特許第5728616号(P5728616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5728616
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】変成シリコーン樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/02 20060101AFI20150514BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20150514BHJP
   C09C 1/02 20060101ALI20150514BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   C08L71/02
   C08K9/04
   C09C1/02
   C09C3/08
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-253580(P2014-253580)
(22)【出願日】2014年12月16日
(62)【分割の表示】特願2011-186124(P2011-186124)の分割
【原出願日】2011年8月29日
(65)【公開番号】特開2015-78379(P2015-78379A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2015年1月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598039965
【氏名又は名称】白石工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】筬部 周浩
(72)【発明者】
【氏名】東 雅昭
【審査官】 井津 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第03/042103(WO,A1)
【文献】 特開2007−169485(JP,A)
【文献】 特開2001−158863(JP,A)
【文献】 特開2007−197585(JP,A)
【文献】 特開2007−045935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸、樹脂酸及びこれらの誘導体の少なくとも1種で炭酸カルシウムを表面処理し、該表面処理後にアルカリ金属化合物を添加することによって得られる500μg/g〜2000μg/gのアルカリ金属を含む表面処理炭酸カルシウムと、変成シリコーン樹脂とを含む、変成シリコーン樹脂組成物。
【請求項2】
前記表面処理炭酸カルシウムのBET比表面積は、1m/g〜60m/gである、請求項1に記載の変成シリコーン樹脂組成物。
【請求項3】
前記炭酸カルシウムに対する脂肪酸、樹脂酸及びこれらの誘導体の少なくとも1種の処理量は、前記炭酸カルシウム100重量部に対して、0.1重量部〜20重量部である、請求項1または2に記載の変成シリコーン樹脂組成物。
【請求項4】
前記アルカリ金属は、ナトリウム及びカリウムの少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の変成シリコーン樹脂組成物。
【請求項5】
前記アルカリ金属化合物が、ナトリウムまたはカリウムの水酸化物または炭酸塩である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の変成シリコーン樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変成シリコーン樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂に揺変性(チキソトロピック性)などを付与することを目的として、脂肪酸などで表面処理された炭酸カルシウムを樹脂に配合することが行われている。
【0003】
このような樹脂組成物を、例えばシーラントなどとして用いる場合、シーラントには被接着物への高い追随性が要求されるため、樹脂組成物には、揺変性に加えて、低モジュラス、高い伸びを有することが求められる。
【0004】
例えば、特許文献1には、脂肪酸などで表面処理された炭酸カルシウムを樹脂に配合することにより、モジュラス及び伸び率の点で優れた2液型の硬化性樹脂組成物が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、脂肪酸系表面処理剤で処理され、アルカリ金属を含む表面処理炭酸カルシウムを含む樹脂組成物が開示されている。しかしながら、特許文献2に開示された樹脂組成物は、カートリッジタイプといった長期保存型のシーラントなどとして用いる場合には、貯蔵安定性の観点から不適であることが開示されている。これは、特許文献3にも開示されているように、樹脂組成物に含まれるアルカリ金属イオンにより、樹脂組成物の貯蔵安定性が悪くなっていることが原因であると考えられる。
【0006】
このため、特許文献3では、表面処理炭酸カルシウムを含む樹脂組成物中のアルカリ金属含有量を1.0×10−3mol/100gCaCO以下とすることにより、良好な貯蔵安定性を有する1液型硬化性樹脂組成物を提供することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−94134号公報
【特許文献2】特開2007−169485号公報
【特許文献3】特開2001−158863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、低モジュラス、高い伸び、良好な貯蔵安定性を有する変成シリコーン樹脂組成物、その製造方法及び変成シリコーン樹脂組成物用の表面処理炭酸カルシウムを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の変成シリコーン樹脂組成物は、表面処理炭酸カルシウムと変成シリコーン樹脂とを含む。表面処理炭酸カルシウムは、脂肪酸、樹脂酸及びこれらの誘導体の少なくとも1種で炭酸カルシウムを表面処理してなる。表面処理炭酸カルシウムは、500μg/g〜2000μg/gのアルカリ金属を含む。
【0010】
表面処理炭酸カルシウムのBET比表面積は、1m/g〜60m/gであることが好ましい。
【0011】
炭酸カルシウムに対する脂肪酸、樹脂酸及びこれらの誘導体の少なくとも1種の処理量は、炭酸カルシウム100重量部に対して、0.1重量部〜20重量部であることが好ましい。
【0012】
アルカリ金属は、ナトリウム及びカリウムの少なくとも1種であることが好ましい。
【0013】
本発明の変成シリコーン樹脂組成物用の表面処理炭酸カルシウムは、脂肪酸、樹脂酸及びこれらの誘導体の少なくとも1種で炭酸カルシウムを表面処理してなる。表面処理炭酸カルシウムは、500μg/g〜2000μg/gのアルカリ金属を含む。
【0014】
本発明の変成シリコーン樹脂組成物の製造方法においては、脂肪酸、樹脂酸及びこれらの誘導体の少なくとも1種で炭酸カルシウムを表面処理する。表面処理された炭酸カルシウムと、アルカリ金属の量が500μg/g〜2000μg/gとなるようにアルカリ金属化合物とを混合して表面処理炭酸カルシウムを得る。表面処理炭酸カルシウムと変成シリコーン樹脂とを混合する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、低モジュラス、高い伸び、良好な貯蔵安定性を有する変成シリコーン樹脂組成物、その製造方法及び変成シリコーン樹脂組成物用の表面処理炭酸カルシウムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0017】
本実施形態の変成シリコーン樹脂組成物は、表面処理炭酸カルシウムを含む。表面処理炭酸カルシウムは、炭酸カルシウムの表面が脂肪酸、樹脂酸及びこれらの誘導体の少なくとも1種(以下、脂肪酸などということがある)で表面処理され、さらにアルカリ金属を500μg/g〜2000μg/g含むものである。
【0018】
(炭酸カルシウム)
表面処理炭酸カルシウムを構成する炭酸カルシウムは、特に限定されない。炭酸カルシウムとしては、例えば、従来公知の炭酸カルシウムを用いることができる。炭酸カルシウムの具体例としては、合成炭酸カルシウム、天然炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム)などが挙げられる。炭酸カルシウムは、合成炭酸カルシウムであることが好ましい。
【0019】
合成炭酸カルシウムは、特に限定されない。合成炭酸カルシウムとしては、例えば沈降性(膠質)炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムなどが挙げられる。合成炭酸カルシウムは、例えば水酸化カルシウムを炭酸ガスと反応させることによって製造することができる。水酸化カルシウムは、例えば酸化カルシウムを水と反応させることによって製造することができる。酸化カルシウムは、例えば石灰石原石をコークスなどで混焼することによって製造することができる。この場合、焼成時に炭酸ガスが発生するので、この炭酸ガスを水酸化カルシウムと反応させることによって炭酸カルシウムを製造することができる。
【0020】
天然炭酸カルシウムは、天然に産出する炭酸カルシウム原石を公知の方法で粉砕することにより得られるものである。炭酸カルシウム原石を粉砕する方法としては、ローラーミル、高速回転ミル(衝撃剪断ミル)、容器駆動媒体ミル(ボールミル)、媒体撹拌ミル、遊星ボールミル、ジェットミルなどで粉砕する方法が挙げられる。
【0021】
炭酸カルシウムの平均粒子径は、通常20nm〜10000nm程度であり、30nm〜2000nm程度であることが好ましく、30nm〜150nm程度であることがより好ましい。なお、炭酸カルシウムの平均粒子径は、透過型電子顕微鏡による画像解析によって測定した値である。
【0022】
(脂肪酸、樹脂酸及びこれらの誘導体)
脂肪酸及びその誘導体は、特に限定されない。脂肪酸及びその誘導体としては、例えば脂肪酸、その金属塩、そのエステル化物などが挙げられる。
【0023】
脂肪酸としては、例えば炭素数6〜31の飽和または不飽和の脂肪酸が挙げられる。
【0024】
飽和脂肪酸の具体例としては、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アライン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸などが挙げられる。これらの中でも、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などが好ましく用いられる。
【0025】
また、不飽和脂肪酸の具体例としては、オブッシル酸、カルロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、ツズ酸、フィゼテリン酸、モリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、アスクレビン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、ゴンドイン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、セラコレイン酸、キシメン酸、ルメクエン酸、ソルビン酸、リノール酸などが挙げられる。
【0026】
脂肪酸の金属塩としては、例えば、上記脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩などが挙げられる。これらの中でも上記脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が好ましい。
【0027】
脂肪酸のエステル化物としては、例えば、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸ラウリル、パルミチン酸ステアリル、パルミチン酸ラウリルなどが挙げられる。
【0028】
より好ましい脂肪酸及びその誘導体としては、炭素数9〜21の飽和脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。これらの中でも、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などのナトリウム塩が特に好ましい。
【0029】
樹脂酸及びその誘導体は、特に限定されない。樹脂酸及びその誘導体としては、例えば樹脂酸、その金属塩、その他の誘導体などが挙げられる。
【0030】
樹脂酸の具体例としては、アビエチン酸、ピマル酸、レポピマール酸、ネオアビエチン酸、パルストリン酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラアビエチン酸、デキストロピマール酸、イソデキストロピマール酸などが挙げられる。
【0031】
樹脂酸の金属塩としては、例えば上記樹脂酸のナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩などが挙げられる。
【0032】
また、樹脂酸の誘導体としては、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、ロジンエステル、マレイン化ロジン、マレイン化ロジンエステル、ロジン変成フェノールなども挙げられる。
【0033】
好ましい樹脂酸及びその誘導体としては、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、テトラアビエチン酸、ピマル酸、デキストロピマール酸、水添ロジン、不均化ロジン、マレイン化ロジンが挙げられる。
【0034】
炭酸カルシウムに対する脂肪酸、樹脂酸及びこれらの誘導体の少なくとも1種の処理量は、炭酸カルシウム100重量部に対して、0.1重量部〜20重量部程度であることが好ましく、1重量部〜10重量部程度であることがより好ましく、2重量部〜5重量部程度であることがさらに好ましい。炭酸カルシウムに対する脂肪酸、樹脂酸及びこれらの誘導体の少なくとも1種の処理量が少なすぎると、表面処理されていない部分ができ、表面処理炭酸カルシウムとしての効果が十分に発揮できなくなり好ましくない。また、脂肪酸、樹脂酸及びこれらの誘導体の少なくとも1種の処理量が多すぎると、表面処理量に比例した効果が得られなくなると共にコストが高くなり、経済的に不利となり好ましくない。
【0035】
炭酸カルシウムを脂肪酸、樹脂酸及びこれらの誘導体の少なくとも1種で表面処理する方法は特に限定されない。
【0036】
表面処理は、例えば、炭酸カルシウムと水とを含むスラリーに、脂肪酸、樹脂酸及びこれらの誘導体の少なくとも1種とを添加した後、脱水、乾燥する方法などが採用できる。例えば、脂肪酸のアルカリ金属塩で炭酸カルシウムを表面処理する具体的な方法としては、次のような方法が挙げられる。
【0037】
脂肪酸を水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などのアルカリ金属水溶液中で加熱しながら、脂肪酸のアルカリ金属水溶液にする。次に、炭酸カルシウムと水とのスラリーに、脂肪酸のアルカリ金属水溶液を添加して攪拌する。これにより、炭酸カルシウムの表面を脂肪酸で表面処理することができる。
【0038】
炭酸カルシウムと水とのスラリー中の炭酸カルシウムの固形分の含有量は、炭酸カルシウムの平均粒子径、炭酸カルシウムのスラリー中への分散性、スラリー脱水の容易さなどを考慮して適宜調整すればよい。一般的には、スラリーの固形分含有量を2〜30重量%程度、好ましくは5〜20重量%程度となるように調整することにより、適度な粘度のスラリーとすることができる。
【0039】
スラリーの脱水は、例えばフィルタープレスなどの方法によって行えばよい。また、乾燥は、例えば箱型乾燥機などによって行えばよい。
【0040】
また、脂肪酸を脂肪酸の金属塩とはせずに、脂肪酸を用いて炭酸カルシウムの表面を処理することもできる。例えば、炭酸カルシウムを、脂肪酸の融点以上の温度に加温しながら攪拌し、これに脂肪酸を添加して攪拌することにより、脂肪酸で炭酸カルシウムの表面を処理することができる。同様にして、脂肪酸のエステルの融点以上に炭酸カルシウムを加温しながら攪拌し、これに脂肪酸のエステルを添加することにより、脂肪酸のエステルで炭酸カルシウムの表面を処理することができる。
【0041】
(アルカリ金属)
本実施形態の表面処理炭酸カルシウムは、アルカリ金属を含む。
【0042】
表面処理炭酸カルシウム中に含まれるアルカリ金属の含有量は、500μg/g〜2000μg/g程度である。表面処理炭酸カルシウム中に含まれるアルカリ金属の含有量は、800μg/g〜1800μg/g程度であることが好ましく、1000μg/g〜1800μg/g程度であることがより好ましい。
【0043】
アルカリ金属は、ナトリウム及びカリウムの少なくとも1種であることが好ましい。
【0044】
本実施形態の変成シリコーン樹脂組成物は、表面処理炭酸カルシウム中に500μg/g〜2000μg/gのアルカリ金属を含むことにより、低モジュラス性を示す。低モジュラス性を示す本実施形態の変成シリコーン樹脂組成物は、特に、シーラントとして使用された場合、サイディングボードなどの建築物が経年で伸縮する際にも、応力緩和がおこり、追従性が高くなる。よって、シーラントの接着力が向上し、結果として建築物の耐久性を向上し得る。
【0045】
本実施形態に係る変成シリコーン樹脂組成物の50%モジュラスは、通常0.23N/mm〜0.27N/mm程度であり、0.15N/mm〜0.23N/mm程度であることが好ましい。
【0046】
なお、本発明において、変成シリコーン樹脂組成物の50%モジュラスは、JISに基づいて養生させたものをオートグラフによって測定した値である。
【0047】
さらに、本実施形態の変成シリコーン樹脂組成物は、表面処理炭酸カルシウム中に500μg/g〜2000μg/gのアルカリ金属を含むことにより、高い伸びを示す。高い伸びを有する本実施形態の変成シリコーン樹脂組成物は、特に、シーラントとして使用された場合、サイディングボードなどの建築物が経年で伸縮する際にも、応力緩和がおこり、追従性が高くなる。よって、シーラントの接着力が向上し、結果として建築物の耐久性を向上し得る。
【0048】
本実施形態の変成シリコーン樹脂組成物の伸びは、通常600%〜800%程度であり、700%〜900%程度であることが好ましい。
【0049】
なお、本発明において、変成シリコーン樹脂組成物の伸び率は、モジュラス測定と同様、JISに基づいて養生させたものをオートグラフによって測定した値である。
【0050】
また、上述の通り、従来、表面処理炭酸カルシウムを樹脂に配合して樹脂組成物とする場合、樹脂組成物の貯蔵安定性などの観点からは、樹脂組成物中のアルカリ金属の含有量はできるだけ少なくすることがよいと考えられていた。これに対して、本発明者が鋭意検討した結果、変成シリコーン樹脂に表面処理炭酸カルシウムを配合する場合、表面処理炭酸カルシウム中に500μg/g〜2000μg/gのアルカリ金属を含ませることにより、低モジュラス、高い伸びを示すだけでなく、優れた貯蔵安定性を有する変成シリコーン樹脂組成物が得られることを見いだした。貯蔵安定性に優れる本実施形態の変成シリコーン樹脂組成物は、特に高い貯蔵安定性が要求される1液型硬化性樹脂組成物としても好適に使用することができる。
【0051】
表面処理炭酸カルシウムは、例えば、脂肪酸などで表面処理された炭酸カルシウムの水スラリーにアルカリ金属化合物の水溶液を加え、脱水、乾燥を行うことにより得られる。また、表面処理炭酸カルシウムは、脂肪酸などで表面処理された炭酸カルシウムの水スラリーを脱水した後、アルカリ金属化合物の水溶液を加え、乾燥を行うことによっても得られる。
【0052】
アルカリ金属化合物としては、ナトリウムまたはカリウムの水酸化物、炭酸塩などが挙げられる。アルカリ金属化合物としては、これらの中でも、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムが好ましい。アルカリ金属化合物は、1種類のみを用いてもよいし、複数種類を用いてもよい。
【0053】
なお、炭酸カルシウムを脂肪酸などで表面処理するに際し、脂肪酸、樹脂酸のアルカリ金属塩で表面処理する場合、炭酸カルシウムとアルカリ金属化合物とを混合しなくても、表面処理炭酸カルシウムにはアルカリ金属が含まれる。この場合、アルカリ金属化合物は、表面処理炭酸カルシウム中のアルカリ金属の含有量が、上記の範囲になるように適宜調整して混合すればよい。
【0054】
表面処理炭酸カルシウムのBET比表面積は、1m/g〜60m/g程度であることが好ましく、3m/g〜30m/g程度であることがより好ましく、7m/g〜30m/g程度であることがさらに好ましい。
【0055】
また、表面処理炭酸カルシウムの平均粒子径は、20nm〜1000m程度であることが好ましく、30nm〜2000nm程度であることがより好ましく、30nm〜150nm程度であることがさらに好ましい。なお、本発明において、表面処理炭酸カルシウムの平均粒子径は、透過型電子顕微鏡による画像解析により測定した値である。
【0056】
(変成シリコーン樹脂組成物)
変成シリコーン樹脂組成物は、表面処理炭酸カルシウムと変成シリコーン樹脂とを含む。
【0057】
変成シリコーン樹脂組成物中に含まれる表面処理炭酸カルシウムの含有量は、変成シリコーン樹脂100重量部に対して、50重量部〜200重量部程度であることが好ましく、80重量部〜150重量部程度であることがより好ましい。変成シリコーン樹脂組成物中に含まれる表面処理炭酸カルシウムの含有量が、80重量部〜150重量部程度であると、硬化前では、適度な粘性と揺変性が確保され、作業性が良好となるため好ましい。また、硬化後では、モジュラス、伸び、強度のバランスがよくなるため好ましい。
【0058】
変成シリコーン樹脂は、末端に反応性シリル基を導入したシリル基末端ポリエーテルを主成分とするものである。例えば、変成シリコーン樹脂組成物をシーラントとして用いる場合、変成シリコーン樹脂は、湿気硬化でシロキサン結合を形成するものであることが好ましい。変成シリコーン樹脂としては、例えば直鎖または分岐のポリオキシアルキレンポリマーを主鎖とし、その水酸基末端にシリル基を導入して形成したポリマーが挙げられる。変成シリコーン樹脂は、公知ものであってよい。変成シリコーン樹脂は、市販品が容易に入手可能である。変成シリコーン樹脂の市販品としては、例えば、カネカ社製のMSポリマーS810、MSポリマーS202、MSポリマーS203、MSポリマーS303、旭硝子社製のエクセスターなどが挙げられる。
【0059】
変成シリコーン樹脂組成物には、変成シリコーン樹脂に加えて、可塑剤、充填剤、接着付与剤、脱水剤、触媒などが含まれていてもよい。
【0060】
可塑剤としては、例えば、フタル酸ジメチル(DMP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジ−n−ブチル(DBP)、フタル酸ジヘプチル(DHP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジトリデシル(DTDP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジシクロヘキシル(DCHP)、テトラヒドロフタル酸エステル、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、アジピン酸ジn−アルキル、ジブチルジグリコールアジペート(BXA)、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)(DOZ)、セバシン酸ジブチル(DBS)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、マレイン酸ジブチル(DBM)、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOM)、フマル酸ジブチル(DBF)、リン酸トリクレシル(TCP)、トリエチルホスフェート(TEP)、トリブチルホスフェート(TBP)、トリス・(2−エチルヘキシル)ホスフェート(TOP)、トリ(クロロエチル)ホスフェート(TCEP)、トリスジクロロプロピルホスフェート(CRP)、トリブトキシエチルホスフェート(TBXP)、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート(TMCPP)、トリフェニルホスフェート(TPP)、オクチルジフェニルホスフェート(CDP)、クエン酸アセチルトリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、トリメリット酸系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、塩素化パラフィン、ステアリン酸系可塑剤、ジメチルポリシロキサンなどが挙げられる。
【0061】
充填剤(増粘材を含む)としては、無機系の充填剤、有機系の充填剤が挙げられる。無機系の充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウムなど)、カルシウム・マグネシウム炭酸塩、塩基性炭酸マグネシウム、石英粉、珪石粉、微粉珪酸(乾式品、湿式品、ゲル法品)、微粉末珪酸カルシウム、微粉珪酸アルミニウム、カオリンクレー、パイオフィライトクレー、タルク、セリサイト、雲母、ベントナイト、ネフェリンサイナイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック(ファーネス、サーマル、アセチレン)、グラファイト、針状・繊維状では、セピオライト、ワラストナイト、ゾノトライト、チタン酸カリウム、カーボン繊維、ミネラル繊維、ガラス繊維、シラスバルン、フライアッシュバルン、ガラスバルン、シリカビーズ、アルミナビーズ、ガラスビーズなどが挙げられる。また、有機系の充填剤としては、例えば、木粉、クルミ粉、コルク粉、小麦粉、澱粉、エボナイト粉末、ゴム粉末、リグニン、フェノール樹脂、ハイスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、シリコン樹脂、尿素樹脂などの粉末状またはビーズ状のもの、セルロース粉末、パルプ粉末、合成繊維粉末、アマイドワックス、脂肪酸アミド、カストル油ワックス等の繊維状のものなどが挙げられる。
【0062】
接着付与剤としては、例えば、加水分解性有機シリコン化合物が挙げられる。加水分解性有機シリコン化合物の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、オルトケイ酸テトラメチル(テトラメトキシシランないしはメチルシリケート)、オルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシランないしはエチルシリケート)、オルトケイ酸テトラプロピル、オルトケイ酸テトラブチル等のシラン化合物またはこれらの部分加水分解縮合物、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のシランカップリング剤、またはこれらの部分加水分解縮合物等が挙げられる。加水分解性有機シリコン化合物は、これらの中の1種類のみからなってもよいし、2種類以上を含んでいてもよい。
【0063】
脱水剤としては、例えば、シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤の具体例としては、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、カルボキシル基、ビニル基、イソシアネート基、イソシアヌレート、ハロゲン等の官能基を有するシランカップリング剤が例示できる。これらの官能基を有するシランカップリング剤の具体例としては、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン等のイソシアネート基含有シラン類;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基含有シラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シラン類;β−カルボキシエチルトリエトキシシラン、β−カルボキシエチルフェニルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−β−(カルボキシメチル)アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のカルボキシシラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクロイルオキシプロピルメチルトリエトキシシラン等のビニル型不飽和基含有シラン類;γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン含有シラン類;トリス(トリメトキシシリル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートシラン類、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン等のポリスルファン類等が挙げられる。
【0064】
触媒としては、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、スタナスオクトエート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビストリエトキシシリケート、ジブチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジバーサテート、オクチル酸錫、ナフテン酸錫等の有機錫化合物など、公知の硬化触媒が挙げられる。
【0065】
変成シリコーン樹脂組成物には、可塑剤、充填剤、接着付与剤、脱水剤、触媒がそれぞれ1種類単独で含まれていてもよいし、複数種類が含まれていてもよい。
【0066】
本実施形態の変成シリコーン樹脂組成物は、低モジュラス性、高い伸びを有し、高い貯蔵安定性を有することから、シーリング材、接着剤などとして好適に使用できる。
【0067】
一般に、1液型硬化性樹脂組成物は、2液型硬化性樹脂組成物と比べて、配合の制限が大きく、低モジュラス、高伸びを付与することが比較的困難である。これに対して、本実施形態に係る変成シリコーン樹脂組成物は、アルカリ金属を含む表面処理炭酸カルシウムをシリコーン樹脂に配合したものであり、配合の制限を受けにくく、1液型樹脂組成物として好適に使用することができる。
【0068】
本実施形態の変成シリコーン樹脂組成に含まれる上述の表面処理炭酸カルシウムは、変成シリコーン樹脂組成物用の表面処理炭酸カルシウムとして、好適に使用することができる。
【0069】
(変成シリコーン樹脂組成物の製造方法)
本実施形態に係る変成シリコーン樹脂組成物の製造方法は、脂肪酸などで炭酸カルシウムを表面処理する工程を有する。脂肪酸などで炭酸カルシウムを表面処理する方法としては、例えば上述の方法が挙げられる。
【0070】
また、本実施形態に係る変成シリコーン樹脂組成物の製造方法は、脂肪酸などで表面処理炭酸された炭酸カルシウムとアルカリ金属化合物とを混合して表面処理炭酸カルシウムを得る工程を有する。アルカリ金属は、表面処理炭酸カルシウムに含まれるアルカリ金属の量が500μg/g〜2000μg/gとなるようにして混合する。
【0071】
脂肪酸などで表面処理炭酸された炭酸カルシウムとアルカリ金属化合物とを混合する方法としては、例えば、上述の方法が挙げられる。
【0072】
さらに、本実施形態に係る変成シリコーン樹脂組成物の製造方法は、表面処理炭酸カルシウムと変成シリコーン樹脂とを混合する工程を有する。表面処理炭酸カルシウムと変成シリコーン樹脂とを混合する方法は、特に限定されない。例えば、表面処理炭酸カルシウムと、変成シリコーン樹脂とを撹拌機などで撹拌して混合することができる。この際、可塑剤、充填剤、接着付与剤、脱水剤、触媒などを混合してもよい。
【0073】
本実施形態の変成シリコーン樹脂組成物の製造方法によれば、本実施形態に係る変成シリコーン樹脂組成物を好適に製造することができる。
【0074】
以下、本発明を実施例によって、より具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0075】
(実施例1)
BET比表面積が13m/gの合成炭酸カルシウム2000gに、固形分が10重量%となるように水を加え、40℃下で撹拌して、炭酸カルシウムのスラリーを調製した。次に、このスラリーに10重量%に調整した混合脂肪酸ナトリウム塩(重量比でラウリン酸:ミリスチン酸:パルミチン酸:ステアリン酸:オレイン酸=3:2:40:15:30、ミヨシ油脂社製のタンカルMH)600gを混合して炭酸カルシウムと脂肪酸塩とのスラリーを調製した。次に、このスラリーに濃度2.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液300gを加えて、撹拌した。次に、得られたスラリーを脱水して、固形分が60重量%のケーキを得た。得られたケーキを、乾燥機で乾燥して、表面処理炭酸カルシウムを得た。なお、水酸化ナトリウム水溶液の添加量は、脱水・乾燥後の表面処理炭酸カルシウムに含まれるナトリウムの量が800μg/gとなるように調整した。
【0076】
次に、得られた表面処理炭酸カルシウム120重量部、変成シリコーン樹脂(カネカ社製のMSポリマーS203(60重量部)、MSポリマーS303(40重量部))100重量部、フタル酸ジイソノニル(DINP)55重量部、重質炭酸カルシウム(白石工業株式会社製のホワイトン305)40重量部、脂肪酸アミド(伊藤製油株式会社製のA−S−A T1800)2重量部と、アミノシラン(東レダウコーニング社製のSH2000)2重量部、ビニルシラン(信越シリコーン社製のKBM1003)3重量部、ジブチル錫ジアセチルアセトナート(日東化成社製のネオスタン−U220H)2重量部を混合して、変成シリコーン樹脂組成物のペーストを得、カートリッジに保管した。
【0077】
[50%モジュラスの測定]
実施例1で得られたペーストの50%モジュラスを以下のようにして測定した。結果を表1に示す。
【0078】
ガラス板上にPPシートを張り、シート上に厚さ3.0mmのガラススペーサーを貼り付け、その枠内に、気泡が入らないようシーラントを充填し、23℃下で14日間、次いで、30℃下で14日間養生した。JIS K6251に規定されたダンベル状2号形でシートを打ち抜き、試験片を23℃1日以上放置後、試験片の厚みを測定し、オートグラフで引張速度200mm/minで試験を行い、50%モジュラスを測定した。
【0079】
[伸び率の測定]
実施例1で得られたペーストの伸び率を以下のようにして測定した。結果を表1に示す。
【0080】
モジュラス測定と同様な条件で養生し、JIS K6251に規定されたダンベル状2号形でシートを打ち抜き、試験片を23℃1日以上放置後、試験片の厚みを測定し、オートグラフで引張速度200mm/minで試験を行い、20mmの標線間の伸び率を測定した。
【0081】
[貯蔵安定性の測定]
実施例1で得られたペーストの貯蔵安定性を以下のようにして測定した。結果を表1に示す。
【0082】
初期粘度と、貯蔵後粘度の変化率を貯蔵安定性の指標とした。粘度変化率は、下式に従い算出した。初期粘度の測定は、カートリッジから容器にとり、直ちにB形粘度計で測定した。貯蔵後の粘度の測定は、50℃下で14日カートリッジを静置した後、20℃下で3時間以上静置し、容器に取り、B型粘度計で測定した。
【0083】
粘度変化率=(貯蔵後粘度−初期粘度)/初期粘度×100
【0084】
(実施例2)
表面処理炭酸カルシウム中のナトリウムの量が、1600μg/gとなるようにして水酸化ナトリウム水溶液を混合したこと以外は、実施例1と同様にして、変成シリコーン樹脂組成物のペーストを得た。次に、実施例1と同様にして、得られたペーストの50%モジュラス、伸び率、及び貯蔵安定性を測定した。結果を表1に示す。
【0085】
(実施例3)
表面処理炭酸カルシウム中のナトリウムの量が、1400μg/gとなるようにして水酸化ナトリウム水溶液を混合したこと以外は、実施例1と同様にして、変成シリコーン樹脂組成物のペーストを得た。次に、実施例1と同様にして、得られたペーストの50%モジュラス、伸び率、及び貯蔵安定性を測定した。結果を表1に示す。
【0086】
(実施例4)
表面処理炭酸カルシウムの水スラリーに水酸化ナトリウム水溶液を加える代わりに、固形分が60重量%の表面処理炭酸カルシウムのケーキに水酸化ナトリウム水溶液を加えたこと、及び表面処理炭酸カルシウム中のナトリウムの量が、1200μg/gとなるようにして水酸化ナトリウム水溶液を混合したこと以外は、実施例1と同様にして、変成シリコーン樹脂組成物のペーストを得た。次に、実施例1と同様にして、得られたペーストの50%モジュラス、伸び率、及び貯蔵安定性を測定した。結果を表1に示す。
【0087】
(実施例5)
表面処理炭酸カルシウム中のナトリウムの量が、1600μg/gとなるようにして水酸化ナトリウム水溶液を混合したこと以外は、実施例4と同様にして、変成シリコーン樹脂組成物のペーストを得た。次に、実施例1と同様にして、得られたペーストの50%モジュラス、伸び率、及び貯蔵安定性を測定した。結果を表1に示す。
【0088】
(比較例1)
水酸化ナトリウム水溶液を混合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、変成シリコーン樹脂組成物のペーストを得た。次に、実施例1と同様にして、得られたペーストの50%モジュラス、伸び率、及び貯蔵安定性を測定した。結果を表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1〜5で得られた変成シリコーン樹脂組成物ペーストは、50%モジュラスの値が小さく、低モジュラスであることが分かる。また、実施例1〜5で得られた変成シリコーン樹脂組成物ペーストは、伸び率が高く、高い伸びを有することが分かる。さらに、実施例1〜5で得られた変成シリコーン樹脂組成物ペーストは、800μg/g〜1600μg/gのナトリウムを含んでいるにもかかわらず、比較例1と同等の貯蔵安定性を示している。一方、比較例1で得られた変成シリコーン樹脂組成物ペーストは、実施例1〜5で得られたペーストに比して、50%モジュラスの値が大きく、高モジュラスであることが分かる。また、比較例1で得られた変成シリコーン樹脂組成物ペーストは、実施例1〜5で得られたペーストに比して、伸び率が低いことが分かる。
【0091】
(実施例6)
BET比表面積が20m/gの合成炭酸カルシウムを使用したこと、10重量%に調整した混合脂肪酸ナトリウム塩600gを1000gに変更したこと、及び表面処理炭酸
カルシウム中のナトリウムの量が、600μg/gとなるようにして水酸化ナトリウム水溶液を混合したこと以外は、実施例1と同様にして、変成シリコーン樹脂組成物のペーストを得た。次に、実施例1と同様にして、得られたペーストの50%モジュラス、伸び率、及び貯蔵安定性を測定した。結果を表2に示す。
【0092】
(比較例2)
水酸化ナトリウム水溶液を混合しなかったこと以外は、実施例6と同様にして、変成シリコーン樹脂組成物のペーストを得た。次に、実施例1と同様にして、得られたペーストの50%モジュラス、伸び率、及び貯蔵安定性を測定した。結果を表2に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
表2に示す結果から明らかなように、実施例6で得られた変成シリコーン樹脂組成物ペーストは、50%モジュラスの値が小さく、低モジュラスであることが分かる。また、実施例6で得られた変成シリコーン樹脂組成物ペーストは、伸び率が高く、高い伸びを有することが分かる。さらに、実施例6で得られた変成シリコーン樹脂組成物ペーストは、600μg/gのナトリウムを含んでいるにもかかわらず、比較例2と同等の貯蔵安定性を示している。一方、比較例2で得られた変成シリコーン樹脂組成物ペーストは、実施例6で得られたペーストに比して、50%モジュラスの値が大きく、高モジュラスであることが分かる。また、比較例2で得られた変成シリコーン樹脂組成物ペーストは、実施例6で得られたペーストに比して、伸びが低いことが分かる。