(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明の一実施例を上記図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1は誘導加熱調理器の外観斜視図である。
図1において、1は誘導加熱調理器の本体である。2は、トッププレートで、トッププレート2の周囲を保護するプレート枠2aで覆われている。
【0011】
トッププレート2は、耐熱性の高い結晶化ガラス製からなり、このガラスの光学特性は、赤外線は高い透過率で透過し、可視光の透過率で500nm以下のとき10%未満、500〜800nmのときは40%未満を遮断する特性を有するガラスである。そして、本体1の上面に水平に配置され、鉄等の磁性体又はアルミ等の非磁性体よりなる鍋501(
図3)等の金属負荷を載置するものである。光源がない本体1内部は、トッププレート2を通して上方からは見えないものである。
【0012】
トッププレート2の上面にだけ意匠性のある印刷35を施して、鍋501を載置する位置を示す載置部35a、35b、35cを示し、載置部35a、35cの内側には、特定の一部分が印刷していない非印刷部35d、35eを配置する。印刷35はトッププレート2の上面全体を一面に覆うベタ印刷である必要はなく、本実施例では斑点などの模様による印刷で、ドット模様の印刷でも良い。
【0013】
非印刷部35d、35eはそれぞれ光センサ窓31a、31cにあたり、光センサ窓31a、31cには印刷を施さないことで、使用者に対して、本体1が鍋501の温度を測定する機能を備え、鍋501をこの光センサ窓31a、31cの上に載置するように示唆する働きも持っている。そして光センサ窓31a、31cは、鍋底が放射した赤外線をトッププレート2の下方に透過する。
【0014】
そして、トッププレート2の下面に赤外線を遮るための印刷を一切施してない。
【0015】
3a、3cは本体1の上部に配置された2つの加熱部で、トッププレート2上に載置された鍋501を誘導加熱する加熱コイルユニット200(
図2)を加熱部3aと3cの下方に有するものである。3bは加熱部で、トッププレート2上に載置された鍋501を加熱するラジエントヒータ(図示せず)を加熱部3bの下方に有するものである。
【0016】
吸気口4は、本体1の前部において下方に向けて開口して本体前側の空気を吸気し、本体後部の吸気口4bは、キッチンキャビネット内の空気を吸気して、本体1内部の制御部(図示せず)に冷却風を取り入れるものである。排気口5は、本体1の後部において上方に向けて開口しており、本体1内部を冷却した後の排気を排出するものである。グリル加熱部6は本体1の前面左部に設けられている。
【0017】
7a〜7cは操作部で、本体1の上面側でプレート枠2aに設けられ、加熱部3a〜3cの加熱の設定、操作を行うものである。8a〜8cは表示部で、プレート枠2a上で操作部7a〜7cの奥側部に設けられ、制御回路503と連動して加熱部3a〜3cの通電の状態を表示するものである。
【0018】
図2は加熱部3a、3cの下方にある加熱コイルユニット200の上面図である。加熱コイル209は、同心円状に同一平面上に設けられた内周側加熱コイル201と外周側加熱コイル202で構成されている。内周側加熱コイル201の外端と外周側加熱コイル202の内端が電気的に接続されており同方向の電流が両コイルに流れる。本実施例において、内周側加熱コイル201はコイル中心からの距離約30〜45mmに設けられているものとし、外周側加熱コイル202はコイル中心からの距離約55〜90mmに設けられているものとする。
【0019】
コイルベース203は加熱コイル209を保持するものである。508は導光筒で、鍋501の底から放射される赤外線を、下方に設けた後記の赤外線センサモジュール407(
図3)に導くものである。導光筒508は、コイルベース203と一体成形で構成し、コイル中心からの距離45〜55mmに設けられている。また、導光筒508はコイルベース203と一体成形である必要はなく、後述する赤外線センサモジュール407の構成部品と一体成形でも、赤外線センサモジュール407の構成部品に別部品を組み立てたものでもよい。
【0020】
205〜208はサーミスタ(接触式温度センサ)でトッププレート2の下面の温度を測定する。
【0021】
図3は、鍋加熱制御システムを示す機能ブロック図である。
【0022】
図3において、501は被加熱物である鍋である。502は温度検出回路で、赤外線センサモジュール407とサーミスタ205〜208の出力に基づいて鍋501の温度を算出する。26は放射率算出回路で、赤外線センサモジュール407の出力に基づいて鍋501の放射率を算出する。503は制御回路で、温度検出回路502が算出した温度を放射率算出回路26の出力に基づいて補正し、補正した温度に応じて高周波電力供給回路405を制御し加熱コイル209に供給する電力を制御する。508は導光筒で、鍋501が放射する赤外線を下方の赤外線センサモジュール407に導くとともに、加熱コイル209から放射される赤外線が赤外線センサモジュール407に入射されるのを防ぐものである。
【0023】
次に、
図4を用いて、赤外線センサモジュール407と導光筒508の詳細を説明する。
図4は、赤外線センサモジュール407近傍の断面図である。
【0024】
図4に示すように、赤外線センサモジュール407は以下の構成である。樹脂ケース16の上方には開口部14を設けている。樹脂ケース16の外郭は、開口部14を除いて防磁ケース13で覆っている。開口部14には窓材15が設けられている。樹脂ケース16の内部には、熱型赤外線検出回路131と、反射率検出回路132と、プリント配線板27を備えている。
【0025】
樹脂ケース16を熱伝導率の低い樹脂で構成することによって、赤外線センサモジュール407内部の温度が急変するのを防止し、熱型赤外線検出回路131、反射率検出回路132の温度が伝熱によって急変化するのを防止している。
【0026】
窓材15には、高温となったトッププレート2と導光筒508、加熱コイル209などから発せられる昇温効果の高い波長の赤外線(4μm以上)をカットする光学特性を持たせている。そのため、昇温効果の高い波長の赤外線が赤外線センサモジュール407内部に進入するのを防止している。すなわち、この構成により、熱型赤外線検出回路131、反射率検出回路132の温度が昇温効果の高い波長の赤外線によって急変化するのを防止している。本実施例では、トッププレート2の赤外線透過特性と窓材15の赤外線透過特性を同一とした。
【0027】
防磁ケース13を非磁性体のアルミ製である。赤外線センサモジュール407内部に侵入する電磁気的ノイズを低減し、防磁ケース13が受ける輻射熱を放熱しやすい構成とした。
【0028】
次に、赤外線センサモジュール407における信号検出を説明する。鍋501の底面から放射される赤外線は、トッププレート2、導光筒508、窓材15を介して、熱型赤外線検出回路131に届く。また、反射率検出回路132が発光する赤外線は、窓材15、導光筒508、トッププレート2を介して鍋501に届く。反射率検出回路132から発せられた赤外線は鍋501で反射し、再びトッププレート2、導光筒508、窓材15を介して反射率検出回路132に戻る。結局、熱型赤外線検出回路131にも、反射率検出回路132にも、トッププレート2、窓材15の両方を経由した赤外線が届くことが分かる。
【0029】
次に、熱型赤外線検出回路131を詳細に説明する。熱型赤外線検出回路131は、鍋501の底面から放射される赤外線を検知する赤外線センサ12と、赤外線センサ12の出力を増幅するアンプ21で構成されている。本実施例では赤外線センサ12にサーモパイルを使用している。赤外線センサ12に届く赤外線エネルギは微弱である。そこで、赤外線センサ12とアンプ21を一体化することで、赤外線センサ12、アンプ21間での電磁気的ノイズ混入を低減できる。そして、ノイズの混入の少ない信号をアンプ21で5000〜10000倍に増幅した後に出力することで、S/N比の良い信号を熱型赤外線検出回路131から出力している。
【0030】
次に、反射率検出回路132を詳細に説明する。反射率検出回路132は、反射型フォトインタラプタ22の赤外線発光素子20と赤外線受光素子19で構成されている。赤外線発光素子20の内部に納められた発光部20bが発光し、開口部20aから放たれた光は放射状に広がり鍋501で反射する。鍋501で反射された前記光は開口部19aの下方に配置する受光部19bで受光する。赤外線発光素子20は、例えば、発光波長930nmの赤外線LEDである。赤外線受光素子19は、例えば、ピーク感度波長が800nmであって、波長930nmにおける感度がピーク感度の80%のフォトトランジスタである。赤外線発光素子20が発光した赤外線は鍋501で反射し、赤外線受光素子19に戻る。赤外線受光素子19では、受光した赤外線量に比例した電圧が発生し、電圧値から受光した赤外線量を知ることができる。
【0031】
つまり、反射率検出回路132は、赤外線発光量と赤外線受光量の比から鍋501の反射率ρを検出することができる。なお、赤外線発光素子20の発光波長として930nmを採用したのは、トッププレート2、窓材15を透過する波長の赤外線であるとともに、鍋501が放射する赤外線にほとんど含まれない波長の赤外線だからである。赤外線受光素子19が受ける930nmの赤外線は鍋501で反射した赤外線であると判断でき、この赤外線に基づいて鍋501の反射率を正確に検出することができる。
【0032】
ここで、反射率検出回路132が求めた反射率に基づいて放射率算出回路26が放射率を算出する方法を説明する。温度Tの金属物質の表面から放射される赤外線エネルギ(E=εσT
4)の放射率εと表面の反射率ρの間にはキルヒホフの法則により式(ε+ρ=1)が成立する(但し、透過率α=0とする)。すなわち、鍋501の反射率ρを知ることができれば、鍋501の放射率εを算出できることが分かる。制御回路503は、温度検出手段131により出力された電圧を温度検出回路502により鍋底の温度を算出するときに、放射率算出回路26が算出した放射率εを用いて補正した鍋底温度に基づいて加熱コイル209に供給する電力を好適に制御することができる。
【0033】
次に、導光筒508の構造について説明する。導光筒508は
図2に示すように上面から見て略小判型の筒である。
図4は
図1のCC断面であるため、略小判型の導光筒508の長手方向の断面を示している。
【0034】
前記したように導光筒508はコイルベース203と一体成形で構成の例を示している。
【0035】
導光筒508は、上端508cを加熱コイル209より上方に突き出した位置に設け、下端508aはコイルベース203より下方に固定している赤外線センサモジュール407に達し、下端508aと赤外線センサモジュール407との間に冷却風が流入するように隙間を設けている。
【0036】
また導光筒508は、下端508aに比べ上端508cは広く開口した開口508fの筒状の形状をしている。図では上部約1/4は上端508cに向かって傾斜部508eを設けて広がり、以下は下端508aまでは略垂直の寸胴部508dとなっている。
【0037】
次に、
図5にトッププレート2の印刷35と導光筒508について説明する。
図5は
図1のB部を示したもので、トッププレート2を透過して導光筒508の開口508fと赤外線センサモジュール407を示したものである。
【0038】
トッププレート2の上面には印刷35により、載置部35aを示し、載置部35aの内側には、特定の一部分が印刷していない非印刷部35dを配置する。そして非印刷部35dは光センサ窓31aである。トッププレート2の下方に導光筒508が配置されているため、この非印刷部35dを透過して示すと、トッププレート2の光センサ窓31aの内側に開口508fが配置される。つまり非印刷部35dで示す光センサ窓31aの方が、導光筒508の開口508fより大きい面積に設けている。そしてこの開口508fの内部に反射型フォトインタラプタ22と赤外線センサ12が配置される。
【0040】
図4でトッププレート2の上面に載置した鍋501の反射型フォトインタラプタ22による発光と受光の説明をトッププレート2と光センサ窓31aと導光筒508の関係で説明する。反射型フォトインタラプタ22を含む反射率検出回路132の動作については、上記にあるので省略する。
【0041】
ここで、反射型フォトインタラプタ22から出た光は、導光筒508の開口508fからトッププレート2の下面から板厚分2sを通過してトッププレート2の上面へ通過して、光センサ窓31aである非印刷部35dを通して鍋501の鍋底で反射する。
【0042】
光センサ窓31aである非印刷部35dは、開口508fから上方の構成を説明すると、開口508fから上方にスキマ2d離れたトッププレート2の下面から更に板厚分2sだけ上方に離れたトッププレート2の上面にだけ印刷35が施してある。そして
図5に示すように非印刷部35dの光センサ窓31aは、開口508fより大きい面積で開口508fの全周に略均一に広がっている。
【0043】
それにより、トッププレート2に載置した鍋501の鍋底の一部は非印刷部35dに対向している。その非印刷部35dに対向した面積全体から、開口508fへ光が反射するものである。
【0044】
そして、赤外線発光素子20から発光される光で、トッププレート2上の鍋501で反射して赤外線受光素子19で受光し、鍋501の反射率を測定する。
【0045】
上記した本実施例によれば、本体1の内部が見えないガラス製のトッププレート2で、トッププレート2の下面に赤外線を遮る印刷をせず、意匠性の印刷35を上面にだけ備えたトッププレート2で、導光筒508の開口より大きい面積に設けた非印刷部35dで示す光センサ窓31aとするので、トッププレート2の上面で導光筒508の開口508fの上方に拡大した範囲で測定できるので、反射型フォトインタラプタ22で赤外線を発光して受光する過程において、導光筒508の開口508fより大きい面積に設けた非印刷部20dで示す光センサ窓31aから導光筒508の開口508f全体に赤外線を受光して導光筒508の開口508f全体で、反射率を測定するのに必要な赤外線を赤外線受光素子19で受光するため、導光筒508の開口508fよりも大きい面積の鍋底の反射率を正確に測定することができる。
【0046】
また、光センサ窓31aを大きく設けられることで、光センサ窓31aと赤外線センサとの位置ズレが生じても、トッププレート2の印刷35で遮られることを無くすことが可能となる。