(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5728319
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】排気弁
(51)【国際特許分類】
F16K 24/00 20060101AFI20150514BHJP
F16K 31/18 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
F16K24/00 M
F16K31/18 D
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2011-157345(P2011-157345)
(22)【出願日】2011年7月19日
(65)【公開番号】特開2013-24273(P2013-24273A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2014年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】西川 佳弘
【審査官】
関 義彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−187253(JP,A)
【文献】
特開2007−162886(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第2012023(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 24/00
F16K 31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングで下部に流入口が開口し上部に流出口が開口した弁室を形成し、弁室と流出口の間に弁座を形成し、弁室内に弁室内壁との間に流路を設けた有底のほぼ円筒形状で底部に内外を連通する通孔を有するフロート受けを配し、フロート受け内にフロートを自由状態で配したものにおいて、フロート受けの側壁と底壁を別体に形成して側壁を弁室内に固定すると共に底壁を弾性部材で流入口側に付勢して配置し、流入口から弁室内に急激に流入する水の勢いでフロート受けの底壁が弾性部材に抗して流出口側に変位してフロートを弁座に近付け、フロートがフロート受け内に流入する水によって浮上して弁座に着座し閉弁することを特徴とする排気弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管に水を送り込むときに開弁して配管内の空気を排気し、排気が終われば閉弁し、また配管系の圧力が低下して真空状態となったときに開弁して外部空気を導入することにより真空状態を破壊する排気弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の排気弁は、例えば特許文献1に開示されている。これは、ケーシングで下部に流入口が開口し上部に流出口が開口した弁室を形成し、弁室と流出口の間に弁座を形成し、弁室内に弁室内壁との間に流路を設けた有底のほぼ円筒形状で底部に内外を連通する通孔を有するフロート受けを配し、フロート受け内にフロートを自由状態で配したものにおいて、フロート受けを弾性部材で流入口側に付勢して配置し、流入口から弁室内に急激に流入する水の勢いでフロート受けが弾性部材に抗して流出口側に変位してフロートを弁座に近付け、フロートがフロート受け内に流入する水によって浮上して弁座に着座し閉弁するものである。この排気弁は、先ず配管に水を送り込むときにはフロートが弁座から離座して降下した開弁状態であり、流入口から弁室内に流入してくる配管内の空気をフロート受けと弁室内壁との間の流路からフロート受け上端を通して、及び通孔からフロート受け内を通して流出口に排気する。そして排気が終わって配管内の水が流入口から弁室内に流入してくると、フロート受けと弁室内壁との間の流路からフロート受け上端を通して、及び通孔からフロート受け内に流入する水によってフロートが浮上して弁座に着座し閉弁する。また配管系の圧力が低下して真空状態となったときにはフロートが弁座から離座して降下し、流出口から弁室内に流入してくる外部空気をフロート受け内から通孔を通して、及びフロート受けの上端からフロート受けと弁室内壁との間の流路を通して配管内に導入することにより真空状態を破壊する。そして、フロート受けを弾性部材で流入口側に付勢して配置し、流入口から弁室内に急激に流入する水の勢いでフロート受けが弾性部材に抗して流出口側に変位してフロートを弁座に近付け、フロートがフロート受け内に流入する水によって浮上して弁座に着座し閉弁することにより、水が流入口から弁室内に急激に流入してきても、フロート受け内の少しの水位上昇よりフロートが弁座に着座し閉弁するので、漏水を生じることがないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−162886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の排気弁は、流入口から弁室内に急激に流入する水の勢いでフロート受け全体が弾性部材に抗して流出口側に変位するものであるので、フロート受けの重量により弾性部材が損傷し易いという問題点があった。
【0005】
したがって本発明が解決しようとする課題は、水が流入口から弁室内に急激に流入してきても、漏水を生じないと共に弾性部材の損傷を防止できる排気弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の排気弁は、ケーシングで下部に流入口が開口し上部に流出口が開口した弁室を形成し、弁室と流出口の間に弁座を形成し、弁室内に弁室内壁との間に流路を設けた有底のほぼ円筒形状で底部に内外を連通する通孔を有するフロート受けを配し、フロート受け内にフロートを自由状態で配したものにおいて、フロート受けの側壁と底壁を別体に形成して側壁を弁室内に固定すると共に底壁を弾性部材で流入口側に付勢して配置し、流入口から弁室内に急激に流入する水の勢いでフロート受けの底壁が弾性部材に抗して流出口側に変位してフロートを弁座に近付け、フロートがフロート受け内に流入する水によって浮上して弁座に着座し閉弁することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フロート受けの側壁と底壁を別体に形成して側壁を弁室内に固定すると共に底壁を弾性部材で流入口側に付勢して配置し、流入口から弁室内に急激に流入する水の勢いでフロート受けの底壁が弾性部材に抗して流出口側に変位してフロートを弁座に近付け、フロートがフロート受け内に流入する水によって浮上して弁座に着座し閉弁するものであるので、水が流入口から弁室内に急激に流入してきても、フロート受け内の少しの水位上昇よりフロートが弁座に着座し閉弁することにより、漏水を生じないと共に弾性部材の損傷を防止できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態に係わる排気弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、
図1を参照して説明する。本体1に蓋2をボルトで締結して内部に弁室3を有するケーシングを形成する。本体1の下部に流入口4を形成し、蓋2の上部に流出口5を形成する。蓋2に弁座6を間に挟んで取付部材7をネジで固定する。本体1は弁室3の内壁に内側に突出した複数のリブ9を一体に有し、リブ9の内側に有底のほぼ円筒形状のフロート受け10を配置する。フロート受け10は側壁10aと底壁10bを別体に形成し、側壁10aをリブ9の段部に載せてスナップリング15で弁室3内に固定すると共に、底壁10bをスナップリング16との間に配置した弾性部材としてのコイルバネ13で流入口4側に付勢してリブ9の段部に載せて配置する。フロート受け10の底壁10bはフロート受け10の内外を上下方向に連通する通孔11を有する。各リブ9の間に弁室3内壁とフロート受け10との間の流路が形成される。フロート受け10内に球形のフロート12を自由状態で配置する。
【0010】
フロート受け10の底壁10bは流入口4から弁室3内に空気が流入するときや水が緩やかに流入するときはコイルバネ13の付勢力により流入口4側に付勢され外周下面がリブ9の段部に載っているが、水が急激に流入するときは水の勢いでコイルバネ13に抗して流出口5側に変位してフロート12を弁座6に近付け、フロート12がフロート受け10内に流入する水によって浮上して弁座6に着座し閉弁する。
【0011】
上記実施例の排気弁の動作は下記の通りである。先ず配管に水を送り込むときにはフロート受け10の底壁10bはコイルバネ13の付勢力により流入口4側に付勢され外周下面がリブ9の段部に載っている。フロート12は弁座6から離座して降下しフロート受け10の底壁に載った開弁状態である。これにより、弁室3内に流入してくる配管内の空気をリブ9の間の空間からフロート受け10上端を通して及び通孔11からフロート受け10内を通して流出口5に排気する。
【0012】
そして排気が終わって配管内の水が流入口4から弁室3内に緩やかに流入してくると、フロート受け10はコイルバネ13の付勢力により流入口4側に付勢され外周下面がリブ9の段部に載った状態を維持する。フロート12はリブ9の間の空間からフロート受け10上端を通して及び通孔11を通してフロート受け10内に流入する水によって浮上して弁座6に着座し閉弁する。これにより、水の漏出を防止する。また、配管内の水が流入口4から弁室3内に急激に流入してくると、フロート受け10は水の勢いでコイルバネ13に抗して流出口5側に変位してフロート12を流出口5側へ変位させ、フロート12はリブ9の間の空間からフロート受け10上端を通して及び通孔11と第2通孔8を通してフロート受け10内に流入する水によって素早く浮上して弁座6に着座し閉弁するので、漏水を生じることがない。配管系の圧力が低下して真空状態となったときにはフロート12が弁座6から離座して降下しフロート受け10の底壁に載った開弁状態となる。これにより、弁室3内に流入してくる外部空気をフロート受け10上端からリブ9の間の空間を通して及びフロート受け10内から通孔11を通して流入口4から配管内に導入することにより真空状態を破壊する。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は、配管に水を送り込むときに開弁して配管内の空気を排気し、排気が終われば閉弁し、また配管系の圧力が低下して真空状態となったときに開弁して外部空気を導入することにより真空状態を破壊する排気弁に利用することができる。
【符号の説明】
【0014】
1 本体
2 蓋
3 弁室
4 流入口
5 流出口
6 弁座
8 第2通孔
9 リブ
10 フロート受け
10a 側壁
10b 底壁
11 通孔
12 フロート
13 コイルバネ