特許第5728600号(P5728600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5728600
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】構造体
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/54 20060101AFI20150514BHJP
【FI】
   B65D90/54 Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-59621(P2014-59621)
(22)【出願日】2014年3月24日
(62)【分割の表示】特願2010-236110(P2010-236110)の分割
【原出願日】2010年10月21日
(65)【公開番号】特開2014-166887(P2014-166887A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2014年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】度会 英顕
(72)【発明者】
【氏名】藤木 知
(72)【発明者】
【氏名】花岡 洋
(72)【発明者】
【氏名】和田 剛志
(72)【発明者】
【氏名】披田 祐輔
【審査官】 会田 博行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−205112(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3091990(JP,U)
【文献】 実開昭61−091590(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を処理して処理物を得る処理部、被処理物を被処理物搬送体により搬送する被処理物搬送部とを区画する構造体であって、
開口部を有し、
シート部材の一端が前記被処理物搬送体の開口部の外周に沿って筒状に取り付けられるとともに、他端が前記構造体の開口部の外周に沿って取り付けられ、
前記構造体の開口部を通じて前記被処理物を搬送した前記被処理物搬送体の開口部が、前記シート部材の少なくとも1箇所を閉じることにより封じられることを特徴とする構造体。
【請求項2】
前記構造体には、前記処理部に向かって窪んだ窪み部が設けられ、
前記構造体の開口部は前記窪み部の下部に配置され、
前記被処理物搬送体より前記処理部に被処理物を搬送する際に、前記窪み部の前記被処理物搬送部側に配置された前記被処理物搬送体が前記構造体の開口部に向かって下降することを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
被処理物を処理して処理物を得る処理部、処理物を処理物搬送体により搬送する空間とを区画する構造体であって、
開口部を有し、
シート部材の一端が前記処理物搬送体の開口部の外周に沿って筒状に取り付けられるとともに、他端が前記構造体の開口部の外周に沿って取り付けられ、
前記構造体の開口部を通じて前記処理物が搬送された前記処理物搬送体の開口部が、前記シート部材の少なくとも1箇所を閉じることにより封じられることを特徴とする構造体。
【請求項4】
前記構造体には、前記処理部に向かって凹となる凹部が設けられ、
前記構造体の開口部は前記凹部の上部に配置され、
前記処理部より前記処理物搬送体に処理物を搬送する際に、前記凹部の前記空間側に配置された前記処理物搬送体が前記構造体の開口部に向かって上昇することを特徴とする請求項3に記載の構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は構造体に関する。より詳しくは、薬剤原料など被処理物を処理し薬剤など処理物の生産を行うための構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば治療効果を調べるための治験薬を製造するための治験薬製造ラインでは、粉体の薬剤原料に対し秤量、造粒、打錠、コーティングなどの製薬処理を行うための複数の製薬処理室が設けられている。各製薬処理室には、製薬処理の種類に応じた製薬処理装置が設けられている。製薬工場等の製薬設備においては、各製薬処理室が平面あるいは立体的に配置されているとともに、製薬処理を行うための人員が各製薬処理室に入退出するための通路、および被処理物、処理物を搬送するための通路、スペースが設けられている。
【0003】
このような製薬設備では、外部からの汚染防止、および、治験薬に用いられ、治療に必要ではあるものの健康な人体に対し有害である可能性のある薬剤原料等の外部流出の防止、そして薬剤への異物の混入によるコンタミネーションや異種の薬剤原料の混入によるクロスコンタミネーションの防止を行う必要がある。このため、薬剤原料が飛散する可能性のある製薬処理室の空気をフィルターなどで処理した上での全外気方式による換気が行われたり、製薬処理室への人員の入退室、製薬処理室への薬剤原料等の被処理物の搬送、製薬処理後の処理物の搬送などについて動線の分離が行われる。
【0004】
このような製薬設備としては、図6(a)に示すように、人員の入退室が一方向に制限される場合には、製薬処理室100の側部に、製薬処理を行う人員の入退室のため2層の廊下(入室廊下110、退室廊下120)を設け、一方で薬剤原料等の被処理物を製薬処理室100までコンテナ130により搬入し、薬剤等の製薬処理された処理物を製薬処理室100からコンテナ140により搬出するものがある。コンテナ130、140は、スタッカクレーン等が配置されたコンテナ搬送スペース150を、鉛直方向あるいは平面方向に搬送される。
【0005】
また、図6(b)に示すように、前後に製薬を行う人員の入退室のための廊下(入室廊下210、退室廊下220)を設けた製薬処理室200を中層におくとともに、その上層に被処理物の搬入スペース230を、下層に処理物の搬出スペース240を設け、上層でコンテナ250により搬送した被処理物を中層の製薬処理室200へ重力搬送し、製薬処理室200で処理された処理物を下層のコンテナ260へ重力搬送し、処理物を当該コンテナ260により搬出するものがある。コンテナ250、260は、コンテナ搬送スペース270を、鉛直方向あるいは平面方向に搬送される。このような生産設備の例が、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−9508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図6(a)に示すような生産設備では、製薬処理室100内にコンテナ130を搬送したり、人員の入退室のための階段などのスペースを設ける必要があり、製薬処理室100を広くする必要がある。製薬処理室100は、製薬処理室100に飛散している可能性のある薬剤原料の外部拡散や、薬剤への異物の混入によるコンタミネーションやクロスコンタミネーションを防ぐため、その換気は他の室との間で循環させず独立して行う全外気方式による換気とする必要がある。全外気方式による換気に必要なエネルギーは大きく、製薬処理室100の容積は小さくすることがより望ましい。
【0008】
また、製薬処理室100へコンテナを搬入するため、薬剤原料等がコンテナへ付着する可能性がある。従って、薬剤原料の外部流出、また場合によってはコンテナに付着した異物や異種薬剤原料の製薬処理室100への混入の恐れがある。このためコンテナ外面の清掃が必要になる。但し、コンテナ外面の手動清掃は清掃レベルのばらつきが大きく、自動洗浄を行う場合でも、清掃レベルのばらつきは大きく、コンテナの形状により洗浄媒体が直接当たらず、洗浄性能が低下し再現性も保障できない死角が存在する可能性がある。またコンテナ外面の清掃が完全でない場合コンテナ搬送スペース150のスタッカクレーンの清掃頻度も高くなる。
【0009】
一方、図6(b)に示すような3層の生産設備では、コンテナを直接製薬処理室200に運びこまず、人員、薬剤原料等の被処理物、製薬処理後の薬剤などの処理物の動線の交錯が防止されるので、薬剤原料の外部流出、コンタミネーションやクロスコンタミネーションの防止がなされるとともに、全外気方式による換気が必要なエリアが低減され省エネルギーが実現される可能性がある。しかしながら、生産設備を3層で構成することは建築物の容積効率の面で好ましくなく、薬剤原料などの被処理物や薬剤などの処理物の落下距離が大きくなったりすることも、被処理物や処理物の損傷分級等、品質低下につながり問題となる可能性がある。
【0010】
そこで、これを2層の生産設備とすることが考えられるが、この場合前述した点が問題となる。即ち、薬剤原料等の飛散流出、コンタミネーション、クロスコンタミネーションの防止、および省エネルギーの実現がなされることが重要になる。
【0011】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、原料等の飛散流出、コンタミネーション、クロスコンタミネーションの防止、および省エネルギーの実現がなされる構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達するための第1の発明は、被処理物を処理して処理物を得る処理部、被処理物を被処理物搬送体により搬送する被処理物搬送部とを区画する構造体であって、開口部を有し、シート部材の一端が前記被処理物搬送体の開口部の外周に沿って筒状に取り付けられるとともに、他端が前記構造体の開口部の外周に沿って取り付けられ、前記構造体の開口部を通じて前記被処理物を搬送した前記被処理物搬送体の開口部が、前記シート部材の少なくとも1箇所を閉じることにより封じられることを特徴とする構造体である。
【0013】
かかる開口部の構成により、処理部における被処理物の処理の後、コンテナ等の被処理物搬送体の開口部をシート部材で閉じて封じることにより、原料等の飛散流出等が防止される。
【0014】
また被処理物の搬送中に、処理部がシート部材により被処理物搬送部と隔離されるので、被処理物搬送部への原料等の飛散流出等が防止される。
【0015】
加えて、前記構造体には、前記処理部に向かって窪んだ窪み部が設けられ、前記開口部は前記窪み部の下部に配置され、前記被処理物搬送体より前記処理部に被処理物を搬送する際に、前記窪み部の前記被処理物搬送部側に配置された前記被処理物搬送体が前記構造体の開口部に向かって下降することも望ましい。
かかる構成により、被処理物の重力搬送距離が短縮され、被処理物の損傷等、品質低下の防止が可能になる。
【0016】
前述した目的を達するための第2の発明は、被処理物を処理して処理物を得る処理部、処理物を処理物搬送体により搬送する空間とを区画する構造体であって、開口部を有し、シート部材の一端が前記処理物搬送体の開口部の外周に沿って筒状に取り付けられるとともに、他端が前記構造体の開口部の外周に沿って取り付けられ、前記構造体の開口部を通じて前記処理物が搬送された前記処理物搬送体の開口部が、前記シート部材の少なくとも1箇所を閉じることにより封じられることを特徴とする構造体である。
【0017】
かかる開口部の構成により、処理部における被処理物の処理の後、コンテナ等の処理物搬送体の開口部をシート部材で閉じて封じることにより、原料等の飛散流出等が防止される。
【0018】
また構造体の開口部を通じた処理物の搬送中に、処理部がシート部材により上記の空間と隔離されるので、上記の空間への原料等の飛散流出等が防止される。
【0019】
加えて、前記構造体には、前記処理部に向かって凹となる凹部が設けられ、前記構造体の開口部は前記凹部の上部に配置され、前記処理部より前記処理物搬送体に処理物を搬送する際に、前記凹部の前記空間側に配置された前記処理物搬送体が前記構造体の開口部に向かって上昇することも望ましい。
かかる構成により、処理物の重力搬送距離が短縮され、処理物の損傷等、品質低下の防止が可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、原料等の飛散流出、コンタミネーション、クロスコンタミネーションの防止、および省エネルギーの実現がなされる構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】製薬設備1の構成の概略を示す模式図
図2】製薬設備1を示す図
図3】製薬処理時の製薬設備1を示す図
図4】製薬処理時の投入コンテナ8を示す図
図5】製薬処理時の収缶コンテナ5を示す図
図6】生産設備の構成の例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の生産設備等の実施形態について説明する。まず、図1図2を参照して、本実施形態の生産設備について説明する。本発明の生産設備は、治験薬等の薬剤を処理、生産する製薬設備をその実施形態として説明するが、その他の生産物を処理、生産するものであってもかまわない。
【0023】
図1は、本発明の生産設備の実施形態である製薬設備1の構成の概略を示す模式図であり、図1(a)は上下層の構成を示す図、図1(b)は下層の平面構成を示す図である。また、図2は製薬設備1の構成をより詳細に示す図である。
【0024】
図1図2に示すように、本実施形態の生産設備である製薬設備1は2層より構成され、下層に製薬処理部2、入室部3、退室部4を、上層に投入コンテナ搬送部6を有する。また、入室部3、投入コンテナ搬送部6に隣接して、製薬設備1の上層と下層に渡ってコンテナ搬送部7が設けられている。投入コンテナ8は投入コンテナ搬送部6を搬送され、収缶コンテナ5は入室部3を搬送される。製薬設備1においては、製薬処理の工程数に応じて、異なる処理を行うための複数の製薬処理部2が平面上一列に並んでおり、それぞれ概略上記のような製薬処理部2およびその他の空間の平面および断面の構成を有している。
【0025】
図2に示すように、製薬処理部2は、秤量、造粒、打錠、コーティング等の製薬処理が行われる処理部の空間であり、一部開閉可能な側壁部21により入室部3と隔てられ、一部開閉可能な側壁部22により退室部4と隔てられ、天井部23により投入コンテナ搬送部6と隔てられる。製薬処理部2には製薬処理装置24が配置される。
【0026】
図2は、製薬処理として打錠が行われる製薬処理部2の例である。製薬処理部2では製薬処理装置24として打錠機24−1、搬送装置24−2などが配置されている。打錠機24−1は薬剤原料の粒状体(被処理物)を打錠処理するものであり、この打錠処理物(処理物)が、搬送装置24−2等を介して搬送される。なお、製薬処理装置24としてはこれに限らず製薬処理部2での製薬処理に応じたものが設けられる。
【0027】
また、製薬処理部2の天井部23の一部には製薬処理部2へ向かって窪んだ窪み部25が設けられており、窪み部25の下部の一部には開口部26が設けられる。開口部26は、製薬処理時以外は樹脂等のヘルール蓋で閉じられ、製薬処理の際に開かれる。ヘルール蓋を用いることにより、作業性や密閉の再現性が向上されるが、これに限ることはなく、別の蓋体でもよい。
【0028】
さらに、製薬処理部2の側壁部21の下部の一部は製薬処理部2側に向かって凹となる凹部27となっている。この凹部27の上部には開口部28が設けられる。開口部28もまた、製薬処理時以外はヘルール蓋等の蓋体で閉じられ、製薬処理の際に開かれる。
【0029】
入室部3は、製薬処理等を行う人員が、製薬処理部2に入室する際に通行する廊下等のスペースであり、本実施形態では処理物の搬送体である収缶コンテナ5の搬送が行われる空間でもある。入室部3には、上層の投入コンテナ搬送部6に人員が移動するための階段(不図示)等も設けられる。
【0030】
入室部3は、前室(不図示)を通じて製薬設備1の外部から連続し、この前室において人員に付着したダスト等の異物を除去するなどして、ダスト等の粉塵が外部から流入することが防がれている。また、後述するように、製薬処理部2からの薬剤原料等の飛散、流入が、投入コンテナ搬送部6などとともに厳重に防止されている。これにより、入室部3あるいは投入コンテナ搬送部6等においては、ダスト等の粉塵や薬剤原料の飛散量など、汚染レベルは微小の所定値以下に抑えられている。
【0031】
本実施形態では、入室部3において、収缶コンテナ5が、コンテナ搬送部7と収缶部31の間をキャスター51等で搬送される。なお、収缶コンテナ5の搬送は、コンベア等の自動搬送設備により行ってもよい。収缶部31は、収缶コンテナ5へ製薬処理後の処理物を収缶する際に収缶コンテナ5が配置されるスペースであり、図2に示すとおり、前述の側壁部21の凹部27の入室部3側に位置し、収缶コンテナ5を上昇させるための昇降装置であるリフタ32が設けられている。
【0032】
退室部4は、製薬処理等を行う人員が、製薬処理部2から退室する際に通行する廊下等のスペースであり、製薬処理部2および入室部3と隔てられ、退室する人員の動線が処理物の動線と分離される。退室部4は、後室(不図示)を通じて製薬設備1の外部に連続し、後室で人員に付着した薬剤原料等を除去するなどすることにより、薬剤原料等の外部への流出が防がれる。また、退室部4自体もダスト等の粉塵など、汚染レベルが微小の所定値以下に抑えられている。なお、退室部4は製薬処理装置24の部品を洗浄室(不図示)で洗浄するための部品搬出などにも用いられる。入室部3から製薬処理部2に入室した人員は、製薬処理後、退室部4を通り退出する。このようにして、人員の動線についての1way化が達成されている。
【0033】
投入コンテナ搬送部6は、被処理物を搬送する搬送体である投入コンテナ8を搬送するためのスペースであり、投入コンテナ8がコンテナ搬送部7と投入部61の間を搬送される。投入コンテナ搬送部6には、自動搬送設備62としてコンベア62−1等が設けられる。投入部61は、薬剤原料等の被処理物を投入する際に投入コンテナ8が配置されるスペースであり、図2に示す通り、前述の天井部23の窪み部25の投入コンテナ搬送部6側に位置する。なお、投入部61には、投入コンテナ8を窪み部25に沿って下降させるためのリフタ等の昇降装置(不図示)が設けられている。
なお、投入コンテナ搬送部6に投入部61を他と隔てる、一部開閉可能な隔壁を設けてもよい。これにより投入コンテナ搬送部6の投入部61以外の空間への薬剤原料等の飛散流出、あるいは投入部61ひいては製薬処理部2への異物等の混入もさらに厳重に防止される。なお、同様の意味合いから、先程説明した入室部3についても、収缶部31を他と隔てるための隔壁を設けてもよい。
【0034】
コンテナ搬送部7にはスタッカクレーン等が設けられ、これにより、収缶コンテナ5や投入コンテナ8が、製薬設備1の上下層間を鉛直方向に、あるいは別の製薬処理を行うための別の製薬処理部2に向けて平面方向に搬送される。
【0035】
ここで、入室部3、退室部4、投入コンテナ搬送部6、コンテナ搬送部7、その他製薬設備1のその他の空間は循環空調を行うが、製薬処理部2は、前述した薬剤原料など被処理物等の外部流出やコンタミネーション、クロスコンタミネーションなどを防ぐ目的から、上記の空間とは独立した全外気方式による換気を行う空間とする。また、製薬処理部2の内部は、入室部3や投入コンテナ搬送部6より気圧が低く設定される差圧制御がなされる。
【0036】
続いて、製薬処理の流れを図3図4図5を用いて説明する。図3は製薬処理時の製薬設備1を示す図、図4は製薬処理時の投入コンテナ8を示す図、図5は製薬処理時の収缶コンテナ5を示す図である。
【0037】
図3に示すように、製薬処理部2における製薬処理に際しては、まず、薬剤原料等の被処理物を収缶した投入コンテナ8が、コンテナ搬送部7から、製薬設備1の上層の投入コンテナ搬送部6を投入部61まで搬送される。その後、投入コンテナ8を窪み部25に沿ってリフタ等の昇降装置により下降させる。このとき、図4(a)に示すように、投入コンテナ8の下部に設けられた開口部である排出口8aが、窪み部25の下部の開口部26より下方に突出した状態となる。
【0038】
一方で、空の収缶コンテナ5は、コンテナ搬送部7より、入室部3を収缶部31まで搬送される。その後、収缶コンテナ5を収缶部31に設けられた昇降装置であるリフタ32により上昇させる。このとき、図5(a)に示すように、収缶コンテナ5の上部に設けられた開口部である投入口5aが、凹部27の上部の開口部28より上方に突出する。
【0039】
次に、図4(b)に示すように、窪み部25の開口部26と投入コンテナ8の排出口8aの外周のそれぞれにOリング10(10−1、10−2)を取り付け、これら2つのOリング10−1、10−2により、ポリエチレン等のシート部材11の両端を、それぞれ開口部26の外周、排出口8aの外周と挟持させるようにして筒状に取り付ける。
また、図5(b)に示すように、収缶コンテナ5の投入口5aと凹部27の開口部28についても同様、その外周のそれぞれにOリング12(12−1、12−2)を取り付け、これら2つのOリング12−1、12−2により、ポリエチレン等のシート部材13の両端を、それぞれ投入口5aの外周、開口部28の外周と挟持させるようにして筒状に取り付ける。
【0040】
そして、図4(c)に示すように、投入コンテナ8の排出口8aと、打錠機24−1の上部の投入口24aを接続するように、ビニルシュート等のシュート14を排出口8a、投入口24aの外周に沿って、例えばヘルール接続などにより筒状に取り付ける。また、図5(c)に示すように、搬送装置24−2の排出口24bと、収缶コンテナ5の投入口5aを接続するように、ビニルシュート等のシュート15を排出口24b、投入口5aの外周に沿って、例えばヘルール接続などにより筒状に取り付ける。なお、製薬設備1においては、これらのシュート14、15(開口部26、28)の近傍に粉塵モニターなどを設け、粉塵等、トラブルの検出を行うようにすることもできる。
【0041】
そして、図4(c)に示す状態で、投入コンテナ8に設けられた排出バルブを開くと、打錠処理に係る被処理物が投入コンテナ8より排出され、シュート14を介して打錠機24−1へと重力搬送されることにより、開口部26を通じて打錠機24−1に投入される。製薬処理部2において、被処理物は打錠機24−1により打錠処理される。打錠処理に係る処理物は、排出バルブの開かれた搬送装置24−2、シュート15を介して搬送されることにより、開口部28を通じて収缶コンテナ5に投入され収缶される。
【0042】
投入コンテナ8の被処理物の投入を全て終えると、投入コンテナ8の排出バルブを閉じ、シュート14を取り外して製薬処理部2内の清掃を行い、図4(d)に示すようにシート部材11のたるみを伸ばしつつその先端部同士をヒートシールし不要な部分をカットするなどして、図4(e)に示すように、シート部材11により排出口8aを封じる。
【0043】
その後、図4(f)に示すように、投入コンテナ8をリフタ等の昇降装置により上昇させ、ヘルール蓋等の蓋体29により開口部26を閉じる。
【0044】
一方、収缶コンテナ5についても、収缶コンテナ5への処理物の投入を全て終えると、搬送装置24−2の排出バルブを閉じ、図5(d)に示すように、シュート15を取り外して製薬処理部2内の清掃を行い、図5(e)に示すように収缶コンテナ5をリフタ32等により下降させ、シート部材13の周囲を2箇所(図5(e)のAとBでその例を示す)でインシュロック等によりしばり、その間をヒートシールし、カットするなどして、図5(f)に示すように、シート部材13により投入口5aを封じる。また、ヘルール蓋等の蓋体30により開口部28を閉じる。
【0045】
製薬処理部2においては、以降次の被処理物(例えば別の薬剤についてのもの)が搬送され、同様の製薬処理を行う流れとなる。処理物については、これを被処理物として別の製薬処理を行う製薬処理部2まで入室部3、コンテナ搬送部7等を搬送するなどした後、同様の手順で製薬処理を行う流れとなる。
【0046】
上記した方法で、開口部26と投入コンテナ8の排出口8aの外周に沿って取り付けたシート部材11、および開口部28と収缶コンテナ5の投入口5aの外周に沿って取り付けたシート部材13により開口部26、開口部28において入室部3、および投入コンテナ搬送部6に対する製薬処理部2の密閉状態を保ちつつ製薬処理を行い、製薬処理後には各コンテナの開口部をシート部材11、13のヒートシール等により閉じて封じる。これより薬剤原料等の飛散を防ぎ、より厳重に製薬処理部2からの薬剤原料等の飛散流出、コンタミネーション、クロスコンタミネーション等の防止を実現する。
【0047】
なお、以上のシュート接続時や、ヘルール蓋などの蓋体29、30の取り外し時には全外気方式による換気エリアである製薬処理部2と、入室部3や投入コンテナ搬送部6とが一時連通することも考えられるが、これらの開口面積は小さく、また上記したように製薬処理部2は入室部3、投入コンテナ搬送部6などより気圧が低く設定されているので、製薬処理部2への気流が確保される。従って、入室部3、投入コンテナ搬送部6等に薬剤原料等が流出することがない。
【0048】
また、上記の手順で、リフタ等の昇降装置により投入コンテナ8の下降、収缶コンテナ5の上昇を行うことにより、被処理物や処理物の重力搬送において落下距離を小さくすることができ、重力搬送による被処理物や処理物の損傷等を抑える効果がある。但し、これらは必要に応じて実施される。
【0049】
なお、上記の例では製薬処理部2側の人員によりシート部材11による投入コンテナ8の排出口8aの封じ込めを行い、入室部3側の人員によりシート部材13による収缶コンテナ5の投入口5aの封じ込めを行うが、シート部材11による排出口8aの封じ込めは、図5(d)以下で説明した方法と同様に、即ち図4(d)の状態から投入コンテナ8を所定量引き上げた後に、シート部材11の周囲をインシュロック等により2箇所でしばり、その間をヒートシール、カットするなどして、投入コンテナ搬送部6側の人員により行ってもよく、シート部材13による投入口5aの封じ込めは、図4(d)以下で説明した方法と同様に、即ち図5(d)の状態からシート部材13のたるみを伸ばしつつその先端部同士をヒートシールし不要な部分をカットするなどして、製薬処理部2側の人員により行ってもよい。
【0050】
また、上記の製薬処理後には、ビニルシュートなどのシュート14やシュート15の少なくとも1箇所を直接ヒートシールするなどして閉じ、これにより投入コンテナ8の投入口8aや収缶コンテナ5の投入口5aを封じることも可能であり、これにより薬剤原料の飛散等が防がれる。この場合、シュート14やシュート15がシート部材11やシート部材13の役割を果たし、シート部材11やシート部材13は必ずしも必要でない。
【0051】
以上のように、本実施形態の生産システム1は、製薬処理部2と、入室部3、退室部4、投入コンテナ搬送部6などとを区画しているので、製薬処理部2の容積を小さくし、全外気方式による換気が必要な製薬処理部2の容積を小さくすることにより、全外気方式による換気に必要なエネルギーを削減することができる。また、室内の清掃負荷も小さくすることができる。
また、製薬処理部2へのコンテナの搬入、あるいは製薬処理部2からのコンテナの搬出を行わないので、製薬処理部2からの薬剤原料の外部流出、コンテナに付着した異物の製薬処理部2への流入によるコンタミネーション、製薬処理部2に飛散した薬剤原料がコンテナへ付着することによるクロスコンタミネーションの可能性も低く、コンテナの清掃が特に必要でない。また、スタッカクレーンの清掃頻度も下げることができる。また、入室部3、製薬処理部2、退室部4の配置により人員の動線の1way化が達成される。
また、汚染源の特定も可能(開口部26、28等)であり、当該箇所のモニタリングやスワブデータによる統計的な飛散粉塵量等の管理を行うことも可能である。
【0052】
また、本実施形態の生産システム1では、収缶コンテナ5を入室部3で搬送することにより2層で構成するので、容積率を低下させることができ、新棟建造などのニーズにマッチする。そして、処理物などの重力搬送において搬送距離の短縮が可能で、処理物などの損傷等を防ぐことができる。更に、製薬処理に際してコンテナを上昇あるいは下降させることにより、処理物や被処理物の搬送距離を短縮することができる。
【0053】
そして、人員が通行する入室部3で収缶コンテナ5を搬送することもあり、本実施形態の製薬設備1では、上記したようにシート部材11やシート部材13を用いて製薬処理部2の密閉状態を保ちつつ開口部26や開口部28を通じての被処理物や処理物の搬送、および製薬処理を行い、製薬処理後には各コンテナの開口部をシート部材11やシート部材13により封じることにより、より厳重に薬剤原料等の飛散流出やコンタミネーション、クロスコンタミネーション等の防止を実現するのである。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る生産設備等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記した製薬処理部2や入室部3、投入コンテナ搬送部6等は前述の構成でコンテナ搬送部7を挟んで2列設けられていてもよく、あるいは前述の構成で複数積層して配置されていてもよい。
また、製薬設備1の平面構成によっては、建築面積が大きくなる可能性はあるが、収缶コンテナ5を搬送する空間を平面上入室部3と別に設けることも可能である。
【符号の説明】
【0055】
1………製薬設備
2………製薬処理部
3………入室部
4………退室部
5………収缶コンテナ
5a………投入口
6………投入コンテナ搬送部
7………コンテナ搬送部
8………投入コンテナ
8a………排出口
21、22………側壁
23………天井部
24………製薬処理装置
25………窪み部
27………凹部
26、28………開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6