【実施例】
【0039】
本発明の吸着材の製造に使用する活性炭の中心細孔半径、吸着材のn−ブタン吸脱着率及びDBL、n−ブタン容量濃度2000ppmにおける平衡濃度、水銀ポロシーによる細孔容積の測定は次によった。
【0040】
活性炭の中心細孔半径:水蒸気吸着法による細孔分布曲線から求めた。活性炭の細孔は、硫酸水溶液の硫酸濃度に固有の1気圧(絶対圧)、30℃での飽和水蒸気圧の値(P)から下記式(I)で表されるKelvinの式に基づいて求められる細孔半径(r)以下の細孔半径を有する。すなわち、Kelvinの式に基づいて求められる細孔半径以下の細孔の累積細孔容積が、その測定試験での飽和吸着量に相当する30℃の水の体積となる。
【0041】
r=−[2Vmγcosφ]/[RTln(P/P
0)] (I)
r:細孔半径(cm)
Vm:水の分子容(cm
3/mol)=18.079(30℃)
φ:毛細管壁と水との接触角(°)=55°
R=ガス定数(erg/deg・mol)=8.3143×10
7
T:絶対温度(K)=303.15
P:細孔内の水の示す飽和蒸気圧(mmHg)
P
0:水の1気圧(絶対圧)、30℃における飽和蒸気圧(mmHg)=31.824
【0042】
硫酸濃度を変化させた13種類の硫酸水溶液(すなわち、1.05〜1.30までの0.025間隔の比重を有する11種類の硫酸水溶液、1.35の比重を有する硫酸水溶液及び1.40の比重を有する硫酸水溶液)について飽和吸着量の測定試験を行い、各測定試験において、対応する細孔半径以下の細孔の累積細孔容積を求める。このようにして求めた累積細孔容積を細孔半径に対してプロットすることにより、活性炭の細孔分布曲線を得ることができる。この細孔分布曲線において最高ピーク値を示す半径を中心細孔半径とする。
【0043】
吸着材のn−ブタン脱着率(%)及びn−ブタン有効吸着量(BWC):
1)JIS K1474に準拠して造粒炭の充填密度を測定する。
2)内径17.5mmのガラスカラムに1)で測定した充填密度に基づき24ミリリットル(mL)の試料を充填し秤量した後(Ag)、25℃の恒温槽へセットする。
3)n−ブタン(純度99.9%以上)をアップフローでガラスカラムに300mL/分の流量で20分以上通気させた後、ガラスカラムを取り外し秤量する(Cg)。
4)ガラスカラムを再度装置にセットし、ダウンフローで乾燥空気をガラスカラムに240mL/分の流量で20分間通気した後、ガラスカラムを取り外し秤量する(Dg)。
5)上記操作を行い、次の式によりn−ブタン脱着率及び造粒炭1dL当りの脱離量をブタン有効吸着量(BWC)とする。n−ブタン脱着率=(Cg−Dg)/(Cg−Ag)×100(%)、BWC(g/dL)=(Cg−Dg)/0.24
【0044】
DBL:
<前処理>
1)
図1のごとき有効容積2900mL(第1層2200mL+第2層700mL)、高さ/相当直径(第1層2.7、第2層3)のキャニスタ試験機1に、第1層用活性炭2としてクラレケミカル株式会社製の活性炭クラレコール3GX及び第2層用活性炭3として本発明の吸着材を充填し蓋をする。さらに、
図2に示すような内径29mmφ長さ180mmの第2キャニスタ試験機9を直列に接続する場合は、第1層用活性炭としてクラレケミカル株式会社製の活性炭クラレコール3GX及び第2層用活性炭としてクラレケミカル株式会社製の活性炭2GK−C7を充填し、本発明の吸着材を第2キャニスタ試験機に充填する。なお、相当直径とは、断面形状が円形でない場合、円に換算したときの直径であり、吸着容量は3GX>2GK−C7である。
図1において、4は隔壁、5及び6は分散板である。また、
図2において、10は吸着材、11は分散板である。
2)雰囲気温度25℃でキャニスタ試験機の蒸散燃料ガス入口7に模擬ガソリン蒸気(ブタン:ペンタン:ヘキサン=25:50:25容量比)1.5g/分と空気500mL/分を通気し、キャニスタ試験機の蒸散燃料ガス出口8から排出されるガスの濃度を炭化水素計で測定する。キャニスタ試験機の出口濃度が10000ppm(破過)に達した後通気を停止し、キャニスタ試験機容量の400倍量の空気を出口8から吸着とは逆方向に導入しパージする。
3)上記2)の操作を10サイクル実施し、25℃で1晩(16〜20時間)放置する。
4)雰囲気温度25℃で、キャニスタに空気で希釈した50容量%n−ブタンを40g/時間で通気し、キャニスタ出口濃度を炭化水素計で測定する。出口濃度が10000ppm(破過)に達した後通気を停止し、キャニスタ試験機容量の150倍量の空気を出口8から逆方向に導入しパージする。
【0045】
<DBLの測定>
1)雰囲気温度を30℃に設定し、1晩(16〜20時間)放置後、簡易DBLテストを実施する。
2)キャニスタ試験機に模擬ガソリン蒸気供給源を接続し、キャニスタ試験機出口と
図3に示すようなリーク測定用のテドラーバッグ12を配管またはホースで接続する。テドラーバッグとは、ガスの吸着、浸透などを生じないガス捕集袋であり、DuPont社の商品名である。
3)キャニスタ試験機に、模擬ガソリン蒸気0.19g/分と空気63mL/分を通気し、雰囲気温度を35℃×1.5時間、35℃×0.5時間+40℃×1時間、40℃×1時間でリーク量を測定する(1日目)。
4)雰囲気温度を30℃に設定し、2時間放置後、空気を100mL/分の流量で2時間パージした後17時間放置する。
5)キャニスタ試験機に、模擬ガソリン蒸気0.143g/分と空気47.3mL/分を通気し、雰囲気温度を35℃×2時間、40℃×2時間でリーク量を測定する(2日目)。
6)ガス濃度をガスクロマトグラフ、体積をガスメータより求め、リーク量をテドラーバッグ内気体の(濃度)×(体積)より求める。以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、配合割合は全て重量部である。
【0046】
n−ブタン容量濃度2000ppmにおける平衡吸着量
1)JIS K1474に準拠して吸着材の充填密度を測定する。
2)内径17.5mmのガラスカラムに1)で測定した充填密度に基づき24ミリリットル(mL)の試料を充填し秤量した後(Ag)、25℃の恒温槽へセットする。
3)n−ブタン(2000ppm)をアップフローでガラスカラムに300mL/分の流量で20分以上通気させた後、ガラスカラムを取り外し秤量する(C1g)。
4)ガラスカラムを再度装置にセットし、再度3の操作を行い、秤量する(C2g)。
5)重量増加がなくなる最終重量(Cng)まで4の操作を行い、次の式によりn−ブタン容量濃度2000ppmにおける平衡吸着量を計算する。n−ブタン容量濃度2000ppmにおける平衡吸着量=(Cng−A)/0.24
【0047】
水銀ポロシーによる細孔容積の測定
株式会社島津製作所製細孔分布測定装置オートポア9510により測定した。
【0048】
実施例1〜12、比較例1〜6
クラレケミカル株式会社製クラレコール3GXをロータリーキルンに入れ920〜950℃で水蒸気賦活し、賦活時間を変えることで中心細孔半径3.3、4.2、4.8、5.0nmの4種類の活性炭を得た。そのうち4.8nmのものはBWC法におけるn−ブタン吸着量50%、脱着率77%、BWC11.9g/dLであった。
【0049】
これらの活性炭を粉砕機で粒度0.1mm以下に粉砕した粉末活性炭(A)に、骨材(B)として和光純薬工業株式会社製酸化アルミニウム又は和光純薬工業株式会社製グラファイト粉末(100μmアンダー)又は和光純薬工業株式会社製珪酸、酸に可溶な無機化合物(C)として株式会社カルファイン製炭酸カルシウム寒水石KD−100、バインダー(D)として日本カーバイド工業株式会社製アクリルエマルジョンニカゾールFX−6074又は株式会社クラレ製ポリウレタンエマルジョンKMN−N0c、滑り材(E)として株式会社ホージュン製ベントナイト(商品名「ベンゲル」)、又はカルボキシメチルセルロース(以下CMCとする)を混合し、さらに水(F)を添加して十分に混練した後、油圧式造粒機により押し出し造粒を行った。造粒炭サイズはダイス孔径を変えることにより任意に調節できるが、ここでは直径2.5mmとした。
【0050】
造粒品を120℃の乾燥機で16時間乾燥後、1.5〜10mmの長さに整粒し、250ml計り取り1規定濃度の塩酸5Lに16時間浸漬した。その後水を切り、5Lの水で攪拌しながら洗浄した後水を切って、再度水洗を行う作業を10回行った後、120で乾燥した後、目開き3.35mmと2.00mmの篩いで整粒し、目開き2.00mmの篩いに残った物をサンプルとした。
【0051】
水銀ポロシーで測定した時の平均細孔直径3000〜100000nmの積算細孔容積が6.5mL以上でn−ブタン容量濃度2000ppmにおける平衡吸着量が0.16g/dl未満の場合を比較例1及び比較例4、水銀ポロシーで測定した時の平均細孔直径3000〜100000nmの積算細孔容積が6.5mL未満でn−ブタン容量濃度2000ppmにおける平衡吸着量が0.16g/dl以上の場合を比較例2及び比較例5、酸水洗を行わないで酸に可溶な無機化合物(C)をそのまま残した場合を比較例3及び比較例6とした。
【0052】
有効容量2900mL(第1層2200mL+第2層700mL)、高さ/相当直径(第1層2.7、第2層3)のキャニスタに、第1層用活性炭としてクラレケミカル株式会社製の活性炭クラレコール3GX及び第2層用活性炭として本発明の造粒炭を充填して、DBL性能を測定し表1の実施例1〜5、比較例1〜3に示した。
【0053】
有効容量2900mL(第1層2200mL+第2層700mL)、高さ/相当直径(第1層2.7、第2層3)のキャニスタに、第1層用活性炭としてクラレケミカル株式会社製の活性炭クラレコール3GX及び第2層用活性炭としてクラレケミカル株式会社製の活性炭クラレコール2GK−C7、第3層として内径29mmφ長さ180mmのガラスカラムに本発明の造粒炭を充填してJIS18メッシュの金網を丸めてスペース調整及び分散板とし、両側に外径8mmφのガラス管を取り付けたゴム栓を装着してキャニスタと接続し、DBL性能を測定し表1の実施例6〜12、比較例4〜6に示した。
【0054】
【表1】
【0055】
自動車に搭載するためのキャニスタは前記したキャニスタ試験機と実質的に同じものであり、
図4に直方体形状(160mm×110mm×260mm)の斜視概略図の一例を示す。13はキャニスタ実機、14は蒸散燃料ガス吸入ポート、15は大気ポート、16はパージポートである。17は第1層と第2層とを区画するための隔壁である。
図4はキャニスタ1基の例であるが、第2キャニスタとをホースなどで接続した形態で実施されることもある(図示省略)。