(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記筒状体は、前記基盤に垂直で且つ互いに直交する2つの直交側面と、傾斜する側面と、前記上面の面積より大なる面積の底面とを有する角錐台形状を有することを特徴とする請求項1に記載のリフレクタアレイ光学装置。
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のリフレクタアレイ光学装置と前記リフレクタアレイ光学装置の一方の主面側にある被観察物とを含み、前記被観察物の実像を前記リフレクタアレイ光学装置の他方の主面側の空間に結像させることを特徴とする表示装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
2面コーナーリフレクタアレイ光学素子では、アクリル等など透明材料からなる筒状体を有する2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の場合と、立方体形状の貫通穴を用いた筒状体の場合とでは、透明材料と空気の屈折率が異なるので、観察した空中像を最も明るくするための観察の条件がいろいろ変わってくる。
【0008】
高さの低い筒状体を用いた2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の場合、背景光から区別できる十分な明るさの空中像を結像させることができないという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、空中像の明るさを向上できるリフレクタアレイ光学装置およびそれを用いた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるリフレクタアレイ光学装置は、一方の主面側にある被観察物の実像を他方の主面側の空間に結像させるリフレクタアレイ光学装置であって、2つの2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を有しており、2面コーナーリフレクタアレイ光学素子のそれぞれが透明材料からなる基盤と一体的に形成され且つ基盤の表面から突出した複数の筒状体を有している。そして、本発明によるリフレクタアレイ光学装置において、複数の筒状体の各々は基盤に垂直で且つ互いに直交する少なくとも2つの直交側面を有しており、2つの2面コーナーリフレクタアレイ光学素子は、2つの直交側面の各々が同一平面にあるように筒状体の各々の上面同士にて重ね合わせられている、ことを特徴とする。かかるリフレクタアレイ光学装置を用いることにより、高さの高い筒状体を得ることができ、明るい空中像を得ることができる。単独の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子で筒状体の高さを高くすることが難しい時に、高さの高い筒状体を得るために、2つの2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を重ね合わせることは有効である。
【0011】
さらに、本発明によるリフレクタアレイ光学装置においては、前記筒状体は、前記基盤に垂直で且つ互いに直交する2つの直交側面と、傾斜する側面と、前記上面の面積より大なる面積の底面とを有する角錐台形状を有することとすることができる。換言すれば、かかる本発明のリフレクタアレイ光学装置は、被観察物の実像(実鏡映像)を観察者側の空間に結像させる実鏡映像結像光学系であり、それぞれが複数の角錐台(2面コーナーリフレクタを含む)を有する2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の2枚を、角錐台上面側を向い合わせ、且つ、垂直な平面(2面コーナーリフレクタ)が連続するように重ね合わせた構造を有する。2枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の各々は、透明材料から一体成形された基盤の表面から突出した角錐台を複数有し、それぞれの該角錐台の4つある側面のうちの直交する2面が2面コーナーリフレクタとして機能する基盤と垂直な平面として形成され、且つ、前記2面以外の面が、角錐台の基盤面側の平面(底面)より、基盤側とは反対側の平面(上面)の方が小さくなるような傾斜をつけた平面として形成された構造を有する。これにより、樹脂成型により作製可能な2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を用いたリフレクタアレイ光学装置における上記空中像がより明るくなる。
【0012】
前記リフレクタアレイ光学装置を形成する各々の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の基盤に垂直な面(法線)からの前記傾斜角度は5度以上25度以下であることが好ましい。この傾斜角度(基盤法線からの角度)はスタンパからの2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の取り外しを考えると大きい方が良いが、大き過ぎると2面コーナーリフレクタで反射した光の出射面である上記角錐台の上面の面積が小さくなることにより被観察物の実像(実鏡映像)が暗くなってしまう。また、上記上面面積を確保した場合には上記角錐台の底面の面積が大きくなり単位面積当りの2面コーナーリフレクタの数が減少してしまうため、やはり被観察物の実像(実鏡映像)が暗くなってしまう。これら相反する現象に対して様々な傾斜角度のスタンパを用いて成型実験を行った結果、上記傾斜角度は5度以上25度以下にすることが好適であることが分かった。
【0013】
前記リフレクタアレイ光学装置を形成する各々の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の2面コーナーリフレクタとして機能する基盤と垂直な平面に金属膜による反射面をさらに付けることが好ましい。
【0014】
前記リフレクタアレイ光学装置を形成する各々の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子は樹脂成型法により作製されていることが好ましい。
【0015】
上記角錐台において、2面コーナーリフレクタを形成する2面以外の側面(上面と底面除く)は2面存在することになり、その両面に上記傾斜を付けることになるが、それら両面の傾斜角度は等しくても良いし、等しくなくても良い。ただし電鋳加工等の反転工法で金型を作製する場合にはそれら両面の角度が等しい方が切削工具(バイト)を1種類だけ作製すれば良いので都合が良い。
【0016】
リフレクタアレイ光学装置によれば、被観察物の明るい実像(実鏡映像)を観察者側の空間に結像させる実鏡映像結像光学系を利用した表示装置を実現できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のリフレクタアレイ光学装置によれば、高さの低い筒状体を有する2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の2枚を用い重ね合わせることにより、高さの高い筒状体を得ることができ、明るい空中像表示を得ることができる。また、筒状体を角錐台形状とすることにより、樹脂成型で作製可能な2面コーナーリフレクタアレイ光学素子をリフレクタアレイ光学装置に利用できるようになる。さらに副次的な効果として、観察者側への多重反射の透過光を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明による実施形態のリフレクタアレイ光学装置の具体的構成例を模式的に示す概略部分切欠斜視図である。
【
図2】本発明による更なる実施形態のリフレクタアレイ光学装置の具体的構成例を模式的に示す概略部分切欠斜視図である。
【
図3】本発明による実施形態のリフレクタアレイ光学装置の一方の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を模式的に示す概略部分切欠斜視図である。
【
図4】
図3のA−A断面における断面図(a)およびB−B断面における断面図(b)である。
【
図5】本発明による実施形態にかかる2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の角錐台を模式的に示す斜視図である。
【
図6】(a)〜(e)本発明による実施形態にかかる2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を射出成型法により作製する場合の手順を説明するための概略断面図である。
【
図7】本発明による実施形態にかかる2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を作製するためのスタンパ作製時に使用するダイヤバイトの形状を説明するための概略断面図である。
【
図8】本発明による実施形態にかかる2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を作製するためのスタンパ作製時に使用する銅マスター板の概略平面図である。
【
図9】
図8のA−A断面における部分拡大断面図である。
【
図10】電鋳反転加工で得られた本発明による実施形態で使用するスタンパの部分拡大断面図である。
【
図11】(a)〜(e)本発明による実施形態にかかる2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を熱プレス成型法により作製する場合の手順を説明するための概略断面図である。
【
図12】本発明による実施形態の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の具体的構成例を模式的に示す概略平面図(a)および部分切欠斜視図(b)である。
【
図13】(a)〜(d)本発明による実施形態にかかる2枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の貼り合わせる場合の手順を説明するための2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を模式的に示す斜視図である。
【
図14】同実施形態のリフレクタアレイ光学装置の角錐台形状の突出部が接合した様子を模式的に示す概略部分断面図である。
【
図15】本発明による実施形態の表示装置に適用される2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の結像様式を模式的に示す概略斜視図である。
【
図16】本発明による実施形態の表示装置に適用される2面コーナーリフレクタアレイ光学素子による結像様式を模式的に示す概略平面図である。
【
図17】本発明による実施形態の表示装置に適用される2面コーナーリフレクタアレイ光学素子による結像様式を模式的に示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明による一実施形態の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子および表示装置について、図面を用いて説明する。
【0020】
図1に、本発明が適用された実施形態のリフレクタアレイ光学装置の拡大部分斜視図を示す。
図2において、6,6aは2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を示し、50,50aは筒状体を示し、60,60aは基盤を示す。2つの2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6,6aそれぞれは、透明材料からなる基盤60,60aとその上に一体的に成型された複数の筒状体50,50aとを有する。リフレクタアレイ光学装置は、2つの2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6,6aの筒状体50,50a同士がそれぞれ対向するように重ね合わせられて構成されている。
【0021】
2つの2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6,6aは、筒状体50,50aの各々の上面同士が接着され且つ2つの直交側面(鏡面61a,61b)の各々が同一平面上に存在するように重ね合わせられている。かかるリフレクタアレイ光学装置は、立方体形状の突出部を有する2面コーナーリフレクタアレイ光学素子2枚を、基盤側とは反対側、すなわち、立方体形状の突出部の上面側を向い合わせ、且つ、基盤に垂直な平面にて直交側面が1つの連続する平面となるように重ね合わせ作製されている。
【0022】
図1に示す突出した筒状体50を有する2面コーナーリフレクタ光学素子6,6aの作製方法としては、アクリル等の樹脂の射出成型および熱プレス成型による方法がある。これによれば、高さの低い直方体の筒状体50を有する2面コーナーリフレクタ光学素子6,6aの作製が可能である。突出した筒状体50の4つの面が基盤60に対して垂直面となっているので、筒状体の高さが高くなるほど成型後に光学素子をスタンパから外すこと(離型)が困難となるので、他の2面コーナーリフレクタ光学素子の作製方法として、例えば、直接X線リソグラフィ法などを用いることにより、樹脂基盤に直接、4面垂直側壁を持った直方体や立方体を作製することができる。
【0023】
アクリル等からなる筒状体を有する2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の場合と、立方体形状の貫通穴を用いたものの場合とでは、観察した空中像を最も明るくするための観察の角度条件が変わってくる。すなわち、光が空気より屈折率の大きな樹脂内を通るために、立方体形状の貫通穴を用いた2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の場合では35度方向から観察した空中像を最も明るくするが、アクリル樹脂の屈折率を1.5としてシミュレーションを行うと、立方体形状筒状体の高さを正方形底面の一辺の長さの約2倍程度と高くし長方体とした場合が、35度方向から観察した空中像をより明るくすることができることが判った。しかし、樹脂成型で作製する場合は、上記の突出した長方体形状の高さが高いほど、つまり、成型体表面に作製する凸形状の高さが高いほど、成型時の離型の難易度が高くなる。
【0024】
また、成型体表面に作製する凸形状に傾斜いわゆる「抜きテーパー」を付けることにより、スタンパからの2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の取り外しを容易にすることができる。しかし、筒状体形状の突出部に樹脂成型時の抜きテーパーを設けた場合、2面コーナーリフレクタを有する2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の光の利用効率が低下する。たとえば、傾斜面を持つ略長方体形状の突出部を有する2面コーナーリフレクタアレイ光学素子で、突出部の高さをその底面の一辺の長さの2倍とした場合、略長方体の基盤側とは反対側の平面(上面)の一辺の長さは底面の3分の1になることもあり、上面を通る光の量もそれにつれて少なくなってしまう。
【0025】
これらのことを考慮すると、樹脂成型時の抜きテーパーを考慮した傾斜面を持つ突出部を有する2面コーナーリフレクタアレイ光学素子では、作製面からも、光学面からも、突出部の高さを高くすることに限界があるということになる。
【0026】
図2は、かかる限界を解消する本発明の更なる実施形態のリフレクタアレイ光学装置の拡大部分斜視図を示す。
図2において、6,6aは2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を示し、51,51aは角錐台を示し、60,60aは基盤を示す。2つの2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6,6aそれぞれは、透明材料からなる基盤60,60aとその上に一体的に成型された複数の角錐台51,51aとを有する。リフレクタアレイ光学装置は、2つの2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6,6aの角錐台51,51a同士がそれぞれ対向するように重ね合わせられて構成されている。
【0027】
2つの2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6,6aは、角錐台51,51aの各々の上面同士が接着され且つ2つの直交側面(鏡面61a,61b)の各々が同一平面上に存在するように重ね合わせられている。かかるリフレクタアレイ光学装置は、角錐台形状の突出部を有する2面コーナーリフレクタアレイ光学素子2枚を、基盤側とは反対側、すなわち、角錐台形状の突出部の上面側を向い合わせ、且つ、基盤に垂直な平面にて直交側面が1つの連続する平面となるように重ね合わせ作製されている。貼り合わせに、樹脂の屈折率にマッチングした光学接着剤を使用することにより、貼り合わせ面での光の反射を防止することができる。
【0028】
2つの2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6,6aは同様な構成なので、角錐台形状の突出部を有する一方の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6について述べる。
図3に、リフレクタアレイ光学装置の半体である、突出した角錐台51を有する2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6の実施形態の拡大部分斜視図を示す。また、
図4に
図3のA−AおよびB−B断面における拡大部分断面図を示す。
図5に2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の1つの角錐台51を模式的に示す斜視図を示す。
【0029】
図3に示す2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6は、透明材料で一体的に成型された平板状の基盤60の表面から突出した角錐台51の複数を有する。角錐台51の各々には2面コーナーリフレクタ61として2つの直交する側面(鏡面61a、61b)が形成され、2面コーナーリフレクタを形成する上面と底面除く2鏡面以外の側面62a(
図3では角錐台51の奥側で見えていない面)、62bが基盤60主面の法線から一定の角度(傾斜面)を持っている。
図4には角錐台51の寸法H、L、Dおよび角度θが記載してあるが、これらの値は、高さH=170μm、正方形上面一辺L=150μm、間隔D=10μm、テーパー角度θ=108°である。角錐台51は樹脂成型時の抜きテーパーを考慮した傾斜面(基盤に垂直な面からの角度18度)を持つが、これは代表値であり、本発明はこれに限定されるものではない。このように、2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6は、透明材料で一体的に成型され且つ基盤から突出した複数の角錐台を含み、複数の角錐台の各々には2面コーナーリフレクタとして機能する該基盤に垂直で且つ互いに直交する2つの直交側面が形成されている。
【0030】
図5に示すように、角錐台51の2面コーナーリフレクタ以外の側面62a、62bは、角錐台の基盤側の底面52の面積より角錐台の基盤側とは反対側の端面53(上面)の面積の方が小となるように、角錐台51のテーパー構造を画定する。2面コーナーリフレクタ以外の側面62a、62bはテーパー面となる。
【0031】
具体的に、角錐台51は、
図5に示すように、2面コーナーリフレクタとした直交側面61a、61bを含む立方体形状部Cと立方体形状部Cと一体となった2面コーナーリフレクタ以外の側面62a、62bを平面として含むテーパー部Tとからなる。このように、角錐台51は、2つの直交側面以外の側面がテーパーとして形成され且つ基盤側の底面の面積より上面の面積の方が小となるテーパー構造を有する。
【0032】
2面コーナーリフレクタアレイ光学素子は基盤および角錐台が樹脂成型法により作製できるので、その一例を説明する。
図6は射出成型法により作製する場合を示すものであり、以下の手順で作製される。
【0033】
まず、
図6(a)に示すように、所定のスタンパ101と平坦な金型102を密着させた状態で、樹脂の軟化温度以上(アクリル樹脂を使用する場合は例えば200℃)に加熱しておく。
【0034】
次に、
図6(b)に示すように、金型ゲート部103より溶融した樹脂104を金型102内に高圧にて充填する。
【0035】
次に、
図6(c)に示すように、樹脂104充填終了後にスタンパ101と金型102を密着させたまま樹脂104の軟化温度以下(アクリル樹脂を使用する場合は例えば80℃)まで冷却する。
【0036】
次に、
図6(d)に示すように、金型102をスタンパ101から離す。この時、成型された2面コーナーリフレクタアレイ光学素子が金型102とともにスタンパ101から離すことができるようにすることが好ましい。
【0037】
最後に、
図6(e)に示すように、成型された2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6を金型102から外す。2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の金型側の面は平面であるため比較的簡単に取り外すことができる。ゲート部により形成された樹脂部分を切り落とせば2面コーナーリフレクタアレイ光学素子が完成する。
【0038】
上記所定スタンパ101は、ダイヤバイトによる切削加工と電鋳反転加工により作製できる。以下にその手順を示す。
【0039】
まず、
図7に示すように、片側は垂直面に対応して、もう片側は本発明の特徴である傾斜面に対応した角度を有するダイヤバイト(切削のための刃)を準備する。
【0040】
次に、
図8に示すように、銅マスター板150に
図7のダイヤバイトにより2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の反転パターンになるように切削加工を施す。具体的には、
図8に示すように平行な水平溝を所定のピッチで複数順番に切削して行き、次に、先に切削した溝に対して直角方向に、所定ピッチで複数の垂直溝を順番に切削して行く。
図4に示す角錐台の断面形状を作製するのに、1本の溝に対して1回当たり5μmずつの切削を繰り返すことにより170μmの深さに達するまで切削後、次の溝の位置まで所定ピッチでダイヤバイトを移動させる動作を繰り返した。切削加工後の
図8のA−A断面における部分拡大断面図は
図9のようになる(
図4に示す角錐台の断面形状と同等)。
【0041】
次に、切削加工後の銅マスター板150を用いてニッケルの電鋳反転加工により、2面コーナーリフレクタアレイ光学素子と同じ複数の角錐台を有する銅マスター板150の反転パターンを有する成型用のスタンパ101を作製できる。
図10に電鋳反転加工で得られたスタンパ101の部分拡大断面図を示す。
【0042】
上記所定スタンパ101を用いれば、熱プレス成型によっても2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を作製することができる。
【0043】
熱プレス成型により2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を作製する時の手順を以下に示す。
【0044】
まず、
図11(a)に示すように、スタンパ101と金型202をそれぞれ使用する樹脂104の軟化温度以上(アクリル樹脂を使用する場合は例えば200℃)に加熱しておく。
【0045】
次に、
図11(b)に示すように、金型202上に使用する樹脂104でできたシートを載せる。
【0046】
次に、
図11(c)に示すように、スタンパ101と金型202でシートを加圧(プレス)する。そのまま、スタンパ101と金型202でシートを加圧したまま樹脂104の軟化温度以下(アクリル樹脂を使用する場合は例えば80℃)まで冷却する。
【0047】
次に、
図11(d)に示すように、スタンパ101を金型202から離す。この時、成型された2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6と金型202を真空を利用して吸着しておく等の方法で、成型された2面コーナーリフレクタアレイ光学素子が金型202とともにスタンパ101から離すことができるようにすることが好ましい。
【0048】
次に、
図11(e)に示すように、成型された2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6を金型202から外す。2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の金型側の面は平面であるため比較的簡単に取り外すことができる。
【0049】
上記の例では樹脂シートを用いたが、加熱した金型202上に樹脂104を載せ溶融させてシート状にしてから加圧しても良い。
【0050】
以上ようにしてテーパー構造の角錐台51のアレイを有する2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6であれば、比較的簡単に樹脂成型が可能である。
【0051】
上記の樹脂成型法又は熱プレス成型によれば、
図12(a)に示すように、薄い平板状の基盤60に、平面視でほぼ角錐台(例えば正方形底面)であって、その底面乃至上面の間を光線が屈曲して通過する透明な角錐台51(一辺が例えば50〜200μm)を多数形成でき、各角錐台51のうち隣接して直交する2つの内壁面61a,61bを2面コーナーリフレクタ61とする2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6を得ることができる。なお、
図12に示したものと同様に2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6aも作製することができる。2面コーナーリフレクタ61を構成しないテーパー部分には、つや消しなど反射不能な面とすることができる。また、各2面コーナーリフレクタ61は、基盤60上において鏡面61a,61bがなす内角が全て同じ向きとなるように、規則的な格子点上に整列させて形成することが好ましい。なお、
図12(b)に示すように、各2面コーナーリフレクタでは、2つの直交する鏡面の交線CLが素子面6Sに直交することが好ましい。この鏡面61a,61bの内角の向きを、2面コーナーリフレクタ61の向き(方向)と称する。
【0052】
次に、2枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の貼り合わせる時の手順を
図13を参照しながら以下に示す。
【0053】
図13(a)に示すように、ガラス基板301のような平板上に紫外線硬化型の光学接着剤302を、バーコーターなどを用いて薄く広げる。光学接着剤としては例えば、スリーボンド社製のTB3042Bが使用できる。
【0054】
図13(b)に示すように、1枚の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6aの角錐台51の上面を、ガラス基板301上に載せ、突出部の上面部分にのみ光学接着剤302を転写する。
【0055】
図13(c)に示すように、もう一枚の同一形状の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6の上へ、先の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子6aを、お互いの角錐台51の上面側が向い合うように、且つ、基盤60,60aに垂直な直交側面(鏡面61a,61b)同士が、すなわち、2面コーナーリフレクタとして働く面が連続するように、位置を合わせながら光学接着剤を介して重ね合わせる。このようにして、2つの2面コーナーリフレクタアレイ光学素子60,60aは、直交側面の各々が同一平面にあるように重ね合わせられ、角錐台51,51aの各々の上面同士にて接着される。
【0056】
図13(d)に示すように、どちらかの2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の基盤60側から、紫外光UVを照射して光学接着剤を硬化させる。
【0057】
図14は、このようにして作製したリフレクタアレイ光学装置66の、接着された角錐台51の部分断面図を示す。基盤に垂直な平面、すなわち、2面コーナーリフレクタとして働く面が連続するように重ね合わせてあるので、素子の厚さ方向に細長い2面コーナーリフレクタの各リフレクタ面61cが形成されている。突出した角錐台の高さが底面を形成する正方形の一辺の長さと同じ高さである2面コーナーリフレクタアレイ光学素子同士を重ね合わせているため、出来上がったリフレクタアレイ光学装置の各リフレクタ面61cの高さが底辺の2倍(H2=340μm)になり、前記のシミュレーション結果より35度方向から観察した空中像を最も明るくすることができる条件に当てはまるリフレクタアレイ光学装置を得ることができる。
【0058】
金属反射膜を付けた時には、重ね合わせ時の接着剤のはみ出しによる影響がなくなるという利点を有する。極端な場合として、空間の全てを接着剤で埋めた時には、筒状体間の空間が存在しなくなる、つまり筒状体を隙間無く並べたのと同じことになるので、より明るい表示が得られる。
【0059】
上記実施例では光学接着剤を用いて2面コーナーリフレクタアレイ光学素子同士を貼り合わせたが、光学粘着材(例えば、積水化学工業(株)製セキスイ高透明両面テープ#5511)を用いて貼り合わせてもよい。
【0060】
また、上記光学接着剤や光学粘着剤(接着テープ)を用いて貼り合わせる以外にも、2面コーナーリフレクタアレイ光学素子同士を重ね合わせてネジ止め、クリップ止め等クランプしただけでも良く、(熱)溶接によって重ね合わせても良く、いずれの場合も空中像ができることが確認できた。
【0061】
リフレクタアレイ光学装置の2面あるリフレクタ面以外の面は中央で折れ曲がった形状をしている、つまり、これらの4面と両側の基盤面で形成される構造体は高さ方向の中央部が凹んだ形状をしているが2面コーナーリフレクタの各リフレクタで1回ずつ反射する光は、この凹んだ部分を通過する時は細長いリフレクタ面61c(垂直面)の近傍を通過するため、この凹み部分は空中像の明るさに対して影響を与えない。
【0062】
本発明の表示装置は、
図15に模式的に示すように、リフレクタアレイ光学装置66の一方の主面側にある被観察物4とを含み、被観察物の実像5(実鏡映像)を基盤の他方の主面側の空間に結像させる。リフレクタアレイ光学装置66は、2つの相互に直交する鏡面61a,61b(細長いリフレクタ面61cに属する)から構成される2面コーナーリフレクタ61の多数の集合であり、全2面コーナーリフレクタ61を構成するそれぞれ2つの鏡面61a,61bに対してほぼ垂直な平面を素子面6S(接着された両2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の角錐台の上面に属する)とし、この素子面6Sを対称面とする面対称位置に被観察物4の実鏡映像5を結像させることができるものである。なお、本実施形態において2面コーナーリフレクタ61はリフレクタアレイ光学装置66の全体の大きさ(cmオーダ)と比べて非常に微小(μmオーダ)であるので、
図15では2面コーナーリフレクタ61の集合全体をグレーで表し、その内角の向きをV字形状で表してある。
【0063】
本発明ではリフレクタアレイ光学装置66は、突出した角錐台の側面のうち本発明の特徴である傾斜した面以外の基盤に垂直な面として設けられている(
図15の61a,61b)。
【0064】
そして、リフレクタアレイ光学装置66では、各2面コーナーリフレクタ61は、その裏面側(被観察物4)から、突出した角錐台に入った光を一方の鏡面61a(または61b)で反射させ、さらにその反射光を他方の鏡面61b(または61a)で反射させて表面側へと通過させる機能を有し、この光の進入経路と射出経路とが素子面6Sを挟んで面対称をなすこととなる。すなわち、リフレクタアレイ光学装置66の素子面6Sは、被観察物4の実像(実鏡映像)を、面対称位置に空中像(実鏡映像)5として結像させる対称面となる。
【0065】
ここで、リフレクタアレイ光学装置66による結像様式について、被観察物として点光源oから発せられた光の経路とともに簡単に説明する。
図16に平面的な模式図で、
図17に模式的な側面図でそれぞれ示すように、点光源oから発せられる光(一点鎖線矢印で示す。
図16において3次元的には紙面奥側から紙面手前側へ進行する)は、リフレクタアレイ光学装置66を通過する際に、2面コーナーリフレクタ61を構成する一方の鏡面61a(または61b)で反射して更に他方の鏡面61b(または61a)で反射した後に素子面6Sを通過し、リフレクタアレイ光学装置66の素子面6Sに対して点光源oの面対称位置を広がりながら通過する。
図16では入射光と反射光とが平行をなすように表されているが、これは同図では点光源oに対して2面コーナーリフレクタ61を誇張して大きく記載しているためであり、実際には各2面コーナーリフレクタ61は極めて微小なものであるため、同図のようにリフレクタアレイ光学装置66を上方から見た場合には、入射光と反射光とは殆ど重なってみえる(
図16では2面コーナーリフレクタ61の2つの鏡面(61a,61b)それぞれに最初に当たる光の経路、つまり2本の経路を描いて説明しているが、
図17では煩雑さを避けるためにどちらか一方の鏡面に最初に当たる光のみを描いている)。すなわち、結局は点光源oの素子面6Sに対する面対称位置に透過光が集まり、
図16、
図17においてpの位置に実鏡映像として結像することになる。
【0066】
このように2面コーナーリフレクタは反射鏡として働くため、樹脂成型品の突出した角錐台の側面のうちの2面コーナーリフレクタとして働く基盤に垂直な面には、例えば金属膜などの反射面を付けることが好ましいが、発明者は樹脂成型品だけ、つまり反射面を追加加工しなくても、樹脂と空気界面の屈折率差によって十分な反射が得られるため実用上問題ない明るさの実鏡映像を空中に結像させることができることを発見した。
【0067】
反射面を設けることなく樹脂成型品のみの2面コーナーリフレクタアレイ光学素子を利用して、空中に被観察物の実像(実鏡映像)を結像させて見ることができるので低コストで表示装置を作製することができる。また、金属膜を付ける場合は、リフレクタアレイ光学装置を形成する各々の2面コーナーリフレクタアレイ光学素子の状態で金属膜を付けた物を重ね合わせても良いし、リフレクタアレイ光学装置を形成した後に金属膜を付けても良い。