(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
長手方向の一部で外径が相対的に細く形成された細径部を有し、送られた光を前記細径部で分岐する入力用光ファイバと、前記入力用光ファイバから分岐された光を受光するフォトダイオードと、を備えた光カプラを用い、
前記入力用光ファイバは、その細径部が曲げられた曲線部を有し、
前記入力用光ファイバの曲線部と前記フォトダイオードの先端面とを接触させ、
前記入力用光ファイバの前記曲線部における弾性力を利用して、
前記入力用光ファイバと前記フォトダイオードとを接近させることによって、前記入力用光ファイバを前記フォトダイオードに押し付ける力を変化させて前記結合長を長くする一方、前記入力用光ファイバを前記フォトダイオードから遠ざけられることによって、前記入力用光ファイバを前記フォトダイオードに押し付け力を変化させて前記結合長を短くして、
前記入力用光ファイバから前記フォトダイオードに分岐される光の分岐比を変化することを特徴とする光カプラを用いた光の分岐方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1で提案されている光カプラにおいては、2本の光ファイバの結合長は一定である。そのため、一方の光ファイバにより送られた光は、光カプラで必ず他方の光ファイバに分岐される。ところが、一方の光ファイバを進行した光を必要なときにだけ分光カプラで他方の光ファイバに分岐岐させたい場合がある。この光カプラは、こうした要求に対応していない。また、この光カプラは、結合長が一定であるため、一方の光ファイバを進行した光が他方の光ファイバに分岐される分岐比は一定である。このカプラは、分岐比を変化させて用いることができない。
【0008】
一方、特許文献2で提案されている光カプラは、カプラ本体を加熱したり冷却したりすることによって、結合比を変化させることができる。ところが、この光カプラは、加熱冷却手段を設けることが必要なので、光カプラが大型になると共に、構造が複雑になる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、必要なときに必要な分岐比で光を分岐させることができる、小型且つ簡素な構造の光カプラ及びその光カプラを用いた光の分岐方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記課題を解決するための本発明に係る光カプラは、長手方向の一部で外径が相対的に細く形成された細径部を有し、送られた光を前記細径部で分岐する入力用光ファイバと、前記入力用光ファイバから分岐された光を受光する受光部と、を備え、前記入力用光ファイバの細径部が前記受光部に接触し、前記入力用光ファイバの細径部と前記受光部とが接触する長さである結合長又は光ファイバの伝搬定数が変化することによって、前記入力用光ファイバから前記受光部に分岐される光の分岐比が変化することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、光カプラが上記のように構成されているので、入力用光ファイバと受光部とが接触する長さである結合長又は光ファイバの伝搬定数を自在に変化させることができる。そのため、入力用光ファイバと受光部との結合長を所定の長さよりも短くしたり長くしたりすることによって入力用光ファイバによって送られた光を受光部に分岐させたり、させなかったりすることができる。また、入力用光ファイバによって送られた光を、結合長に応じた分岐比で分岐させることができる。
【0012】
本発明に係る光カプラの形態としては、以下の4つに大別することができる。
【0013】
本発明に係る第1の光カプラは、前記受光部は、受光した光を出力する出力用光ファイバであり、前記出力用光ファイバは、長手方向の一部で外径が相対的に細く形成された細径部を有し、前記入力用光ファイバと前記出力用光ファイバとの一方、又は、前記入力用光ファイバと前記出力用光ファイバとの両方は、前記細径部が曲げられた曲線部を有し、前記入力用光ファイバ若しくは前記出力用ファイバの一方の前記曲線部と他方の前記細径部とが接触され、又は、前記入力用光ファイバ及び前記出力用ファイバの両方の前記曲線部同士が接触され、前記入力用光ファイバと前記出力用光ファイバとが近づけられることによって、前記結合長が長くなり、前記入力用光ファイバと前記出力用光ファイバとが遠ざけられることによって、前記結合長が短くなる。
【0014】
この発明によれば、上記の構成によって結合長が変化するので、入力用光ファイバと出力用光ファイバとを互いに押し付け合う力を調整することによって、分岐比を自由に変化させることができる。また、入力用光ファイバと出力用光ファイバとを近づけたり遠ざけたりするときに、曲線部の弾性力を利用することができるので、光カプラの構造を簡潔にすることができる。
【0015】
本発明に係る第2の光カプラとしては、前記受光部は、受光した光を出力する出力用光ファイバであり、前記出力用光ファイバは、長手方向の一部で外径が相対的に細く形成された細径部を有し、前記入力用光ファイバと前記出力用光ファイバとの一方、又は、前記入力用光ファイバと前記出力用光ファイバとの両方は、前記細径部が曲げられた曲線部を有し、前記入力用光ファイバ若しくは前記出力用ファイバの一方の前記曲線部と他方の前記細径部とが接触され、又は、前記入力用光ファイバ及び前記出力用ファイバの両方の前記曲線部同士が接触され、前記入力用光ファイバと前記出力用光ファイバとが接触する部分を中心にして、前記入力用光ファイバと前記出力用光ファイバとの一方が他方に対して捩られる方向に回転することによって、前記入力用光ファイバがなす仮想平面と前記出力用光ファイバがなす仮想平面とが所定の角度の範囲で変化することによって、前記結合長を変化させている。
【0016】
この発明によれば、上記の構成によって結合長を変化させるので、入力用光ファイバと出力用光ファイバとがなす角度を調整することによって、分岐比を自由に変化させることができる。
【0017】
本発明に係る第3の光カプラとしては、前記受光部は、受光した光を出力する出力用光ファイバであり、前記出力用光ファイバは、長手方向の一部で外径が相対的に細く形成された細径部を有し、前記入力用光ファイバ又は前記出力用ファイバの一方は、その細径部が曲げられた曲線部を有し、前記入力用光ファイバが前記出力用光ファイバの細径部が延びる方向に前記出力用光ファイバの細径部上をスライドするか、又は前記出力用光ファイバが前記入力用光ファイバの細径部が延びる方向に前記入力用光ファイバの細径部上をスライドすることによって、前記光ファイバの伝搬定数が変化する。
【0018】
この発明によれば、上記の構成によって伝搬係数を変化させているので、出力用光ファイバに対する入力用光ファイバの相対的な位置を調整することによって、分岐比を自由に変化させることができる。
【0019】
本発明に係る第4の光カプラとしては、前記受光部は、フォトダイオードであり、前記入力用光ファイバは、その細径部が曲げられた曲線部を有し、前記入力用光ファイバの曲線部と前記フォトダイオードの先端面とが接触され、前記入力用光ファイバと前記フォトダイオードとが接近することによって、前記結合長が長くなり、前記入力用光ファイバと前記フォトダイオードが引き離されることによって、前記結合長が短くなる。
【0020】
この発明によれば、上記の構成によって結合長が変化するので、入力用光ファイバとフォトダイオードとを互いに押し付け合う力を調整することによって、分岐比を自由に変化させることができる。また、入力用光ファイバとフォトダイオードとを近づけたり遠ざけたりするときに、曲線部の弾性力を利用することができるので、光カプラの構造を簡潔にすることができる。
【0021】
(2)上記課題を解決するための本発明に係る光カプラを用いた光の分岐方法は、長手方向の一部で外径が相対的に細く形成された細径部を有し、送られた光を前記細径部で分岐する入力用光ファイバと、前記入力用光ファイバから分岐された光を受光する受光部と、を備えた光カプラを用い、前記入力用光ファイバの細径部を前記受光部に接触させ、前記入力用光ファイバの細径部と前記受光部とが接触する長さである結合長又は光ファイバの伝搬定数を変化せることによって、前記入力用光ファイバから前記受光部に分岐される光の分岐比を変化させることを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、上記の光カプラを用いて光を分岐させるので、入力用光ファイバと受光部とが接触する長さである結合長を自在に変化させることができる。そのため、入力用光ファイバと受光部との結合長を所定の長さよりも短くしたり長くしたりすることによって入力用光ファイバによって送られた光を受光部に分岐させたり、させなかったりすることができる。また、入力用光ファイバによって送られた光を、結合長に応じた分岐比で分岐させることができる。
【0023】
本発明に係る光カプラを用いたい光の分岐方法としては、以下の4つに大別することができる。
【0024】
本発明に係る第1の光カプラを用いた光の分岐方法としては、前記受光部は、受光した光を出力する出力用光ファイバであり、前記出力用光ファイバは、長手方向の一部で外径が相対的に細く形成された細径部を有し、前記入力用光ファイバと前記出力用光ファイバとの一方、又は、前記入力用光ファイバと前記出力用光ファイバとの両方は、前記細径部が曲げられた曲線部を有し、前記入力用光ファイバ若しくは前記出力用ファイバの一方の前記曲線部と他方の前記細径部とを接触させ、又は、前記入力用光ファイバ及び前記出力用ファイバの両方の前記曲線部同士を接触させ、前記入力用光ファイバと前記出力用光ファイバとを近づけることによって、前記結合長を長くし、前記入力用光ファイバと前記出力用光ファイバとを遠ざけることによって、前記結合長を短くする。
【0025】
この発明によれば、上記の光カプラを用いて結合長を変化させるので、入力用光ファイバと出力用光ファイバとを互いに押し付け合う力を調整することによって、分岐比を自由に変化させることができる。また、入力用光ファイバと出力用光ファイバとを近づけたり遠ざけたりするときに、曲線部の弾性力を利用することができるので、光カプラの構造を簡潔にすることができる。
【0026】
本発明に係る第2の光カプラを用いた光の分岐方法としては、前記受光部は、受光した光を出力する出力用光ファイバであり、前記出力用光ファイバは、長手方向の一部で外径が相対的に細く形成された細径部を有し、前記入力用光ファイバと前記出力用光ファイバとの一方、又は、前記入力用光ファイバと前記出力用光ファイバとの両方は、前記細径部が曲げられた曲線部を有し、前記入力用光ファイバ若しくは前記出力用ファイバの一方の前記曲線部と他方の前記細径部とを接触させ、又は、前記入力用光ファイバ及び前記出力用ファイバの両方の前記曲線部同士を接触させ、前記入力用光ファイバと前記出力用光ファイバとが接触する部分を中心にして、前記入力用光ファイバと前記出力用光ファイバとの一方を他方に対して捩る方向に回転させることによって、前記入力用光ファイバがなす仮想平面と前記出力用光ファイバがなす仮想平面とを所定の角度の範囲で変化させることによって、前記結合長を変化させている。
【0027】
この発明によれば、上記の光カプラを用いて結合長を変化させるので、入力用光ファイバと出力用光ファイバとがなす角度を調整することによって、分岐比を自由に変化させることができる。
【0028】
本発明に係る第3の光カプラを用いた光の分岐方法としては、前記受光部は、受光した光を出力する出力用光ファイバであり、前記出力用光ファイバは、長手方向の一部で外径が相対的に細く形成された細径部を有し、前記入力用光ファイバ又は前記出力用ファイバの一方は、その細径部が曲げられた曲線部を有し、前記入力用光ファイバが前記出力用光ファイバの細径部が延びる方向に前記出力用光ファイバの細径部上をスライドするか、又は前記出力用光ファイバが前記入力用光ファイバの細径部が延びる方向に前記入力用光ファイバの細径部上をスライドすることによって、前記光ファイバの伝搬定数を変化させる。
【0029】
この発明によれば、上記の光カプラを用いて伝搬定数を変化させるので、出力用光ファイバに対する入力用光ファイバの相対的な位置を調整することによって、分岐比を自由に変化させることができる。
【0030】
本発明に係る第4の光カプラを用いた光の分岐方法としては、前記受光部は、フォトダイオードであり、前記入力用光ファイバは、その細径部が曲げられた曲線部を有し、前記入力用光ファイバの曲線部と前記フォトダイオードの先端面とを接触させ、前記入力用光ファイバと前記フォトダイオードとを接近させることによって、前記結合長を長くし、前記入力用光ファイバと前記フォトダイオードとを引き離すことによって、前記結合長を短くする。
【0031】
この発明によれば、上記の光カプラを用いて結合長を変化させるので、入力用光ファイバとフォトダイオードとを互いに押し付け合う力を調整することによって、分岐比を自由に変化させることができる。また、入力用光ファイバとフォトダイオードとを近づけたり遠ざけたりするときに、曲線部の弾性力を利用することができるので、光カプラの構造を簡潔にすることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る光カプラ及びその光カプラを用いた光の分岐方法によれば、必要なときに必要な分岐比で光を分岐させることができる、小型且つ簡素な構造の光カプラ及びその光カプラを用いた光の分岐方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳しく説明する。ただし、本発明の技術的範囲は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明は、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0035】
[基本構成]
本発明に係る光カプラ1,1A,1B,2,2A,3,4は、
図1から
図7に示すように、長手方向の一部で外径が相対的に細く形成された細径部12を有し、送られた光を細径部12で分岐する入力用光ファイバ10と、入力用光ファイバ10から分岐された光を受光する受光部20,40,50と、を備えている。入力用光ファイバ10の細径部12は、受光部20,40,50に接触している。そして、入力用光ファイバ10の細径部12と受光部20,40,50とが接触する長さである結合長又は光ファイバの伝搬定数が変化することによって、入力用光ファイバ10から受光部20,40,50に分岐される光の分岐比Sが変化する。
【0036】
図1から
図3に示す第1実施形態、
図4及び
図5に示す第2実施形態及び
図7に示す第4実施形態の各光カプラ1,2,4は、結合長が変化することによって、入力用光ファイバ10から受光部20,50に分岐される光の分岐比Sが変化する。一方、
図6に示す第3実施形態の光カプラ3は、光ファイバの伝搬定数が変化することによって、入力用光ファイバ10から受光部40に分岐される光の分岐比Sが変化する。
【0037】
光ファイバでは、一般に、クラッドの屈折率がコアの屈折率よりも小さい。そのため、入力用光ファイバ10が直線上に延びている場合、入力用光ファイバ10のコアを進行する光は、コアの内部で全反射し、クラッドに漏れ出すことはない。ところが、入力用光ファイバ10が湾曲する部分を有し、しかも、湾曲する部分の曲率半径が小さい場合、コアを進行する光は、臨界角よりも小さな入射角でコアとクラッドとの境界面に対して入射する。そのため、湾曲する部分では、コアを進行する光はコアの内部で全反射せず、一部がクラッドに漏れ出す。
【0038】
光カプラ1,1A,1B,2,2A,3,4は、この原理を利用して、入力用光ファイバによって送られた光を曲線部14の位置で受光部20,40,50に分岐している。
【0039】
一般的なファイバ融着型光カプラは、入力用の光ファイバと出力用の光ファイバとが融着されることにより構成されている。このファイバ融着型光カプラは、入力用の光ファイバによって送られてきた光を、融着された位置で、出力用の光ファイバに分岐させている。このファイバ融着型光カプラの分岐比Sは、光ファイバにおけるは融着・延伸部の長さは融着・延伸部における光ファイバの断面形状、及び融着・延伸部におけるクラッド部とその周囲との屈折率、並びに光ファイバに入射された光の波長によって変化する。この分岐比Sは、(式1)で表すことができる。(式1)に示すように、分岐比Sは、融着・延伸部の長さLの三角関数として表すことができる。そのため、光カプラ1,1A,1B,2,2A,3,4は、結合長が変化することによって、分岐比Sが変化する。
【0041】
なお、(式1)において、Lは融着・延伸部の長さである。また、(式1)のCは、(式2)により表される値である。(式2)のλは信号光の波長、n2は光ファイバのクラッドの屈折率、aは融着・延伸部の断面における短径である。
【0043】
(式2)のVは、(式3)により表される値である。なお、(式3)において、n
3は周囲の媒体の屈折率である。また、kは、(式4)により表される真空中の波数である。
【0046】
図8に示すグラフは、光ファイバが伸ばされて、外周同士が融着された融着・延伸部の長さと分岐比Sとの関係の一例を示している。
図8に示したグラフ横軸は、光ファイバが伸ばされて、外周同士が融着された融着・延伸部の長さLであり、縦軸は、分岐比Sである。上記のように、分岐比Sは、融着・延伸部の長さLの三角関数として表すことができるので、分岐比Sは、融着・延伸部の長さLが変化することに伴って、周期的に変化する。
【0047】
この光カプラ1,1A,2,3,4によれば、必要なときに必要な分岐比Sで光を分岐させることができ、小型且つ簡素な構造の光カプラ及びその光カプラを用いた光の分岐方法を提供することができるという特有の効果を奏する。
【0048】
以下、本発明に係る光カプラ及びその光カプラを用いた光の分岐方法について実施形態ごとに説明する。
【0049】
[第1実施形態]
第1実施形態の光カプラ1は、
図1に示すように、入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20とを有している。入力用光ファイバ10は、分岐される光が送られる光ファイバであり、本体部11、細径部12及び接続部13を備えている。本体部11は入力用光ファイバ10自体であり、その外径は入力用光ファイバ10自体の外径と同じである。細径部12は、入力用光ファイバ10の外径が、入力用光ファイバ10の長手方向の一部において相対的に細く形成された部位である。本体部11と細径部12とは、接続部13によって接続されている。接続部13は、細径部12の長手方向の両側で、本体部11から細径部12に向かって外径が徐々に細くなる部位である。そして、入力用光ファイバ10は、細径部12が曲げられた曲線部14を有している。この入力用光ファイバ10は、曲線部14によって入力用光ファイバの延びる向きが反転さている。
【0050】
入力用光ファイバ10は、外径が125μm以下であり、コアの直径が10μm以下である。細径部12の外径は、1μm以上、20μm以下である。また、接続部13は、外径の変化率が0.05%以上、2.5%以下である。なお、ここでいう外径の変化率とは、入力用光ファイバ10の長手方向に1mm移動したときに外径が変化した割合である。ただし、直前の外径に対する変化量の割合は10%以上、20%以下である。また、(式5)によって表される、コアの屈折率(n
1)とクラッドの屈折率(n
2)との差は、約0.3%である。
【0052】
出力用光ファイバ20は、分岐された光が送り込まれる光ファイバである。この出力用光ファイバ20は、入力用光ファイバ10と同様に、本体部21、細径部22及び接続部23とを有している。なお、出力用光ファイバ20の本体部21、細径部22及び接続部23の構成は、入力用光ファイバ10の本体部11、細径部12及び接続部13の構成と同様である。また、出力用光ファイバ20は、細径部22が曲げられた曲線部24を有している。この出力用光ファイバ20は、曲線部24によって出力用光ファイバの延びる向きが反転さている。
【0053】
出力用光ファイバ20は、外径が125μm以下であり、コアの直径が10μm以下である。細径部22の外径は、1μm以上、20μm以下である。また、接続部23は、外径の変化率が0.05%以上、2.5%以下である。なお、ここでいう外径の変化率とは、入力用光ファイバ10の長手方向に1mm移動したときに外径が変化した割合である。また、(式5)によって表される、コアの屈折率(n
1)とクラッドの屈折率(n
2)との差は、約0.3%である。
【0054】
上記の入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20とは、同一平面内、又は同一平面に近い位置に配置され、両者の曲線部14,24同士が接触している。曲線部14,24同士が接触している部分は、入力用光ファイバ10を進行した光の一部が出力用光ファイバ20に分岐される結合部である。この結合部は、一定の長さを有している。本明細書では、この結合部の長さを「結合長」という。
【0055】
この光カプラ1は、
図1(A)に示すように、入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20とが遠ざかることによって、結合長が短くなる。一方、
図1(B)に示すように、入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20とが近づくことによって、結合長が長くなる。光カプラ1は、入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20とを近づけたり、遠ざけたりすることによって、結合長を変化させている。この結合長を変化させることによって、光カプラ1は、入力用光ファイバ10を進行した光を、必要なときに必要な分だけ出力用光ファイバ20に分岐させている。
【0056】
この光カプラ1では、入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20とを互いに押し付け合う力を調整することによって、結合長を変化させることができる。その結果、分岐比Sを自由に変化させることができる。また、入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20とを近づけたり遠ざけたりするときに、曲線部14,24の弾性力を利用することができるので、光カプラ1の構造を簡潔にすることができる。
【0057】
この光カプラ1は、結合長が0mm以上、12mm以下の範囲で変化する。そのときの分岐比Sは、0%以上、100%以下の範囲で変化する。例えば、
図1において、入力用光ファイバ10の本体部11aから光が送られた場合、結合長が2mmのときに、光の80%は、入力用光ファイバ10の本体部11bに進み、出力用光ファイバ20の本体部21aには分岐せず、光の20%は、出力用光ファイバ20の本体部21bに分岐する。
【0058】
そして、結合長が6mmのとき出力用ファイバ20の本体部21bに100%分岐し、結合長が約12mmのときに入力用光ファイバ10の本体部11aから送られた光は、出力用光ファイバ20には分岐せず、すべて入力用光ファイバ10の本体部11bに進む。
【0059】
第1実施形態の光カプラは、入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20とのうち、一方は曲線部を設けた光ファイバを使用し、他方は直線状に延びた光ファイバを使用して構成することもできる。
図2は、その一例を示している。
【0060】
光カプラ1Aは、例えば、
図2に示すように、入力用光ファイバ10は、本体部11、細径部12及び接続部13を備えている。また、入力用光ファイバ10は、細径部12が曲げられた曲線部14を有し、曲線部14によって入力用光ファイバの延びる向きが反転さている。出力用光ファイバも、本体部21、細径部22及び接続部23を備えている。ただし、細径部22は直線状に延びている。そして、光カプラ1Aは、入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20とが同一平面内、又は同一平面に近い位置に配置され、入力用光ファイバ10の曲線部14が出力用光ファイバ20の細径部22に接触することによって構成されている。
【0061】
この光カプラ1Aは、
図2に示すように、入力用光ファイバ10が出力用光ファイバ20から遠ざかることによって、結合長が短くなる。一方、入力用光ファイバ10が出力用光ファイバ20に近づくことによって、結合長が長くなる。この光カプラ1Aは、入力用光ファイバ10を出力用光ファイバ20に近づけたり、遠ざけたりすることによって、結合長を変化させている。この結合長を変化させることによって、光カプラ1Aは、入力用光ファイバ10を進行した光を、必要なときに必要な分だけ出力用光ファイバ20に分岐させている。
【0062】
図2に示す光カプラ1Aは、入力用光ファイバ10の細径部11に曲線部14を設ける一方で、出力用光ファイバ20の細径部21を直線状に延ばすことによって構成されている。ただし、光カプラ1Aは、入力用光ファイバ100の細径部11を直線状に延ばす一方で、出力用光ファイバ20の細径部21に曲線部24を設けることによって構成してもよい。その場合、この光カプラ1Aは、出力用光ファイバ20を入力用光ファイバ10に近づけたり、遠ざけたりすることによって、結合長を変化させる。
【0063】
図3は、
図1に示した入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20とがケース30の内部に収容された光カプラ1Bを示している。ケース30は、上面部材31と下面部材32とにより構成されている。上面部材31と下面部材32とは一定の間隔を空けて対向している。なお、特に
図3には示していないが、ねじ等の固定用の部材が、上面部材31と下面との間に一定の間隔を空けた形態を維持している。入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20とは、上面部材31と下面部材32との間に形成された空間に収容されている。入力用光ファイバ10の曲線部14と出力用光ファイバ20曲線部24とは、ケース30の内部で接触されている。
【0064】
この光カプラ1Bは、ケース30内部で出力用光ファイバ20を入力用光ファイバ10に対して近づけたり、遠ざけたりすることができるように構成されている。ただし、光カプラ1Bは、ケース30内部で入力用光ファイバ10を出力用光ファイバ20に対して近づけたり、遠ざけたりすることができるように構成することもできる。また、光カプラ1Bは、ケース30内部で入力用光ファイバ10及び出力用光ファイバ20の両方を移動させることによって、両者を近づけたり、遠ざけたりすることができるように構成することもできる。
【0065】
第1実施形態の光カプラ1,1A,1Bにおいて、入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20とが接触している分部に、光の屈折率を調整するための樹脂を塗布して光カプラ1Aを構成することもできる。屈折率を調整するための樹脂としては、例えば、屈折利がガラスの屈折率に近いアクリル系樹脂又はエポキシ系樹脂を挙げることができる。
【0066】
[第2実施形態]
第2実施形態の光カプラ2,2Aは、入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20との一方、又は、入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20との両方は、細径部12,22が曲げられた曲線部14,24を有している。この光カプラ2は、入力用光ファイバ10若しくは出力用ファイバ20の一方の曲線部14,24と他方の細径部12,22とが接触されるか、又は、入力用光ファイバ10及び出力用ファイバ20の両方の曲線部14,24同士が接触される。
【0067】
入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20とが接触する部分を中心にして、入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20との一方が他方に対して捩られる方向に回転することによって、入力用光ファイバ10がなす仮想平面P1,P11と出力用光ファイバ20がなす仮想平面P2,22とが所定の角度の範囲で変化することによって、結合長を変化させている。以下、図面を参照して光カプラ2,2Aを具体的に説明する。
【0068】
第2実施形態の光カプラ2は、
図4に示すように、入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20とを有している。なお、第2実施形態の光カプラ2を構成する入力用光ファイバ10自体の構成及び出力用光ファイバ20自体の構成は、第1実施形態の光カプラ1を構成する入力用光ファイバ10自体の構成及び出力用光ファイバ20自体の構成と同じである。そのため、第2実施形態の光カプラ2の入力用光ファイバ10及び出力用光ファイバ20の各構成については、第1実施形態の光カプラ1の入力用光ファイバ10及び出力用光ファイバ20の各構成と同一の符号を図面に付して、詳細な説明は省略する。
【0069】
この光カプラ2の入力用光ファイバ10は、本体部11、細径部12及び接続部13を有している。また、細径部12は、入力用光ファイバ10の延びる向きが反転される曲線部14を有している。同様に、出力用光ファイバ20は、本体部21、細径部22及び接続部23を有している。また、細径部22は、出力用光ファイバ20の延びる向きが反転される曲線部24を有している。そして、入力用光ファイバ10の曲線部14と出力用光ファイバ20の曲線部24とが接触されている。
【0070】
入力用光ファイバ10は、外径が125μm以下であり、コアの直径が10μm以下である。細径部12の外径は、5μm以上、10μm以下である。また、接続部13は、外径の変化率が0.05%以上、2.5%以下である。なお、ここでいう外径の変化率とは、入力用光ファイバ10の長手方向に1mm移動したときに外径が変化した割合である。また、(式5)によって表される、コアの屈折率(n
1)とクラッドの屈折率(n
2)との差は、約0.3%である。
【0071】
また、出力用光ファイバ20についても、入力用光ファイバ10と同様に、外径が125μm以下であり、コアの直径が10μm以下である。細径部22の外径は、5μm以上、10μm以下である。また、接続部23は、外径の変化率が0.05%以上、2.5%以下である。なお、ここでいう外径の変化率とは、入力用光ファイバ10の長手方向に1mm移動したときに外径が変化した割合である。また、(式5)によって表される、コアの屈折率(n
1)とクラッドの屈折率(n
2)との差は、約0.3%である。
【0072】
この光カプラ2は、例えば、
図4に示すように、出力用光ファイバ20が入力用光ファイバ10に対し回転されることによって結合長が変化されるように構成されている。具体的に、入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20とは、
図4(A)に示す形態と
図4(B)に示す形態との間で回転する。
図4(A)に示す形態は、入力用光ファイバ10が形成する仮想平面P1と出力用光ファイバ20が形成する仮想平面P2とが同一面をなす形態である。
図4(B)に示す形態は、入力用光ファイバ10が形成する仮想平面P1と出力用光ファイバ20が形成する仮想平面P2とが相互に直交する形態である。
【0073】
入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20とが接触する部分の長さは、入力用光ファイバ10が形成する仮想平面P1と出力用光ファイバ20が形成する仮想平面P2とが同一面をなす形態では、相対的に長い。すなわち、この形態では、結合長が長い。一方、入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20とが接触する部分の長さは、入力用光ファイバ10が形成する仮想平面P1と出力用光ファイバ20が形成する仮想平面P2とが相互に直交する形態では、相対的に短くなる。すなわち、この形態では、結合長が短い。
【0074】
この光カプラ2では、結合長は、入力用光ファイバ10(入力用光ファイバ10により形成された仮想平面P1)と出力用光ファイバ20(出力用光ファイバ20により形成された仮想平面P2)とがなす角度に応じて変化する。そのため、入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20とがなす角度を調整することによって、分岐比Sを自由に変化させることができる。
【0075】
なお、第2実施形態の光カプラ2は、入力用光ファイバ10を出力用光ファイバ20に対し回転させる形態、出力用光ファイバ20を入力用光ファイバ10に対し回転させる形態及び入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20との両方を回転させる形態のどの形態であってもよい。
【0076】
この光カプラ2は、入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20とのなす角度が0度以上、5度以下の範囲で変化する。そのときの分岐比Sは、0%以上、100%以下の範囲で変化する。例えば、
図4(A)において、入力用光ファイバ10の本体部11aから光が送られた場合、入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20とのなす角度が1度のときに、光の50%は、入力用光ファイバ10の本体部11bに進み、出力用光ファイバ20の本体部21aには分岐せず、光の50%は、出力用光ファイバ20の本体部21bに分岐する。
【0077】
そして、
図4(B)に示す形態において、入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20とのなす角度が約5度のときに入力用光ファイバ10の本体部11aから送られた光は、出力用光ファイバ20には分岐せず、すべて入力用光ファイバ10の本体部11bに進む。
【0078】
このように、光カプラ2は、入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20との一方を他方に対して回転させることによって、結合長を変化させている。そして、光カプラ2は、結合長が変化されることによって、入力用光ファイバ10を進行した光を、必要なときに必要な分だけ出力用光ファイバ20に分岐させている。
【0079】
なお、第2実施形態の光カプラ2についても、光の屈折率を調整するために、上述した樹脂を、入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20とが接触している分部に塗布して光カプラ2を構成することもできる。
【0080】
以上、入力用光ファイバ10及び出力用光ファイバ20の両方が湾曲部14,24を有する場合について説明した。しかしながら、第2実施形態の光カプラは、入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20との一方に、細径部が曲げられた曲線部を設けて構成することもできる。
図5は、その一例を示している。
【0081】
光カプラ2Aは、例えば、
図5に示すように、入力用光ファイバ10は、本体部11、細径部12及び接続部13を備えている。また、入力用光ファイバ10は、細径部12が曲げられた曲線部14を有し、曲線部14によって入力用光ファイバの延びる向きが反転さている。出力用光ファイバも、本体部21、細径部22及び接続部23を備えている。ただし、細径部22は直線状に延びている。そして、光カプラ1Aは、入力用光ファイバ10の曲線部14が出力用光ファイバ20の細径部22に接触することによって構成されている。
【0082】
この光カプラ1Aは、
図5に示すように、入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20とが接触する部分を中心にして、入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20一方が他方に対して捩られる方向に回転し、入力用光ファイバ10がなす仮想平面P11と出力用光ファイバ20がなす仮想平面P22とが所定の角度の範囲で変化することによって、結合長を変化させている。
【0083】
なお、
図5に示す光カプラ2Aは、入力用光ファイバ10の細径部11に曲線部14を設ける一方で、出力用光ファイバ20の細径部21を直線状に延ばすことによって構成されている。ただし、光カプラ2Aは、入力用光ファイバ10の細径部11を直線状に延ばす一方で、出力用光ファイバ20の細径部21に曲線部24を設けることによって構成してもよい。
【0084】
[第3実施形態]
第3実施形態の光カプラ3は、入力用光ファイバ10又は出力用ファイバ40の一方は、その細径部12,42が曲げられた曲線部14を有し、入力用光ファイバ10が出力用光ファイバ40の細径部42が延びる方向に出力用光ファイバ40の細径部42上をスライドするか、又は出力用光ファイバ40が入力用光ファイバ10の細径部12が延びる方向に入力用光ファイバ10の細径部12上をスライドすることによって、光ファイバの伝搬定数が変化する。以下、図面を参照して、光カプラ3を具体的に説明する。
【0085】
第3実施形態の光カプラ3は、
図6に示すように、入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ40とを有している。なお、この光カプラ3の入力用光ファイバ10の構成は、第1実施形態の光カプラ1の入力用光ファイバ10の構成と同様である。そのため、この光カプラ3の入力用光ファイバ10の構成については、第1実施形態の光カプラ1の入力用光ファイバ10の構成と同じ符号を図面に付し、詳細な説明は省略する。
【0086】
入力用光ファイバ10は、本体部11、細径部12及び接続部13を有している。また、入力用光ファイバ10の細径部13は、入力用光ファイバ10の延びる向きが反転される曲線部14を有している。入力用光ファイバ10は、外径が125μm以下であり、コアの直径が10μm以下である。細径部12の外径は、5μm以上、20μm以下である。また、接続部13は、外径の変化率が0.05%以上、2.5%以下である。なお、ここでいう外径の変化率とは、入力用光ファイバ10の長手方向に1mm移動したときに外径が変化した割合である。また、(式5)によって表される、コアの屈折率(n
1)とクラッドの屈折率(n
2)との差は、約0.3%である。
【0087】
出力用光ファイバ40は、直線状に延びている。この出力用光ファイバ40は、光ファイバ自体の外径を有する本体部41と、長手方向の一部の外径が相対的に細い細径部42と、細径部42の長手方向の両側で本体部41から細径部42に向かって外径が徐々に細くなり、本体部41と細径部42とを接続している一対の接続部43とを有している。この出力用光ファイバ40の本体部41、細径部42及び接続部43の外径は、入力用光ファイバ10の本体部11、細径部12及び接続部13の外径よりも大きく形成されている。
【0088】
出力用光ファイバ40は、外径が125μm以下であり、コアの直径が10μm以下である。細径部42の外径は、1μm以上、20μm以下である。また、接続部43は、外径の変化率が0.05%以上、2.5%以下である。なお、ここでいう外径の変化率とは、入力用光ファイバ10の長手方向に1mm移動したときに外径が変化した割合である。また、(式5)によって表される、コアの屈折率(n
1)とクラッドの屈折率(n
2)との差は、約0.3%である。
【0089】
この光カプラ3は、入力用光ファイバ10の曲線部14が出力用光ファイバ40の外周面に接触している。そして、入力用光ファイバ10が出力用光ファイバ40の接続部43同士の間でスライドすることによって、光ファイバの伝搬定数が変化する。すなわち、この光カプラ3では、出力用光ファイバ40に対する入力用光ファイバ10の相対的な位置を調整することによって、分岐比Sを自由に変化させることができる。
【0090】
この実施形態の光カプラ3は、入力用と出力用光ファイバの伝搬定数βの差δを利用し分岐比Sを変化させている。伝搬定数βの差δは、(式6)によって求めることができる。なお、伝搬定数βは、(式7)によって表すことができる。ただし、(式7)によって求まる値は、光ファイバの長手方向の伝搬定数である。
【0092】
なお、β
1は入力用光ファイバの伝搬定数であり、β
2は出力用光ファイバの伝搬定数である。
【0094】
なお、(式7)において、n
1はコアの屈折率であり、kは(式4)により定まる値である。伝搬定数βは、(式7)に示すように、コア径及びコア屈折率により変化する。この伝搬定数に差が生じた場合、(式8)により表されるFが変化し、(式9)により表される結合光の出力Pが変化する。そのため、光カプラ3は、分岐比Sが変化する。
【0096】
なお、(式6)において、χはモード結合定数である。
【0098】
なお、(式9)において、qzは規格化距離である。
【0099】
例えば、入力用光ファイバの細径部外径が2μmであり、出力用光ファイバの外径が2μmであり、結合長が4mmであり、結合率が80%の場合において、結合ファイバを2mm動かした場合の結合率は20%になる。
【0100】
なお、第3実施形態の光カプラ3についても、光の屈折率を調整するために、上述した樹脂を、入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ40とが接触している分部に塗布して光カプラ3を構成することもできる。
【0101】
以上、曲線部14を有する入力用光ファイバ10と、直線状に延びる出力用光ファイバ40とで光カプラ3を構成した場合を例に説明した。ただし、第3実施形態の光カプラは、特に図面に示していないが、直線状に延びる入力用光ファイバと曲線部を有する出力用光ファイバとで構成することもできる。その場合、出力用光ファイバを入力用光ファイバの細径部に沿わせて移動させることによって、伝搬定数を変化させる。
【0102】
[第4実施形態]
第4実施形態の光カプラ4は、
図7に示すように、入力用光ファイバ10とフォトダイオード50とを備えている。なお、この光カプラ4の入力用光ファイバ10の構成は、第1実施形態の光カプラ1の入力用光ファイバ10の構成と同様である。そのため、この光カプラ4の入力用光ファイバ10の構成については、第1実施形態の光カプラ1の入力用光ファイバ10の構成と同じ符号を図面に付し、詳細な説明は省略する。
【0103】
入力用光ファイバ10は、本体部11、細径部12及び接続部13を有している。また、入力用光ファイバ10の細径部12は、入力用光ファイバ10の延びる向きが反転される曲線部14を有している。入力用光ファイバ10は、外径が125μm以下であり、コアの直径が10μm以下である。細径部12の外径は、1μm以上、20μm以下である。また、接続部13は、外径の変化率が0.05%以上、2.5%以下である。なお、ここでいう外径の変化率とは、入力用光ファイバ10の長手方向に1mm移動したときに外径が変化した割合である。また、(式5)によって表される、コアの屈折率(n
1)とクラッドの屈折率(n
2)との差は、約0.3%である。
【0104】
フォトダイオード50は、光検出器として機能する半導体のダイオードである。フォトダイオード50は、PN型、PIN型、ショットキー型、アバランシェ(APD)型等の種々の構造のものを用いることができる。
【0105】
この光カプラ4は、入力用光ファイバ10の曲線部14がフォトダイオード50の先端面51に接触して構成されている。そして、
図7(A)に示すように、入力用光ファイバ10とフォトダイオード50とが遠ざかることによって、結合長が短くなる。一方、
図7(B)に示すように、入力用光ファイバ10とフォトダイオード50とが近づくことによって、結合長が長くなる。このように、光カプラ4は、入力用光ファイバ10とフォトダイオード50とを近づけたり、遠ざけたりすることによって、結合長を変化させている。この結合長を変化させることによって、光カプラ4は、入力用光ファイバ10を進行した光を、必要なときに必要な分だけフォトダイオード50に分岐させている。
【0106】
この光カプラ4では、入力用光ファイバ10とフォトダイオード50とを互いに押し付け合う力を調整することによって、結合長を変化させている。そのため、押し付けあう力を調整することによって、分岐比Sを自由に変化させることができる。また、入力用光ファイバ10とフォトダイオード50とを近づけたり遠ざけたりするときに、曲線部14の弾性力を利用することができるので、光カプラ4の構造を簡潔にすることができる。
【0107】
この光カプラ4は、結合長が1mm以上、5mm以下の範囲で変化する。そのときの分岐比Sは5%以下の範囲で変化する。例えば、入力用光ファイバ10の本体部11aから光が送られた場合、結合長が3mmのときに、光の85%は、入力用光ファイバ10の本体部11bに進み、光の5%は、フォトダイオード50に分岐する。
【0108】
なお、第4実施形態の光カプラ4についても、光の屈折率を調整するために、上述した樹脂を、入力用光ファイバ10とフォトダイオード50が接触している分部に塗布して光カプラ4を構成することもできる。
【0109】
以上、第1実施形態から第4実施形態の光カプラ1,1A,1B,2,2A,3,4について説明した。光カプラ1,1A,1B,2,2A,3,4は、分岐比Sが光の波長に依存する性質を利用することもできる。
【0110】
分岐比Sは、上述した(式1)及び(式2)に示すように、入射される光の波長に依存する。この性質をカプラ1,1A,1B,2,2A,3,4に適用するのである。例えば、第1実施形態の光カプラ1の入力用光ファイバ10に、波長がλ1の光と波長がλ2の光とを入射させ、結合長を変化させる。分岐比Sが光の波長に依存する性質を利用した場合、結合長を変化させることにより、各波長の光の分岐比Sに差を設けることができる。なお、ここでは、波長がλ1の光の分岐比をSλ1とし、波長がλ2の光の分岐比をSλ2とする。また、(Sλ1、Sλ2)は、光カプラ1に波長がλ1の光と波長がλ2の光とを入射したときの各波長の分岐比の値を表すものとする。
【0111】
分岐比Sが光の波長に依存する性質を利用した場合、(Sλ1、Sλ2)を、例えば、(0%、0%)、(100%、100%)、(50%、100%)、(0%、50%)、(50%、0%)、(100%、0%)のように、各波長の光の分岐比Sに差を設けることができる。なお、ここに示した各波長の光の分岐比は、一例を示すものであり、各波長の光の分岐比は、この数値以外にも差を設けて分岐させることができる。また、入射させる光の波長は2種類に限定されず、3種類以上の波長の光を入射させることもできる。
【0112】
第1実施形態から第4実施形態の光カプラ1,1A,1B,2,2A,3,4において、分岐比Sが光の波長に依存する性質を利用する場合、例えば、光カプラ1,1A,1B,2,2A,3,4に入射させる波長を選択するための選択スイッチを設けるとよい。
【0113】
また、第1実施形態から第4実施形態の光カプラ1,1A,1B,2,2A,3,4において、分岐比Sが光の波長に依存する性質を利用する場合、例えば、光カプラ1,1A,1B,2,2A,3,4は、光源の波長の変化を光のパワー(単位はワット(W))として与えることや、光のパワーが一定になるように結合長を変化させることによって長さの情報(移動量)を与えることができる。すなわち、分岐比Sが光の波長に依存する性質を利用した場合、光カプラ1,1A,1B,2,2A,3,4は波長モニタとして機能する。
【0114】
[実験例]
実験は、
図9及び
図10に示すように、入力用光ファイバ10の細径部12と出力用光ファイバ20の細径部14とを接触させて光カプラ1を構成し、この光カプラ1の結合率Sを求めることによって行った。
図9に示す光カプラ1は、入力用光ファイバ10の細径部12及び出力用光ファイバ20の細径部22の両方に曲線部14,24を設けた形態である。
図10に示す光カプラ1Cは、入力用光ファイバ10の細径部12を直線状に延ばし、出力用光ファイバ20の細径部22にのみ曲線部24を設けた形態である。
【0115】
実験は、
図9に示す光カプラ1については、入力用光ファイバ10の細径部12と出力用光ファイバ20の細径部14とが接触する部分に樹脂を塗布した光カプラ1と樹脂を塗布していない光カプラ1とを用意し、各光カプラ1の結合長Xを変化させ、結合率Sがどのように変化するかを求めることにより行った。その際、光カプラ1の第1ポートP1から、波長が1550nmの光を入力し、第2ポートP2、及び第4ポートP4の出力を測定した。なお、ここでいう結合率Sは、第1ポートP1の入力に対し第4ポートP4から出力された割合を意味する。また、塗布した樹脂は、屈折率がガラスの屈折率に近いエポキシ系樹脂である。なお、以下では、
図9に示す光カプラ1について、樹脂を塗布していない光カプラ1を第1サンプル、樹脂を塗布した光カプラ1を第2サンプルとして説明する。
【0116】
一方、
図10に示すカプラ1Cについては、入力用光ファイバ10の細径部12と出力用光ファイバ20の細径部14とが接触する部分に樹脂を塗布せず、光カプラ1Cの結合長Xを変化させ、結合率Sがどのように変化するかを求めることにより行った。その際、光カプラ1の第1ポートP1から、波長が1550nmの光を入力し、第2ポートP2、及び第4ポートP4の出力を測定した。なお、以下では、
図10に示すカプラ1Cについては、第3サンプルとして説明する。
【0117】
実験に用いた第1サンプル、第2サンプル及び第3サンプルの入力用光ファイバ10の外径D1及び出力用光ファイバ20の外径D2は、125μmである。第1サンプルの細径部の長さL1,L2は、入力用光ファイバ10及び出力用光ファイバ20共に、6.0mmである。また、入力用光ファイバ10の本体部11aと本体部11bとの間隔H1、及び出力用光ファイバ20の本体部21aと本体部21bとの間隔H2は、ともに9.0mmである。
【0118】
第2サンプルの細径部の長さL1,L2は、入力用光ファイバ10及び出力用光ファイバ20共に、6.0mmである。また、入力用光ファイバ10の本体部11aと本体部11bとの間隔H1、及び出力用光ファイバ20の本体部21aと本体部21bとの間隔H2は、ともに9.0mmである。
【0119】
第3サンプルの細径部の長さL1,L2は、4.0mmである。
【0120】
第1サンプル及び第2サンプルについては、結合長Xを約1mmから約5mmまで変化させて、結合率Sを求めた。第3サンプルについては、結合長Xを約0.5mmから約1.5mmまで変化させて、結合率Sを求めた。
【0121】
図11は、測定結果を示している。この
図11に示すグラフの横軸は結合長Xを表し、縦軸は結合率Sを表している。また、
図11において、実線は、第1サンプルの測定結果、破線は、第2サンプルの測定結果、点線は、第3サンプルの測定結果を示している。
【0122】
(第1サンプルの測定結果)
第1サンプルでは、結合長Xが長くなるにしたがって、結合長Xがある長さになるまでの範囲では、結合率Sが増加した。そして、結合長Xが約4mmで結合率Sはピークになった。第1サンプルの結合率Sのピークの値は、約96%である。結合長Xが4mmを超える範囲では、結合長Xが長くなるにしたがって、結合率Sが減少した。
【0123】
(第2サンプルの測定結果)
第2サンプルについても、第1サンプルと同様に結合長Xが長くなるにしたがって、結合長Xがある長さになるまでの範囲では、結合率Sが増加する。そして、結合長Xが3mmよりも若干短いところで結合率Sはピークになった。第2サンプルの結合率Sのピークの値は、100%である。すなわち、第1ポートP1から、入力された光は、第2ポート及び第3ポートには分岐されず、すべて第4ポートP4に出力された。結合長Xが3mmを超える範囲では、結合長Xが長くなるにしたがって、結合率Sが減少した。
【0124】
第1サンプルの測定結果及び第2サンプルの測定結果から分かるように、入力用光ファイバ10及び出力用光ファイバ20の両方に曲線部14,24を設けた場合、結合率Sは、結合長Xがある長さになるまでは増加し、結合長Xがある長さを超えると減少する。また、同じ形態の入力用光ファイバ10と出力用光ファイバ20とを用いて光カプラ1を作成し、条件をそろえた場合、樹脂を塗布していない光カプラ1よりも樹脂を塗布した光カプラ1の方が、高い結合率Sを得ることができる。
【0125】
(第3サンプルの測定結果)
第3サンプルでは、結合長Xを上記の範囲で変化させた場合、結合長Xが長くなるにしたがって、結合率Sが増加し続け、結合率Sが減少することはなかった。
【0126】
第3サンプルの測定結果から分かるように、直線状の入力用光ファイバ10と、曲線部24を有する出力用光ファイバ20とで光カプラ1Aを構成した場合、結合率Sは、結合長Xが長くなるにしたがって増加し、減少することがない。
【解決手段】光カプラ1は、長手方向の一部で外径が相対的に細く形成された細径部12を有し、送られた光を細径部12で分岐する入力用光ファイバ10と、入力用光ファイバ10から分岐された光を受光する出力用ファイバ20と、を備え、入力用光ファイバ10の細径部12が出力用ファイバ20の細径部22に接触し、入力用光ファイバ10の細径部12と出力用ファイバ20の細径部22との接触する長さである結合長又は光ファイバの伝搬定数が変化することによって、入力用光ファイバ10から出力用ファイバ20に分岐される光の分岐比Sが変化する。