,29は、上記した例に限られず、引戸40の下端部側をガイド可能なものであればよい。
【0031】
また、図例では、フロアー部15の上框(
図1参照)の後方側に下ガイド部28を設け、これに応じて引戸40及び引戸40の背面側に位置する収納壁部30の前面30aをフロアー部15の立ち上り前面からやや後方側位置に配設した例を示しているが、これに限られない。例えば、上枠25及び両縦枠27,27の前面がフロアー部15の立ち上り前面と略同一平面状となるように、これら枠部材25,27,27を配設し、図例よりも引戸40及び収納壁部30の前面30aを前方位置に配設するようにしてもよい。または、引戸40の前面若しくは収納壁部30の前面30aがフロアー部15の立ち上り前面と略同一平面状となるように収納壁部30及び引戸40を配設するようにしてもよい。この場合は、客人用開口部22側の下ガイド部を上記したような前方に向けて突出するピン支持部を有したものとし、適宜、フロアー部15から前方に突出させるように設置する態様としてもよい。
【0032】
引戸40の両側端部41,42には、取手45がそれぞれに設けられている。この取手45としては、引戸40の両側表面に、厚さ方向にそれぞれ形成された凹部に嵌め込まれて固定された凹状取手としてもよい。このような凹状取手45とすることで、収納壁部30の前面30aに沿うようにスライド移動されて開閉される引戸40の背面と収納壁部30の前面30aとの隙間(クリアランス)を、突出するようなハンドル等を設けた場合と比べて小さくすることができる。
なお、引戸40の両側端部41,42のそれぞれに取手45を設ける態様に代えて、いずれか一方の側端部のみに取手45を設ける態様としてもよい。例えば、引戸40の一側端部(図例では、左側端部(家人用開口部21を閉鎖する際における戸先側端部))41に設ける態様としてもよい。これによれば、家人用開口部21を閉鎖させた状態では、取手45が客人用開口部22から比較的に遠くなり、取手45を目立ち難くすることができる。さらには、このような取手45を設けずに、例えば、引戸40を、中央に明かり窓等の鏡板等を設けた框組状のものとし、その縦框部を手掛かりとする態様としてもよい。
【0033】
上記構成とされた引戸40が、
図2(a)及び
図3(a)に示すように家人用開口部21を閉鎖した状態では、客人用開口部22が開放される。この状態では、引戸40の右側端部42が収納壁部30の左側の側板35部分に前後方向で重合するように位置し、収納壁部30の前面30aの略全体が開放される。
一方、引戸40が、
図2(b)及び
図3(b)に示すように客人用開口部22を閉鎖した状態では、家人用開口部21が開放される。この状態では、引戸40の左側端部41が収納壁部30の右側の側板35部分に前後方向で重合するように位置し、収納壁部30の前面30aの略全体が開放される。
【0034】
また、本実施形態では、
図1及び
図2に示すように、引戸40のスライド方向に対して略直交する方向に沿って、客人用開口部側居室空間9と補助玄関スペース10とを仕切る居室側壁部47,48を設けている。この収納壁部47,48は、フロアー部15から天井6に至る高さ寸法とされている。
また、本実施形態では、補助玄関スペース10側にフロアー部15の一部によって補助フロアー部16が形成されるように、フロアー部15上に居室側壁部47,48を設けている。このように、補助玄関スペース10側に、補助土間部14から段上がり状の補助フロアー部16をフロアー部15と一連に設けることで、家人が玄関上りとして利用でき、スムーズな出入が可能となり、使い勝手をより向上させることができる。
【0035】
また、居室側壁部47,48には、居室出入口49と、この居室出入口49を開閉する扉50とが設けられている。
居室出入口49は、客人用開口部側居室空間9と補助玄関スペース10とを連通させる出入口となり、
図4に示すように、フロアー部15から天井6に略至るように形成されている。つまり、本実施形態では、居室側壁部47,48が居室出入口49を挟んで前後に分離するように設けられている。前方側の居室側壁部48は、収納壁部30の客人用開口部22側の側面(右側面)に沿うように配設されており、その前端面が収納壁部30の前面30aと略同一平面状となるように配設されている。また、この前方側の居室側壁部48の前後寸法は、収納壁部30の前後寸法と略同寸法乃至は収納壁部30の前後寸法よりも僅かに大きい寸法とされている。
後方側の居室側壁部47の後端には、引戸40のスライド方向と同方向に沿って補助土間部14側に向けて延びる後方壁部46が連なるように設けられている。この後方壁部46によって補助玄関スペース10の後方側を区画している。
なお、
図1及び
図2において、符号18は、靴等の収納棚などを備えた収納部である。
【0036】
扉50は、
図4に示すように、後方側の居室側壁部47の一方面(図例では、補助玄関スペース10側の面)に沿うようにスライド移動される居室側引戸50とされており、その上端部が天井6に近接した位置となるように支持される構造とされている。この居室側引戸50は、天井6に埋め込まれるようにして設けられた上レール53に、上端部に設けられた上記同様のランナー部材51,51の転動部が転動自在に収容保持されて支持される上吊り構造とされている。また、居室側引戸50の下端部には、上記同様のガイド凹溝が設けられており、下端部側が、フロアー部15(補助フロアー部16)に設けられた上記同様の下ガイド部28によってガイドされる。
居室出入口49及び居室側引戸50を上記構造とすることで、上記同様、下レールが不要となり、居室出入口49の下部の見栄えを向上させることができる。また、居室側引戸50を、
図4(b)に示すように、開放させれば、居室出入口49が高さ方向に大きく開放される。一方、居室側引戸50を、
図4(a)に示すように、閉鎖させれば、略天井6までの高さの居室側引戸50によって壁のような外観となり、当該居室側引戸50が目立ち難くなり、見栄えを向上させることができる。
【0037】
なお、
図2及び
図4において、符号52は、上記同様の取手である。
また、居室出入口49及び居室側引戸50は、略天井までの高さとされたものに限られず、居室側壁部47,48に垂れ壁等を形成し、それに応じた高さ寸法とされたものとしてもよい。
さらに、図例では、居室側引戸50を、居室側壁部47の補助玄関スペース10側の面に沿わせて設けた例を示しているが、居室側壁部47の客人用開口部側居室空間9側の面に沿わせて設けるようにしてもよい。
また、居室側壁部47の一方側の面に沿うように居室側引戸50を納める、いわゆるアウトセット納めに限られず、居室側壁部47に戸袋空間を設けて居室側引戸50を収納可能とした戸袋納めとしてもよい。さらに、上吊り構造とされたものに限られず、下荷重構造とされたものとしてもよい。
【0038】
さらには、居室出入口49を開閉する扉としては、引戸に限られず、開き戸や折戸等としてもよい。または、開閉スクリーンとしてもよい。この場合は、居室出入口49の上側を区画する天井や開口枠等に開閉スクリーンの巻取機構を設け、この巻取機構によって上下方向に巻き取り及び繰り出し可能なロールスクリーン式の開閉スクリーンとしてもよい。また、例えば、プリーツスクリーンやブラインドカーテン、シェードカーテン、その他のカーテンなどの開閉可能でかつ遮蔽可能な遮蔽開閉部材を居室出入口49を開閉する扉として採用するようにしてもよい。つまり、主玄関スペース8や客人用開口部側居室空間9から補助玄関スペース10がある程度、視覚的に遮蔽されるものであれば、どのような扉(遮蔽開閉部材)を採用するようにしてもよい。
【0039】
上記構造とされた本実施形態に係る玄関構造1は、引戸40及び居室側引戸50を開閉させることで、以下のような態様で使用するようにしてもよい。
図2(a)、
図3(a)及び
図4(a)に示すように、引戸40をスライドさせて、家人用開口部21を閉鎖させて客人用開口部22を開放させ、また、居室側引戸50をスライドさせて、居室出入口49を閉鎖させる。
この状態では、
図2(a)に示すように、玄関出入口4とリビング等に通じる客人用開口部側居室空間9とが、主玄関スペース8及び客人用開口部22を介して連通し、客人用通路12が形成される。また、補助玄関スペース10が、主玄関スペース8側及び客人用開口部側居室空間9側から概ね隠蔽された状態となる。
【0040】
一方、
図2(b)、
図3(b)及び
図4(b)に示すように、引戸40をスライドさせて、客人用開口部22を閉鎖させて家人用開口部21を開放させ、また、居室側引戸50をスライドさせて、居室出入口49を開放させる。
この状態では、
図2(b)に示すように、玄関出入口4とリビング等に通じる客人用開口部側居室空間9とが、主玄関スペース8、家人用開口部21、補助用玄関スペース10及び居室出入口49を介して連通し、家人用通路11が形成される。
このように本実施形態では、引戸40及び居室側引戸50を開閉させることで、家人用通路11と客人用通路12とを選択的に容易に形成することができる。
【0041】
上記構造とされた本実施形態に係る玄関構造1によれば、建物2の玄関スペースを見栄え良く家人用と客人用とに区分することができるとともに、使い勝手を向上させることができる。
つまり、中央に収納壁部30を設け、その両側に一対の開口部21,22を設けているので、上述のように一方を家人用開口部21、他方を客人用開口部22として利用することができ、また、中央の収納壁部30を収納として利用することができ、使い勝手が良い。
また、これら一対の開口部21,22を選択的に開閉可能な一枚の引戸40を設けた構造としているので、この引戸40によって一方の開口部を閉鎖させれば、他方の開口部が開放されて通路として利用でき、使い勝手を向上させることができる。つまりは、引戸40を、各開口部21,22を開閉する共通の扉として利用でき、状況に応じた選択的な利用が容易に可能となる。また、これにより、玄関スペースを一枚の引戸40と収納壁部30とによって簡易な構造で家人用と来客用とに区分することができる。
【0042】
さらに、家人用開口部21側に、玄関土間部13をフロアー部15側へ入り込ませるようにして連続的に延出させた補助土間部14を設けているので、この補助土間部14を家人用の玄関土間として利用することができる。従って、この補助土間部14に家人の履物等を並べることができる。また、キャスター付きのバッグや荷台、ゴルフバッグ等をスムーズに出し入れすることができ、これらを補助玄関スペース10に収納することもできる。
また、家人用開口部21を引戸40によって閉鎖させれば、主玄関スペース8側から補助土間部14が目立ち難くなり、補助土間部14上の補助玄関スペース10を主玄関スペース8側から見栄え良く区分することができる。
【0043】
さらにまた、引戸40は、収納壁部30の前面30aに沿うようにスライド自在に配設されるとともに収納壁部30と略等しい幅寸法とされている。従って、いずれかの開口部を閉鎖させた状態では、主玄関スペース8側において、引戸40と収納壁部30との段差が目立ち難くなる。また、略等しい幅寸法とされた引戸40と前面30aの略全体が開放された収納壁部30とが両隣となり、すっきりとした印象を与えることができる。
また、本実施形態では、このように前面30aの略全体が開放される収納壁部30の主玄関スペース8側に飾り棚状凹所32を設けているので、この飾り棚状凹所32を利用して種々の物品を見栄え良く飾ることができる。
さらには、引戸40を収納壁部30と前後方向(引戸40の厚さ方向)で略一致する位置に配置することもでき、この状態では、両側の開口部21,22を開放させることもできる。これによれば、来客予定等がない場合には、両側の開口部21,22を開放させることで、家人の使い勝手を向上させることもでき、また、通気性を向上させることもできる。
【0044】
また、本実施形態では、玄関出入口4が設けられた外側壁体3に前面30aが対面するように収納壁部30を配置し、玄関出入口4と収納壁部30とを前後方向で互いの少なくとも一部を重合させるように配置している。従って、玄関出入口4側から収納壁部30の飾り棚状凹所32を目立ち易くすることができる。また、このような配置態様によれば、玄関出入口4と各開口部21,22との距離を比較的に短くすることができ、客人及び家人のいずれにとっても使い勝手が良いものとなる。
【0045】
また、本実施形態では、客人用開口部側居室空間9と補助玄関スペース10とを仕切るとともに、居室出入口49及び居室側引戸50を設けた居室側壁部47,48を設けている。従って、客人用通路12を形成した状態では、これら居室側壁部47,48及び居室側引戸50によって、客人用開口部側居室空間9側から補助玄関スペース10が概ね隠蔽され、客人用開口部側居室空間9側からも補助玄関スペース10を目立ち難くすることができる。また、この結果、補助玄関スペース10を、収納スペースとして有効に利用することもできる。
また、居室出入口49を開放させれば、この居室出入口49を介して家人用開口部21と客人用開口部側居室空間9とを連通させることができるので、家人用通路11を確保することができる。
【0046】
また、本実施形態では、上枠25と天井6との間に上側空間部23を設け、引戸40が家人用開口部21を閉鎖した状態で引戸40の下端と補助土間部14との間に下側空間部24が形成される構造としている。従って、これら上側空間部23及び下側空間部24を介して補助玄関スペース10側の空気を換気でき、補助土間部14に置かれた靴等や、補助玄関スペース10に収納された靴やスポーツ用品等の収納物の臭気が補助玄関スペース10側に篭り難くなる。なお、これら上側空間部23及び下側空間部24の上下寸法は、玄関土間部13からフロアー部15までの高さ寸法と略同寸法程度としてもよく、通気性や見栄え等の観点から、3cm〜30cm程度の寸法としてもよい。
【0047】
次に、本実施形態に係る玄関構造の変形例について
図6〜
図8に基づいて説明する。
なお、以下の各変形例では、上記した例との相違点について主に説明し、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略に説明する。
【0048】
図6は、第1変形例に係る玄関構造1Aを示し、本変形例では、開口部20の両側に縦枠を設けずに、上枠25のみを配設した例を示している。上記したように、収納壁部30の天板34の上面に上枠25の長手方向途中部位を載置するようにして固定しているので、上枠25が長尺である場合にも支持が可能となり、本変形例のように縦枠を設けない構造とすることもできる。
本変形例によれば、収納壁部30の両側の各開口部21A,22Aの一側部が縦枠ではなく壁仕上げ面となるので、すっきりとした印象を与えることができ、見栄えをより向上させることができる。また、下側空間部24Aにも縦枠がないためすっきりとした印象を与えることができる。
【0049】
図7及び
図8(a)は、第2変形例に係る玄関構造1Bを示し、本変形例では、客人用開口部22側の上側空間部を閉塞する閉塞部材54を設けた例を示している。この閉塞部材54は、板状乃至は壁状とされ、その上下端部が天井6及び上枠25に当接するように、左右端部が前方側の居室側壁部48及び内側壁体7に当接するように配設されている。
つまり、本変形例では、収納壁部30及び家人用開口部21の上方側に上側空間部23Aを設け、客人用開口部22側には上側空間部を設けない構造としている。これによれば、引戸40及び居室側引戸50によって客人用開口部22及び居室出入口49をそれぞれ閉鎖させれば、リビング等に通じる客人用開口部側居室空間9側から主玄関スペース8及び補助玄関スペース10を略遮断できる。これにより、客人用開口部側居室空間9側の気密性を向上させることができ、また、玄関側の臭気(空気)が客人用開口部側居室空間9側に流入することを抑制することができる。
なお、本変形例において説明した閉塞部材54を、第1変形例に係る玄関構造1Aに適用するようにしてもよい。
【0050】
図8(b)は、第3変形例に係る玄関構造1Cを示し、本変形例では、フロアー部15の手前側に収納壁部30を載置する部位を形成するように、補助土間部14側に張り出す張出フロアー部19を設けた例を示している。つまり、本変形例では、収納壁部30の下端に支持脚を設けずに、収納壁部30の下端の全体をフロアー部15及び張出フロアー部19に接地させるようにして収納壁部30を設置した例を示している。これによれば、収納壁部30を安定的に設置することができるとともに、上記した例のように収納壁部30の下方側に下側空間部が形成されることもなく、見栄えを向上させることができる。
また、このような張出フロアー部19を設けることで、家人用開口部21側の下ガイド部として、上記同様のマグネット式の下ガイド部28を採用することができる。
【0051】
なお、本変形例において説明した張出フロアー部19を、上記各変形例に係る玄関構造1A,1Bに適用するようにしてもよい。
また、上記した各例では、収納壁部30の下端の高さ位置をフロアー部15と略同高さ位置とした例を示しているが、玄関土間部13(補助土間部14)に収納壁部30の下端の全体を接地させるようにして収納壁部30を設置するようにしてもよい。この場合は、適宜、フロアー部15に収納壁部30を受け入れる切欠部等を設けるようにしてもよい。
【0052】
さらに、上記した各例では、収納壁部30の各凹所31,32,33を、水平方向で重合しないように、かつ、上下に隣接するように設けた例を示しているが、このような態様に限られない。例えば、複数の凹所の少なくとも一部が水平方向で重合する位置となるように主玄関スペース8側及び補助玄関スペース10側に向けて開口する複数の凹所を設ける態様としてもよい。例えば、飾り棚状凹所32は、奥行き寸法を然程必要としないことが考えられるため、飾り棚状凹所32を設けた部位の補助玄関スペース10側に収納凹所を設けるようにしてもよい。つまり、収納壁部30の中段に、主玄関スペース8側及び補助玄関スペース10側に向けてそれぞれが開口する飾り棚状凹所及び収納凹所を設けた態様としてもよい。
また、上記した各例では、収納壁部30の主玄関スペース8側に、飾り棚状凹所32を設けた例を示しているが、このような凹所を主玄関スペース8側に設けずに前面30aを略平坦面としてもよい。この場合は、前面30aに鏡や絵画等を設けるようにしてもよい。
【0053】
さらに、上記した各例では、収納壁部30の上方側に上側空間部23(23A)を設けた例を示しているが、上記同様の閉塞部材等によって閉塞したり、または、収納壁部30自体の高さ寸法を天井6に至るまでの高さ寸法としたりしてもよい。また、家人用開口部21の上側空間部23(23A)も上記同様の閉塞部材等によって閉塞してもよく、または、このような上側空間部自体を設けずに、天井6に付設乃至は埋設するように上枠25を設ける態様としてもよい。
さらにまた、上記した各例では、引戸40が家人用開口部21を閉鎖した状態で引戸40の下端と補助土間部14との間に下側空間部24(24A)が形成される構造とした例を示しているが、このような態様に限られない。例えば、引戸40をフロアー部15の手前側に配置し、その下端面が玄関土間部13に近接対面する構造とされたものとしてもよい。この場合は、玄関土間部13や、フロアー部15の前方側の立ち上り面等に、上記同様の下ガイド部を設けるようにしてもよい。
【0054】
また、上記した各例では、引戸40を支持する上枠25の上レール26を下向きに開口し、両側板部26b,26bに、ランナー部材43の転動部43aを転動自在に支持する案内片26c,26cを連成したものとしているが、このような態様に限られない。例えば、上レール26は、ランナー部材の形状や構造に応じて、略L字状とされたものや、横向きに開口した略コ字状(略倒U字状)とされたものとしてもよい。
さらには、上記した各例では、上吊り構造とされた引戸40を例示しているが、このような態様に限られず、下荷重構造とされた引戸40を採用するようにしてもよい。この場合は、引戸40の上端部に、ランナー部材に代えて、上レール等に係合する案内片やピボット等を設け、また、引戸40の下端部に戸車を設け、この戸車をガイドする下レール等を玄関土間部13等に敷設するようにしてもよい。
【0055】
また、上記した各例では、補助玄関スペース10の居室側壁部47,48側に補助フロアー部16を設けた例を示しているが、後方側にも補助フロアー部16を延設するように設けるようにしてもよい。さらには、このような補助フロアー部16を設けないようにしてもよい。
さらに、上記した各例では、客人用開口部側居室空間9と補助玄関スペース10とを仕切るとともに、居室出入口49及び居室側引戸50を設けた居室側壁部47,48を設けた例を示しているが、これらを設けないようにしてもよい。このようなものでも、家人用開口部21を閉鎖させれば、主玄関スペース8側から補助土間部14などが視界に入り難くなり、上記したような従来のものと比べて見栄えを向上させることはできる。
【0056】
さらにまた、上記した各例では、収納壁部30の前面30aの手前側の外側壁体3に玄関出入口4を設けた例を示しているが、他の壁体3,7に玄関出入口4を設ける態様としてもよい。
また、上記した各玄関構造は、戸建住宅の玄関に限られず、集合住宅等の各戸の玄関への適用も可能である。