(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両に搭載され、プーリに供給される油圧により挟持されるベルトの巻掛け径を変更して変速比を変更可能な無段変速機構と、前記無段変速機構に接続され、駆動力源の駆動力を駆動輪へと断続可能に伝達する摩擦締結要素とを備える無段変速機の制御装置であって、
車両の走行状態において前記駆動力源を停止するコーストストップ制御中、前記摩擦締結要素が伝達可能なトルクである伝達トルク容量が前記プーリの挟持力により前記ベルトが伝達可能なトルクであるベルト容量よりも低くなる指示圧を設定して油圧を供給することにより、前記摩擦締結要素の前記伝達トルク容量を減少させる制御部を備えることを特徴とする無段変速機の制御装置。
前記制御部は、前記伝達トルク容量を前記ベルト容量よりも低減させるときに、前記摩擦締結要素がトルクを伝達不能な状態となるまで前記伝達トルク容量を減少させることを特徴とする請求項1又は2に記載の無段変速機の制御装置。
前記制御部は、前記無段変速機構への入力トルクが前記ベルト容量よりも大きい場合、前記伝達トルク容量を、前記ベルト容量よりも小さくすることを特徴とする請求項4に記載の無段変速機の制御装置。
前記制御部は、前記伝達トルク容量が前記ベルト容量よりもよりも小さい場合、前記伝達トルク容量の低減を禁止することを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載の無段変速機の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の第1実施形態に係る無段変速機を搭載した車両の概略構成図である。この車両は動力源としてエンジン1を備える。エンジン1の出力回転は、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータ2、第1ギヤ列3、無段変速機(以下、単に「変速機4」という。)、第2ギヤ列5、終減速装置6を介して駆動輪7へと伝達される。第2ギヤ列5には駐車時に変速機4の出力軸を機械的に回転不能にロックするパーキング機構8が設けられている。
【0015】
また、車両には、エンジン1の回転が入力され、エンジン1の動力の一部を利用して駆動されるメカオイルポンプ10mと、バッテリ13から電力供給を受けて駆動される電動オイルポンプ10eとが設けられている。また、変速機4には、メカオイルポンプ10m及び電動オイルポンプ10eの少なくとも一方から供給される油圧を調圧して変速機4の各部に供給する油圧制御回路11と、油圧制御回路11及びエンジン1を制御するコントローラ12とが設けられている。
【0016】
変速機4は、無段変速機構(以下、「バリエータ20」という。)と、バリエータ20に対して直列に設けられる副変速機構30とを備える。「直列に設けられる」とは同動力伝達経路においてバリエータ20と副変速機構30が直列に設けられるという意味である。副変速機構30は、この例のようにバリエータ20の出力軸に直接接続されていてもよいし、その他の変速ないし動力伝達機構(例えば、ギヤ列)を介して接続されていてもよい。
【0017】
バリエータ20は、プライマリプーリ21と、セカンダリプーリ22と、プーリ21、22の間に掛け回されるベルト(Vベルト)23とを備えるベルト式無段変速機構である。プーリ21、22は、それぞれ固定円錐板と、この固定円錐板に対してシーブ面を対向させた状態で配置され固定円錐板との間にV溝を形成する可動円錐板と、この可動円錐板の背面に設けられて可動円錐板を軸方向に変位させる油圧シリンダ23a、23bとを備える。油圧シリンダ23a、23bに供給される油圧を調整すると、V溝の幅が変化してベルト23と各プーリ21、22との接触半径が変化し、バリエータ20の変速比vRatioが無段階に変化する。
【0018】
副変速機構30は前進2段・後進1段の変速機構である。副変速機構30は、2つの遊星歯車のキャリアを連結したラビニョウ型遊星歯車機構31と、ラビニョウ型遊星歯車機構31を構成する複数の回転要素に接続され、それらの連係状態を変更する複数の摩擦締結要素(Lowブレーキ32、Highクラッチ33、Revブレーキ34)とを備える。各摩擦締結要素32〜34への供給油圧を調整し、各摩擦締結要素32〜34の締結・解放状態を変更すると、副変速機構30の変速段が変更される。
【0019】
例えば、Lowブレーキ32を締結し、Highクラッチ33とRevブレーキ34を解放すれば副変速機構30の変速段は1速となる。Highクラッチ33を締結し、Lowブレーキ32とRevブレーキ34を解放すれば副変速機構30の変速段は1速よりも変速比が小さな2速となる。また、Revブレーキ34を締結し、Lowブレーキ32とHighクラッチ33を解放すれば副変速機構30の変速段は後進となる。なお、以下の説明では、副変速機構30の変速段が1速であるとき「変速機4が低速モードである」と表現し、2速であるとき「変速機4が高速モードである」と表現する。
【0020】
コントローラ12は、エンジン1及び変速機4を統括的に制御する制御手段であり、
図2に示すように、CPU121と、RAM・ROMからなる記憶装置122と、入力インターフェース123と、出力インターフェース124と、これらを相互に接続するバス125とから構成される。
【0021】
入力インターフェース123には、アクセルペダルの開度(以下、「アクセル開度APO」という。)を検出するアクセル開度センサ41の出力信号、変速機4の入力回転速度(=プライマリプーリ21の回転速度、以下、「プライマリ回転速度Npri」という。)を検出する回転速度センサ42の出力信号、車両の走行速度(以下、「車速VSP」という。)を検出する車速センサ43の出力信号、変速機4の油温を検出する油温センサ44の出力信号、セレクトレバー45の位置を検出するインヒビタスイッチ46の出力信号、ブレーキペダルの踏み込み量及びブレーキの液圧を検出するブレーキセンサ47の出力信号などが入力される。
【0022】
記憶装置122には、エンジン1の制御プログラム、変速機4の変速制御プログラム、この変速制御プログラムで用いる変速マップ(
図3)が格納されている。CPU121は、記憶装置122に格納されている変速制御プログラムを読み出して実行し、入力インターフェース123を介して入力される各種信号に対して各種演算処理を施して、燃料噴射信号、点火時期信号、スロットル開度信号、変速制御信号を生成し、生成した変速制御信号を出力インターフェース124を介して油圧制御回路11に出力する。CPU121が演算処理で使用する各種値、その演算結果は記憶装置122に適宜格納される。
【0023】
油圧制御回路11は複数の流路、複数の油圧制御弁で構成される。油圧制御回路11は、コントローラ12からの変速制御信号に基づき、複数の油圧制御弁を制御して油圧の供給経路を切り換え、メカオイルポンプ10m又は電動オイルポンプ10eが発生した油圧から必要な油圧を調製し、これを変速機4の各部位に供給する。これにより、バリエータ20の変速比vRatio、副変速機構30の変速段が変更され、変速機4の変速が行われる。
【0024】
図3は、本実施形態のコントローラ12の記憶装置122に格納される変速マップの一例を示している。
【0025】
この変速マップ上では変速機4の動作点が車速VSPとプライマリ回転速度Npriとに基づき決定される。変速機4の動作点と変速マップ左下隅の零点を結ぶ線の傾きが変速機4の変速比(バリエータ20の変速比vRatioに副変速機構30の変速比subRatioを掛けて得られる全体の変速比、以下、「スルー変速比Ratio」という。)を表している。この変速マップには、従来のベルト式無段変速機の変速マップと同様に、アクセル開度APO毎に変速線が設定されており、変速機4の変速はアクセル開度APOに応じて選択される変速線に従って行われる。なお、
図3には簡単のため、全負荷線(アクセル開度APO=8/8のときの変速線)、パーシャル線(アクセル開度APO=4/8のときの変速線)、コースト線(アクセル開度APO=0のときの変速線)のみが示されている。
【0026】
変速機4が低速モードのときは、変速機4はバリエータ20の変速比vRatioを最大にして得られる低速モード最Low線とバリエータ20の変速比vRatioを最小にして得られる低速モード最High線の間で変速することができる。このとき、変速機4の動作点はA領域とB領域内を移動する。一方、変速機4が高速モードのときは、変速機4はバリエータ20の変速比vRatioを最大にして得られる高速モード最Low線とバリエータ20の変速比vRatioを最小にして得られる高速モード最High線の間で変速することができる。このとき、変速機4の動作点はB領域とC領域内を移動する。
【0027】
副変速機構30の各変速段の変速比は、低速モード最High線に対応する変速比(低速モード最High変速比)が高速モード最Low線に対応する変速比(高速モード最Low変速比)よりも小さくなるように設定される。これにより、低速モードでとりうる変速機4のスルー変速比Ratioの範囲である低速モードレシオ範囲と高速モードでとりうる変速機4のスルー変速比Ratioの範囲である高速モードレシオ範囲とが部分的に重複し、変速機4の動作点が高速モード最Low線と低速モード最High線で挟まれるB領域にあるときは、変速機4は低速モード、高速モードのいずれのモードも選択可能になっている。
【0028】
コントローラ12は、この変速マップを参照して、車速VSP及びアクセル開度APO(車両の運転状態)に対応するスルー変速比Ratioを到達スルー変速比DRatioとして設定する。この到達スルー変速比DRatioは、当該運転状態でスルー変速比Ratioが最終的に到達すべき目標値である。そして、コントローラ12は、スルー変速比Ratioを所望の応答特性で到達スルー変速比DRatioに追従させるための過渡的な目標値である目標スルー変速比tRatioを設定し、スルー変速比Ratioが目標スルー変速比tRatioに一致するようにバリエータ20及び副変速機構30を制御する。
【0029】
また、変速マップ上には副変速機構30の変速を行うモード切換変速線(副変速機構30の1−2変速線)が低速モード最High線上に重なるように設定されている。モード切換変速線に対応するスルー変速比(以下、「モード切換変速比mRatio」という。)は低速モード最High変速比に等しい。
【0030】
そして、変速機4の動作点がモード切換変速線を横切った場合、すなわち、変速機4のスルー変速比Ratioがモード切換変速比mRatioを跨いで変化した場合は、コントローラ12はモード切換変速制御を行う。このモード切換変速制御では、コントローラ12は、副変速機構30の変速を行うとともに、バリエータ20の変速比vRatioを副変速機構30の変速比subRatioが変化する方向と逆の方向に変化させる協調変速を行う。
【0031】
協調変速では、変速機4のスルー変速比Ratioがモード切換変速比mRatioよりも大きい状態から小さい状態になったときは、コントローラ12は、副変速機構30の変速段を1速から2速に変更(以下、「1−2変速」という。)するとともに、バリエータ20の変速比vRatioを変速比大側に変化させる。逆に、変速機4のスルー変速比Ratioがモード切換変速比mRatioよりも小さい状態から大きい状態になったときは、コントローラ12は、副変速機構30の変速段を2速から1速に変更(以下、「2−1変速」という。)するとともに、バリエータ20の変速比vRatioを変速比小側に変化させる。
【0032】
モード切換変速時、協調変速を行うのは、変速機4のスルー変速比Ratioの段差により生じる入力回転の変化に伴う運転者の違和感を抑えるためである。また、モード切換変速をバリエータ20の変速比vRatioが最High変速比のときに行うのは、この状態では副変速機構30に入力されるトルクがそのときにバリエータ20に入力されるトルクのもとでは最小になっており、この状態で副変速機構30を変速すれば副変速機構30の変速ショックを緩和することができるからである。
【0033】
また、この変速マップに従えば、車両が停車する際、バリエータ20の変速比vRatioは最Low変速比となり、また、副変速機構30の変速段は1速となる。
【0034】
本実施形態のコントローラ12は、燃料消費量を抑制するために、車両が停止している間にエンジン1の回転を停止するアイドルストップ制御に加え、車両が走行中にもエンジン1の回転を停止させるコーストストップ制御を行う。
【0035】
コーストストップ制御では、低車速域で車両が走行している間、エンジン1を自動的に停止させて燃料消費量を抑制する制御である。なお、コーストストップ制御は、アクセルオフ時に実行される燃料カット制御とエンジン1への燃料供給を停止する点で共通するが、通常の燃料カット制御は、比較的高速走行時において実行され、かつエンジンブレーキを確保するためにトルクコンバータ2のロックアップクラッチが係合されているのに対し、コーストストップ制御は、車両停止直前の比較的低速走行時に実行され、ロックアップクラッチを解放状態としてエンジン1の回転を停止させる点において相違する。
【0036】
コーストストップ制御を実行するにあたって、コントローラ12は、まず、例えば以下に示す条件(a)〜(d)を判断する。
(a):アクセルペダルから足が離されている(アクセル開度APO=0)
(b):ブレーキペダルが踏み込まれている(ブレーキセンサ47がON)
(c):車速が所定の低車速(例えば、15km/h)以下
(d):ロックアップクラッチが解放されている
なお、これらの条件は、言い換えると運転者に停車意図があることを判断する条件である。
【0037】
コントローラ12は、コーストストップ条件が成立した場合に、エンジン1への燃料の供給を停止して、エンジン1の回転を停止させる。
【0038】
次に、このように構成された車両のコーストストップ制御を説明する。
【0039】
前述のように、コントローラ12は、コーストストップ条件が成立した場合に、エンジン1への燃料の供給を停止して、エンジン1の回転を停止させる。このとき、エンジン1の駆動力によって油圧を発生させるメカオイルポンプ10mも漸次停止し、メカオイルポンプ10mからの油圧が油圧制御回路11に供給されなくなる。
【0040】
エンジン1の停止中もバリエータ20の各プーリによるベルトの挟持力及び副変速機構30の摩擦締結要素の締結に油圧が必要となる。そこで、コントローラ12は、エンジン1をコーストストップさせた場合に、電動オイルポンプ10eを駆動させて、油圧を油圧制御回路11に供給する。
【0041】
図4は、本発明における比較例を示し、従来の変速機のコーストストップ制御の説明図である。
【0042】
図4において、上段から、車速VSP、エンジン回転速度Ne、バリエータ20のセカンダリプーリにおけるベルト23の油圧(以下、「ベルト圧」と呼ぶ)、摩擦締結要素のHighクラッチ33の油圧(以下、「H/C圧」と呼ぶ)及び、バリエータ20においてベルト圧により各プーリの挟持力によってベルト23を介してバリエータ20が伝達可能なトルクの大きさ(以下、「ベルト容量」と呼ぶ)、摩擦締結要素のHighクラッチ33においてH/C圧による締結力によって副変速機構が伝達可能なトルクの大きさ(以下「H/C容量」と呼ぶ)が示されている。
【0043】
なお、ここでは、セカンダリプーリ22におけるベルト23のベルト圧及びベルト容量を例に説明する。
図4のベルト圧の図において、点線は油圧の指示値、実線はメカオイルポンプ10mによる実油圧、一点鎖線は電動オイルポンプ10eによる実油圧をそれぞれ示す。また、H/C圧の図において、点線は油圧の指示値、実線はメカオイルポンプ10mによる実油圧、一点鎖線は電動オイルポンプ10eによる実油圧をそれぞれ示す。また、容量の図において、点線はベルト23のベルト容量、実線はHighクラッチ33のH/C容量をそれぞれ示す。
【0044】
なお、コーストストップ時には変速比が最Low付近であるので、プライマリプーリ21の油圧はセカンダリプーリ22に従って決定されるため、ここではセカンダリプーリ22のみを説明する。また、摩擦締結要素は、コーストストップ時に締結して動力を伝達するHighクラッチ33の締結状態を例に説明する。
【0045】
この
図4において、車両が徐々に減速し、コーストストップ条件が成立した場合(タイミングt01)に、コントローラ12は、エンジン1のコーストストップを行う。これによりエンジン回転速度Neが徐々に低下し、タイミングt02においてエンジン1が停止する。エンジン回転速度Neの低下に伴ってメカオイルポンプ10mが発生する油圧も低下する。
【0046】
エンジン1のコーストストップを行うと同時に、コントローラ12は電動オイルポンプ10eの駆動を開始する。このときコントローラ12は、バリエータ20への指示圧及び摩擦締結要素への指示圧を、コーストストップ開始以前よりも大きな値(例えば最大油圧の指示値)に設定する。これは、電動オイルポンプ10eが発生する油圧がメカオイルポンプ10mと比較して小さいため、指示圧を大きく設定して、電動オイルポンプ10eの油圧を最大限に利用するためである。
【0047】
これにより、タイミングt01からt02の間でメカオイルポンプ10mが駆動する間は、過渡的にベルト容量とH/C容量とが大きくなっている。
【0048】
その後、車両が停車して、車速VSPが0となる(タイミングt03)。
【0049】
なお、エンジン1がコーストストップする前は、メカオイルポンプ10mにより油圧が供給されている場合に、バリエータ20のベルト容量は、摩擦締結要素のH/C容量よりも小さくなっている。
【0050】
摩擦締結要素の締結容量は摩擦材同士で接触することにより発生する。そのため、金属のベルトとプーリとがオイルを介して接触するバリエータ20のベルト挟持力により発揮されるベルト容量よりも、摩擦締結用要素のH/C容量の方が大きい状態となる。従って、タイミングt01以前では、ベルト容量よりもH/C容量が上回っている。
【0051】
一方、メカオイルポンプ10mが停止して油圧が低下した状態では、摩擦締結要素は油圧に応じてH/C容量が低下し、油圧が低い領域ではリターンスプリングによりH/C容量はさらに低下する。一方、バリエータ20は、ベルトが滑ることを防止するためにベルト容量が低下しないように構成されているので、油圧の低下に対してベルト容量の低下は緩やかとなっている。
【0052】
このような状況において、特にタイミングt01とt02の間の過渡的な状態で、ベルト容量がH/C容量よりも小さい状態である場合に、変速機4に大きなトルクが入力された場合に、Highクラッチ33よりもベルト23が先に滑ってしまう虞がある。
【0053】
例えば、エンジン1のコーストストップが開始されて駆動力が低下するときに、ブレーキの踏み増しによって減速度が急変した場合は、変速機4に大きなトルクが入力される場合がある。また路面状態の変化(段差の乗り上げ等)によっても変速機4大きなトルクが入力される場合がある。このような大きなトルクが入力され、このトルクがベルト容量を上回ったときに、ベルト容量がH/C容量よりも小さい場合は、Highクラッチ33よりも先にベルト23がスリップする可能性がある。
【0054】
そこで、本実施形態では、次のような制御によって、ベルトのスリップを防止できるように構成した。
【0055】
図5は、本実施形態のコントローラ12が実行するコーストストップ制御のフローチャートである。
【0056】
このフローチャートは、エンジン1が起動されたとき(例えばイグニションがONにされたとき)に、コントローラ12によって実行が開始され、所定の周期(例えば10ms)で実行される。
【0057】
まず、コントローラ12は、前述したコーストストップ条件が成立したか否かを判定する(S110)。コーストストップ条件が成立していない場合は、以降の制御を行うことなく、他の処理に戻る。
【0058】
コーストストップ条件が成立したと判定した場合は、ステップS120に移行し、コントローラ12は、エンジン1の燃料噴射量やスロットルバルブ等を制御して、エンジン1を停止させるコーストストップ状態へと制御する。このとき同時に、トルクコンバータ2のロックアップクラッチを解放してコンバータ状態とし、エンジン1と変速機4とのトルクの伝達を分離する。
【0059】
次に、ステップS130に移行して、コントローラ12は、変速機4にトルクが入力され、入力トルクの大きさがベルト容量を上回ることが検知される、又は、入力トルクの大きさがベルト容量を上回るかを検知又は予測されるか否かを判定する。
【0060】
入力トルクの大きさがベルト容量を上回ることの検知は、例えば、ブレーキセンサ47により検出されたブレーキペダルの踏み込み速度ΔBRKpが所定の踏み込み速度よりも大きい場合や、ブレーキセンサ47により検出されたブレーキ液圧の変化速度ΔBRKfが所定の変化速度よりも大きい場合に、入力トルクがベルト容量を上回る可能性があるとする。
【0061】
また、コントローラ12が加速度センサを備え、この加速度が所定値以上である場合にも同様に、入力トルクがベルト容量を上回るとしてもよい。
【0062】
また、車両にカーナビゲーションシステムが搭載されている場合に、カーナビゲーションシステムの地図情報とGPSによる位置情報とから、現在走行中の路面が悪路であると判定した場合に、入力トルクがベルト容量を上回る可能性があると予測して、同様にステップS130の判定をYESとしてもよい。
【0063】
また、車両にカメラが搭載されている場合に、カメラによって前方の車両との車間距離が急接近した場合や、前方の信号機が赤信号になったことを判定した場合に、入力トルクがベルト容量を上回る可能性があると予測して、同様にステップS130の判定をYESとしてもよい。
【0064】
入力トルクがベルト容量を上回ることを検知又は予測した場合は、ステップS140に移行する。そうでない場合は、以降の制御を行うことなく、他の処理に戻る。
【0065】
ステップS140では、コントローラ12は、副変速機構30の摩擦締結要素の容量(ここではH/C容量)が、ベルト容量を上回っているか否かを判定する。H/C容量がベルト容量を上回っていると判定した場合は、ステップS150に移行する。そうでない場合は、ステップS160に移行する。なお、ベルト容量及びH/C容量は、油圧制御回路11に油圧センサを設けて実圧を計測してもよいし、コントローラ12が油圧制御回路11に出力する指令値に基づいて算出してもよい。
【0066】
ステップS150では、コントローラ12は、H/C圧を減少させる。具体的には、Highクラッチ33への指示圧をゼロ点(H/Cの入力側要素と出力側要素との隙間がゼロかつH/C容量がゼロとなるような指示油圧)に設定する。これによりH/C圧が低下して、H/C容量がベルト容量以下に低下するように制御される。
【0067】
ステップS160では、コントローラ12は、H/C圧がゼロ点に制御されていた場合に、これを所定の指示圧となるようにH/C圧をゼロ点よりも増加させる。具体的には、Highクラッチ33への指示圧を現在の車両状態(車速VSP等)に基づいた所定の指示に設定してH/C容量が所定のトルク容量となるように設定する。なお、この所定のトルク容量は、H/C容量がベルト容量を下回るような範囲で行われる。
【0068】
具体的には、ステップS120においてコーストストップ状態へと制御された場合に、エンジン1は直ちに停止するわけではなく、回転速度が漸減して最終的に停止する(
図6のタイミングt11−t13)。従ってこの間はメカオイルポンプ10mが駆動されて油圧制御回路11に油圧が供給される。また、油圧制御回路11の油路自体も残圧を有する。この油圧をH/C圧を供給することにより、コーストストップ制御の初期では、H/C圧を増加させることができる。
【0069】
このように制御することで、入力トルクがベルト容量を超え、ベルト23がスリップする可能性がある場合に、副変速機構の摩擦締結要素の容量(例えばH/C容量)を減少させて、ベルト容量よりもH/C容量が下回るように制御する。これにより、入力トルクに対して、ベルト23よりもHighクラッチ33をスリップさせて、ベルト23がスリップすることを防止する。
【0070】
なお、ステップS150において、H/C圧をゼロ点に設定するのではなく、H/C容量がベルト容量を下回る範囲となるようにH/C圧を算出し、このH/C圧に制御してもよい。
【0071】
図6は、本実施形態のコーストストップ制御の説明図である。
【0072】
図6において、上段から、ブレーキペダルの踏み込み速度ΔBRKp、車速VSP、エンジン回転速度Ne、及び、ベルト容量とH/C容量との関係が示されている。
【0073】
なお、ベルト容量とH/C容量と入力トルクとの関係を示す図において、実線はHighクラッチ33のH/C容量を、点線はベルト23のベルト容量を、それぞれ示す。
【0074】
この
図6において、タイミングt11でコーストストップ条件が成立し(
図5のステップS110がYES)、コーストストップの実行が開始される(
図5のステップS120)。
【0075】
そして、タイミングt12において、入力トルクがベルト容量を上回っていると判定した場合は、
図5のステップS140の判定がなされる。ここで、H/C容量がベルト容量を上回っていると判定した場合は、
図5のステップS150において、H/C圧がゼロ点に設定される。
【0076】
この制御により、タイミングt12からH/C容量が漸減し、ベルト容量がH/C容量を上回る状態となる。その後、タイミングt13においてH/C容量がゼロ点となる。なお、このタイミングt12からタイミング13において、前述の
図5のステップS140からS160の処理がなされ、前述のようにメカオイルポンプ10mの油圧及び油圧制御回路11の残圧によってH/C容量をゼロ点よりも増加させ、かつ、H/C容量がベルト容量を上回らない範囲に制御する。このとき、好ましくは、H/C容量がベルト容量よりも僅かに下回るように制御する。
【0077】
これにより、タイミングt12以降に変速機4の入力トルクが増大したとしても、ベルト容量がH/C容量を上回っているため、入力トルクによって先にHighクラッチ33がスリップし、ベルト23がスリップすることが抑制される。
【0078】
以上のように、本発明の第1実施形態は、車両に搭載され、プーリ(プライマリプーリ21及びセカンダリプーリ)に供給される油圧により挟持されるベルト23の巻掛け径を変更して変速比を変更可能な無段変速機構(バリエータ)20と、バリエータ20に接続され、駆動力源としてのエンジン1の駆動力を駆動輪7へと断続可能に伝達する摩擦締結要素(Lowブレーキ32、Highクラッチ33、Revブレーキ34)、とを備える変速機4に適用される。
【0079】
コントローラ12は、走行中にエンジン1を停止するコーストストップ制御を行ない、コーストストップ制御を行うときに、摩擦締結要素が伝達可能なH/C容量を、ベルト容量よりも低減させる。例えば、H/C容量をゼロ点に制御する。
【0080】
このような制御によって、ベルト容量がH/C容量を上回るように制御されるので、入力トルクによって先にHighクラッチ33がスリップし、ベルト23がスリップすることが防止される。これは請求項1の効果に対応する。
【0081】
また、コントローラ12は、入力トルクを検知又は予測した場合に、H/C容量を低減させるので、入力トルクが検知されたときのみH/C容量を低下させて、それ以外の状況ではH/C容量を低下させないので、摩擦締結要素の締結力が低下することによる再発進時の締結ショックや再発進時の摩擦締結要素の伝達のための発進ラグを抑制することができる。これは請求項2の効果に対応する。
【0082】
また、コントローラ12は、伝達トルク容量を低減させるときに、摩擦締結要素がトルクを伝達不能な状態(ゼロ点)となるまで伝達トルク容量を減少させる。
【0083】
一般的に、車両がエンジン1を駆動した状態で走行中に、副変速機構30のHighクラッチ33のH/C容量を減少させると、エンジンの駆動力が伝達できなくなる可能性があるため、走行中はH/C容量を低減することはできない。一方で、本実施形態のようにコーストストップ制御時には、車両が停車しようとしている状態であり、エンジン1のトルクを伝達する必要がないため、H/C容量がゼロ点となるまで低減することが可能である。従って、H/C容量をゼロ点となるまで減少させることにより、入力トルクによって先にHighクラッチ33がスリップし、ベルト23がスリップすることが防止される。これは請求項3の効果に対応する。
【0084】
また、コントローラ12は、無段変速機構4への入力トルクがベルト容量よりも大きい場合に、H/C容量をベルト容量よりも小さくするので。摩擦締結要素の締結力を維持しつつも、入力トルクによって先にHighクラッチ33がスリップし、ベルト23がスリップすることが防止される。これは請求項5の効果に対応する。
【0085】
また、コントローラ12は、無段変速機構4への入力トルクが検知されたときは、H/C容量がベルト容量より小さくなるように、好ましくはH/C容量がベルト容量よりも僅かに小さくなるように制御するので、Highクラッチ33が極力締結力を維持できるように制御しつつ、入力トルクに対しては、Highクラッチ33側が先にスリップするように制御することができる。これは請求項6の効果に対応する。
【0086】
また、コントローラ12は、入力トルクが検知又は予測されない場合に、H/C容量の低減を行わず、ゼロ点よりも増加させるので、摩擦締結要素の締結力を維持して、摩擦締結要素の締結力が低下することによる再発進時の締結ショックや再発進時の摩擦締結要素の伝達のための発進ラグを抑制することができる。これは請求項7の効果に対応する。
【0087】
また、コントローラ12は、H/C容量がベルト容量よりも小さい場合に、H/C容量の低減を行わず、ゼロ点よりも増加させるので、摩擦締結要素の締結力を維持して、摩擦締結要素の締結力が低下することによる再発進時の締結ショックや再発進時の摩擦締結要素の伝達のための発進ラグを抑制することができる。これは請求項8の効果に対応する。
【0088】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
【0089】
図7は、本発明の第2実施形態のコントローラ12が実行するコーストストップ制御のフローチャートである。なお、第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。また、第2実施形態の基本構成は第1実施形態の
図1及び
図2と同様である。
【0090】
図7に示すフローチャートは、エンジン1が起動されたとき(例えばイグニションがONにされたとき)に、コントローラ12によって実行が開始され、所定の周期(例えば10ms)で実行される。
【0091】
まず、コントローラ12は、前述したコーストストップ条件が成立したか否かを判定する(S210)。コーストストップ条件が成立していない場合は、以降の制御を行うことなく、他の処理に戻る。
【0092】
コーストストップ条件が成立したと判定した場合は、ステップS220に移行し、コントローラ12は、エンジン1の燃料噴射量やスロットルバルブ等を制御して、エンジン1の停止を開始する。このとき同時に、トルクコンバータ2のロックアップクラッチを解放してコンバータ状態とし、エンジン1と変速機4とを分離する。
【0093】
このとき同時に、コントローラ12は、H/C圧をゼロ点に設定する。これによりH/C圧が低下して、H/C容量が低下する。
【0094】
次に、ステップS230に移行し、コントローラ12は、変速機4にトルクが入力され、入力トルクの大きさがベルト容量を上回ることが検知される、又は、入力トルクの大きさがベルト容量を上回ることが予測されるか否かを判定する。
【0095】
入力トルクの大きさがベルト容量を上回ることの検知は、前述の第1実施形態の
図5のステップS130と同様に、ブレーキセンサ47や加速度センサまたは、カーナビゲーションシステムの地図情報とGPSによる位置情報とから判定を行う。
【0096】
入力トルクがベルト容量を上回ることを検知又は予測した場合は、ステップS240に移行する。そうでない場合は、ステップS250に移行する。
【0097】
入力トルクがベルト容量を上回ることを検知又は予測しない場合は、ステップS250に移行し、コントローラ12は、H/C圧をゼロ点から復帰させる。すなわち、入力トルクが検知又は予測されない場合は、H/C容量を増加させて副変速機構30の摩擦締結要素の締結力が低下することを防止する。ステップS250の処理の後、他の処理に戻る。
【0098】
入力トルクがベルト容量を上回ることを検知又は予測した場合は、ステップS240では、コントローラ12は、副変速機構30の摩擦締結要素の容量(ここではH/C容量)が、ベルト容量を上回っているか否かを判定する。
【0099】
このステップS240では、前述のステップS220において油圧制御回路11に対してコントローラ12が行ったゼロ点への指令に対して、未だH/C容量の実圧がベルト容量の実圧を上回っていると判定した場合は、H/C容量のゼロ点への指令が継続され、H/C容量の実圧はゼロ点へと向かう。その後、本フローチャートによる処理を終了し、他の処理に戻る。
【0100】
H/C容量がベルト容量を上回っていない場合は、トルクが入力されたが、ベルト容量がH/C容量を上回っており、ベルト23がスリップする前にHighクラッチ33がスリップすることができる状態である。この場合は、ステップS260に移行して、H/C容量をゼロ点よりも増加させて副変速機構30の摩擦締結要素の締結力が低下することを防止する。ステップS260の処理の後、他の処理に戻る。
【0101】
このように制御することで、コーストストップ状態となった場合に、直ちに、副変速機構の摩擦締結要素の容量(例えばH/C容量)を減少させて、ベルト容量よりもH/C容量が下回るように制御する。これにより、入力トルクに対して、ベルト23よりもHighクラッチ33をスリップさせて、ベルト23がスリップすることを防止する。
【0102】
一方、入力トルクが小さい場合は、ベルト容量がH/C容量を上回って、Highクラッチ33のH/C容量に余裕があると判断して、ステップS250又はステップS260において、H/C容量をゼロ点よりも増加させるようにH/C圧を上昇させ、Highクラッチ33を締結状態にする。これにより、摩擦締結要素の締結力を維持して、摩擦締結要素の締結力が低下することによる再発進時の締結ショックや再発進時の摩擦締結要素の伝達のための発進ラグを抑制することができる。
【0103】
図8は、本発明の第2実施形態のコーストストップ制御の説明図である。
【0104】
図8において、上段から、ブレーキペダルの踏み込み速度ΔBRKp、車速VSP、エンジン回転速度Ne、及び、ベルト容量とH/C容量との関係が示されている。
【0105】
なお、ベルト容量とH/C容量と入力トルクとの関係を示す図において、実線はHighクラッチ33のH/C容量を、点線はベルト23のベルト容量を、それぞれ示す。
【0106】
この
図8において、タイミングt21でコーストストップ条件が成立し(
図7のステップS210がYES)、コーストストップの実行が開始される(
図7のステップS220)。これにより、エンジン回転速度Neが漸次減少し、最終的に停止する(タイミングt21−t24)。
【0107】
このタイミングt21において、
図7のステップS220の処理により、まず、H/C容量をゼロ点に設定する。すなわち、コーストストップ制御において、まずは入力トルクに備えてH/C容量を減少させる。
【0108】
その後、タイミングt22において、
図7のステップS230の判定がなされ、ブレーキセンサ47の検出値等から入力トルクがベルト容量を上回っていると判定した場合は、
図7のステップS240の判定がなされる。ここで、H/C容量がベルト容量を下回っていると判定した場合は、
図7のステップS260に移行して、H/C容量が増加するようにH/C圧を制御する。このとき、エンジン回転速度Neはまだ停止状態ではく、メカオイルポンプ10mが駆動されて油圧が供給可能であるので、H/C容量を増加するように油圧制御回路11に指令することができる。
【0109】
その後、タイミングt23において、
図7のステップS240の判定がなされる。ここで、H/C容量がベルト容量を上回っていると判定した場合は、次回のループで
図7のステップS220に戻り、H/C容量をゼロ点に設定する。この制御によりH/C容量が漸減する。なお、このタイミングt23からタイミング24において、前述の
図7のステップS240及びS260の処理がなされ、H/C容量がベルト容量を上回らない範囲で(好ましくはH/C容量がベルト容量よりも僅かに下回るように)制御する。
【0110】
このように、第2実施形態では、コーストストップ制御時には、H/C容量をゼロ点に設定してH/C容量が漸減させるが、入力トルクがベルト容量を上回らない場合は、H/C容量がベルト容量を上回らない範囲でH/C容量を入力トルクよりも大きく制御する。このような制御により、摩擦締結要素の締結力可能な限り維持して、例えば摩擦締結要素の締結力が低下することによる再発進時の締結ショックや再発進時の摩擦締結要素の伝達のための発進ラグを抑制することができる。これは請求項4の効果に対応する。
【0111】
また、入力トルクがベルト容量を上回った場合は、ベルト容量がH/C容量を上回っている範囲で、H/C容量を増加させて、Highクラッチ33の締結力を増加させるので、同様に摩擦締結要素の締結力可能な限り維持することができる。
【0112】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
【0113】
図9は、本発明の第3実施形態のコントローラ12が実行するコーストストップ制御のフローチャートである。なお、第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。また、第3実施形態の基本構成は第1実施形態の
図1及び
図2と同様である。
【0114】
図9に示すフローチャートは、エンジン1が起動されたとき(例えばイグニションがONにされたとき)に、コントローラ12によって実行が開始され、所定の周期(例えば10ms)で実行される。
【0115】
まず、コントローラ12は、前述したコーストストップ条件が成立したか否かを判定する(S310)。コーストストップ条件が成立していない場合は、以降の制御を行うことなく、他の処理に戻る。
【0116】
コーストストップ条件が成立したと判定した場合は、ステップS320に移行し、コントローラ12は、エンジン1の燃料噴射量やスロットルバルブ等を制御して、エンジン1の停止を開始する。このとき同時に、トルクコンバータ2のロックアップクラッチを解放してコンバータ状態とし、エンジン1と変速機4とを分離する。
【0117】
このとき同時に、コントローラ12は、H/C圧をゼロ点に設定する。これによりH/C圧が低下して、H/C容量がゼロ点にまで低下する。以降は、コントローラ12は、H/C容量をゼロ点に維持する。
【0118】
図10は、本発明の第3実施形態のコーストストップ制御の説明図である。
【0119】
図10において、上段から、ブレーキペダルの踏み込み速度ΔBRKp、車速VSP、エンジン回転速度Ne、及び、ベルト容量とH/C容量との関係が示されている。
【0120】
なお、ベルト容量とH/C容量と入力トルクとの関係を示す図において、実線はHighクラッチ33のH/C容量を、点線はベルト23のベルト容量を、それぞれ示す。
【0121】
この
図10において、タイミングt31でコーストストップ条件が成立し(
図9のステップS310がYES)、コーストストップの実行が開始される(
図9のステップS320)。
【0122】
このタイミングt31において、
図9のステップS330の処理により、H/C容量をゼロ点に設定する。すなわち、コーストストップ制御が開始された場合に、入力トルクに備えてH/C容量をゼロ点まで減少させる。以降は、H/C容量をゼロ点に維持する。
【0123】
このように本発明の第3実施形態では、コーストストップ制御が開始された場合に、H/C容量をゼロ点に設定して、この状態を維持する。このような制御により、入力トルクがあった場合に、先にHighクラッチ33がスリップし、ベルト23がスリップすることが防止される。
【0124】
またさらに、例えば容量の低減を行うHighクラッチ33の締結力を制御するソレノイドが、ノーマリーローで構成されている場合に、Highクラッチ33をゼロ点に維持することによって、ソレノイドの消費電流を低減することができる。
【0125】
なお、コントローラ12によるH/C容量のゼロ点の制御は、例えば車速VSPが0になり車両が停止した場合や、アクセルペダルの踏み込みによって運転者からの加速意図が検出された、エンジン1が再起動された場合に終了する。このような状況では再発進のためにHighクラッチ33を締結する必要があり、例えば摩擦締結要素の締結力が低下することによる再発進時の締結ショックや再発進時の摩擦締結要素の伝達のための発進ラグを抑制するために、速やかにH/C容量を増加するためである。
【0126】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0127】
例えば、上記実施形態では、バリエータ20としてベルト式無段変速機構を備えているが、バリエータ20は、ベルト23の代わりにチェーンがプーリ21、22の間に掛け回される無段変速機構であってもよい。あるいは、バリエータ20は、入力ディスクと出力ディスクの間に傾転可能なパワーローラを配置するトロイダル式無段変速機構であってもよい。
【0128】
また、上記実施形態では、副変速機構30は前進用の変速段として1速と2速の2段を有する変速機構としたが、副変速機構30を前進用の変速段として3段以上の変速段を有する変速機構としても構わない。
【0129】
また、副変速機構30をラビニョウ型遊星歯車機構を用いて構成したが、このような構成に限定されない。例えば、副変速機構30は、通常の遊星歯車機構と摩擦締結要素を組み合わせて構成してもよいし、あるいは、ギヤ比の異なる複数の歯車列で構成される複数の動力伝達経路と、これら動力伝達経路を切り換える摩擦締結要素とによって構成してもよい。
【0130】
また、バリエータ20に対して、副変速機構30が前段にあっても後段にあってもよい。例えば副変速機構30をエンジン1の後段でバリエータ20の前段に備えた場合は、エンジン1からの衝撃トルクに対して特に効果がある。一方バリエータ20の後段に副変速機構30を備えた場合は、駆動輪7からの衝撃トルクに対して特に効果がある。さらに、変速段を備える副変速機構30ではなく、前後進切り替え機構であってもよい。