(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5728805
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】光学部材、及びそれを用いたEL表示装置、EL照明装置
(51)【国際特許分類】
H05B 33/02 20060101AFI20150514BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20150514BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20150514BHJP
G02B 5/32 20060101ALI20150514BHJP
G03H 1/02 20060101ALI20150514BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20150514BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20150514BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20150514BHJP
F21Y 105/00 20060101ALN20150514BHJP
【FI】
H05B33/02
H05B33/14 A
G02B5/18
G02B5/32
G03H1/02
G09F9/00 313
G09F9/30 365
F21Y105:00 100
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2009-254110(P2009-254110)
(22)【出願日】2009年11月5日
(65)【公開番号】特開2011-99972(P2011-99972A)
(43)【公開日】2011年5月19日
【審査請求日】2012年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100148873
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 浩史
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】丸山 伸吾
【審査官】
小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/063636(WO,A1)
【文献】
特開平09−265085(JP,A)
【文献】
特開2002−090549(JP,A)
【文献】
特開2002−100224(JP,A)
【文献】
特開平10−112203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50 − 51/56
H01L 27/32
H05B 33/00 − 33/28
G02B 5/32
G02B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状発光素子の光取出し面側に配置され
、反射型位相ホログラムからなる光学部材であって、
前記反射型位相ホログラムは、照明光と前記光取出し面の法線からなる入射面内にて、
最適角度、又は該最適角度に近い角度で前記反射型位相ホログラムに入射した前記照明光の入射
角度と、1次回折光あるいは入射面に射影した1次回折光の
回折角度とが、略逆向きとな
り、
前記反射型位相ホログラムの光取出し面側に隣接する材料の屈折率をnout、前記反射型位相ホログラムに用いる材料の屈折率をninとした場合、前記最適角度は、nout、ninにより(1)式で算出される臨界角θc以上の値に設定されていることを特徴とする光学部材。
【数1】
【請求項2】
前記反射型位相ホログラムと拡散部材とを組み合わせたことを特徴とする請求項1に記載の光学部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光学部材を光取出し面側に配することを特徴とするEL表示装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の光学部材を光取出し面側に配し、表示画素ごとに前記照明光の入射角度、前記1次回折光の回折角度、および露光波長のうち少なくとも1つが異なることを特徴とするEL表示装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の光学部材を光取出し面側に配することを特徴とするEL照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EL(エレクトロルミネッセンス:Electro Luminescence)素子やFED(Field Emission Display/電界放出ディスプレイ)等の自発光型の平面発光素子用の光学部材、及びそれを用いたEL表示装置、EL照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、平面発光素子の代表であるEL素子は、蛍光性化合物に電場を加えるか、電流を注入することにより発光する素子であり、使用する材料によって無機ELと有機ELとに分けられる。
蛍光性化合物における電気エネルギー刺激による発光は、無機化合物や有機化合物において観測されるが、それぞれの発光中心の励起機構は異なっている。無機EL素子の発光機構は蛍光体中に電子が高電界下において加速されて発光中心に衝突し励起する発光素子であり、一方、有機ELでは外部から電子とホール(正孔)を注入し、それらの再結合エネルギーによって発光中心を励起する発光素子である。
そして、無機EL、有機ELは、ともに発光層を電極で挟んだサンドイッチ構造であり、電極の少なくとも一方の電極を透明にすることによって、面状の発光素子を得ることが可能である。
【0003】
図9は、有機EL素子の概略構成の一例を示している。
図9の模式図に示す有機EL素子100では、背面電極101、有機発光層102、透明電極103、ガラス基板104のみが記載されているが、実際の素子にあっては、電子輸送層やホール輸送層などのさまざまな薄膜層が複数積層されて構成されている。また、ガラス基板をプラスチック基板にすることでフレキシブルなEL素子も作製可能である。以下、基板104と記す。この有機EL素子100は、背面電極101と透明電極103との間に電圧を印加することによって有機発光層102内で発光が起こり、その光を透明電極103側から素子外部へ取り出すことが可能となる。
【0004】
そして、有機発光層102で発光した光は、透明電極103や基板104を通って空気層105へ射出されるが、一般に有機発光材料、透明電極103、基板104に用いられる材料の屈折率は異なるため、異なった屈折率を有する第1の材料(屈折率:n1)と第2の材料(屈折率:n2)が接する界面においてフレネル反射による光取り出しロスが生じる。フレネル反射は材料の屈折率を用いて表現することができ、例えば、垂直入射の場合には(2)式で表現される。
【0005】
【数1】
【0006】
さらに、入射側材料(屈折率:ni)に対して射出側材料(屈折率:ns)の屈折率が低い場合、つまり、ni>nsの場合には臨界角θc以上で入射した光に関して全反射(
図10の矢印)が起こる。全反射が起こる臨界角θcは(3)式で表現される。
【0007】
【数2】
【0008】
ところが、臨界角θcよりも大きな角度で入射した光は全反射が起こり、材料の吸収を無視すると100%反射が起こる。そのため、素子外部へ取り出すことが出来ずに大きな損失となってしまう。実際、屈折率1.5のガラス平板を基板に用いたときに外部に取り出される光取り出し効率は、20%以下となる。
【0009】
そこで、素子外部への光取り出し効率を改善する手法として、例えば特許文献1、2に開示されている。
特許文献1には、素子基板上にマイクロレンズを設けて素子外部への光取り出し効率を改善する提案がされている。
特許文献2には、発光層と全反射抑制構造の間には発光面積を実質的に絞る集光構造が設けられ、全反射抑制構造と集光構造を構成する材料のうち少なくとも集光構造の屈折率が、発光層を構成する材料の屈折率以上であるEL素子について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第2773720号公報
【特許文献2】特開2003−317931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した従来のEL素子では、以下のような問題があった。
すなわち、空気との界面で生じる全反射を効果的に抑制するためには、発光面積に対して十分大きなレンズ径を有することが必要である。そのため、素子内の発光面積に対して十分に大きな径のレンズを設けることが困難であるため、十分な全反射抑制効果を得ることができなかった。
とくに、上述した特許文献2のようにディスプレイ用途などの高精細な画素サイズの実現を図る素子用途にあっては、画素面積に対して十分に大きなレンズを具備することは画素間でのマイクロレンズ同士の物理的な干渉や画素の高密度化等の点からも不利であるという問題があった。
【0012】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、損失となる素子最表面である基板と空気層との界面で生じる全反射される光を減らすことで、素子外部に取り出される光取出し効率の向上を図ることができる光学部材、及びそれを用いたEL表示装置、EL照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る光学部材では、面状発光素子の光取出し面側に配置され
、反射型位相ホログラムからなる光学部材であって、
前記反射型位相ホログラムは、照明光と前記光取出し面の法線からなる入射面内にて、
最適角度、又は該最適角度に近い角度で前記反射型位相ホログラムに入射した前記照明光の入射
角度と、1次回折光あるいは入射面に射影した1次回折光の
回折角度とが、略逆向きとな
り、前記反射型位相ホログラムの光取出し面側に隣接する材料の屈折率をnout、前記反射型位相ホログラムに用いる材料の屈折率をninとした場合、前記最適角度は、nout、ninにより(1)式で算出される臨界角θc以上の値に設定されていることを特徴としている。
【0014】
【数3】
【0015】
本発明では、照明光が反射型位相ホログラムによって略逆向きに変換されることから、外部に取り出せない光が空気層と反射型位相ホログラムとの界面での反射と、面状発光素子での反射、散乱を繰り返す回数とを、反射型位相ホログラムの無い場合に比べて多くすることが可能となり、光の取出し効率が向上する。
また、本光学部材では、マイクロレンズや、プリズムのように凹凸構造を用いないことで、耐久性、対応性の向上、他の光学部材との組み合わせが容易となる利点がある。
また、利用できない臨界角θc以上の光に作用させることができ、また光取出し面から取り出すことが可能な正面方向とホログラムの最適角度とが異なるため、正面方向の光がホログラムに作用は働かず、面状発光素子に戻る現象を抑えることができる。
【0016】
また、本発明に係る光学部材では、反射型位相ホログラムと拡散部材とを組み合わせることが好ましい。
本発明では、面状発光素子による反射、拡散する拡散光を大きくすることができ、より多くの光を取出し可能な角度に変換することができる。
【0020】
また、本発明に係るEL表示装置では、上述した光学部材を光取出し面側に配することを特徴としている。
【0021】
また、本発明に係るEL表示装置では、上述した光学部材を光取出し面側に配し、表示画素ごとに照明光の入射角度、1次回折光の回折角度、および露光波長のうち少なくとも1つが異なることを特徴としている。
【0022】
また、本発明に係るEL照明装置では、上述した光学部材を光取出し面側に配することを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
本発明の光学部材、及びそれを用いたEL表示装置、EL照明装置によれば、照明光が反射型位相ホログラムによって略逆向きに変換されることから、損失となる素子最表面である基板と空気層との界面で生じる全反射される光を減らすことができ、素子外部に取り出される光取出し効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1の実施の形態による有機EL素子の概略構成を示す模式的な断面図であって、X−Z平面の図である。
【
図2】同じく有機EL素子の概略構成を示す模式的な断面図であって、X−Z平面の図である。
【
図3】同じく有機EL素子の概略構成を示す模式的な断面図であって、X−Y平面の図である。
【
図4】本発明の第2の実施の形態による有機EL素子の概略構成を示す模式的な断面図であって、
図1に対応する図である。
【
図5】第1変形例による多重記録した反射型位相ホログラムを示す断面図である。
【
図6】第2変形例による多重記録した反射型位相ホログラムを示す断面図である。
【
図7】第1実施例による有機EL素子の概略構成を示す模式的な断面図。
【
図8】第2実施例によるEL表示装置を示すX−Y断面図である。
【
図10】従来のプリズムシートの輝度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の第1の実施の形態による光学部材、及びそれを用いたEL表示装置、EL照明装置について、
図1乃至
図3に基づいて説明する。
【0026】
図1および
図2に示す有機EL素子1において、2は反射型位相ホログラム(光学部材)、3は背面電極、4は有機発光層、5は透明電極、6は基板、7は空気層である。背面電極3、有機発光層4、透明電極5、および基板6は、本発明の面状発光素子に相当する。ここで、
図1において紙面上側を光取り出し側として、以下説明する。
【0027】
本第1の実施の形態による有機EL素子1は、面状発光素子10の光取出し面側に反射型位相ホログラム2を配する構成をなしている。
反射型位相ホログラム2は、ホログラムの元となる干渉縞を屈折率変化により保持しているため、光の吸収が無い、或いは少ない特徴を有している。また、反射型であるため波長選択性を有するため、近い波長、近い方向のみに作用し、大きく異なる波長や、大きく異なる方向の光に対する作用はほとんどないものである。
【0028】
有機EL素子1では、
図1のように、照明光の向きがホログラム作製時の照明光の向きと近い場合において、基板6内の光はそのまま、照明光L0として反射型位相ホログラム2に入射する。そして、照明光L0の一部は反射型位相ホログラム2によって、略逆向きの1次回折光L1として、また残りは透過光L2として直進する。1次回折光L1は、再び面状発光素子10に入射し、面状発光素子10によって反射、散乱することで、一部が取出し可能な角度に変換され、再利用することが可能となる構成となっている。
【0029】
ここで、前記「略逆向き」とは、2つの光線を光取出し面に射影した光線の向きが逆になることである。よって、照明光L0と回折光の進行方向は完全に逆でなくても良いことになる。
つまり、
図1において、入射面内で照明光L0と1次回折光L1とを取り扱っているが、
図3に示すように1次回折光L1を入射面に射影した光L1´と照明光L0が略逆向きであれば良い。
そして、以下の説明では、照明光L0と、1次回折光L1が同一面(
図3に示す入射面R)内にあるものとする。
【0030】
次に、
図2のように、照明光L0´の向きがホログラム作製時の照明光の向きと逆の場合、基板6内の光は反射型位相ホログラム2内を直進し、空気層7と反射型位相ホログラム2の界面2aで反射する。さらに、反射した光は再び反射型位相ホログラム2内を直進するが、反射型位相ホログラム2の最適角度に近くなるため、一部が1次回折光L1として、再び空気層7と反射型位相ホログラム2の界面2aで反射して面状発光素子10に戻り、反射、散乱することで、一部が取出し可能な角度に変換され、再利用することが可能となる構成となっている。また、照明光L0´の残りは、透過光L2として直進する。
【0031】
また、有機EL素子1によれば、反射型位相ホログラム2の照明光L0、1次回折光L1の角度を光取出し面側
に隣接する材料の屈折率をnout、
反射型位相ホログラム2に用いる材料の屈折率をninとした場合、照明光L0の入射角度、1次回折光L1の回折角度が、nout、ninで決定される(1)式の臨界角θc以上で反射型位相ホログラム2を作製することで、利用できない臨界角以上の光に作用することができる。
また、取り出すことの可能な正面方向と、反射型位相ホログラム2の最適角度とが大きく異なるため、正面方向の光が反射型位相ホログラム2に作用は働かず、面状発光素子に戻る現象を抑えることが可能となる。
【0033】
また、画像表示装置の多くは画素ごとに赤、緑、青のように異なる色の画素の組み合わせにより画像を表示するため、それぞれの画素に対し、露光波長、照明光の入射角度、1次回折光の射出角度を設定することにより、輝度の向上と共に、反射型位相ホログラムの波長選択性により、色補正効果を付加することも可能となる。
【0034】
なお、本有機EL素子1は、EL表示装置、またEL照明装置どちらでも、輝度向上効果を得ることが可能である。
【0035】
このように、光学部材では、
図1および
図3に示すいずれの方向に進む照明光L0、L0´も反射型位相ホログラム2によって略逆向きに変換されることから、外部に取り出せない光が空気層7と反射型位相ホログラム2との界面2aでの反射と、面状発光素子10での反射、散乱を繰り返す回数とを、反射型位相ホログラムの無い場合に比べて多くすることが可能となり、光の取出し効率が向上する。
また、光学部材では、マイクロレンズや、プリズムのように凹凸構造を用いないことで、耐久性、対応性の向上、他の光学部材との組み合わせが容易となる利点がある。
【0036】
上述のように本第1の実施の形態による光学部材、及びそれを用いたEL表示装置、EL照明装置では、照明光L0が反射型位相ホログラム2によって略逆向きに変換されることから、損失となる素子最表面である基板6と空気層7との界面で生じる全反射される光を減らすことができ、素子外部に取り出される光取出し効率の向上を図ることができる。
【0037】
次に、本発明による光学部材、及びそれを用いたEL表示装置、EL照明装置の他の実施の形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1の実施の形態と異なる構成について説明する。
【0038】
図4に示す本発明の第2の実施の形態による有機EL素子1Aは、反射型位相ホログラム2に拡散部材8を組み合わせた光学部材とすることで、上述した第1の実施の形態における面状発光素子10による反射、拡散する拡散光L3を大きくすることができ、より多くの光を取出し可能な角度に変換することが可能な構成となっている。
なお、拡散部材8は、反射型位相ホログラム2に対して光の取出し面側、或いは面状発光素子10側どちらでも良い。
【0039】
次に、上記実施の形態によれば、反射型位相ホログラム2の多重記録により、露光波長、照明光の入射角度、1次回折光L1の射出角度を複数設定することができ、一組の露光波長、照明光の入射角度、1次回折光L1の射出角度以外の作用しない波長や角度の光にも、別組の露光波長、照明光L0の入射角度、1次回折光L1の射出角度により作用することが可能となり、利用できる光量が増加するため、更なる輝度向上を図ることが可能となる。
【0040】
ここで、別組の露光波長、照明光L0の入射角度、1次回折光L1の射出角度として、
図5に第1変形例、
図6に第2変形例を示す。
図5に示す第1変形例による反射型位相ホログラム2A(光学部材)は、法線に対し同方向での多重記録によるものである。
図6に示す第2変形例による反射型位相ホログラム2B(光学部材)は、逆方向での多重記録によるものである。
なお、同一入射面でなくでも良い。
【実施例】
【0041】
次に、上述した第2の実施の形態による光学部材、及びそれを用いたEL表示装置、EL照明装置の効果を裏付けるための実施例につい
図7乃至
図8を参照して以下説明する。
なお、各図において、同一又は同様な部材、部分又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の符号を用いて説明を省略する。
【0042】
(第1実施例)
図7に示すように、第1実施例である有機EL素子1Aは、背面電極3、緑色有機発光層4(屈折率1.7)、透明電極5(屈折率2.0)、ガラス基板6(屈折率1.5)で構成された面状発光素子10の光取出し側に、拡散部材8、反射型位相ホログラム2の順に配している。前記緑色有機発光層4は波長530nm付近の光を発光する。この場合、基板6(屈折率1.5)と空気層7(屈折率1.0)の臨界角θcは41.8度となる。
反射型位相ホログラム2は、屈折率1.5内で、レーザー波長532nm、前記臨界角θc以上の参照光角度50度、1次回折光角度50度に設定、記録されている。
【0043】
先ず、
図7のように有機発光層4から基板正面(0度)付近に出る光L4はそのまま、各界面で若干の屈折が起こり、拡散部材8まで到達する。そして、拡散部材8を通過後、反射型位相ホログラム2まで到達するが、位相ホログラムであるため、吸収も少なく、また、ホログラムの最適角度50度から、大きく異なる角度で入射するため、回折も起こらず、空気層7へ射出することが可能である。
【0044】
次に、有機発光層4で40度付近の光L5の振る舞いを観察する。
有機発光層4(屈折率1.7)と透明電極5(屈折率2.0)の界面により屈折が起こり、透明電極5内で33.1度になる。
次に、透明電極5(屈折率2.0)と基板6(屈折率1.5)との界面による屈折により46.8度に曲がる。そして、拡散部材8を通過し、反射型位相ホログラム2に入射する。最適照明光角度が50度に近い角度で入射するため、略逆向きに回折され光線は逆の光路をたどり、拡散部材8へ到達する。ここで、光は拡散光L3として拡散され、一部は空気層7へ取出し可能な角度に変換されるため、取り出し効率が向上する。また、一部は臨界角以上のまま、有機発光層4を通過して、背面電極3にて反射し、反射型位相ホログラム2まで、再び戻り、同じ工程を繰り返す。
【0045】
次に、有機発光層4で62度以上の光L6の振る舞いを観察する。
有機発光層4(屈折率1.7)と透明電極5(屈折率2.0)との界面により屈折が起こり、透明電極5内で48.6度以上になる。そのため、透明電極5(屈折率2.0)と、基板6(屈折率1.5)の界面により全反射がおこり、基板6へ取り出せず、損失となる。
以上により、有機発光層4内で40〜50度付近の光を有効に取り出すことが可能となり、光の取出し効率の向上が可能となる。
【0046】
(第2実施例)
図8は、第2実施例によるEL表示装置30のX−Y断面図である。
EL表示装置30は、画素ごとに、赤表示画素31、緑表示画素33、青表示画素32の領域に分かれている。EL素子の構成は、
図7に示す第1実施例と同様に、光学部材が反射型位相ホログラムと拡散部材で構成されている。また、各画素の発光波長のピークは赤表示画素が650nm、緑表示画素が550nm、青表示画素が450nmに設定されている。
以上により、各画素の位置と色に対応するように光学部材の波長、入射角度、回折角度の少なくとも一つを変えた反射型位相ホログラムを空間分割して作製することにより、各画素に最適な構成を得ることが可能である。
【0047】
以上、本発明による光学部材、及びそれを用いたEL表示装置、EL照明装置の第1および第2の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0048】
1、1A 有機EL素子
2 反射型位相ホログラム(光学部材)
3 背面電極
4 有機発光層
5 透明電極
6 基板
7 空気層
8 拡散部材(光学部材)
L0、L0´ 照明光、入射光
L1 1次回折光
L1´ 入射面に射影した1次回折光
L2 透過光
L3 拡散光
L4 0度付近の光
L5 40度付近の光
L6 62度以上の光
R 入射面
30 EL表示装置
31 赤表示画素
32 青表示画素
33 緑表示画素