特許第5728549号(P5728549)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5728549
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】電源ケーブルコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 24/38 20110101AFI20150514BHJP
   H01R 13/52 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   H01R24/38
   H01R13/52 301E
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-210104(P2013-210104)
(22)【出願日】2013年10月7日
(65)【公開番号】特開2015-76163(P2015-76163A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2013年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000145183
【氏名又は名称】株式会社七星科学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(74)【代理人】
【識別番号】100123696
【弁理士】
【氏名又は名称】稲田 弘明
(74)【代理人】
【識別番号】100105212
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 延寿
(72)【発明者】
【氏名】市川 竜介
【審査官】 楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−088671(JP,U)
【文献】 特開平10−022001(JP,A)
【文献】 特開平03−156865(JP,A)
【文献】 実開昭61−161887(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 24/38
H01R 13/52
H01R 13/6592
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心導体、絶縁層、遮蔽編組及びシースが積層された電源ケーブル用のコネクタであって、
前記中心導体に接続されるコンタクトと、
該コンタクトを収容する内孔を有する筒状のインシュレータと、
前記シースを掴むシース掴み部と、
導電体からなり、各部を収納するケースと、
相手方のコネクタとの連結手段と、
を備え、
さらに、
弾性を有する絶縁体からなり、前記ケーブル絶縁層の外周に嵌合するとともに、それ自身の外周に前記遮蔽編組の素線が配置されるケーブルブッシングと、
該ブッシングの外周に配置された前記遮蔽編組の素線を押さえるとともに、前記ケースと導通する素線導通金具と、
を備え
前記シース掴み部と前記素線導通金具を兼ねる部材を有し、該部材がケーブル軸方向へ送られるか、又は、押圧されることにより、前記遮蔽編組の素線の押さえ及び前記シースの押さえが行われることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記ケーブルブッシングが、中央が径大で両端が径小の両テーパ外周面を有する樽状の形状をしており、
一方のテーパ外周面に前記遮蔽編組の素線が配置され、
他方のテーパ外周面が、前記インシュレータの内孔端部をシールするものであり、
前記素線導通金具が、前記一方のテーパ面の外周に嵌合するテーパ内周面を有し、
該テーパ内周面で前記ケーブルブッシングを前記インシュレータの内孔内に押し付けることにより、前記素線の押さえと前記内孔端部のシールを行うことを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記シース掴み部が、前記素線導通金具の一部に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のコネクタ。
【請求項4】
(現請求項4、用語統一)
前記シース掴み部と前記素線導通金具を兼ねる部材としてのコレットスリーブを備え、
該コレットスリーブが、
前記ケーブルシースの外周を掴む、すり割りが入った縮径可能なコレット部と、
シース掴み部に接続された、前記テーパ内周面を有するスリーブ部と、
を有し、
さらに、前記コレットスリーブをケーブル軸方向に押すとともに、前記コレット部を外側から圧迫して内側に押すクランプ金具を備えることを特徴とする請求項2又は3記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮蔽編組(シールド)を有する電源ケーブル用のコネクタに関する。特には、遮蔽編組と外ケースとの導通を確実に取れるように改良を加えたコネクタに関する。また、コンタクトの周りの空間(コンタクト周辺空間)と外部空間との間の短絡の耐力を向上させたコネクタに関する。さらに、簡単な動作で、シース押さえ・遮蔽編組の素線固定・コンタクト周辺空間のシールを行えるように改良を加えたコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧(例えば1kV以上)のケーブルでは、そのシース(保護外皮)も、人体などに害のある程度に帯電するおそれがあるので、シースを接地させるための遮蔽編組(シールド、金属細線の網など)を設けるのが一般的である(下記特許文献参照)。このような高圧ケーブルを電気消費機器に接続させるコネクタ(電源側をプラグ、機器側をレセプタクル又はアダプタという)では、プラグからレセプタクル又はアダプタを通じて機器に遮蔽編組の導通を確保しておく必要がある。高圧電源の供給を受ける機器は、必ずアースを取ってあるので、ケーブルの遮蔽編組にもアースが取れる。
【特許文献1】特開平8−78098
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、遮蔽編組と外ケースとの導通を確実に取れるように改良を加えたコネクタを提供することを目的とする。また、コンタクトの周りの空間(コンタクト周辺空間)と外部空間との間の短絡の防止性能を向上させたコネクタを提供することを目的とする。さらに、簡単な動作で、シース押さえ・遮蔽編組の素線固定・コンタクト周辺空間のシールを行えるように改良を加えたコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するための、本発明のベースとなるコネクタは、 中心導体、絶縁層、遮蔽編組及びシースが積層された電源ケーブル用のコネクタであって、 前記中心導体に接続されるコンタクトと、 該コンタクトを収容する内孔を有する筒状のインシュレータと、 前記シースを掴むシース掴み部と、 導電体からなり、各部を収納するケースと、 相手方のコネクタとの連結手段と、 を備え、 さらに、 弾性を有する絶縁体からなり、前記ケーブル絶縁層の外周に嵌合するとともに、それ自身の外周に前記遮蔽編組の素線が配置されるケーブルブッシングと、 該ブッシングの外周に配置された前記素線を押さえるとともに、前記ケースと導通する素線導通金具と、 を備えることを特徴とする。
【0005】
本発明のコネクタでは、弾性を有するケーブルブッシングの外周に素線を配置し(ほぐした遮蔽編組をあたかもブッシング外周面に被せるあるいは沿わせるような形にするなど)、その素線の外側を、ケースと導通する素線導通金具(実施形態ではコレットスリーブ71)で素線を押さえるので、しっかりと、ケーブルの遮蔽編組からコネクタケースへの導通を取ることができる。なお、コネクタケースは、相手方のコネクタとの連結手段(カップリングなど)を通じて機器側と導通する。高圧電源の供給を受ける機器は、必ずアースを取ってあるので、ケーブルの遮蔽編組にもアースが取れる。
【0006】
コンタクトは、オス−メス嵌合のもの(ピン−ソケット)などを用いることができ、コンタクトはオス側もメス側も含む意味である。「コンタクトを収容する内孔を有するインシュレータ」は、オス側・メス側両方のコンタクトの外側の絶縁を司るものを広く呼称するものである。なお、コネクタは、上述の「プラグ−レセプタクル」以外に、ケーブル同士を接続する場合の「プラグ−アダプタ」、「プラグ−フランジアダプタ」などを広く含む。「コネクタ」は、一対のコネクタ(例えばプラグとレセプタクル又はプラグとアダプタ)の組の意味でも、組の中の一方(例えばプラグ又はレセプタクル又はアダプタ)を呼ぶ意味でも用いられる。
【0007】
上記コネクタにおいては、前記ケーブルブッシングが、中央が径大で両端が径小の両テーパ外周面を有する樽状の形状をしており、 一方のテーパ外周面に前記遮蔽編組の素線が配置され、 他方のテーパ外周面が、前記インシュレータの内孔端部をシールするものであり、 前記素線導通金具が、前記一方のテーパ面の外周に嵌合するテーパ内周面を有し、 該テーパ内周面で前記ケーブルブッシングを前記インシュレータの内孔内に押し付けることにより、前記素線の押さえと前記内孔端部のシールを行うことが好ましい。
【0008】
「テーパ面」には、円弧状に湾曲した面も含まれる。「一方のテーパ外周面に前記遮蔽編組の素線が配置され」といっても、「他方のテーパ面」のシール作用を害しない範囲で、素線の先が少し他方のテーパ外周面にはみ出してもよい。
【0009】
「シール」とは、次の二つの意味を含む。すなわち、一つ目は、インシュレータ内孔内に、外からゴミ・ホコリなどが入り込まないようにシールするという意味である。二つ目は、インシュレータ内孔空間と外部空間との間を絶縁材で仕切ることにより、空気を介した短絡、あるいは沿面放電を防止するという意味である。なお、本発明者らは、耐短絡電圧の向上の定量的効果を確認したが、その結果については後述する。
【0010】
素線導通金具(実施形態・図ではコレットスリーブ71)は、ケーブル軸方向へ送られる、あるいは、押圧されるなどされ、これにより、同金具のテーパ内周面がケーブルブッシングのテーパ外周面にかぶさるように押圧して、素線がしっかりと金具内周面と接触する。また、この押圧力により、ケーブルブッシング全体が軸方向に押されて、その他方のテーパ外周面の少なくとも端部が、インシュレータの内孔内に押し込まれる。これにより、一つのケーブルブッシングという部材への送り・押圧操作により、素線押さえとインシュレータ内孔シールの二つが行える。
【0011】
上記コネクタにおいては、前記シース掴み部が、前記素線導通金具の一部に形成されており、 該素線導通金具がケーブル軸方向へ送られるか、又は、押圧されることにより、ケーブルシースの押さえが行われることが好ましい。
【0012】
この場合、一つの部材である素線導通金具(実施形態ではコレットスリーブ71)の送り又は押圧により、上述の「素線押さえ」及び「インシュレータ内孔シール」の二つに加えて、ケーブルシースの押さえ動作(合計三動作)を行える。
【0013】
上記コネクタにおいては、 前記シース掴み部を兼ねる前記素線導通金具としてのコレットスリーブを備え、 該コレットスリーブが、 前記ケーブルシースの外周を掴む、すり割りが入った縮径可能なコレット部と、 該シース掴み部に接続された、前記テーパ内周面を有するスリーブ部と、を有し、 さらに、前記コレットスリーブをケーブル軸方向に押すとともに、前記コレット部を外側から圧迫して内側に押すクランプ金具を備えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、弾性を有するケーブルブッシングの外周に素線を配置して、その素線の外側を、ケースと導通する素線導通金具で押さえるので、しっかりと、ケーブルの遮蔽編組からコネクタケースへの導通を取ることができる。ケーブルブッシングをインシュレータ内孔内のシールにも用いれば、ゴミ・ホコリなどがコンタクトに付くことによるトラブル防止や、インシュレータ内孔空間と外部空間との間を絶縁材で仕切ることによる短絡防止性能向上を期待できる。一つの部材であるコレットスリーブの送り又は押圧により、「素線押さえ」や「インシュレータ内孔シール」、さらに「ケーブルシースの押さえ動作」も行えば、一つの操作で様々な動作をする扱いの簡単なコネクタを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のコネクタの幾つかの実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態のコネクタ(プラグ)の側面断面図である。
図2図1のプラグPに連結されるレセプタクル(遮蔽編組導通機構なし)の側面断面図である。
図3】本発明における他の形態のコネクタ(アダプタ、遮蔽編組導通機構あり)の側面断面図である。
図4】本発明におけるさらに他の形態のコネクタ(フランジアダプタ、遮蔽編組導通機構あり)の側面断面図である。
【符号の説明】
【0017】
P・・・プラグ、C・・・ケーブル、R・・・レセプタクル
11・・・シース、13・・・遮蔽編組、15・・・素線、17・・・絶縁層、
19・・・中心導体、
21・・・コンタクト、23・・・圧着部、25・・・嵌合部、26・・・係止片、
27・・・ピン(オス電極)
31・・・ケーブルブッシング、33・・・後側テーパ外周面(素線当て面)、
35・・・前側テーパ外周面(シール面)、37・・・ブッシング内孔
41・・・ピンインシュレータ、43・・・後端テーパ内周面、
45・・・後側ストレート内周面、47・47´・・・コンタクト嵌合部、
48・・・段部、49・・・ピン基部収容内面、
50・・・段部、51・・・レセプタクルとの嵌合内周面、
54・・・バレル嵌合部、
61・・・クランプ金具、62・・・外周面、63・・・ノブ(回転操作部)、
65・・・テーパ内面、66・・・オネジ部、67・・・オネジ、
71・・・コレットスリーブ(シース掴み部を兼ねる素線導通金具)、
72・・・後側外端縁、
73・・・コレットチャック部(シース掴み部)、74・・・中央部、
74b・・・すり割り、75・・・スリーブ部(素線導通金具)、
77・・・テーパ内周面、79・・・前端面
81・・・ケース(エンドベル)、83・・・後側部、84・・・メネジ、
85・・・段部、
91・・・バレル(連結手段)、92・・・セットスプリング、
93・・・オネジ、95・・・キー溝、
101・・・カップリングナット(連結手段)、103・・・内凸部、
105・・・メネジ、
111・・・ガスケット
【0018】
図1に示す実施形態のコネクタ(プラグP)を説明する。このプラグPは、図の左に示されている電源ケーブルCの先端に取り付けられ、図2に示すレセプタクルRに連結され、該レセプタクルを介して電力使用機器に電力供給するためのものである。図1の説明においては、プラグPがレセプタクルRと連結する場合について述べるが、プラグPは、図3図4に示すアダプタA、フランジアダプタA´と連結することもできる。電源ケーブルCは、外側から内側に向けて(図では左から右に示す)、シース11・遮蔽編組13・絶縁層17・中心導体19からなる。電源ケーブルCの先端部は、各層が順次剥かれてプラグP内に収容されている。
電源ケーブルCの、皮むきされた中心導体19の先端部(図の右端部)には、コンタクト21が装着されている。コンタクト21は、中心導体19に外面に圧着された圧着部23や、ピンインシュレータ41の内孔との嵌合部25及び係止部26、先端(図の右端)のオス電極(ピン27)を有する。以下、ケーブルCの入ってくる側(図の左側)を後側、その反対側のピン27のある側(図の右側)を前側ともいう。
【0019】
このプラグPは、以下の各主要部品を備える。
ピンインシュレータ41;コンタクト21や電源ケーブルCの先端部の外周を囲うものであり、筒状の絶縁体からなる。ピンインシュレータ41の内孔には、後側から前側に向けて、後端テーパ内面43、後側ストレート内面45、コンタクト嵌合内面47、ピン基部収容内面49、レセプタクル嵌合内面51が位置している。
【0020】
後端テーパ内周面43は、約20度の角度で前側が径小に細くなるテーパ面であり、後述するケーブルブッシング31の前側テーパ外周面35が当接して、ピンインシュレータ41内孔の後側のシールがなされる。後側ストレート内周面45の内側には、ケーブル絶縁層17の先端部やコンタクト21の圧着部23が収容される。この後側ストレート内周面45の前側には、一段小径のコンタクト嵌合内周面47がつながっている。同コンタクト嵌合内周面47は、その前側に段部48が形成されており、コンタクト21の嵌合部25が嵌合する。
【0021】
レセプタクルとの嵌合内周面51は、ピンインシュレータ41の内孔中の最も前側の径大の内周面であって、後述するレセプタクルRの連結部が嵌合する。レセプタクルとの嵌合内周面51の後側端部には、段部50が形成されている。同段部50の前側には、ガスケット111が配置されている。このガスケット111の外面(小さいリップ部付き)は、レセプタクルとの嵌合内周面51に押し当てられている。ガスケット111の内面のリップ部113は、コンタクトピン27の外面に押し当てられている。このガスケット111によって、ピンインシュレータ41内孔の前側のシールがなされる。
【0022】
ピンインシュレータ41の後側部52の外周面はストレートな円筒面である。その前側は、やや径大のバレル嵌合部54となっており、その外周には複数のキー部(スプライン)56が軸方向に延びるように切られている。同キー部56は、バレル91の内面のキー溝95と回動不能に嵌合している。また、ピンインシュレータ41の外面とバレル91内面の間には、セットスプリング(止め輪)92が介在しており、両者は軸方向にも固定されている。
【0023】
バレル91;円筒形の部材であって、ピンインシュレータ41の前側外面に嵌合している。バレル91の内面には、前述のキー溝95が切られている。バレル91の外面には、後側のオネジ93、前側のキー部98が形成されている。後側のオネジ93には、ケース81の前側部内面のメネジ82が螺合する。前側のキー部98には、レセプタクルR(図2参照)の内面キー溝が軸方向摺動自在に係合する。
【0024】
カップリングナット101;バレル91の外側に軸方向摺動自在かつ回動自在に嵌合している。同カップリングナット101の前側内面にはメネジ105が切られており、このメネジ105は、レセプタクルR外面のオネジと螺合して、プラグPとレセプタクルRが連結される。また、カップリングナット101の内面中央部には内凸部103が形成されている。この内凸部103は、バレル91の外凸部96に当接し、カップリングナット101が前側に抜けないようになっている。
【0025】
ケース81は、ピンインシュレータ41の後側外面や、ケーブルブッシング31、コレットスリーブ71の外面を覆っている。ケース81の後側部83の内面には、クランプ金具61前側外面のオネジ67と螺合するメネジ84が切られている。同メネジ84の前側には、段部85が形成されており、同段部85には、コレットスリーブ71の前端面79が当接する。ケース81の前端部内面にはメネジ82が切られており、前述のバレル91外面のオネジ93と螺合する。
【0026】
以下、本発明のコネクタにおける主な改良点を構成している部材であるケーブルブッシング31やコレットスリーブ71、クランプ金具61について説明する。
【0027】
ケーブルブッシング31は、シリコンゴム等の弾性絶縁材からなり、中央が径大で両端が径小の樽状の形状をしている。この、ブッシング31は、前後のテーパ外周面35、33(傾斜角度約20度)を有する。
【0028】
後側のテーパ外周面33は、前側になるにしたがって径大となるテーパ面であり、同面上には、ケーブルCの遮蔽編組13の解された素線15が配置される(図の見やすさを考慮して、素線15はケーブルブッシング31の外周に寄り添う上下各1本の太い線で示してある)。具体的には、ケーブルCのシース11が皮むきされた後、遮蔽編組13がある長さにケーブル絶縁層17の外側に残される(さらにその前は切り捨てられる)。そのむき出しになった遮蔽編組13が、前側(先)が円錐形に開くように拡げられている。この拡がった素線15が、ケーブルブッシング31の後側テーパ外周面33の外側表面に、網を被せるように被せられている。この素線15の外側は、コレットスリーブ71の前側のスリーブ部(素線導通金具)75によって押さえられる(詳細後述)。
【0029】
ケーブルブッシング31の前側のテーパ外周面35は、前側になるにしたがって径小となるテーパ面である。そのテーパ角度は約20度(ピンインシュレータ41の後端テーパ内周面43と同じ)である。同テーパ外周面35の前側の約半分は、ピンインシュレータ41の後端テーパ内周面43に押し当てられてシール作用をする(詳細後述)。
【0030】
ケーブルブッシング31の中心部には、軸方向に延びる内孔37が形成されている。同内孔37は、ケーブル絶縁層17の外側に嵌合している。コレットスリーブ71の前側のスリーブ部(素線導通金具)75によって、ケーブルブッシング31が内側に押さえられる(詳細後述)と、ケーブルブッシング31内孔37がケーブルC絶縁層17の外面に押し当てられ、同部がシールされる。
【0031】
コレットスリーブ71は、全体としては円筒状の金属製の部材であり、ケーブルブッシング31の後側とケーブルCシース11の外側に被さっている。このコレットスリーブ71は、本発明にいう「シース掴み部」(後側)と「素線導通金具」(前側)を兼ねる部材である。
【0032】
コレットスリーブ71の前側は、スリーブ部(素線導通金具)75であって、その中心部には前側広がりのテーパ内周面77を有するテーパ内孔が形成されている。このテーパ内周面77は、コレットスリーブ71全体がクランプ金具61(図の左側)によって前側に押されると、ケーブルブッシング31の後側テーパ外周面33に向けて押され、その外周に配置された素線15及びケーブルブッシング31後側そのものを押圧する。
【0033】
コレットスリーブ71のスリーブ部75の前側には、軸方向に直交する端面79が形成されている。この端面79は、コレットスリーブ71全体がクランプ金具61によって前側に押されると、ケース81の内段部85に当接する。これにより、ケーブル遮蔽編組13→素線15→コレットスリーブ71のスリーブ部75→ケース81の導通が確保される。
【0034】
コレットスリーブ71のスリーブ部75の後側(中央部74)は、薄肉になっている。同中央部74から後側には、すり割り74bが円周方向の4箇所に切り込まれている。同スリーブ中央部74の後側は、比較的厚肉のコレットチャック部73(シース掴み部)となっている。同コレットチャック部73の内孔には、複数の爪(ギザギザ)73bが形成されており、ケーブルシース11を掴み(把持固定し)やすくなっている。コレットチャック部73の後端外側縁72には、クランプ金具61のテーパ内周面65が当接する。この当接した状態でクランプ金具61が前側に螺進することにより、コレットチャック部73は内側に押されて変形し(すり割り74bの根元あたりから後側が内側に傾く)、同チャック部73内孔の爪73bがケーブルシース11の外側に押し当てられる。これにより、ケーブルCがプラグP内で強固に固定される。
【0035】
クランプ金具61は、前側のオネジ部66と、後側のノブ(回転操作部)63とを有し、ケース81の後側端部内孔を閉じる尾栓の役割を果たすものである。オネジ部66の外周面にはオネジ67が切られており、同オネジ67はケース81後端内孔のメネジ84に螺合している。後側のノブ(回転操作部)63は、比較的部厚いリング状をしており、その外周面62にはローレット加工がなされており、摘まんで回し易くなっている(六角ナットのような形状でもよい)。ノブ63の内孔には、前側広がりのテーパ内面65が形成されている。同テーパ内面65には、前述のコレットスリーブ71の後側外端縁72が当接する。
【0036】
図1のプラグPの組立方法と総合的な作用について説明する。
ピンインシュレータ41の前側の外側には、バレル91を被せて、セットスプリング92で両者を固定する。バレル91の外側には、カップリングナット101を後側から嵌める。そして、ケース81をピンインシュレータ41の外側に被せて、ケース先端のメネジ82とバレル91のオネジ93とを螺合させる。
【0037】
ケーブルCについては、その先部分の積層構造を、段々になるように一層ずつ剥いて、シース11の先に遮蔽編組13・絶縁層17・中心導体19を露出させる。そして、シース11の外側にクランプ金具61とコレットスリーブ71を嵌める。次いで、絶縁層17の外側には、ケーブルブッシング31を嵌め込む。そして、むき出しになった遮蔽編組13の前側(先)を円錐形に開くように拡げて、拡がった素線15を、ケーブルブッシング31の後側テーパ外周面33の外側表面に被せる。中心導体19の先にはコンタクト21を差込・圧着する。
【0038】
この状態で、コンタクト21をピンインシュレータ41の内孔に差し込む。コンタクト21の係止片26は、ピンインシュレータ41の内孔の嵌合部47´を弾性変形して越えた後にスプリングバックし、同嵌合部47´の先の段部に係止される。その後、コンタクト21のピン27の外側、ピンインシュレータ41のレセプタクル嵌合内面51の内側には、前側からガスケット111を嵌め込む。
【0039】
ここで、後側端のクランプ金具61を回しながら前側に螺進させると、クランプ金具61のテーパ内面65が、コレットスリーブ71の後側外端縁72を押す。これにより、まず、コレットスリーブ71全体が前側に進み、ケーブルブッシング31の前側テーパ外周面35の前側部分が、ピンインシュレータ41後端のテーパ内周面43に押し込まれる。これにより、両周面の間がシールされる。
【0040】
続いて、あるいは並行して、コレットスリーブ71の前側テーパ内周面77がケーブルブッシング31の後側テーパ外周面33と、その外周に配置された素線15を押圧する。これにより、コレットスリーブ71内周面77と遮蔽編組素線15とがしっかりと接触する。また、ケーブルブッシング31の後側そのものも圧迫されて、同ブッシング31の内孔37が、しっかりとケーブル絶縁層17の外側に密着する。
【0041】
コレットスリーブ71の前進の最終段階で、コレットスリーブ71の前端面79が、ケース81の内孔段部85に当接する。その後は、クランプ金具61を前進させてもコレットスリーブ71は前進できないので、コレットスリーブ71のテーパ内周面77によってケーブルブッシング31にかけられる押圧力は増大しない。クランプ金具61を前進させると、コレットスリーブ71の後側のコレットチャック部73が、クランプ金具61の内孔テーパ内周面65に内側に押されて、同チャック部73が内側に変形し(すり割り74bの根元あたりから後側が内側に傾く)、同チャック部73内孔の爪73bがケーブルシース11の外側に押し当てられる。これにより、ケーブルCがプラグP内で強固に固定される。
【0042】
上記の遮蔽編組素線15とコレットスリーブ71のテーパ内周面77のしっかりとした接触、及び、コレットスリーブ71の前側端面79とケース81の内段部85との接触により、ケーブルCの遮蔽編組13からプラグケース81への導通を確実に取ることができる。なお、プラグケース81は、相手方のコネクタ(レセプタクルR)との連結手段(カップリング)を通じて機器側と導通する。高圧電源の供給を受ける機器は、必ずアースを取ってあるので、ケーブルの遮蔽編組にもアースが取れる。これにより、安全性の高い給電システムを提供できる。
【0043】
ピンインシュレータ41の内孔の後側のシールは、上述のケーブルブッシング31内外の二つのシール面接触によりなされる。一つ目(外側)は、ケーブルブッシング31の前側テーパ外周面35とピンインシュレータ41の後側テーパ内周面43との接触である。二つ目は、ケーブルブッシング31内孔37とケーブル絶縁層17外面との接触である。これらのシール作用により、インシュレータ内孔内に、外からゴミ・ホコリなどが入り込むのを防止できるとともに、インシュレータ内孔空間と外部空間との間を絶縁材で仕切ることにより、空気を介した短絡、あるいは沿面放電を防止することができる。
【0044】
この例のプラグPにおける、ケーブルブッシング31の耐短絡電圧の向上の試験結果について説明する。以下の条件で試験を行った。
ケーブルブッシング31;材質はシリコンゴム(ケミテックテクニカ株式会社製)、寸法は長さ9.5mm、中央部径10mm、端部径7mm、内孔径3.5mm
ケーブルC;日星電気株式会社製、シース径6.5mm、絶縁層径3.5mm、中心導体径1.5mm(1.25sq)
ピンインシュレータ41;材質は不飽和ポリエステル、外径10mm、後側ストレート内周面45の内径6mm、後側テーパ内周面43のテーパ角度20度
室温25℃、湿度50%、気圧1017hpa
その結果、ケーブルブッシング31がある状態では耐短絡電圧が20kVになり、ケーブルブッシング31がない状態よりも約20%程度の耐短絡電圧の向上がみられた。
【0045】
図1のプラグPにおいては、クランプ金具61のケース81へのねじ込みという一つの操作により、コレットスリーブ71のスリーブ部75の前方送りと、コレットチャック部73の内側縮径を行える。これにより、ケーブルブッシング31の前方送り・押圧操作による、遮蔽編組の素線15押さえとピンインシュレータ41の内孔シールの二つと、さらにコレットチャック部73の内側縮径によるケーブルシース11の固定が行える。
【0046】
図2は、図1のプラグPに連結されるレセプタクルR(遮蔽編組処理のないもの)の側面図(上側は断面図)である。レセプタクルRは、電気消費機器に取り付けられる。
このレセプタクルRは、中心部のソケット(メス型コンタクト)221、その外側のソケットインシュレータ211、レセプタクルシェル201を主要な構成部品とする。ソケット221の図の左端部223内には、図1のプラグPと連結された状態で、ピン27が挿入されて電気がつながる。ソケットインシュレータ211の図の左端部213とシェル201の左端部203との間には、図1のプラグPのピンインシュレータ41・バレル91の図の右端部が挿入される。シェル201の左端部203は、図1のバレル91の外側に嵌合し、さらにその外側にカップリングナット101が螺合する。
【0047】
図3は、本発明における他の形態のコネクタ(アダプタA、遮蔽編組処理のあるもの)の側面図(上側は断面図)である。アダプタAは、図示しないケーブルを介して電気消費機器に取り付けられる。
このアダプタAは、中心部のソケット(メス型コンタクト)321、その外側のソケットインシュレータ311、フランジアダプタシェル331を、図1のプラグPと連結するための主要な構成部品とする。ソケット321の図の左端部323内には、図1のプラグPと連結された状態で、ピン27が挿入されて電気がつながる。ソケットインシュレータ311の図の左端部313とフランジアダプタシェル331の左端部333との間には、図1のプラグPのピンインシュレータ41・バレル91の図の右端部が挿入される。フランジアダプタシェル331の左端部333は、図1のバレル91の外側に嵌合し、さらにその外側にカップリングナット101が螺合する。図3のアダプタAは、さらに遮蔽編組処理機構兼シール機構としての、ケーブルブッシング31、コレットスリーブ71、ケース81及びクランプ金具61を備える。それらの構成・作用は図1のプラグPのものと同様である。
【0048】
図4は、本発明におけるさらに他の形態のコネクタ(アダプタA´、遮蔽編組処理のあるもの)の側面図(上側は断面図)である。このアダプタA´は、図3に示されたフランジアダプタシェル331の代わりに、フランジを有しないアダプタシェル431を備える点で図3に示されたアダプタAと異なる。他の点については図3に示されたアダプタAと同様である。
【0049】
上述の説明において、図1に示されたプラグPはオス側のコンタクト21及びピンインシュレータ41を有し、図2に示されたレセプタクルRや図3及び図4に示されたアダプタA、A´はメス側のソケット221、321及びソケットインシュレータ211、311を有しているが、本発明はこれに限定されない。プラグPがメス側のソケット及びソケットインシュレータを有し、レセプタクルRやアダプタA、A´がオス側のコンタクト及びピンインシュレータを有してもよい。
図1
図2
図3
図4