(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5728382
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】リボン形状の延性金属ガラス
(51)【国際特許分類】
C22C 45/02 20060101AFI20150514BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20150514BHJP
H01F 1/153 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
C22C45/02 Z
C22C38/00 302Z
H01F1/14 C
【請求項の数】25
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2011-525150(P2011-525150)
(86)(22)【出願日】2009年8月25日
(65)【公表番号】特表2012-500904(P2012-500904A)
(43)【公表日】2012年1月12日
(86)【国際出願番号】US2009054942
(87)【国際公開番号】WO2010027813
(87)【国際公開日】20100311
【審査請求日】2012年8月23日
(31)【優先権主張番号】61/091,558
(32)【優先日】2008年8月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505307611
【氏名又は名称】ザ・ナノスティール・カンパニー・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ブラナガン
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・ミーチャム
(72)【発明者】
【氏名】アラ・セルグイーヴァ
【審査官】
佐藤 陽一
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−317645(JP,A)
【文献】
特表2002−536839(JP,A)
【文献】
特表2002−509648(JP,A)
【文献】
特表2000−514135(JP,A)
【文献】
特表2011−525567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00−45/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
45原子%から70原子%の範囲で存在する鉄と、
10原子%から30原子%の範囲で存在するニッケルと、
0原子%から7原子%の範囲で存在するコバルトと、
7原子%から25原子%の範囲で存在するホウ素と、
0原子%より大きく6原子%以下の範囲で存在する炭素と、
0原子%より大きく2原子%以下の範囲で存在するケイ素と、
不可避の不純物と、
を含む鉄系合金組成物であって、
上記成分は100原子%で存在し、
前記合金が0.5%より大きな弾性歪みおよび1GPaより大きな引張強度を示し、
前記合金は金属ガラスと結晶構造とを含み、前記結晶構造のサイズは1nmから500nmの間である、鉄系合金組成物。
【請求項2】
鉄が46原子%から69原子%の範囲で存在し、
ニッケルが12原子%から17原子%の範囲で存在し、
コバルトが2原子%から7原子%の範囲で存在し、
ホウ素が12原子%から16原子%の範囲で存在し、
炭素が4原子%から5原子%の範囲で存在し、
ケイ素が0.4原子%から0.5原子%の範囲で存在する、請求項1に記載の鉄系合金組成物。
【請求項3】
前記組成物が、
46原子%から69原子%の範囲で存在する鉄と、
12原子%から17原子%の範囲で存在するニッケルと、
2原子%から7原子%の範囲で存在するコバルトと、
12原子%から16原子%の範囲で存在するホウ素と、
4原子%から5原子%の範囲で存在する炭素と、
0.4原子%から0.5原子%の範囲で存在するケイ素と、
不可避の不純物と、
からなる、請求項1に記載の鉄系合金組成物。
【請求項4】
前記組成物が、100,000K/s未満の臨界冷却速度を示す、請求項1に記載の鉄系合金組成物。
【請求項5】
前記組成物が、50nm未満の平均粒子サイズを示す構造を有するアモルファス部分を含む、請求項1に記載の鉄系合金組成物。
【請求項6】
前記組成物が、100nm未満の平均粒子サイズを示すナノ結晶構造を含む、請求項1に記載の鉄系合金組成物。
【請求項7】
前記組成物が、100nmから500nmの範囲の平均粒子サイズを示す微細結晶構造を含む、請求項1に記載の鉄系合金組成物。
【請求項8】
前記組成物が、10℃/分の速度でDSCによって測定される、415℃から474℃の範囲のガラス−結晶転移開始温度を示し、425℃から479℃の範囲の第1次ガラス−結晶転移ピーク温度を示す、請求項1に記載の鉄系合金組成物。
【請求項9】
前記組成物が、10℃/分の速度でDSCによって測定される、1060℃から1120℃の範囲の融解温度を示す、請求項1に記載の鉄系合金組成物。
【請求項10】
前記組成物が、7.70g/cm3から7.89g/cm3の範囲の密度を示す、請求項1に記載の鉄系合金組成物。
【請求項11】
前記組成物が、119GPaから134GPaの範囲のヤング率を示す、請求項1に記載の鉄系合金組成物。
【請求項12】
前記組成物が、1GPaから5GPaの範囲の破壊係数を示す、請求項1に記載の鉄系合金組成物。
【請求項13】
前記組成物が、0.5%から4.0%の弾性歪みを示す、請求項1に記載の鉄系合金組成物。
【請求項14】
鉄系合金組成物を形成する方法であって、
45原子%から70原子%の範囲で存在する鉄と、10原子%から30原子%の範囲で存在するニッケルと、0原子%から7原子%の範囲で存在するコバルトと、7原子%から25原子%の範囲で存在するホウ素と、0原子%より大きく6原子%以下の範囲で存在する炭素と、0原子%より大きく2原子%以下の範囲で存在するケイ素と、を含む1つまたは複数の原料を共に溶融して合金を形成する段階であって、不可避の不純物が含まれ、上記成分は100原子%で存在する、段階と、
前記合金からリボンを形成する段階であって、前記リボンが0.5%より大きな弾性歪みおよび1GPaより大きな引張強度を示す段階と、
を含み、
前記鉄系合金組成物は金属ガラスと結晶構造とを含み、前記結晶構造のサイズは1nmから500nmの間である、方法。
【請求項15】
鉄が46原子%から69原子%の範囲で存在し、
ニッケルが12原子%から17原子%の範囲で存在し、
コバルトが2原子%から7原子%の範囲で存在し、
ホウ素が12原子%から16原子%の範囲で存在し、
炭素が4原子%から5原子%の範囲で存在し、
ケイ素が0.4原子%から0.5原子%の範囲で存在する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が、
46原子%から69原子%の範囲で存在する鉄と、
12原子%から17原子%の範囲で存在するニッケルと、
2原子%から7原子%の範囲で存在するコバルトと、
12原子%から16原子%の範囲で存在するホウ素と、
4原子%から5原子%の範囲で存在する炭素と、
0.4原子%から0.5原子%の範囲で存在するケイ素と、
不可避の不純物と、
からなる、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記リボンを溶融紡糸によって鋳造する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記リボンが0.02mmから0.15mmの範囲の厚さを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記合金が100,000K/s未満の臨界冷却速度を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記リボンが、0.5%から4.0%の弾性歪みおよび1GPaから5.0GPaの範囲の引張強度を示す、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記リボンが、10℃/分の速度でDSCによって測定される、415℃から474℃の範囲のガラス−結晶転移開始温度を示し、425℃から479℃の範囲の第1次ガラス−結晶転移ピーク温度を示す、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記リボンが、10℃/分の速度でDSCによって測定される、1060℃から1120℃の範囲の融解温度を示す、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記リボンが、50nm未満の平均粒子サイズを示す構造を有するアモルファス部分を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記リボンが、100nm未満の平均粒子サイズを示すナノ結晶構造を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記リボンが、100nmから500nmの範囲の平均粒子サイズを示す微細結晶構造を含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的高い強度および比較的高い塑性伸びを生じ得る、アモルファスまたはアモルファス/ナノ結晶構造をもたらすことができる物質の化学構造に関する。
【背景技術】
【0002】
金属ナノ結晶材料および金属ガラスは、比較的高い硬度および強度特性を呈することが知られている特定の分類の材料であると考えられる。これらは、その可能性に起因して、構造的応用の候補であると考えられる。しかし、これらの分類の材料は、剪断帯および/または割れの迅速な伝播に付随して限定された破壊靱性を呈する場合があり、このことは、これらの材料の技術的利用に関する懸念事項であり得る。これらの材料は、圧縮状態での試験により適切な延性を示し得る一方で、引張状態での試験の場合には、脆性体系においてゼロに近い伸びを示し得る。これらの分類の材料が室温において引張状態で変形可能となることが本質的にできないということは、突発故障を回避するために固有の延性が必要とされるいくつかの可能性のある構造用途では制限要因となり得る。
【0003】
ナノ結晶材料は、定義により、100nm未満の平均粒子サイズを有する多結晶構造を含むものと理解され得る。これらは、ナノ結晶を形成した場合に、金属および合金が構造的応用のための潜在的意義の多くの魅力的な機械的特定を呈し得るという議論がGleiterによってなされた1980年代から幅広い研究の主題であった。しかし、ナノ結晶材料は、その比較的魅力的な特性(高い硬度、降伏応力および破壊強度)にも関わらず、満足のいかない比較的低い引張伸びを一般に示す場合があり、極めて脆性になってしまう傾向があり得る。実際には、粒子サイズを減少させるには延性を減少させることが、長い間知られていた。このことは、例えば、冷間圧延され従来的には再結晶される軟鋼に関しては他に提案されている、加工硬化指数と粒子サイズとの経験的相関によって証明されている。粒子サイズが次第に減少するにしたがい、転位蓄積の形成がより困難になる場合があり、歪み硬化能力を限定し、負荷下での機械的不安定性および割れを引き起こす場合がある。
【0004】
多くの研究者が、微細構造を調節することによる高い強度の損失を最小化しつつナノ結晶材料の延性を向上させることを試みている。Valievは、ナノ結晶材料における高角粒界の含有量を増加させることが延性の増大に有利であり得ると提案している。ナノ結晶材料の延性を向上させる研究において、比較的延性の高い金属に、銅、アルミニウムまたは亜鉛などを使用することである程度の成果を収めている。例えば、Wangは、塑性変形の熱機械処理に基づく二つの粒子サイズ分布(100nmおよび1.7μm)を有するナノ結晶Cuを生成した。そうして得られた部分的にのみナノスケールを有する高い圧力を加えられた微細構造は、相対的高強度を維持しつつ破断するまで65%の永久伸びを呈することがわかった。Luは、パルス電着によってサブミクロン粒子マトリクスに埋め込まれたナノメートルサイズの双晶を有するナノ結晶銅被膜を生成した。比較的優れた延性および高い強度は、すべり転移と双晶境界との相互作用に起因するものである。別の近年の手法では、4〜10nmのナノ結晶第二相粒子をナノ結晶Alマトリクス(100nm)に組み込んだものがある。ナノ結晶粒子は、すべり転移と相互作用して、延性の顕著な向上をもたらす歪み硬化速度を強化することが認められた。これらの手法を用いて、平均粒子サイズ23nmを有する15%の純Cu、または平均粒子サイズ59nmを有する30%の純Znなど、多数のナノ結晶材料において強化された引張延性が得られている。しかし、これらのナノ結晶材料の引張強度が1GPaを超えていないことに注意しなければならない。より高い引張強度を有する鉄系材料などのナノ結晶材料では、十分な延性(2%以上の延び)を得るのは依然として困難なようである。
【0005】
アモルファス金属合金(金属ガラス)は、KlementがAu−Si合金の急冷実験を実施した1960年に最初に報告された、材料の比較的若い分類を代表する。アモルファス構造を保持するためのより低い臨界冷却速度を有する元素の組み合わせを求めた、ガラス形成体の合金組成の研究は、当時から顕著に進歩している。長距離秩序の欠乏に起因して、金属ガラスは、比較的高い強度、高い硬度、広い弾性限界、優れた軟磁性特性および高い耐腐食性など、多少非典型の特性であると考えられている特性を呈し得る。しかし、歪み軟化および/熱軟化のために、金属ガラスの組成変形はせん断帯に局在して、室温で比較的制限された塑性歪み(2%未満)および壊滅的破断をもたらし得る。金属ガラスの延性を強化する他の手法としては、マイクロメートルサイズの結晶化度または孔分布などの不均質性の導入、ナノメートルサイズの結晶化度の形成、ガラス相分離、またはアモルファス構造における自由体積の導入などが含まれる。これらの複合体の不均質構造は、せん断帯形成の開始部位および/またはせん断帯の比較的高速な伝搬への障壁として作用して、全体的な塑性の増大をもたらし得るが、強度を低下させる場合もある。近年、塑性が応力誘起ナノ結晶化または比較的高いポワソン比に起因する多くの金属ガラスが製造されている。金属ガラスは圧縮試験で増大した塑性(12〜15%))を示すにもかかわらず、金属ガラスの引張伸びは2%を超えないことに注意しなければならない。金属ガラスの引張延性の向上におけるつい最近の結果がNatureに発表されており、ガラス状マトリクスに大きな樹枝状結晶(20〜50μmサイズ)が埋め込まれたジルコニウム系合金において、13%の引張伸びが達成されたことが記載されている。この材料は大部分が結晶であり、樹枝状結晶境界に沿って残りのアモルファス相を有する微晶質合金として考慮され得ることに注意しなければならない。報告されたこれらの合金の最大強度は1.5GPaである。したがって、金属ガラスは比較的高い強度および高い弾性限界という好適な特性を呈するものと認識されている一方で、張力における変形能力は限定されており、この分類の材料の工業的利用をかなり制限し得るものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
1態様では、本発明は、鉄系合金組成物に関する。鉄系合金は、45原子%から70原子%の範囲で存在する鉄と、10原子%から30原子%の範囲で存在するニッケルと、0原子%から15原子%の範囲で存在するコバルトと、7原子%から25原子%の範囲で存在するホウ素と、0原子%から6原子%の範囲で存在する炭素と、0原子%から2原子%の範囲で存在するケイ素と、を含み得、合金は0.5%より大きな弾性歪みおよび1GPaより大きな引張強度を示し得る。
【0007】
別の態様では、本発明は、1つまたは複数の原料を共に溶融して合金を形成する段階と、合金からリボンを形成する段階と、を含む合金の形成方法に関する。合金は、45原子%から70原子%の範囲で存在する鉄と、10原子%から30原子%の範囲で存在するニッケルと、0原子%から15原子%の範囲で存在するコバルトと、7原子%から25原子%の範囲で存在するホウ素と、0原子%から6原子%の範囲で存在する炭素と、0原子%から2原子%の範囲で存在するケイ素と、を含み得る。さらに、リボンは、0.5%より大きな弾性歪みおよび1GPaより大きな引張強度を示し得る。
【0008】
本開示の上記および他の特徴ならびにこれらを達成する方法は、添付の図面と共に本明細書に記載する実施形態の以下の詳細な説明を参照することによって、より明らかになり、よりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1a】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6合金のDTA曲線を示す。
【
図1b】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6JC合金のDTA曲線を示す。
【
図1c】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6JB合金のDTA曲線を示す。
【
図1d】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6JA合金のDTA曲線を示す。
【
図1e】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6J1合金のDTA曲線を示す。
【
図1f】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6J3合金のDTA曲線を示す。
【
図2a】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6J7合金のDTA曲線を示す。
【
図2b】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6J9合金のDTA曲線を示す。
【
図2c】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6H1合金のDTA曲線を示す。
【
図2d】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6H3合金のDTA曲線を示す。
【
図2e】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6H7合金のDTA曲線を示す。
【
図2f】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6H9合金のDTA曲線を示す。
【
図3a】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6HA合金のDTA曲線を示す。
【
図3b】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6HB合金のDTA曲線を示す。
【
図3c】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6HC合金のDTA曲線を示す。
【
図3d】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6J1H9合金のDTA曲線を示す。
【
図3e】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6J3H9合金のDTA曲線を示す。
【
図3f】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6J7H9合金のDTA曲線を示す。
【
図4a】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6J9H9合金のDTA曲線を示す。
【
図4b】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6J1HA合金のDTA曲線を示す。
【
図4c】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6J3HA合金のDTA曲線を示す。
【
図4d】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6J7HA合金のDTA曲線を示す。
【
図4e】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6J9HA合金のDTA曲線を示す。
【
図4f】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6J1HB合金のDTA曲線を示す。
【
図5a】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6J3HB合金のDTA曲線を示す。
【
図5b】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6J7HB合金のDTA曲線を示す。
【
図5c】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6J1HC合金のDTA曲線を示す。
【
図5d】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6J3HC合金のDTA曲線を示す。
【
図5e】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E6J7HC合金のDTA曲線を示す。
【
図5f】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、16m/sで溶融紡糸したPC7E7合金のDTA曲線を示す。
【
図6a】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6合金のDTA曲線を示す。
【
図6b】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6JC合金のDTA曲線を示す。
【
図6c】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6JB合金のDTA曲線を示す。
【
図6d】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6JA合金のDTA曲線を示す。
【
図6e】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6J1C合金のDTA曲線を示す。
【
図6f】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6J3合金のDTA曲線を示す。
【
図7a】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6J7合金のDTA曲線を示す。
【
図7b】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6J9合金のDTA曲線を示す。
【
図7c】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6H1合金のDTA曲線を示す。
【
図7d】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6H3合金のDTA曲線を示す。
【
図7e】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6H7C合金のDTA曲線を示す。
【
図7f】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6H9合金のDTA曲線を示す。
【
図8a】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6HA合金のDTA曲線を示す。
【
図8b】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6HB合金のDTA曲線を示す。
【
図8c】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6HC合金のDTA曲線を示す。
【
図8d】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6J1H9合金のDTA曲線を示す。
【
図8e】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6J3H9C合金のDTA曲線を示す。
【
図8f】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6J7H9合金のDTA曲線を示す。
【
図9a】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6J9H9合金のDTA曲線を示す。
【
図9b】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6J1HA合金のDTA曲線を示す。
【
図9c】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6J3HA合金のDTA曲線を示す。
【
図9d】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6J7HA合金のDTA曲線を示す。
【
図9e】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6J9HA合金のDTA曲線を示す。
【
図9f】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6J1HB合金のDTA曲線を示す。
【
図10a】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6J3HB合金のDTA曲線を示す。
【
図10b】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6J7HB合金のDTA曲線を示す。
【
図10c】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6J1HC合金のDTA曲線を示す。
【
図10d】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6J3HC合金のDTA曲線を示す。
【
図10e】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6J7HC合金のDTA曲線を示す。
【
図10f】ガラス−結晶転移ピークおよび/または溶融ピークの存在を示す、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E7合金のDTA曲線を示す。
【
図11】2点曲げ試験システムにおけるa)曲げ試験機の写真、およびb)曲げプロセスの拡大概略図を示す。
【
図12】10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6Hシリーズ合金に関する破断歪みの関数としての累積破断確率を示す曲げ試験データを示す。
【
図13】10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6Jシリーズ合金に関する破断歪みの関数としての累積破断確率を示す曲げ試験データを示す。
【
図14】16m/sで溶融紡糸した後に平坦になるまで180°曲げたPC7E6シリーズ合金の結果を示す。
【
図15】10.5m/sで溶融紡糸した後に平坦になるまで180°曲げたPC7E6シリーズ合金の結果を示す。
【
図16】手で180°曲げたPC7E6HA合金の曲げサンプルの例を示し;
図16a)は、1/3気圧のヘリウム雰囲気下で10.5m/sで溶融紡糸したものを示し、
図16b)は、1気圧の空気雰囲気下で10.5m/sで溶融紡糸したものを示し、
図16c)は、1/3気圧のヘリウム雰囲気下で16m/sで溶融紡糸したものを示し、
図16d)は、1気圧の空気雰囲気下で16m/sで溶融紡糸したものを示し、
図16e)は、1/3気圧のヘリウム雰囲気下で30m/sで溶融紡糸したものを示し、
図16f)は、1気圧の空気雰囲気下で30m/sで溶融紡糸したものを示す。
【
図17a】ガラス−結晶転移ピークの存在を示す、1/3気圧のヘリウム雰囲気下で10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6HA合金のDTA曲線を示す。
【
図17b】ガラス−結晶転移ピークの存在を示す、1気圧の空気雰囲気下で10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6HA合金のDTA曲線を示す。
【
図17c】ガラス−結晶転移ピークの存在を示す、1/3気圧のヘリウム雰囲気下で16m/sで溶融紡糸したPC7E6HA合金のDTA曲線を示す。
【
図17d】ガラス−結晶転移ピークの存在を示す、1気圧の空気雰囲気下で16m/sで溶融紡糸したPC7E6HA合金のDTA曲線を示す。
【
図17e】ガラス−結晶転移ピークの存在を示す、1/3気圧のヘリウム雰囲気下で30m/sで溶融紡糸したPC7E6HA合金のDTA曲線を示す。
【
図17f】ガラス−結晶転移ピークの存在を示す、1気圧の空気雰囲気下で30m/sで溶融紡糸したPC7E6HA合金のDTA曲線を示す。
【
図18】16m/sで溶融紡糸したPC7E6J1サンプルのX線回折スキャンを示し、上側の曲線は自由側を示し、下側の曲線はホイール側を示す。
【
図19】10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6J1サンプルのX線回折スキャンを示し、上側の曲線は自由側を示し、下側の曲線はホイール側を示す。
【
図20a】PC7E6合金のリボン断面全体を示す低倍率のSEM後方散乱電子顕微鏡写真を示し、孔の孤立点の存在が確認される。
【
図20b】PC7E6合金のリボン構造体の中程度の倍率のSEM後方散乱電子顕微鏡写真を示す。
【
図20c】PC7E6合金のリボン構造体の高倍率のSEM後方散乱電子顕微鏡写真を示す。
【
図21a】PC7E6HA合金のリボン断面全体を示す低倍率のSEM後方散乱電子顕微鏡写真を示す。
【
図21b】PC7E6HA合金のリボン構造体の中程度の倍率のSEM後方散乱電子顕微鏡写真を示し、結晶度の孤立点の存在が確認される。
【
図21c】PC7E6HA合金のリボン構造体の高倍率のSEM後方散乱電子顕微鏡写真を示す。
【
図22】16m/sで溶融紡糸したPC7E6HA合金の応力歪み曲線を示す。
【
図23】16m/sで溶融紡糸した後に引張試験を行ったPC7E6HA合金のSEM二次電子顕微鏡写真を示す。
【
図24】16m/sで溶融紡糸したPC7E7合金の応力歪み曲線を示す。
【
図25】16m/sで溶融紡糸した後に引張試験を行ったPC7E7合金のSEM二次電子顕微鏡写真を示す。写真の右側に亀裂の存在が確認され、亀裂先端の前に大きな塑性領域を示唆する複数のせん断帯の存在が確認される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本出願は、鉄系合金に関し、該ガラス形成鉄系合金は、約45原子%から70原子%(at%)のFeと、10原子%から30原子%のNiと、0原子%から15原子%のCoと、7原子%から25原子%のBと、0原子%から6原子%のCと、0原子%から2原子%のSiと、を含むか、該組成から基本的になるか、または該組成からなり得る。例えば、鉄の量は、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69および70原子%とすることができる。ニッケルの量は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29および30原子%とすることができる。コバルトの量は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14および15原子%とすることができる。ホウ素の量は、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24および25原子%とすることができる。炭素の量は、0、1、2、3、4、5および6原子%とすることができる。ケイ素の量は、0、1および2原子%とすることができる。
【0011】
ガラス形成合金は、金属ガラス形成のための臨界冷却速度について10
3から10
6K/sの範囲内の全ての値および増分を含めた100,000K/s未満であってよい。臨界冷却速度とは、合金組成物中にガラス部分の形成をもたらす冷却速度として理解され得る。鉄系ガラス形成合金は、主に金属ガラスからなり得る構造が結果としてもたらされ得る。すなわち、50%から99%の範囲内の全ての値および1.0%の増分を含めて、金属構造の少なくとも50%またはそれ以上がガラス状であってよい。したがって、近接した原子スケール上には秩序がほとんど存在しない可能性があり、すなわち生じ得る秩序はいずれも50nm未満であり得る。別の実施例では、鉄系合金は、金属ガラスおよび結晶相を含むか、両方から基本的になるか、または両方からなる構造を示してよく、該結晶相のサイズは、1nmから500nmの間の全ての値および1nmの増分を含めた500nm未満であってよい。
【0012】
実施例によっては、合金は、46原子%から69原子%の範囲で存在する鉄と、12原子%から27原子%の範囲で存在するニッケルと、存在する場合は2原子%から15原子%の範囲で存在する任意のコバルトと、12原子%から16原子%の範囲で存在するホウ素と、存在する場合は4原子%から5原子%の範囲で存在する任意の炭素と、存在する場合は0.4原子%から0.5原子%の範囲で存在する任意のケイ素と、を含むか、該組成から基本的になるか、または該組成からなり得る。当然のことながら、該合金は100原子%で上記合金化元素を含んでよく、不純物は、その範囲内の全ての値および増分を含めて0.1原子%から5.0原子%の範囲で存在し得る。不純物は、原料組成物、処理装置、処理の間の雰囲気との反応等によって導入され得る。
【0013】
合金は、1つまたは複数の原料組成物を溶融することによって生成することができ、該原料組成物は、個々の元素または元素の組み合わせを含み得る。原料は、粉末またはその他の形状として提供され得る。原料は、高周波(rf)誘導、電気アーク炉、プラズマアーク炉またはその他の炉、もしくはアルゴンまたはヘリウムなどのシールドガスを使用した装置によって溶融され得る。原料が溶融されると、不活性ガス雰囲気下でシールドされたインゴットに形成され得る。インゴットは、フリップおよび再溶融されて、均一性が増大および/または向上され得る。合金は、溶融紡糸されて、最大約1.25mmの幅を有するリボンが形成され得る。溶融紡糸は、例えば5から25m/sの範囲内の全ての値および増分を含めた接線速度で実施してよい。リボンは、0.02mmから0.15mmの範囲内の全ての値および増分を含めた厚さを有し得る。双ロール鋳造または100,000K/s未満の速度で合金を冷却することができる比較的高速の冷却方法など、その他の手順を使用してもよい。
【0014】
上記の合金は、+/−0.01g/cm
3で、7.70g/cm
3から7.89g/cm
3の範囲内の全ての値および増分を含めた密度を示し得る。さらに、合金は、10℃/分の速度でDSC(示差走査熱量測定)を使用して測定されるとき、範囲内の全ての値および増分を含めた、410℃から500℃の範囲に1つまたは複数のガラス−結晶転移温度を呈し得る。ガラス−結晶転移温度とは、ガラス合金から結晶構造が形成および成長し始める温度として理解され得る。10℃/分の速度でDSCによって測定されるとき、範囲内の全ての値および増分を含めた、415℃から474℃の範囲に第1次ガラス−結晶転移開始温度を示し、450℃から488℃の範囲に第2次ガラス−結晶転移開始温度を示し得る。10℃/分の速度でDSCによって測定されるとき、範囲内の全ての値および増分を含めた、425℃から479℃の範囲に第1次ガラス−結晶転移ピーク温度を示し、454℃から494℃の範囲に第2次ガラス−結晶転移ピーク温度を示し得る。さらに、転移のエンタルピーは、範囲内の全ての値および増分を含めた−40.6J/gから−210J/gの範囲であり得る。DSCは、サンプルの酸化を防止するために、高純度アルゴンガスなどの不活性ガスの下で実施され得る。
【0015】
さらに、上記合金は、1060℃から1120℃の範囲の初期溶融温度を呈し得る。溶融温度とは、固体から液体へと合金の状態が変化する温度として理解され得る。合金は、10℃/分の速度でDSCによって測定されるとき、範囲内の全ての値および増分を含めた、1062℃から1093℃の範囲の第1溶融開始温度、および1073℃から1105℃の範囲の第2次溶融開始温度を呈し得る。合金は、10℃/分の速度でDSCによって測定されるとき、範囲内の全ての値および増分を含めた、1072℃から1105℃の範囲の第1溶融ピーク温度、および1081℃から1113℃の範囲の第2次溶融ピーク温度を呈し得る。また、DSCは、サンプルの酸化を防止するために、高純度アルゴンガスなどの不活性ガスの下で実施され得る。
【0016】
さらなる態様では、鉄系ガラス形成合金は、範囲内の全ての値および増分を含めた119GPaから134GPaのヤング率を呈する構造体をもたらすことができる。ヤング率とは、材料の引張および圧縮における比例限度内での単位応力と単位歪みの比率として理解され得る。合金はまた、2.7GPaから4.20GPaなど、1GPaから5GPaの範囲で全ての値および増分を含めた極限強度または破断強度を呈し得る。破断強度とは、最大応力値として理解され得る。合金は、0.5%から4.0%の範囲内の全ての値および増分を含めた、0.5%以上の弾性歪みを呈し得る。弾性歪みとは、負荷適用下での物体の寸法変化を、弾性域における初期寸法で割った値として理解され得る。さらに、合金は、範囲内の全ての値および増分を含めた2%を超えて最大97%までの引張歪みまたは曲げ歪みを呈し得る。引張歪みまたは曲げ歪みとは、負荷適用下での物体の寸法の最大変化を、初期寸法で割った値として理解され得る。合金はまた、1GPaを超える破断強度と2%を超える引張歪みまたは曲げ歪みなどの上記特性の組み合わせを呈し得る。
【0017】
合金はまた、アモルファス部分、ナノ結晶構造および/またはマイクロ結晶構造を呈し得る。マクロ結晶とは、100nmから500nmの範囲内の全ての値および増分を含めた500nm以下の平均粒子サイズを呈する構造を含むものと理解され得る。ナノ結晶とは、50nmから100nmの範囲等、範囲内の全ての値および増分を含めた100nm未満の平均粒子サイズを呈する構造を含むものと理解され得る。アモルファスとは、ゼロから比較的少量の秩序を呈する構造を含み、粒子が存在する場合、50nm未満の範囲の平均粒子サイズを呈するものと理解され得る。
【0018】
(実施例)
以下の実施例は、説明目的のみで提示され、したがって、本明細書において提供される詳細な説明および添付の特許請求の範囲を限定することを意味するものではない。
【0019】
[サンプル調製]
高純度の元素を用いて、PC7E6シリーズ合金の合金原料15gを、表1に示した原子比率に従って秤量した。次いで、原料材料を、アーク溶融システムの銅炉内に配置した。原料を、高純度のアルゴンをシールドガスとして用いてアーク溶融してインゴットとした。インゴットを数回フリップし、再溶融して均一性を確保した。続いて、混合後に、インゴットを、幅約12mm、長さ30mm、厚さ8mmのフィンガの形態に鋳造した。次いで、得られたフィンガを、約0.81mmの穴径を有する石英るつぼ内の溶融紡糸室に配置した。インゴットをRF誘導により1/3気圧のヘリウム雰囲気において溶融し、次いで、5から25m/sまで変動する接線速度で移動する245mmの径の銅ホイール上に取り出した。生成されたPC7E6シリーズのリボンは、幅が典型的には最大約1.25mmであり、厚さが0.02から0.15mmであった。
【0021】
[密度]
インゴット形態の合金の密度を、空気および蒸留水の両方での秤量を可能にする特別に構成されたバランスのアルキメデス法を用いて測定した。各合金についてアーク溶融した15gのインゴットの密度を表2に一覧にすると、7.70g/cm
3から7.89g/cm
3まで変動することが分かった。実験結果から、この技術の正確さが±0.01g/cm
3であることが明らかとなった。
【0023】
[固化された状態の構造体]
固化された状態のリボン構造体について、DSC−7オプションを有するPerkin Elmer DTA−7システムにおいて熱分析を実施した。サンプルを超高純度アルゴン流の使用により酸化から保護して、示差熱分析(DTA)および示差走査熱量測定(DSC)を10℃/分の加熱速度で実施した。ホイール接線速度が増大すると冷却速度が増大することに注意されたい。16m/sおよび10.5m/sで溶融紡糸した合金の典型的なリボンの厚さは、それぞれ、0.04から0.05mnおよび0.06から0.08mmである。表3に、16m/sで溶融紡糸したPC7E6シリーズ合金について、ガラス−結晶転移に関係するDSCデータを示す。
図1から5に、対応するDTAプロットを、16m/sで溶融紡糸した各PC7E6シリーズサンプルについて示す。図から分かるように、大部分のサンプル(2つを除く全て)は、紡糸された状態が金属ガラスの部分(例えば約50体積%を超える割合)を含有することを実証するガラス−結晶転移を呈する。ガラス−結晶転移は、415から500℃の温度範囲において、1段階、2段階または3段階のいずれかで起こり、−40.6から−210J/gの転移エンタルピーを有する。表4に、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6シリーズ合金について、ガラス−結晶転移に関係するDSCデータを示す。
図6から10に、対応するDTAプロットを、10.5m/sで溶融紡糸した各PC7E6シリーズサンプルについて示す。図から分かるように、大部分のサンプル(2つを除く全て)は、紡糸された状態がかなりの割合の金属ガラス(例えば約50体積%を超える割合)を含有することを実証するガラス−結晶転移を呈する。ガラス−結晶転移は、415から500℃の温度範囲において、1段階、2段階または3段階のいずれかで起こり、50.7から173J/gの転移エンタルピーを有する。
【0026】
表5に、PC7E6シリーズ合金の溶融挙動を表わす高温DTAの結果を示す。表5に見られるように、溶融は、1から3段階で起こり、初期の溶融(すなわち、固相線)が、1062℃から1120℃で観察される。
【0028】
[機械的特性試験]
機械的特性試験を、第1に、ヤング率を測定するナノインデンタ試験ならびに破断強度および伸びを測定する曲げ試験を用いることによって実施した。さらに、限定的な引張試験を選択したサンプルに対して実施した。以下のセクションは、技術的アプローチおよび測定データを詳説する。
【0029】
[2点曲げ試験]
強度測定のための2点曲げ法は、光ファイバおよびリボンなどの、薄く高度に可撓性を有する試料のために開発された。該方法は、ある長さのテープ(ファイバ、リボンなど)を「U」字形状に曲げるステップ、およびこれを2枚の平らで平行な面板の間に挿入するステップを含む。一方の面板は静止しているが、第2の面板は、面板のゼロ分離位置に起因する約10μmの系統的不確実性を有して、面板間のギャップが約5μmより良好な精度に制御され得るように、コンピュータ制御されたステッピングモータによって動かされる(
図11)。ステッピングモータは、厳密に制御された特定の速度(最大で10,000μm/sの任意の速度)で面板を一緒に動かす。テープの破壊を、ステッピングモータを停止させる音響センサを用いて検出する。テープでの測定に関しては、破断時の面板分離が2から11mmの間で変動したため、装置の精度は結果に影響しない。
【0030】
試料の強度は、破断時の面板分離から計算することができる。面板は、測定により歪みを直接与えて破断するように、テープを特定の変形に抑圧する。材料のヤング率を用いて、以下の方程式(式1および2)にしたがって破断応力を計算する:
【0033】
式中、dはテープ厚さであり、Dは、破断時の面板距離である。ヤング率をナノインデンテーション試験から測定し、PC7E6シリーズ合金については119から134GPaまで変動することが分かった。先に言及したように、測定していないサンプルについてはヤング率を125GPaであると推定した。面板間のテープの形状は、約2:1のアスペクト比を有する楕円形に類似する弾性線である。方程式は、テープの弾性変形を仮定する。テープが破断時に粉砕して、破壊した端部が永久変形を全く示さないとき、破断部位において大規模な塑性変形は存在せず、方程式は正確である。多くのPC7E6シリーズ合金において示されるように塑性変形が起こる場合であっても、曲げ測定は強度の相対的な尺度を依然として提供し得ることに注意されたい。
【0034】
材料の強度データは、式3に示すようなワイブル分布に典型的に当てはまる:
【0036】
式中、mは、ワイブル係数(分布幅の逆の尺度)であり、ε
0は、ワイブルの尺度パラメータ(中心度の尺度、実際には63%の破断確率)である。一般に、mは、測定された強度の変動性に相当する無次元数であり、欠陥の分布を表示する。試料の強度のサイズ依存性を説明しているワイブルの最弱リンク説を組み込むのが簡単であるため、この分布は広く用いられている。
【0037】
図12および13に、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6HおよびPC7E6Jシリーズ合金それぞれについて、破断歪みの関数としての累積破断確率を与える2点曲げ結果を示す。これらの図においてデータ点ごとに別々の曲げ試験を表示していること、および各サンプルについて、17から25回の測定が行われたことに注意されたい。表6に、これらの10.5m/sの曲げ試験測定について、ヤング率(GPaおよびpsi)、破断強度(GPaおよびpsi)、ワイブル係数、平均歪み(%)、および最大歪み(%)を含めた結果を一覧にする。曲げ試験の強度の計算には、これらの種類の合金の平均値である125GPaのヤング率を使用した。ワイブル係数は、2.97から8.49まで変動することが分かり、永久破断を引き起こすリボンのいくつかにおいてマクロ欠陥が存在することを示唆する。平均歪みを2点曲げ試験の間に破壊したサンプルセットを基準にしてパーセントで計算した。平均歪みは1.52から2.15%の範囲であった。曲げ試験の間の最大歪みのパーセントは、2.3%から3.36%まで変動することが分かった。計算した破断強度の値は、2.87から4.20GPaであった。
【0039】
[180°曲げ試験]
リボンサンプルを完全に平坦に曲げるということは、高い歪みが得られるが従来の曲げ試験では測定されない特別な状態を示唆している。10.5m/sで溶融紡糸した後に、平坦になるまで180°曲げたPC7E6シリーズ合金の結果を、16m/sおよび10.5m/sで溶融紡糸したサンプルについてそれぞれ
図14および15に示す。16m/sで処理したリボンは通常0.03から0.04mmの厚さを有し、10.5m/sで処理したリボンは0.07から0.08mmの厚さを有する。リボンを完全に折りたたむ場合、複雑な機構に由来するように119.8%程度の高い歪みを受ける。実際には、歪みは、リボンの引張側において約57%から約97%の範囲であり得る。結果は、脆性、全長に沿った一側で曲げられること(欠陥を含む局所的領域の場合は考慮しない)、孤立点において一方向のみ曲げられること、および両側(すなわちホイール側および自由側)に曲げられることを含む多様な挙動を示す。
図14に示すように、ニッケルおよびコバルトに対して幅広い組成レジームがあり、その場合、サンプルを両方向に曲げることができる。厚いリボンの場合(すなわち10.5m/sで処理したリボンの場合)、両方向に曲げられるサンプルは見られなかった。
図15に示すように、リボンを全長に沿って一方向に平坦に曲げることができる組成レジーム(すなわち、ニッケルおよびコバルトの比率)はかなり狭い。これらの図は、ニッケルおよびコバルトの含有量を変化させた場合の曲げ応答および固有の伸長への影響を示す。しかし、ホウ素、炭素、ケイ素および鉄を含む基本元素を変化させることによって、曲げ応答が変化し、10.5m/sなどの低いホイール速度では特に強化され得ることが想定されることに留意されたい。
【0040】
(実施例1)
高純度の元素を用いて、PC7E6HAの化学構造を有する6つの15gの投入材料を表1の原子比にしたがって秤量した。元素の混合物を銅炉上に配置し、カバーガスとして超高純度のアルゴンを用いてアーク溶融してインゴットにした。混合後、得られたインゴットを溶融紡糸に適したフィンガ形状に鋳造した。次いで、PC7E6HAの鋳造したフィンガを公称0.81mmの穴径を有する石英るつぼ内に配置した。インゴットをRF誘導によって加熱し、次いで、30m/s、16m/s、および10.5m/sのホイール接線速度で移動する、高速に動く245mmの銅ホイール上に取り出した。表7に示すように、1/3気圧の不活性なヘリウム雰囲気下、または1気圧の空気雰囲気下で溶融および取り出しを行った。試料の曲げ性能については表6に示し、さらなる実施例を
図16に示した。固化された状態のリボンのDTA/DSC分析を10℃/分の加熱速度で行い、室温から900℃まで加熱した。ガラス−結晶転移曲線を
図17に示し、ガラスピークのDSC分析を表8に示す。
【0043】
(実施例2)
高純度の元素を用いて、PC7E6J1の化学構造を有する15gの投入材料を表1の原子比にしたがって秤量した。元素の混合物を銅炉上に配置し、カバーガスとして超高純度のアルゴンを用いてアーク溶融してインゴットにした。混合後、得られたインゴットを溶融紡糸に適したフィンガ形状に鋳造した。次いで、PC7E6J1の鋳造したフィンガを公称0.81mmの穴径を有する石英るつぼ内に配置した。インゴットをRF誘導によって加熱し、次いで、16m/sおよび10.5m/sのホイール接線速度で移動する、高速に動く245mmの銅ホイール上に取り出した。次いで、紡糸された状態のリボンを切断して、4から6個のリボンをオフカットSiO
2単結晶(ゼロバックグラウンドホルダ)上に配置した。リボンは、光沢側(自由側)または鈍光沢側(ホイール側)のいずれかをホルダ上で上向きにして配置した。少量のケイ素粉末をホルダ上に配置した後に、ケイ素の高さがリボンの高さと同一となるようにガラス側で押し付けた。これにより、続く詳細な位相分析におけるピーク位置エラーを合わせることが可能となる。
【0044】
X線回折測定は、ステップサイズ0.02°および走査速度2°/分で20から100°(2θ)まで実施した。銅ターゲットを有するX線管の設定は、40kVおよび44mAであった。16m/sで溶融紡糸したPC7E6J1合金のX線回折結果を自由側およびホイール側について
図18に示す。
図19には、10.5m/sで溶融紡糸したPC7E6J1合金のX線回折結果を自由側およびホイール側について示す。X線走査では添加したケイ素が大部分を占めるが、ガラスおよび結晶含有部分ならびに形成される相は、ホイール速度およびリボンの断面の両方に応じて変化することは明らかである。これらの構造における相違は、表7に示すこの合金およびその他の曲げ試験結果の相違を説明する。
【0045】
(実施例3)
高純度の元素を用いて、PC7E6およびPC7E6HAの化学構造を有する15gの投入材料を表1の原子比にしたがって秤量した。元素の混合物を銅炉上に配置し、カバーガスとして超高純度のアルゴンを用いてアーク溶融してインゴットにした。混合後、得られたインゴットを溶融紡糸に適したフィンガ形状に鋳造した。次いで、両合金の鋳造したフィンガを公称0.81mmの穴径を有する石英るつぼ内に配置した。インゴットをRF誘導によって加熱し、次いで、16m/sのホイール接線速度で移動する、高速に動く245mmの銅ホイール上に取り出した。いくつか選択したリボンサンプルについて、さらにリボン構造体について考察するために、走査型電子顕微鏡写真(SEM)を撮影した。リボンが含まれる金属組織観察用バインダークリップを使用して溶融紡糸したリボンを標準金属組織観察用スライドに埋め込み、型にセットして、エポキシ樹脂を注いで硬化させた。標準的な金属組織観察方法に従い、適当な媒体を用いて、調製された金属組織観察用スライドを研磨した。
【0046】
サンプルの構造は、Carl Zeiss SMT社の走査型電子顕微鏡EVO−60を使用して観察した。典型的な作動条件は、電子ビームエネルギー17.5kV、フィラメント電流2.4A、スポットサイズ800であった。Genesisソフトを使用したアポロシリコンドリフト検出器(SDD−10)(両者ともにEDAX社製)によってエネルギー分散分光解析(EDS)を実施した。検出器不感時間が約12から15%となるように、増幅時間を6.4マイクロ秒に設定した。PC7E6合金のSEM後方散乱電子顕微鏡写真を3つの異なる倍率で
図20に示す。図からわかるように、後方散乱電子の解像限界で、結晶構造の特徴(すなわち粒子および相)は見られなかった。
図21には、PC7E6HA合金のSEM後方散乱電子顕微鏡写真を3つの異なる倍率で示す。図に示すように、画像は大抵特徴のない微細構造を示すが、中程度の倍率(
図21b)では、約500nmのスケールで結晶構造の孤立点が見られる。このことから、高い伸びを得るための主要な要素は、ガラスマトリクス中の結晶性沈殿であり得ることが示唆される。
【0047】
(実施例4)
高純度の元素を用いて、PC7E6HAの化学構造を有する15gの投入材料を表1の原子比にしたがって秤量した。元素の混合物を銅炉上に配置し、カバーガスとして超高純度のアルゴンを用いてアーク溶融してインゴットにした。混合後、得られたインゴットを溶融紡糸に適したフィンガ形状に鋳造した。次いで、PC7E6HAの鋳造したフィンガを公称0.81mmの穴径を有する石英るつぼ内に配置した。インゴットをRF誘導によって加熱し、次いで、16m/sのホイール接線速度で移動する、高速に動く245mmの銅ホイール上に取り出した。リボンを切断した後に、張力試験を実施した。試験条件は、ゲージ長23mm、および歪み速度10N/sであった。引張試験の応力/歪みデータを
図22に示す。
【0048】
測定された引張強度3.17GPaおよび永久伸び2.9%であり、ヤング率は112.8GPaであることがわかった。初期の引張試験は、サンプルの断面積に基づくものより10倍程度長い比較的大きなゲージ長(23mm)で実施したことに注意されたい。さらに、グリップは、水平方向および垂直方向の両方に完全に配列されているわけではない。したがって、引張試験の間、最大伸びおよび引張強度を制限するずれおよびねじれ歪みが生じている。
図23には、引張試験後の16m/sで溶融紡糸したPC7E6HA合金のSEM後方散乱電子顕微鏡写真を示す。図に示すように、ねじれ歪みが顕著であるが、さらに長手方向および軸方向の両方においてネッキングを観測することができ、著しい固有の塑性を示唆している。断面積の減少の直接測定に基づいて、局所歪みは軸方向に約30%、長手方向に約98%であると推測される。
【0049】
(実施例5)
高純度の元素を用いて、PC7E7の化学構造を有する15gの投入材料を表1の原子比にしたがって秤量した。元素の混合物を銅炉上に配置し、カバーガスとして超高純度のアルゴンを用いてアーク溶融してインゴットにした。混合後、得られたインゴットを溶融紡糸に適したフィンガ形状に鋳造した。次いで、PC7E7の鋳造したフィンガを公称0.81mmの穴径を有する石英るつぼ内に配置した。インゴットをRF誘導によって加熱し、次いで、16m/sのホイール接線速度で移動する、高速に動く245mmの銅ホイール上に取り出した。リボンを切断した後に、張力試験を実施した。試験条件は、ゲージ長23mm、および歪み速度10N/sであった。引張試験の応力/歪みデータを
図24に示す。
【0050】
測定された引張強度2.70GPaおよび永久伸び4.2%であり、ヤング率は108.6GPaであることがわかった。初期の引張試験は、サンプルの断面積に基づくものより10倍程度長い過度に大きなゲージ長(23mm)で実施したことに注意されたい。さらに、グリップは、水平方向および垂直方向の両方に完全に配列されているわけではない。したがって、引張試験の間、最大伸びおよび引張強度を制限するずれおよびねじれ歪みが生じている。
図25には、引張試験後の16m/sで溶融紡糸したPC7E7合金のSEM後方散乱電子顕微鏡写真を示す。写真の右側に見られる亀裂の存在および多数のせん断帯の存在が、亀裂先端の前に大きな塑性領域が存在することを示唆していることに注意されたい。引張において亀裂先端を鈍らせる能力は、主に金属ガラスであるサンプルにおける顕著な新しい特徴である。亀裂先端の前の領域におけるせん断帯自体は方向が変化し、分裂する場合もあり、微細構造の特定の点と移動するせん断帯との間の動的相互作用を示唆し得る。
【0051】
いくつかの方法および実施形態の上記の詳細な説明は、説明目的で提示されたものである。排他的であること、または開示した詳細なステップおよび/もしくは形態に特許請求の範囲を限定することを意図しておらず、上記教示を考慮した多くの変更および変形が可能であることは明らかである。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって定義されることが意図されるものである。