(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5728510
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】妊婦由来のDNAを分析する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20150514BHJP
C12Q 1/68 20060101ALI20150514BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
C12N15/00 AZNA
C12Q1/68 Z
G01N33/50 P
【請求項の数】34
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-19380(P2013-19380)
(22)【出願日】2013年2月4日
(62)【分割の表示】特願2010-253675(P2010-253675)の分割
【原出願日】2004年10月15日
(65)【公開番号】特開2013-121359(P2013-121359A)
(43)【公開日】2013年6月20日
【審査請求日】2013年2月12日
(31)【優先権主張番号】03405742.2
(32)【優先日】2003年10月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507290308
【氏名又は名称】シークエノム インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(72)【発明者】
【氏名】ジヌーエ ハーン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ホルツグレーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト ツィンマーマン
(72)【発明者】
【氏名】イン リー
【審査官】
戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】
特表2001−513648(JP,A)
【文献】
国際公開第03/074723(WO,A2)
【文献】
日本産科婦人科学会雑誌,2003年 2月,vol.55, no.2,p.474[P-910]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C12Q 1/68
G01N 33/50
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/
WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
妊婦由来のデオキシリボ核酸(DNA)を分析する方法であって、
次の(a)と(b)の工程、すなわち、
(a)濃縮された胎児DNAを得る工程であって、実質的に細胞の入っていない妊婦の血漿または血清サンプルから300未満の塩基対のDNA分画を分離及び単離し、当該濃縮された胎児DNAは、妊婦の血漿又は血清中における母親のDNAと比べて濃縮されており、且つ、多数の遺伝子座を有している、濃縮された胎児DNAを得る工程、及び、
(b)前記濃縮された胎児DNAを染色体異常の有無について分析する工程によって、前記妊婦由来のDNAを分析する、方法。
【請求項2】
濃縮された胎児DNAが、実質的に細胞の入っていない血漿サンプル由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
濃縮された胎児DNAが、実質的に細胞の入っていない血清サンプル由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
濃縮された胎児DNAを分析する工程が、当該濃縮したDNAを増幅する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記増幅する工程が、ポリメラーゼ連鎖反応の使用を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記増幅する工程が、リガーゼ連鎖反応の使用を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記濃縮されたDNAを分析する工程が、プローブハイブリダイゼーションの使用を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記濃縮されたDNAを分析する工程が、核酸アレーの使用を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記濃縮されたDNAを得る工程が、クロマトグラフィーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記クロマトグラフィーが、高速液体クロマトグラフィーを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記濃縮されたDNAを得る工程が、電気泳動を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記電気泳動が、毛細管電気泳動を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記濃縮された胎児DNAを得る工程が、遠心分離を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記遠心分離が、密度勾配遠心分離を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記濃縮されたDNAを得る工程が、ナノテクノロジー手法を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記染色体異常が異数性である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記染色体異常がダウン症候群を引き起こす、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
妊婦由来のデオキシリボ核酸(DNA)を分析する方法であって、
次の(a)と(b)の工程、すなわち、
(a)濃縮された胎児DNAを得る工程であって、実質的に細胞の入っていない妊婦の血漿または血清サンプルから500未満の塩基対のDNA分画を分離及び単離し、当該濃縮された胎児DNAは、妊婦の血漿又は血清中における母親のDNAと比べて濃縮されており、且つ、多数の遺伝子座を有している、濃縮された胎児DNAを得る工程、及び、
(b)前記濃縮された胎児DNAを染色体異常の有無について分析する工程によって、前記妊婦由来のDNAを分析する、方法。
【請求項19】
濃縮された胎児DNAが、実質的に細胞の入っていない血漿サンプル由来である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
濃縮された胎児DNAが、実質的に細胞の入っていない血清サンプル由来である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
濃縮された胎児DNAを分析する工程が、当該濃縮したDNAを増幅する工程を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記増幅する工程が、ポリメラーゼ連鎖反応の使用を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記増幅する工程が、リガーゼ連鎖反応の使用を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記濃縮されたDNAを分析する工程が、プローブハイブリダイゼーションの使用を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記濃縮されたDNAを分析する工程が、核酸アレーの使用を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記濃縮されたDNAを得る工程が、クロマトグラフィーを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記クロマトグラフィーが、高速液体クロマトグラフィーを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記濃縮されたDNAを得る工程が、電気泳動を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
前記電気泳動が、毛細管電気泳動を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記濃縮された胎児DNAを得る工程が、遠心分離を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項31】
前記遠心分離が、密度勾配遠心分離を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記濃縮されたDNAを得る工程が、ナノテクノロジー手法を含んでいる、請求項18に記載の方法。
【請求項33】
前記染色体異常が異数性である、請求項18に記載の方法。
【請求項34】
前記染色体異常がダウン症候群を引き起こす、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は
、妊婦由来のデオキシリボ核酸(DNA)を分析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
末梢血流中に循環細胞外DNAが存在することは十分に確認された現象である。本明細書では、妊婦の場合、細胞外胎児DNAが母親の循環系中に存在し、母親の血漿または血清で検出できることを示した。この循環系中の胎児遺伝物質を用いて、母親のゲノムには全く存在しない胎児遺伝子座の非常に信頼性の高い決定を、例えばPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)技術によって実施することができることが実験によって示された。そのような胎児遺伝子座の例は、HDN(胎児および新生児の溶血性疾患)の危険性が高い妊娠における胎児RhD遺伝子、またはX染色体連鎖疾患(例えば血友病または脆弱X染色体症候群)の危険性が高い妊娠における胎児Y染色体特異的配列である。
【0003】
しかしながら、より複雑な他の胎児遺伝子座(例えば異数性のような染色体異常、またはダウン症候群関連染色体異常、または遺伝性メンデル型遺伝疾患およびそれぞれ前記に附随する遺伝子マーカー、例えば単一遺伝子異常、例えば嚢胞性線維症または異常ヘモグロビン症)はより問題が多い。前記問題は、母系循環中細胞外DNAの大部分(一般的には>90%)が母親由来であることによる。この膨大な母親由来の循環中細胞外DNAは、胎児の遺伝子異常、例えば染色体異常(例えば異数性)または遺伝性メンデル型遺伝疾患(例えば嚢胞性線維症または異常ヘモグロビン症)に中心的に関与するような異常を少量の循環中細胞外胎児DNAから決定することを(不可能でないとしても)困難にしている。
【0004】
母親の血液中の循環中細胞外胎児DNAおよび循環中細胞外母系DNAの検査によって、驚くべきことに循環中細胞外胎児DNAの大半は約500塩基対またはそれ未満の比較的小さなサイズを有し、一方、循環中細胞外母系DNAの大半は約500塩基対よりも大きいサイズをもつことが示された。実際のところ、ある種の事例では、約500塩基対より小さい循環DNA物質はほぼ完全に胎児性のようである。したがって、母親の循環系の循環細胞外胎児DNAは、循環中細胞外母系DNA(約500塩基対より大きい)よりサイズが小さいことが判明した(約500塩基対またはそれ未満)。
【0005】
この驚くべき発見は本発明の基礎を構成し、前記にしたがって、約500塩基対より小さい循環系細胞DNAフラグメントを分離することにより、膨大な循環系細胞外母系DNAから胎児DNAを濃縮することが可能である。
【0006】
この選択的濃縮(約500塩基対またはそれ未満の循環DNAフラグメントのサイズによる識別を基にしている)によって、大半が胎児の細胞外DNAで構成された分画がもたらされる。これによって、胎児の遺伝形質(染色体異常(例えば異数性またはダウン症候群に附随する染色体異常)に中心的に関与するものを含む)、または遺伝性メンデル型遺伝疾患およびそれぞれ前記に附随する遺伝子マーカー(例えば単一遺伝子異常、例えば嚢胞性線維症または異常ヘモグロビン症)の分析が可能になる(前記を決定することは、不可能ではないとしても、これまでのところ上記で述べたように困難であることが確認されていた)。したがって、母親の循環中の細胞外胎児DNAのサイズによる分離は、父系検査が可能な父系遺伝による多形性現象を含む胎児の遺伝形質の非侵襲的検出を促進する。
【0007】
500未満の塩基対をもつ細胞外胎児DNAがPCRによって濃縮された妊婦の血漿サンプルのゲル電気泳動による分離、および男子の胎児DNA(胎児Y染色体特異的配列)の検出が非特許文献1や非特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Clinical Chemistry、1999、45(9)巻、1570〜1572頁
【非特許文献2】The Australian & New Zealand Journal of Obsterics & Gynaecology、2003(Feb)、43(1)巻、10〜15頁
【発明の概要】
【0009】
本発明は以下を提供する:
−
妊婦由来のデオキシリボ核酸(DNA)を分析する方法であって、次の(a)と(b)の工程、すなわち、
(a)濃縮された胎児DNAを得る工程であって、実質的に細胞の入っていない妊婦の血漿または血清サンプルから300未満の塩基対のDNA分画を分離及び単離し、当該濃縮された胎児DNAは、妊婦の血漿又は血清中における母親のDNAと比べて濃縮されており、且つ、多数の遺伝子座を有している、濃縮された胎児DNAを得る工程、及び、
(b)前記濃縮された胎児DNAを染色体異常の有無について分析する工程によって、前記妊婦由来のDNAを分析する、方法;および
−
妊婦由来のデオキシリボ核酸(DNA)を分析する方法であって、次の(a)と(b)の工程、すなわち、
(a)濃縮された胎児DNAを得る工程であって、実質的に細胞の入っていない妊婦の血漿または血清サンプルから500未満の塩基対のDNA分画を分離及び単離し、当該濃縮された胎児DNAは、妊婦の血漿又は血清中における母親のDNAと比べて濃縮されており、且つ、多数の遺伝子座を有している、濃縮された胎児DNAを得る工程、及び、
(b)前記濃縮された胎児DNAを染色体異常の有無について分析する工程によって、前記妊婦由来のDNAを分析する、方法。
【0010】
前記血清または血漿サンプル
は実質的に細胞を含まず、それは公知の方法、例えば遠心分離または無菌的ろ過によって達成することができる。
【0011】
前記血清または血漿サンプルの細胞外DNAのサイズ分離は、以下を含む(ただしこれらに限定されない)多様な方法によって実施することができる:
−クロマトグラフィーまたは電気泳動、例えばアガロースもしくはポリアクリルアミドでのクロマトグラフィー、イオンペア逆相高速クロマトグラフィー(IP RP HPLC)、(K.H. Hecker, S.M. Green, K. Kobayashi、J. Biochem. Biophys. Methods 2000(Nov. 20)、46(1-2):83〜93参照)、セルフコーティング低粘性ポリマーマトリックスでの毛細管電気泳動(M. Du, J.H. Flanagan Jr, B, Lin, Y. Ma、Electrophoresis 2003(Sep)、24(18):3147〜53参照)、超小型化電気泳動装置での選択的抽出(R. Lin, D.T. Burke, MA. Burn, J. Chromatogr. A.、2003(Aug 29)、1020(2):255〜68参照)、粘性低下ポリマーマトリックスによるマイクロチップ電気泳動(F. Xu, M. Jabasini, S. Liu, Y. Baba、Analyst.、2003(Jun)、128(6):589〜92参照)、吸着膜クロマトグラフィー(MA. Teeters, S.E. Conrardy, B.L. Thomas, T.W. Root, EN. Lightfoot, J. Chromatogr. A.、2003(Mar 7)、989(1):165〜73参照)など;
−密度勾配遠心分離(L. Raptis, HA. Menard, J. Clin、Invest.、1980(Dec)、66(6):1391〜9参照);および
−ナノテクノロジーを用いる方法、例えば超小型エントロピートラップアレー(J. Han, HG. Craighead、Analytical Chemistry、74巻、No.2、2002(Jan 15)参照)など。
【0012】
このようにして得たサンプル分画は、既に通常の態様で容易に検出できる胎児遺伝形質(例えば、HDN(胎児および新生児の溶血性疾患)の危険性が高い妊娠における胎児RhD遺伝子、またはX染色体連鎖疾患(例えば血友病または脆弱X染色体症候群)の危険性が高い妊娠における胎児Y染色体特異的配列など)のその後の決定を可能にするだけでなく、下記を含む(ただしこれらに限定されない)より複雑な他の胎児遺伝子座の決定もまた可能にする:
−染色体異常(例えば異数性またはダウン症候群)、または遺伝性メンデル型遺伝疾患およびそれぞれ前記に附随する遺伝子マーカー(例えば単一遺伝子異常、例えば嚢胞性線維症または異常ヘモグロビン症);および
−父系が決定されたとき決定的となる胎児遺伝形質。
【0013】
胎児遺伝形質の前記のような決定は、例えばPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)技術、リガーゼ連鎖反応、プローブハイブリダイゼーション技術、核酸アレー(いわゆる“DNAチップ”)などの方法によって実施することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の実施例は本発明をさらに例証するが、本発明の範囲をいかなる態様によっても制限するものと解してはならない。
例1:アガロースゲル電気泳動によるサイズ分画後の母親の血漿におけるリアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による男子胎児DNAの検出
材料と方法
対象者およびサンプルの処理:
男子胎児をもつ第三期トリメスターの妊婦7人を本実験のために募集した。16から18mLの血液サンプルをEDTAチューブに採集した。1600gで10分の遠心および1600gで10分の第二回目の遠心後に6から9mLの血漿を得た。
【0015】
DNAの単離:
キアゲンマキシ(QIAgen Maxi)キットを用い製造元のプロトコルにしたがって、5から7mLの血漿からDNAを抽出した。DNAは1.5mLの容積に溶出させた。
【0016】
DNA沈澱:
1.血漿DNAに以下を添加した:1/10容積のNaAc(3M、pH5.2)、2容積の無水エタノール、MgCl
2(最終濃度0.01M)およびグリコゲン(最終濃度50μg/mL)。前記溶液をボルテックスミキサーで完全に溶解させた。
2.前記溶液を-70℃で一晩保存した。
3.前記DNAを20000gで30分、4℃で遠心分離によって回収した。
4.上清を注意深く取り除き、ペレットを500μLの70%エタノールで洗浄した。
5.前記ペレットを風乾し、35μLの蒸留水に溶解した。
【0017】
DNA分離:
1.DNA電気泳動のために1%のアガロースゲル(Invitrogen, カタログ番号:15510-027)を調製した。
2.前記ゲルに28μLのDNA溶液をロードした。
3.80ボルトで1時間ゲルを電気泳動した。
4.DNAサイズマーカー(New England Biolabs, 100bpラダーおよびラムダのHindIII消化物)にしたがって、特定のDNAサイズに対応する小片を切り出した。前記特定のゲルフラグメントに含まれるDNAサイズは以下のとおりであった:90から300塩基(ベース)、300から500ベース、500から1000ベース、1.0から1.5キロベース(“kb”)、1.5から23kbおよび>23kb。
5.キアエクス(QIAEX)IIゲル抽出キット(Qiagen、カタログ番号:20021)を用いて前記DNAをアガロースゲル片から精製し、35μLのトリス塩酸(pH8.0、10mM)に溶出させた。
【0018】
リアルタイムPCR:
Y染色体由来配列(SRY)および染色体由来配列(GAPDH遺伝子)をアプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems, ABI)7000配列検出系を用いリアルタイムの定量的PCRにより増幅し、サイズ分離分画における胎児DNAおよび全DNAの量を定量した。SRYのためのタックマン(TaqMan)系は以下から成っていた:増幅プライマー、SRY_Fwd:TCC TCA AAA GAA ACC GTG CATおよびSRY_Rev:AGA TTA ATG GTT GCT AAG GAC TGG AT、並びにFAM標識TaqMan MGB(小溝結合物質、Minor Groove Binder)プローブSRY_MGB:TCC CCA CAA CCT CTT。GAPDH遺伝子のためのTaqMan系は以下のプライマーおよびプローブから成っていた:GAPDH_Fwd:CCC CAC ACA CAT GCA CTT ACC、GAPDH_Rev:CCT AGT CCC AGG GCT TTG ATTおよびGAPDH_MGB:TAG GAA GGA CAG GCA AC。
【0019】
TaqMan増幅反応は総反応容積25μLで設定し、以下を含んでいた:1倍濃度のユニバーサルPCR反応ミックス(ABI)中の6μLのサンプルDNA溶液、300nMの各プライマー(HPLC精製、Mycrosynth, Switzerland)および200nMの各プローブ(ABI)。各サンプルは2つの増幅系の各々についてデュープリケートで分析した。既知量のゲノムDNAを含む標準曲線を各分析で平行して泳動させた。
【0020】
温度サイクルは以下のプロトコルにしたがって実施した:アンプイレーズ(Amp Erase)活性を可能にするために50℃で2分の最初のインキュベーション;アンプリタックゴールド(AmpliTaq Gold)の活性化のために95℃で10分;さらに60℃1分および95℃15秒を40サイクル。
【0021】
前記7000配列検出系によって採集された増幅データは、配列検出ソフトによって計算した標準曲線の勾配、およびコピー数計算のためのリファレンスサンプルとしてサンプル反応物と同様なDNAコピー数をもつ希釈曲線で使用した標準DNA溶液の結果を用いて定量した。
【0022】
結果
表1は、調べた5件の妊娠で、胎児に由来するDNAフラグメントはほぼ完全に500塩基対よりも小さいサイズであり、300塩基よりも小さいサイズについては約70%が胎児由来であったことを示している。
【0023】
これらの結果は、母親の循環系で循環している胎児由来の遊離DNAは母親の血液中の全遊離DNAのサイズ分離によって特異的に濃縮できることを示している。末端の適用に応じて、胎児DNAの濃縮のために選択されるDNAサイズは300塩基以下または500塩基以下であろう。
【0025】
上記の表の最初の欄に出現する“kb”という略語は1000塩基対を表し、表の第二および第三の欄に示されている数字はパーセンテージの平均値で、括弧内の数字はその範囲を示している。
【0026】
例2:マイクロサテライトマーカー(“短いタンデムリピート”(STR)とも称される)のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるアガロースゲル電気泳動後の胎児DNAの検出
材料と方法
対象者およびサンプルの処理:
妊婦由来の18mLの血液サンプルおよびその配偶者由来の9mLの血液をEDTAチューブに採集し、例1で述べたように遠心分離によって血漿を分離した。母親のバッフィーコート(すなわち、1600gで10分の第一回遠心後に得られた細胞ペレットの白色上部層)をPBSで2回洗浄した。
【0027】
DNAの単離:
血漿由来DNAをハイピュア(High Pure )DNA鋳型キット(Roche)の改良物を用いて抽出し、真空を用いて200μL用に通常使用されるフィルターに前記全サンプルを通した。50μLの溶出緩衝液中に前記DNAを溶出させた。
【0028】
父系DNAは、ハイピュアDNA鋳型キットを用いて400μLの父親由来の全血から抽出し、100μLに溶出させた。母系DNAは、ハイピュアDNA鋳型キットを用いてバッフィーコートから単離し、100μLに溶出させた。
【0029】
DNA分離:
DNAはアガロースゲルで電気泳動によってサイズ分離した。
【0030】
短いタンデムリピートに特異的なPCR:
500塩基よりも小さいサイズの分画から、21番染色体上の4ヌクレオチドリピート由来配列を文献(Li et al.、Clinical Chemistry、49(4):2003)に記載されたように多重PCR反応で増幅させた。血漿DNAの濃度が低いので、母親の血漿中の胎児DNAはセミネストPCRプロトコルを用いて調べた。
【0031】
母系および父系ペアの遺伝子型は全ゲノムDNAを用いて実施し、21番染色体上のマイクロサテライトマーカーをモニターした。
用いたSTRマーカーは以下のとおりであった:
D211S11;
D21S1270;
D21S1432;および
D21S1435
【0032】
得られたDNAフラグメントをシークェンサーによる毛細管電気泳動によってサイズ分離し、特異的マーカーに対する各対立遺伝子を表すピーク領域をソフトウェアによって測定した。
【0034】
サイズ分離分画でのみ(<300bpおよび300−500bp)D21S11の胎児対立遺伝子(すなわち父親から遺伝した228bp対立遺伝子および母親から遺伝した232bp対立遺伝子、すなわち各親から1つの対立遺伝子)が検出可能であった。
【0035】
考察
STRフラグメントの分析によって、母親のリピート配列とは長さが異なる父親の対立遺伝子の検出が可能になり、さらにピーク領域間の比率を計算することによって、正常な胎児の核型と一致しないパターンを特定することが可能になる。母親の循環系に存在するSTRの父親由来の対立遺伝子のサイズを特定することによってある種の染色体異常を非侵襲的に検出することが可能になる。さらにまた父系検査を非侵襲的態様で出生前に実施することができる。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]