特許第5728428号(P5728428)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5728428
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/64 20060101AFI20150514BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20150514BHJP
   A47C 7/46 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   B60N2/64
   B60N2/22
   A47C7/46
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-103176(P2012-103176)
(22)【出願日】2012年4月27日
(65)【公開番号】特開2013-230742(P2013-230742A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2015年2月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】上原 慎二
【審査官】 太田 良隆
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−526425(JP,A)
【文献】 特開2001−61581(JP,A)
【文献】 米国特許第4015878(US,A)
【文献】 米国特許第4239282(US,A)
【文献】 特開2008−18669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00−2/72
A47C 7/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座乗員の背部を支えると共に、シートバックフレームに対してシートバック上下方向にスライド可能とされたバックシェルと、
前記バックシェルの背面部に設けられ、各々シートバック上下方向に延びると共にシートバック前後方向に対向して配置されたフロントガイド面及びリヤガイド面を有し、前記シートバックフレームに対する前記バックシェルのスライド動作をガイドするガイド部材と、
前記シートバックフレームに結合されると共に、シート幅方向を軸方向として配置され前記フロントガイド面と前記リヤガイド面との間で前記フロントガイド面及び前記リヤガイド面の一方側に寄って配置され、前記ガイド部材に対してシートバック上下方向に相対移動可能にされた軸部と、
前記軸部に相対回転可能に設けられ、前記フロントガイド面及び前記リヤガイド面の他方に対して転がり運動可能にされた回転体と、
を備えた車両用シート。
【請求項2】
前記軸部が前記リヤガイド面に当接されると共に、前記回転体が前記フロントガイド面に対して転がり運動可能にされた請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記ガイド部材に形成され、シートバック上下方向に延びるラックと、
前記回転体に形成され、前記ラックに噛合されるピニオンと、
を備えた請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記リヤガイド面と前記軸部とが点接触された請求項2又は請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記回転体は扇形柱状に形成され、
前記回転体の周方向両端面には、前記ガイド部材と干渉しない非干渉部が形成された請求項2〜請求項4の何れか1項に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記ガイド部材は、
前記バックシェルに固定されると共に、前記フロントガイド面が形成されたフロントガイドと、
前記リヤガイド面が形成されると共に、前記フロントガイドに嵌合される嵌合部を有するリヤガイドと、
を備えた請求項2〜請求項5の何れか1項に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックシェルを有する車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載された車両用シートでは、バックシェルが、バックサポート機構によってバックフレームに連結されて、バックフレームに対して上下方向にスライド可能にされている。
【0003】
このバックサポート機構は、バックシェル側に設けられたカムフォロア(回転体)とバックフレーム側に設けられたガイドレール(ガイド部材)とを含んで構成されており、バックシェルがバックフレームに対して上下方向にスライドされる際には、カムフォロアがガイドレール内を移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−526425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このバックサポート機構では、カムフォロアがガイドレール内を移動する際に、カムフォロアがガイドレールの内面に対して転がり運動するものの、カムフォロアを安定して回転させる(バックシェルをバックフレームに対して安定してスライドさせる)点において改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、シートバックフレームに対するバックシェルのスライド動作を安定化できる車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の車両用シートは、着座乗員の背部を支えると共に、シートバックフレームに対してシートバック上下方向にスライド可能とされたバックシェルと、前記バックシェルの背面部に設けられ、各々シートバック上下方向に延びると共にシートバック前後方向に対向して配置されたフロントガイド面及びリヤガイド面を有し、前記シートバックフレームに対する前記バックシェルのスライド動作をガイドするガイド部材と、前記シートバックフレームに結合されると共に、シート幅方向を軸方向として配置され前記フロントガイド面と前記リヤガイド面との間で前記フロントガイド面及び前記リヤガイド面の一方側に寄って配置され、前記ガイド部材に対してシートバック上下方向に相対移動可能にされた軸部と、前記軸部に相対回転可能に設けられ、前記フロントガイド面及び前記リヤガイド面の他方に対して転がり運動可能にされた回転体と、を備えている。
【0008】
請求項1に記載の車両用シートでは、バックシェルの背面部にガイド部材が設けられている。このガイド部材は、フロントガイド面及びリヤガイド面を有しており、フロントガイド面及びリヤガイド面の各々は、シートバック前後方向に対向して配置されて、シートバック上下方向に延びている。
【0009】
そして、フロントガイド面とリヤガイド面との間には、軸部が配置されている。この軸部は、シート幅方向を軸方向として配置されると共に、シートバックフレームに結合されて、ガイド部材に対してシートバック上下方向に相対移動可能されている。
【0010】
ここで、軸部には、回転体が相対回転可能に設けられており、軸部がフロントガイド面及びリヤガイド面の一方側に寄って配置されて、回転体がフロントガイド面及びリヤガイド面の他方に対して転がり運動可能にされている。これにより、例えば回転体の断面を扇形状にすることで、軸部の半径に対する回転体の半径の比率を大きく設定できる。このため、バックシェルがシートバックフレームに対してスライドする際に回転体が軸部に対して安定して相対回転されるため、バックシェルがシートバックフレームに対して安定してスライドできる。
【0011】
請求項2に記載の車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記軸部が前記リヤガイド面に当接されると共に、前記回転体が前記フロントガイド面に対して転がり運動可能にされている。
【0012】
請求項2に記載の車両用シートでは、軸部がリヤガイド面に当接されると共に、回転体がフロントガイド面に対して転がり運動可能にされているため、リヤガイド面と軸部との間及びフロントガイド面と回転体との間で、ガタが発生することを抑制できる。つまり、バックシェルにおけるシートバックフレームに対するシートバック前後方向のガタを抑制できる。
【0013】
しかも、リヤガイド面が、フロントガイド面に対してシートバック後方に配置されているため、バックシェルが着座乗員の背部を支える際の着座乗員からバックシェルに作用するシート後側への荷重が、主としてフロントガイド面と回転体との間に作用して、回転体がフロントガイド面に対して転がり運動する。すなわち、この荷重が軸部とリヤガイド面との間に作用することが抑制されるため、バックシェルがシートバックフレームに対してスライドする際の軸部とリヤガイド面との間の摺動抵抗を低減できる。
【0014】
請求項3に記載の車両用シートは、請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記ガイド部材に形成され、シートバック上下方向に延びるラックと、前記回転体に形成され、前記ラックに噛合されるピニオンと、を備えている。
【0015】
請求項3に記載の車両用シートでは、ガイド部材にラックが形成されており、このラックに噛合されるピニオンが、回転体に形成されている。このため、バックシェルがシートバックフレームに対してスライドする際には、回転体が、ラックとピニオンとによって軸部に対して確実に相対回転されて、フロントガイド面に対して転がり運動する。これにより、バックシェルがシートバックフレームに対して一層安定してスライドできる。
【0016】
請求項4に記載の車両用シートは、請求項2又は請求項3に記載の車両用シートにおいて、前記リヤガイド面と前記軸部とが点接触されている。
【0017】
請求項4に記載の車両用シートでは、リヤガイド面と軸部とが点接触されているため、バックシェルがシートバックフレームに対してスライドする際のリヤガイド面と軸部との間の摺動抵抗を一層低減できる。
【0018】
請求項5に記載の車両用シートは、請求項2〜請求項4の何れか1項に記載の車両用シートにおいて、前記回転体は扇形柱状に形成され、前記回転体の周方向両端面には、前記ガイド部材と干渉しない非干渉部が形成されている。
【0019】
請求項5に記載の車両用シートでは、回転体が扇形柱状に形成されている。ここで、回転体の周方向両端面には、ガイド部材と干渉しない非干渉部が形成されている。これにより、バックシェルの移動ストロークに対応した回転体の半径を大きく設定できる。
【0020】
請求項6に記載の車両用シートは、請求項2〜請求項5の何れか1項に記載の車両用シートにおいて、前記ガイド部材は、前記バックシェルに固定されると共に、前記フロントガイド面が形成されたフロントガイドと、前記リヤガイド面が形成されると共に、前記フロントガイドに嵌合される嵌合部を有するリヤガイドを備えている。
【0021】
請求項6に記載の車両用シートでは、ガイド部材が、バックシェルに固定されたフロントガイドと、リヤガイドと、を備えている。つまり、ガイド部材がフロントガイドとリヤガイドとに分割可能に構成されている。そして、フロントガイドには、フロントガイド面が形成されている。また、リヤガイドには、リヤガイド面及び嵌合部が形成されており、嵌合部が、フロントガイドに嵌合されている。
【0022】
これにより、フロントガイドをバックシェルに固定させた後に、フロントガイドのシートバック後方に軸部及び回転体を配置させて、リヤガイドをフロントガイドに嵌合させることで、バックシェルがシートバックフレームに連結される。したがって、バックシェルをシートバックフレームに容易に連結できる。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載の車両用シートによれば、シートバックフレームに対するバックシェルのスライド動作を安定化できる。
【0024】
請求項2に記載の車両用シートによれば、バックシェルにおけるシートバックフレームに対するシートバック前後方向のガタを抑制でき、バックシェルがシートバックフレームに対してスライドする際のリヤガイド面と軸部との間の摺動抵抗を低減できる。
【0025】
請求項3に記載の車両用シートによれば、シートバックフレームに対するバックシェルのスライド動作を一層安定化できる。
【0026】
請求項4に記載の車両用シートによれば、バックシェルがシートバックフレームに対してスライドする際のリヤガイド面と軸部との間の摺動抵抗を一層低減できる。
【0027】
請求項5に記載の車両用シートによれば、バックシェルの移動ストロークに対応した回転体の半径を大きく設定できる。
【0028】
請求項6に記載の車両用シートによれば、バックシェルをシートバックフレームに容易に連結できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施の形態に係る車両用シートに用いられるガイド機構を示すシート左斜め後方から見た斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係る車両用シートを示すシート左斜め前方から見た一部破断した斜視図である。
図3図2に示されるバックシェルを示すシート左斜め後方から見た斜視図である。
図4】(A)は、図1に示されるフロントガイドを示す斜視図であり、(B)は、図1に示される連結ギヤを示す斜視図であり、(C)は、図1に示されるリヤガイドを示す斜視図である。
図5図1に示されるガイド機構をシート左側から見た断面図(図1の5−5線断面図)である。
図6図5に示されるリヤガイドをシート上方から見た拡大した断面図(図5の6−6線断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図2には、本発明の実施の形態に係る車両用シート10の全体がシート左斜め前方から見た一部破断した斜視図にて示されている。なお、図面に適宜示される矢印FRはシート前方を示し、矢印RHはシート右方(シート幅方向一側)を示し、矢印UPはシート上方を示す。
【0031】
この図に示すように、車両用シート10は、乗員が着座するシートクッション30と、乗員の背部を支えるシートバック50と、シートクッション30を車体フロア(図示省略)に連結する連結機構12と、を含んで構成されている。そして、シートバック50はシートクッション30のシート後側端部に起立した状態で配置されており、シートバック上下方向とシート上下方向とが一致されると共に、シートバック前後方向とシート前後方向とが一致されている。
【0032】
(連結機構12について)
【0033】
連結機構12は、車両用シート10の下部を構成している。この連結機構12は、長尺状の一対のガイドレール14を有しており、ガイドレール14は、長手方向をシート前後方向にして平行に配置されている。また、ガイドレール14の長手方向両端部は、一対のレッグブラケット16を介して、車両の車体フロアに固定されている。
【0034】
一対のガイドレール14内には、長尺状のアッパーレール(図示省略)がそれぞれ設けられており、アッパーレールはガイドレール14に対してシート前後方向にスライド可能に構成されている。このアッパーレールの上側には、シートクッションフレーム18がそれぞれ設けられている。シートクッションフレーム18は、板金で製作されており、シートクッションフレーム18の下部が、図示しないボルト及びナット等の締結部材によってアッパーレールに固定されている。これにより、シートクッションフレーム18は、アッパーレールと一体にシート前後方向に移動可能に構成されている。
【0035】
シートクッションフレーム18には、後述するシートクッション30を支持するための一対のリンク20がそれぞれ設けられており、リンク20の下端部が、軸方向をシート幅方向にしてシートクッションフレーム18に回転可能に支持されている。
【0036】
また、一対のシートクッションフレーム18の間には、サポートパネル22が設けられている。サポートパネル22は、略矩形板状に形成されて、板厚方向をシート上下方向にして、一対のシートクッションフレーム18に架け渡(連結)されている。
【0037】
(シートクッション30について)
【0038】
シートクッション30は、シートクッションフレーム18のシート上側に設けられている。シートクッション30は、クッションシェル32を有しており、クッションシェル32は、略板状に形成されて、板厚方向を略シート上下方向にして配置されている。クッションシェル32のシート下側の部分には、前述したリンク20の上端部が、軸方向をシート幅方向にして回転可能に連結されており、これにより、クッションシェル32がシートクッションフレーム18に対してシート上下方向及びシート前後方向に移動可能に構成されている。また、クッションシェル32のシート幅方向両端部には、シート後方の位置において、後述するバックシェル54を支持するための支持軸34が設けられており、支持軸34は軸方向をシート幅方向としてクッションシェル32からシート幅方向外側へ突出されている(図2では、シート左側の支持軸34のみ示されている)。さらに、クッションシェル32の上側には、ウレタンパッド36が設けられており、このウレタンパッド36の厚さ寸法は比較的薄く設定されて、ウレタンパッド36は表皮38によって被覆されている。
【0039】
一方、クッションシェル32とサポートパネル22との間には、サポートパッド40(広義には、「弾性体」として把握される要素である)が設けられている。サポートパッド40は、軟質発泡合成樹脂等で製作されると共に、略直方体状に形成されて、クッションシェル32及びサポートパネル22に当接されている。これにより、クッションシェル32は、サポートパッド40を介してサポートパネル22に支持されており、クッションシェル32に乗員が着座すると、クッションシェル32がサポートパッド40をシート下側へ押圧することで、サポートパッド40が弾性変形するように構成されている。また、この際には、サポートパッド40の弾性変形に追従して、クッションシェル32がシート下側へ移動すると共に、サポートパッド40からクッションシェル32へシート上側への弾性力が作用する(付与される)ように構成されている。
【0040】
(シートバック50について)
【0041】
シートバック50は、シートバックフレーム52と、バックシェル54と、一対のガイド機構70(図3参照)と、を含んで構成されている。
【0042】
シートバックフレーム52は、シートバック50の骨格部材の一部として構成されている。このシートバックフレーム52は、パイプ材で製作されて、シート前方から見てシート下側へ開放された略逆U字形状に屈曲されている。シートバックフレーム52のシート左側の端部は、軸方向をシート幅方向にしてシートクッションフレーム18の後端部に回転可能に支持されている。一方、シートバックフレーム52のシート右側の端部は、従来周知のリクライニング機構(図示省略)を介してシートクッションフレーム18に回転可能に連結されている。
【0043】
バックシェル54は略板状に形成されている。このバックシェル54は、板厚方向をシート前後方向にして、シート前方から見てシートバックフレーム52の内側に配置されている。バックシェル54の背面下部には、一対のヒンジブラケット56が固定されている(図2には、シート左側のヒンジブラケット56のみが示されている)。ヒンジブラケット56は、シート上下方向に延びると共に、その下端部からシート幅方向外側へ延設されている。そして、ヒンジブラケット56のシート幅方向外側の端部は、軸方向をシート幅方向にして、前述したクッションシェル32の支持軸34に回転可能に支持されている。これにより、ヒンジブラケット56によってバックシェル54がクッションシェル32に連結されて、クッションシェル32がシート上下方向へ移動される際には、クッションシェル32と共にバックシェル54がシート上下方向へ移動するように構成されている。つまり、バックシェル54は、シートバックフレーム52に対してシート上下方向にスライド(相対移動)可能に構成されている。
【0044】
さらに、バックシェル54のシート前側には、ウレタンパッド64が設けられており、このウレタンパッド64の厚さ寸法は比較的薄く設定されて、ウレタンパッド64は表皮66によって被覆されている。
【0045】
図3及び図5に示すように、バックシェル54の上部には、シート幅方向両側部において、一対の固定凹部58がそれぞれ形成されており、固定凹部58は、シート後側へ突出されると共に、シート前側へ開放された凹状を成している。この固定凹部58内には、後述するフロントガイド74を固定するためのウェルドボルト60の頭部が固定されており、ウェルドボルト60のネジ部が固定凹部58からシート後側へ突出されている。
【0046】
次に、本発明の要部である一対のガイド機構70の構成について説明する。
【0047】
図1図3、及び図5に示すように、一対のガイド機構70は、バックシェル54の背面上部にそれぞれ設けられると共に、シート幅方向に並んで配置されている。また、ガイド機構70は、ガイド部材72と、「軸部」としてのワイヤ100と、「回転体」としての連結ギヤ102と、を含んで構成されている。また、ガイド部材72は、フロントガイド74とリヤガイド90とを有している。
【0048】
フロントガイド74は樹脂で製作されている。このフロントガイド74は、略矩形板状の本体部76を有しており、本体部76は、板厚方向をシート前後方向にすると共に長手方向をシート上下方向にして、バックシェル54の固定凹部58のシート後側に配置されている。図4(A)に示すように、この本体部76の上部及び下部には、それぞれ被固定凹部78が形成されており、被固定凹部78は、断面円形状に形成されて、シート後側へ開放された凹状を成している。また、被固定凹部78の底壁には、円形状の貫通孔80が形成されている。そして、図5に示すように、貫通孔80内にウェルドボルト60のネジ部が挿通されて、ウェルドボルト60のネジ部にナット62が螺合されることで、本体部76(フロントガイド74)がバックシェル54に固定(締結)されている。これにより、フロントガイド74は、バックシェル54と一体にシート上下方向に移動されるようになっている。
【0049】
そして、本体部76のシート後側面は、フロントガイド面82とされており、フロントガイド面82はシート前後方向に対して直交する方向(バックシェル54と略平行)に配置されている。
【0050】
また、フロントガイド74には、本体部76のシート幅方向両側において、一対のラック84が形成されており、ラック84は、シート上下方向に延びると共に、本体部76と一体に形成されている。このラック84は、複数のラック歯によって構成されており、側面視でラック84のピッチラインがフロントガイド面82と一致されている。さらに、本体部76の上端部及び下端部には、後述するリヤガイド90を組付けるための一対の被嵌合部86が形成されている。被嵌合部86は、略矩形板状に形成されて、本体部76からシート上側及びシート下側へそれぞれ突出されており、被嵌合部86のシート後側面がフロントガイド面82と面一に配置されている。
【0051】
図1及び図5に示すように、リヤガイド90は、略長尺板状に形成されて、長手方向をシート上下方向にして、フロントガイド74のシート後側に対向して配置されている。また、リヤガイド90の長手方向両端部は、シート前側に屈曲されて、シート上方から見てシート前側へ向かうに従い幅広に形成されている。この長手方向両端部の先端部には、それぞれ「嵌合部」としての嵌合孔92が形成されており(図4(C)参照)、嵌合孔92は、略矩形状を成して、シート上下方向に貫通されている。そして、嵌合孔92内にフロントガイド74の被嵌合部86が嵌合されている。これにより、リヤガイド90が、フロントガイド74に組付けられて、フロントガイド74及びバックシェル54と一体にシート上下方向に移動されるようになっている。
【0052】
また、図5に示すように、リヤガイド90におけるフロントガイド面82と対向する面は、リヤガイド面94とされており、リヤガイド面94は、フロントガイド面82と平行に配置されている。さらに、リヤガイド90には、リヤガイド面94の一部を構成する一対のビード96(広義には、「当接部」として把握される要素である)がシート上下方向に沿って形成されており、ビード96は、断面略半円形状に形成されて、リヤガイド面94からシート前側へ突出されている(図6参照)。
【0053】
図3及び図5に示すように、ワイヤ100は、丸棒状に形成されて、シート幅方向に沿って延びており、ワイヤ100の長手方向両端部が溶接等によってシートバックフレーム52に結合されている。そして、ワイヤ100は、フロントガイド面82とリヤガイド面94との間でリヤガイド面94側に寄って配置されており、ワイヤ100の外周部が、リヤガイド90のビード96に当接されている(図6参照)。つまり、ワイヤ100の軸心が、フロントガイド面82及びリヤガイド面94から等距離に配置される仮想中心面Cよりもリヤガイド面94側に寄って配置されている(図5参照)。これにより、ワイヤ100は、リヤガイド90と点接触されて、フロントガイド74及びリヤガイド90に対してシート上下方向に相対移動可能に構成されている。
【0054】
図1及び図5に示すように、連結ギヤ102は、樹脂で製作されている。また、連結ギヤ102は、略扇形柱状に形成されると共に、高さ方向(軸方向)をシート幅方向にしてフロントガイド面82とリヤガイド面94との間に配置されている。
【0055】
この連結ギヤ102の軸心部には、断面略C字形状の支持孔104が形成されており、支持孔104は、シート幅方向に貫通形成されると共に、シート後側へ開放されている。そして、支持孔104内には、ワイヤ100が挿入されている。これにより、連結ギヤ102が、ワイヤ100に相対回転可能に支持されると共に、フロントガイド74及びリヤガイド90に対してシート上下方向に相対移動可能に構成されている。
【0056】
また、図4(B)及び図5に示すように、連結ギヤ102の外周面は、転がり面106とされており、転がり面106は、側面視で支持孔104を中心とした円弧状に湾曲されて、フロントガイド74のフロントガイド面82に当接されている。さらに、連結ギヤ102の外周部には、転がり面106のシート幅方向両側において、一対のピニオン108が形成されており、ピニオン108は複数のピニオン歯によって構成されている。そして、側面視でピニオン108のピッチ円が転がり面106と一致されており、ピニオン108は、前述したフロントガイド74のラック84に噛合されている。これにより、バックシェル54がシートバックフレーム52に対してシート上下方向にスライド(相対移動)する際には、連結ギヤ102が、ラック84及びピニオン108によってワイヤ100の軸心回りに回転されて(図5の矢印A及び矢印B参照)、フロントガイド面82に対して転がり運動するように構成されている。
【0057】
また、連結ギヤ102の周方向両端面には、軸方向中間部において、「非干渉部」としての非干渉凹部110がそれぞれ形成されている。この非干渉凹部110は、連結ギヤ102の径方向外側へ開放されると共に連結ギヤ102の周方向外側に開放されている。そして、バックシェル54がシートバックフレーム52に対してシート上側へ最もスライドされた際には、一方の非干渉凹部110内にリヤガイド90が配置されて、連結ギヤ102とリヤガイド90との干渉が回避されると共に、他方の非干渉凹部110とシート下側のウェルドボルト60のネジ部とが干渉されないように構成されている。また、バックシェル54がシートバックフレーム52に対してシート下側へ最もスライドされた際には、他方の非干渉凹部110内にリヤガイド90が配置されて、連結ギヤ102とリヤガイド90との干渉が回避されると共に、一方の非干渉凹部110とシート上側のウェルドボルト60のネジ部とが干渉されないように構成されている。
【0058】
次に本実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0059】
上記のように構成された車両用シート10では、乗員がシートクッション30に着座すると、乗員の体重によってクッションシェル32がサポートパッド40をシート下側へ押圧して、サポートパッド40が弾性変形する。これにより、サポートパッド40の弾性変形に追従して、クッションシェル32がシート下側へ移動されると共に、サポートパッド40からクッションシェル32へシート上側への弾性力が作用する。
【0060】
また、バックシェル54は、ヒンジブラケット56によってクッションシェル32に連結されている。このため、クッションシェル32がシート下側へ移動すると、クッションシェル32と共にバックシェル54がシート下側へ移動される。
【0061】
バックシェル54がシート下側へ移動されると、フロントガイド74(ラック84)及びリヤガイド90が、バックシェル54と共にワイヤ100(シートバックフレーム52)に対してシート下側へスライド(相対移動)される。これにより、フロントガイド74のラック84及び連結ギヤ102のピニオン108によって、連結ギヤ102が、ワイヤ100に対して図5の矢印A方向に相対回転されると共に、連結ギヤ102の転がり面106がフロントガイド74のフロントガイド面82上を転がる。つまり、連結ギヤ102がフロントガイド面82に対して転がり運動する。
【0062】
この状態で、例えば、車体フロアからサポートパッド40を介してクッションシェル32に車体の振動等が入力されると、クッションシェル32及びバックシェル54が、シートバックフレーム52に対してシート上下方向にスライドされる。
【0063】
すなわち、この振動等によってバックシェル54がシートバックフレーム52に対してシート上側へ移動されると、上述と同様に、フロントガイド74(ラック84)及びリヤガイド90が、バックシェル54と共にワイヤ100(シートバックフレーム52)に対してシート上側へスライド(相対移動)される。これにより、フロントガイド74のラック84及び連結ギヤ102のピニオン108によって、連結ギヤ102が、ワイヤ100に対して図5の矢印B方向に相対回転されると共に、連結ギヤ102の転がり面106がフロントガイド74のフロントガイド面82上を転がる。
【0064】
ここで、ガイド機構70のワイヤ100はリヤガイド90のリヤガイド面94側に寄って配置されている。これにより、連結ギヤ102の断面を扇形状にすることで、ワイヤ100の半径(支持孔104の半径)に対する連結ギヤ102の半径(転がり面106の半径)の比率を大きく設定できる。このため、バックシェル54がシートバックフレーム52に対してシート上下方向にスライドする際に、連結ギヤ102がワイヤ100の軸心回りに安定して回転されるため、シートバックフレーム52に対するバックシェル54のスライド動作を安定化できる。
【0065】
また、ワイヤ100は、リヤガイド90のビード96に当接されている。このため、リヤガイド90とワイヤ100との間、及びフロントガイド74と連結ギヤ102との間で、ガタが発生することを抑制できる。つまり、バックシェル54におけるシートバックフレーム52に対するシート前後方向(シートバック前後方向)のガタを抑制できる。
【0066】
しかも、フロントガイド74のシート後側にリヤガイド90が配置されて、フロントガイド面82に連結ギヤ102の転がり面106が当接されると共に、リヤガイド面94にワイヤ100が当接されている。このため、バックシェル54が着座乗員の背部を支える際に着座乗員からバックシェル54にシート後側への荷重が作用すると、ガイド部材72(フロントガイド74及びリヤガイド90)が、ワイヤ100及び連結ギヤ102に対してシート後側へ移動しようとするため、この荷重が主としてフロントガイド面82と連結ギヤ102との間に作用する。つまり、この荷重が、主としてフロントガイド面82と転がり面106との間に作用して、連結ギヤ102がフロントガイド面82に対して転がり運動する。したがって、この荷重がワイヤ100とリヤガイド面94との間に作用することが抑制されて、バックシェル54がシートバックフレーム52に対してスライドする際のワイヤ100とリヤガイド90との間の摺動抵抗を低減できる。
【0067】
さらに、上述したように、フロントガイド74にはラック84が形成されており、このラック84に噛合されるピニオン108が、連結ギヤ102に形成されている。このため、バックシェル54がシートバックフレーム52に対してシート上下方向にスライドする際には、連結ギヤ102が、ラック84及びピニオン108によってワイヤ100の軸心回りに確実に回転されて、フロントガイド面82に対して転がり運動する。これにより、シートバックフレーム52に対するバックシェル54のスライド動作を一層安定化できる。
【0068】
特に、バックシェル54にシート前側への荷重が作用する際には、ガイド部材72が、ワイヤ100及び連結ギヤ102に対してシート前側へ移動しようとするため、この荷重が主としてワイヤ100とリヤガイド面94との間に作用する。すなわち、この荷重がフロントガイド面82と転がり面106との間に作用することが抑制されて、連結ギヤ102がワイヤ100に対して相対回転しにくい状態になる。しかしながら、この場合でも、ラック84及びピニオン108によって、連結ギヤ102がワイヤ100の軸心回りに確実に回転されるため、ガイド部材72(フロントガイド74及びリヤガイド90)に対する連結ギヤ102の回転ずれを抑制できる。
【0069】
また、リヤガイド90のビード96は、断面半円状に形成されており、ビード96とワイヤ100とが点接触されている。このため、バックシェル54がシートバックフレーム52に対してスライドする際のリヤガイド90とワイヤ100との間の摺動抵抗を一層低減できる。
【0070】
さらに、連結ギヤ102の周方向両端面には、非干渉凹部110が形成されている。そして、バックシェル54がシート上側へ最も移動された際には、一方の非干渉凹部110内にリヤガイド90が配置されて、リヤガイド90と連結ギヤ102との干渉が回避される。また、バックシェル54がシート下側へ最も移動された際には、他方の非干渉凹部110内にリヤガイド90が配置されて、リヤガイド90と連結ギヤ102との干渉が回避される。これにより、バックシェル54におけるシート上下方向の移動ストロークに対応して連結ギヤ102(転がり面106)の半径を大きく設定できる。
【0071】
また、連結ギヤ102は、扇形柱状に形成されているため、フロントガイド面82とリヤガイド面94との間の距離を長くすることなく、連結ギヤ102の半径を大きくできる。
【0072】
さらに、リヤガイド90には、長手方向両端部において、嵌合孔92が形成されており、嵌合孔92内にフロントガイド74の被嵌合部86が嵌合されている。これにより、フロントガイド74をバックシェル54に固定させた後に、フロントガイド74のシート後方にワイヤ100及び連結ギヤ102を配置させて、リヤガイド90の長手方向両端部をシート上下方向に広げるように弾性変形させつつ、嵌合孔92内に被嵌合部86を嵌合させることで、バックシェル54がシートバックフレーム52に連結される。したがって、バックシェル54をシートバックフレーム52に容易に連結できる。
【0073】
なお、本実施の形態では、ワイヤ100がリヤガイド面94に当接されて、連結ギヤ102がフロントガイド面82に対して転がり運動するように構成されている。これに替えて、ワイヤ100をフロントガイド面82に当接させて、連結ギヤ102がリヤガイド面94に対して転がり運動するように構成してもよい。
【0074】
また、本実施の形態では、フロントガイド74にラック84が形成されており、連結ギヤ102にピニオン108が形成されているが、ラック84及びピニオン108を省略してもよい。
【0075】
さらに、本実施の形態では、リヤガイド90のリヤガイド面94にビード96が形成されているが、ビード96を省略してもよい。
【符号の説明】
【0076】
10 車両用シート
52 シートバックフレーム
54 バックシェル
72 ガイド部材
74 フロントガイド
82 フロントガイド面
84 ラック
90 リヤガイド
92 嵌合孔(嵌合部)
94 リヤガイド面
100 ワイヤ(軸部)
102 連結ギヤ(回転体)
108 ピニオン
110 非干渉凹部(非干渉部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6