(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第一実施形態]
以下、第一実施形態として、本発明の封印構造をスタートレバーユニット1に適用した場合について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の封印構造の適用されるスタートレバーユニット1を示し、(a)は正面図、(b)はA−A断面図、
図2は、スタートレバーユニット1の分解斜視図、
図3は、第一実施形態に係る封印片と脆弱部とが形成されたカバー50を示し、(a)は表面斜視図、(b)は裏面斜視図、
図4は、カバー50を示し、(a)は表面から見た平面図、(b)はB−B断面図である。
【0014】
これらの図に示すように、本発明に係る封印構造の適用されるスタートレバーユニット1は、スロットマシンに取り付けられる部品であり、遊技者がレバーを叩き、揺動させることによりリールの回転を始動させる操作部として構成されている。
【0015】
スタートレバーユニット1には、レバーの揺動を検出するためのセンサ41が内蔵されており、このセンサ41が不正改造等の対象部品となっている。
このセンサ41は、スタートレバーユニット1を構成する複数の部品の内部に配置されることで、外部からアクセス不能に囲まれているものの、所定のネジを緩めることで、各部品が分解可能となり、センサ41を取り出すことができるようになっている。
そこで、本発明の封印構造は、このネジの頭部に通じる開口部を封印するように構成され、開口部周縁から分断された封印片が、開口部内にとどまり、ネジ頭部へのアクセスを妨げるので、開封の痕跡を残しながら、開封に至るまでの時間を引き延ばすことで、開封を困難にしている。
以下、スタートレバーユニット1を構成する各部品について説明する。
【0016】
スタートレバーユニット1は、遊技者によって叩き操作されるレバー10と、レバー10に連結された連結ピン11と、連結ピン11を揺動可能に支持するベース20と、ベース20の表側を覆う化粧ケース30と、センサ41を収容するスペーサ40と、スペーサ40をベース20に固定するネジ42と、スペーサ40の後方からセンサ41を覆うカバー50と、を備え、
図1におけるベース20と化粧ケース30との間を境にして、右側がスロットマシンの操作パネルから突出し、左側が操作パネルに埋設されるように取り付けられる。
【0017】
このような構成からなるスタートレバーユニット1において、詳しくは後述するものの、本発明に係る固定具として機能するネジ42を緩めなければ、センサ41を取り外すことができないようになっている。そこで、ネジ42にアクセス可能に通じる開口部を閉鎖する封印部51をカバー50に形成し、ネジ42の頭部へのアクセスを妨げるようになっている。
以下、スペーサ40と、カバー50について詳しく説明する。
【0018】
スペーサ40は、センサ41を支持しながら包囲する部品であり、略有底筒状に形成された合成樹脂製の射出成形品である。
スペーサ40には、ボス固定部401、センサ挿入部402、爪係止孔403、カバー囲い部404が形成されている。
【0019】
ボス固定部401は、ネジ頭部42aのみ挿通不能な孔の形成された底面と、ネジ頭部42aを囲む壁面401bとを有する凹設形成された部分であり、ネジ42をこの孔を介してボス201に形成されたネジ穴に螺着させることで、スペーサ40をベース20に固定させることができる(
図5参照)。
また、このボス固定部401には、カバー50に面する側に開口部401aが形成されている。この開口部401aは、ネジ頭部42aにアクセス可能に通じることから、本発明に係る一の開口部となっている。
【0020】
センサ挿入部402は、センサ41とほぼ等しい外形で開口された部分であり、
図2に示すように、右方から挿入されるセンサ41を揺動不能に固定する。このセンサ41は、フォトインタラプタで構成され、連結ピン11の揺動を、遮光/通光により検知可能な位置に固定される(
図1(b)参照)。
【0021】
爪係止孔403は、カバー50に形成された爪部501より小さい外形で開口された部分であり、
図2に示すように、右方から挿入される爪部501が弾性変形しながら通過し、通過後、復元した爪部501が爪係止孔403の裏面側に係止される。
この係止により、爪部501を圧縮操作しない限り、カバー50をスペーサ40から脱抜させることはできない。さらに、この係止状態の爪部501は、ベース20及びスペーサ40に包囲されるので、カバー50は脱抜不能にはめ殺しされる。
【0022】
カバー50は、センサ41の後端部を覆う部品であり、略板状に形成された無色透明な合成樹脂製(ABS)の射出成形品である。
合成樹脂であるABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)は、常温では透明の固体として存在するものの、外力を加えるとその部分は白化し不透明になる特性を有している。これにより、その白色痕を、外力を加えた痕跡とすることができる。
また、カバー50には、封印部51、爪部501、環状凸部515が形成されている。
【0023】
爪部501は、
図3に示すように、カバー裏面50bから突出形成され、先端部が弾性変形可能な矢じり状に形成された部分であり、爪係止孔403に係止される。
環状凸部515は、カバー50周縁に凸設形成された部分であり、カバー50自体の強度を高めつつ、封印部51(下記開口部510)内への指等の挿入を困難にさせる。
【0024】
封印部51は、本発明に係る封印構造の主要部が形成されている部分であり、ネジ頭部42a(ボス固定部401)と対向する位置に形成される。
封印部51は、開口部510(直径10mm)をベースとして、この開口部510を閉鎖するように形成され、この開口部510は、ボス固定部401の開口部401aと対向配置されている。そのため、封印部51を除去した状態では、ネジ頭部42aにアクセス可能に通じることから、本発明に係る一の開口部となっている。
【0025】
ここで、開口部510,401aを封印する封印部51の作用について説明する。
不正改造等の対象部品であるセンサ42を取り外すためには、カバー50を開封しなければならない。そのためには、爪部501を操作しなければならないが、この爪部501は、ベース20及びスペーサ40に包囲されているので、まずは、スペーサ40とベース20とを分離する必要がある。ところが、スペーサ40とベース20とは、封印部51で封印されているボス固定部401においてネジ42で固定されている。
ネジ42を緩めると、スペーサ40とベース20とを分離することができ、さらに、爪部501を圧縮操作して、カバー50を開封することで、センサ41をセンサ挿入部402から抜き取ることができるようになっている。
【0026】
本実施形態のスタートレバーユニット1は、このような部品構成からなるので、このネジ頭部42aを外部からアクセス不能に遮蔽することができれば、スペーサ40とベース20とが分離されることもなく、さらには、カバー50も開封されることもない。ところが、センサ41が動作不良を起こし、正規の部品と交換するために、カバー50を開封しなければならないこともある。
【0027】
そこで、封印部51は、ネジ頭部42aにアクセス可能に通じる開口部401a,510を封印するとともに、封印を解除可能に構成され、封印解除により、ネジ頭部42aにアクセスできるように作用する。
しかしながら、不正改造を目的として、封印が解除されることもあるので、封印の解除に伴い、封印片が開口部401a,510内にとどまり、ネジ頭部42aへのアクセスを妨げ、カバー50開封に至るまでの時間を引き延ばすようになっている。
このような作用の実現のため、封印部51には、封印の解除によってネジ頭部42aに通じる開口部510をベースに、封印片511と脆弱部514とが形成されている。
【0028】
封印片511は、有底筒状(直径4mm×高さ5mm)に形成された部分で、ネジ頭部42aを遮るように、開口部510の中心であって、ネジ頭部42aの中心と対向する位置に配置されている。つまり、封印片511は、ネジ頭部42aへのアクセスを妨げるように作用する。
また、封印片511を断面コの字の有底筒状に形成することで、剛性を確保しながら、単に円柱としたときよりも破壊し難くなっている。
【0029】
さらに、この封印片511は、外部から接触可能なカバー表面50aにおいて、少なくともカバー表面50aから突出することなく、カバー表面50aと面一に繋がって形成されている。
これにより、開口部510周縁と分断される前の封印片511は、指等で摘み難くなり、指等で摘みながら分断されることが防止され、封印片511の除去が困難になる。
【0030】
本実施形態の脆弱部514は、橋架部512と孔部513とで構成されている。
孔部513は、開口部510の一部であるものの、橋架部512は、開口部510周縁から封印片511を3点支持するように、これらの間に架設形成され、それぞれが、封印片511を中心として放射状に等角度間隔で配置されている。
本実施形態の橋架部512は、カバー表面50aにおいて、開口部510周縁と封印片511とを面一につなぎ、開口部510周縁から封印片511を支持する。また、カバー裏面50bにおいては、封印片511よりも薄肉に形成されている(
図4(b)参照)。
さらに、橋架部512は、均一な渡り幅で封印片511を支持するのではなく、渡り幅の狭い幅狭部512aを形成することで、部分的に脆弱化されている。この幅狭部512aは、封印片511側に偏った位置に形成してある。
【0031】
このように、脆弱部514は、封印片511を3点のみで支持するとともに、封印片511よりも薄肉、脆弱化された橋架部512と、この周囲に配置された孔部513とで構成された脆弱な部分として形成されているので、橋架部512を、所定の剪断工具(例えば、ニッパーなど)で切断したり、封印片511をドライバ等で押圧したりすることで、橋架部512が切断され、封印片511を開口部510周縁から容易に分断することができるようになっている。
【0032】
このように、脆弱部514を設けることで、封印片511と開口部510周縁とを容易に分断できるものの、一方の分断された封印片511は、開口部510内にとどまり、ネジ頭部42aへのアクセスを妨げるように作用する。
以下、分断された封印片511の作用について、
図5を参照しながら説明する。
【0033】
図5は、本実施形態に係る封印構造を説明するための説明図であり、(a)は、カバー50とスペーサ40との組み立て平面図、(b)は、C−C断面図、(c)は、橋架部512を切断したときの要部断面図である。
図5(b)に示すように、分断される前の封印片511は、その底面と、ネジ頭部42aとが所定の隙間をもって対向配置され、ネジ頭部42aへのアクセスを妨げるように動作している。また、この隙間を有することで、分断された封印片511を、開口部510,401a内にとどめるためのスペースが確保されることになる。
【0034】
一方、橋架部512を、所定の剪断工具(例えば、ニッパーなど)で切断したり、封印片511をドライバ等で押圧したりすることで、封印片511を開口部510周縁から分断すると、分断された封印片511は、開口部510,401aにとどまる。これは、ドライバ等での押圧力は勿論のこと、剪断工具での切断力においても(特に、刃を閉じるときの押し出し力)、封印片511を、開口部510,401a内に押し込むように作用するので、重力の働く向きに関係なく、分断された封印片511は開口部510,401a内に押し込められるからである。
また、本実施形態のカバー50は、カバー表面50aが重力方向に沿うように取り付けられるとともに(
図2参照)、封印片511は、ネジ頭部42a側に突出し、ネジ頭部42a側に重心を有していることから、その自重は、封印片511を開口部510,401a内に押し込めるように作用することになる。
【0035】
このように、分断された封印片511が開口部510,401a内にとどまることで、
図5(c)に示すように、封印片511がネジ頭部42aを覆うことになる。
さらに、ボス固定部401には、ネジ頭部42aを囲む壁面401bが形成されるとともに、この壁面401bが分断された封印片511の開口部510,401a内での移動を規制している。
開口部401aの直径は、約7mmであり、封印片511の直径は、この開口部401aの半分以上を覆う約4mmであることから(実際には、この直径に封印片511周縁に残る橋架部512の切り残しが加わる)、封印片511が障害物となり、ネジ頭部42aへのドライバの到達を妨げるので、カバー50開封に至るまでの時間を引き延ばすことができる。
【0036】
また、分断された封印片511はネジ頭部42aを覆うのみならず、この封印片511を開口部510,401aから取り出し難くすることで、さらに、カバー50開封に至るまでの時間を引き延ばすようになっている。
具体的には、橋架部512は、所定の剪断工具で切断したり、封印片511をドライバ等で押圧したりすることで、容易に切断されるものの、
図5(c)に示すように、開口部510周縁には、橋架部512の切り残し512bが形成されるようになっている。
【0037】
この切り残し512bは、カバー50開封の痕跡となるだけでなく、開口部510周縁から開口部510の中心に向かって3方向から延出形成されるため、開口部510,401aからの封印片511の取り出しを妨げるように作用することになる。
特に、幅狭部512aは、切断が容易に脆弱形成されるとともに、封印片511側に偏って形成されていることから、その分、開口部510周縁側に残る橋架部512の切り残し512bが長くなる。その結果、長く延出した切り残し512bが障害となり、封印片511の取り出しをさらに困難にさせることになる。
【0038】
また、橋架部512は、開口部510周縁において、根元をR状に形成してある。これは、切り残し512bと開口部510周縁とを強固に連結させ、確実に切り残し512bを形成させるという効果を発揮させるだけでなく、剪断工具の刃を滑り易くする作用をも狙ったもので、これにより、不正行為者が幅狭部512a付近を切断せざるを得ないように仕向けることができる。
このように、橋架部512の切り残し512bが、開口部510,401aからの封印片511の取り出しを妨げるように作用することで、開封の痕跡を残しながら、カバー50開封に至るまでの時間をさらに引き延ばすことができる。
【0039】
さらに、封印片511の取り出しを困難にする構成について、
図6、
図7を参照して説明する。
図6、
図7に示す封印片511には、開口部510を挿通可能な形状であって、開口部510とほぼ等しい形状を有するフランジ部511aを、封印片511と脆弱部514(橋架部512)との接続部分よりもネジ頭部42a側に、形成してある。
【0040】
フランジ部511aは、開口部510とほぼ等しい外形を有することから、開口部510周縁に切り残し512bの形成される限り、この切り残し512bにより、封印片511の取り出しが阻まれることになる。
そうすると、カッター等の刃物を用いて、切り残し512bを除去しなければならないことから、カバー50開封に至るまでの時間がさらに引き延ばされることになる。
特に、
図6に示す封印片511は、フランジ部511aを開口部510とほぼ等しい円板形状に形成してあるので、切り残し512bを完全に除去しなければ、封印片511を取り出すことができないようになっている。
【0041】
一方、
図7(a)、(b)に示す封印片511には、フランジ部511a周縁に、分断された封印片511を開口部510から取り出すときに、開口部510周縁に残る切り残し512bとの接触を避けるための切欠き部511bを形成してある。切欠き部511bは、分断された封印片511を開口部510から取り出し可能に、複数の橋架部512に対応する位置に形成してある。
このような切欠き部511bにより、切り残し512bとの接触を避けながら封印片511を取り出すことができるものの、切欠き部511bと切り残し512bとの正確な位置合わせが要求されることから、封印片511の取り出しに時間がかかることになる。
【0042】
図7(a)に示す例では、位置合わせを容易にするために、3つの橋架部512を、それぞれ封印片511を中心として等角度間隔(120度間隔)で配置したものである。これにより、橋架部512に対応する切欠き部511bも当然、封印片511を中心として等角度間隔(120度間隔)で配置されることになる。
このように、橋架部512と切欠き部511bとを封印片511を中心として等角度間隔(120度間隔)で配置することにより、分断された封印片511を切り残し512bとの当接を避けながら開口部510から取り出すには、いずれか1つの切欠き部511bを、いずれか1つの切り残し512bに位置合わせすることで、残る2つの切欠き部511bと切り残し512bとが必然的に位置合わせされることになるから、位置合わせを必要とするものの、正確さを要求するものではない。
また、橋架部512と切欠き部511bとを120度間隔で配置することで、封印片511を1回回転するうちで、橋架部512と切欠き部511bとの重なる機会が、3回存在する(3回回転対称)ことになるから、下記の例よりも位置合わせに要する時間は短くなる。
【0043】
一方、
図7(b)に示す例では、正確な位置合わせを要求するもので、3つの橋架部512−1〜3を、それぞれ封印片511を中心として放射状に形成するとともに、封印片511を中心とした少なくとも1回の回転で元の配置と重なる1回回転対称位置に配置してある。
【0044】
例えば、橋架部512−1と橋架部512−2、橋架部512−2と橋架部512−3、橋架部512−3と橋架部512−1の、封印片511を中心とした角度は、それぞれ、120度、80度、160度としてあるので、橋架部512−1〜3は、封印片511を中心とした1回より少ない回転では、同じ配置と重なることはなく、少なくとも1回の回転で元の配置と重なる、いわゆる1回回転対称位置に配置されている。
また、切欠き部511b−1〜3を、それぞれ各橋架部512−1〜3と一対一に対応する位置、すなわち、切欠き部511b−1は橋架部512−1と、切欠き部511b−2は橋架部512−2と、切欠き部511b−3は橋架部512−3と、一対一に対応させた、1回回転対称位置に形成してある。
【0045】
このように、橋架部512と切欠き部511bとを封印片511を中心とした1回回転対称位置に配置することにより、分断された封印片511を切り残し512bとの接触を避けながら開口部510から取り出すには、いずれか1つの切欠き部511bを、いずれか1つの切り残し512bに位置合わせたとしても、必ずしも、残る2つの切欠き部511bと切り残し512bとが位置合わせされるとは限らないことから、位置合わせの正確さが要求され、封印片511の取り出しに時間がかかることになる。
【0046】
また、
図7(b)に示す例では、
図7(a)と異なり、封印片511の分断される前において、切欠き部511b−1〜3は、外側からみて橋架部512−1〜3と重ならない位置にずらして配置してある。これにより、封印片511が分断されたときは、各切欠き部511b−1〜3と、それぞれ対応する橋架部512−1〜3とがずれた状態で、開口部510内にとどまることになるので、少なくとも正規な位置に合わせるための余分な時間が費やされることになるから、カバー50開封に至るまでの時間を引き延ばすことができる。
【0047】
以上のように構成された本実施形態の封印構造によれば、ネジ頭部42aに通じる開口部510,401aを封印するように構成され、開口部510周縁から分断された封印片511が、開口部510,401a内にとどまり、ネジ頭部42aへのアクセスを妨げるので、カバー50開封に至るまでの時間を引き延ばすことができる。
また、封印片511の欠損、切欠き部511bの残存を確認することで、カバー50開封の痕跡を識別できる。
【0048】
なお、上記実施形態では、脆弱部514を、橋架部512と孔部513とで構成したが、脆弱部514を、
図8に示すように、開口部510周縁(環状凸部515を含む)及び封印片511よりも薄肉形成した薄肉部として構成することもできる。
このような構成により、脆弱部514を、橋架部512と孔部513とで構成した場合とまったく同様な作用効果を発揮することができる。
また、脆弱部514を切断したときに、開口部510周縁に残る切り残しは、開口部510,401a内にとどまる封印片511の障害物となるとともに、薄肉部の最も薄い部分を封印片511側に偏って形成することで、封印片511の取り出しが困難になるという同様な作用効果も発揮することができる。
【0049】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態として、本発明の封印構造を基板ケースユニット2に適用した場合について、図面を参照して説明する。
【0050】
図9は、本発明の封印構造の適用される基板ケースユニットを模式的に示した図で、(a)は、外観斜視図、(b)は、F−F断面図であり、
図10は、第二実施形態に係るボス固定部及びその周辺を説明するための説明図で、(a)は、ボス固定部の形成される蓋の外観斜視図、(b)は、蓋の平面図、(c)は、G−G断面図である。
また、
図11は、第二実施形態に係る封印部を説明するための説明図で、(a)は、封印部の形成されるカバーの平面図、(b)は、カバーの側面図、(c)は、カバーを裏面側から見た外観斜視図であり、
図12は、第二実施形態に係る封印構造の封印解除を説明するための動作図で、(a)は、橋架部を切断したときの断面図、(b)は、フランジ部がネジ頭部を閉塞した状態を示す断面図、(c)は、開口部と挿通孔とが対向し、ネジ頭部へのアクセスが可能となった状態を示す断面図である。
【0051】
これらの図に示すように、本発明に係る封印構造の適用される基板ケースユニット2は、スロットマシンやパチンコ機などの遊技機に取り付けられる部品であり、所定の基板を収容する基板ケースユニットとして構成されている。
【0052】
基板ケースユニット2には、遊技機の動作に係る制御を行う基板90が収容されており、この基板90が不正改造等の対象部品となっている。
この基板90は、基板ケースユニット2を構成する複数の部品の内部に配置されることで、外部からアクセス不能に囲まれているものの、ネジ42を緩めることで、各部品が分解可能となり、基板90を取り出すことができるようになっている。
【0053】
そこで、本実施形態の封印構造は、このネジ42の頭部に通じる開口部510を封印するように構成され、開口部510周縁から分断された封印片511が、開口部510内にとどまるだけでなく、封印片511に形成されたフランジ部511aが、開口部510を挿通不能な大きさに形成されるとともに、開口部510周縁から分断された封印片511ごと開口部510内を移動可能に形成され、所定の移動位置においてのみネジ頭部42aに通じる挿通孔511
cを有し、この移動位置以外では、フランジ部511aがネジ頭部42aへのアクセスを妨げる構成としてある。
【0054】
さらに、その移動位置を、基板ケースユニット2の設置された状態において、開口部510周縁から分断された封印片511がその自重に逆らって移動しなければならない位置とすることで、遊技機から基板ケースユニット2を取り外さない限り、封印解除できないようにしてある。
以下、基板ケースユニット2について説明するが、基板ケースユニット2を構成する各部品は、第一実施形態に係るスタートレバーユニット1と異なる部品から構成されているものの、同一の機能を有する部位ついては、同一の符号及び名称を付して説明するものとする。
【0055】
基板ケースユニット2は、基板90を収容するケース60と、基板90に通じるケース60の開口部を覆う蓋70と、蓋70をケース60に固定するネジ42と、ネジ42を覆うカバー80と、を備え、
図12(a),(b)に示すように、重力がG方向にかかるように、所定の遊技機に取り付けられている。
【0056】
このような構成からなる基板ケースユニット2では、ネジ42を緩めなければ、基板90を取り出すことができないようになっている。そこで、ネジ42にアクセス可能に通じる開口部510を閉鎖する封印部51をカバー80に形成し、ネジ42の頭部へのアクセスを妨げるようになっている。
以下、ケース60、蓋70、カバー80について説明する。
【0057】
ケース60は、無色透明な部品であり、
図9(a),(b)に示すように、基板90を収容可能に凹状に形成された合成樹脂製の射出成形品である。
ケース60には、ネジ42の螺入する穴を有するボス201が形成されている。
【0058】
蓋70は、無色透明な部品であり、
図10(a)〜(c)に示すように、凹状に形成された合成樹脂製の射出成形品である。
蓋70には、第一実施形態と同様な機能を有するボス固定部401、及び壁面401bの形成されている他に、カバー80周縁の嵌入される凹部71、分断された封印片511及びフランジ部511aを支持・整列させるリブ72及び挿入部73が形成されている。
なお、本実施形態の壁面401bは、蓋70の内側面に形成され、主に、開口部510周縁から分断される封印片511に一体形成されたフランジ部511aの移動を規制する。
【0059】
カバー80は、無色透明な部品であり、
図11(a)〜(c)に示すように、平板状に形成された合成樹脂製の射出成形品である。
カバー80には、第一実施形態と同様な機能を有する封印部51(開口部510,封印片511,橋架部512,孔部513)、及びフランジ部511aが形成され、カバー80周縁が蓋70の凹部71に嵌入されることで、蓋70から着脱不能にはめ殺しされるようになっている。
【0060】
ただし、本実施形態のフランジ部511aは、第一実施形態とは異なり、開口部501を挿通不能な大きさに形成されるとともに、開口部510周縁から分断された封印片511ごと開口部510(蓋70)内を移動可能に形成され、所定の移動位置においてのみネジ頭部42aに通じる挿通孔511
cを備えている。
【0061】
このような構成からなる基板ケースユニット2において、基板90を取り出すために、封印部51の封印を解除しようとして、橋架部512を切断しても、フランジ部511aがネジ42の頭部へのアクセスを妨げるようになっている。
【0062】
具体的には、
図12(a)に示すように、橋架部512を、所定の剪断工具(例えば、ニッパーなど)で切断したり、封印片511をドライバ等で押圧したりすることで、封印片511を開口部510周縁から分断すると、分断された封印片511はフランジ部511aとともに、蓋70内側面の壁面401bによってその移動が規制されながら、開口部510(蓋70)内にとどまる。
【0063】
このとき、開口部510周縁から分断された封印片511には、G方向に重力がかかっていることから、
図12(b)に示すように、開口部510内において、右側に移動することになる。
この場合において、挿通孔511
cは、右隅に位置していることから、ネジ頭部42aはフランジ部511aで閉塞され、開口部510が開口しているにもかかわらず、ネジ頭部42aにアクセス不能となっている。
【0064】
このようなアクセス不能な状態を解消するには、分断された封印片511を自重に逆らって左側に移動しなければならない。しかしながら、開口部510から封印片511を操作して移動させることは極めて困難である。
そうすると、分断された封印片511をその自重を利用して左側に移動するためには、基板ケースユニット2の天地を逆さまにしなければならず、そのためには、基板ケースユニット2を遊技機から取り外さなければならない。
その結果、基板ケースユニット2を遊技機から取り外すための余分な時間を費やさなければならないことから、基板90の取り出しに至るまでの時間がさらに引き延ばされることになる。
ここで、基板ケースユニット2を遊技機から簡単に取り外しできない構造しておけば(例えば、本発明の封印構造を採用)、さらに時間を引き延ばすことができる。
【0065】
そして、基板ケースユニット2を遊技機から取り外すとともに、
図12(c)に示すように、基板ケースユニット2の天地を逆さまにして、重力のかかる向きをG方向にすることで、分断された封印片511は、開口部510内において、その自重により左側に移動することができる。
【0066】
フランジ部511aが左側に移動すると、リブ72、挿入部73がフランジ部511aを挟むように支持・整列させる。このとき、挿通孔511
cは、ネジ頭部42aに通じる所定の移動位置に移動することから、開口部510からネジ頭部42aにアクセス可能に、開口部510と挿通孔511
cとネジ頭部42aとが一直線につながることになる。
【0067】
このように、本実施形態の封印構造によれば、開口部510周縁から分断された封印片511が、開口部510内にとどまるだけでなく、封印片511に形成されたフランジ部511aが、開口部510を挿通不能な大きさに形成されるとともに、開口部510周縁から分断された封印片511ごと開口部510内を移動可能に形成され、所定の移動位置においてのみネジ頭部42aに通じる挿通孔511
cを有していることから、この移動位置以外においては、ネジ頭部42aがフランジ部511aで閉塞されることになるので、ネジ頭部42aにアクセスするためには封印片511を所定の移動位置に移動させるという困難性が付与され、基板90の取り出しに至るまでの時間をさらに引き延ばすことができる。
【0068】
さらに、この移動位置を、基板ケースユニット2の設置された状態において、開口部510周縁から分断された封印片511がその自重に逆らって移動しなければならない位置とすることで、遊技機から基板ケースユニット2を取り外して重力のかかる方向を変えない限り、フランジ部511aがネジ頭部42aへのアクセスを妨げるので、基板90の取り出しに至るまでの時間をさらに引き延ばすことができる。
【0069】
以上、本発明について、上記各実施形態を示して説明したが、本発明は、上述した各実施形態にのみ限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0070】
例えば、第一実施形態では、カバー50に封印部51(封印構造)を形成して、ボス固定部401の開口部401aを封印する構成としたが、所定のキャップに封印部51を形成し、このキャップを直接、ボス固定部401の開口部401aに接着固定するように構成することもできる。
【0071】
このように本発明の封印構造によれば、ネジや、先端部に弾性爪を有する先割れ固定ピンなどの固定具において、その固定解除部(ネジ頭部、ピン先端部)にアクセス可能に通じる開口部に、封印部51を嵌め込んだり、封印部51で覆うことで、開封の痕跡を残しながら、開封に至るまでの時間を引き延ばすことが容易に達成できるので、スタートレバーユニットや基板ケースに限らず、固定具を用いて固定する固定部に広く適用できる。