特許第5728396号(P5728396)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5728396コンクリートの締固め管理装置と管理方法
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  • 特許5728396-コンクリートの締固め管理装置と管理方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5728396
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】コンクリートの締固め管理装置と管理方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20150514BHJP
   E04G 21/08 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   E04G21/02
   E04G21/08
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-2977(P2012-2977)
(22)【出願日】2012年1月11日
(65)【公開番号】特開2013-142248(P2013-142248A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2014年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】松本 三千緒
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 裕道
(72)【発明者】
【氏名】江田 正敏
【審査官】 瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−234664(JP,A)
【文献】 特開昭59−213863(JP,A)
【文献】 特開平07−233639(JP,A)
【文献】 特開2005−256460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/00−21/08
E02B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートプラントに設置した装置であって、コンクリートのデータを入力し、発信する装置と、
現場の現場事務所に設置した装置であって、事前の試験施工データから配合ごとの適切な締固め時間の時間表と、バイブレータの挿入深度の表を備え、プラントからのデータを入力し、記録し、プラントからのデータを前記の時間表、挿入深度表と比較できる装置と、
コンクリート運搬車両に搭載した装置であって、プラントからのデータを入力し、記録し、表示できる装置と、
締固め装置に搭載した深度計であって、バイブレータのコンクリート中への挿入深度を検知するための、バイブレータに設置した深度計と、
締固め装置の操作部に設置した装置であって、現場事務所からの信号を受信して指示された挿入深さと時間だけコンクリートに加振する受信装置とから構成し、
前記現場事務所設置装置が、プラントからのデータと、締固め時間表、その際のバイブレータの挿入深度を選択して打設現場に配置した締固め装置の受信装置に送信するように構成した、
コンクリートの締固め管理装置。
【請求項2】
請求項1記載の管理装置を使用し、
現場事務所に集まった、プラントからのコンクリートの特性のデータを事前に記録した試験施工データと比較し、
比較した結果から最適値を選択して締固め装置の操作部に発信し、
受信した締固め装置が指示されたバイブレータの挿入深さと時間だけコンクリートに加振を行う、
コンクリートの締固め管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの締固め管理装置とその管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは現場での打設後に十分に締め固めることが重要である。
このようなコンクリートの締固めの程度を管理する方法として、特許文献1にみられるように転圧機の移動速度、転圧回数、経過時間、コンクリートの温度、および水分量を管理する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−132761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した特許文献1に開示されたコンクリートの締固め管理方法は、転圧機による転圧作業を管理することから、コンクリートの品質を管理しようとするものである。
それに対して本発明のコンクリート締固め管理装置と方法は、転圧工程ではなく、打設直後のコンクリートの振動による締固めの工程に着目してなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような課題を解決するために、本発明のコンクリートの締固め管理装置は、コンクリートプラントに設置した装置であって、コンクリートのデータを入力し、発信する装置と、現場の現場事務所に設置した装置であって、事前の試験施工データから配合ごとの適切な締固め時間の時間表と、バイブレータの挿入深度の表を備え、プラントからのデータを入力し、記録し、プラントからのデータを前記の時間表、挿入深度表と比較できる装置と、
コンクリート運搬車両に搭載した装置であって、プラントからのデータを入力し、記録し、表示できる装置と、締固め装置に搭載した深度計であって、バイブレータのコンクリート中への挿入深度を検知するための、バイブレータに設置した深度計と、締固め装置の操作部に設置した装置であって、現場事務所からの信号を受信して指示された挿入深さと時間だけコンクリートに加振する受信装置とから構成し、前記現場事務所設置装置が、プラントからのデータと、締固め時間表、その際のバイブレータの挿入深度を選択して打設現場に配置した締固め装置の受信装置に送信するように構成したことを特徴とするものである。
また本発明のコンクリートの締固め管理方法は、前記の管理装置を使用し、現場事務所に集まった、プラントからのコンクリートの特性のデータを事前に記録した試験施工データと比較し、比較した結果から最適値を選択して締固め装置の操作部に発信し、受信した締固め装置が指示されたバイブレータの挿入深さと時間だけコンクリートに加振を行うことを特徴としたものである。

【発明の効果】
【0006】
本発明のコンクリートの締固め管理装置と管理方法は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<1> 一連のコンクリート締固め作業の管理を人力によらずに行うことができるため、大幅な省力化を期待できる。
<2> 各位置でのコンクリートの締固めは、試験施工のデータとの比較から選択した最適値を指示して締固めを行うことができ、それを記録して保存できるため、個人判断によるばらつきがなくなり、客観的で精度の高い情報を収集保存できる。
<3> 収集した情報をコンクリートを打設している現場にリアルタイムでフィードバックできるので、打設番や監督員が現場のどの位置にいても進行状況を把握、確認することができ、業務の効率化を図ることができる。
<4> 近い将来に予想される大量、高速施工に対して有効に対処、適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明のコンクリートの締固め管理装置と管理方法の実施例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図面を参照にしながら本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0009】
<1>全体の構成
本発明の管理装置は基本的には、コンクリートプラントに設置した装置と、現場の現場事務所1に設置した装置と、締固め装置の操作部に設置した装置とによって構成する。
【0010】
<2>プラントに設置する装置
コンクリートを製造するプラント3には、混練したコンクリートのデータを入力し、それを現場事務所1へ発信する装置を設置する。
同時にコンクリートの運搬車両に搭載した受信装置へ、コンクリートのデータを発信することもできる。
【0011】
<3>現場事務所に設置する装置
現場の現場事務所1には、プラント3からのデータ、事前の試験施工データを記録し、プラント3からのデータと比較できる装置を設置する。
この装置からは、配合にしたがって比較して選択した、最適の締固め時間、バイブレータの挿入深度などを締固め装置に発信することができる。
【0012】
<4>運搬車両に搭載する装置
コンクリート運搬車両4には、プラント3から出荷された生コンクリートのデータを入力し、記録し、表示できる装置を搭載する。
この装置から現場事務所1に対して、あるいは打設現場2の締固め装置に対して、現在運搬しているコンクリートの情報を送信することができる。
【0013】
<5>締固め装置
締固め装置には深度計を搭載する。
深度計としては超音波距離計を使用することができる。
この深度計によって締固め装置のバイブレータのコンクリート中への挿入深度を検知できる。
さらに締固め装置の操作部には、現場事務所1からの信号を受信して指示された挿入深さと時間だけコンクリートに加振できる受信装置を搭載する。
【0014】
<6>管理方法
次に上記の装置を使用したコンクリートの締固めの管理方法について説明する。
【0015】
<7>試験施工
現場での打設に先立って、各種の配合に基づいてテストピースを作成し、配合に応じた適切な締固め時間とバイブレータの挿入深度を決定する。
そして各種の配合ごとの適切な締固め時間の時間表とバイブレータの挿入深度の表を作成する。
【0016】
<8>現場事務所
打設現場2付近の現場事務所1にはパソコンを設置する。
このパソコンには先行して試験施工に基づく配合ごとの締固め時間の時間表とその時間におけるバイブレータの挿入深度を取り込んで記録する。
さらにコンクリートプラント3からのバッチごとの情報を取り込んで記録する。
プラント3からの情報と、締固め時間表とを比較して、プラント3から出荷した生コンクリートごとに、最適な締固め時間と、その際のバイブレータの挿入深度を選択する。
こうして選択した締固め時間、バイブレータの挿入深度、およびコンクリート運搬車両4の番号などを打設現場2に配置した締固め装置の受信装置に送信する。
【0017】
<9>運搬車両からの情報
現場事務所1へはプラント3からバッチごとの情報を発信することができるが、場合によってはコンクリートを運搬する運搬車両4にもパソコンなどを搭載して現場事務所1に発信できる。
すなわち運搬車両4に積み込んだコンクリートの配合を入力して記録し、さらにこの情報を現場事務所1に送信する。
このように、現場事務所1へのコンクリート情報は、プラント3から直接送信することも、あるいは運搬車両4から間接的に送信することもできる。
運搬車両4ごとに配合が異なる場合もあるから、現場へ到達してコンクリートを排出する段階で、その車両の番号、あるいはその車両が運搬してきたコンクリートが特定できる信号を締固め装置に送信することができる。
【0018】
<10>現場での締固め
打設現場2に配置した締固め装置に上記の信号が受信されると、運搬車両4や運搬されたコンクリートの特定、そのコンクリートに対して選択された締固め時間と、バイブレータの挿入深度をいったん記録する。
そしてその配合のコンクリートを運搬した車両が現場に到着し、打設現場2でコンクリートを排出したときに、その配合に応じて最適時間、最適深度での加振を自動的に行うことができる。
【0019】
<11>記録の保存
上記したように、コンクリートの出荷から締固めの時間、バイブレータの挿入深度などの情報はすべて記録として保存でき、ネットワークとして現場事務所1で収集できる。
したがって客観的で信頼性の高い締固め管理を行うことができる。
【符号の説明】
【0020】
1:現場事務所
2:打設現場
3:プラント
4:運搬車両
図1