【実施例】
【0125】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の改良及び変形が可能である。
【0126】
本実施例にて行った分析および物性測定の方法、使用した原料について以下のとおり示す。
【0127】
1)ラクチドのメソ体率およびLL−ラクチド選択率
標準化合物としてテトラメチルシラン(TMS)を0.03vol%含むCDC1
3溶媒に試料を溶解し、ブルカーDRX500(500MHz)NMRスペクトロメーター(ブルカー社製)を使用して、
1H−homodecoupling NMR測定を行い、1.66ppmと1.77ppmの積分値から下記式(D)により、メソ体率を求め、更に下記式(E)にてメソ体率からLL-ラクチド選択率を求めた。
メソ体率[%]=(1.77ppmの積分値)/{(1.66ppmの積分値)+(1.77ppmの積分値)}×100 (D)
LL-ラクチド選択率[%]=100−メソ体率 (E)
【0128】
2)乳酸オリゴマーおよびポリ乳酸の平均重合度
標準化合物としてテトラメチルシラン(TMS)を0.03vol%含むCDC1
3溶媒に試料を溶解し、ブルカーDRX500(500MHz)NMRスペクトロメーター(ブルカー社製)を使用して、
1H−NMRスペクトル測定を行い、OH末端側のCH(δ4.3)と内部CH(δ5.2)の面積比から算出した。
【0129】
3)有機オニウム塩の熱分解温度測定
テキサスインスツルメンツ社製の熱重量測定装置を用いて、空気中にて試料を室温から600℃に、昇温速度10℃/分にて昇温した際の5%質量減少温度を熱分解温度とした。
【0130】
4)L−乳酸の光学純度
本実施例において用いた90質量%(以下、90wt%と略記する)のL−乳酸水溶液は、L乳酸の光学純度が99%e.e.以上のものである。HPLC法による光学純度の測定条件を以下に示す。
測定条件:
カラム:SUMICHIRAL OA−5000(4.5mmφ×15cm、住化分析センター)
カラムオーブン温度:40℃
移動相:1mMCuSO4水溶液
流量:1.0mL/min
測定時間:30分
オーブン:Shodex Oven AO−30
ポンプ:Shodex DS−4
検出器:Shodex UV−41(測定波長254nm)
【0131】
5)PyH−T触媒
本実施例において用いたPyH−T触媒は、東京化成株式会社製の製品コードP1627を用いた。
【0132】
[有機オニウム塩の合成]
合成例1(TPP−T触媒の合成)
200mLナスフラスコ中で塩化メチレン25mLにトリフェニルホスフィン(和光純薬社製)2.3gを溶解し、氷冷、攪拌しながらトリフルオロメタンスルホン酸0.9mlを少しずつ滴下した。塩化メチレン/ジエチルエーテル/ヘキサン=2/2/1の溶媒から析出した結晶を吸引ろ過して減圧乾燥して、収率78.9%にて、以下に示すPP−T触媒を得た。TPP−T触媒の熱分解温度は178℃であった。
参考文献:van der Akker, M. Jellinek, Recl. Trav. Chim. Pays-Bas, 1967, 86, 275-288.
【0133】
【化22】
【0134】
合成例2(TPP−S触媒の合成)
塩化メチレン30mLにトリフェニルホスフィン2.62g(10mmol)を溶解し、氷冷、撹拌しながら濃硫酸1.0mL(9.7mmol)を少しずつ加えた。濃縮後、酢酸エチル30mLから析出した結晶を吸引ろ過して減圧乾燥し、2.31gの以下に示すTPP−S触媒を得た(収率64%)。TPP−S触媒の熱分解温度は173℃であった。
13C NMR (CDCl
3) δ119.02(d、J=69.8Hz),129.9 (d,J=12.5), 134.4 (d,J=9.5), 134.6 (d, J=3.4 Hz)
31P NMR(CDCl
3) δ20.89
【0135】
【化23】
【0136】
合成例3(PyH−S触媒の合成)
200mLナスフラスコ中で塩化メチレン15mLにピリジン5.2g(65mmol)を溶解し、氷冷、撹拌しながら濃硫酸3.6mL(65mmol)を少しずつ滴下した。ジエチルエーテル(150mL)から析出した結晶をろ過して減圧乾燥し、8gの以下に示すPyH‐S触媒を得た(収率69.0%)。
13C NMR (CDCl
3) δ127.34, 141.82, 146.43
【0137】
【化24】
【0138】
合成例4(Me−Imid−T触媒の合成)
200mLナスフラスコ中で塩化メチレン25mLにN-メチルイミダゾール4mL(50.2mmol)を溶解し、氷冷、攪拌しながらトリフルオロメタンスルホン酸5mL(53.3mmol)を少しずつ滴下した。ジエチルエーテル(150mL)から析出した結晶を吸引ろ過して減圧乾燥し、12gの以下に示すMe−Imid−T触媒を得た(収率 95.9%)。Me−Imid−T触媒の熱分解温度は276℃であった。
13C NMR (CD
3COCD
3) δ35.53, 119.88, 121.05(q,J=319.0), 123.49, 135.91
19F NMR(CD
3COCD
3) δ98.68
【0139】
【化25】
【0140】
合成例5(5,5’−diMe−2,2’−BiPy−T触媒の合成)
200mLナスフラスコ中で塩化メチレン25mLに5,5’-ジメチル-2,2’-ビピリジン(和光純薬社製)9g(48mmol)を溶解し、氷冷、攪拌しながらトリフルオロメタンスルホン酸9mL(96mmol)を少しずつ滴下した。ジエチルエーテル(150mL)から析出した結晶を吸引ろ過して減圧乾燥し、11gの以下に示す5,5’−Me−2,2’−BiPy−T触媒を得た(収率47.7%)。この5,5’−Me−2,2’−BiPy−T触媒の熱分解温度は235℃であった。
13C NMR (CDCl
3) δ18.04, 120.08(q,J=319.7), 122.28, 137.71, 143.19, 144.21, 145.88
19F NMR(CD
3COCD
3) δ98.68
【0141】
【化26】
【0142】
合成例6 (2,2’−BiPy−T触媒の合成)
200mLナスフラスコ中で塩化メチレン25mLに2,2’-ビピリジン(和光純薬社製)4.5g(28.8mmol)を溶解し、氷冷、攪拌しながらトリフルオロメタンスルホン酸5mL(53.3mmol)を少しずつ滴下した。ジエチルエーテル(150mL)から析出した結晶を吸引ろ過して減圧乾燥し、12gの以下に示す2,2’−BiPy−T触媒を得た(収率 95.9%)。2,2‘−BiPy−T触媒の熱分解温度は208℃であった。
13C NMR (CDCl
3) δ119.95(q,J=319.0), 123.54, 127.20, 143.41, 145.71, 14.96
19F NMR(CDCl
3) δ-78.75
【0143】
【化27】
【0144】
合成例7 (4,4’−BiPy−Tの合成)
200mLナスフラスコ中で塩化メチレン25mLに4,4’-ビピリジン(和光純薬社製)4.5gを溶解し、氷冷、攪拌しながらトリフルオロメタンスルホン酸5mLを少しずつ滴下した。ジエチルエーテル(150mL)から析出した結晶を吸引ろ過して減圧乾燥し、12gの以下に示す4,4’−BiPy−T触媒を得た(収率 93.7%)。この4,4’−BiPy−T触媒の熱分解温度は300℃であった。
13C NMR (CDCl
3) δ120.75(q,J=320.0), 126.07, 126.33, 126.54, 143.72, 151.68
19F NMR(CD
3COCD
3) δ98.34
【0145】
【化28】
【0146】
合成例8 (3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート(以下、3−Me−PyH−Tと略す。)の合成)
200mLナスフラスコ中で塩化メチレン25mLに3−メチルピリジン3.0mL(30.8mmol)を溶解し、氷冷、攪拌しながらトリフルオロメタンスルホン酸3.0mL(33.9mmol)を少しずつ滴下した。ジエチルエーテル(150mL)から析出した結晶を吸引ろ過して減圧乾燥し、7.2gの3−Me−PyH−T触媒を得た(収率96.7%)。
1H NMR(CDCl
3) δ7.95(dd,1H,J=6.1,1.7), 8.33(d,1H,J=8.0), 8.69(s,1H),
8.72(d,1H,J=6.1)
13C NMR (CDCl
3)δ18.30, 122.72(q,J=319.0), 127.04, 138.77, 139.00, 140.97, 147.37
19F NMR(CDCl
3) δ-78.64
m.p. 72.6-73.8℃
【0147】
合成例9 (3−クロロピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート(以下、3−Cl−PyH−Tと略す。)の合成)
200mLナスフラスコ中で塩化メチレン25mLに3−クロロピリジン3.0mL(26.8mmol)を溶解し、氷冷、攪拌しながらトリフルオロメタンスルホン酸3.0mL(33.9mmol)を少しずつ滴下した。ジエチルエーテル(150mL)から析出した結晶を吸引ろ過して減圧乾燥し、7.3gの3−Cl−PyH−T触媒を得た(収率96.0%)。
1H NMR(CDCl
3) δ8.11(dd,1H,J=5.8,2.7), 8.54(m,1H), 8.65(m,2H)
13C NMR (CDCl
3) δ120.08(q,J=318.8),128.43(d.J=4.4), 135.60, 140.66(d,J=6.0),
141.11, 146.33(d,J=7.4)
19F NMR(CDCl
3) δ-78.67
m.p. 103.0-105.2℃
【0148】
合成例10 (3−フェニルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート(以下、3−Ph−PyH−Tと略す。)の合成)
200mLナスフラスコ中で塩化メチレン25mLに3−フェニルピリジン3.0mL(20.9mmol)を溶解し、氷冷、攪拌しながらトリフルオロメタンスルホン酸1.7mL(19.2mmol)を少しずつ滴下した。ジエチルエーテル(150mL)から析出した結晶を吸引ろ過して減圧乾燥し、4.8gの3−Ph−PyH−T触媒を得た(収率82.8%)。
1H NMR(CDCl
3) δ7.58(m,3H), 7.66(m,2H), 8.10(m,1H,), 8.66(m,1H), 8.92(m,1H),
9.08(t,1H,J=1.4)
13C NMR (CDCl
3) δ120.29(q,J=319.0), 127.26, 127.48, 129.96, 130.70, 132.81,
139.59, 139.94, 141.29, 143.89
19F NMR(CDCl
3) δ-78.39
m.p.63.5-64.0℃
【0149】
合成例11 (4−フェニルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート(以下、4−Ph−PyH−Tと略す。)の合成)
200mLナスフラスコ中で塩化メチレン25mLに4−フェニルピリジン3.0g(19.3mmol)を溶解し、氷冷、攪拌しながらトリフルオロメタンスルホン酸2.0mL(22.6mmol)を少しずつ滴下した。ジエチルエーテル(150mL)から析出した結晶を吸引ろ過して減圧乾燥し、5.7gの4−Ph−PyH−T触媒を得た(収率96.9%)。
1H NMR(CDCl
3) δ7.63(m,3H), 8.82(m,2H), 8.21(d,2H,J=4.7), 8.89(d,2H,J=4.7)
13C NMR (CDCl
3) δ120.29(q,J=319.0), 124.38, 127.83, 129.94, 132.36, 134.03,
141.64, 158.47
19F NMR(CDCl
3) δ-78.41
m.p. 106.5-108.3℃
【0150】
合成例12 (2,6−ジメチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート(以下、2,6−diMe−PyH−Tと略す。)の合成)
200mLナスフラスコ中で塩化メチレン25mLに2,6−ルチジン3.3mL(28.0mmol)を溶解し、氷冷、攪拌しながらトリフルオロメタンスルホン酸2.5mL(28.3mmol)を少しずつ滴下した。ジエチルエーテル(150mL)から析出した結晶を吸引ろ過して減圧乾燥し、6.0gの2,6−diMe−PyH−T触媒を得た(収率84.0%)。
1H NMR(CDCl
3) δ2.88(s,6H),7.53(d,2H,J=7.8), 8.20(t,1H,J=7.8)
13C NMR (CDCl
3) δ19.49, 122.80(q,J=319.4), 124.94, 127.20, 145.99, 153.84
19F NMR(CDCl
3) δ-78.43
m.p. 68.2-71.0℃
【0151】
[製造例1−1] TPP−T触媒による乳酸オリゴマーの製造(無溶媒)
90wt%のL−乳酸水溶液5g(L−乳酸正味量 4.5g)とTPP−T触媒104mg(触媒濃度 0.5mol%)とを50mL丸底フラスコ(反応用フラスコ)に入れ、クーゲルロール蒸留装置にセットして、4kPa、130℃にて、12時間加熱し直接脱水重縮合を行った。その間に、冷却用ガラス球には、水および乳酸が留出した。反応終了後、反応用フラスコに残留した乳酸オリゴマーの質量は3.3g(オリゴマー収率92%)であり、その重合度は16.5であった。結果を表1に示す。
【0152】
[製造例1−2〜1−4] TPP−T触媒による乳酸オリゴマーの製造(無溶媒)
表1に示すとおりの圧力や反応時間とした以外は、製造例1−1と同様に操作を行った。結果を表1に示す。なお、製造例1−2では、留出物がやや多く、乳酸オリゴマーの収率は低下した。留出物は主に乳酸(60〜70%)とダイマー(20〜30%)であり、少量のラクチドも含まれていた(<10%)。
【0153】
[製造例1−5] PyH−T触媒による乳酸オリゴマーの製造(無溶媒)
TPP−T触媒ではなくPyH−T触媒(触媒濃度 0.5mol%)を用い、130℃、6.7kPaで6時間反応させ、次いで150℃、6.7kPaで3時間反応させた以外は製造例1−1と同様に操作を行った。結果を表1に示す。
【0154】
【表1】
【0155】
[実施例1−1] TPP−T触媒によるラクチドの製造
製造例1−2の反応終了後、冷却用ガラス球を取り替え、0.013kPaに減圧して、140℃で63時間、反応用フラスコ中の乳酸オリゴマーを加熱して解重合・環化させ、1.35gのラクチドを冷却用ガラス球に溜出させた。乳酸オリゴマーに対する収率は、74%であった(製造例1−2で使用したL−乳酸の量を基準とした収率は37%)。このラクチドのメソ体率は1%以下であり、LL−ラクチド選択率は99%以上であった。
【0156】
なお、フラスコに残留したラクチド残渣は0.47g(乳酸オリゴマーに対して26%)であり、これをNMR測定したところ、平均重合度270以上のポリ乳酸であることが分かった。結果を表2に示す。
【0157】
[実施例1−2] TPP−T触媒によるラクチドの製造
製造例1−3の反応終了後、冷却用ガラス球を取り替え、実施例1−1と同様に操作を行った。結果を表2に示す。ラクチド残渣は、乳酸オリゴマーに対して61%の量で、平均重合度300以上のポリ乳酸であった。
【0158】
[実施例1−3] TPP−T触媒によるラクチドの製造
製造例1−1の反応終了後、冷却用ガラス球を取り替え、実施例1−1と同様に操作を行った。結果を表2に示す。ラクチド残渣は、乳酸オリゴマーに対して83%、平均重合度870以上のポリ乳酸であった。
【0159】
[実施例1−4] TPP−T触媒によるラクチドの製造
トルエン溶媒中、90wt%のL−乳酸水溶液を原料として、TPP−T触媒(0.5mol%)を用いて、大気圧雰囲気、トルエン還流条件にて18時間、直接脱水重縮合を行い、平均重合度25.3の乳酸オリゴマーを得た。反応混合物からトルエンを除去したのち、実施例1−1と同様の条件で反応させた。結果を表2に示す。ラクチド残渣は、乳酸オリゴマーに対して80%、平均重合度874のポリ乳酸であった。
【0160】
[実施例1−5] TPP−T触媒によるラクチドの製造
平均重合度9.0の乳酸オリゴマーを調製し、解重合・環化の反応時間を19時間とした以外は実施例1−4と同様に操作を行った。結果を表2に示す。
【0161】
[実施例1−6] TPP−T触媒によるラクチドの製造
平均重合度22.0の乳酸オリゴマーを調製し、解重合・環化の反応時間を19時間とした以外は実施例1−4と同様に操作を行った。結果を表2に示す。
【0162】
[実施例1−7] TPP−T触媒によるラクチドの製造
平均重合度115の乳酸オリゴマーを調製し、解重合・環化の反応時間を19時間とした以外は実施例1−4と同様に操作を行った。結果を表2に示す。
【0163】
【表2】
【0164】
[実施例2−1] PyH−T触媒によるラクチドの製造(乳酸オリゴマーの平均重合度=9)
キシレン溶媒中、90wt%のL−乳酸水溶液を原料として、大気圧雰囲気、キシレン還流条件で無触媒にて24時間、直接脱水重縮合を行い、平均重合度9の乳酸オリゴマーを得た。反応混合物からキシレンを除去したのち、乳酸オリゴマー基準で1.0mol%のPyH−T触媒を加えクーゲルロール装置を用いて0.4kPa、180℃にて20時間、乳酸オリゴマーの解重合・環化を行い、ラクチドを得た。乳酸オリゴマーに対するラクチドの収率は55%であった。結果を表3に示す。
【0165】
[実施例2−2] PyH−T触媒によるラクチドの製造(乳酸オリゴマーの平均重合度=50)
L−乳酸の直接脱水重縮合において、溶媒としてトルエンを用い、触媒としてTPP−T触媒(L−乳酸に対して0.5mol%)を用いて平均重合度50の乳酸オリゴマーを得て、これを解重合・環化に用いた以外は実施例2−1と同様に操作を行った(乳酸オリゴマーの解重合・環化においてPyH−T触媒も使用した)。乳酸オリゴマーに対する収率33%にてラクチドを得た。結果を表3に示す。
【0166】
[実施例2−3] PyH−T触媒によるラクチドの製造(乳酸オリゴマーの平均重合度=70)
L−乳酸の直接脱水重縮合において、溶媒としてトルエンを用い、触媒としてTPP−T触媒(L−乳酸に対して0.5mol%)を用い、直接脱水重縮合の反応時間を30時間とし、平均重合度70の乳酸オリゴマーを得て、これを解重合・環化に用いた以外は実施例2−1と同様に操作を行った(乳酸オリゴマーの解重合・環化においてPyH−T触媒も使用した)。乳酸オリゴマーに対する収率26%にてラクチドを得た。結果を表3に示す。
【0167】
[実施例2−4] PyH−T触媒によるラクチドの製造(乳酸オリゴマーの重合度=200)
L−乳酸の直接脱水重縮合において、溶媒としてトルエンを用い、触媒としてTPP−T触媒(L−乳酸に対して0.5mol%)を用い、直接脱水重縮合の反応時間を72時間とし、重合度200のポリ乳酸を得て、これを解重合・環化に用いた以外は実施例2−1と同様に操作を行った(ポリ乳酸の解重合・環化においてPyH−T触媒も使用した)。ポリ乳酸に対する収率18%にてラクチドを得た。結果を表3に示す。
【0168】
【表3】
【0169】
[実施例3−1] PyH−T触媒によるラクチドの製造(解重合・環化反応温度=180℃)
90wt%のL−乳酸水溶液5.0g、L−乳酸に対して1mol%のPyH−T触媒、25mLのキシレンを50mL丸底フラスコに入れ、キシレン還流条件にて、直接脱水重縮合を行った後、キシレンを除去して平均重合度10.6の乳酸オリゴマーを得た。この乳酸オリゴマーをクーゲルロール装置を用いて、0.013kPa、180℃にて5時間、解重合・環化を行い、乳酸オリゴマーに対して収率50%にてラクチドを得た。このラクチドのメソ体率は1%以下で、LL−ラクチド選択率は99%以上であった。結果を表4に示す。
【0170】
[実施例3−2] PyH−T触媒によるラクチドの製造(解重合・環化反応温度=160℃)
解重合・環化を行う際の温度を160℃とした以外は実施例3−1と同様に操作を行い、乳酸オリゴマーに対して収率46%にてラクチドを得た。このラクチドのメソ体率は1%以下で、LL−ラクチド選択率は99%以上であった。結果を表4に示す。
【0171】
[実施例3−3] PyH−T触媒によるラクチドの製造(解重合・環化反応温度=140℃)
解重合・環化を行う際の温度を140℃とした以外は実施例3−1と同様に操作を行い、乳酸オリゴマーに対して収率30%にてラクチドを得た。このラクチドのメソ体率は1%以下で、LL−ラクチド選択率は99%以上であった。結果を表4に示す。
【0172】
【表4】
【0173】
[実施例4−1] PyH−T触媒によるラクチドの製造(同反応条件における触媒活性の比較)
キシレン溶媒中、90wt%のL−乳酸水溶液を原料として、大気圧雰囲気、キシレン還流条件で無触媒にて24時間、直接脱水重縮合を行い、平均重合度9の乳酸オリゴマーを得た。反応混合物からキシレンを除去したのち、乳酸オリゴマー基準で1.0mol%のPyH−T触媒を加えクーゲルロール装置を用いて0.4kPa、180℃にて3時間、乳酸オリゴマーの解重合・環化を行い、ラクチドを得た。乳酸オリゴマーに対するラクチドの収率は42%であった。このラクチドのメソ体率は1%以下で、LL−ラクチド選択率は99%以上であった。結果を表5に示す。なお、ラクチド残渣のNMR測定を行ったところ、平均重合度90の乳酸オリゴマーであった。
【0174】
[実施例4−2] 5,5’−diMe−2,2’−BiPy−T触媒によるラクチドの製造(同反応条件における触媒活性の比較))
解重合・環化反応の触媒として、PyH−T触媒の代わりに、乳酸オリゴマー基準で1.0mol%の5,5’−diMe−2,2’−BiPy−T触媒を用いた以外は実施例4−1と同様に操作を行い、ラクチドを得た。乳酸オリゴマーに対するラクチドの収率は23%であった。このラクチドのメソ体率は1%以下で、LL−ラクチド選択率は99%以上であった。結果を表5に示す。なお、ラクチド残渣のNMR測定を行ったところ、平均重合度20の乳酸オリゴマーであった。
【0175】
[実施例4−3] 4,4’−BiPy−T触媒によるラクチドの製造(同反応条件における触媒活性の比較)
解重合・環化反応の触媒として、PyH−T触媒の代わりに、乳酸オリゴマー基準で1.0mol%の4,4’−BiPy−T触媒を用いた以外は実施例4−1と同様に操作を行い、ラクチドを得た。乳酸オリゴマーに対するラクチドの収率は20%であった。このラクチドのメソ体率は1%以下で、LL−ラクチド選択率は99%以上であった。結果を表5に示す。なお、ラクチド残渣のNMR測定を行ったところ、平均重合度25の乳酸オリゴマーであった。
【0176】
[実施例4−4] TPP−S触媒によるラクチドの製造(同反応条件における触媒活性の比較)
解重合・環化反応の触媒として、PyH−T触媒の代わりに、乳酸オリゴマー基準で1.0mol%のTPP−S触媒を用いた以外は実施例4−1と同様に操作を行い、ラクチドを得た。乳酸オリゴマーに対するラクチドの収率は18%であった。このラクチドのメソ体率は1%以下で、LL−ラクチド選択率は99%以上であった。結果を表5に示す。なお、ラクチド残渣のNMR測定を行ったところ、平均重合度27の乳酸オリゴマーであった。
【0177】
[実施例4−5] PyH−S触媒によるラクチドの製造(同反応条件における触媒活性の比較)
解重合・環化反応の触媒として、PyH−T触媒の代わりに、乳酸オリゴマー基準で1.0mol%のPyH−S触媒を用いた以外は実施例4−1と同様に操作を行い、ラクチドを得た。乳酸オリゴマーに対するラクチドの収率は25%であった。このラクチドのメソ体率は1%以下で、LL−ラクチド選択率は99%以上であった。結果を表5に示す。なお、ラクチド残渣のNMR測定を行ったところ、平均重合度83の乳酸オリゴマーであった。
【0178】
[実施例4−6] Me−Imid−T触媒によるラクチドの製造(同反応条件における触媒活性の比較)
解重合・環化反応の触媒として、PyH−T触媒の代わりに、乳酸オリゴマー基準で1.0mol%のMe−Imid−T触媒を用いた以外は実施例4−1と同様に操作を行い、ラクチドを得た。乳酸オリゴマーに対するラクチドの収率は31%であった。このラクチドのメソ体率は1%以下で、LL−ラクチド選択率は99%以上であった。結果を表5に示す。なお、ラクチド残渣のNMR測定を行ったところ、平均重合度60の乳酸オリゴマーであった。
【0179】
[実施例4−7] 3−Me−PyH−T触媒によるラクチドの製造(同反応条件における触媒活性の比較)
解重合・環化反応の触媒として、PyH−T触媒の代わりに、乳酸オリゴマー基準で1.0mol%の3−Me−PyH−T触媒を用いた以外は実施例4−1と同様に操作を行い、ラクチドを得た。乳酸オリゴマーに対するラクチドの収率は28%であった。このラクチドのメソ体率は1%以下で、LL−ラクチド選択率は99%以上であった。結果を表5に示す。なお、ラクチド残渣のNMR測定を行ったところ、平均重合度83の乳酸オリゴマーであった。
【0180】
[実施例4−8] 3−Cl−PyH−T触媒によるラクチドの製造(同反応条件における触媒活性の比較)
解重合・環化反応の触媒として、PyH−T触媒の代わりに、乳酸オリゴマー基準で1.0mol%の3−Cl−PyH−T触媒を用いた以外は実施例4−1と同様に操作を行い、ラクチドを得た。乳酸オリゴマーに対するラクチドの収率は39%であった。このラクチドのメソ体率は1%以下で、LL−ラクチド選択率は99%以上であった。結果を表5に示す。なお、ラクチド残渣のNMR測定を行ったところ、平均重合度90の乳酸オリゴマーであった。
【0181】
[実施例4−9] 3−Ph−PyH−T触媒によるラクチドの製造(同反応条件における触媒活性の比較)
解重合・環化反応の触媒として、PyH−T触媒の代わりに、乳酸オリゴマー基準で1.0mol%の3−Ph−PyH−T触媒を用いた以外は実施例4−1と同様に操作を行い、ラクチドを得た。乳酸オリゴマーに対するラクチドの収率は37%であった。このラクチドのメソ体率は1%以下で、LL−ラクチド選択率は99%以上であった。結果を表5に示す。なお、ラクチド残渣のNMR測定を行ったところ、平均重合度44の乳酸オリゴマーであった。
【0182】
[実施例4−10] 4−Ph−PyH−T触媒によるラクチドの製造(同反応条件における触媒活性の比較)
解重合・環化反応の触媒として、PyH−T触媒の代わりに、乳酸オリゴマー基準で1.0mol%の4−Ph−PyH−T触媒を用いた以外は実施例4−1と同様に操作を行い、ラクチドを得た。乳酸オリゴマーに対するラクチドの収率は38%であった。このラクチドのメソ体率は1%以下で、LL−ラクチド選択率は99%以上であった。結果を表5に示す。なお、ラクチド残渣のNMR測定を行ったところ、平均重合度42の乳酸オリゴマーであった。
【0183】
[実施例4−11] 2,6−diMe−PyH−T触媒によるラクチドの製造(同反応条件における触媒活性の比較)
解重合・環化反応の触媒として、PyH−T触媒の代わりに、乳酸オリゴマー基準で1.0mol%の2,6−diMe−PyH−T触媒を用いた以外は実施例4−1と同様に操作を行い、ラクチドを得た。乳酸オリゴマーに対するラクチドの収率は41%であった。このラクチドのメソ体率は1%以下で、LL−ラクチド選択率は99%以上であった。結果を表5に示す。なお、ラクチド残渣のNMR測定を行ったところ、平均重合度65の乳酸オリゴマーであった。
【0184】
[比較例4−1]無触媒でのラクチドの製造(同反応条件における触媒活性の比較)
解重合・環化反応の触媒を用いなかった以外は実施例4−1と同様に操作を行い、ラクチドを得た。乳酸オリゴマーに対するラクチドの収率は12%であった。結果を表5に示す。なお、ラクチド残渣のNMR測定を行ったところ、平均重合度22の乳酸オリゴマーであった。
【0185】
[比較例4−2]塩化スズ(II)触媒によるラクチドの製造(同反応条件における触媒活性の比較)
解重合・環化反応の触媒として、PyH−T触媒の代わりに、乳酸オリゴマー基準で1.0mol%の塩化スズ(II)触媒(SnCl
2)を用いて、解重合・環化反応の時間を1時間にした以外は実施例4−1と同様に操作を行い、ラクチドを得た。乳酸オリゴマーに対するラクチドの収率は92.2%であった。このラクチドのメソ体率は3.0%であった。結果を表5に示す。なお、ラクチド残渣のNMR測定を行ったところ、平均重合度58の乳酸オリゴマーであった。
【0186】
[比較例4−3]オクチル酸スズ(II)触媒によるラクチドの製造(同反応条件における触媒活性の比較)
解重合・環化反応の触媒として、PyH−T触媒の代わりに、乳酸オリゴマー基準で1.0mol%のオクチル酸スズ(II)触媒(Sn(Oct)
2)を用いて、解重合・環化反応の時間を1時間にした以外は実施例4−1と同様に操作を行い、ラクチドを得た。乳酸オリゴマーに対するラクチドの収率は73.6%であった。このラクチドのメソ体率は3.2%であった。結果を表5に示す。なお、ラクチド残渣のNMR測定を行ったところ、平均重合度50の乳酸オリゴマーであった。
【0187】
【表5】
【0188】
[実施例5] 連続的なラクチド合成
1回目:90wt%のL−乳酸水溶液44gとPyH−T(1.0g)を100mLフラスコに入れ、150℃、3.3kPaで6時間反応させて平均重合度6の乳酸オリゴマー(32g)を得た。得られた乳酸オリゴマーを160℃、0.066〜0.13kPaの間の圧力で解重合・環化させるとラクチド(8.0g)が留出した。ラクチドを分離した残渣のNMR測定を行ったところ、平均重合度20の乳酸オリゴマー(23g)であった。
【0189】
2回目:前記の重合度20の乳酸オリゴマー(23g)に、60wt%のL−乳酸水溶液(18.0g)を加えて窒素雰囲気下、135℃で15時間、更に、3.3kPaに減圧し、150℃で3時間反応させて平均重合度6の乳酸オリゴマー(31g)を得た。得られた乳酸オリゴマーを前記と同様の条件で解重合・環化させるとラクチド(7.2g)が留出した。ラクチドを分離した残渣は、平均重合度45の乳酸オリゴマー(23g)であった。
【0190】
3回目:前記の重合度45の乳酸オリゴマー(23g)に、60wt%のL−乳酸水溶液(17.3g)を加えて前記と同様の反応を行い、平均重合度6の乳酸オリゴマー(32g)を得た。この得られた乳酸オリゴマーを前記と同様の条件で解重合・環化させるとラクチド(7.1g)が留出した。ラクチドを分離した残渣は、平均重合度30の乳酸オリゴマー(23g)であった。
【0191】
4回目:前記の重合度30の乳酸オリゴマー(23g)に60wt%のL−乳酸水溶液(17.3g)を加えて前記と同様の反応を行い、平均重合度7の乳酸オリゴマー(31g)を得た。この得られた乳酸オリゴマーを前記と同様の条件で解重合・環化させるとラクチド(7.6g)が留出した。ラクチドを分離した残渣は、平均重合度33の乳酸オリゴマー(22g)であった。
【0192】
5回目:前記の重合度33の乳酸オリゴマー(22g)に、60wt%のL−乳酸水溶液(18.2g)を加えて前記と同様の反応を行い、平均重合度7の乳酸オリゴマー(31g)を得た。この得られた乳酸オリゴマーを前記と同様の条件で解重合・環化させるとラクチド(7.7g)が留出した。ラクチドを分離した残渣は平均重合度32の乳酸オリゴマー(22g)であった。
【0193】
前記の結果を
図2に示す。
図2においては、オリゴマー総量を基準としたラクチド収率(OLAbase)と、2回目以降において、投入したL−乳酸を基準としたラクチド収率(LAbase)を示した。また、得られたラクチドのメソ体率はいずれも1%以下、LL−ラクチド選択率はいずれも99%以上であった。