特許第5728761号(P5728761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5728761
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】難燃性絶縁電線
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/295 20060101AFI20150514BHJP
   C08L 79/04 20060101ALI20150514BHJP
   C08K 5/5313 20060101ALI20150514BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20150514BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20150514BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20150514BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   H01B7/34 B
   C08L79/04 Z
   C08K5/5313
   C08K3/32
   C08L67/02
   C08L53/00
   H01B7/02 Z
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-520055(P2013-520055)
(86)(22)【出願日】2011年7月11日
(65)【公表番号】特表2013-533596(P2013-533596A)
(43)【公表日】2013年8月22日
(86)【国際出願番号】EP2011061754
(87)【国際公開番号】WO2012010453
(87)【国際公開日】20120126
【審査請求日】2014年5月22日
(31)【優先権主張番号】10170009.4
(32)【優先日】2010年7月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】シュミット, アンジェリカ
【審査官】 南 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/016129(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/047353(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/295
C08K 3/32
C08K 5/5313
C08L 53/00
C08L 67/02
C08L 79/04
H01B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの導電性コアとポリマー組成物の部分とを含む絶縁電線であって、前記ポリマー組成物は、
3〜10重量%の(A)ホスフィン酸金属塩および/またはジホスフィン酸金属塩およびまたはそのポリマーと、
比(B):(C)が6:1〜2:1の間である、15〜30重量%の(B)ポリリン酸アンモニウムおよび(C)トリアジン誘導体のオリゴマーまたはポリマーと
0〜10重量%の(D)窒素含有または窒素/リン含有相乗剤と、
0.1〜3重量%の通常使用される添加剤と、
熱可塑性コポリエステルエラストマー(TPE−E)およびスチレン系ブロックコポリマーを含むポリマー成分である残部と、からなる、絶縁電線。
【請求項2】
A)が、式[RP(O)O]m+(式I)のホスフィン酸金属塩および/または式[O(O)PR−R−PR(O)O]2−m+(式II)のジホスフィン酸金属塩、および/またはそのポリマー(式中、
−RおよびRは、水素、直鎖、分岐および環状のC1〜C6脂肪族基、ならびに芳香族基からなる群から選択される同一または異なる置換基であり、
−Rは、直鎖、分岐および環状のC1〜C10脂肪族基ならびにC6〜C10の芳香族基および脂肪族−芳香族基からなる群から選択され、
−Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、およびKからなる群から選択される金属であり、そして
−m、nおよびxは、1〜4の範囲内の同一または異なる整数である)であり
(B)が、メラミン、メラミン樹脂、メラミン誘導体、シロキサンもしくはポリスチロールで被覆されているか、またはメラミン、メラミン樹脂、メラミン誘導体、シロキサンもしくはポリスチロールで被覆されかつ架橋されている、結晶形IIのアンモニウムポリファスフェート(ammoniumpolyphasphate)および/または誘導体の粒子であり
(C)が、一般式
【化1】

(式中、
X=モルホリノ残基、ペピリジノ(pepiridino)残基またはピペラジン由来の基であり、
Y=ピペラジン由来の基であり、
nは、3以上の整数である)
の1,3,5−トリアジン誘導体または前記誘導体の混合物のオリゴマーまたはポリマーである、請求項1に記載の電線。
【請求項3】
成分(A)が、Al−ジメチルホスフィン酸塩、Al−メチルエチルホスフィン酸塩および/またはAl−ジエチルホスフィン酸塩である、請求項1または2に記載の電線。
【請求項4】
成分(B)が、メラミンもしくはメラミン樹脂で被覆されているかまたはメラミンもしくはメラミン樹脂で被覆されかつメラミンで架橋されているポリリン酸アンモニウムである、請求項1〜のいずれか一項に記載の電線。
【請求項5】
成分(C)が、2−ピペラジニル−4−モルホリノ−1,3,5−トリアジン、2−ピペラジニレン(piperaxinylene)−4−ピペリジノ−1,3,5−トリアジンまたは2,4−ピペラジン−1,4−イル−6−モルホリン−4−イル−1,3,5−トリアジンのポリマーである、請求項1〜のいずれか一項に記載の電線。
【請求項6】
前記ポリマー組成物が、
4〜7重量%の成分(A)と、
比(B):(C)が5:1〜3:1の間である、15〜25重量%の成分(B)および(C)と、
2〜7重量%の成分(D)と、
0.1〜3重量%の通常使用される添加剤と、
ポリマー成分である残部と
からなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電線。
【請求項7】
前記ポリマー組成物の前記部分が、前記少なくとも1つの導電性コアを取り囲む絶縁層および/または前記絶縁層に取り囲まれた前記少なくとも1つの導電性コアを取り囲むジャケットである、請求項1〜のいずれか一項に記載の電線。
【請求項8】
前記ポリマー組成物の前記部分が、歪み除去部分である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電線。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの導電性コアとポリマー組成物の部分とを含む絶縁電線に関する。
【0002】
本特許出願の文脈における電線には、電気ケーブルおよび電気コードも含まれる。特に、本発明は、電気機器および/または電子機器用の難燃性絶縁電線に関する。
【0003】
ポリマー組成物の部分は、少なくとも1つの導電性コアを取り囲む絶縁層および/または絶縁層に取り囲まれた少なくとも1つの導電性コアを取り囲むジャケットおよび/または歪み除去部分であり得る。
【0004】
電気機器および/または電子機器用の電線は、機器の中で使用され得るほか、機器の外でも、例えば、機器を電源に接続するため、または機器を別の機器と連結するためにも使用され得る。例は、デスクトップパーソナルコンピューターへのマウスまたはキーボードの接続である。
【0005】
歪み除去部分は、ケーブルとプラグとの間の歪みを除去するために、ケーブルのジャケットおよびプラグに接続されている。
【0006】
電線、特に電気機器および/または電子機器用の電線は、可撓性、難燃性、耐熱性、耐摩耗性、引張強さなどを含む、様々な特性を有することが求められる。
【0007】
従来から、絶縁層用のポリマー組成物として、可塑化ポリビニル組成物が用いられてきている。しかしながら、こうしたポリマー組成物は、環境問題を引き起こす。電線がその有効寿命後に適切にリサイクルされない場合は、同じくその組成物中に存在する、可塑剤または重金属が漏出され得る。
【0008】
ハロゲンを含まないポリマーおよびハロゲンを含まない難燃剤に基づく、可塑化PVCに代わる多くの代替物が提案されてきたが、多くの場合、電線として十分なレベルの難燃性を得るには防火性(fire retardancy)が不十分であったか、または、組成物中の難燃剤の配合量が非常に高く、その結果ポリマー組成物の機械的性質が不十分である。
【0009】
国際公開第2009/047353号パンフレットにおいて、ホスフィン酸金属塩をその成分の1つとして含有するポリマー組成物の絶縁層を含有する電線が開示されている。この電線の難燃特性は容認できるレベルにあり、この電線は、望ましいさらなる特性を示す。
【0010】
しかしながら、ホスフィン酸金属塩は製造が困難であるため、原価が非常に高くなる。したがって、多くの用途において、経済的理由から、非常に安価な可塑化PVCを、ホスフィン酸金属塩を含有するポリマー組成物に置き換えることは不可能であるか、または少なくとも困難である。
【0011】
本発明の目的は、導電性コアとその導電性コアを取り囲むポリマー組成物の絶縁層とを含む難燃性絶縁電線であって、当該ポリマー組成物は、十分な高いレベルの難燃性を示し、望ましいさらなる特性を示し、かつその生産がより採算が取れるものである、難燃性絶縁電線を提供することである。
【0012】
驚くべきことに、そのような電線は、ポリマー組成物が、
(A)ホスフィン酸金属塩および/またはジホスフィン酸金属塩およびまたはそのポリマーと、
(B)ポリリン酸アンモニウムと、
(C)トリアジン誘導体のオリゴマーまたはポリマーと
を含有することを特徴とする。
【0013】
難燃剤の総量はより少なくてよく、ポリマー組成物の機械的性質が改善される。さらに、高価なホスフィン酸金属塩および/またはジホスフィン酸金属塩およびまたはポリマーは、限られた量しか使用される必要がない。
【0014】
欧州特許第B−2057220号明細書から、(B)特定のポリリン酸アンモニウムと、(C)特定のトリアジンと、さらに、大きな群から選択される、ハロゲンを含まない、1種以上のさらなる難燃剤とを含有するポリマー組成物が知られている。しかしながら、欧州特許第B−2047220号明細書においては、電線については触れられていない。さらに、ホスフィン酸金属塩および/またはジホスフィン酸金属塩およびまたはそのポリマーは例示されておらず、本発明に従う組成物による良好な結果が電線について得られることは予想されない。
【0015】
好ましくは、ポリマー組成物は、
(A)式[RP(O)O]m+(式I)のホスフィン酸金属塩および/または式[O(O)PR−R−PR(O)O]2−m+(式II)のジホスフィン酸金属塩、および/またはそのポリマー(式中、
−RおよびRは、水素、直鎖、分岐および環状のC1〜C6脂肪族基、ならびに芳香族基からなる群から選択される同一または異なる置換基であり、
−Rは、直鎖、分岐および環状のC1〜C10脂肪族基ならびにC6〜C10の芳香族基および脂肪族−芳香族基からなる群から選択され、
−Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、およびKからなる群から選択される金属であり、そして
−m、nおよびxは、1〜4の範囲内の同一または異なる整数である)と、
(B)メラミン、メラミン樹脂、メラミン誘導体、シロキサンもしくはポリスチロールで被覆されているか、またはメラミン、メラミン樹脂、メラミン誘導体、シロキサンもしくはポリスチロールで被覆されかつ架橋されている、結晶形IIのアンモニウムポリファスフェート(ammoniumpolyphasphate)および/または誘導体の粒子と、
(C)一般式
【化1】


(式中、
X=モルホリノ残基、ペピリジノ(pepiridino)残基またはピペラジン由来の基であり、
Y=ピペラジン由来の基であり、
nは、3以上の整数である)
の1,3,5−トリアジン誘導体または当該誘導体の混合物のオリゴマーまたはポリマーと
を含有する。
【0016】
[ポリマー組成物中のポリマー]
本発明に従う電線のポリマー組成物は、好ましくは、コポリエステルエラストマー(TPE−E)、コポリアミドエラストマー(TPE−A)、コポリウレタンエラストマー(TPE−U)、およびそれらの組み合わせ、またはポリオレフィンからなる群から選択される熱可塑性ポリマーを含有する。
【0017】
このようなポリマーは、それらは良好な可撓性を有しているため、ケーブルにおける使用に極めて好適であり、このことは、難燃剤と組み合わせて本発明に従う組成物にされる場合も同様である。
【0018】
[TPE−E/TPE−A]
コポリエステルエラストマーおよびコポリアミドエラストマーは、それぞれポリエステルセグメントまたはポリアミドセグメントからなる硬質ブロックと、別のポリマーのセグメントからなる軟質ブロックとを含む、ゴム状弾性を有する熱可塑性ポリマーである。そのようなポリマーは、ブロックコポリマーとしても知られている。コポリエステルエラストマーの硬質ブロック中のポリエステルセグメントは、一般的に、少なくとも1種のアルキレンジオールおよび少なくとも1種の芳香族または脂環式のジカルボン酸から誘導される反復単位からなる。コポリアミドエラストマーの硬質ブロック中のポリアミドセグメントは、一般的に、少なくとも1種の芳香族および/もしくは脂肪族のジアミンならびに少なくとも1種の芳香族もしくは脂肪族のジカルボン酸、ならびにまたは脂肪族アミノ−カルボン酸に由来する反復単位からなる。
【0019】
硬質ブロックは、典型的に、室温よりもはるかに高い溶融温度またはガラス温度(該当する場合)を有するポリエステルまたはポリアミドからなり、300℃またはさらにはそれ以上という高さであり得る。好ましくは、溶融温度またはガラス温度は、少なくとも150℃、より好ましくは少なくとも170℃またはさらには少なくとも190℃である。なおさらに好ましくは、硬質ブロックの溶融温度またはガラス温度は、200〜280℃、またはさらには220〜250℃の範囲内にある。軟質ブロックは、典型的に、室温よりもはるかに低いガラス転移温度を有し、この温度が−70℃またはさらにはそれ以下という低さであり得る非晶質ポリマーのセグメントからなる。好ましくは、非晶質ポリマーのガラス温度は、0℃以下、より好ましくは−10℃以下またはさらには−20℃以下である。なおさらに好ましくは、軟質ブロックのガラス温度は、−20〜−60℃、またはさらには−30〜−50℃の範囲内にある。
【0020】
好適には、コポリエステルエラストマーは、コポリエステルエステルエラストマー、コポリカーボネートエステルエラストマー、および/またはコポリエーテルエステルエラストマーであり、すなわち、それぞれポリエステル、ポリカーボネートまたはポリエーテルのセグメントからなる軟質ブロックを有するコポリエステルブロックコポリマーである。好適なコポリエステルエステルエラストマーは、例えば、欧州特許第0102115−B1号明細書に記載されている。好適なコポリカーボネートエステルエラストマーは、例えば欧州特許第0846712−B1号明細書に記載されている。コポリエステルエラストマーは、例えば、Arnitelという商品名でDSM Engineering Plastics B.V.,The Netherlandsから入手可能である。好適には、コポリアミドエラストマーは、コポリエーテルアミドエラストマーである。コポリエーテルアミドエラストマーは、例えば、PEBAXという商品名でElf Atochem,Franceから入手可能である。
【0021】
好ましくは、難燃性エラストマー組成物中のブロックコポリマーエラストマーは、コポリエステルエラストマーであり、より好ましくはコポリエーテルエステルエラストマーである。
【0022】
コポリエーテルエステルエラストマーは、少なくとも1種のポリアルキレンオキシドグリコールから誘導される軟質セグメントを有している。コポリエーテルエステルエラストマーならびにその調製および特性は、当該技術分野において、例えば、Thermoplastic Elastomers,2nd Ed.,Chapter 8,Carl Hanser Verlag(1996)ISBN 1−56990−205−4、Handbook of Thermoplastics,Ed.O.Otabisi,Chapter 17,Marcel Dekker Inc.,New York 1997,ISBN 0−8247−9797−3、およびEncyclopedia of Polymer Science and Engineering,Vol.12,pp.75−117(1988),John Wiley and Sons、ならびにこれらの文献において挙げられている文献に詳細に記載されている。
【0023】
ポリエーテルエステルエラストマーの硬質ブロック中の芳香族ジカルボン酸は、好適には、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸および4,4−ジフェニルジカルボン酸、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸を含み、より好ましくは、ジカルボン酸の総モル量を基準として少なくとも50モル%について、なおさらに好ましくは少なくとも90モル%について、またはさらには完全に、テレフタル酸からなる。
【0024】
ポリエーテルエステルエラストマーの硬質ブロック中のアルキレンジオールは、好適には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサメチレンジオール、1,4−ブタンジオール、ベンゼンジメタノール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、およびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、アルキレンジオールは、エチレングリコールおよび/または1,4ブタンジオールを含み、より好ましくは、アルキレンジオールの総モル量を基準として少なくとも50モル%について、なおさらに好ましくは少なくとも90モル%について、またはさらには完全に、エチレングリコールおよび/または1,4ブタンジオールからなる。
【0025】
ポリエーテルエステルエラストマーの硬質ブロックは、最も好ましくは、ポリブチレンテレフタレートセグメントを含むか、またはさらにはポリブチレンテレフタレートセグメントからなる。
【0026】
好適には、ポリアルキレンオキシドグリコールは、オキシラン化合物、オキセタン化合物および/またはオキソラン化合物をベースとしたホモポリマーまたはコポリマーである。ポリアルキレンオキシドグリコールのベースとなり得る好適なオキシラン化合物の例は、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドである。対応するポリアルキレンオキシドグリコールホモポリマーは、それぞれ、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシドまたはポリエチレンオキシドグリコール(PEGまたはPEOとも略される)、およびポリプロピレングリコール、ポリプロピレンオキシドまたはポリプロピレンオキシドグリコール(PPGまたはPPOとも略される)という名で知られている。ポリアルキレンオキシドグリコールのベースとなり得る好適なオキセタン化合物の例は、1,3−プロパンジオールである。対応するポリアルキレンオキシドグリコールホモポリマーは、ポリ(トリメチレン)グリコールの名で知られている。ポリアルキレンオキシドグリコールのベースとなり得る好適なオキソラン化合物の例は、テトラヒドロフランである。対応するポリアルキレンオキシドグリコールホモポリマーは、ポリ(テトラメチレン(tretramethylene))グリコール(PTMG)またはポリテトラヒドロフラン(PTHF)の名で知られている。ポリアルキレンオキシドグリコールコポリマーは、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーまたはそれらの混合構造物であり得る。好適なコポリマーは、例えば、エチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー(またはEO/POブロックコポリマー)、特に、エチレンオキシド末端ポリプロピレンオキシドグリコールである。
【0027】
ポリアルキレンオキシドはまた、アルキレンジオールまたはアルキレンジオールの混合物または低分子量ポリアルキレンオキシドグリコールまたは前述のグリコール類の混合物の、エーテル化生成物に基づき得る。
【0028】
好ましくは、ポリアルキレンオキシドグリコールは、ポリプロピレンオキシドグリコールホモポリマー(PPG)、エチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー(EO/POブロックコポリマー)およびポリ(テトラメチレン(tretramethylene))グリコール(PTMG)、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。最も好ましくは、TPE−Eは、ポリブチレンテレフタレートの硬質ブロックおよびPTMGの軟質ブロックを含有する。
【0029】
[TPE−U]
ウレタンベースの熱可塑性エラストマーは、イソシアネート化合物と活性水素を有する化合物(例えば、ポリオール)とを、任意選択で連鎖延長剤または別の添加剤の存在下で反応させる、ウレタン反応によって合成される樹脂である。ウレタンベースの熱可塑性エラストマーは、フォームが製造される時に生成されるか、または予め製造されるか、または市販のものであり得る。
【0030】
イソシアネート化合物には、6〜20個の炭素原子(NCO基中の炭素原子を除く)の芳香族ジイソシアネート、2〜18個の炭素原子の脂肪族ジイソシアネート、4〜15個の炭素原子の脂環式ジイソシアネート、4〜15個の炭素原子の芳香族脂肪族ジイソシアネート、およびそれらの変性物(例えば、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、尿素基、ビウレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基およびオキサゾリドン基を含有する変性物)が含まれる。
【0031】
より具体的には、イソシアネート化合物には、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ノルボルナンジメチルイソシアネートなどが含まれる。
【0032】
活性水素を有する化合物には、ポリオール、ポリアミン化合物などが含まれる。ポリオール化合物の具体例としては、エステルベース、アジペートベース、エーテルベース、ラクトンベースおよびカーボネートベースの化合物が挙げられる。連鎖延長剤には、低分子量ジオール、アルキレンジアミンなどが含まれる。
【0033】
エステルベースおよびアジペートベースのポリオール化合物には、多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ブテンジオール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルジオールまたはペンタンジオール)と二塩基酸(アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、芳香族カルボン酸など)との間の縮合反応によって生成される化合物が含まれる。
【0034】
エーテルベースのポリオール化合物には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコールなどが含まれる。ラクトンベースのポリオールには、ポリカプロラクトングリコール、ポリプロピオラクトングリコール、ポリバレロラクトングリコールなどが含まれる。
【0035】
カーボネートベースのポリオールには、ある化合物(例えば、ジエチレンカーボネートまたはジプロピレンカーボネート)による多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、オクタジオール、ノナンジオールなど)の脱アルコールによって得られる化合物が含まれる。
【0036】
市販のウレタンベースの熱可塑性エラストマーには、例えば、Pellethane 2103シリーズ(PTMGエーテル型)、2102シリーズ(カプロエステル型)、2355シリーズ(ポリエステルアジペート型)ならびに2363シリーズ(PTMGエーテル型)(Dow Chemicalの商品名);Resamine P−1000およびP−7000シリーズ(アジペートエステル型)、P−2000シリーズ(エーテル型)、P−4000シリーズ(カプロラクトン型)ならびにP−800シリーズ(カーボネート型)(Dainichiseika Color and Chemicalsの商品名);Pandex Tシリーズ(DIC Bayer Polymerの商品名);Miractone E型およびP型(Nippon Miractoneの商品名);Estolan(Takeda Burdaysh Urethaneの商品名);ならびにMorcene(Mortonの商品名)が含まれる。以下、これらを熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)と呼ぶことがある。
【0037】
[ポリオレフィン]
ポリオレフィンが使用される場合、そのポリオレフィンは、好ましくは<80ショアAの硬度を有する。好ましいポリオレフィンの例としては、LLDPE、LDPEが挙げられる。好ましい実施形態において、930kg/m未満、好ましくは920kg/mより低い、より好ましくは910kg/mより低い密度を有するポリオレフィンが使用される。
【0038】
好ましくは、ポリオレフィンは、125℃未満、より好ましくは120℃未満、最も好ましくは115℃未満の融点を有する。その場合、本発明に従う組成物は、極めて柔軟である。
【0039】
また、ポリオレフィンは、例えば過酸化物を使用することによって、架橋されたものであり得る。そうした電線を得ることは、当業者には周知である。
【0040】
[成分(A)]
好ましいホスフィン酸塩は、アルミニウム、カルシウムおよび亜鉛のホスフィン酸塩、すなわち、それぞれ金属M=Al、Ca、Znであるホスフィン酸金属塩、およびそれらの組み合わせである。同じく好ましいのは、RおよびRが、同じかまたは異なり、H、直鎖もしくは分岐のC〜Cアルキル基および/またはフェニルであるようなホスフィン酸金属塩である。特に好ましくは、R、Rは、同じかまたは異なり、水素(H)、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチルおよびフェニルからなる群から選択される。より好ましくは、RおよびRは、同じかまたは異なり、H、メチルおよびエチルからなる置換基の群から選択される。
【0041】
好ましくはまた、Rは、メチレン、エチレン、n−プロピレン、イソ−プロピレン、n−ブチレン、tert−ブチレン、n−ペンチレン、n−オクチレン、n−ドデシレン、フェニレンおよびナフチレンからなる群から選択される。
【0042】
極めて好ましくは、ホスフィン酸金属塩は、次リン酸塩および/またはC〜Cジアルキルホスフィン酸塩、より好ましくはCa−次リン酸塩および/またはAl−C〜Cジアルキルホスフィン酸塩、すなわち、Al−ジメチルホスフィン酸塩、Al−メチルエチルホスフィン酸塩および/またはAl−ジエチルホスフィン酸塩を含む。
【0043】
[成分(B)および(C)]
成分(B)は、好ましくは、メラミンで被覆されているかまたはメラミンで被覆されかつ架橋されているアンモニウムポリホフェート(ammoniumpolyphophate)である。
【0044】
成分(C)は、好ましくは、2,4−ピペラジン−1,4−イル−6−モルホリン−4−イル−1,3,5−トリアジンまたは2−ピペラジニレン(piperaxinylene)−4−ピペリジノ−1,3,5−トリアジンのポリマーであり、最も好ましくは、成分(C)は、2−ピペラジニル−4−モルホリノ−1,3,5−トリアジンのポリマーである。
【0045】
比(B):(C)は、好ましくは10:1〜1:1の間、より好ましくは6:1〜2:1の間、最も好ましくは5:1〜3:1の間である。
【0046】
成分(B)および(C)については、欧州特許第2057220号明細書が参照される。これらの成分は、「Chemische Fabric Budenheim」により販売されている。
【0047】
[成分(D)]
好ましい実施形態において、本発明に従う組成物は、成分(D)として、窒素含有または窒素/リン含有相乗剤を含有する。この相乗剤は、それ自体が難燃剤でありかつ/またはホスフィン酸塩難燃剤のための難燃剤相乗剤である、任意の窒素含有または窒素およびリン含有化合物であり得る。成分(D)として使用され得る好適な窒素含有および窒素/リン含有化合物は、例えば、国際出願PCT/EP97/01664号明細書、独国特許出願公開第A−19734437号明細書、独国特許出願公開第A−1973772号明細書、および独国特許出願公開第A−19614424号明細書に記載されている。
【0048】
好ましくは、窒素含有相乗剤は、ベンゾグアナミン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、アラントイン、グリコウリル(glycouril)、メラミン、メラミンシアヌレート、ジシアンジアミド、グアニジンおよびカルボジイミド、ならびにそれらの誘導体からなる群から選択される。
【0049】
より好ましくは、窒素含有相乗剤は、メラミンの縮合生成物を含む。メラミンの縮合生成物は、例えば、メレム、メラムおよびメロン、ならびにそれらの高次誘導体および混合物である。メラミンの縮合生成物は、例えばPCT/国際公開第96/16948号パンフレットに記載されているような方法によって製造され得る。
【0050】
好ましくは、窒素/リン含有難燃剤は、メラミンとリン酸との反応生成物および/またはその縮合生成物である。本明細書において、メラミンとリン酸との反応生成物および/またはその縮合生成物とは、メラミンまたはメラミンの縮合生成物(例えば、メレム、メラムおよびメロン)とリン酸との反応の結果として生じる化合物であると理解される。
【0051】
例としては、例えばPCT/国際公開第98/39306号パンフレットに記載されているような、リン酸ジメラミン、ピロリン酸ジメラミン、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メロンおよびポリリン酸メレムが挙げられる。より好ましくは、窒素/リン含有難燃剤は、ポリリン酸メラミンである。
【0052】
好ましくはまた、窒素/リン含有難燃剤は、アンモニアとリン酸との反応生成物またはそのポリリン酸変性物である。好適な例としては、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウムおよびポリリン酸アンモニウムが挙げられる。より好ましくは、窒素/リン含有難燃剤は、ポリリン酸アンモニウムを含む。
【0053】
好ましくは、(D)は、メラミンシアヌレートまたはメラムである。
【0054】
[SEBS/TPO]
本発明に従う熱可塑性組成物は、好ましくは、スチレン系ブロックコポリマーおよび/またはオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)を含有する、というのも、良好な柔らかさ、表面平滑性、低い密度および高い可撓性などの特性が得られるからである。
【0055】
[SEBS]
本発明に従う絶縁電線中の難燃性エラストマー組成物に含まれるスチレン系ブロックコポリマーには、ジブロックもしくはトリブロックポリマーまたはそれらの組み合わせが含まれる。スチレン系ブロックコポリマーは、良好な表面品質、高い寸法安定性および一定の機械的性質を、軟化温度近くまで有している。
【0056】
好ましい実施形態において、スチレン系ブロックコポリマーは、難燃性エラストマー組成物中のポリマー成分の総重量を基準として、15〜40重量%の範囲内、より好ましくは20〜30重量%の範囲内にある。
【0057】
好ましいスチレン系ブロックコポリマーには、アクリロニトリル−スチレンコポリマー(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)コポリマー、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)コポリマー、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)コポリマー、スチレン−アクリロニトリル−エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンコポリマー(AES)、およびそれらの水素化生成物(hydrogenerated product)が含まれる。水素化ブロックコポリマーには、中央ブロック中のエチレン/ブチレン(S−(EB/S)−S)ならびにポリスチレン−b−ポリ(エチレン/プロピレン)、ポリスチレン−b−ポリ(エチレン/プロピレン)−b−ポリスチレン、ポリスチレン−b−ポリ(エチレン/ブチレン)−b−ポリスチレンおよびポリスチレン−b−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)−b−ポリスチレンが含まれる。
【0058】
好ましくは、スチレン系ブロックコポリマーは、水素化スチレン系ブロックコポリマーである、というのも、このクラスの化合物は、優れた耐UV特性を示すからである。
【0059】
特に好ましいスチレン系ブロックコポリマーには、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)コポリマーまたはスチレン−エチレン/プロピレン−スチレン(SEPS)が含まれる。スチレン系ブロックコポリマーは、単独でまたは組み合わせて使用され得る。
【0060】
スチレン系ブロックコポリマーは、好ましくは、スチレン系ブロックコポリマーの総重量を基準として少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、さらにより好ましくは少なくとも35重量%、最も好ましくは少なくとも40重量%のスチレン含有量を有する。スチレン含有量が高いほど、より少ない難燃性成分(B)、(E)および(F)が難燃性について同じレベルを達成するために必要とされることが見出された。スチレン含有量は、スチレン系ブロックコポリマーの総重量を基準として、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。高すぎるスチレン含有量は、ケーブルおよび電線用途には適さないより硬い組成物をもたらす傾向がある。
【0061】
スチレン含有量は、ISO 5478:2006に概略が述べられている方法に従って求められる。
【0062】
好ましくは、スチレン系ブロックコポリマーは、少なくとも2g/10分(230℃/2.16kg)、より好ましくは5g/10分(230℃/2.16kg)のMFIを有している。より高いMFIは、結果として生じるケーブルのより平滑な表面に寄与する。好ましくは、MFIは、50g/10分以下である。
【0063】
[オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)]
本発明の範囲内において、オレフィン系熱可塑性エラストマーは、非架橋オレフィン系熱可塑性エラストマーおよび熱可塑性加硫物(架橋熱可塑性エラストマー)を包含する。TPOは、ゴム様の特性(例えば、柔らかさおよび可撓性)を付与し、これが、結果として生じる絶縁電線の消費者への魅力の増大に繋がる。TPOは、耐熱性、難燃性の要件が緩い用途においても費用便益を提供し得る。
【0064】
TPOは、ポリオレフィンマトリックス、好ましくは結晶性ポリオレフィンマトリックスを有しており、このマトリックス中に熱可塑性または熱硬化性エラストマーが、概して均一に分布している。TPOの例としては、架橋または非架橋の、結晶性ポリプロピレンマトリックス中に分布した、EPMおよびEPDM熱硬化性材料が挙げられる。所望の柔らかさ、可撓性および強度を有する任意の従来のTPOが、本発明において使用され得る。限定することが意図されるものではないが、本発明における使用に好適なTPOの例としては、オレフィン系熱可塑性樹脂と、エチレンコポリマーもしくはターポリマー(例えば、Hertによる米国特許第4,990,566号明細書に開示されているもの)またはニトリルゴム(例えば、Aldred et alによる米国特許第4,591,615号明細書に開示されているもの)とをブレンドすることによって調製されるTPOが挙げられ、この両特許文献の開示内容は、参照により本明細書に援用される。
【0065】
ポリオレフィンは、好ましくは、シングルサイト触媒重合ポリオレフィンである。シングルサイト触媒の例は、メタロセン触媒である。ポリオレフィンは、好ましくは、その主成分として、エチレンまたはプロピレンを含む。さらなる実施形態において、メタロセン触媒を用いて製造される、「プラストマー」とも呼ばれる、1−ブテン、1−ヘキセンまたは1−オクテンとエチレンとのコポリマーが使用される。
【0066】
当該組成物は、通常使用される添加剤(例えば、酸化防止剤、染料または顔料、UV吸収剤、加水分解安定剤、帯電防止剤、滑剤など)をさらに含有し得る。
【0067】
[全体の組成]
本発明に従うポリマー組成物は、好ましくは、
3〜10重量%の成分(A)と、
比(B):(C)が6:1〜2:1の間である、15〜30重量%の成分(B)および(C)と、
0〜10重量%の成分(D)と、
0.1〜3重量%の通常使用される添加剤と、
ポリマー成分である残部と
からなる。
【0068】
より好ましくは、ポリマー組成物は、
4〜7重量%の成分(A)と、
比(B):(C)が5:1〜3:1の間である、10〜22重量%の成分(B)および(C)と、
2〜7重量%の成分(D)と、
0.1〜3重量%の通常使用される添加剤と、
ポリマー成分である残部と
からなる。
【0069】
[実施例および比較実験]
[使用した材料]
Arnitel:Arnitel(登録商標)EM 400、ポリブチレンテレフタレート硬質ブロックおよびPTMG軟質ブロックに基づく熱可塑性コポリエステルエラストマー。
Kraton:Kraton(登録商標)A RP6936HS、SEBSブロックコポリマー。
Exolit:Exolit(登録商標)OP1230、Al−ジエチルホスフィン酸塩(DEPAL)。
Melapur(登録商標)200、ポリリン酸メラミン。
Budit(登録商標)3167、メラミンで被覆されたポリリン酸アンモニウム(76重量%)、トリアジン(16重量%)およびメラミンシアヌレート(8重量%)。
Budit(登録商標)3178、1)メラミンで被覆されたポリリン酸アンモニウム(76重量%)、2)トリアジン(16重量%)および3)メラミンシアヌレート(8重量%)、および1)+2)+3)を100重量部として5重量部のZnピロリン酸塩。
Budit(登録商標)3168、Budit(登録商標)3167と同様であるが、メラミンではなくメラミン樹脂で被覆されている。
ZnBo:ホウ酸亜鉛。
【0070】
組成物をUL1581/UL62に準拠して試験した。結果を表1および表2に示す。
【0071】
[比較実験A]
国際公開第2009/047353号パンフレットに従う、
Arnitel 46.95重量%
Kraton 25重量%
Exolit 16重量%
Melapur 8重量%
ZnBo 1.25重量%
添加剤 2.8重量%
からなる組成物を試験した。
【0072】
[比較実験BおよびC]
比較実験Aと同様であるが、Exolit、MelapurおよびZnBo(合わせて26.25重量%)に代わる難燃剤として、25部のBudit 3167および3168を使用し、残部は、追加量(1.25重量%)のArnitelであった。
【0073】
[比較D(欧州特許第2057220号明細書の実施例に従う組成物)]
比較Aと同様であるが、Exolit、MelapurおよびZnBo(合わせて26.25重量%)に代わる難燃剤として、30部のBudit 3178を使用し、3.75重量%についてはArnitelの量を減じた。
【0074】
【表1】

【0075】
表2に、実施例I〜IVについての結果を示す。実施例の組成物は、比較Aについてと同様であるが、Exolit、MelapurおよびZnBo(合わせて26.25重量%)に代わる難燃剤として、Budt 3167およびExolitを表2に示す量で使用した。比較実験で行ったように、Arnitelの量を、全組成について100%に達するように調整した。
【0076】
【表2】

【0077】
本実施例に従う組成物の難燃特性は、最も近い先行技術(比較実験A)と比較してより低い配合量の難燃剤を用いても、良好なレベルにある。機械的性質は、最も近い先行技術に従う組成物よりも良好である。驚くべきことに、電線において、本発明に従う組成物を用いた方が、欧州特許第2057220号明細書の好ましい組成物を用いるよりも良好な結果が得られる。
【0078】
さらに、DEPAL量の減少により、原価の顕著な減少が認められる。