(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記連結基(U3)を示す上記式(3)中のa、b、dおよびeはいずれも1であり、前記連結基(U4)を示す上記式(4)中のf、g、hおよびiはいずれも1である、請求項3に記載の亜鉛めっき浴添加剤。
請求項1から4のいずれか一項に記載される亜鉛めっき浴添加剤に含まれる前記水溶性共重合体および浴可溶性亜鉛含有物質を含有することを特徴とするジンケート型亜鉛系めっき浴。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された亜鉛めっき浴添加剤は、15A/dm
2程度までの電流密度の範囲であれば、異常析出を生じにくく、すぐれた特性を有する亜鉛めっき皮膜を形成することができる。
【0010】
ところで、めっき対象物の形状などの理由により、めっき浴中の電流密度が、局所的に50A/dm
2程度以上に達する場合がある。具体的には、ラックなどの引掛け治具を用いてめっきを行う場合には、引掛け治具の引掛け部の先端部のように突出した部分では、その形状的な特徴に基づき、電流密度が50A/dm
2程度以上となることがある。本明細書において、このような、電流密度が特に高くなる部分を、「超高電流密度部分」ともいう。
【0011】
従来技術に係る亜鉛系めっき浴では、このような局所的な超高電流密度部分では、正常なめっき皮膜が形成されず、針状結晶のような異常析出が生じやすかった。この異常析出しためっき金属は、被めっき部材から脱離しやすく、めっき浴中に分散する異物となっていた。この異物がストレーナーのようなフィルター部材により適切に回収されれば、特段の問題は生じないが、この異物が回収される前に被めっき部材の正常な析出が行われるべき部位に付着すると、付着した異物がめっき皮膜内に取り込まれ、結果的に、めっき皮膜の外観不良をもたらす場合があった。すなわち、超高電流密度部分において生じた異常析出が、めっき皮膜の外観不良の原因となる場合があった。
【0012】
本発明は、超高電流密度部分においても異常析出が生じにくいジンケート型亜鉛系めっき浴を形成しうる亜鉛系めっき浴添加剤、かかる亜鉛系めっき浴添加剤に含まれる水溶性
共重合体を含有する亜鉛系めっき浴、および上記亜鉛系めっき浴を用いて形成される亜鉛系めっき部材の製造方法を提供することを目的とする。
なお、亜鉛系めっき部材とは、被めっき部材と、この被めっき部材の被めっき面上に積層された亜鉛系めっき皮膜とを備えた部材をいう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために提供される本発明は次のとおりである。
〔1〕下記式(1)で示される構造からなる構成単位(U1)(下記式(1)中、Xは酸素元素または硫黄元素を表し、zは2または3を表す。)
(ただし、下記構成単位(U2)の一部として存在する構成単位は除く。)および下記式(2)で示される構造からなる構成単位(U2)(下記式(2)中、Xは酸素元素または硫黄元素を表す。)を含む水溶性共重合体のそれぞれを含有することを特徴とする亜鉛系めっき浴添加剤。
【化2】
【0014】
〔2〕前記水溶性共重合体は、前記構成単位(U1)と前記構成単位(U2)とが連結基を介して結合している部分を有する、上記〔1〕に記載の亜鉛系めっき浴添加剤。
【0015】
〔3〕前記水溶性共重合体は、前記構成単位(U1)同士、前記構成単位(U2)同士、または前記構成単位(U1)と前記構成単位(U2)とが、下記式(3)で示される連結基(U3)および/または下記式(4)で示される連結基(U4)を介して連結している部分を有する、上記〔1〕または〔2〕に記載の亜鉛系めっき浴添加剤。
【化3】
(上記式(3)中において、aは1〜5の整数のいずれか、bは1〜5の整数のいずれか、dは1〜5の整数のいずれか、eは1〜5の整数のいずれか、mは0〜5の整数のいずれかを表す。上記式(4)中において、fは1〜5の整数のいずれか、gは1〜5の整数のいずれか、hは1〜5の整数のいずれか、iは1〜5の整数のいずれか、nは0〜5の整数のいずれかを表す。)
【0016】
〔4〕前記連結基(U3)を示す上記式(3)中のa、b、dおよびeはいずれも1であり、前記連結基(U4)を示す上記式(4)中のf、g、hおよびiはいずれも1である、上記〔3〕に記載の亜鉛めっき浴添加剤。
【0017】
〔5〕上記〔1〕から〔4〕のいずれかに記載される亜鉛めっき浴添加剤に含まれる前記水溶性
共重合体および浴可溶性亜鉛含有物質を含有することを特徴とするジンケート型亜鉛系めっき浴。
【0018】
〔6〕前記水溶性共重合体を塩化物換算で0.1g/L以上50g/L以下含む、上記〔5〕に記載のめっき浴。
【0019】
〔7〕シアン化物を含有しない、上記〔5〕または〔6〕に記載のめっき浴。
【0020】
〔8〕二次光沢剤を含有する、上記〔5〕から〔7〕のいずれか一項〕に記載のめっき浴。
【0021】
〔9〕浴可溶性亜鉛含有物質を亜鉛換算で2g/L以上60g/L含有する上記〔5〕から〔8〕のいずれか一項に記載のめっき浴。
【0022】
〔10〕浴可溶性金属含有物質をさらに含有し、当該浴可溶性金属含有物質に含まれる金属元素は鉄、ニッケル、コバルトおよびマンガンからなる群から選ばれる一種または二種以上である上記〔5〕から〔9〕のいずれか一項に記載のめっき浴。
【0023】
〔11〕被めっき部材と、該被めっき部材の被めっき面上に積層された亜鉛系めっき皮膜とを備えた亜鉛系めっき部材の製造方法であって、上記〔5〕から〔10〕のいずれかに記載されるジンケート型亜鉛系めっき浴を用いることを特徴とする亜鉛系めっき部材の製造方法。
【発明の効果】
【0024】
上記の発明に係るジンケート型亜鉛系めっき浴は、超高電流密度部分においても異常析出が生じにくい。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について詳しく説明する。
1.ジンケート型亜鉛系めっき浴
本発明の一実施形態に係る亜鉛系めっき浴は、ジンケート型のめっき浴であるから、液性はアルカリ性である。また、本実施形態の好ましい一例に係る亜鉛系めっき浴はシアン化物を含有せず、有害なシアンガスが発生しないため、作業性に優れ、環境に優しい。
【0026】
(1)金属成分
(1−1)浴可溶性亜鉛含有物質
本実施形態に係る亜鉛系めっき浴は、浴可溶性亜鉛含有物質を含有する。本明細書において浴可溶性亜鉛含有物質とは、亜鉛系めっき皮膜として析出する亜鉛の供給源であって、亜鉛の陽イオンおよびこれを含有する浴可溶性物質からなる群から選ばれる一種または二種以上の成分をいう。本実施形態に係る亜鉛系めっき浴はジンケート型の浴であるから、めっき浴はアルカリ性である。したがって、浴可溶性亜鉛含有物質の一例はジンケートイオン([Zn(OH)
4]
2−)である。
浴可溶性亜鉛含有物質をめっき浴に供給する原料物質(本発明において、「亜鉛源」ともいう。)として、酸化亜鉛が例示される。
【0027】
本実施形態に係る亜鉛系めっき浴における可溶性亜鉛含有物質の亜鉛換算含有量(可溶性亜鉛含有物質の亜鉛換算の浴中含有量)は限定されない。この含有量が過度に少ない場合には亜鉛系めっき皮膜が析出しにくくなることから、上記の亜鉛換算含有量は2g/L以上であることが好ましく、4g/L以上であることがより好ましく、8g/L以上であることが特に好ましい。可溶性亜鉛含有物質の亜鉛換算含有量が過度に多い場合には外観不良やつきまわり性の低下が生じることが懸念されるため、上記の亜鉛換算含有量は60g/L以下であることが好ましく、40g/L以下であることがより好ましく、20g/L以下であることが特に好ましい。
【0028】
(1−2)浴可溶性金属含有物質
本発明の一実施形態に係る亜鉛系めっき浴は、当該めっき浴が亜鉛合金めっき浴である場合には、浴可溶性金属含有物質を含有する。本明細書において浴可溶性金属含有物質とは、亜鉛合金めっき皮膜に含有される亜鉛以外の金属の供給源であって、金属元素の陽イオンおよびこれを含有する浴可溶性物質からなる群から選ばれる一種または二種以上の成分をいう。浴可溶性金属含有物質に含有される金属元素として、鉄、ニッケル、コバルトおよびマンガンが例示される。好ましい一例において、金属含有物質に含まれる金属元素は鉄、ニッケル、コバルトおよびマンガンからなる群から選ばれる。
【0029】
浴可溶性金属含有物質をめっき浴に供給する原料物質(本発明において、「金属源」ともいう。)はその浴可溶性金属含有物質に含有される金属元素の種類に応じて適宜選択すればよい。例えば、浴可溶性金属含有物質に含有される金属元素が鉄である場合、すなわち、亜鉛合金めっき浴が浴可溶性鉄含有物質を含有する場合には、Fe
2(SO
4)
3・7H
2O、FeSO
4・7H
2O、Fe(OH)
3、FeCl
3・6H
2O、FeCl
2・4H
2Oなどが鉄源として例示される。浴可溶性金属含有物質に含有される金属元素がニッケルである場合、すなわち、亜鉛合金めっき浴が浴可溶性ニッケル含有物質を含有する場合には、NiSO
4・6H
2O、NiCl
2・6H
2O,Ni(OH)
2などがニッケル源として例示される。浴可溶性金属含有物質に含有される金属元素がマンガンである場合、すなわち、亜鉛合金めっき浴が浴可溶性マンガン含有物質を含有する場合には、MnSO
4,MnSO
4・H
2O,MnCl
2・4H
2Oなどがマンガン源として例示される。
【0030】
本実施形態に係る亜鉛系めっき浴における可溶性金属含有物質の金属換算含有量は、目的とする亜鉛合金めっきの組成に応じて適宜設定される。亜鉛系めっき浴が浴可溶性鉄含有物質を含有する場合には、可溶性鉄含有物質の鉄換算含有量を5mg/L以上300mg/L以下程度とすることが例示され、10mg/L以上150mg/L以下程度とすることや、20mg/L以上70mg/L以下程度とすることが好ましい場合もある。亜鉛系めっき浴が浴可溶性ニッケル含有物質を含有する場合には、可溶性ニッケル含有物質のニッケル換算含有量を50mg/L以上10000mg/L以下程度とすることが例示され、100mg/L以上4000mg/L以下程度とすることや、200mg/L以上2000mg/L以下程度とすることが好ましい場合もある。亜鉛系めっき浴が浴可溶性マンガン含有物質を含有する場合には、可溶性マンガン含有物質のマンガン換算含有量を2g/L以上80g/L以下程度とすることが例示され、5g/L以上50g/L以下程度とすることや、10g/L以上20g/L以下程度とすることが好ましい場合もある。
【0031】
(2)添加剤成分
本実施形態に係るめっき浴は次に説明する水溶性共重合体(A)を添加剤成分として含有し、必要に応じてさらに他の添加剤成分も含有する。
【0032】
(2−1)水溶性共重合体(A)
本実施形態に係るめっき浴は、下記式(1)で示される構造からなる構成単位(U1)(下記式(1)中、Xは酸素元素または硫黄元素を表す。)および下記式(2)で示される構造からなる構成単位(U2)(下記式(2)中、Xは酸素元素または硫黄元素を表し、zは2または3を表す。)を含む水溶性共重合体を含有する。
【化4】
【0033】
本明細書において、かかる水溶性共重合体を水溶性共重合体(A)ともいう。水溶性共重合体(A)の一分子に含まれる構成単位(U1)および構成単位(U2)は、それぞれ、一種類であってもよいし、複数種類から構成されていてもよい。複数種類の場合における各種の配列は限定されず、一種類が連続的に配置されている部分を備えてもよいし、各種がランダムに配置されていてもよい。
【0034】
水溶性共重合体(A)の一分子に含まれるXはすべてが硫黄元素または酸素元素であってもよいし、硫黄元素および酸素元素を含んでいてもよい。水溶性共重合体(A)の一分子がXとして硫黄元素および酸素元素を含む場合において、いずれか一方の元素を有する部分が連続的に配置されている部分を備えてもよいし、それぞれの元素を有する部分がランダムに配置されていてもよい。
【0035】
水溶性共重合体(A)は、構成単位(U1)と構成単位(U2)とが連結基を介して結合している部分を有していてもよい。すなわち、水溶性共重合体(A)の一分子中に、構成単位(U1)および構成単位(U2)が含まれていてもよい。
【0036】
水溶性共重合体(A)の一分子中に、構成単位(U1)および構成単位(U2)が含まれている場合において、それらの含有比率は特に限定されない。超高電流密度部分における異常析出が発生する可能性をより安定的に低減させる観点から、水溶性共重合体(A)の一分子中に含まれる構成単位(U1)の構成単位(U2に対するモル比率は、0.5以上2以下とすることが好ましく、0.7以上1.5以下とすることがより好ましく、0.8以上1.25以下とすることが特に好ましい。
【0037】
水溶性共重合体(A)は、構成単位(U1)同士、構成単位(U2)同士、または構成単位(U1)と構成単位(U2)とが、下記式(3)で示される連結基(U3)および/または下記式(4)で示される連結基(U4)を介して連結している部分を有してもよい。
【化5】
【0038】
ここで、上記式(3)中において、aは1〜5の整数のいずれか、bは1〜5の整数のいずれか、dは1〜5の整数のいずれか、eは1〜5の整数のいずれか、mは0〜5の整数のいずれかを表す。上記式(4)中において、fは1〜5の整数のいずれか、gは1〜5の整数のいずれか、hは1〜5の整数のいずれか、iは1〜5の整数のいずれか、nは0〜5の整数のいずれかを表す。
【0039】
水溶性共重合体(A)の一具体例として、上記の連結基(U3)を示す上記式(3)中のa、b、dおよびeがいずれも1であって、連結基(U4)を示す上記式(4)中のf、g、hおよびiがいずれも1である場合が挙げられる。
【0040】
上記の水溶性共重合体(A)は、亜鉛めっき浴においても、亜鉛合金めっき浴においても、優れた添加剤として機能することができる。すなわち、構成単位(U2)の2つのエタンジイル基(−CH
2−CH
2−)がそれぞれn−プロパンジイル基(−CH
2−CH
2−CH
2−)である水溶性共重合体に比べて、超高電流密度部分において異常析出が発生しにくいめっき浴とすることができる。また、構成単位(U2)を有さず構成単位(U1)のみを部分構造として有する水溶性共重合体に比べて、厚さの電流密度依存性が低いめっき皮膜を得ることができる。上記の異常析出の発生をより安定的に抑制する観点から、構成単位(U1)のzは3であること、すなわち、n−プロパンジイル基を有する構成単位であることが好ましい。
【0041】
本実施形態に係る水溶性共重合体(A)は、構成単位(U1)および構成単位(U2)を含有することに基づき、カチオン性の共重合体である。水溶性共重合体(A)を亜鉛系めっき浴に添加する際の形態は特に限定されない。固体の成分として添加されてもよいし、液体の成分として添加されてもよい。一具体例として、カウンターアニオンも含む液体の成分として添加される場合が例示される。この場合において、カウンターアニオンの種類も特に限定されない。塩化物イオンなどのハロゲンイオンが具体例として挙げられる。なお、ハロゲンイオンの中でもフッ化物イオンは、取り扱い性を低下させ、廃液処理の負荷を増大させるおそれがあるため、使用しないことが好ましい。
【0042】
本実施形態に係る水溶性共重合体(A)の亜鉛系めっき浴中含有量も特に限定されない。水溶性共重合体(A)の添加量が過度に少ない場合には添加させたことの効果が適切に得られにくくなり、水溶性共重合体(A)の添加量が過度に多い場合には経済的観点、廃液処理の観点等の観点から不利益が生じる場合があり、さらに好ましくない効果が得られるおそれも高まることを考慮して、適宜設定すればよい。好ましい範囲について具体例として示せば、亜鉛系めっき浴が亜鉛めっき浴である場合には、水溶性共重合体(A)の浴中含有量を塩化物換算で(水溶性共重合体(A)の全てのカチオンに対して塩化物イオンが対応して存在しているとした場合における含有量として)0.1g/L以上50g/L以下とすることが挙げられ、浴中含有量を水溶性共重合体(A)の塩化物換算で0.5g/L以上20g/L以下とすることがより好ましい。めっき浴が亜鉛合金めっき浴である場合には、水溶性共重合体(A)の浴中含有量を塩化物換算で0.1g/L以上20g/L以下とすることが挙げられる。
【0043】
本実施形態に係る水溶性共重合体(A)の製造方法は特に限定されない。一例を挙げれば、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]尿素またはN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]尿素、およびN,N’−ビス[2−(ジメチルアミノ)エチル]尿素を、ジハロゲン化エチルエーテルおよびエピハロヒドリンにて縮重合させることにより、水溶性共重合体(A)を含む組成物を得ることができる。
【0044】
(2−2)その他の添加剤成分
本実施形態に係る亜鉛系めっき浴は、上記の水溶性共重合体(A)以外の添加剤成分を含有してもよい。そのような添加剤成分または亜鉛系めっき浴中で添加剤成分を与える材料として、次のようなものが例示される。
【0045】
i)一次光沢剤
本実施形態に係る亜鉛系めっき浴は、添加剤成分の一種として一次光沢剤を含有してもよい。かかる一次光沢剤の例として、各種亜鉛めっき浴に使用されるアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、ポリアミン化合物および水溶性カチオン高分子化合物などの水溶性の有機化合物などを挙げることができる。
このポリアミン化合物および水溶性カチオン高分子化合物として、ポリアリルアミン、ポリエポキシポリアミン、ポリアミドポリアミン、およびポリアルキレンポリアミン、などが例示される。前述の化合物(Z)も一次光沢剤の一種に位置付けられる。
【0046】
ポリアリルアミンの具体例として、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドと二酸化硫黄の共重合体などが挙げられる。ポリエポキシポリアミンの具体例として、エチレンジアミンとエピクロルヒドリンとの縮合重合体、ジメチルアミノプロピルアミンとエピクロルヒドリンとの縮合重合体、イミダゾールとエピクロルヒドリンとの縮合重合体、1−メチルイミダゾールや2−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体とエピクロルヒドリンとの縮合重合体、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のトリアジン誘導体などを含む複素環状アミンとエピクロルヒドリンとの縮合重合体などが挙げられる。ポリアミドポリアミンの具体例として、3−ジメチルアミノプロピル尿素とエピクロルヒドリンとの縮合重合体、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)尿素とエピクロルヒドリンとの縮合重合体等のポリアミンポリ尿素樹脂、N,N−ジメチルアミノプロピルアミンとアルキレンジカルボン酸とエピクロルヒドリンとの縮合重合体等の水溶性ナイロン樹脂などが挙げられる。また、ポリアルキレンポリアミンの具体例として、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンペンタミン、ジメチルアミノプロピルアミンと2,2’−ジクロルジエチルエーテルとの縮合重合体、ジメチルアミノプロピルアミンと1,3−ジクロルプロパンとの縮合重合体、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパンと2,2’−ジクロルジエチルエーテルとの縮合重合体、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパンと1,4−ジクロルブタンとの縮合重合体、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパンと1,3−ジクロルプロパン−2−オールとの縮合重合体などが挙げられる。
【0047】
一次光沢剤の亜鉛系めっき浴中含有量は限定されない。一次光沢剤の種類や、被めっき部材の形状、めっき条件などを勘案して適宜設定すればよい。一例を挙げれば、一次光沢剤の含有量は0.1g/L以上100g/L以下とすることが好ましく、0.5g/L以上20g/L以下とすることがより好ましい。
【0048】
ii)二次光沢剤
本実施形態に係る亜鉛系めっき浴は、添加剤成分の一種として二次光沢剤を含有してもよい。特に、光沢性の向上などの観点からは、二次光沢剤として、芳香族アルデヒドおよびピリジニウム化合物のうち少なくとも一方を含有してもよい。
二次光沢剤として機能することができる芳香族アルデヒドとしては、アニスアルデヒド、ベラトルアルデヒド、サリチルアルデヒド、バニリン、ピペロナール、およびp−ヒドロキシベンズアルデヒドなどを挙げることができる。光沢性の向上と亜鉛系めっき浴に含有される化合物の安定性の観点から、二次光沢剤として含有されることが好ましい芳香族アルデヒドとして、ベラトルアルデヒド、およびバニリンが例示される。
【0049】
二次光沢剤として機能することができるピリジニウム化合物としては、ベンジルピリジニウムカルボキシレート(塩化3−カルボキシベンジルピリジニウム)、および塩化3−カルバモイルベンジルピリジニウムなどを挙げることができる。
【0050】
これらのピリジニウム化合物の中でも、4級アミノ基を有するピリジニウム化合物が好ましい。以下、このピリジニウム化合物を「ピリジニウム化合物(α)」ともいう。ピリジニウム化合物(α)はポリカチオン化合物であり、亜鉛系めっき浴中で加水分解されたりめっき析出のための電解処理によって電気分解されたりしても、この化合物の分解物や重合体が可溶性を維持することができるため、めっき浴中に不溶性物質が発生しにくく、不溶性物質の被めっき面への吸着に基づくめっき皮膜の外観不良が生じにくい。また、一次光沢剤と同等の機能をも示す場合があり、そのような場合には、ピリジニウム化合物(α)単独で、亜鉛系めっき皮膜の均一電着性を高めるとともに皮膜の光沢度を高めることができる。
【0051】
ピリジニウム化合物(α)の亜鉛系めっき浴への添加量は特に限定されない。ピリジニウム化合物(α)の具体的な構造や亜鉛系めっき浴の組成などに応じて適宜設定されるべきものである。亜鉛系めっき浴中の上記のピリジニウム化合物の浴中含有量を0.05g/L以上5g/L以下とすることが、ピリジニウム化合物(α)の具体的な構造や亜鉛系めっき浴の組成がどのような場合であっても所望の効果を得ることができることが多いため好ましく、0.1g/L以上3g/L以下とすることがより好ましい。
【0052】
iii)めっき促進剤
「めっき促進剤」とは、めっき金属の析出を促進させる機能を有するものであって、被めっき面に吸着してその吸着した領域近傍で金属イオンの還元反応が生じることを促進しているものと推測される。
そのようなめっき促進剤として、チアジアゾール骨格を有する化合物であるチアジアゾール化合物が例示される。チアジアゾール骨格に含まれる3つの硫黄が被めっき面に化学吸着し、この化学吸着した領域での金属イオンの還元反応を促進している可能性がある。チアジアゾール化合物の具体例として、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−チオ酢酸−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジチオ酢酸−1,3,4−チアジアゾール、2−ヒドロキシエチルチオ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジヒドロキシエチルチオ−1,3,4−チアジアゾール、エピクロルヒドリン改質2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、ビス(1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル)などが挙げられる。
【0053】
めっき促進剤の亜鉛系めっき浴中含有量は限定されない。めっき促進剤の種類や、被めっき部材の形状、めっき条件などを勘案して適宜設定すればよい。一例を挙げれば、めっき促進剤の含有量は0.1g/L以上100g/L以下とすることが好ましく、0.5g/L以上20g/L以下とすることがより好ましい。
【0054】
iv)キレート剤
本実施形態に係る亜鉛系めっき浴は、キレート剤を含有してもよい。
キレート剤の具体例として、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、エチレンジアミン、ヘキサミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、トリアミノトリエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミノプロピルアミン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、1,3−ビス−(3−アミノプロポキシ)エタン、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)などが例示される。このキレート剤は、例えばジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどのポリアミン化合物のように、一次光沢剤としての機能も有するキレート剤であってもよい。なお、キレート剤がカルボン酸など酸の部分構造を有する場合には、キレート剤はフリーの酸の形態として亜鉛系めっき浴に添加されてもよいし、ナトリウム塩などの塩の形態として添加されてもよい。あるいは、アルカリ性である亜鉛合金めっき浴中で加水分解されることにより酸イオンを形成しうる誘導体(例えばエステル)の形態で亜鉛系めっき浴に添加されてもよい。
【0055】
キレート剤の亜鉛系めっき浴中含有量は限定されない。キレート剤の種類や、被めっき部材の形状、めっき条件などを勘案して適宜設定すればよい。一例を挙げれば、キレート剤の含有量は0.1g/L以上100g/L以下とすることが好ましく、0.5g/L以上20g/L以下とすることがより好ましい。
【0056】
v)その他
本実施形態に係る亜鉛系めっき浴は、上記の成分以外の添加剤成分を含有してもよい。そのような添加剤成分として、酸化防止剤、消泡剤、金属封鎖剤などが例示される。
酸化防止剤として、フェノール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ピロガロール等のヒドロキシフェニル化合物や、L−アスコルビン酸、ソルビトール等が例示される。なお、上記のキレート剤が還元性物質である場合には、そのキレート剤が酸化防止剤の機能を有しているため、酸化防止剤を含有させなくともよい。
消泡剤として、シリコーン系消泡剤や、界面活性剤、ポリエーテル、高級アルコール等の有機系消泡剤が例示される。
金属封鎖剤として、珪酸塩(具体例としてケイ酸ナトリウムが挙げられる。)、シリカ(具体例としてコロイダルシリカが挙げられる。)などが例示される。金属封鎖剤の亜鉛系めっき浴中含有量は限定されない。金属封鎖剤の種類や、溶媒の組成などを勘案して適宜設定すればよい。一例を挙げれば、金属封鎖剤の含有量は0.1g/L以上100g/L以下とすることが好ましく、0.5g/L以上20g/L以下とすることがより好ましい。キレート剤が金属封鎖剤としての機能を有する場合もある。
【0057】
(3)溶媒、液性
本実施形態に係るめっき浴の溶媒は水を主成分とする。水以外の溶媒としてアルコール、エーテル、ケトンなど水への溶解度が高い有機溶媒を混在させてもよい。この場合には、めっき浴全体の安定性および廃液処理への負荷の緩和の観点から、その比率は全溶媒に対して10体積%以下とすることが好ましい。
【0058】
本実施形態に係る亜鉛系めっき浴はジンケート型のめっき浴であるから、アルカリ性である。めっき浴をアルカリ性とするために用いられる材料(本明細書において「アルカリ成分」ともいう。)の種類は特に限定されない。水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物など公知の材料を用いればよい。
【0059】
本実施形態に係る亜鉛系めっき浴に含まれるアルカリ成分の含有量は特に限定されない。過度に少ない場合には亜鉛系めっき浴の液性をアルカリ性とすることができず、めっき浴中でジンケートイオンを生成することが困難となる。一方、アルカリ成分の含有量が過度に高い場合には、亜鉛系めっき浴の安定性が低下して、得られる亜鉛系めっき皮膜の外観が低下したり付き廻り性が低下したりすることが懸念される。したがって、亜鉛系めっき浴に含まれるアルカリ成分の浴中含有量は、水酸化ナトリウム換算で40g/L以上400g/L以下とすることが好ましく、80g/L以上250g/L以下とすることがより好ましく、100g/L以上200g/L以下とすることが特に好ましい。
【0060】
(4)調製方法
本実施形態に係る亜鉛系めっき浴の調製方法は特に限定されない。亜鉛系めっき浴が亜鉛めっき浴の場合には、アルカリ成分、亜鉛源および浴中で水溶性共重合体(A)を与える成分(水溶性共重合体(A)の塩化物などが例示され、以下、「水溶性共重合体(A)源」ともいう。)、ならびに必要に応じ任意添加成分として前述のその他の添加剤成分などを水などの溶媒に溶解させることによって調製することができる。亜鉛合金めっき浴の場合には、アルカリ成分、亜鉛源、金属源および水溶性共重合体(A)源、ならびに必要に応じ任意添加成分として前述のその他の添加剤成分などを溶媒に溶解させることによって調製することができる。通常は、溶媒にアルカリ成分を添加し、続いて他の成分を添加することによって、作業性を低下させることなくかつ安全に亜鉛系めっき浴を調製することができる。
【0061】
2.ジンケート型亜鉛系めっき浴用添加剤
本実施形態に係るジンケート型亜鉛系めっき浴用添加剤は、上記の本実施形態に係る亜鉛系めっき浴に含有される添加剤成分を含有する。すなわち、本実施形態に係るジンケート型亜鉛系めっき浴用添加剤は水溶性共重合体(A)を含有し、必要に応じ、さらに、一次光沢剤、二次光沢剤、めっき促進剤などの前述の他の添加剤成分を含有する。
【0062】
本実施形態に係るジンケート型亜鉛系めっき浴用添加剤における水溶性共重合体(A)の含有量は特に限定されない。水溶性共重合体(A)の塩化物など水溶性共重合体(A)源は溶解度が高いため、10g/L程度まで浴中含有量を高めることができる。
本実施形態に係るジンケート型亜鉛系めっき浴用添加剤が水溶性共重合体(A)以外の成分を含有する場合におけるそれらの含有量は、その添加剤の機能との関係で適宜設定されるべきものである。
【0063】
3.亜鉛系めっき部材の製造方法
亜鉛系めっき部材は、本実施形態に係る亜鉛系めっき浴に被めっき部材を浸漬させ、被めっき部材をカソード(陰極)として電解を行うことによって得ることができる。被めっき部材の材質は導電性を有する限り特に限定されない。鉄系材料などの金属系材料、および樹脂系材料やセラミックス系材料などからなる導電性を有さない材料の表面に無電解めっきなどにより導電性材料からなる層が形成されたものが例示される。被めっき部材の形状も特に限定されない。板材や棒材、線材などの一次加工品、ねじ、ボルト、プレス加工品などの二次加工品が挙げられる。
なお、アノード(陽極)を構成する材料は特に限定されない。通常は、安価で入手しやすい鉄系材料が用いられる。
【0064】
電解における電流密度は特に限定されない。電流密度が過度に低い場合には得られる亜鉛系めっき皮膜の析出速度が低く生産性に劣り、電流密度が過度に高い場合には得られる亜鉛めっき皮膜の外観が劣化したり、均一電着性、付き廻り性などが低下したりすることが懸念されることを考慮して、適宜設定すればよい。生産性を高めることとめっき皮膜の品質を高めることとを両立する観点から、0.01A/dm
2以上30A/dm
2以下とすることが好ましく、0.5A/dm
2以上15A/dm
2以下とすることがより好ましく、0.5A/dm
2以上7A/dm
2以下とすることが特に好ましい。前述のように、被めっき物の形状的理由などにより局所的に電流密度が特に高くなる超高電流密度部分においても、本実施形態に係る亜鉛系めっき浴では異常析出が生じにくい。
【0065】
電解におけるめっき浴の温度(めっき浴温度)は室温程度(25℃程度)で行えばよい。めっき浴温度が過度に高い場合には、めっき外観光沢が低下し、特に低電部の光沢性が低下するめっき浴温度が過度に低い場合には、めっき皮膜の析出速度が低下するなど生産性に悪影響を及ぼすことが懸念される。
【0066】
電解時間(めっき時間)は、めっき浴の組成、上記の電流密度、めっき浴温度などによって決定されるめっき皮膜の析出速度と求めるめっき皮膜の厚さとから適宜設定される。
【0067】
めっき設備の構成は特に限定されない。板状または棒状のアノードに対向するようにカソードとしての被めっき部材を亜鉛系めっき浴中に配置し、亜鉛系めっき浴内で液攪拌を適宜行いながら電解して被めっき部材に亜鉛系めっき皮膜を形成してもよいし、ボルトなどの被めっき部材がその内部に入っているバレルを亜鉛系めっき浴中に浸漬させ、バレルを回転させながら電解を行うことで被めっき部材に亜鉛系めっき皮膜を形成してもよい。
【実施例】
【0068】
以下、本発明の効果を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0069】
1.亜鉛系めっき浴の調製および亜鉛系めっき皮膜を有する部材の作製
[実施例1]
(1)水溶性共重合体(A1)の塩化物の製造
N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]尿素1molと、N,N’−ビス[2−(ジメチルアミノ)エチル]尿素1molとを、フラスコに入れ撹拌し、エピクロルヒドリン1molおよびジクロロエチルエーテル1molをさらにフラスコに入れて、これらの重縮合反応物を含む液体を、水溶性共重合体(A)の一種(本明細書において、「水溶性共重合体(A1)」ともいう。)を含む液体として得た。以下、上記の液体を「液体(A1)」ともいう。水溶性
共重合体(A1)が含む構成単位(U1)は、上記式(1)において、Xが酸素元素であってzが2であった。水溶性
共重合体(A1)が含む構成単位(U2)は、上記式(2)において、Xが酸素元素であった。水溶性
共重合体(A1)が含みうる連結基(U3)は、a、b、dおよびeがいずれも1であった。水溶性
共重合体(A1)が含みうる連結基(U3)は、f、g、hおよびiがいずれも1であった。
【0070】
(2)亜鉛めっき浴の調製
亜鉛源としての酸化亜鉛を、これに由来する浴可溶性亜鉛含有物質のめっき浴中の亜鉛換算含有量が10g/Lとなる量、アルカリ成分としての水酸化ナトリウムを、めっき浴1Lあたりの溶解量が120gとなる量、液体(A1)を、めっき浴中の水溶性共重合体(A1)の塩化物換算含有量が1g/Lとなる量、および補助光沢剤としてメタスZES−V(ユケン工業(株)製)を1ml/L含有するアルカリ性のジンケート型亜鉛めっき浴を調製した。
【0071】
(3)亜鉛めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材の作製
ハルセル試験器(山本めっき試験器社製)を用意した。この試験器のめっき槽内の所定の位置に、縦45mm、横45mm、厚さ1mmのアノードとしての鉄板、および縦67mm、横100mm、厚さ0.3mmの被めっき部材(カソード)としての冷間圧延鋼板(SPCC)を配置した。めっき槽内に上記のめっき浴を液面が所定の高さとなるまで入れた。アノードおよびカソードをめっき電源に接続し、次の条件1から条件3のいずれかの条件にて電気めっきを行って、亜鉛めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を3つ得た。
【0072】
(条件1)
電流:4A
通電時間:5分
めっき浴温度:25℃
めっき面積の調整:電流密度を高めるために、アノード鉄板のめっき面積を通常ハルセルの1/4の面積(縦方向の長さを1/4とした。)としてめっきを行った。
上記の電流では、カソードの電流密度は80A/dm
2から2A/dm
2の範囲であった。
【0073】
(条件2)
電流:2A
通電時間:20分
めっき浴温度:25℃
上記の電流では、カソードの電流密度は10A/dm
2から0.2A/dm
2の範囲であった。
【0074】
(条件3)
電流:0.5A
通電時間:20分
めっき浴温度:25℃
上記の電流では、カソードの電流密度は2.5A/dm
2から0.1A/dm
2の範囲であった。
【0075】
[実施例2]
N−[2−(ジメチルアミノ)プロピル]尿素1molと、N,N’−ビス[2−(ジメチルアミノ)エチル]尿素1molとを、フラスコに入れ撹拌し、エピクロルヒドリン1molおよびジクロロエチルエーテル1molをさらにフラスコに入れて、これらの重縮合反応物を含む液体を得た。水溶性共重合体(A)の一種(本明細書において、「水溶性共重合体(A2)」ともいう。)を含む液体として得た。以下、上記の液体を「液体(A2)」ともいう。水溶性
共重合体(A2)が含む構成単位(U1)は、上記式(1)において、Xが酸素元素であってzが3であった。水溶性
共重合体(A2)が含む構成単位(U2)は、上記式(2)において、Xが酸素元素であった。水溶性
共重合体(A2)が含みうる連結基(U3)は、a、b、dおよびeがいずれも1であった。水溶性
共重合体(A2)が含みうる連結基(U3)は、f、g、hおよびiがいずれも1であった。
以下、液体(A1)に代えて液体(A2)を用いて、実施例1と同様の操作を行って、浴可溶性亜鉛含有物質および水溶性共重合体(A2)を含有するアルカリ性のジンケート型亜鉛めっき浴を調製した。かかるジンケート型亜鉛めっき浴を用いて、実施例1に示される3種の異なるめっき条件で電気めっきを行って、亜鉛めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を3つ得た。
【0076】
[比較例1]
N−[2−(ジメチルアミノ)プロピル]尿素1molと、N,N’−ビス[2−(ジメチルアミノ)プロピル]尿素1molとを、フラスコに入れ撹拌し、エピクロルヒドリン1molおよびジクロロエチルエーテル1molをさらにフラスコに入れて、これらの重縮合反応物を含む液体を得た。この液体は、水溶性
共重合体(A2)と類似した構造であるが、水溶性
共重合体(A2)に含まれる構成単位(U1)の2つのエタンジイル基がいずれもn−プロパンジイル基に変更された構造を有する水溶性共重合体(本明細書において、「水溶性共重合体(B1)」ともいう。)を含有する。以下、この液体を「液体(B1)」ともいう。
亜鉛源としての酸化亜鉛を、これに由来する浴可溶性亜鉛含有物質のめっき浴中の亜鉛換算含有量が10g/Lとなる量、アルカリ成分としての水酸化ナトリウムを、めっき浴1Lあたりの溶解量が120gとなる量、液体(B1)を、めっき浴中の水溶性共重合体(B1)の塩化物換算含有量が1g/Lとなる量、および補助光沢剤としてメタスZES−V(ユケン工業(株)製)を1ml/L含有するアルカリ性のジンケート型亜鉛めっき浴を調製した。 以下、かかるジンケート型亜鉛めっき浴を用いて、実施例1に示される3種の異なるめっき条件で電気めっきを行って、亜鉛めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を3つ得た。
【0077】
2.評価
(1)異常析出の発生およびその程度の評価
実施例1および2ならびに比較例1において条件1のめっき条件にて作製した亜鉛系めっき部材における、めっき槽内に配置されていた際にめっき液高さの1/2に相当する位置のめっき皮膜の表面を目視にて観察して、異常析出の発生の有無を確認した。異常析出が発生している場合には、異常析出が析出している領域の高電流密度側端部からの距離を測定した。
【0078】
(2)めっき膜厚分布
実施例1および2ならびに比較例1において条件2のめっき条件にて作製した亜鉛系めっき部材における、めっき槽内に配置されていた際にめっき液高さの1/2に相当する位置のめっき皮膜の厚さ(単位:μm)を、高電流密度側端部から10mm、50mm、80mmの位置で、蛍光X線膜厚計(SII社製:SFT−9200)により測定した。
【0079】
(3)めっき皮膜の外観の観察
実施例1および2ならびに比較例1において条件2のめっき条件にて作製した亜鉛系めっき部材における、めっき槽内に配置されていた際にめっき液高さの1/2に相当する位置のめっき皮膜の表面を目視にて観察して、次の基準で評価した。
A:全面光沢外観
B:高電流密度部から中電流密度部光沢外観であるが、低電流密度部に曇った外観を有する
C:高電流密度部から中電流密度部光沢外観であるが、低電流密度部において、曇った外観を有し、さらに白く曇った外観も有する
D:高電流密度部から中電流密度部光沢外観であるが、低電流密度部において、白く曇った外観を有し、さらに灰色となる外観も有する
【0080】
(4)光沢付き廻りの評価ハルセル外観を目視にて観察し、次の基準で評価した。
実施例1および2ならびに比較例1において条件3のめっき条件にて作製した亜鉛系めっき部材における、めっき槽内に配置されていた際にめっき液高さの1/2に相当する位置のめっき皮膜の表面を目視にて観察して、次の基準で評価した。
A:全面光沢外観
B:高電流密度部から中電流密度部光沢外観であるが、低電流密度部に曇った外観を有する
C:高電流密度部から中電流密度部光沢外観であるが、低電流密度部において、曇った外観を有し、さらに白く曇った外観も有する
D:高電流密度部から中電流密度部光沢外観であるが、低電流密度部において、白く曇った外観を有し、さらに灰色となる外観も有する
【0081】
3.結果
評価結果を表1に示す。
【表1】