特許第5728577号(P5728577)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスゲーエル・オートモーティブ・カーボン・ファイバーズ・ゲーエムベーハー・ウント・コ・カーゲーの特許一覧

<>
  • 特許5728577-湾曲した束を有するパイル層 図000002
  • 特許5728577-湾曲した束を有するパイル層 図000003
  • 特許5728577-湾曲した束を有するパイル層 図000004
  • 特許5728577-湾曲した束を有するパイル層 図000005
  • 特許5728577-湾曲した束を有するパイル層 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5728577
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】湾曲した束を有するパイル層
(51)【国際特許分類】
   D04H 11/08 20060101AFI20150514BHJP
   D04H 1/4242 20120101ALI20150514BHJP
【FI】
   D04H11/08
   D04H1/4242
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-521169(P2013-521169)
(86)(22)【出願日】2011年11月3日
(65)【公表番号】特表2013-534278(P2013-534278A)
(43)【公表日】2013年9月2日
(86)【国際出願番号】EP2011069315
(87)【国際公開番号】WO2012059539
(87)【国際公開日】20120510
【審査請求日】2013年1月24日
(31)【優先権主張番号】102011078739.9
(32)【優先日】2011年7月6日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102011078741.0
(32)【優先日】2011年7月6日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102011077879.9
(32)【優先日】2011年6月21日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102011077881.0
(32)【優先日】2011年6月21日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102011077880.2
(32)【優先日】2011年6月21日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102010043349.7
(32)【優先日】2010年11月3日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102010043346.2
(32)【優先日】2010年11月3日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102010043300.4
(32)【優先日】2010年11月3日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102010043345.4
(32)【優先日】2010年11月3日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102010043347.0
(32)【優先日】2010年11月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513000182
【氏名又は名称】エスゲーエル・オートモーティブ・カーボン・ファイバーズ・ゲーエムベーハー・ウント・コ・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ビルギット・ライター
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ダンザー
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルト・オルトレップ
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−021056(JP,A)
【文献】 特開平08−144153(JP,A)
【文献】 特開2000−054252(JP,A)
【文献】 特開平09−078396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H1/00〜18/04
D03D1/00〜27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維(10)を含む複数の束(2)を有する不織パイル層(1)であって、
少なくとも一部の束(2)が、第一曲率(K1)の湾曲した頂点領域(6)及び第二曲率(K2)の少なくとも一つの束末端領域(7)を有する湾曲した形状を有し、前記第一曲率(K1)が前記第二曲率(K2)よりも大きく、前記第二曲率(K2)がゼロであることを特徴とする不織パイル層(1)。
【請求項2】
複数の湾曲した束(2)の配向が同一であり、一つの湾曲した束(2)の束末端領域(7)のうち少なくとも一方の形状が、他の湾曲した束(2)の他の束末端領域(7)と比較して同一の配向の形状を有することを特徴とする請求項1に記載の不織パイル層。
【請求項3】
湾曲した束(2)が第二曲率(K2)の二つの束末端領域(7)を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の不織パイル層。
【請求項4】
前記不織パイル層(1)の全ての束(2)の少なくとも50%が湾曲した形状を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の不織パイル層。
【請求項5】
前記炭素繊維(10)を含む複数の束(2)の長さが15cm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の不織パイル層。
【請求項6】
前記不織パイル層内の湾曲した束の平均束長さが、少なくとも100%変化することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の不織パイル層。
【請求項7】
複数の湾曲した束(2)が、少なくとも200本の炭素繊維(10)を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の不織パイル層。
【請求項8】
前記不織パイル層(1)が最大50g/mで10g/m以上の単位面積当たりの質量を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の不織パイル層。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の不織パイル層を少なくとも二つ有することを特徴とする不織布又は不織布材。
【請求項10】
固めるためにニードリング処理された請求項1から8のいずれか一項に記載の不織パイル層を有することを特徴とする不織布材。
【請求項11】
一つの不織パイル層(1)の湾曲した束(2)の配向が、他の不織パイル層(1)の湾曲した束の配向と少なくとも5°異なることを特徴とする請求項9に記載の不織布又は不織布材。
【請求項12】
少なくとも二つの不織パイル層(1)が互いにニードリング処理されているか、又は一つの不織パイル層(1)が固めるためにニードリング処理されていて、1cmの面積に対して平均で少なくとも1つのニードリングパンチが存在していることを特徴とする請求項9から11のいずれか一項に記載の不織布又は不織材。
【請求項13】
請求項1から8のいずれか一項に記載の不織パイル層(1)の製造方法であって、
炭素繊維(10)を含む束(2)を梳綿機(20)内に導入するステップと、
前記束(2)を個々の繊維には完全に分解せずに前記束(2)内の前記炭素繊維(10)を追加の繊維(10)と絡み合わせるように前記梳綿機(20)を作動させるステップと、
前記梳綿機(20)から不織パイル層(1)を取り外すステップとを含む製造方法。
【請求項14】
請求項1から8のいずれか一項に記載の不織パイル層(1)又は請求項9から12のいずれか一項に記載の不織布又は不織布材を含む樹脂含浸部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に係る炭素繊維を含む複数の束を有するパイル層、及び、請求項12の前提部に係るそのようなパイル層の製造方法に関する。本発明は更に、請求項11の前提部に係る不織布又は不織材に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維を含むパイル層は、自動車産業における多数の応用に用いられている不織布又は不織布材を製造するための開始構造として特に適している。これらは、自動車部品を製造するのに特に用いられる。特に、ポリマー又は樹脂で適切に含浸させた後において(例えば、RTMプロセスにおいて)、対象の不織布又は不織布材は、軽量であるが機械的に非常に弾性のある繊維複合体構造へと有利に処理されて、これは、益々好ましくて画期的な材料であるとみなされてきている。
【0003】
パイル成形は典型的に、適切な供給デバイスを用いてパイル成形機に対して所定の長さ分布を有する一本一本の個々の繊維を供給することを含む。例えば、このようなパイル成形機は、梳綿機として設計可能である。パイル成形機の適切な機能部品が、一本一本の繊維を絡み合わせて、パイル層の処理を続けている間に生じる外部機械的応力に十分耐えられる固有の安定性を絡み合わされた繊維が示すような平坦構造体が形成される。
【0004】
梳綿機において、シリンダー状容器に配置されたワーカー又はクリーナーローラーが、シリンダー状容器と逆方向に回転することによって、梳綿機に導入された繊維をランダムな配置の繊維にするか、又はこのランダムな配置において繊維を絡み合わせるように作動する。
【0005】
この反復処理又は回転によって、壊さずに梳綿機から取り外して再び処理するのに十分な固有の安定性を有するパイル層が得られる。典型的な梳綿機は、DIN64118設計に略対応する構造設計を有する。
【0006】
パイル成形機から取り外されたパイル層を、追加段階において不織布材へと処理することができる。例えば、パイル層を二重にして、つまり、パイル層を積層して、所望の厚さ及び適切な総繊維含有量を有する不織布を形成することができて、その不織布は、例えばニードリングによって固められると、不織布材として他の処理ステップへと送られ得る。一般的に、不織布材は、化学的、機械的又は熱的に固められている点において、従来の不織布とは異なる。
【0007】
上述の機械的プロセスに加えて、空気力学的製造プロセスでも、不織布を形成することができる。この場合、例えばバラバラに分解された後に、繊維が気流に供給されて、その気流が繊維を篩ドラム又は篩ベルト上に配置する。篩ドラム又は篩ベルトは、ランダムな配置で、又は所定の配向無しで繊維を運び続ける一方、空気は篩の開口から真空排気される。空気が除去された後に、小型化されて篩に残っている繊維が不織布を形成する。空気力学的な不織布の形成プロセスは、厚くてあまりしわ寄せ加工(シャーリング)されていない繊維を処理するのに特に適している。
【0008】
代わりに、不織布は、水等の溶離剤を用いた湿式製造プロセスでも製造することができ、繊維が溶離剤内に懸濁されて、篩に供給されて、このプロセス中に溶離剤が濾過される。残った繊維層が不織布を形成し、更に適切な乾燥ステップにおいて処理され得る。
【0009】
本発明の枠組み内において、パイル層と不織布は区別されない。これらの構造は全て、所望の固有の安定性を示す平坦構造に繊維を絡み合わせるプロセスにおいて得られる。他方、不織布材は、上述のような追加の固める後続ステップによって不織布又はパイル層と区別される。
【0010】
上述のプロセスに関する問題点は、パイル成形機に供給される一本一本の繊維を典型的には複雑な機械的前処理に晒す必要がある点である。このため、開口ユニット及び/又は混合ユニットが用いられ、これらは、例えば従来の回転ミルにおいて、繊維をバラバラに分解して前処理する。特に、炭素繊維を用いたパイル層の製造は、炭素繊維の複雑な前処理も要する。例えば、炭素繊維を炭素繊維の撚糸から解き得る。このため、その撚糸をまず糸巻から外して、切断デバイスに供給する。適切な長さに切断した後、炭素繊維の束を、束の部分の繊維を大幅に分解することによって、バラバラに分解する必要がある。また、パイル成形機に供給する前に、繊維を適切にまとめてパイル成形プロセスに送る必要もある。このステップの後に、繊維をパイルへと処理することができる。
【0011】
しかしながら、これら全ての処理プロセスは、比較的コストのかかるものであるだけでなく、処理シーケンス全体におけるデバイスの維持費用も高いものである。繊維屑を処理したり繊維を再利用したりする際に特に複雑になるのはその前処理である。何故ならば、複数の追加処理ステップが、繊維をバラバラに分解して解き、場合によっては洗浄して、大幅に分解された繊維を得るために必要になるからである。
【0012】
また、従来技術で知られているプロセスは、ランダムでありせいぜい部分的にのみ配向した繊維構造を有するパイル層を形成するのに第一に用いられているものである。基本的には、梳綿ステップによってパイル内の繊維を整列されることができるが、これは追加の処理ステップを必要として、一方ではコストを発生させ、他方ではこの梳綿ステップは、パイル層を更に損傷させないために非常に注意深く行われる必要がある。
【0013】
しかしながら、所定の応用では繊維の整列が望まれることが多い。何故ならば、これによって、パイル層内において一つ以上の機械的優先方向を定めることができるからである。結果として、例えば、所定の優先方向を有する不織布を、繊維の配向された繊維複合材へと更に処理することができて、負荷に対して適切に調整された応用において用いることができる。この場合、繊維複合材は、パイル層の優先方向が吸収される機械力に向けられて、その機械力を有利に吸収するように用いられる。この場合、力は繊維の長手方向に向けられることが好ましい。これは、繊維の長手方向において特に優れた引っ張り強度を示す炭素繊維に特に当てはまる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、従来技術で知られているパイル層よりもコスト効率的に製造可能なパイル層を提案することである。特に、より少ない数の工程が、パイル層を製造するのに必要となるようにする。本発明によると、これは、従来技術において牽引又は粗紡から外された一本一本の繊維で未だ形成されている炭素繊維パイル層に関する。このようなパイル層は、繊維の適切な配向を有するようにされて、そのパイル層が、一つ、好ましくは二つ以上の優先方向を有することができる。特に、優先方向は、強化目的でパイル層を備えた繊維複合材が、優先方向に向いた負荷に比較的適切に対処することを可能にする。本発明によると、優先方向は、パイル成形機を用いて形成されるパイル層に対して最初に設けられる。しかしながら、これは、不織布又は不織布材を本発明に係る複数のこのようなパイル層で構成することができないということを意味するものではなく、少なくとも一つの優先方向、好ましくは複数の優先方向を有することができる。
【0015】
更に、本発明の課題は、このようなパイル層の製造方法を提案することであり、その製造方法は比較的コストが安くて、炭素繊維を前処理するのに少ない技術的コストしか要さない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明において、その課題は、請求項1に係るパイル層、及び、請求項12に係る製造方法で達成される。また、本発明の課題は、請求項10に係る不織布又は不織布材で達成される。
【0017】
特に、本発明の課題は、複数の炭素繊維を備えた束を有するパイル層によって達成されて、少なくとも一部の束が湾曲した延伸方向を有し、その湾曲した延伸方向は、束末端間の第一曲率(K1)の湾曲した頂点領域と、束末端に位置する第二曲率(K2)の少なくとも一つの束末端領域とを有し、第一曲率(1)は、第二曲率(K2)よりも特に少なくとも50%以上大きい。
【0018】
束の曲率の算術符号については考慮しない。曲率は、その曲率の大きさのみに関する。
【0019】
本発明によると、湾曲した延伸方向を有する各束は、個別の第一曲率(K1)及び個別の第二曲率(K2)を有する。しかしながら、湾曲した延伸方法を有する複数の束が、測定精度内において均一な第一曲率(K1)又は第二曲率(K2)を示すことも本発明の範囲内である。しかしながら、各場合において実質的には、束は、その同じ束の頂点領域において第一曲率(K1)を有し、その同じ束の束末端領域において第一曲率(K1)よりも小さい第二曲率(K2)を有する。同様に、両方の束末端領域が、それぞれ個別の第二曲率(K2)を有するか、又は定量的に同一の第二曲率(K2)を有することも可能である。
【0020】
頂点領域とは、最大の曲率を有する束の領域として理解される。また、頂点領域との用語については、以下に示される実施形態においても説明する。特に、本発明に係る頂点領域は、最大の曲率を有する延伸方法に沿った点を含む。対照的に、束末端領域は特に個々の束の末端の点を含む。
【0021】
本発明の枠組み内において、束の曲率は、その束内の全ての繊維の平均化された延伸方向から求められる。このため、束内の繊維の個々の空間的位置を求めて、平均位置を束内の各繊維の比較可能な部分から計算する。特に、束内の繊維が円形断面にわたって密に詰まっている領域において、平均延伸方向は実質的に、その断面に関して束の中心に位置している繊維のものに対応する。しかしながら、繊維が散開していると、束の末端における場合において典型的なように、個々の繊維の全ての比較可能な部分の層を平均化することによって、束の平均延伸方向を計算することができる。十分な検討に基づいて、当業者は、平均延伸方向を求めるように平均値を計算することができる。
【0022】
束の湾曲した延伸方向は典型的に、束の異なる箇所において異なる曲率を有する。曲率を求めるため、延伸方向の所定の領域を、円に内接させて、その内接円の円周方向線が、対応する箇所における束の延伸方向と接線方向で一致するようにする。この点に関して、頂点領域に対する内接円は、束末端領域に対する第二内接円よりも大きな第一曲率(K1)を有し、束末端領域は相対的に大きい半径を有するが小さい第二曲率(K2)を有する。
【0023】
本発明に係る解決策は更に、以下のステップを含むパイル層の製造方法を含む:炭素繊維を含む束を梳綿機内に導入するステップ; 束を一本一本の繊維に完全には孤立させず、追加の繊維とその束内の炭素繊維を絡み合わせるように梳綿機を作動させるステップと、梳綿機からパイル層を取り外すステップ。
【0024】
この場合、梳綿プロセスを、梳綿機内に導入された束が個々の繊維に分解することを防止するように調整しなければならない。しかしながら、一本一本の個々の繊維を、束と共に梳綿機内に入れることを完全に防止しなくてもよい。導入されると、束は分解可能な状態で存在するか、又は炭素繊維及び/又は他の繊維と既に絡み合っているものとなり得る。特に、束は、固められていない又は更に処理されていないランダムな配置の繊維内に存在し得て、繊維は、部分的に孤立して束から飛び出していて、他の繊維と絡み合っている。
【0025】
梳綿機内における束の完全な分解を防止するため、回転ステップ又は作動ステップの数、又は梳綿機が含むローラー間の距離を調整することができる。また、個々のローラーの表面を、束を一本一本の個々の繊維に完全にバラバラに分解しないように適切に調整することができる。また、梳綿機のローラーに含まれる部品の幾何学的な調整も想定可能である。
【0026】
この点に関して、本発明の応用の枠組み内において、束は、実質的に平行な方向に少なくとも部分的に延伸している繊維の塊として理解され、束内の繊維密度は、周囲の繊維密度と比較して少なくとも部分的に高い。この点に関して、束は、周囲から目立っているので、目視でも良好に識別可能であり、大抵の場合、束として容易に識別可能である。また、束は、一本一本の個々の繊維の凝集物も有し得て、機械的応力に晒された際に束が一本一本の個々の繊維になることを防止する。
【0027】
本発明に係るパイル層の利点は、パイル層が束を含み、繊維が一本一本の個々の繊維に分解していない点である。これは、特に、繊維の長手方向において束に作用する機械的応力に関して、パイル層に特別な強度を与える。互いに整列していない孤立した繊維と比較して、これは、顕著に優れた程度で壊れずに、繊維の延伸方向において、外力(例えば後で製造されて束内に導入される繊維複合材に作用する)を束が吸収することを可能にする。
【0028】
湾曲した延伸方向によって、束は、ほぼ束末端領域における繊維の延伸方向内において優先方向を示すだけでなく、ほぼ頂点領域の接線方向にも優先方向を有する。従って、湾曲した延伸方向は、束が力の吸収に関する優先方向を有するだけではなく、接線方向に起因する他の優先方向も有することを保証する。例えば、これによって、少なくとも一つの優先方向、特に少なくとも二つの優先方向を有するパイル層を製造することが可能になる。上述の点に関する更なる説明は、図面に対する以下の説明からも明らかとなる。
【0029】
パイル層を製造する間において、梳綿機内に導入された繊維が一本一本の個々の繊維に完全にバラバラにならず、そのプロセスにおいて梳くことによってパイル層内で動かされるので、パイル層内の個々の束が再配向される。梳綿プロセスは、束に湾曲した延伸方向を与えるようにその束を構成する。梳綿プロセス中において、個々の束は、梳綿機の各ローラーの部品の歯によって捕えられて、梳綿機内に生じたパイル層の周囲の繊維に対して動かされる。プロセスにおいて生じるせん断力が、束を周囲の繊維に対して湾曲させる。ここで、湾曲した延伸方向部は、曲率の異なる少なくとも二つの領域を有する。また、梳綿プロセスは、束を部分的にバラバラに分解して、個々の繊維がパイル層内の孤立した繊維及び束内の繊維と絡み合わさる。
【0030】
本発明に係るパイル層の特に有利な実施形態は、複数の湾曲した束の配向が実質的に同一である点によって区別され、これは、湾曲した束の束末端領域の少なくとも一方の延伸方向が、他の湾曲した束の他の束末端領域と比較して本質的に同一配向の延伸方向を有することを意味する。この場合も、束に含まれる全ての繊維の平均延伸方向が参酌される。
【0031】
特に束の末端のうち一方の平均延伸方向が他の束の末端の延伸方向から10°以内で逸脱している場合に、同一の配向が得られる。最大の曲率を有する頂点における束の延伸方向に垂直な交差線も、好ましくは実質的に同一の方向を示し、配向を定める際に描くことができる。交差線の方向が10°以上異ならない限りにおいても、実質的に同一の配向が得られる。この点に関して、配向の考えられる定義に関する図面の説明も参照されたい。
【0032】
パイル層のこのような実施形態では、同一の向きの束の大部分が、あまり配向していないパイル層と比較して、後に製造される繊維複合材に対してパイル層の強度増強効果を有することが有利である。束の配向は、束末端領域の延伸方向に本質的に平行な方向において主に力の吸収を改善する。また、それに垂直な方向における安定性も改善される。何故ならば、これは実質的に頂点領域の平均化された繊維の延伸方向だからである。特に、これは、頂点領域の最大曲率と一致する領域内の束の平均延伸方向に当てはまる。この領域は曲率を有し、典型的にはそこにおける繊維密度の増大も、束の延伸方向に対する接線方向において強度を増大させる。
【0033】
一実施形態では、湾曲した束の二つの束末端の各々が第二曲率(K2)を有する束領域を有し、特に、それら二つの第二曲率(K2)は、第一曲率(K1)よりも小さく、好ましくは少なくとも50%小さい。特に、二つの第二曲率(K2)が実質的にゼロに等しい場合、束の配向増強効果が更に改善される。これは、実質的にゼロに等しくないが典型的には或る程度小さい第二曲率(K2)でも達成可能である。
【0034】
この場合、実質的にゼロであるとは、第二曲率(K2)が第一曲率(K1)よりも少なくとも二十倍小さいことを意味する。
【0035】
また、第一曲率(K1)が個々の束の平均長さに対する逆数よりも大きい実施形態も想定される。これは、頂点領域の特に適切な曲率を保証して、束の長さに対応する円周方向線の円の曲率よりも大きい。
【0036】
本発明の有利な実施形態では、パイル層内の全ての束の少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは98%が湾曲した延伸方向を有するようにすることもできる。整列レベルの増加と共に、本発明に係るライナー層を含んで後で製造される繊維複合材に対する強度の増加的な改善が達成可能である。
【0037】
他の実施形態では、一つの湾曲した束の二つの束末端の間の最小距離が、頂点領域と二つの束末端のうち一方との間の最大距離よりも小さいようにすることもできる。結果として、束末端は、パイル層に適切な強度を与えるのに十分な長さを有し、これは、後に製造される繊維複合材の強度を改善するのにも役立つ。
【0038】
一実施形態では、束末端が互いに大幅に平行な延伸方向を有することによって、強度増強効果を更に改善することが第一に望ましい。この理由は、束末端が同等の配向を有する場合に比較的多くの繊維がパイル層の方向を正確に指すことによって、強度を有利に改善することができるからである。束末端領域が直線的な延伸方向に対して最大でも20°しか互いに逸脱していない場合に、実質的に平行な延伸方向が存在する。
【0039】
特に有利な実施形態では、第二曲率(K2)が実質的にゼロであるようにすることもできる。ここで、実質的にゼロとは、第二曲率(K2)が、第一曲率(K1)とは少なくとも20倍異なり、ここで少なくとも20倍とは、第一曲率(K1)の20倍に基づいて計算された曲率よりも大きいことを意味する。この種の小さな第二曲率(K2)は、良好で実施的に真っ直ぐな束末端の延伸方向を保証して、パイル層に適切な強度を与えることを可能にして、後で製造される繊維複合材の強度を改善するのにも役立つ。
【0040】
一実施形態では、4cmの表面積内に3本以上の束が含まれるようにすることもできる。これは、パイル層に有利な強度を与えて、後に製造される繊維複合材の強度を改善するのにも役立つ。特に、湾曲した束は力の指向性吸収に特に適しているので、力の指向性吸収が、後に製造させる繊維複合材において改善される。
【0041】
本発明の他の実施形態では、炭素繊維を含む複数の束が、15cm以下、特に10cm以下の長さであるようにすることができる。長さが短くなると、繊維の含有量を一定に保ちながら、パイル層内の相対的な束の含有量を改善することができる。しかしながら、束が好ましくは一つの優先方向において適切な配向を有する部分を有して、強度の方向特定改善を達成するという要求が必要となり得る。また、これは、湾曲した束が最小長さ以下にならないようにすることも要する。何故ならば、そうしないと、強度増強効果が不十分になるからである。他の実施形態では、湾曲した束が、略2cmの下限長さ以下にならないようにすることが有利となり得る。
【0042】
一実施形態では、パイル層に含まれる全ての繊維の最大5%の割合が、15cm以上の長さを有するようにすることもできる。場合によっては、特に繊維が15cm以上の複数の線を含む分布を有することが望ましい。何故ならば、これによって、繊維を提供するための再利用プロセスを用いることも可能になり、これは、繊維が一般的に15cm以下の短さでは保証することができない。
【0043】
一実施形態では、好ましくはパイル層内の湾曲した束の平均束長さが少なくとも100%、場合によっては200%以上変化するようにすることもできる。また、平均束長さが少なくとも500%変化する実施形態も想定可能である。特に、これら実施形態は、パイル層内の複数の湾曲した束に関する。束長さを変化させることは、梳綿機内に導入する前の更なるサイズ選択プロセスを経ていないパイル層内の束を提供することを可能にする。例えば、更なるサイズ選択を有していない再利用プロセス由来の束を、本発明に係るパイル層内で処理することができる。炭素繊維構造は、このような再利用プロセスにおいて前処理可能であるが、サイズ選択は行われていない、結果として、炭素繊維をランダムに切断して、最大長さを保証することができる一方、繊維長さの分布又は束長さの分布は、製造コストを減少させるために更に調整されていない。
【0044】
他の実施形態では、湾曲した束が、束から飛び出していて束に含まれていない他の繊維と絡み合った複数の炭素繊維を有するようにすることもできる。これは一方ではパイル層内の束の固定を向上させ、他方では、湾曲した束の周囲におけるパイル層の繊維含有量を増大させる。これによって、パイル層及びそれから後に製造される繊維複合材の強度を有利に改善することができる。
【0045】
本発明の他の実施形態では、束から飛び出している炭素繊維が、束の長さの最大50%の長さを有するようにすることもできる。これは、繊維が湾曲した束の中に十分に固定されたままであることを確保する。
【0046】
他の実施形態では、パイル層が、湾曲した束に含まれていない炭素繊維を有し、その炭素繊維の長さは1cm以下であり、特に0.5cm以下であるようにすることもできる。従って、パイル層は比較的短いステープルファイバー(スフ)も含み、これは、パイル層に含まれる複数の束よりも顕著に短いものであり得る。本実施形態では、繊維を再利用プロセスから得られるようにすることもでき、そのプロセスは、繊維長に関して繊維又は束を前処理(準備)しない。また、比較的短い繊維を生成するように繊維を前処理する再利用プロセスを用いることもできて、これは、処理される布の前処理についてあまり穏やかでないプロセスである。この場合でも、その前処理は、布に含まれる束が完全にバラバラになり一本一本の個々の繊維に分解されないことを保証する。例えば、これは、適切な処理時間又は適切に調整された処理強度によって達成可能である。
【0047】
好ましい実施形態では、複数の湾曲した束が、少なくとも200本、好ましくは少なくとも500本、特に好ましくは1000本の炭素繊維を含むようにすることもできる。本実施形態に係るその数は、特に、パイル層内の複数の湾曲した束に関する。従って、パイル層の方向に依存した強度が適切に調整可能であり、例えば、後に製造される繊維複合材の所定の方向に依存した強度を与えることができる。また、これは、再利用プロセスからの炭素繊維布(典型的には撚糸毎に2000本以上の繊維を備えた撚糸を有する)を使用することを可能にする。適切な前処理プロセスでは、再利用される布に含まれる束を前処理して、撚糸を最少数の繊維へと解く。続いて梳綿機で処理することによって、束を更にバラバラに分解することができるが、本発明に係るパイル層内に複数の繊維を残す程度以上にはバラバラにしない。
【0048】
特に好ましい実施形態では、パイル層が、最大50g/mで10g/m以上、好ましくは35g/mから25g/mの間の単位面積当たりの質量(単位面積当たりの重量)を有するようにすることができる。このようなパイル層は、後に製造される炭素繊維材において十分な強度を有する一方、部品の重量を大幅に減少させることができるので、特に自動車産業において望まれる。特に、本実施形態に係る単位面積当たりの質量は、貴重な原材料、炭素繊維を効率的に使用することを可能にするのと同時に、強度に課される最少要求の順守を保証する。従って、必要とされる強度と示される重量との間の比が特に有利である。
【0049】
また、本発明の課題は、上記又は下記のパイル層の実施形態のうち一つに係るパイル層を少なくとも二つ有する不織布又は不織不材(特に互いにニードリングされている)を含む実施形態においても達成される。少なくとも二つのパイル層を不織布又は不織布材へと処理することによって、パイル層の強度増強特性を更に改善することができる。特に、方向又は配向に関連する利点を、少なくとも二つのパイル層を互いに適切に配向させることによって、調整することができる。例えば、一つのパイル層を第一配向で不織布又は不織布材内に配置する一方、第二パイル層を第一配向とは異なる第二配向で配置することができる。これによって、不織布又は不織材内に複数の優先方向を定めることができる。この場合、湾曲した束は、少なくとも二つのパイル層をニードリング処理することによって互いに固定可能である。本発明では、ニードリングの結果として束が一本一本の個々の繊維にバラバラに分解することを防止することが意図されている。
【0050】
不織布材の他の好ましい実施形態では、上述の実施形態に係るパイル層を固めるためにニードリング処理するようにすることができる。ニードリング処理は、パイル層に含まれる繊維を更に絡み合わせることによって(特に局所的なレベルで絡み合わせる)、局所的に固めることができる。パイル層が、十分な数の十分に密なステッチでニードリング処理されると、顕著に改善された強度を、パイル層構造全体に与えることができる。
【0051】
不織布又は不織布材の他の実施形態では、一つのパイル層内の湾曲した束の配向が、他のパイル層内の湾曲した束の配向から、少なくとも5°、特に15°、30°、45°、60°、75°、又は90°の角度で異なって逸脱するようにすることができる。特に、これは、定められた角度逸脱で不織布又は不織布材内に優先方向を簡単に発生させることを可能にする。これは、自動車を製造する処理の枠組み内において非常に有利である。何故ならば、優先方向を、その応用に応じて適切に調整することができるからである。
【0052】
本発明の他の実施形態では、少なくとも二つのパイル層を互いにニードリング処理するか、固めるために一つのパイル層をニードリング処理することもでき、平均で、1cmの面積に対して、少なくとも1個のニードリングパンチ、好ましくは少なくとも5個のニードリングパンチが存在する。指定される領域は、ニードリング処理されたパイル層の領域に関係し、好ましくは、パイル層の全領域を表す。ニードリングパンチを導入することで、パイル層を固めてその処理を改善することができる。ニードリングプロセスは、上述のように、特に局所的に固める。ニードリングパンチの選択された密度によって、本実施形態では、複数の局所的に固められた箇所が、パイル層の選択された領域全体を固めるのに十分高いものであることが保証される。これは、特に、パイル層の均一な分布が1cmの個々のサブユニット内に存在していて、各サブユニットが本発明に係るニードリングパンチの数を有する場合に可能となる。更に、ニードリングパンチは、パイル層に十分な数の開口を提供して、液体樹脂又はポリマーでのより効率的な含浸を可能にする。この理由は、開口がニードリングの厚さ全体にわたって、つまりは本実施形態において規定されるように、パイル層の厚さ全体にわたって、樹脂又はポリマーを効率的に伝えることを可能にするからである。これは、含浸時間を減少させて、パイル層を含む部品の製造時間も減少させる。
【0053】
本発明の課題に対する解決策の更なる側面では、上述のパイル層、上述の不織布又は上述の不織布材を有する樹脂含浸部品を提供することもできて、その部品は特に自動車部品として設計されている。このような部品は、他の布構造とは別に又は共に、上述のパイル層、不織布、不織布材を有することができる。特に、上述のパイル層、不織布、不織布材が、主に負荷を吸収するために設けられた構造及び/又は織物と共にその部品に含まれることができる。更に、上述のパイル層、不織布又は不織布材を有する自動車部品は、自動車のパッシブセーフティを保証するように提供されなくてもよい。特に、こうした部品は、自動車の外皮の一部として設計されることが好ましい。部品は樹脂で含浸可能であり、完全な含浸、又は部分的な含浸を得ることができる。また、樹脂含浸部品を硬化させることができる。本実施形態に係る樹脂での含浸は、適切なポリマーでの含浸も含む。
【0054】
以下、本発明に係るパイル層、不織布、不織布材及びパイル層の製造方法の多様な実施形態が、図面に基づいて本発明を詳述するために用いられる。説明される実施形態は、特許請求される発明の全容を限定するものではない。特に、特許請求される特徴はそれぞれ、別々に、また上述の特徴と共に特許請求される。結果として、本発明の観点から適切な全ての技術的に可能な特徴の組み合わせが本願において特許請求される。
【0055】
追加的な実施形態は従属項から把握可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】本発明に係るパイル層の第一実施形態の平面図である。
図2】本発明に係るパイル層の第二実施形態の平面図である。
図3】本発明に係る不織布材の第一実施形態の平面図である。
図4】例えば上述のパイル層又は不織布材の実施形態のうち一つに含まれ得る湾曲した延伸方向を有する束である。
図5】本発明に係る製造方法の一実施形態が含む各ステップのシーケンスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0057】
完全を期すため、図面に示される実施形態は概略的な表示に過ぎない点に留意されたい。特に、本発明の具体的な対象に対する寸法及び比率は、図示されているものから逸脱し得る。
【0058】
図1は、本発明に係る炭素繊維10を含む複数の束2を有するパイル層1の第一実施形態を示す。束2はそれぞれ頂点領域6及び二つの束末端領域7を有する。頂点領域6及び束末端領域7との用語については図3において詳述する。
【0059】
複数の湾曲した束2が、孤立した繊維によってパイル層1内に固定されているのがはっきりと見える。ここで、繊維は、一部にはパイル層2に含まれ、一部には湾曲した束2に含まれる。従って、パイル層2は、絡み合わされた繊維で構成されていて、その繊維は、湾曲した束2に部分的に又は完全に含まれるものであるか、湾曲した束に含まれないものである。このようにして、繊維を絡み合わせることによって、平坦構造を構築することができて、外部の機械的影響に晒される間十分に安定であるパイル層1を、例えば後続の処理プロセスにおいて更に処理することができる。
【0060】
、各束2は、一実施形態において或るパーセンテージの炭素繊維10を有し、他の実施形態において完全に炭素繊維で構成されもする。同様に、パイル層2内の孤立した繊維は、部分的に又は完全に炭素繊維10で構成され得る。この場合、炭素繊維のパーセンテージは、特に、パイル層1に課される強度の要求に依存する。
【0061】
見て取れるように、全ての束2は、実質的に整列した配向を有し、つまり、全ての束2の頂点領域6は図面において上方を指していて、束末端領域7は、図面において下方又は斜め下方を指している。言い換えると、頂点領域6はパイル層1の一方の側を指す一方、束末端領域7はパイル層1の反対側を指す。この配向によると、各束2の束末端領域7は実質的に互いに平行に延伸するか、又は実質的に同一の向きとなり、全てがパイル層1の一方の側を指すことを意味する。しかしながら、パイル層1は、その繊維の配向に関して優先方向を有する高パーセンテージの繊維、好ましくは高パーセンテージの炭素繊維10を有する。優先方向についても、図3において詳述するが、この例示的な実施形態においては、例えば図面の上から下に向かうものとして見なすことができる。
【0062】
また、個々の束2の曲率は、或るパーセンテージの繊維、好ましくは或るパーセンテージの炭素繊維10をこの第一の優先方向に対して実質的に垂直に延伸させもする。例えば、束2内の少なくとも一部パーセンテージの繊維が、束2の頂点領域において図示されている束2の配置において水平方向に延伸することによって、他の優先方向を定めていて、その優先方向は、上記第一の優先方向に対して実質的に垂直に延伸する。パイル層1は結果として、互いに独立な少なくとも二つの優先方向を有して、特にパイル層1が繊維複合材に組み込まれる場合に、それらの優先方向においてパイル層に特別な強度を与えることができる。
【0063】
図2は、本発明に係るパイル層1の第二実施形態を示し、パイル層1に含まれる全ての束2が本発明に係る湾曲した延伸方向を有するわけではない点において図1に示される実施形態と異なる。むしろ、孤立した束は、特に定義されない略直線の延伸方向を有する。特に、これらの束は、本発明の意味における束末端領域7の曲率とは異なる曲率を有し得る頂点領域6を有さない。
【0064】
しかしながら、図示される実施形態において、パイル層1は、湾曲した延伸方向を有さないこうした種類の束2を含むこともできる。本発明の意味における湾曲していない残りの束2に対する湾曲した束2の比率は、自由に決定可能である。しかしながら、湾曲した束2の数は、湾曲していない束2の数よりも多いことが好ましい。特に、湾曲した束2の数は、湾曲していない束の数を85%、好ましくは90%、特に好ましくは98%超える。
【0065】
湾曲していない束2は、湾曲した束と同等の組成を有し得るが、必須ではない。特に、梳綿プロセス中に一部の束2を他のものよりも湾曲させて、本実施形態に係るパイル層2を形成することができる。個々の束2が湾曲していないか又は僅かに湾曲している場合、その束が本発明に係る湾曲した延伸方向とは逸脱する延伸方向を有することができる。本実施形態に基づいて、湾曲した束2及び湾曲していない束2が同じ繊維源から同様に発生するものであるが、梳綿機において処理される枠組みにおいて製造されるパイル層2において異なる延伸方向を有するようにすることも可能である。
【0066】
図3は、本発明に係る不織布又は不織布材の第一実施形態を示し、二重にすることで形成された二層プライのパイル層1で構成されている。不織布の場合、それは、二層プライのパイル層1をニードリング処理することによって固められたものであり得る。一実施形態では、二つのパイル層1が、それぞれの優先方向が互いに対して特定の角度で回転されているように互いに配置される。このようにして、個々のパイル層1の優先方向に起因し得る強度増強特性を、方向に関して具体的に調整することができる。この場合、相対的な配置として、好ましくは、15°、30°、45°、60°、75°、90°回転させることが挙げられる。本実施形態では、二つのパイル層2の相対的配置は、互いに略45°回転させたものである。
【0067】
図4は、湾曲した延伸方向を有する束を示し、その束は、例えば、上記パイル層1、不織布又は不織布材の実施形態のいずれかに含まれるものであり得る。束2自体は多数の炭素繊維10を含むが、ここでは、少数の炭素繊維のみが概略的に示されている。また、繊維は、明確な識別のために、灰色でのみ示されている。束2は好ましくは少なくとも200本の炭素繊維10、特に500本の炭素繊維10、特に好ましくは少なくとも1000本の炭素繊維10を有する。束2は、二つの束末端の間に位置する頂点領域6を有する。二つの束末端は、束末端領域7に含まれる。頂点領域6及び束末端領域7は、図面において楕円で概略的に示されている。
【0068】
束2の延伸方向は、実線で示されている。その延伸方向を計算するため、個々の繊維の相互対応する領域の位置を平均化して、平均位置を求める。
【0069】
正確な計算は、個々の繊維の部分の選択、又は使用される平均化プロセスに依存する。しかしながら、それらの計算の枠組み内において生じる差異は、全ての束2に対して均一の計算基準を用いれば、顕著なものではない。複数のプロセスが考えられ、それらは、技術的な論理プロセスと調和する必要がある。特に、平均束延伸方向は、裸眼で見積もられるおおまかな束の延伸方向と矛盾してはならない。
【0070】
また、技術的に論理的に解明されて、本発明のアイディアと矛盾しないのであれば、どのように頂点領域6及び束末端領域7が各々求められるかは、本発明にとって必ずしも重要なものではない。例えば、頂点領域6を求めるために、最大曲率を有する束の延伸方向の一点の周辺の狭い領域を選択することが合理的である。ここで、狭い領域とは、束の全長の略2から10%を含み得る。同様に、個々の束末端を含む束末端領域7を求めることもできる。束末端領域7も、束の全長の2から10%を含み得る。しかしながら、上記範囲から逸脱した範囲も可能である。
【0071】
束2の配向を求めるために複数の合理的方法を用いることができる。例えば、交差線(1)が頂点領域6を通るようにして、頂点領域6の方向と垂直になるようにして、また、が最大の曲率を示す頂点領域の一点を通過するようにすることによって、束の配向を求めることができる。結果として、このようにして解明される交差線(S1)の延伸方向は、束2の配向に対応する。しかしながら、交差は、交差線(S1)が束を二つの部分的領域に分けるようにも選択可能である。この場合、部分的領域は、それぞれ平坦な部分的セグメント(詳しくは図示せず)で構成され、交差線(S1)の左側及び交差線(S1)の右側に互いに対向して存在している。直に対向する部分的セグメントが同一の広がりを有するか又は例えば5%以上互いに逸脱しないように部分的セグメントが選択されると、交差線(S1)を適切に求めることができる。この場合、交差線(S1)の延伸方向を求めることは、個々の部分的セグメントが有するサイズを分類することを含むことができる。上述の方法の代替例として、配向は、束末端7の直線的な延伸方向に対応し得て、その束末端7の延伸方向が、束末端領域7における直線回帰によって求められる(二本の直線S2を参照)。また、好ましくは、配向は、このようにして求められる二本の直線(S2)の間の角度領域を二分するように交点において求められる二つの直線S2と交差する直線(交差線S1にほぼ対応する)の延伸方向に対応する。
【0072】
束2の配向は好ましくは、直線S1の延伸方向に対応する。そして、この種の束2を有するパイル層1の配向を、全てのこうした個別の配向を平均化することによって求めることができる。
【0073】
上述のように、合理的で均一なプロセスを解明に用いているのであれば、配向を厳密に求めることは重要ではない。
【0074】
図5は、本発明に係る方法の一実施形態が含む各ステップのシーケンスを示すフローチャートに関する。これに基づくと、パイル層1の製造方法の一実施形態には以下のステップが必要である:炭素繊維10を含む束2を梳綿機に導入するステップ;束2の炭素繊維10がパイル層1内の他の繊維10と絡み合わせながら束2を一本一本の繊維に完全には分解しないように梳綿機20を作動させるステップ; 梳綿機からパイル層10を取り外すステップ。
【0075】
製造方法の更なる実施形態では、パイル層1を不織布又は不織布材へと処理することができる。互いに積層した複数のパイル層1を固めるために、ニードリング、縫い合わせ、編むことも想定される。この場合、パイル層1に含まれる湾曲した束2を、損傷するにしても、部分的にしか損傷しないようにする必要がある。
【符号の説明】
【0076】
1 パイル層
2 束
5 頂点領域
6 束末端
7 束末端領域
10 炭素繊維
20 梳綿機
K1 第一曲率
K2 第二曲率
図1
図2
図3
図4
図5