(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
点着された生体試料を毛管現象によってキャピラリ内へ導入させ、前記キャピラリ内に設けられた試薬と前記生体試料とを反応させる生体試料測定センサが装着され、前記生体試料の測定を行う生体試料測定装置であって、
前記生体試料測定センサが装着される装着部と、
前記生体試料測定センサにおける前記キャピラリに沿って配置された複数の電極に測定するための電圧を印加する電圧印加部と、
前記電圧印加部から電圧が前記電極に印加されて測定された出力結果に基づいて、前記キャピラリの端部における回り込み現象または浸み込み現象による前記生体試料の浸入の影響を排除して、前記キャピラリ内における前記生体試料の導入度合いを検出する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記電極間に電圧を印加して得られる電流値が閾値を超えた後、前記出力結果に基づいて、前記キャピラリ内が正常充填状態か回り込み現象または浸み込み現象の発生状態かを判定し、前記生体試料の導入度合いを検出した結果、
前記キャピラリ内に十分な量の前記生体試料が充填されたと判定した場合は、自動的に測定を開始し、
前記キャピラリ内に十分な量の前記生体試料が充填されていないと判定した場合は、前記生体試料の追加点着を促した後、前記出力結果に基づいて得られた値がピーク電流検出用に設定された閾値を超えたか否かを検出して前記キャピラリ内の充填状態を再度検出する、
生体試料測定装置。
前記電極は、前記キャピラリの最奥部に配置された第1電極と、前記第1電極よりも前記キャピラリの入り口側であって前記試薬が設けられた領域に配置された第2電極と、を有しており、
前記制御部は、前記第1・第2電極間に電圧を印加して得られる出力結果を示すグラフの傾きに関する関数に基づいて、前記キャピラリ内が正常充填状態か回り込み現象または浸み込み現象の発生状態かを判定する、
請求項1に記載の生体試料測定装置。
前記電極は、前記キャピラリの最奥部に配置された第1電極と、前記第1電極よりも前記キャピラリの入り口側であって前記試薬が設けられた領域に配置された第2電極と、前記第1・第2電極の間および前記第2電極よりも前記キャピラリの入り口側に配置された第3電極と、を有しており、
前記制御部は、前記第1・第3電極間、前記第2・第1電極間に所定時間ごとに交互に電圧を印加して得られる出力結果を示すグラフの傾きに関する関数に基づいて、前記キャピラリ内が正常充填状態か、回り込み現象または浸み込み現象の発生状態かを判定する、
請求項1に記載の生体試料測定装置。
前記電極は、前記キャピラリの最奥部に配置された第1電極と、前記第1電極よりも前記キャピラリの入り口側であって前記試薬が設けられた領域に配置された第2電極と、前記第1・第2電極の間および前記第2電極よりも前記キャピラリの入り口側に配置された第3電極と、を有しており、
前記制御部は、前記第1・第3電極間に電圧を印加して得られる出力結果を示すグラフの傾きに関する関数に基づいて、前記キャピラリ内が正常充填状態か、回り込み現象や浸み込み現象の発生状態かを判定する、
請求項1に記載の生体試料測定装置。
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、上記従来のセンサでは、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示されたセンサでは、生体試料の流路において検知電極のサブエレメントを作用電極よりも上流側に設け、作用電極とサブエレメントとの間で電気化学的導通が起こって電流値が任意の閾値を超えると、生体試料の濃度測定の有効な試験を成り立たせるのに十分な電流が流れたと判定し、測定を開始するように構成されている。
【0006】
しかし、この従来のセンサでは、電流値が任意の閾値を超えるまでの点着監視時間が短く(例えば、1〜5秒)、点着監視時間中に電流値が任意の閾値を超えなければ、直ぐにエラーとして判定していた。この場合は、そのセンサを廃棄し、再度、穿刺して血液を採取し、新しいセンサを用いて測定する必要がある。
【0007】
一方、近年、ユーザーから、点着監視時間を延長して血液が不十分な場合でも追加点着を行うことが可能なセンサを求める要望が出てきている。しかしながら、点着監視時間を従来から大幅に延長する(例えば、1〜5秒を10〜120秒に延長する)と、キャピラリ内の端部に沿って浸入(回り込み現象)した生体試料が時間をかけて検知電極まで到達し、電流値が閾値を超えてしまうことがある。このとき、正確な測定を実施するために充分な量の生体試料が充填されていない場合でも、生体試料が十分に充填されていると誤って判定してしまうおそれがある。
【0008】
また、生体試料として血液を用いた測定を実施する場合には、正確な測定を行うために不十分な血液量であるにも関わらず、血液中の血漿成分が試薬に染み込みながら血液の流入を検知する電極まで到達することがある(浸み込み現象)。この場合でも、電流値が所定の閾値を超えてしまうため、血液が十分に充填されていると誤って判定してしまうおそれがある。
【0009】
本発明の課題は、センサに対する生体試料の点着量が少ない場合でも、回り込み現象や浸み込み現象による影響を受けることなく、センサのキャピラリ内における生体試料の導入度合いを正確に検知することが可能な生体試料測定装置を提供することにある。
【0010】
第1の発明に係る生体試料測定装置は、点着された生体試料を毛管現象によってキャピラリ内へ導入させ、キャピラリ内に設けられた試薬と生体試料とを反応させる生体試料測定センサが装着され、生体試料の測定を行う生体試料測定装置であって、装着部と、電圧印加部と、制御部と、を備えている。装着部は、生体試料測定センサが装着される。電圧印加部は、生体試料測定センサにおけるキャピラリに沿って配置された複数の電極に測定用の電圧を印加する。制御部は、電圧印加部から電圧が電極に印加されて測定された出力結果に基づいて、キャピラリの端部における回り込み現象や浸み込み現象による生体試料の浸入の影響を排除して、キャピラリ内における生体試料の導入度合いを検出する。
【0011】
ここでは、生体試料測定センサに点着された生体試料を毛管現象によってキャピラリ内へ導入し、キャピラリ内に設けられた試薬と生体試料とを反応させた状態で、生体試料測定センサの電極に電圧を印加して生体試料の測定を行う生体試料測定装置において、キャピラリに沿って設けられた複数の電極に対して印加された電圧の出力結果に基づいて、回り込み現象によるキャピラリ端部における生体試料の浸入の影響、および浸み込み現象による血漿成分が試薬に浸み込む影響を排除してキャピラリ内において生体試料がどこまで導入されているか(導入度合い)を検出する。
【0012】
ここで、「回り込み現象」とは、生体試料測定センサ内に生体試料を導入するために設けられた微小な導入用隙間(キャピラリ)内において、幅方向における両端に沿って生体試料がキャピラリの奥部まで浸入してしまう現象をいう。「浸み込み現象」とは、生体試料として血液を用いて測定を実施する際に、血液の血漿成分が試薬に浸み込みながら検知電極まで到達してしまう現象をいう。
【0013】
このような回り込み現象が発生した場合には、例えば、センサへの生体試料の点着量が少なすぎて実際には生体試料が検知電極上まで導入されていない状態でも、キャピラリ両端部に沿って浸入した生体試料によって生体試料がキャピラリ内に充填されていると誤検知されてしまうおそれがある。
【0014】
また、浸み込み現象が発生した場合には、例えば、センサへの血液の点着量が少な過ぎて実際には血液が検知電極上まで導入されていない状態でも、血液中の血漿成分が試薬に浸み込みながら検知電極まで到達し、血液がキャピラリ内に充填されていると誤検知されてしまうおそれがある。
【0015】
本発明の生体試料測定装置では、このような回り込み現象や浸み込み現象による生体試料の導入と誤検知されることとを排除するために、キャピラリに沿って配置された複数の電極に電圧を印加した出力結果に基づいて、回り込み現象や浸み込み現象発生時の出力結果と正常充填時の出力結果とを判別することで、生体試料がキャピラリ内におけるどの位置まで導入されているのかを正確に検出することができる。
【0016】
なお、上記回り込み現象や浸み込み現象発生時の出力結果と正常充填時の出力結果との判別方法としては、時間経過と出力結果とを示すグラフの特性が回り込み現象や浸み込み現象発生時と正常充填時とで大きくことなることを利用して、例えば、グラフの傾きの差や、出力値の大小に基づいて、回り込み現象や浸み込み現象発生時の出力結果であるか正常充填時の出力結果であるかを検出することができる。
【0017】
これにより、生体試料測定センサに点着された生体試料の量が少なく、キャピラリ内において生体試料が十分に充填されていない状態で回り込み現象や浸み込み現象が発生した場合には、回り込み現象や浸み込み現象によって得られた出力値か正常充填によって得られた出力値かを判別することで、回り込み現象や浸み込み現象発生時に生体試料が正常充填されていると誤検知することを防止して、キャピラリ内におけるどの位置まで生体試料が充填されているかを正確に検出することができる。
【0018】
この結果、例えば、オートスタート機能を有する装置においても、回り込み現象や浸み込み現象発生時に誤って自動的に測定が開始されてしまうことを回避して、より正確な測定を実施することができる。
【0019】
第2の発明に係る生体試料測定装置は、第1の発明に係る生体試料測定装置であって、制御部は、生体試料の導入度合いを検出した結果、キャピラリ内に十分な量の生体試料が充填されていないと判断した後、所定の閾値を超える出力結果のピークを検出して生体試料の追加点着を検出する。
【0020】
ここでは、上述した生体試料測定センサのキャピラリ内における生体試料の導入度合いを検出した結果、生体試料が十分に充填されていないことが分かった後、電極に印加した電圧の出力値のピークを検出した場合には、これを追加点着が有ったものとして検出する。
【0021】
ここで、追加点着とは、最初に生体試料を点着した際に点着量が十分でなかった場合に、生体試料測定装置からの報知や測定者が気付いて、再度、生体試料測定センサに生体試料を追い足しすることをいう。
【0022】
これにより、上述した生体試料の導入度合いの検出によってキャピラリ内に測定に必要な十分な量の生体試料が充填されていないことが分かって測定が開始できない場合でも、その後の追加点着を装置が検出することで、測定可能な状態に移行したことを自動的に検出することができる。
【0023】
この結果、例えば、オートスタート機能を有する生体試料測定装置において、最初の点着時に生体試料の点着量が少なかった場合でも、生体試料がキャピラリ内に充填されて測定可能な状態になるまでは回り込み現象や浸み込み現象等の影響によって誤って測定が開始されることを防止して、追加点着を待ってから自動的に測定を開始することができる。
【0024】
第3の発明に係る生体試料測定装置は、第1または第2の発明に係る生体試料測定装置であって、電極は、キャピラリの最奥部に配置された第1電極と、第1電極よりもキャピラリの入り口側であって試薬が設けられた領域に配置された第2電極と、を有している。制御部は、第1・第2電極間に電圧を印加して得られる出力結果を示すグラフの傾きに関する関数に基づいて、キャピラリ内が正常充填状態か回り込み現象や浸み込み現象発生状態かを判定する。
【0025】
ここでは、キャピラリ最奥部の第1電極と試薬部分の第2電極との間に電圧を印加して得られた出力結果を示すグラフの傾きに関する関数を用いて、電圧の印加によって得られた出力値が、生体試料が正常充填状態によるものか、回り込み現象や浸み込み現象発生状態によるものかを判定する。
【0026】
ここで、上記判定の根拠となるグラフの傾きに関する関数では、正常充填時と回り込み現象や浸み込み現象発生時とで最も特徴的な差が表れる所定時間経過後の期間における出力結果の値や出力結果の変化率を、例えば、n乗することで高精度に検出することができる。
【0027】
これにより、試薬がある部分からキャピラリ最奥部までの間に生体試料が充填されているかを、回り込み現象や浸み込み現象の影響による誤検出を防止して正確に検出することができる。
【0028】
第4の発明に係る生体試料測定装置は、第1または第2の発明に係る生体試料測定装置であって、電極は、キャピラリの最奥部に配置された第1電極と、第1電極よりもキャピラリの入り口側であって試薬が設けられた領域に配置された第2電極と、第1・第2電極の間および第2電極よりもキャピラリの入り口側に配置された第3電極と、を有している。制御部は、第1・第3電極間、第2・第1電極間に所定時間ごとに交互に電圧を印加して得られる出力結果を示すグラフの傾きに関する関数に基づいて、キャピラリ内が正常充填状態か回り込み現象や浸み込み現象発生状態かを判定する。
【0029】
ここでは、キャピラリ最奥部の第1電極と第3電極との間、および試薬部分の第2電極と上記第1電極の間、にそれぞれ所定時間ごとに交互に電圧を印加して得られた出力結果を示すグラフの傾きに関する関数を用いて、電圧の印加によって得られた出力値が、生体試料が正常充填状態によるものか、回り込み現象や浸み込み現象発生状態によるものかを判定する。
【0030】
ここで、上記判定の根拠となるグラフの傾きに関する関数では、正常充填時と回り込み現象や浸み込み現象発生時とで最も特徴的な差が表れる所定時間経過後の期間における出力結果の値や出力結果の変化率を、例えば、n乗することで高精度に検出することができる。
【0031】
これにより、試薬がある部分からキャピラリ最奥部までのどの位置まで生体試料が充填されているかを、回り込み現象や浸み込み現象の影響による誤検出を防止して正確に検出することができる。
【0032】
第5の発明に係る生体試料測定装置は、第1または第2の発明に係る生体試料測定装置であって、電極は、キャピラリの最奥部に配置された第1電極と、第1電極よりもキャピラリの入り口側であって試薬が設けられた領域に配置された第2電極と、第1・第2電極の間および第2電極よりもキャピラリの入り口側に配置された第3電極と、を有している。制御部は、第1・第3電極間に電圧を印加して得られる出力結果を示すグラフの傾きに関する関数に基づいて、キャピラリ内が正常充填状態か回り込み現象や浸み込み現象発生状態かを判定する。
【0033】
ここでは、キャピラリ最奥部の第1電極と、第1・第2電極の間および第2電極よりもキャピラリの入り口側に配置された第3電極との間に電圧を印加して得られた出力結果を示すグラフの傾きに関する関数を用いて、キャピラリ内における生体試料が正常充填状態にあるか、回り込み現象や浸み込み現象発生状態にあるかを判定する。
【0034】
ここで、上記判定の根拠となるグラフの傾きに関する関数では、正常充填時と回り込み現象や浸み込み現象発生時とで最も特徴的な差が表れる所定時間経過後の期間における出力結果の値や出力結果の変化率を、例えば、n乗することで高精度に検出することができる。
これにより、キャピラリ最奥部まで生体試料が充填されているかを、回り込み現象や浸み込み現象の影響による誤検出を防止して正確に検出することができる。
【0035】
第6の発明に係る生体試料測定装置は、第1から第5の発明のいずれか1つに係る生体試料測定装置であって、生体試料に関する情報を表示する表示部をさらに備えている。制御部は、生体試料の導入度合いの検出結果に基づいて、生体試料の追加点着を促す表示を表示部に表示させる。
【0036】
ここでは、上述したキャピラリ内における生体試料の導入度合いを検出した後、患者や測定者に対して生体試料の追加点着を促す表示を行う。
これにより、患者等は最初に点着した生体試料が不足していたことをすぐに認識して追加点着を行うことで、生体試料測定センサを無駄にすることなく、正確な測定を実施することができる。
【0037】
第7の発明に係る生体試料測定装置は、第1から第5の発明のいずれか1つに係る生体試料測定装置であって、生体試料に関する情報を表示する表示部をさらに備えている。制御部は、生体試料の導入度合いの検出結果に基づいて、測定エラーの表示を表示部に表示させる。
【0038】
ここでは、上述したキャピラリ内における生体試料の導入度合いを検出した後、患者や測定者に対して生体試料の点着量が不足して測定不能であることを示す測定エラーの表示を行う。
これにより、患者等は最初に点着した生体試料が不足していたことをすぐに認識して追加点着を行うことで、生体試料測定センサを無駄にすることなく、正確な測定を実施することができる。
【0039】
(発明の効果)
本発明に係る生体試料測定装置によれば、生体試料測定センサに点着された生体試料の量が少なく、キャピラリ内において生体試料が十分に充填されていない場合でも、回り込み現象や浸み込み現象による生体試料の誤検知を防止して、キャピラリ内におけるどの位置まで生体試料が充填されているかを正確に検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
(実施形態1)
本発明の一実施形態に係る生体試料測定装置について、
図1〜
図6(f)を用いて説明すれば以下の通りである。
[生体試料測定装置の構成]
本実施形態に係る生体試料測定装置は、
図1に示すように、本体ケース1と、その表面に設けられた表示部2および操作用の操作ボタン33と、本体ケース1の下端に設けられた生体試料測定センサ3の装着部4と、を備えている。
【0042】
(生体試料測定センサ3の構成)
生体試料測定センサ3は、
図2(a)〜
図2(c)に示すように、基板5とスペーサ6とカバー7とを積層させて一体化されている。ここで、
図2(a)は、生体試料測定センサ3の展開斜視図、
図2(b)は、生体試料測定センサ3を側面から見た場合の断面図、
図2(c)は、生体試料測定センサ3の平面図(ただし、カバー7がない状態を示す。)をそれぞれ示している。
【0043】
基板5は、生体試料測定センサ3のベースとなる板状の部材であって、その上面には電極(第2電極)8a、電極(第3電極)8b、電極(第1電極)8cが設けられている。
電極8a〜8cにおける生体試料の点着側には、血液等の生体試料と反応する試薬10が設けられている。
スペーサ6は、基板5とカバー7との間に挟まれるように配置されており、生体試料が点着される側の端部に溝11を有している。そして、基板5とスペーサ6とカバー7とを一体化することで、溝11の部分が生体試料の導入路であるキャピラリとして機能する。
【0044】
生体試料測定センサ3に点着された血液等の生体試料は、キャピラリとして機能する溝11内を毛細管現象によって奥方へと進んでいく。そして、生体試料が試薬10の部分まで到達すると、試薬10と生体試料に含まれる特定成分(例えば、血液中のグルコース等)との間で反応が起きる。本実施形態の生体試料測定装置では、この反応値に基づいて血糖値等の生体試料に関する情報を測定する。
【0045】
基板5は、
図2(a)〜
図2(c)に示すように、長手方向においてスペーサ6およびカバー7よりも長い。これにより、基板5に設けられた電極8a〜8cは、生体試料の点着側とは反対側の端部がセンサ外へ露出している。このため、本体ケース1の装着部4に対して、生体試料測定センサ3を装着するだけで、生体試料測定センサ3と本体ケース1内の電気回路とを電気的に接続することができる。
【0046】
カバー7は、スペーサ6の溝11の奥側の端部に対応する位置に、キャピラリ内の毛細管現象を促すための空気孔7aを有している。
空気孔7aは、
図2(b)に示すように、生体試料測定センサ3における試薬10が載置された位置よりも奥側(
図2では右側))に配置されている。これにより、キャピラリの先端側(
図2では左側)に点着された血液等の生体試料を、毛細管現象によって試薬10の位置までをスムーズに導入することができる。
電極8a〜8cは、生体試料測定センサ3が装着された状態において、生体試料測定装置側に設けられた電圧印加部12、電流電圧変換部13に接続される(
図3参照)。
【0047】
(生体試料測定装置の構成)
本実施形態の生体試料測定装置は、
図3の制御ブロック図に示すように、本体ケース1内に、上述した生体試料測定センサ3が装着される装着部4と、電圧印加部12と、基準電圧部12aと、電流電圧変換部13と、A/D(アナログ/デジタル)変換部18と、制御部20と、メモリ部23と、表示部2と、を備えている。
【0048】
表示部2は、生体試料の測定値(例えば、血糖値)や、後述する追加点着を促すメッセージや測定エラー等の各種情報を表示する。
電圧印加部12は、生体試料測定センサ3が装着される装着部4に接続されており、生体試料測定センサ3の電極に対して所定の電圧を印加する。
【0049】
基準電圧部12aは、生体試料測定センサ3の対極部となる端子に対して基準電圧を印加する。これにより、生体試料測定センサ3の両端に掛かる電圧は、電圧印加部12から印加された電圧と基準電圧部12aから印加された電圧の差となる。
【0050】
電流電圧変換部13は、生体試料測定センサ3が装着される装着部4に接続されており、電圧印加部12および基準電圧部12aから所定の電圧が印加された結果、生体試料測定センサ3の出力電極から出力された電流値を電圧値に変換する。
A/D変換部18は、電流電圧変換部12の出力側に接続されており、電流電圧変換部12から出力された信号を受信するとともに、制御部20に接続されている。
【0051】
制御部20は、A/D変換部18からの出力値およびメモリ部23に格納された閾値データ等を参照して、表示部2や電圧印加部12、基準電圧部12aを制御する。なお、制御部20による測定開始前の閾値判定に基づくオートスタート制御については、後段にて詳述する。
メモリ部23は、後述する閾値判定を行う際に必要な閾値データ、測定値、演算式等を保存しており、制御部20によって適宜必要なデータが取り出されて使用される。
【0052】
<オートスタート制御>
本実施形態の生体試料測定装置では、
図4に示すように、生体試料測定センサ3のキャピラリ内に露出するように配置された電極8a〜8cに対して所定の電圧を印加する。そして、その出力結果に基づいて、生体試料測定センサ3に点着された生体試料がキャピラリ内に十分に充填されているか否かを判定し、十分に充填された状態になるまで測定を開始しないように、オートスタート制御を実施する。
【0053】
ここで、
図4に示すように、生体試料測定センサ3には、キャピラリ(溝11)の長手方向に沿って複数の電極8a〜8cが設けられている。なお、ここでは、試薬10が配置された部分に配置された電極をA電極、キャピラリの最奥部に配置された電極8cをC電極、電極8a(A電極)を挟み組むように配置された電極8b,8bをE電極と示す。
【0054】
本実施形態の生体試料測定装置では、生体試料の測定(例えば、グルコース濃度の測定)を開始する前に、上記A,C,E電極のうち、AC電極(電極8a,8c)間に、所定の電圧を印加して、生体試料測定センサ3のキャピラリ内に生体試料が十分に充填されていない状態を検出し、生体試料が十分に充填された状態になるまで自動的に測定が開始されないようにオートスタート制御を行う。
【0055】
なお、従来のオートスタート制御では、まず、AE電極間に電圧を印加し、生体試料がAE電極間まで導入されて試薬と反応して出力値が閾値(10〜50mVの電圧が好ましい。例えば、15mV等)を超えるまで待機する。そして、出力値が上記閾値を超えると、電圧を印加する電極をAC電極間に切り換え、その出力値が閾値(10〜50mVの電圧が好ましい。例えば、20mV等)を超えた場合に、グルコース等の測定を開始する。なお、このオートスタート機能を実行する際の閾値の設定値は、測定時の環境温度の高低に応じて変更されることが好ましい。例えば、環境温度がTemp1(例えば、15℃)よりも低い場合には、生体試料と試薬との反応が鈍化するため、AE電極間に印加された電圧の出力値の閾値(5〜30mVの電圧が好ましい。例えば、7mV)、AC電極間に印加された電圧の出力値の閾値(5〜30mVの電圧が好ましい。例えば、10mV)とすればよい。
【0056】
本実施形態では、
図5のフローチャートに従って、オートスタート制御を実行する。
具体的には、まず、ステップS1において、AC電極間に所定の電圧V1(150mV〜1.0Vの電圧が好ましい。例えば、500mV)が印加される。なお、この所定の電圧V1は、生体試料がキャピラリ内に充填されているか否かを検出するために印加される電圧である。
【0057】
次に、ステップS2において、AC電極間に電圧を印加したことによる出力値(出力電流を電圧に変換した後の電圧値として表している。)が所定の閾値V2(1〜30mVの電圧が好ましい。例えば、12mV等)以上になるまで待機する。
なお、ここで説明する出力値(電流・電圧変換した後の電圧値:mV)=電流値(μA)×30(kΩ:抵抗)とする。
【0058】
そして、このまま所定の時間(10〜120秒の範囲であることが好ましい。例えば、30秒。)が経過すると、ステップS6へ移行し、ステップS7において、制御部20が測定エラーを表示させるように表示部2を制御する。
【0059】
次に、出力電流が上記閾値V2を超えると、ステップS3において、閾値判定に用いられる値Xを算出する。具体的には、ある時間Tにおける出力値をA、その所定時間(0.01〜2秒の範囲であることが好ましい。例えば、0.1秒。)前の出力値Bとし、各ポイントにおいて、演算値Xを算出する。
【0060】
ここで、演算値Xは、以下の関係式(1)によって算出される。
X=(A
4/B
4−1)
4 ・・・・・(1)
すなわち、ここでは、出力電流値A,Bを4乗した値の比から“1”を引いた値をさらに4乗して値Xを算出している。
【0061】
なお、上記関係式(1)において、出力電流値A,B等を4乗している理由は、キャピラリ内に生体試料が十分に充填されているか否かをより正確に検出するための閾値判定の精度を向上させるためである。
【0062】
また、上記関係式(1)において算出された値Xを用いた閾値判定によってキャピラリ内における生体試料の導入度合いを検出できるのは、
図6(a)および
図6(b)に示すグラフを根拠としている。
図6(a)は、十分な量の生体試料がセンサに点着されてキャピラリ内が十分に充填された通常点着時における時間経過と出力電流値との関係を示したグラフである。
【0063】
ここで、上記「十分な量」とは、測定のための反応が十分に起こる量であって、キャピラリ内部の作用極全体を覆う程度に生体試料が充満する程度の量を意味している。キャピラリの容積の大きさやキャピラリ内の作用極や他の検出電極の配置によって異なるが、キャピラリの容積の50%以上が充満されることが好ましい。より好ましくは、80%以上であればよい。例えば、キャピラリの容積が0.6μLの場合には、0.5μl以上あれば、十分な量といえる。
【0064】
一方、
図6(b)は、十分でない量(例えば、0.5μl未満)の生体試料がセンサに点着されてキャピラリ内が十分に充填されておらず、回り込み現象や浸み込み現象が発生した状態における時間経過と出力電流値との関係を示したグラフである。
【0065】
すなわち、生体試料測定センサ3に対して十分な量の生体試料が点着された場合には、
図6(a)に示すように、キャピラリ内に充填された生体試料と試薬10との間ですぐに反応が起きるため、出力電流値も初期段階で立ち上がるようなグラフとなる。一方、生体試料測定センサ3に対して十分な量の生体試料が点着されなかった場合には、
図6(b)に示すように、キャピラリ内に充填された生体試料と試薬10との間ではすぐに反応が起きず、回り込み現象や浸み込み現象によって徐々にキャピラリの奥部まで浸入した生体試料と試薬10との間で徐々に反応が起きるため、出力電流値は低いレベルのまま少しずつ上昇するようなグラフとなる。
【0066】
本実施形態では、生体試料測定センサ3に対して、十分な量の生体試料が点着された場合(
図6(a)参照)と不十分な量の生体試料が点着されて回り込み現象や浸み込み現象が発生した場合(
図6(b)参照)とで、出力電流値の時間経過に対する変化率(グラフの傾き)に大きな差があることに着目して、これらの差を的確に表す数値Xを用いて所定の閾値と比較する。
【0067】
つまり、ステップS4において、ステップS3において算出された値Xを、予め設定された閾値と比較する。ここで、値Xが閾値以上である場合には、キャピラリ内には十分な量の生体試料が充填されているものと判断して、自動的に測定を開始するために測定用の電圧を電極8a〜8cに印加する。
【0068】
具体的には、十分な量の生体試料が点着された場合(通常点着時)には、
図6(d)に示すように、値Xは、電圧印加直後に閾値を超えている。これにより、制御部20は、自動的に測定を開始するための電圧を印加するように、電圧印加部12を制御する。
【0069】
一方、ステップS4において、値Xが閾値未満である場合には、キャピラリ内には十分な量の生体試料が充填されておらず、かつ検出された電流値は回り込み現象や浸み込み現象発生に伴う電流値であると判断し、ステップS5へ移行する。
【0070】
具体的には、不十分な量の生体試料が点着されて回り込み現象や浸み込み現象が発生した場合(回り込み現象等発生時)には、
図6(e)に示すように、値Xは、閾値を超えることはない。これにより、制御部20は、誤って自動的に測定を開始するための電圧を印加することがないように、電圧印加部12を制御する。
【0071】
次に、ステップS5において、制御部20は、ステップS3における閾値判定の結果を受けて、患者に追加点着を促すような表示をするように、表示部2を制御する。
なお、閾値判定時に用いられる閾値は、測定時の環境温度の高低に応じて設定されることが好ましい。具体的な例としては、環境温度Tが20℃未満の場合には、閾値は0.2、環境温度Tが20℃以上30度未満の場合には、閾値は0.5、環境温度Tが30℃以上である場合には、閾値は1.2にそれぞれ設定される。そして、環境温度によって閾値を変更して上記値Xと比較することにより、生体試料の導入度合いを判定する。
【0072】
これにより、環境温度の高低によって生体試料と試薬10との反応の進行度合いに差が生じて出力電流値が変動する場合でも、環境温度の変化によらずに高精度にオートスタート制御を実施することができる。
【0073】
なお、ここでは、本実施形態の生体試料測定装置の測定可能な温度範囲(5度〜45度)を3つに場合分けして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、2つ以下に場合分けされてもよいし、4つ以上に細かく場合分けされてもよい。
【0074】
また、ステップS5において、追加点着を促す表示をすることで、生体試料測定センサ3に対して患者が生体試料を追加で点着した場合には、キャピラリ内は一気に生体試料で充填されて試薬10との反応が進むため、
図6(c)に示すように、出力電流値は急激に上昇してピーク電流として表れる。
【0075】
本実施形態では、
図6(f)に示すように、上記関係式(1)によって算出された値Xが閾値を超えるピーク電流を検出することで、このような追加点着後におけるキャピラリ内の充填状態を検出することができる。なお、このピーク電流の検出についても、ピーク電流の検出用に設定された閾値を用いて検出すればよい。
【0076】
ここで、上述した
図6(a)および
図6(b)のグラフ中の閾値とは、従来のオートスタート制御の際に用いられた閾値を示している。
つまり、この従来の閾値設定だけでオートスタート制御を実施した場合には、キャピラリ内が生体試料によって十分に充填されていない場合でも、回り込み現象や浸み込み現象によってキャピラリの端部に沿って生体試料が浸入して試薬10と徐々に反応した結果得られる出力電流値を検出して閾値を超えてしまう(
図6(b)の3秒経過時)と、自動的に測定が開始されてしまう。このような不十分な量の生体試料に対して測定用の電圧を印加して測定を実施した場合には、実際よりも低い測定結果が得られるおそれがある。
【0077】
本実施形態の生体試料測定装置では、キャピラリ内における生体試料の導入度合いを正確に検出するために、上述した
図6(a)および
図6(b)に示すグラフの傾きに関する数値A,Bを用いた関数(関係式(1))によって値Xを算出し、
図6(d)および
図6(e)に示すように、値Xと閾値とを比較して閾値判定を実施する。
【0078】
これにより、測定結果と閾値とを単純に比較する従来の閾値判定と比較して、回り込み現象や浸み込み現象の影響を排除することで、キャピラリ内に生体試料が十分に充填されているか否か(生体試料の導入度合い)をより正確に検出することができる。この結果、追加点着があってキャピラリ内に十分な量の生体試料が充填されるまで自動的に測定が開始されてしまうことを回避して、高精度なオートスタート制御を実施することができる。
【0079】
また、本実施形態の生体試料測定装置では、上述した
図6(c)および
図6(f)に示すように、追加点着を促す表示(ステップS5)や追加点着があったことを検出する機能を備えている。
これにより、単に、測定に十分な量の生体試料がキャピラリ内にあるか否かを検出するだけでなく、同じセンサを用いたままでも、追加点着によって測定可能な状態になるように促すことができる。この結果、最初の点着時に生体試料の点着量が不足したために生体試料測定センサ3を廃棄する必要がないため、生体試料測定センサ3を無駄にせずに有効に使用することができる。
【0080】
(実施形態2)
本発明の他の実施形態に係る生体試料測定装置について、
図7および
図8(a)〜
図8(f)を用いて説明すれば以下の通りである。
本実施形態では、上述した実施形態1で用いた生体試料測定装置と同じ構成の装置を用いて、血糖値等の測定開始前に、実施形態1(AC電極間)とは異なる電極間(CE電極間、AC電極間)に電圧を印加した結果に基づいて別の関係式を用いて値Xを算出し、オートスタート制御を実施している。よって、本実施形態では、上述した実施形態1において説明した
図5に示すフローチャートと基本的な流れは同じであるため、以下では異なる部分だけを説明することとし、共通する部分の説明は省略する。
【0081】
すなわち、本実施形態では、
図4に示す電極8a,8b,8cのうち、キャピラリの最奥部に配置された電極(第1電極)8cと、電極8a,8c間および電極8aよりもキャピラリの入り口側にそれぞれ配置された電極(第3電極)8b,8bと、の間、および上記電極8cよりもキャピラリの入り口側であって試薬10が設けられた領域に配置された電極(第2電極)8aと、上記電極(第1電極)8cと、の間、に所定時間経過ごとに交互に電圧を印加し、オートスタート制御を実施する。
【0082】
具体的には、制御部20が、
図7のステップS11に示すように、電極8c,8b間(CE電極間)、電極8a,8c間(AC電極間)に所定時間経過ごと(0.01〜2秒の範囲であることが好ましい。例えば、0.1秒ごと。)に交互に所定の電圧(150mV〜1Vの範囲であることが好ましい。例えば、500mV。)を印加して得られる出力結果を示すグラフ(
図8(a)および
図8(b)参照)に基づいて、キャピラリ内が正常充填状態か回り込み現象や浸み込み現象発生状態かを判定する。
【0083】
つまり、本実施形態では、上述した実施形態1と同様に、生体試料測定センサ3に対して、十分な量の生体試料が点着された場合(
図8(a)参照)と不十分な量の生体試料が点着されて回り込み現象や浸み込み現象が発生した場合(
図8(b)参照)とで、出力電流値の時間経過に対する変化率(グラフの傾き)に大きな差があることに着目して、これらの差を的確に表す数値Xを用いて所定の閾値と比較する。
【0084】
具体的には、
図7のステップS13に示すように、ある時間TにおけるCE電極間に印加した電圧に対する出力電流値をA、その第1の所定時間(0.01〜2秒の範囲であることが好ましい。例えば、0.2秒。)前にCE電極間に印加した電圧に対する出力電流値Bとし、上記時間Tの第2の所定時間(0.01〜2秒の範囲であることが好ましい。例えば、0.1秒。)前にAC電極間に印加した電圧に対する出力電流値A’、その第1の所定時間(0.01〜2秒の範囲であることが好ましい。例えば、0.2秒。)前にAC電極間に印加した電圧に対する出力電流値B’とし、以下の関係式(2)に基づいて値Xを算出する。
【0085】
X=(A×A’/B×B’−1)
4 ・・・・・(2)
すなわち、ここでは、出力電流値AとA’,BとB’を乗算した値から “1”を引いた値を4乗して値Xを算出している。
なお、上記関係式(2)において、(A×A’)と(B×B’)の比から“1”を引いた数値を4乗している理由は、上記実施形態1の関係式(1)と同様に、キャピラリ内に生体試料が十分に充填されているか否かをより正確に検出するための閾値判定の精度を向上させるためである。
【0086】
本実施形態では、
図7のフローチャートに示すように、まず、ステップS11において、CE電極間およびAC電極間へ交互に所定の電圧(150mV〜1Vの範囲であることが好ましい。例えば、500mV。)を印加する。
ステップS2については、上記実施形態1の
図5のフローチャートと共通である。
そして、ステップS13では、上記関係式(2)に基づいて、値Xが算出される。
【0087】
次に、ステップS14では、ステップS13において算出された値Xを、予め設定された閾値と比較する。ここで、値Xが閾値以上である場合には、キャピラリ内には十分な量の生体試料が充填されているものと判断して、自動的に測定を開始するために測定用の電圧を電極8a〜8cに印加する。
【0088】
具体的には、十分な量の生体試料が点着された場合(通常点着時)には、
図8(d)に示すように、値Xは、電圧印加直後に閾値を超えている。これにより、制御部20は、自動的に測定を開始するための電圧を印加するように、電圧印加部12を制御する。一方、不十分な量の生体試料が点着されて回り込み現象や浸み込み現象が発生した場合(回り込み現象等発生時)には、
図8(e)に示すように、値Xは、閾値を超えることはない。これにより、制御部20は、誤って自動的に測定を開始するための電圧を印加することがないように、電圧印加部12を制御する。
【0089】
なお、ステップS5以降の流れについては、上述した実施形態1と同様であるから、ここでは説明を省略する。
ここで、ステップS14の閾値判定時に用いられる閾値は、測定時の環境温度の高低に応じて設定されることが好ましい。具体例としては、環境温度Tが20℃未満の場合には、閾値は2、環境温度Tが20℃以上30℃未満の場合には、閾値は4、環境温度Tが30℃以上である場合には、閾値は8にそれぞれ設定される。そして、環境温度によって閾値を変更して上記値Xと比較することにより、生体試料の導入度合いを判定する。
【0090】
これにより、環境温度の高低によって生体試料と試薬10との反応の進行度合いに差が生じて出力電流値が変動する場合でも、環境温度の変化によらずに高精度にオートスタート制御を実施することができる。
なお、ここでは、本実施形態の生体試料測定装置の測定可能な温度範囲(5度〜45度)を3つに場合分けして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、2つ以下に場合分けされてもよいし、4つ以上に細かく場合分けされてもよい。
【0091】
また、ステップS5において、追加点着を促す表示をすることで、生体試料測定センサ3に対して患者が生体試料を追加で点着した場合には、キャピラリ内は一気に生体試料で充填されて試薬10との反応が進むため、
図8(c)に示すように、出力電流値は経過時間4秒の付近において急激に上昇してピーク電流として表れる。
【0092】
本実施形態では、
図8(f)に示すように、上記関係式(2)によって算出される値Xが閾値を超えたことを検出して、このピーク電流を検出することで、このような追加点着後におけるキャピラリ内の充填状態を検出することができる。なお、このピーク電流の検出についても、ピーク電流の検出用に設定された閾値を用いて検出すればよい。
【0093】
ここで、上述した
図8(a)および
図8(b)のグラフ中の閾値は、従来のオートスタート制御の際に用いられた閾値を示している。
つまり、この従来の閾値設定だけでオートスタート制御を実施した場合には、キャピラリ内が生体試料によって十分に充填されていない場合でも、回り込み現象や浸み込み現象によってキャピラリの端部に沿って生体試料が浸入して試薬10と徐々に反応した結果得られる出力電流値を検出して閾値を超えてしまうと、自動的に測定が開始されてしまう(
図8(b)参照)。このような不十分な量の生体試料に対して測定用の電圧を印加して測定を実施した場合には、実際よりも低い測定結果が得られるおそれがある。
【0094】
本実施形態の生体試料測定装置では、キャピラリ内における生体試料の導入度合いを正確に検出するために、上述した
図8(a)および
図8(b)に示すグラフの傾きに関連する関数(関係式(2))を用いて値Xを算出し、
図8(d)および
図8(e)に示すように、値Xと閾値とを比較して閾値判定を実施する。
【0095】
これにより、測定結果と閾値とを単純に比較する従来の閾値判定と比較して、回り込み現象や浸み込み現象の影響を排除することで、キャピラリ内に生体試料が十分に充填されているか否か(生体試料の導入度合い)をより正確に検出することができる。この結果、追加点着があってキャピラリ内に十分な量の生体試料が充填されるまで自動的に測定が開始されてしまうことを回避して、高精度なオートスタート制御を実施することができる。
【0096】
(実施形態3)
本発明のさらに他の実施形態に係る生体試料測定装置について、
図9および
図10(a)〜
図10(f)を用いて説明すれば以下の通りである。
本実施形態では、上述した実施形態1で用いた生体試料測定装置と同じ構成の装置を用いて、血糖値等の測定開始前に、実施形態1(AC電極間)とは異なる電極間(CE電極間)に電圧を印加した結果に基づいて別の関係式を用いて値Xを算出し、オートスタート制御を実施している。よって、本実施形態では、上述した実施形態1において説明した
図5に示すフローチャートと基本的な流れは同じであるため、以下では異なる部分だけを説明することとし、共通する部分の説明は省略する。
【0097】
すなわち、本実施形態では、
図4に示す電極8a,8b,8cのうち、キャピラリの最奥部に配置された電極(第1電極)8cと、電極8a,8c間および電極8aよりもキャピラリの入り口側にそれぞれ配置された電極(第3電極)8b,8bと、の間に電圧を印加し、オートスタート制御を実施する。
【0098】
具体的には、制御部20が、
図9のステップS21に示すように、電極8c,8b間(CE電極間)に所定の電圧(150mV〜1Vの範囲であることが好ましい。例えば、500mV。)を印加して得られる出力結果を示すグラフ(
図10(a)および
図10(b)参照)に基づいて、キャピラリ内が正常充填状態か回り込み現象や浸み込み現象発生状態かを判定する。
【0099】
つまり、本実施形態では、上述した実施形態1と同様に、生体試料測定センサ3に対して、十分な量の生体試料が点着された場合(
図10(a)参照)と不十分な量の生体試料が点着されて回り込み現象や浸み込み現象が発生した場合(
図10(b)参照)とで、出力電流値の時間経過に対する変化率(グラフの傾き)に大きな差があることに着目して、これらの差を的確に表す数値Xを用いて所定の閾値と比較する。
【0100】
具体的には、
図9のステップS23に示すように、ある時間TにおけるCE電極間に印加した電圧に対する出力電流値をA、その所定時間(0.01〜2秒の範囲であることが好ましい。例えば、0.1秒。)前にCE電極間に印加した電圧に対する出力電流値Bとし、以下の関係式(3)に基づいて値Xを算出する。
X=(A
4/B
4−1)
4 ・・・・・(3)
すなわち、ここでは、出力電流値A,Bを4乗した値の比から“1”を引いた値をさらに4乗して値Xを算出している。
【0101】
なお、上記関係式(3)において、A,B等の数値を4乗している理由は、上記実施形態1の関係式(1)等と同様に、キャピラリ内に生体試料が十分に充填されているか否かをより正確に検出するための閾値判定の精度を向上させるためである。
本実施形態では、
図9のフローチャートに示すように、まず、ステップS21において、CE電極間へ所定の電圧(150mV〜1Vの範囲であることが好ましい。例えば、500mV。)を印加する。
【0102】
ステップS2については、上記実施形態1の
図5のフローチャートと共通である。
そして、ステップS23では、上記関係式(3)に基づいて、値Xが算出される。
次に、ステップS24では、ステップS23において算出された値Xを、予め設定された閾値と比較する。ここで、値Xが閾値以上である場合には、キャピラリ内には十分な量の生体試料が充填されているものと判断して、自動的に測定を開始するために測定用の電圧を電極8a〜8cに印加する。
【0103】
具体的には、十分な量の生体試料が点着された場合(通常点着時)には、
図10(d)に示すように、値Xは、電圧印加直後に閾値を超えている。これにより、制御部20は、自動的に測定を開始するための電圧を印加するように、電圧印加部12を制御する。一方、不十分な量の生体試料が点着されて回り込み現象や浸み込み現象が発生した場合(回り込み現象等発生時)には、
図10(e)に示すように、値Xは、閾値を超えることはない。これにより、制御部20は、誤って自動的に測定を開始するための電圧を印加することがないように、電圧印加部12を制御する。
【0104】
なお、ステップS5以降の流れについては、上述した実施形態1と同様であるから、ここでは説明を省略する。
なお、ステップS24の閾値判定時に用いられる閾値は、測定時の環境温度の高低に応じて設定されることが好ましい。具体例としては、環境温度Tが20℃未満の場合には、閾値は0.3、環境温度Tが20℃以上30℃未満の場合には、閾値は1、環境温度Tが30℃以上である場合には、閾値は2にそれぞれ設定される。そして、環境温度によって閾値を変更して上記値Xと比較することにより、生体試料の導入度合いを判定する。
【0105】
これにより、環境温度の高低によって生体試料と試薬10との反応の進行度合いに差が生じて出力電流値が変動する場合でも、環境温度の変化によらずに高精度にオートスタート制御を実施することができる。
なお、ここでは、本実施形態の生体試料測定装置の測定可能な温度範囲(5度〜45度)を3つに場合分けして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、2つ以下に場合分けされてもよいし、4つ以上に細かく場合分けされてもよい。
【0106】
また、ステップS5において、追加点着を促す表示をすることで、生体試料測定センサ3に対して患者が生体試料を追加で点着した場合には、キャピラリ内は一気に生体試料で充填されて試薬10との反応が進むため、
図10(c)に示すように、出力電流値は経過時間7秒の付近において急激に上昇してピーク電流として表れる。
【0107】
本実施形態では、
図10(f)に示すように、上記関係式(3)によって算出される値Xが閾値を超えたことを検出して、このピーク電流を検出することで、このような追加点着後におけるキャピラリ内の充填状態を検出することができる。なお、このピーク電流の検出についても、ピーク電流の検出用に設定された閾値を用いて検出すればよい。
【0108】
ここで、上述した
図10(a)および
図10(b)のグラフ中の閾値とは、従来のオートスタート制御の際に用いられた閾値を示している。
つまり、この従来の閾値設定だけでオートスタート制御を実施した場合には、キャピラリ内が生体試料によって十分に充填されていない場合でも、回り込み現象や浸み込み現象によってキャピラリの端部に沿って生体試料が浸入して試薬10と徐々に反応した結果得られる出力電流値を検出して閾値を超えてしまう、あるいは、浸み込み現象によって血液中の血漿成分が試薬10に浸み込みながら検知電極まで到達し、徐々に反応した結果得られる出力値が閾値を超えてしまう(
図10(b)の約3秒経過時)と、自動的に測定が開始されてしまう。このような不十分な量の生体試料に対して測定用の電圧を印加して測定を実施した場合には、実際よりも低い測定結果が得られるおそれがある。
【0109】
本実施形態の生体試料測定装置では、キャピラリ内における生体試料の導入度合いを正確に検出するために、上述した
図10(a)および
図10(b)に示すグラフの傾きに関連する数値A,Bに基づいて関係式(3)によって値Xを算出し、
図10(d)および
図10(e)に示すように、値Xと閾値とを比較して閾値判定を実施する。
【0110】
これにより、測定結果と閾値とを単純に比較する従来の閾値判定と比較して、回り込み現象や浸み込み現象の影響を排除することで、キャピラリ内に生体試料が十分に充填されているか否か(生体試料の導入度合い)をより正確に検出することができる。この結果、追加点着があってキャピラリ内に十分な量の生体試料が充填されるまで自動的に測定が開始されてしまうことを回避して、高精度なオートスタート制御を実施することができる。
【0111】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態1,2,3では、電極8a,8b,8cに対してそれぞれ電圧を印加してその出力電流値を時間経過ごとに示すグラフの傾き等に基づいて、通常充填時と回り込み現象や浸み込み現象発生時とを判別することで、回り込み現象や浸み込み現象の影響を排除しつつ、キャピラリ内における生体試料の位置を従来よりも高精度に検出する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0112】
例えば、EC電極間、AC電極間に交互に所定電圧(150mV〜1Vの範囲であることが好ましい。例えば、500mV。)を印加した結果、時間経過ごとに得られた出力電流値を示す
図11(a)〜
図11(c)に示すグラフに基づいて、
図11(d)〜
図11(f)に示す値Xを算出して閾値判定を実施してもよい。
【0113】
具体的には、ある時間TにおけるEC電極間に印加した電圧に対する出力電流値をA、その第1の所定時間(0.01〜2秒の範囲であることが好ましい。例えば、0.2秒。)前にEC電極間に印加した電圧に対する出力電流値Bとし、上記時間Tの第2の所定時間(0.01〜2秒の範囲であることが好ましい。例えば、0.1秒。)前にAC電極間に印加した電圧に対する出力電流値A’、その第1の所定時間(0.01〜2秒の範囲であることが好ましい。例えば、0.2秒。)前にAC電極間に印加した電圧に対する出力電流値B’とすると、上述した実施形態2と同様の関係式(2)に基づいて値Xを算出する。
X=(A×A’/B×B’−1)
4 ・・・・・(2)
【0114】
そして、上述した実施形態1〜3と同様に、
図11(d)に示すように、値Xと閾値とを比較して閾値判定を実施する算出された値Xを所定の閾値と比較して、Xが閾値を超えている場合には、キャピラリ内に生体試料が通常充填されていると判定して自動的に測定を開始する。一方、
図11(e)に示すように、Xが閾値以下である場合には、回り込み現象や浸み込み現象発生と判定して、
図11(c)および
図11(f)に示すように、追加点着(ピーク電流値)を検出するまで待機する。
【0115】
これにより、上述した実施形態1〜3と同様に、測定結果と閾値とを単純に比較する従来の閾値判定と比較して、回り込み現象や浸み込み現象の影響を排除することで、キャピラリ内に生体試料が十分に充填されているか否か(生体試料の導入度合い)をより正確に検出することができる。この結果、追加点着があってキャピラリ内に十分な量の生体試料が充填されるまで自動的に測定が開始されてしまうことを回避して、高精度なオートスタート制御を実施することができる。
【0116】
(B)
上記実施形態1,2,3では、電極8a,8b,8cに対してそれぞれ電圧を印加してその出力電流値を時間経過ごとに示すグラフの傾き等に基づいて、通常充填時と回り込み現象や浸み込み現象発生時とを判別することで、回り込み現象や浸み込み現象の影響を排除しつつ、キャピラリ内における生体試料の位置を従来よりも高精度に検出する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0117】
例えば、上記実施形態1と同様に、AC電極に所定電圧(150mV〜1Vの範囲であることが好ましい。例えば、500mV。)を印加した結果、時間経過ごとに得られた出力電流値を示す通常点着時のグラフ(
図12(a)参照)と、回り込み現象や浸み込み現象発生時のグラフ(
図12(b)参照)とで特性に明らかな差が有ることを利用して、
図12(d)および
図12(e)に示す値Xを算出して閾値判定を実施してもよい。
【0118】
具体的には、ある時間Tにおける出力電流値をA、その所定時間(0.01〜2秒の範囲であることが好ましい。例えば、0.1秒。)前の出力電流値B、Aの所定時間(0.01〜2秒の範囲であることが好ましい。例えば、0.5秒。)前の出力電流値をA’、Bの所定時間(0.01〜2秒の範囲であることが好ましい。例えば、0.5秒。)前の出力電流値をB’とすると、以下の関係式(4)に基づいて値Xを算出する。
X=(A−B)/(A’−B’) ・・・・・(4)
【0119】
そして、上述した実施形態1〜3と同様に、
図12(d)および
図12(e)に示すように、算出された値Xを所定の閾値と比較して、Xが閾値を超えている場合には、キャピラリ内に生体試料が通常充填されていると判定して自動的に測定を開始する。一方、Xが閾値以下である場合には、回り込み現象や浸み込み現象発生と判定して、
図12(c)および
図12(f)に示すように、追加点着(ピーク電流値)を検出するまで待機する。
【0120】
この場合には、例えば、閾値を“5”に設定すればよい。
これにより、上述した実施形態1〜3と同様に、測定結果と閾値とを単純に比較する従来の閾値判定と比較して、回り込み現象や浸み込み現象の影響を排除することで、キャピラリ内に生体試料が十分に充填されているか否か(生体試料の導入度合い)をより正確に検出することができる。この結果、追加点着があってキャピラリ内に十分な量の生体試料が充填されるまで自動的に測定が開始されてしまうことを回避して、高精度なオートスタート制御を実施することができる。
【0121】
(C)
上記実施形態1,2,3では、電極8a,8b,8cに対してそれぞれ電圧を印加してその出力電流値を時間経過ごとに示すグラフの傾き等に基づいて、通常充填時と回り込み現象や浸み込み現象発生時とを判別することで、回り込み現象や浸み込み現象の影響を排除しつつ、キャピラリ内における生体試料の位置を従来よりも高精度に検出する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0122】
例えば、上記実施形態1と同様に、AC電極に所定電圧(例えば、500mV)を印加した結果、時間経過ごとに得られた出力電流値を示す
図13(a)〜
図13(c)に示すグラフに基づいて、
図13(d)および
図13(e)に示す値Xを算出して閾値判定を実施してもよい。
具体的には、通常点着時のグラフ(
図13(a)参照)と、回り込み現象や浸み込み現象発生時のグラフ(
図13(b)参照)とで特性に明らかな差が有ることを利用して、グラフの波形の前後2点をとってグラフの傾きを算出して、これを値Xとすればよい。
【0123】
そして、上述した実施形態1〜3と同様に、
図13(d)および
図13(e)に示すように、算出された値Xを所定の閾値と比較して、Xが閾値を超えている場合には、キャピラリ内に生体試料が通常充填されていると判定して自動的に測定を開始する。一方、Xが閾値以下である場合には、回り込み現象や浸み込み現象発生と判定して、
図13(c)および
図13(f)に示すように、追加点着(ピーク電流値)を検出するまで待機する。
【0124】
この場合には、例えば、閾値を“50”に設定すればよい。
これにより、上述した実施形態1〜3と同様に、測定結果と閾値とを単純に比較する従来の閾値判定と比較して、回り込み現象や浸み込み現象の影響を排除することで、キャピラリ内に生体試料が十分に充填されているか否か(生体試料の導入度合い)をより正確に検出することができる。この結果、追加点着があってキャピラリ内に十分な量の生体試料が充填されるまで自動的に測定が開始されてしまうことを回避して、高精度なオートスタート制御を実施することができる。
【0125】
(D)
上記実施形態では、
図5に示すステップS3において、閾値判定の精度を向上させるために、出力電流等の値をそれぞれ4乗して閾値判定に使用する値Xを算出した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
値Xの算出方法としては、4乗に限らず、例えば、これらの出力値の算出制度が最も向上するように、nの値を設定して数値A,B等を用いた関数において値をn乗することで、閾値判定の精度を向上させるようにしてもよい。
【0126】
(E)
上記実施形態1では、
図2(a)〜
図2(c)に示すように、基板5の上面に、電極(第2電極)8a、電極(第3電極)8b、電極(第1電極)8cが設けられている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、
図14(a)〜
図14(c)に示すように、電極(第1電極)8cについては、基板5の貼合せ面側に設ける代わりに、カバー7の貼合せ面側におけるほぼ中央部分付近に設けてもよい。
【0127】
この場合には、生体試料測定装置側の装着部4内に設けられており、カバー7の貼合せ面に設けられた電極8cに接触する接続端子の向きを逆にして設ける必要がある。また、基板5側に設けられた電極8a,8bに対して接触する端子は、上から下向きに接触し、カバー7側に設けられた電極8cに対して接触する端子は、下から上向きに接触する。
よって、カバー7側に設けられた電極8cに対向する基板5の部分、基板5側に設けられた電極8a,8bに対向するカバー7の部分には、
図14(a)に示すように、それぞれ切欠きが形成されており、装置側の接続端子が入るスペースが確保されている。
【0128】
また、以上のような電極配置であっても、カバー7側に設けられた電極8cは、実施形態1の電極配置構成と同様に、キャピラリの一番奥に設けられている。これにより、生体試料測定センサに点着された生体試料の量が少なく、キャピラリ内において生体試料が十分に充填されていない場合でも、回り込み現象や浸み込み現象による生体試料の誤検知を防止して、キャピラリ内におけるどの位置まで生体試料が充填されているかを正確に検出することができるという実施形態1の構成と同様の効果を得ることができる。
【0129】
(F)
上記実施形態では、
図2(a)〜
図2(c)に示すように、基板5の上面に、電極(第2電極)8a、電極(第3電極)8b、電極(第1電極)8cが設けられている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、
図16(a)〜
図16(c)に示すように、電極(第3電極)8bについては、基板5の貼合せ面側に設ける代わりに、カバー7の貼合せ面側におけるほぼ全面に設けてもよい。
【0130】
この場合には、生体試料測定装置側の装着部4内に設けられており、カバー7の貼合せ面に設けられた電極8bに接触する接続端子の向きを逆にして設ける必要がある。また、基板5側に設けられた電極8a,8cに対して接触する端子は、上から下向きに接触し、カバー7側に設けられた電極8bに対して接触する端子は、下から上向きに接触する。
よって、カバー7側に設けられた電極8bに対向する基板5の部分、基板5側に設けられた電極8a,8cに対向するカバー7の部分には、
図16(a)に示すように、それぞれ切欠きが形成されており、装置側の接続端子が入るスペースが確保されている。
【0131】
また、以上のような電極配置であっても、カバー7側に設けられた電極8bは、実施形態1の電極配置構成と同様に、キャピラリ部分の全面に亘って設けられている。これにより、生体試料測定センサに点着された生体試料の量が少なく、キャピラリ内において生体試料が十分に充填されていない場合でも、回り込み現象や浸み込み現象による生体試料の誤検知を防止して、キャピラリ内におけるどの位置まで生体試料が充填されているかを正確に検出することができるという実施形態1の構成と同様の効果を得ることができる。
【0132】
(G)
上記実施形態では、生体試料測定センサ3の長手方向に沿ってキャピラリが形成され、生体試料測定センサ3の長手方向における端部から血液等の生体試料が点着される構成を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、
図18(a)〜
図18(c)に示すように、長手方向に交差する方向に沿ってキャピラリが形成されており側面における両側から生体試料の点着が可能な生体試料測定センサ103であってもよい。
【0133】
この場合には、基板105とカバー107との間に挟まれる2枚のスペーサ106,106によって幅方向に沿ってキャピラリを形成し、キャピラリに沿って試薬110を設けている。また、この生体試料測定センサ103では、基板105上における長手方向に沿って、基板105のほぼ中央に設けられた電極(第2電極)108a、電極108aの両側にそれぞれ設けられた電極(第3電極)108b,108b、電極108b,108bの外側に設けられた電極(第1電極)108c,108cを設けている。
【0134】
これにより、
図18(c)に示す上側の2つの電極8b,8cと下側の2つの電極8b,8cとの間に、所定時間経過ごとに交互に所定の電圧を印加して、所定の閾値の出力値(電流or電圧)が得られた側を、生体試料が供給された側として検出することができる。生体試料が供給された側を検出した後、2つある電極8c,8cのうち、生体試料が流入する方向に対して奥側に配置された電極8cを利用して生体試料の測定を実施することができる。
【0135】
また、以上のような電極配置であっても、上述した処理を同様に実施することで、生体試料測定センサに点着された生体試料の量が少なく、キャピラリ内において生体試料が十分に充填されていない場合でも、回り込み現象や浸み込み現象による生体試料の誤検知を防止して、キャピラリ内におけるどの位置まで生体試料が充填されているかを正確に検出することができるという実施形態1の構成と同様の効果を得ることができる。