【実施例】
【0011】
図1は、本発明によるレゾルバ20の取付構造を適用したモータユニット10の要部拡大断面図である。モータユニット10は、例えば車両に搭載されて走行用の動力を出力したり、車両の運動エネルギを回収して電力を発生したりするものである。実施例のモータユニット10は、図示するように、モータ11と、モータ11を収容するケース12と、モータ11の回転位置を検出する回転位置検出センサとしてのレゾルバ20と、レゾルバ20をケース12に固定するための有底円筒状の固定部材30とを含む。また、実施例のレゾルバ20は、モータ11の回転軸13に固定されて当該回転軸13と一体に回転するレゾルバロータ21と、中央にレゾルバロータ21が収容される中空部分を有すると共にケース12の外部に配置される円環状のレゾルバステータ22とから構成される。
【0012】
モータ11は、回転軸13が固定されたロータ110と、中央にロータ110が収容される中空部分を有する円環状のステータ111とから構成される周知の同期発電電動機である。ロータ110は、電磁鋼板を複数積層してなるロータコアに複数の永久磁石を埋め込んだものである。ステータ111は、略円環状の電磁鋼板を複数積層してなるステータコアにケース12の外部に配置された図示しない電力供給源から交流電流が印加されるコイルが巻回されたものである。モータ11のロータ110に固定された回転軸13は、一端がケース12に形成された開口部120からケース12の外部に突出するように配置され、開口部120の内側(
図1中左側)に配置された軸受を介してケース12により回転自在に支持される。また、ケース12の開口部120と回転軸13の外周面との間には、モータ11を冷却するためにケース12内に供給される冷却液がケース外に漏れるのを抑制するシール部材50が配置される。このように構成されたモータ11のステータ111のコイルに電流が印加されることにより、回転磁界が発生し、当該回転磁界にロータ110の永久磁石が引かれることでロータ110および回転軸13が回転する。以下、モータ11の回転軸13の軸方向を単に「軸方向」といい、回転軸13の径方向を単に「径方向」という。そして、回転軸13には、レゾルバロータ21の端面と当接する段部13aが形成されている。
【0013】
ケース12は、
図1に示すように、開口部120を含む外壁にレゾルバステータ22の端面と当接する段部12aを有する。段部12aは、当該段部12aと当接したレゾルバステータ22と、回転軸13の段部13aと当接したレゾルバロータ21とが径方向から見て重なるようにケース12に形成される。これにより、レゾルバロータ21およびレゾルバステータ22の軸方向位置を容易に揃えることができる。また、ケース12の段部12aには、ケース12の外側に向けて突出する複数(実施例では、4つ)の第1調心部12bが周方向に間隔を置いて形成されている。実施例において、第1調心部12bの突出方向の長さは、レゾルバステータ22(ステータコア220)の厚みよりも短く設定されている(
図5参照)。そして、各第1調心部12bの内周面は、回転軸13の軸心を中心とする共に、レゾルバステータ22(ステータコア220)の外周面と略同一(僅かに大きい)の曲率半径を有する凹曲面状に形成されており、各第1調心部12bの外周面は、回転軸13の軸心を中心とする共に、固定部材30の開放端(開口部300)の内周面と略同一(僅かに小さい)の曲率半径を有する凸曲面状に形成されている。更に、ケース12の段部12aには、第1調心部12bよりも径方向外側でケース12の外側に向けて突出する複数(実施例では、2つ)の第2調心部12cが形成されている。各第2調心部12cの内周面は、回転軸13の軸心を中心とする共に、固定部材30の外周面と略同一(僅かに大きい)の曲率半径を有する凹曲面状に形成されている。
【0014】
レゾルバ20を構成するレゾルバロータ21は、楕円環状に形成された電磁鋼板を複数積層してなるロータコアに複数の永久磁石を埋め込んだものである。レゾルバロータ21は、ケース12側の端面が回転軸13に形成された段部13aに当接するように当該回転軸13に挿通・固定される。また、レゾルバ20を構成するレゾルバステータ22は、円環状の電磁鋼板を複数積層してなるステータコア220に図示しない発振回路から励磁信号として一定周波数の交流電流が印加される励磁コイルや、互いに電気的に90度の間隔をもって配置されると共にコンバータ等を介して電子制御ユニット(何れも図示省略)に接続される2つの出力コイルが巻回されたものである。出力コイルは、モータ11の回転軸13と共に楕円形状のレゾルバロータ21が回転することにより生じる当該レゾルバロータ21とレゾルバステータ22との間隙の変化に応じた信号を電子制御ユニットへと発信するものであり、当該信号に基づいて電信制御ユニットがモータ11の回転軸13の回転位置を算出することができる。また、レゾルバステータ22のステータコア220の外周には、
図2および
図3に示すように、複数(実施例では、4つ)の凹部220aが形成されている。
【0015】
固定部材30は、
図1および
図4に示すように、ケース12側に断面円形の開口部300を有すると共に、当該開口部300よりも底部側に、開口部300よりも細径かつ断面円形の内部空間を有し、開口部300と当該内部空間との間には、径方向に延びる段部301が形成されている。実施例において、固定部材30の開口側の端面から当該段部301までの長さは、レゾルバステータ22のステータコア220の厚みよりも短く設定されている(
図5参照)。更に、開口部300の内周面には、レゾルバステータ22のステータコア220の外周面に形成された複数の凹部220aと係合可能な径方向内側に突出する複数(実施例では、4つ)の凸部300aが形成されている。そして、固定部材30の外周面には、径方向外側に向けて突出する複数(実施例では、2つ)の張り出し部302が形成されており、各張り出し部302には、固定部材30の外周面に沿って延在すると共にケース12に形成された図示しない締結孔(ねじ孔)と対向するように長孔302aが形成されている。各張り出し部302の長孔302aには、ボルト40(
図2参照)が挿通され、当該ボルト40をケース12の締結孔に螺合することにより、固定部材30をケース12に締結・固定することができる。
【0016】
次に、上述のように構成されるモータユニット10のケース12に対するレゾルバステータ22の固定手順について説明する。
【0017】
レゾルバステータ22をケース12に固定するに際しては、レゾルバロータ21を一端面が段部13aと当接するように回転軸13に固定した上で、レゾルバステータ22をケース12側の端面が当該ケース12の段部12aに当接するように複数の第1調心部12bに嵌め込む。これにより、レゾルバステータ22の外周面が複数の第1調心部12bの内周面により支持され、レゾルバステータ22は、回転軸13と同心に調心されると共に、回転軸13に固定されたレゾルバロータ21と同軸上に配置される。従って、モータユニット10では、レゾルバステータ22を容易かつ精度良く調心することができる。
【0018】
次いで、固定部材30を開口部300の内周面に形成された凸部300aとレゾルバステータ22のステータコア220の外周に形成された凹部220aとが係合するように、ケース12の第1調心部12bと第2調心部12cとの間に嵌め込む。これにより、開口部300の内周面が第1調心部12bの外周面により支持されると共に、固定部材の外周面が第2調心部12cの内周面により支持され、固定部材30は、回転軸13と同心に調心されると共に、レゾルバロータ21およびレゾルバステータ22と同軸上に配置される。更に、固定部材30の各張り出し部302の長孔302aにボルト40を挿通すると共に、各ボルト40をケース12の図示しない締結孔に緩く螺入する。そして、このようにボルト40を介して固定部材30をケース12に連結した後、固定部材30をケース12に対して回転させてレゾルバステータ22のゼロ点調整を行う。
【0019】
ここで、各張り出し部302に形成された長孔302aは、固定部材30の外周面に沿った方向、すなわち回転軸13の回転方向に延在するものであるから、固定部材30とケース12とをボルト40により緩く締結した状態であれば、固定部材30をケース12に対して回転軸13の周りに回転させることができる。そして、固定部材30の凸部300aがレゾルバステータ22のステータコア220の凹部220aと係合することから、ケース12の外部で固定部材30を当該ケース12に対して回転させれば、レゾルバステータ22を固定部材30と一体に回転させることができる。これにより、ケース12の外部で固定部材30を回転させるだけでレゾルバステータ22の回転位置を変化させることができるため、レゾルバステータ22のゼロ点調整を容易かつ精度良く行うことができる。
【0020】
レゾルバステータ22のゼロ点調整を行った後、各ボルト40をケース12の締結孔に更に螺入することでボルト40により固定部材30をケース12に強固に締結する。これにより、第1調心部12bの突出方向の長さがレゾルバステータ22(ステータコア220)の厚みよりも短く設定されると共に、固定部材30の開口側の端面から段部301までの長さがレゾルバステータ22(ステータコア220)の厚みよりも短く設定されていることから、レゾルバステータ22の端面が固定部材30の段部301により押圧される。従って、レゾルバステータ22は、ケース12の段部12aと固定部材30の段部301とにより挟持されてケース12に対して強固に固定される(
図5参照)。
【0021】
以上説明したように、実施例に係るレゾルバ20の取付構造を適用したモータユニット10では、レゾルバステータ22の外周を支持して当該レゾルバステータ22を調心可能な第1調心部12bがモータ11を収容するケース12に設けられる。また、レゾルバステータ22をケース12に固定するための固定部材30は、レゾルバステータ22とモータ11の回転軸13の周りに一体回転可能に係合すると共にケース12に対して回転軸13の周りに回転可能であり、締結部材としてのボルト40を介してケース12に取り付けられる。これにより、レゾルバステータ22をより容易かつ精度良く調心およびゼロ点調整可能としつつ、ケース12に固定することが可能となる。なお、レゾルバ20をケース12の内部に配置する場合、一般に、レゾルバステータ22のゼロ点調整を可能とするための治具を挿入する治具挿入孔や、レゾルバステータ22自体をケース12に固定するためのボルト孔をケース12を貫通するように形成する必要があるが、実施例のレゾルバ20の取付構造によれば、そのような治具挿入孔やボルト孔をケース12に形成する必要がなくなるため、治具挿入孔やボルト孔からケース12内の冷却液がケース外に漏れ出すことを抑制することが可能となる。更に、レゾルバ20をケース12の外部に配置することで、ケース12内の冷却液に混入した異物等がレゾルバ20に付着することを抑制することができるため、ケース12内に配置すべきレゾルバ20の保護カバーを排して、装置の部品点数を削減することが可能となる。
【0022】
また、実施例のモータユニット10では、レゾルバステータ22のステータコア220の外周に凹部220aが形成されると共に、固定部材30の開口部300の内周面に凹部220aと係合可能な凸部300aが形成されているが、ステータコア220の外周に凸部を形成すると共に、固定部材30の開口部300の内周面に当該凸部と係合可能な凹部を形成してもよい。そして、当該凹部および凸部は、レゾルバステータ22と固定部材30とに少なくとも一つずつ形成されればよく、更に、レゾルバステータ22と固定部材30とを係合させるための構造は、上述のような凹部と凸部とを含むものに限られず、レゾルバステータと固定部材30とを回転軸13の周りに一体回転可能とするものであれば、如何なる構成であってもよい。また、固定部材30の各張り出し部302には、長孔302aの代わりに、固定部材30の外周面に沿った方向(回転軸13の回転方向)に延在するガイド面を有する切り欠きが形成されてもよい。更に、固定部材30を有底筒状に形成すれば、ケース12の外部に配置されるレゾルバステータ22を保護することが可能となるが、固定部材30は底部を有さない筒状に形成されてもよい。
【0023】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、モータ11を収容するケース12の外部に配置されると共に固定部材30によりケース12に固定されるレゾルバステータ22と、ケース12の外部に突出するモータ11の回転軸13に固定されるレゾルバロータ21とを有するレゾルバ20が「レゾルバ」に相当する。
【0024】
ただし、上記実施例における主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載された発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載された発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。すなわち、上記実施例はあくまで課題を解決するための手段の欄に記載された発明の具体的な一例に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載された発明の解釈は、その欄の記載に基づいて行なわれるべきものである。
【0025】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。