(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
脂溶性物質を含有する水性組成物が接する包装体の少なくとも一部を構成する包装体成形用材料であって、ポリエステル樹脂(A)、環状オレフィン共重合樹脂(B)、及びエチレン系アイオノマー樹脂(C)を含み、(A)成分がジカルボン酸単位とグリコール単位を含み、かつ前記ジカルボン酸単位を形成する成分の65モル%以上が芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体であり、(B)成分がエチレンとノルボルネンとを共重合したガラス転移温度100℃以下の環状オレフィン共重合樹脂であり、(A)成分の含有量が60〜85質量%、(B)成分の含有量が10質量%以上、(B)成分及び(C)成分の合計含有量が15〜40質量%である樹脂組成物からなる包装体成形用材料。
脂溶性物質が、脂溶性ビタミン類、アルキルフェノール系化合物、パラベン系化合物、第4級アンモニウム塩化合物、テルペン系化合物、及びグリチルレチン酸又はそのエステルから選ばれる1種以上である、請求項1に記載の包装体成形用材料。
脂溶性物質を含有する水性組成物が接する包装体であって、その少なくとも一部を構成する包装体成形用材料として、請求項1に記載の包装体成形用材料を用いてなる包装体。
脂溶性物質が、脂溶性ビタミン類、アルキルフェノール系化合物、パラベン系化合物、第4級アンモニウム塩化合物、テルペン系化合物、及びグリチルレチン酸又はそのエステルから選ばれる1種以上である、請求項4に記載の包装体。
脂溶性物質が、脂溶性ビタミン類、アルキルフェノール系化合物、パラベン系化合物、第4級アンモニウム塩化合物、テルペン系化合物、及びグリチルレチン酸又はそのエステルから選ばれる1種以上である、請求項8に記載の製品。
脂溶性物質が、脂溶性ビタミン類、アルキルフェノール系化合物、パラベン系化合物、第4級アンモニウム塩化合物、テルペン系化合物、及びグリチルレチン酸又はそのエステルから選ばれる1種以上である、請求項12に記載の吸着防止方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の包装体成形用材料は、脂溶性物質を含有する水性組成物(以下、「脂溶性物質含有水性組成物」という。)が接する包装体の少なくとも一部を構成する包装体成形用材料であって、ポリエステル樹脂(A)、環状オレフィン共重合樹脂(B)、及びエチレン系アイオノマー樹脂(C)を含み、(A)成分の含有量が60〜85質量%、(B)成分の含有量が10質量%以上、(B)成分及び(C)成分の合計含有量が15〜40質量%である樹脂組成物からなることを特徴とする。
【0011】
すなわち、本発明の包装体成形用材料は、上記脂溶性物質を吸着し難い材質であるポリエステル樹脂(A)と、水分の透過を抑制する水分バリヤー性に優れた環状オレフィン共重合樹脂(B)と、ポリエステル樹脂(A)と環状オレフィン共重合樹脂(B)の双方に対し相溶性を有するエチレン系アイオノマー樹脂(C)を所定の割合で含有した樹脂組成物であるため、脂溶性物質の吸着を抑え、内容物の濃度変化を抑制し、包装体表面に生じる外観不良を軽減することができる。
これらの効果は、ポリエステル樹脂(A)が海となり、環状オレフィン共重合樹脂(B)及びアイオノマー樹脂(C)が微細な島となる海島構造が形成されることにより発現する。すなわち、ポリエステル樹脂(A)が成形体の表面層を形成するため、上記脂溶性物質を吸着し難くなる。また、水分バリヤー性に優れた環状オレフィン共重合樹脂(B)の微粒子が水分の拡散を阻害するため、水分バリヤー性が発揮される。そして、(A)及び(B)樹脂と親和性のあるアイオノマー樹脂(C)が相溶化剤としての効果を発揮し、表面平滑性に優れた成形品外観となる。従って、包装体全体として、脂溶性物質の吸着が少なく、水分透過性が小さく、優れた外観の包装体が得られる。
【0012】
[脂溶性物質]
本発明において、脂溶性物質とは、水に溶け難く油(脂)に溶け易い物質をいう。具体的には、n−オクタノール/水分配係数が1より大きい物質をいう。
本発明における脂溶性物質は、吸着防止効果の観点から、脂溶性ビタミン類、アルキルフェノール系化合物、パラベン系化合物、第4級アンモニウム塩化合物、テルペン系化合物、及びグリチルレチン酸又はそのエステルから選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0013】
[脂溶性ビタミン類]
本発明において、脂溶性物質として用いられる脂溶性ビタミン類とは、ビタミンA、D、E及びKを指し、ビタミンE、ビタミンA、及びそれらの誘導体が好適であり、老化防止作用、末梢血管拡張作用、血行促進作用などを有するビタミンE及びその誘導体が、特に好適である。
天然にはビタミンEとして、α−,β−,γ−及びδ−トコフェロールと、α−,β−,γ−及びδ−トコトリエノールの8種類が存在する。いずれも無色〜淡黄色で粘稠性の油状物質であり、有機溶媒に溶け易く、水に溶け難い。
トコフェロール及びトコトリエノールには、d−体、l−体、dl−体の光学異性体が存在するが、天然のものは全てd体である。
一方、合成品として、ビタミンE誘導体であるコハク酸dl−α−トコフェロールカルシウム、酢酸dl−α−トコフェロール及びニコチン酸dl−α−トコフェロールなどが市販されている。脂溶性ビタミン類は、前記ビタミンE及びその誘導体の中から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
ビタミンA及びその誘導体としては、例えば、レチナール、レチノール、レチノイン酸、カロチン、デヒドロレチナール、リコピン、酢酸レチノール及びパルミチン酸レチノール等が挙げられる。
本発明においては、当該脂溶性ビタミン類は、1種、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
[アルキルフェノール系化合物]
本発明において、脂溶性物質として用いられるアルキルフェノール系化合物としては、例えば2−イソプロピル−5−メチルフェノール(チモール)、4−イソプロピル−3−メチルフェノール及び5−イソプロピル−2−メチルフェノール(カルバクロール)等のイソプロピルメチルフェノール類等を挙げることができる。このイソプロピルメチルフェノール類は、防腐剤、殺菌剤などとして用いられる脂溶性化合物である。
前記チモールは、天然品及び合成品の両方が市販されており、4−イソプロピル−3−メチルフェノールは合成品が市販されている。またカルバクロールは天然品が市販されている。
チモールは、天然にタチジャコウ草油、アジョワン油の主成分として存在する。このチモールは、香料である合成メントールの原料としても使用される。カルバクロールは、天然に各種シソ科の精油中に含まれており、特にオリガナム油の主成分をなす。
本発明においては、当該アルキルフェノール系化合物は、1種、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
[パラベン系化合物]
本発明において、脂溶性物質として用いられるパラベン系化合物としては、例えばメチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、イソプロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン、ベンジルパラベン等を挙げることができる。パラベン系化合物は、防腐剤などとして用いられる脂溶性化合物である。
本発明においては、当該パラベン系化合物は、1種、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
[第4級アンモニウム塩化合物]
本発明において、脂溶性物質として用いられる第4級アンモニウム塩化合物としては、例えば塩化ベンザルコニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルピリジニウム、臭化アルキルイソキノリニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルジメチル−2−フェノキシエチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン等を挙げることができる。これらの第4級アンモニウム塩化合物は、防腐剤、殺菌剤などとして用いられる脂溶性化合物である。
本発明においては、当該第4級アンモニウム塩化合物は、1種、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
[テルペン系化合物]
本発明において、脂溶性物質として用いられるテルペン系化合物としては、例えばリモネン、ピネン、カンフル、などのモノテルペン炭化水素類、リシチンなどのセスキテルペン炭化水素類などのテルペン炭化水素類や、ヒノキチオール、シトロネロール、ゲラニオール、リナロール、メントール、テルピネオール、ボルネオールなどのモノテルペンアルコール類、ファルネソールなどのセスキテルペンアルコール類、ジテルペンアルコール類などのテルペンアルコール類や、シトロネラール、シトラール(β−シトラール=ネラール、サフラナールなどのモノテルペンアルデヒド類、レチナールなどのジテルペンアルデヒド類などのテルペンアルデヒド類や、メントン、カルボメントン、ヨノンなどのモノテルペンケトン類などのテルペンケトン類、オリザノール等を挙げることができる。これらのテルペン系化合物は、d−,l−,dl−体のいずれであってもよい。さらに、脂溶性物質には、テルペン系化合物を含む油性成分、例えば、ユーカリ油、ベルガモット油、ウイキョウ油、ハッカ油、ローズ油、ペパーミント油、クールミントなどの精油が含まれる。
本発明においては、当該テルペン系化合物は、1種、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
[グリチルレチン酸又はそのエステル]
本発明において、脂溶性物質として用いられるグリチルレチン酸又はそのエステルとしては、例えばグリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリル等を挙げることができる。
本発明においては、当該グリチルレチン酸又はそのエステルは、1種、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
[水性組成物]
本発明の包装体に接する水性組成物は、脂溶性物質と、後述する水性媒体とを含有する組成物であり、例えば、水性の化粧料、医薬品、医薬部外品、食品、飲料品等として用いられる。水性化粧料としては、例えば化粧水、美容液、ヘアトニック、メイクアップ化粧料等が挙げられ、皮膚、毛髪、まつ毛等に適用することができる。
本発明の包装体に接する水性組成物の形態は、可溶化系、乳化系、及び液状、ジェル状のいずれの形態をとることもできるが、可溶化系であることが好ましい。水性組成物の主要成分である水を含む水性媒体は、水性組成物全量に対して70質量%以上含まれるが、80〜99.999質量%であると包装体の水分バリヤー効果が十分発揮される。水性媒体中の水の量は、水性組成物全量に対して40質量%以上、特に50質量%以上であると包装体の水分バリヤー効果が十分発揮される。水以外の水性媒体としては、炭素数1〜4の低級アルコール、多価アルコール等が挙げられる。低級アルコールとしては、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。また、多価アルコールとしては、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。これらの水性媒体は、1種又は2種以上を混合して用いることができ、水に加えて用いることができる。
【0020】
本発明においては、包装体に接する脂溶性物質含有水性組成物に、脂溶性物質を1種のみ含有してもよく、2種以上含有してもよい。
また、脂溶性物質含有水性組成物が脂溶性ビタミン類及び/又はアルキルフェノール系殺菌剤を含有する水性化粧料である場合には、水性化粧料に、前記脂溶性ビタミン類のみを1種以上含有してもよいし、アルキルフェノール系殺菌剤のみを1種以上含有してもよく、あるいは、脂溶性ビタミン類1種以上とアルキルフェノール系殺菌剤1種以上とを含有してもよい。
水性組成物中の脂溶性物質の濃度としては、該水性組成物の用途にもよるが、水性組成物全量に対して0.0005〜5.0質量%が好ましく、より好ましくは0.001〜1.0質量%であり、更に好ましくは0.005〜0.5質量%である。
前記脂溶性物質は、水に溶解し難いので、必要に応じて脂溶性物質含有水性組成物とするために、非イオン性界面活性剤等の可溶化剤を用いることができる。
脂溶性物質含有水性組成物には、さらに必要に応じて、例えば顔料、粘剤、金属イオン封鎖剤、pH調整剤、香料、生理活性成分、他の防腐剤や殺菌剤などを適宜配合することができる。
【0021】
前記可溶化剤として用いる非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等が挙げられ、具体的にはP.O.E(20)ソルビットモノラウレート、P.O.E(15)グリセリルモノオレエート、P.O.E(25)モノステアレート、P.O.E(40〜45)モノステアレート、P.O.E(21〜25)ラウリルエーテル、P.O.E(15〜25)セチルエーテル、P.O.E(20)ステアリルエーテル、P.O.E(10〜50)オレイルエーテル、P.O.E(20〜30)ベヘニルエーテル、P.O.E(20〜40)ラノリンアルコール、P.O.E(7〜18)ノニルフェニルエーテル、P.O.E(60)ヒマシ油、P.O.E(60〜100)硬化ヒマシ油、P.O.E(10〜15)ステアリルアミン、P.O.E(10〜15)オレイルアミン、P.O.E(10〜15)ステアリン酸アミド、P.O.E(10)オレイン酸アミド、P.O.E−P.O.Pセチルエーテル等が挙げられる。なお、P.O.Eはポリオキシエチレンの略であり、P.O.Pはポリオキシプロピレンの略である。なお、括弧内の数字は、ポリオキシエチレンの平均付加モル数である。
これらの可溶化剤は、1種、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。その配合量は、脂溶性物質含有水性組成物全量に対して、0.1〜2質量%が好ましい。
【0022】
[樹脂組成物]
本発明の包装体成形用材料に用いられる樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)、及び環状オレフィン共重合樹脂(B)、及びエチレン系アイオノマー樹脂(C)を含有する。
【0023】
[ポリエステル樹脂(A)]
ポリエステル樹脂(A)は、ジカルボン酸単位とグリコール単位を含み、かつ前記ジカルボン酸単位を形成する主要成分が芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体であるものが好ましい。ここで、主要成分とは、ジカルボン酸単位を形成する全成分の中で、65モル%以上、好ましくは80モル%以上の成分を指す。
当該ポリエステル樹脂において、ジカルボン酸単位を形成する主要成分の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、シュウ酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸及びこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、目的に応じて任意に選ぶことができる。
さらに、トリメリット酸、ピロメリット酸のような三官能性以上の多価カルボン酸成分を用いてもよく、無水トリメリット酸や無水ピロメリット酸のような酸無水物を少量使用してもよい。
【0024】
また、ポリエステル樹脂(A)は、ジカルボン酸単位とグリコール単位を含み、かつ前記グリコール単位を形成する主要グリコール成分が脂肪族系ジオール又は脂環族系ジオールであるものが、得られるポリエステル樹脂の性能の点において好ましい。ここで、主要グリコール成分とは、グリコール単位を形成する全成分の中で、65モル%以上、好ましくは80モル%以上の成分を指す。
当該主要グリコール成分の具体例としては、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、トリメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリメチレングリコール等のアルキレングリコール又はオキシアルキレングリコール等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、目的に応じて任意に選ぶことができる。
これらの中で、得られるポリエステル樹脂の性能の観点から、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好適である。さらに、少量のトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、グリセリンのような三官能性以上の多価アルコール成分を用いてもよい。
【0025】
さらに、当該ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸単位2種以上を有する共重合ポリエステル樹脂であってもよいし、グリコール単位2種以上を有する共重合ポリエステル樹脂であってもよく、あるいはジカルボン酸単位2種以上及びグリコール単位2種以上を有する共重合ポリエステル樹脂であってもよい。
【0026】
当該ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET)、1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート(CHDM共重合PET)等を挙げることができる。これらは1種、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
[環状オレフィン共重合樹脂(B)]
環状オレフィン共重合樹脂(B)としては、エチレンとノルボルネンを共重合した環状オレフィン共重合樹脂が好ましく、他にエチレンとテトラシクロドデセンを共重合した環状オレフィン共重合樹脂も使用可能である。
また、エチレンとノルボルネンとを共重合した環状オレフィン共重合樹脂(B)のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは100℃以下であり、より好ましくは90℃以下である。ガラス転移温度が100℃以下であれば、ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度との差が小さいため、溶融成形する際、(A)と(B)との固化温度が近く、固化時の収縮率の差によって(A)及び(B)の間に生じる空洞を抑制することが出来る。その結果、成形品の物性及び外観の優れた包装体を成形することが出来る。一方、延伸ブロー容器として包装体を使用するに際しても、ポリエステル(A)の適正な延伸温度条件で均一な延伸、及び延伸により微細な環状オレフィンの薄片積層体を形成することが出来、水分バリヤー性に優れた包装体を成形することができる。なお、ノルボルネンの共重合比率は、水分バリヤー性の観点から、30モル%以上であり、環状オレフィン共重合樹脂(B)のガラス転移温度(Tg)の観点から、40モル%以下であることが好ましい。
【0028】
[エチレン系アイオノマー樹脂(C)]
本発明においては、前記樹脂組成物に含まれる成分として、エチレン系アイオノマー樹脂(C)を含有する。ここで、アイオノマー樹脂とは、一般に有機及び無機の成分が共有結合とイオン結合によって結合されている樹脂のことである。
本発明において、エチレン系アイオノマー樹脂(C)は、ポリエステル樹脂(A)と環状オレフィン共重合樹脂(B)との相溶性を改善し、包装体表面に現れる「肌荒れ」による外観不良を軽減させることができる。
本発明に好ましく使用されるアイオノマー樹脂(C)としては、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体の分子間を金属イオンで架橋した樹脂が挙げられる。
【0029】
本発明で用いるエチレン系アイオノマー樹脂を構成するエチレン−不飽和カルボン酸共重合体としては、エチレンと不飽和カルボン酸以外に他の単量体が共重合されていてもよい。
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸などが挙げられる。この中で、ポリエステル樹脂との相溶性の観点から、不飽和モノカルボン酸が好ましく、アクリル酸又はメタクリル酸がより好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
また、これらの他に共重合し得る単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルなどの不飽和カルボン酸エステルなどが挙げられる。この中では、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルが好ましい。
【0031】
エチレン−不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーの金属種としては、リチウム、カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、あるいは亜鉛、アルミニウムなどの多価金属等が挙げられる。この中では、ポリエステル樹脂との親和性の観点から、ナトリウム、亜鉛が好ましく、ナトリウムがより好ましい。
エチレン系アイオノマー樹脂のメルトフローレート(MFR)(JIS K 7210規格、条件D、190℃/2.16kgに準拠)は、通常0.1〜30g/10分程度、好ましくは0.3〜20g/10分、より好ましくは0.6〜15g/10分である。
【0032】
本発明においては、エチレン系アイオノマー樹脂として、例えばエチレン−メタクリル酸共重合体やエチレン−アクリル酸共重合体の分子間を、ナトリウムや亜鉛などの金属イオンで分子間結合した構造のものを好ましく用いることができる。
このようなエチレン系アイオノマー樹脂としては、例えば「ハイミラン1856」(MFR1.0g/10分、ナトリウムイオンタイプ)、「ハイミラン1707」(MFR0.9g/10分、ナトリウムイオンタイプ)及び「ハイミラン1555」(MFR10g/10分、ナトリウムイオンタイプ)、「ハイミラン1855」(MFR1.0g/10分、亜鉛イオンタイプ)(いずれも三井・デュポンポリケミカル株式会社製、登録商標)等が挙げられる。
本発明において、前記エチレン系アイオノマー樹脂は、1種、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
[樹脂組成物の質量比]
本発明の包装体成形用材料を構成する樹脂組成物において、(A)成分の含有量は60〜85質量%、(B)成分の含有量は10質量%以上、(B)成分及び(C)成分の合計含有量は15〜40質量%である。
より好ましくは、(A)成分の含有量が、65〜80質量%、(B)成分の含有量が、15〜25質量%、(B)成分と(C)成分の合計含有量の合計が、20〜35質量%である。
(A)成分の含有量が60質量%未満の場合、脂溶性物質の吸着の抑制効果が十分に発揮されないという不都合が生じ、85質量%を超える場合、(B)成分及び(C)成分の必要量を含有することができないため好ましくない。
即ち、(B)成分の含有量が10質量%未満の場合、十分な水分バリヤー性が得られないため好ましくない。
(C)成分を含有することで包装体表面の外観不良の防止に効果を有する。また、(C)成分の含有量は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは5〜10質量%である。
【0034】
[(A)〜(C)成分以外の他の成分]
前記樹脂組成物には、必要に応じて(A)〜(C)成分以外の他の成分として、例えば、熱安定剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、離型性改善剤、結晶促進剤(結晶核剤)、ブロッキング防止剤等の添加剤を本発明の目的が損なわれない範囲で適宜使用することができる。
【0035】
[樹脂組成物の調製方法]
本発明の包装体成形用材料を構成する前記樹脂組成物の調製方法に特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができる。例えば、ポリエステル樹脂(A)、環状オレフィン共重合樹脂(B)及びエチレン系アイオノマー樹脂(C)及び所望により用いられる各種添加剤を、それぞれ所定の割合で配合し、タンブラーブレンダー、ヘンシェルミキサー等で混合した後、単軸押出機や多軸押出機、あるいはニーダー、バンバリミキサー等を用いて溶融混練、造粒することにより、所望の樹脂組成物を調製することができる。
【0036】
[包装体]
本発明の包装体は、脂溶性物質を含有する水性組成物が接する包装体であって、その少なくとも一部を構成する包装体成形用材料として、前述した本発明の包装体成形用材料を用いてなることを特徴とする。
本発明の包装体の成形方法に特に制限はなく、従来公知の各種成形方法の中から、包装体の形状に応じて適宜選定することができ、例えば射出成形法、延伸ブロー成形法等を採用することができる。
その形状に特に制限はなく、樹脂組成はその中に収容される脂溶性物質含有水性組成物の用途に応じて適宜選定される。また、該水性組成物の用途によっては、包装体全体、あるいは一部が前記本発明の包装体成形用材料で構成されていてもよい。一部が本発明の包装体成形用材料で構成されている例としては、点眼用容器の目薬滴下口を有する先端蓋部、機能性化粧品・薬品容器等で繰り返し使用する容器及び容器の内蓋・中栓、又はキャップの内側部分等を挙げることができる。また、本発明の包装体は、医療用の器具などの用途にも利用することができる。
本発明の包装体は、着色、加飾しなくてもパール感が出るという点から、化粧料容器であることが好ましい。また、本発明の包装体は、透明ではないことから、着色、加飾等の処理をしなくとも遮光機能を有するという特徴がある。
本発明の包装体のその他の好ましい態様としては、水分減少防止効果及び吸着防止効果がより顕著に発揮されるという観点から、30mL以下の少量容器であることが好ましい。また、ポリエステル樹脂(A)が成形体の表面層を形成し、環状オレフィン共重合樹脂(B)が表面層に露出しないという観点から、包装体の胴部の肉厚が0.2mm以上であることが好ましい。
【0037】
[吸着防止方法]
本発明の吸着防止方法は、包装体の少なくとも一部を構成する包装体成形用材料として、前述した本発明の包装体成形用材料を用いることにより、水性組成物に含有された脂溶性物質の吸着を防止することを特徴とする。本方法により、水性組成物に含有される脂溶性物質の包装体への吸着を効果的に抑制できる。
【実施例】
【0038】
以下の実施例、比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り、「質量部」及び「質量%」である。また、諸特性は以下に示す方法に従って求めた。
【0039】
(1)ポリエステル樹脂の固有粘度
フェノール:テトラクロロエタン=60:40(質量比)の混合液を溶媒として用い、自動粘度計「AVL−6C(サン電子工業株式会社製)」を使用し、20℃で測定した。
【0040】
(2)水分減少率
射出成形機「M−100B(株式会社名機製作所製)」で容器前駆体(パリソン)を成形し、延伸ブロー装置「SAN03(サン精密株式会社製)」で延伸ブローし、500mLの容器(ボトル)を作成した。なお、前駆体の胴部の肉厚は3.5mmであり、容器の胴部の肉厚は0.26mmであった。その後、該容器に内容物を500g充填し、40℃にて1ヶ月保管後の水分減少率(%)(水分減少率(%)=(減少値/元内容量値)×100)として評価した。
【0041】
(3)酢酸DL−α−トコフェロール(ビタミンEアセテート)の吸着性
前述の500mL延伸ブロー容器(ボトル)に下記の酢酸DL−α−トコフェロールを含有した水溶液を420g充填し、40℃で1ヶ月保管した後、所定の方法で分析を行った。酢酸DL−α−トコフェロールを含有した水溶液は、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン(平均付加モル数60)硬化ヒマシ油)を用いて、酢酸DL−α−トコフェロール濃度が0.05質量%となるように溶解したエタノール水溶液(99.5vol%エタノール)である。40℃で1ヶ月経過後、エタノール水溶液中に残存する酢酸DL−α−トコフェロールをオクタデシルシリル化シリカゲルカラム上でメタノール/テトラヒドロフラン(THF)容量比9:1を溶離剤として液体クロマトグラフィー法にて測定することにより、回収率を求め吸着性を評価した。
【0042】
(4)3−メチル−4−イソプロピルフェノールの吸着性
前述の500mL延伸ブロー容器(ボトル)に下記の3−メチル−4−イソプロピルフェノールを含有した水溶液を420g充填し、40℃で1ヶ月保管した後、所定の方法で分析を行った。3−メチル−4−イソプロピルフェノールを含有した水溶液は、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン(平均付加モル数60)硬化ヒマシ油)を用いて、3−メチル−4−イソプロピルフェノール濃度が0.1質量%となるように溶解したエタノール水溶液(99.5vol%エタノール)である。40℃で1ヶ月経過後、エタノール水溶液中に残存する3−メチル−4−イソプロピルフェノールをオクタデシルシリル化シリカゲルカラム上でメタノール/テトラヒドロフラン(THF)容量比9:1を溶離剤として液体クロマトグラフィー法にて測定することにより、回収率を求め吸着性を評価した。
【0043】
(5)塩化ベンザルコニウムの吸着性
前述の500mL延伸ブロー容器(ボトル)に下記の塩化ベンザルコニウムを含有したヘアトニックを420g充填し、40℃で1ヶ月保管した後、所定の方法で分析を行った。塩化ベンザルコニウムを含有したヘアトニックは、塩化ベンザルコニウム濃度が0.05質量%となるように溶解した表1の処方の水性化粧料である。40℃で1ヶ月経過後、該処方溶液中に残存する塩化ベンザルコニウムを、液体クロマトグラフィー用スルホン酸基を導入したシリカゲルを充填したカラム上で、0.04mol/L過塩素酸ナトリウムを含むメタノール850mLに水150mLを加えた溶液を溶離剤として液体クロマトグラフィー法にて測定することにより、回収率を求め吸着性を評価した。
【0044】
【表1】
【0045】
(6)l−メントールの吸着性
前述の500mL延伸ブロー容器(ボトル)に下記のl−メントールを含有したヘアトニックを420g充填し、40℃で1ヶ月保管した後、所定の方法で分析を行った。l−メントールを含有したヘアトニックは、l−メントール濃度が0.3質量%となるように溶解した表1の処方の水性化粧料である。40℃で1ヶ月経過後、該処方溶液中に残存するl−メントールをガスクロマトグラフィーにて測定することにより、回収率を求め吸着性を評価した。用いたカラムはINNOWAX(商品名、0.25mm ID×30m、Agilent社製)、キャリアガスはヘリウムガス、流量は1mL/min、カラム温度は50℃(2分)〜260℃(昇温速度15℃/分)、検出器はFIDである。
【0046】
(7)ヒノキチオールの吸着性
前述の500mL延伸ブロー容器(ボトル)に下記のヒノキチオールを含有した美容液を420g充填し、40℃で1ヶ月保管した後、所定の方法で分析を行った。ヒノキチオールを含有した美容液は、ヒノキチオール濃度が0.05質量%となるように溶解した表2の処方の水性化粧料である。40℃で1ヶ月経過後、該処方溶液中に残存するヒノキチオールを、オクタデシルシリル化シリカゲルカラム上で水/アセトニトリル/酢酸混液(容量比29:20:1)1Lにエチレンジアミン四酢酸二水素ナトリウム二水和水0.22gを加えて溶かした溶液を溶離剤として液体クロマトグラフィー法にて測定することにより、回収率を求め吸着性を評価した。
【0047】
【表2】
【0048】
(8)オリザノールの吸着性
前述の500mL延伸ブロー容器(ボトル)に下記のオリザノールを含有した水溶液を420g充填し、40℃で1ヶ月保管した後、所定の方法で分析を行った。オリザノールを含有した水溶液は、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン(平均付加モル数60)硬化ヒマシ油)を用いて、オリザノール濃度が0.1質量%となるように溶解したメタノール・テトラヒドロフラン等容量混液である。40℃で1ヶ月経過後、メタノール・テトラヒドロフラン等容量混液中に残存するオリザノールをオクチルシリル化シリカゲルカラム上でメタノール/テトラヒドロフラン(THF)容量比9:1を溶離剤として液体クロマトグラフィー法にて測定することにより、回収率を求め吸着性を評価した。
【0049】
(9)グリチルレチン酸ステアリルの吸着性
前述の500mL延伸ブロー容器(ボトル)に下記のグリチルレチン酸ステアリルを含有した水溶液を420g充填し、40℃で1ヶ月保管した後、所定の方法で分析を行った。グリチルレチン酸ステアリルを含有した水溶液は、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン(平均付加モル数60)硬化ヒマシ油)を用いて、グリチルレチン酸ステアリル濃度が0.2質量%となるように溶解したエタノール水溶液(99.5vol%エタノール)である。40℃で1ヶ月経過後、エタノール水溶液中に残存するグリチルレチン酸ステアリルをオクタデシルシリル化シリカゲルカラム上でメタノール/テトラヒドロフラン(THF)容量比19:1を溶離剤として液体クロマトグラフィー法にて測定することにより、回収率を求め吸着性を評価した。
【0050】
(10)レモンオイル中の香気成分(テルペン系化合物)の吸着性
前述の500mL延伸ブロー容器(ボトル)及びガラス容器に下記のレモンオイルを含有した水溶液を充填し、下記の官能テストを採用した。レモンオイルを含有した水溶液は、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン(平均付加モル数60)硬化ヒマシ油)を用いて、賦香率が0.05質量%及び0.01質量%となるようにレモンオイルを溶解したエタノール水溶液(99.5vol%エタノール)である。40℃で1ヶ月保管した後、前述の500mL延伸ブロー容器及びガラス容器中の香料組成物を、別々の100mLビーカーにそれぞれ50gずつ入れ、香料組成物の残香強度の比較を5名の調香専門パネラーが5回繰り返して比較評価した(延べ人数25名)。
≪評価記号及び評価基準≫
A:香調が標準品と比較し、同等と答えた人が23〜25人の場合
B:香調が標準品と比較し、同等と答えた人が20〜22人の場合
C:香調が標準品と比較し、同等と答えた人が17〜19人の場合
D:香調が標準品と比較し、同等と答えた人が16人以下の場合
【0051】
(11)落下試験
上記の実施例及び比較例で得られた延伸ブロー容器(ボトル)を用いて、蒸留水455gを充填し、5℃にて1日間放置後、正立落下試験を行った。
正立落下試験は床から1mの高さから、ボトルの底面を床に向けた姿勢により床(プラスチックタイル)へ落下させ、5回落下させた後もボトルに割れや欠けが発生せず維持されたものを「A」、5回以内にボトルに割れや欠けが発生したものを「B」として評価した。
【0052】
[実施例1〜4]
ポリエステル樹脂(A)、環状オレフィン共重合樹脂(B)及びエチレン系アイオノマー樹脂(C)を、表3に示す割合で溶融混練して、樹脂組成物からなる包装体成形用材料を調製した。
この成形用材料について、延伸ブロー容器(ボトル)を成形し、水分バリヤー性(水分減少率)、脂溶性ビタミン類である酢酸DL−α−トコフェロール(ビタミンEアセテート)の吸着性(回収率)、及びアルキルフェノール系化合物である3−メチル−4−イソプロピルフェノールの吸着性(回収率)を測定した。また、成形した延伸ブロー容器(ボトル)の落下試験を行った。結果を表3に示す。
【0053】
[比較例1〜11]
ポリエステル樹脂(A)、環状オレフィン共重合樹脂(B)及びエチレン系アイオノマー樹脂(C)を、表3に示す割合で配合し、実施例1〜4と同様の方法で包装体成形用材料を調製した。
この成形用材料について、実施例1〜4と同様の方法で延伸ブロー容器(ボトル)を成形し、水分バリヤー性(水分減少率)、脂溶性ビタミン類である酢酸DL−α−トコフェロールの吸着性(回収率)、及びアルキルフェノール系化合物である3−メチル−4−イソプロピルフェノールの吸着性(回収率)を測定した。また、成形した延伸ブロー容器(ボトル)の落下試験を行った。結果を表3に示す。
【0054】
【表3】
【0055】
実施例、及び比較例で使用したポリエルテル樹脂(A)、環状オレフィン共重合樹脂(B)、及びエチレン系アイオノマー樹脂(C)の詳細は以下のとおりである。
[ポリエルテル樹脂(A)]
(1)ベルペットPIFG5:イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(イソフタル酸/テレフタル酸=5/95(モル%))[株式会社ベルポリエステルプロダクツ製、商品名「ベルペットPIFG5」、固有粘度:0.80dl/g]
[環状オレフィン共重合樹脂(B)]
(2)TOPAS8007F−04:環状オレフィン共重合樹脂[ポリプラスチックス株式会社製、商品名「TOPAS8007F−04」、ノルボルネン35モル%共重合、Tg=78℃]
(3)TOPAS9506F−04:環状オレフィン共重合樹脂[ポリプラスチックス株式会社製、商品名「TOPAS9506F−04」、ノルボルネン30モル%共重合、Tg=65℃]
[エチレン系アイオノマー樹脂(C)]
(4)ハイミラン1856:エチレン系アイオノマー樹脂[三井・デュポンポリケミカル株式会社製、商品名「ハイミラン1856」、MFR(JIS K 7210規格、条件D、190℃/2.16kgに準拠、以下同じ):1.0g/分]
【0056】
表3より、実施例1〜4の本発明の成形用材料は、比較例1〜11と比べて水分バリヤー性に優れ、且つ酢酸DL−α−トコフェロール及び3−メチル−4−イソプロピルフェノールの吸着を有効に抑制できることがわかる。また、実施例1〜4の本発明の成形用材料を用いてなる容器(包装体)は、強度も良好である。
【0057】
[実施例5]
ポリエステル樹脂(A)、環状オレフィン共重合樹脂(B)及びエチレン系アイオノマー樹脂(C)を、表3の実施例1に示す割合で溶融混練して、樹脂組成物からなる包装体成形用材料を調製した。
この成形用材料について、実施例1〜4と同様の方法で延伸ブロー容器(ボトル)を成形し、第4級アンモニウム塩化合物である塩化ベンザルコニウムの吸着性(回収率)、テルペン系化合物であるl−メントール、ヒノキチオール、及びオリザノールの吸着性(回収率)、及び、グリチルレチン酸ステアリルの吸着性(回収率)を測定した。結果を表4に示す。
表4より、本発明の成形用材料は、上記各成分の吸着を有効に抑制できることがわかる。
【0058】
【表4】
【0059】
[実施例6]
ポリエステル樹脂(A)、環状オレフィン共重合樹脂(B)及びエチレン系アイオノマー樹脂(C)を、表3の実施例1に示す割合で溶融混練して、樹脂組成物からなる包装体成形用材料を調製した。
この成形用材料について、実施例1〜4と同様の方法で延伸ブロー容器(ボトル)を成形し、レモンオイル中の香気成分の吸着性を官能評価した。結果を表5に示す。
評価の結果、香りの減衰はなく、レモンオイル中の香気成分の吸着を有効に抑制できることがわかった。
【0060】
【表5】