特許第5728626号(P5728626)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5728626電力制御装置、及び電力制御装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5728626
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】電力制御装置、及び電力制御装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/46 20060101AFI20150514BHJP
【FI】
   C02F1/46 A
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-554637(P2014-554637)
(86)(22)【出願日】2014年6月9日
(86)【国際出願番号】JP2014065226
【審査請求日】2014年11月7日
(31)【優先権主張番号】特願2013-121626(P2013-121626)
(32)【優先日】2013年6月10日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100119091
【弁理士】
【氏名又は名称】豊山 おぎ
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】松山 公喜
(72)【発明者】
【氏名】小林 茂博
【審査官】 金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−021188(JP,U)
【文献】 特開平11−128942(JP,A)
【文献】 特開2003−154367(JP,A)
【文献】 特開2006−130505(JP,A)
【文献】 特開2009−072659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46− 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極との間に通電される電流によって原料水を電気分解して電解水を製造するための電解槽に対して、入力される直流電力に基づいて、電解電圧、及び電解電流を供給する電力制御装置であって、
定電流制御モードにおいて、前記電解電流が、前記電解槽を構成する単位セルの定格電流に応じて予め設定される基準電流の電流値を超えないように制御しながら前記電解電流を前記電解槽へ供給し、
定電圧制御モードにおいて、前記電解電圧が、前記電解槽を構成する単位セルの定格電圧、及び個数に応じて予め設定される基準電圧の電圧値を超えないように制御しながら前記電解電圧を前記電解槽へ供給する電圧電流制御回路と、
前記電圧電流制御回路の出力端子に接続され、自身の両端間に生じる電圧を検出する電流検出部と、
前記基準電流を生成する電流制限部と、
前記出力端子の電圧を検出し、前記検出した電圧を分圧することによりフィードバック電圧を発生する電圧分割部とを備え、
前記電圧電流制御回路は、
前記電流検出部の両端間電圧と前記電流検出部の抵抗値とから前記電解槽に流れる前記電解電流を算出する電圧電流検出回路と、
前記電解電流と前記電流制限部よって生成される前記基準電流とを比較し、比較結果を表す電流比較結果信号を出力するとともに、前記フィードバック電圧と前記基準電圧とを比較し、比較結果を表す電圧比較結果信号を出力するコンパレータ回路と、
前記電流比較結果信号に基づいて、前記電解電流が前記基準電流を超えないように制御しながら前記出力端子から前記電解電流を前記電解槽へ供給するとともに、前記電圧比較結果信号に基づいて、前記フィードバック電圧が前記基準電圧を超えないように制御しながら前記電解電圧を前記電解槽へ供給する電圧制御回路と、を有し、
前記電解槽内の被電解液の濃度に応じて、前記定電流制御モードと前記定電圧制御モードとを切り替える、電力制御装置。
【請求項2】
外部から入力されるデューティ比が制御されたパルス信号がオン状態であることに応じて前記基準電流を前記電流制限部に生成させ、前記パルス信号がオフ状態であることに応じて前記基準電流より低く、ゼロよりも大きい値を有する低側基準電流を、前記電流制限部に生成させる電流制限切り替え回路をさらに備え、
前記コンパレータ回路は、前記電解電流と前記電流制限部に流れる前記低側基準電流とを比較し、比較結果を表す前記電流比較結果信号を出力し、
前記電圧制御回路は、前記電流比較結果信号に基づいて、前記電解電流が前記低側基準電流を下回らないように制御しながら前記出力端子から前記電解電流を前記電解槽へ供給する、
請求項に記載の電力制御装置。
【請求項3】
前記電圧制御回路は、前記パルス信号のオン状態およびオフ状態に対応するようにパルス幅変調された出力電圧信号を前記出力端子から出力する
請求項に記載の電力制御装置。
【請求項4】
前記電解電流の電流値を示すアナログデータと、前記電解電圧の電圧値を示すアナログデータと、前記電解電流の電流値が前記基準電流を下回ったことを示す電流検出信号とを、外部へ出力する電圧電流モニタ回路を、
さらに備える請求項1または請求項2に記載の電力制御装置。
【請求項5】
前記電解槽の温度を検出する温度検出部をさらに備え、
前記電圧電流制御回路は、前記温度検出部の検出温度が、予め設定される定格温度範囲外になると、電解電圧、及び電解電流の供給を停止し、
前記電圧電流制御回路は、前記温度検出部の検出温度が、前記定格温度範囲内に戻ると、電解電圧、及び電解電流の供給を再開する、
請求項1から請求項4いずれか一項に記載の電力制御装置。
【請求項6】
陽極と陰極との間に通電される電流によって原料水を電気分解して電解水を製造するための電解槽に対して、入力される直流電力に基づいて、電解電圧、及び電解電流を供給する電力制御装置の制御方法であって、
前記電力制御装置は、
定電流制御モードにおいて、前記電解電流が、前記電解槽を構成する単位セルの定格電流に応じて予め設定される基準電流の電流値を超えないように制御しながら前記電解電流を前記電解槽へ供給し、
定電圧制御モードにおいて、前記電解電圧が、前記電解槽を構成する単位セルの定格電圧、及び個数に応じて予め設定される基準電圧の電圧値を超えないように制御しながら前記電解電圧を前記電解槽へ供給する電圧電流制御回路と、
前記電圧電流制御回路の出力端子に接続され、自身の両端間に生じる電圧を検出する電流検出部と、
前記基準電流を生成する電流制限部と、
前記出力端子の電圧を検出し、前記検出した電圧を分圧することによりフィードバック電圧を発生する電圧分割部とを備え、
前記電圧電流制御回路は、
前記電流検出部の両端間電圧と前記電流検出部の抵抗値とから前記電解槽に流れる前記電解電流を算出する電圧電流検出回路と、
前記電解電流と前記電流制限部よって生成される前記基準電流とを比較し、比較結果を表す電流比較結果信号を出力するとともに、前記フィードバック電圧と前記基準電圧とを比較し、比較結果を表す電圧比較結果信号を出力するコンパレータ回路と、
前記電流比較結果信号に基づいて、前記電解電流が前記基準電流を超えないように制御しながら前記出力端子から前記電解電流を前記電解槽へ供給するとともに、前記電圧比較結果信号に基づいて、前記フィードバック電圧が前記基準電圧を超えないように制御しながら前記電解電圧を前記電解槽へ供給する電圧制御回路と、を有し、
前記定電流制御モードにおいて、前記電解電流を前記電解槽へ供給する定電流制御ステップと、
前記定電圧制御モードにおいて、前記電解電圧を前記電解槽へ供給する定電圧制御ステップと、を有し、
前記電解槽内の被電解液の濃度に応じて、前記定電流制御ステップと前記定電圧制御ステップとを切り替える
電力制御装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料水を電気分解することによって殺菌水等に用いる電解水を製造するための電解槽に対して電力を供給する、電力制御装置、及び電力制御装置の制御方法に関する。本願は、2013年6月10日に日本に出願された特願2013−121626号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、塩素イオンを含有する原料水を電解水製造装置により電気分解して得られる電解水は、低塩素濃度でありながら、高い殺菌効果を有し、かつ、人に対する安全性が高いなどの有利な性質を持つことが知られている。そのため、食品関連分野などにおいては、電解水は、食品又はこれを加工する機器を殺菌することなどに広く用いられている。特に、近年では、食品又は食品を取り扱う者の衛生管理に対する意識が高まっていることから、一般家庭用、及び業務用として、簡単に利用及びメンテナンスのできる電解水製造装置の開発が期待されている。
【0003】
この電解水製造装置の構成として、直流電源と電解槽との間に電力制御装置を配置し、直流電源が供給する直流電力に基づいて電力制御装置により所望の電流を電解槽に通電し、電解槽では通電される電流によって原料水を電気分解する構成が考えられる。例えば、下記の特許文献1には、電解槽1の本体内に流通される海水を電気分解するため、直流電源41の直流電力に基づいて、所望の定電流を電解槽1に供給する定電流制御回路42が開示されている(特許文献1の段落「0032」〜「0033」、「0049」〜「0051」、及び図2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特開2012−246553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の電力制御装置(定電流制御回路42)では、電解槽を構成するセルの定格電流、定格電圧、及び個数が異なる場合における電力制御装置の構成は記載されていない。つまり、従来、電解水製造装置を製造する場合、セル構成が異なる電解槽を用いる際、電解槽の各々に応じた専用の電力制御装置を製造する必要がある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、セル構成の異なる電解槽に対しても共通に利用できる、汎用性の高い電力制御装置、及び電力制御装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の第1態様は、陽極と陰極との間に通電される電流によって原料水を電気分解して電解水を製造するための電解槽に対して、入力される直流電力に基づいて、電解電圧、及び電解電流を供給する電力制御装置である。この電力制御装置は、定電流制御モードにおいて、電解電流が、電解槽を構成する単位セルの定格電流に応じて予め設定される基準電流の電流値を超えないように制御しながら電解電流を電解槽へ供給し、定電圧制御モードにおいて、電解電圧が、電解槽を構成する単位セルの定格電圧、及び個数に応じて予め設定される基準電圧の電圧値を超えないように制御しながら電解電圧を電解槽へ供給する電圧電流制御回路を備える。また、電力制御装置は、電圧電流制御回路の出力端子に接続され、自身の両端間に生じる電圧を検出する電流検出部と、基準電流を生成する電流制限部と、出力端子の電圧を検出し、検出した電圧を分圧することによりフィードバック電圧を発生する電圧分割部とを備える。電圧電流制御回路は、電流検出部の両端間電圧と電流検出部の抵抗値とから電解槽に流れる電解電流を算出する電圧電流検出回路と、電解電流と電流制限部よって生成される基準電流とを比較し、比較結果を表す電流比較結果信号を出力するとともに、フィードバック電圧と基準電圧とを比較し、比較結果を表す電圧比較結果信号を出力するコンパレータ回路と、電流比較結果信号に基づいて、電解電流が基準電流を超えないように制御しながら出力端子から電解電流を電解槽へ供給するとともに、電圧比較結果信号に基づいて、フィードバック電圧が基準電圧を超えないように制御しながら電解電圧を電解槽へ供給する電圧制御回路と、を有し、電解槽内の被電解液の濃度に応じて、定電流制御モードと定電圧制御モードとを切り替える。
【0009】
また、本発明の第の態様は、上記第の態様の電力制御装置において、外部から入力されるデューティ比が制御されたパルス信号がオン状態であることに応じて基準電流を電流制限部に生成させ、パルス信号がオフ状態であることに応じて基準電流より低く、ゼロよりも大きい値を有する低側基準電流を、電流制限部に生成させる電流制限切り替え回路をさらに備える。コンパレータ回路は、電解電流と電流制限部に流れる低側基準電流とを比較し、比較結果を表す電流比較結果信号を出力し、電圧制御回路は、電流比較結果信号に基づいて、電解電流が低側基準電流を下回らないように制御しながら出力端子から電解電流を電解槽へ供給する。
また、本発明の第の態様において、上記第の態様の電力制御装置の電圧制御回路は、パルス信号のオン状態およびオフ状態に対応するようにパルス幅変調された出力電圧信号を前記出力端子から出力する。
【0010】
また、本発明の第の態様は、上記第1または第2の態様の電力制御装置において、電解電流の電流値を示すアナログデータと、電解電圧の電圧値を示すアナログデータと、電解電流の電流値が基準電流を下回ったことを示す電流検出信号とを、外部へ出力する電圧電流モニタ回路を、さらに備える。
【0011】
また、本発明の第の態様は、上記第1〜第の態様のいずれかの電力制御装置において、電解槽の温度を検出する温度検出部をさらに備える。電圧電流制御回路は、温度検出部の検出温度が、予め設定される定格温度範囲外になると、電解電圧、及び電解電流の供給を停止する。電圧電流制御回路は、温度検出部の検出温度が、定格温度範囲内に戻ると、電解電圧、及び電解電流の供給を再開する。
【0012】
また、本発明の第の態様は、陽極と陰極との間に通電される電流によって原料水を電気分解して電解水を製造するための電解槽に対して、入力される直流電力に基づいて、電解電圧、及び電解電流を供給する電力制御装置の制御方法である。この電力制御装置は、定電流制御モードにおいて、電解電流が、電解槽を構成する単位セルの定格電流に応じて予め設定される基準電流の電流値を超えないように制御しながら電解電流を電解槽へ供給し、定電圧制御モードにおいて、電解電圧が、電解槽を構成する単位セルの定格電圧、及び個数に応じて予め設定される基準電圧の電圧値を超えないように制御しながら電解電圧を電解槽へ供給する電圧電流制御回路と、電圧電流制御回路の出力端子に接続され、自身の両端間に生じる電圧を検出する電流検出部と、基準電流を生成する電流制限部と、出力端子の電圧を検出し、検出した電圧を分圧することによりフィードバック電圧を発生する電圧分割部とを備え、電圧電流制御回路は、電流検出部の両端間電圧と電流検出部の抵抗値とから電解槽に流れる電解電流を算出する電圧電流検出回路と、電解電流と電流制限部よって生成される基準電流とを比較し、比較結果を表す電流比較結果信号を出力するとともに、フィードバック電圧と基準電圧とを比較し、比較結果を表す電圧比較結果信号を出力するコンパレータ回路と、電流比較結果信号に基づいて、電解電流が基準電流を超えないように制御しながら出力端子から電解電流を電解槽へ供給するとともに、電圧比較結果信号に基づいて、フィードバック電圧が基準電圧を超えないように制御しながら電解電圧を電解槽へ供給する電圧制御回路と、を有する。この電力制御装置の制御方法は、定電流制御モードにおいて、電解電流を電解槽へ供給する定電流制御ステップと、定電圧制御モードにおいて、電解電圧を電解槽へ供給する定電圧制御ステップと、を有し、電解槽内の被電解液の濃度に応じて、定電流制御ステップと定電圧制御ステップとを切り替える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電力制御装置は、電解槽を構成する単位セルの定格電流、定格電圧、及び個数に応じて予め設定される基準値に基づいて、電解槽へ電流、及び電圧を供給する。そのため、本発明によれば、セル構成の異なる電解槽に対しても共通に利用できる、汎用性の高い電力制御装置、及び電力制御装置の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る電解槽定電圧定電流電源回路の概略構成を示す図である。
図2図1に示すスイッチングCVCC電源回路の概略構成を示す図である。
図3】電解槽定電圧定電流電源回路による制御を説明するための図である。
図4図3に示す定電流制御から定電圧制御への切り替わり部分を拡大した図である。
図5】本発明の実施例における電流制御パターンを示す図である。
図6】本発明の実施例の実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
通常の定電圧電気分解では、電源から一定電圧を被電解液が充填された電解槽に印加すると、電解初期に大きな電流が流れ、次第に電流が減衰する。そのため、一定の電流に保つためには、被電解液の濃度調整が必要となる。一方、通常の定電流電気分解では、被電解液の濃度調整による電圧調整、或いは電源自体のオン(ON)またはオフ(OFF)制御により電流を調整している。
【0016】
これに対して、本発明の実施形態による電力制御装置を利用した電気分解は、詳細は後述するが、定電流・定電圧電気分解方式で行っている。この方式では、電解電圧の低い(電流が設定値を超え電圧降下が起きる)ときには、電流を一定に制限し,電解電圧が設定電圧になった以降は、最大電解電圧で電気分解する方式である。
なお、最大電解電圧(定格電圧)は、電解槽の設計(セル構成)により、1セルあたり2.0V(1.5〜2.5V)に設計することが望ましい。また、最大電解電流(定格電流)は、電極の触媒能に応じた電極面積あたりの電流値(電流密度)に設計するのが望ましい。しかし、これらの定格電流、及び定格電圧に限られることなく、電力制御装置は、電解槽のセル構成に係らず、定電流・定電圧電気分解を行うことが可能である。
【0017】
以下、まず、図1、及び図2を参照しつつ、電解槽定電圧定電流電源回路10(電力制御装置)の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る電解槽定電圧定電流電源回路10の概略構成を示す図である。また、図2は、図1に示すスイッチングCVCC(Constant Voltage Constant Current;定電圧定電流)電源回路20(電圧電流制御回路)の概略構成を示す図である。
電解槽定電圧定電流電源回路10は、スイッチングCVCC電源回路20、電流検出抵抗30(電流検出部)、電流制限抵抗40(電流制限部)、電圧分割抵抗50(電圧分割部)、電流制限切替回路60、及びサーミスタ抵抗器70(温度検出部)を含んでいる。
【0018】
スイッチングCVCC電源回路20は、個々の電源に定められた範囲内において、詳細は後述する、予め設定した基準電圧値・基準電流値の範囲内で負荷状態(電解槽1内の被電解液の濃度)に応じて自動的に定電圧或いは定電流動作を電解槽1に対して行う。そのため、スイッチングCVCC電源回路20は、図1に示す各回路、及び電解槽1と接続するための端子としての1番ピン20_1〜19番ピン20_19を備えている。また、スイッチングCVCC電源回路20は、図2に示すように、電圧電流制御回路21、電圧電流モニタ回路25を含んでいる。このうち、電圧電流制御回路21は、電圧制御回路22、電圧電流検出回路23、及びアンプ・コンパレータ回路24(以下単に、コンパレータ回路と称する)を含んでいる。コンパレータ回路24は、入力された信号を増幅する機能を有する。
【0019】
1番ピン20_1は、図1に示すように、電流検出抵抗30を介して、電解槽1の陽極1aに接続される。また、1番ピン20_1は、図2に示す電圧制御回路22の1番ピン22_1に接続される。
スイッチングCVCC電源回路20の電圧制御回路22は、1番ピン20_1から電解槽1の陽極1aに電力(電解電圧、電解電流)を供給する回路である。電圧制御回路22は、後述するように、定電流モードでは基準電流値を超えないように(即ち、定電流により)、また定電圧モードでは基準電圧値を超えないように(即ち、定電圧により)、電解槽1に対して電力の供給を行う。
【0020】
2番ピン20_2は、図1に示すように、電流検出抵抗30(自身の両端間の抵抗値を抵抗値Rsとする)の一端に接続されるとともに、図2に示す電圧電流検出回路23の1番ピン23_1に接続される。
また、3番ピン20_3は、電流検出抵抗30の他端に接続されるとともに、図2に示す電圧電流検出回路23の2番ピン23_2に接続される。
ここで、電圧電流検出回路23は、電流検出抵抗30の両端間に生じる電圧(自身の両端間電圧)を、電解槽1を流れる電解電流の電流値に変換し(両端間電圧と抵抗値Rsとから算出し)、変換後の電流値を3番ピン23_3からコンパレータ回路24の1番ピン24_1に対して出力する。
【0021】
4番ピン20_4は、図1に示すように、電解槽1の陰極1bに接続される。また、4番ピン20_4は、GND(グランド)端子であり、接地される。また、図2に示すように、4番ピン20_4に接続される13番ピン20_13は、4番ピン20_4と同じく、GND(グランド)端子であり、0Vに接続される。
5番ピン20_5は、電解槽1の陽極1aに接続される。また、5番ピン20_5は、図2に示す電圧電流モニタ回路25の1番ピン25_1に接続される。電圧電流モニタ回路25は、一つの機能として、電解槽1に印加される電圧(電解電圧)の電圧値を示すアナログデータを外部へ出力する。
【0022】
電流制限抵抗40は、図1に示すように、電流制限抵抗40a(抵抗値RP1とする)と電流制限抵抗40b(抵抗値RP2とする)との直列抵抗から構成される。
6番ピン20_6は、電流制限抵抗40aの一端に接続される。また、6番ピン20_6は、コンパレータ回路24の2番ピン24_2に接続される。
7番ピン20_7は、電流制限抵抗40aの他端と電流制限抵抗40bの一端との共通接続点に接続される。7番ピン20_7は、図1、及び図2に示すように、14番ピン20_14を介して電流制限切替回路60の1番ピン60_1に接続される。
8番ピン20_8は、電流制限抵抗40bの他端と接続される。また、8番ピン20_8は、コンパレータ回路24の3番ピン24_3に接続される。
【0023】
ここで、電流制限抵抗40は、電解槽1に流れる電流を決定する抵抗である。ここで、6番ピン20_6と7番ピン20_7との間に設定される抵抗(抵抗値Rprоgとする)と電解電流Ielectrolyticとの関係は、コンパレータ回路24が有する、例えば、電流誤差アンプの電流比較用基準電圧Vref、電流検出抵抗30の抵抗値Rsを用いて、下記式(1)に示す設定電流式により表される。
式(1)Rprog=Vref(V)×定数k/(Rs(mΩ)×Ielectrolytic)
これより、電流制限抵抗40の各抵抗値RP1、RP2は、電解電流との比較に用いる基準電圧(以下、電流比較用基準電圧とする)と、電解槽1に流したい電流値(それぞれ高側基準電流値、低側基準電流値とする)と、コンパレータ回路24の内部オフセット電圧とを用いて、下記式(2)及び(3)に基づいて設定される。
式(2)RP1=(電流比較用基準電圧×定数k)/(Rs×高側基準電流+内部オフセット電圧)
式(3)RP1+RP2=(電流比較用基準電圧×定数k/(Rs×低側基準電流+内部オフセット電圧)
なお、高側基準電流は、電解槽1に供給する電解電流の上限値であり、低側基準電流は、電解槽1に供給する電解電流の下限値(高側基準電流より電流値が小さく、0よりも大きい電流値)である。また、これらの各基準電流は、コンパレータ回路24の2番ピン24_2と3番ピン24_3との間を流れる電流である。
【0024】
上記各基準電流の切り替えは、電流制限切替回路60により制御される。電流制限切替回路60においては、図1、及び図2に示すように、1番ピン60_1が、スイッチングCVCC電源回路20の14番ピン20_14、及び7番ピン20_7を介して、電流制限抵抗40aの他端と電流制限抵抗40bの一端との共通接続点に接続される。また、2番ピン60_2は、スイッチングCVCC電源回路20の13番ピン20_13を介して、0Vに接続される。また、3番ピン60_3には、ON/OFF制御信号(デューティ比が制御されたパルス信号)が外部から入力される。電流制限切替回路60は、ON/OFF制御信号のオン状態(パルス信号がHレベルの状態)に応じて、電流制限抵抗40に上述の高側基準電流を生成させる制御を行う。また、電流制限切替回路60は、ON/OFF制御信号のオフ状態(パルス信号がLレベルの状態)に応じて、電流制限抵抗40に上述の低側基準電流を生成させる制御を行う。
【0025】
電圧分割抵抗50は、図1に示すように、電圧分割抵抗50a(抵抗値R1とする)と電圧分割抵抗50b(抵抗値R2とする)との直列抵抗から構成される。
9番ピン20_9は、電圧分割抵抗50aの一端に接続される。また、9番ピン20_9は、例えば1番ピン20_1に接続され、電解槽1に印加される電解電圧(モニタ電圧Vmoni;検出電圧)が入力される。また、9番ピン20_9は、図2に示すコンパレータ回路24の4番ピン24_4に接続される。
10番ピン20_10は、電圧分割抵抗50aの他端と電圧分割抵抗50bの一端との共通接続点に接続される。この共通接続点は、10番ピン20_10を介して、コンパレータ回路24の5番ピン24_5に接続される。この共通接続点に発生する分圧電圧を、以下ではフィードバック電圧VFBと称する。
11番ピン20_11は、電圧分割抵抗50bの他端と接続される。また、11番ピン20_11は、GND端子であり、0Vに接続される。11番ピン20_11は、コンパレータ回路24の6番ピン24_6に接続される。
【0026】
ここで、電圧分割抵抗50は、電解槽1に印加される最大電圧を決定する抵抗である。
電圧分割抵抗50の各抵抗値R1、R2は、コンパレータ回路24が有する、例えば帰還誤差アンプにおいて、電解電圧との比較に用いる基準電圧(電圧比較用基準電圧とする)と、電解槽1にそれ以上は印加したくない電圧値(電解槽の最大電圧値とする)とを用いて、下記式(4)に基づいて設定される。
式(4) 電解槽の最大電圧値=電圧比較用基準電圧×(1+R1/R2)
つまり、電圧分割抵抗50は、9番ピン20_9において、1番ピン20_1(制御端子)の電圧をモニタ電圧Vmoniとして検出する。電圧分割抵抗50は、この検出したモニタ電圧Vmoniを分圧することによりフィードバック電圧VFBを、10番ピン20_10に発生させる。電圧分割抵抗50は、フィードバック電圧VFBをコンパレータ回路24の5番ピン24_5に対して出力する。コンパレータ回路24は、このフィードバック電圧VFBが入力され、フィードバック電圧VFBと上記の電圧比較用基準電圧とを比較する。
【0027】
図1に戻って、12番ピン20_12、及び13番ピン20_13は、それぞれ電解槽定電圧定電流電源回路10の外部にある直流電源(図1において不図示)の正極端子、及び負極端子に接続され、DC電力が入力される。この入力される入力電力(電圧、及び電流)は、電解槽1の定格、即ち電解槽1を構成するセルの定格電流、定格電圧、及び個数に応じて設定される。例えば、本実施形態では、電解槽1を構成するセルの1セル当たりの定格電圧が、例えば1.5Vから2.5Vの間の値である2Vとして、それにセルの個数を乗じた値が入力電圧として設定される。なお、定格電圧の値は、上記値の幅に限定されるものでなく、1セル当りの理論上の電解電圧と、過電圧と、溶液抵抗による電圧降下分との合計の値となる。
【0028】
15番ピン20_15〜17番ピン20_17は、それぞれ電解槽電圧モニタ、電解槽電流モニタ、電流検出信号を、外部の制御装置に出力するための端子である。
これら15番ピン20_15〜17番ピン20_17は、図2に示すように電圧電流モニタ回路25の出力端子である3番ピン25_3〜5番ピン25_5にそれぞれ接続される。
電圧電流モニタ回路25において、1番ピン25_1は、上述のようにスイッチングCVCC電源回路20の5番ピン20_5に接続される。また、2番ピン25_2は、コンパレータ回路24の8番ピン24_8に接続される。
【0029】
電圧電流モニタ回路25は、電解槽1に印加されている電圧を示すアナログデータを、3番ピン25_3からスイッチングCVCC電源回路20の15番ピン20_15を介して、外部へ出力する。
また、電圧電流モニタ回路25は、コンパレータ回路24から入力される電解槽に流れる電流(電圧電流検出回路23による変換後の電流)を示すアナログデータを、4番ピン25_4からスイッチングCVCC電源回路20の16番ピン20_16を介して、外部へ出力する。
また、電圧電流モニタ回路25は、コンパレータ回路24から入力される比較結果(電圧電流検出回路23による変換後の電流が上記高側基準電流を下回っているとの結果)に基づいて、スイッチングCVCC電源回路20が定電流を電解槽1に供給していないことを示す電流検出信号を、5番ピン25_5からスイッチングCVCC電源回路20の17番ピン20_17を介して、外部へ出力する。なお、この電流検出信号の形式は、異常を示す場合に接点(ピン)をONする(例えばHレベルとする)形式であってもよく、また、フェ―ルセーフの観点から通常時にHレベルにし、異常時にLレベルとする形式であってもよい。
【0030】
図1に戻って、18番ピン20_18、及び19番ピン20_19は、それぞれサーミスタ抵抗器70の両端に接続される。サーミスタ抵抗器の70の他端は、19番ピン20_19を介して、コンパレータ回路24の6番ピン24_6と接続され、11番ピン20_11と同様に接地される。一方、サーミスタ抵抗器70の一端は、18番ピン20_18を介して、コンパレータ回路24の7番ピン24_7と接続される。
コンパレータ回路24は、サーミスタ抵抗器70で検出する温度(検出温度)が、電解槽1の予め設定される定格温度の範囲外になると、電気分解を一時停止することを指示する制御信号を電圧制御回路22に対して出力する。電圧制御回路22は、この制御信号が入力されると電解槽1への電圧供給を停止し、電解槽1は電気分解を停止する。また、コンパレータ回路24は、サーミスタ抵抗器70の検出温度が、定格温度の範囲内に戻ると、電気分解を再開することを指示する制御信号を電圧制御回路22に対して出力する。電圧制御回路22は、この制御信号が入力されると電解槽1への電圧供給を再開し、電解槽1は自動的に電気分解を開始する。
【0031】
図2に示すコンパレータ回路24は、上述のように、8つの入力端子である1番ピン24_1〜8番ピン24_8、及び出力端子である9番ピン24_9を有している。
コンパレータ回路24は、1番ピン24_1に入力される電圧電流検出回路23による変換後の電流(電解電流)と、1番ピン24_1と3番ピン24_3との間に流れる電流(電流制限抵抗40に流れる高側基準電流、及び低側基準電流)とを比較し、比較結果を表す電流比較結果信号を9番ピン24_9から出力する。
また、コンパレータ回路24は、5番ピン24_5に入力されるフィードバック電圧VFBと電圧比較用基準電圧(予め設定される基準電圧)とを比較し、比較結果を表す電圧比較結果信号を9番ピン24_9から出力する。
【0032】
電圧制御回路22は、上述の入力端子である3番ピン22_3、及び4番ピン22_4と、出力端子である1番ピン22_1と、コンパレータ回路24の9番ピン24_9と接続される、入力端子である2番ピン22_2とを有している。
電圧制御回路22は、2番ピン22_2から入力される電流比較結果信号に基づいて、電圧電流検出回路23による変換後の電流(電解電流)が高側基準電流を超えないように、1番ピン22_1からスイッチングCVCC電源回路20の1番ピン20_1を介して、電解電流を電解槽1へ供給する。即ち、電圧制御回路22は、定電流を電解槽1に供給する。また、電圧制御回路22は、電流比較結果信号に基づいて、電解電流が低側基準電流を下回らないように、1番ピン22_1からスイッチングCVCC電源回路20の1番ピン20_1を介して、電解電流を電解槽1へ供給する。
【0033】
また、電圧制御回路22は、電圧比較結果信号に基づいて、フィードバック電圧VFBが基準電圧を超えないように、電解電圧を電解槽1へ供給する。即ち、電解槽1に印加される電圧が最大電解電圧を超えないように、定電圧を電解槽1に印加する。
【0034】
電解槽定電圧定電流電源回路10(電力制御装置)は、上述した回路構成を有している。そのため、電解槽1における被電解液の濃度の変化に応じて、定電流制御モードと定電圧制御モードとを切り替えて、電解槽1に印加電圧を供給することができる。以下、定電流制御モードと定電圧制御モードとについて説明する。
(定電流制御モード)
電解槽1における電解電流の制御は、電流検出抵抗30によって検出された電解電流が、設定された最大電解電流(高側基準電流)を超えないように制御して、行われる。例えば、被電解液が充填された電解槽1に、スイッチングCVCC回路20の1番ピン20_1から出力電圧Voutを印加すると、電流検出抵抗30が、電解槽1への出力電流を感知する。電流検出抵抗(センス抵抗)は、両端の電圧を測定し、例えば電圧電流検出回路23における電流アンプで電圧を電流信号に変換し、その電流信号をコンパレータ回路24に対して出力する。
【0035】
例えばコンパレータ回路24にある電流誤差アンプは、この電流信号を電流制限抵抗40(プログラミング可能な抵抗)に設定される基準電流と比較して、電圧制御回路22の2番ピン22_2に出力電流の修正を指示する信号(比較結果信号)を出力する。なお、上述の通り、低側基準電流と高側基準電流とがあるため、電圧制御回路22は、パルス信号(ON/OFF制御信号)のオン状態及びオフ状態に対応するようにパルス幅変調された出力電圧信号(出力電圧Vout)を1番ピン20_1(制御端子)から出力する機能を含む。
【0036】
(定電圧制御モード)
電解槽1において被電解液の濃度が薄くなると、定電流を維持するために電圧が上昇する。最大電解電圧に到達すると、上述のように電圧レギュレート機能が働き、定電圧の制御に切替える。最大電解電圧レベルは、コンパレータ回路24に予め設定された電圧比較用基準電圧と、コンパレータ回路24にある、例えば帰還誤差アンプの入力との間に設けられる電圧分割抵抗50(帰還抵抗分割)を使い、設定されている。この電圧分割抵抗50のフィードバック電圧VFBは、上述のようにコンパレータ回路24内の電圧帰還誤差アンプによって、基準電圧と比較され、電圧制御回路22の1番ピン20_1からの出力電圧を制御する。
【0037】
(実施形態の説明)
続いて、電解槽1における被電解液の濃度の変化に応じて、定電流制御モードと定電圧制御モードとを切り替えて電解槽1に印加電圧を供給する電解槽定電圧定電流電源回路10の動作について、図3、及び図4を参照して説明する。図3は、電解槽定電圧定電流電源回路10による制御を説明するための図である。また、図4は、図3に示す定電流制御から定電圧制御への切り替わり部分を拡大した図である。なお、図3図4においては、横軸の時間が異なるが、これらの図は、異なる日時において行った、同一条件での制御を示している。
図3は、本発明の一実施形態による電解槽定電圧定電流電源回路10を用いた電解槽1における電気分解を示している。図3に示すグラフは、横軸を時間とし、左の縦軸に電解電流(電解電流)、右の縦軸に電解槽の電圧をプロットしたものである。
図3では、時間に応じた電解槽の電圧変化を上段に示し、電解槽への電流変化を下段に示している。この図3に示す例は、被電解液として塩酸が充填された電解槽1を電気分解する電解サイクルを示している。なお、電解槽1に充填される被電解液は、塩酸に限らない。
電解槽1においては、定電流制御(Δt1)の領域と定電圧制御(Δt2)の領域の2種類の制御で塩酸が電気分解される。
なお、図3に示す例では、電解槽1のセル数は12セルで、回路の最大電流値が2.94Aに、最大電圧が24Vになるように設計されている。電解槽1に塩酸が過剰に充填されていると、通常、突入電流(過電流)が発生するが、上述した定電流制御により一定の電流に維持できるため、突入電流を防止することができる。
【0038】
図3を参照して、電解槽1の電圧が最大値に達すると(図3では480sec頃)、電解槽定電圧定電流電源回路10は、定電流制御から定電圧制御に移行する。このように、自動的に電解槽1に一定電圧(上述の予め設定された電圧比較用基準電圧)を供給するようになる。電解槽定電圧定電流電源回路10が定電圧制御になると、電解槽1への電流は、電気分解の進行により塩酸の濃度が減少するので、Δt2の領域に示すように次第に減少する。
このとき、電解槽1がバッチ式の電解槽であれば、最小閾値の電流に達した後に、17番ピン20_17から出力される電流検出信号を利用して、電気分解の終了を示すことができ、電気分解のサイクルを終えることが可能である。
【0039】
一方、電気分解のサイクルを終えずに電流検出信号を電解槽1に塩酸を供給する塩酸ポンプの稼動信号として、定電圧時に電解槽1に塩酸を供給すれば、電流が電解電流値まで上昇し、再び定電流制御に移行する。この定電流制御と定電圧制御とのサイクルを繰返すことにより連続式電気分解を行うことが可能となる(図4に示すΔAの範囲)。
また、電解槽1の電圧が増加するとき(図4に示すΔVの範囲)、電流が一定に保たれる。そのことを利用して、適量の塩酸を電解槽1に供給することにより、定電流の連続式電気分解を行うことも可能である。
【0040】
(実施例)
電解槽定電圧定電流電源回路10を用いて、有効塩素濃度の制御を行った実施例について、図5および6並びに表1を参照して以下に説明する。
直流電源として、電流値が1Aと3Aで切り替え可能な定電流基板を用いた。電解槽1として、セルの数が6個の電解槽を用いた。電解槽1中に9%塩酸を供給することにより、スイッチングCVCC電源回路20に3Aの電解電流を印加した際の電解電圧が10Vになるよう調整した。1サイクル中における電解電流の電流値が3Aの期間と1Aの期間の比率を変化させることより平均電流値を制御した。1サイクルの長さは1秒である。電気分解によって発生した塩素ガスを、毎時20Lの流量の水に注入した。
図5に示すように、電流制御として5パターンのデューティ比のパルス制御を行った。スイッチングCVCC電源回路20には、パルスがオン状態において、3Aの電流が定電流基板から入力された。また、スイッチングCVCC電源回路20には、パルスがオフ状態において、1Aの電解電流が定電流基板から入力された。
次に、電流制御パターン(1)〜(5)について説明する。
電流制御パターン(1)において、1サイクル当たりにおける入力電流が3Aの期間が0%で、入力電流が1Aの期間が100%である(デューティ比が0%)。よって、電流制御パターン(1)における平均電流値は1Aである。
電流制御パターン(2)において、1サイクル当たりにおける入力電流が3Aの期間が25%で、入力電流が1Aの期間が75%である(デューティ比が25%)。よって、電流制御パターン(2)における平均電流値は1.5Aである。
電流制御パターン(3)において、1サイクル当たりにおける入力電流が3Aの期間が50%で、入力電流が1Aの期間が50%である(デューティ比が50%)。よって、電流制御パターン(3)における平均電流値は2Aである。
電流制御パターン(4)の電流制御において、1サイクル当たりにおける入力電流が3Aの期間が75%で、入力電流が1Aの期間が25%である(デューティ比が75%)。よって、電流制御パターン(4)における平均電流値は2.5Aである。
電流制御パターン(4)の電流制御において、1サイクル当たりにおける入力電流が3Aの期間が100%で、入力電流が1Aの期間が0%である(デューティ比が100%)。よって、電流制御パターン(4)における平均電流値は3Aである。
下記の表1は、電流制御パターン(1)〜(5)各々による電流制御の開始から10分後に採取したデータを示す。
【表1】

図6は、表1に示すデータをグラフで表している。図6において、三角印は、塩素濃度(ppm)を表している。また、四角印は、pH値を表している。
表1および図6から明らかなように平均電流値と有効塩素濃度およびpH値とには比例関係が認められた。すなわち、平均電流値が高いほど、有効塩素濃度が高くなりまたpH値が低くなった。以上の実験結果から、平均電流値を制御することにより、有効塩素濃度を制御できることが確認された。
【0041】
このように、本発明の実施形態の電解槽定電圧定電流電源回路10は、陽極1aと陰極1bとの間に通電される電流によって原料水を電気分解して電解水を製造するための電解槽1に対して、入力される直流電力に基づいて、電解電圧、及び電解電流を供給する電力制御装置である。電解槽定電圧定電流電源回路10は、電解電流が、電流比較用基準電流(電解槽1を構成する単位セルの定格電流に応じて予め設定される基準電流)の電流値を超えないように制御して、電解電流を電解槽1に供給する定電流制御モードを有する。また、電解槽定電圧定電流電源回路10は、電解電圧が、電圧比較用基準電圧(電解槽1を構成する単位セルの定格電圧、及び個数に応じて予め設定される基準電圧)の電圧値を超えないように制御して、電解電圧を電解槽に供給する定電圧制御モードを有する。そして、電解槽定電圧定電流電源回路10は、電解槽内の被電解液の濃度に応じて、定電流制御モードと定電圧制御モードとを切り替えて電解槽1に対して通電する。
【0042】
本発明の実施形態の電解槽定電圧定電流電源回路10によれば、電流比較用基準電圧、及び電圧比較用基準電圧(電解槽1を構成する単位セルの定格電流、定格電圧、及び個数に応じて予め設定される基準値)に基づいて、電解槽に電流及び電圧を供給する。そのため、本発明の実施形態によれば、セル構成の異なる電解槽に対しても共通に利用できる電力制御装置を提供することができる。
【0043】
また、本発明の実施形態では、電流制限切替回路60を備えることにより、デューティ比制御されたパルス信号のON(Hレベル)時には、電流制限抵抗40(プログラミング抵抗)をRP1に設定し、設定電流値(高側基準電流)にコンパレータ回路24を制御する。一方、デューティ比制御されたパルス信号のOFF(Lレベル)時には、電流制限抵抗40をRP1+RP2に設定して、電解槽1に流れる電流値を、0(ゼロ)Aを超える設定電流値(低側基準電流)以上の値で且つ可能な限り0Aに近い値に制御することができる。
【0044】
従来、ON/OFF制御では、OFF時の電解槽1への電流値が0Aになっていた。しかしながら、OFF状態では、被電解質が電極との間で電池作用を起こすので、電極(特に焼成電極)ではコーティングの剥離が起こり、電極の寿命が著しく低下していた。
一方、本発明の実施形態では、電流制限切替回路60を備えることにより、OFF時に電流を流すことによって、逆起電力が発生することがなくなる。そのため、電極への負荷を低減することにより、電解槽1の寿命を延ばすことが可能となる。
【0045】
また、本発明の実施形態の電解槽定電圧定電流電源回路10は、上述のように最小限の電子部品(抵抗、電圧電流変換回路、比較器等)により構成できる。そのため、低コスト、かつコンパクトな電解水製造装置の部品として、本発明の実施形態の電解槽定電圧定電流電源回路10を供給することができる。
【0046】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の電力制御装置は、電解槽を構成する単位セルの定格電流、定格電圧、及び個数に応じて予め設定される基準値に基づいて、電解槽へ電流、及び電圧を供給する。そのため、本発明によれば、セル構成の異なる電解槽に対しても共通に利用できる、汎用性の高い電力制御装置、及び電力制御装置の制御方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0048】
1…電解槽、10…電解槽定電圧定電流電源回路、20…スイッチングCVCC電源回路、21…電圧電流制御回路、22…電圧制御回路、23…電圧電流検出回路、24…アンプ・コンパレータ回路、25…電圧電流モニタ回路、30…電流検出抵抗、40…電流制限抵抗、50…電圧分割抵抗、60…電流制限切替回路、70…サーミスタ抵抗器
【要約】
電力制御装置は、陽極と陰極との間に通電される電流によって原料水を電気分解して電解水を製造するための電解槽に対して、入力される直流電力に基づいて、電解電圧、及び電解電流を供給する。この電力制御装置は、定電流制御モードにおいて、前記電解電流が、前記電解槽を構成する単位セルの定格電流に応じて予め設定される基準電流の電流値を超えないように制御しながら前記電解電流を前記電解槽へ供給し、定電圧制御モードにおいて、前記電解電圧が、前記電解槽を構成する単位セルの定格電圧、及び個数に応じて予め設定される基準電圧の電圧値を超えないように制御しながら前記電解電圧を前記電解槽へ供給する電圧電流制御回路を備える。電圧電流制御回路は、前記電解槽内の被電解液の濃度に応じて、前記定電流制御モードと前記定電圧制御モードとを切り替える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6