(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
開始剤として有機基を有する有機アルカリ金属と有機基を有する有機アルカリ土類金属とのうちの少なくとも一方を含むものを用いて重合を行って得られる少なくとも共役ジエン単位を含む重合体に、アルコキシシリル基と保護されていてもよい第1級アミノ基が結合された、重量平均分子量が15万〜200万の共役ジエン系重合体を得る工程と、得られた前記共役ジエン系重合体に、前記共役ジエン系重合体に結合された前記保護されていてもよい第1級アミノ基の総モル数に対して、ハロゲン原子の総モル数が1〜10倍となる量であり、且つ、前記開始剤に含まれる金属の総モル数に対して、ハロゲン原子の総モル数が2.1倍以上となる量の金属ハロゲン化合物を反応させることにより、変性共役ジエン系重合体を得る工程と、を備えた変性共役ジエン系重合体の製造方法。
前記変性共役ジエン系重合体を得る工程が、水の存在下で、得られた前記共役ジエン系重合体に、金属ハロゲン化合物を反応させることにより、変性共役ジエン系重合体を得る工程である請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
前記共役ジエン単位を含む重合体として、共役ジエンの単独重合体、又は共役ジエンと芳香族ビニル化合物の共重合体を用いる請求項1又は2に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
前記金属ハロゲン化合物として、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、及びジルコニウム(Zr)からなる群より選択される少なくとも一種の金属原子を含むものを用いる請求項1〜4のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
前記金属ハロゲン化合物として、トリメチルシリルクロライド、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、四塩化ケイ素、メチルジクロロシラン、四塩化スズ、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、塩化亜鉛、四塩化チタン、チタノセンジクロライド、四塩化ジルコニウム、及びジルコノセンジクロライドからなる群より選択される少なくとも一種の化合物を用いる請求項1〜5のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
前記ゴム成分が、前記変性共役ジエン系重合体と他のゴム成分とからなり、前記変性共役ジエン系重合体を20〜100質量%、及び前記他のゴム成分を0〜80質量%(但し、前記変性共役ジエン系重合体+前記他のゴム成分=100質量%)含み、且つ前記他のゴム成分が、天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−α−オレフィン共重合ゴム、エチレン−α−オレフィン−ジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴム及びハロゲン化ブチルゴムからなる群より選択される少なくとも一種のゴム成分である請求項9〜11のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
【0027】
[1]変性共役ジエン系重合体の製造方法:
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、
開始剤として有機基を有する有機アルカリ金属と有機基を有する有機アルカリ土類金属とのうちの少なくとも一方を含むものを用いて重合を行って得られる少なくとも共役ジエン単位を含む重合体に、アルコキシシリル基と保護されていてもよい第1級アミノ基が結合された、重量平均分子量が15万〜200万の共役ジエン系重合体を得る工程と、得られた共役ジエン系重合体に、
共役ジエン系重合体に結合された保護されていてもよい第1級アミノ基の総モル数に対して、ハロゲン原子の総モル数が1〜10倍となる量であり、且つ、前記開始剤に含まれる有機基の総モル数に対して、ハロゲン原子の総モル数が2.1倍以上となる量の金属ハロゲン化合物を反応させることにより、変性共役ジエン系重合体を得る工程と、を備えた製造方法である。
【0028】
上記した工程を備えた製造方法により、ムーニー粘度が高く、形状安定性に優れた変性共役ジエン系重合体を簡便に製造することができる。更に、このようにして得られる変性共役ジエン系重合体は、ゴム組成物を得る際の加硫処理が容易であるとともに、転がり抵抗性、ウェットスキッド抵抗性及び耐磨耗性に優れたゴム組成物を得ることができる。なお、本明細書において、「保護されていてもよい第1級アミノ基」とは、第1級アミノ基と保護された第1級アミノ基との少なくとも一方の官能基ことをいう。
【0029】
[1−1]共役ジエン系重合体:
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の製造方法においてベースポリマーとして用いられる共役ジエン系重合体は、少なくとも共役ジエン単位を含む重合体に、アルコキシシリル基と保護されていてもよい第1級アミノ基が結合された、重量平均分子量が15万〜200万の共役ジエン系重合体である。なお、少なくとも共役ジエン単位を含む重合体は、共役ジエンの単独重合体、又は共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体であることが好ましい。このような共役ジエン系重合体は、ヒステリシスロス特性、耐摩耗性、及び破壊特性に優れている。なお、上記した重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定したポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう)のことである。
【0030】
共役ジエン系重合体に結合された保護されていてもよい第1級アミノ基(以下、単に「第1級アミノ基」ということがある)の含有量は、好ましくは0.5〜200mmol/kg・重合体である。同含有量は、更に好ましくは1〜100mmol/kg・重合体であり、特に好ましくは2〜50mmol/kg・重合体である。ここで、「mmol/kg・重合体」は、ポリマー成分の全質量(kg)に対する、第1級アミノ基のモル数(mmol)を意味する。なお、上記したポリマー成分の全質量とは、製造時又は製造後、添加される老化防止剤等の添加剤を含まないポリマー成分のみの質量を意味する。
【0031】
第1級アミノ基は、重合開始末端、重合終了末端、重合体主鎖、側鎖のいずれに結合していてもよいが、重合体末端からエネルギー消失を抑制してヒステリシスロス特性を改良しうる点から、重合開始末端あるいは重合終了末端に導入されていることが好ましい。
【0032】
また、重合体に結合する第1級アミノ基の数が200mmol/kg・重合体を超えると、得られる変性共役ジエン系重合体とカーボンブラックやシリカ等の補強剤との相互作用が高くなりすぎて、配合粘度が向上して加工性が悪化することがある。一方、第1級アミノ基の数が0.5mmol/kg・重合体未満では、第1級アミノ基を導入したことによる効果が発現し難くなる。すなわち、共役ジエン系重合体のヒステリシスロス特性、耐摩耗性、破壊特性の改良が十分ではなく、好ましくない。
【0033】
また、重合体に結合するアルコキシシリル基の含有量は、好ましくは0.5〜200mmol/kg・重合体である。同含有量は、更に好ましくは1〜100mmol/kg・重合体であり、特に好ましくは2〜50mmol/kg・重合体である。
【0034】
アルコキシシリル基は、重合開始末端、重合終了末端、重合体主鎖、側鎖のいずれに結合していてもよいが、重合体末端からエネルギー消失を抑制してヒステリシスロス特性を改良しうる点から、重合終了末端に導入されていることが好ましい。
【0035】
また、重合体に結合するアルコキシシリル基の数が200mmol/kg・重合体を超えると、得られる変性共役ジエン系重合体とカーボンブラックやシリカ等の補強剤との相互作用が高くなりすぎて、配合粘度が向上して加工性が悪化することがある。一方、アルコキシシリル基の数が0.5mmol/kg・重合体未満では、アルコキシシリル基を導入したことによる効果が発現し難くなる。すなわち、共役ジエン系重合体のヒステリシスロス特性、耐摩耗性、破壊特性の改良が十分ではなく、好ましくない。
【0036】
また、本実施形態の製造方法に用いられる共役ジエン系重合体は、上記したように重量平均分子量が15万〜200万であることが必要である。重量平均分子量が15万未満のものであると、得られるゴム組成物の破壊強度、耐摩耗性、低ヒステリシスロス性などが低下する。一方、重量平均分子量が200万を超えるものであると、加工性に劣り、また混練り時のフィラー(充填剤)の分散性が悪化し、破壊強度、耐摩耗性、低ヒステリシスロス性、ウェットスキッド性が悪化する。なお、共役ジエン系重合体の重量平均分子量は、15万〜170万であることが好ましい。
【0037】
また、この共役ジエン系重合体のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は20〜200の範囲であることが好ましい。なお、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)が20未満では破壊強度、耐摩耗性、低ヒステリシスロス性が悪化することがあり、一方、200を超えると加工性が低下することがある。
【0038】
共役ジエン系重合体に用いられる、少なくとも共役ジエン単位を含む重合体は、共役ジエンの単独重合体、又は共役ジエンと芳香族ビニル化合物の共重合体を用いることが好ましい。具体的には、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)を好適例として挙げることができる。
【0039】
このような共役ジエン系重合体は、例えば、共役ジエン、あるいは共役ジエンと芳香族ビニル化合物とを含む炭化水素溶媒中に、有機アルカリ金属と有機アルカリ土類金属とのうちの少なくとも一方を含む開始剤を添加してアニオン重合させて重合体を得、得られた重合体に、保護された1級アミノ基とアルコキシシリル基を有する化合物を添加してリビング重合体末端に反応させることによって得ることができる。
【0040】
より具体的な方法としては、例えば、下記反応(I)によって得られた共役ジエン系重合体を用いることが好ましい。
【0041】
反応(I):共役ジエン、あるいは共役ジエンと芳香族ビニル化合物とを含む炭化水素溶媒中に、有機アルカリ金属と有機アルカリ土類金属とのうちの少なくとも一方を含む開始剤を添加してアニオン重合させて重合体を得、得られた重合体の重合活性末端と、下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を反応させる。
【0042】
【化3】
【0043】
但し、一般式(1)において、R
1は炭素数1〜12のアルキレン基であり、R
2及びR
3は各々独立に炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基であり、R
4,R
5及びR
6は、各々独立に炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基であるかあるいはそれらの2つは互いに結合してそれらが結合しているケイ素原子を含む環を形成してもよく、gは1〜2の整数であり、fは1〜10の整数である。
【0044】
【化4】
【0045】
但し、一般式(2)において、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6の定義は前記一般式(1)に同じであり、eは1〜2の整数である。
【0046】
上記反応(I)によれば、一段反応で容易に第1級アミノ基とアルコキシシリル基を同時に導入することができ、更に、高い導入率を実現することが可能である。
【0047】
上記一般式(1)及び一般式(2)において、R
1の炭素数1〜12のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、及びプロピレン基を挙げることができる。
【0048】
また、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6としての炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、及びプロピル基を挙げることができる。
【0049】
また、アリール基としては、例えば、フェニル基、トルイル基、及びナフチル基を挙げることができる。
【0050】
また、R
4、R
5、及びR
6の2つが結合してそれらが結合しているケイ素原子を含む環を形成している場合には、4〜7員環であることが好ましい。
【0051】
また、アミノ基を保護するための保護基としては、アルキルシリル基を挙げることができる。アルキルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、及びエチルメチルフェニルシリル基を挙げることができる。
【0052】
保護された第1級アミノ基とアルコキシシリル基を有する化合物としては、例えば、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシラン、及びN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシラン等を挙げることができる。なお、好ましくは、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、又は1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタンである。
【0053】
リビング重合体末端(例えば、P
−Li
+)と、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシランとの反応は、下記反応式(3)で表すことができる。
【0054】
【化5】
【0055】
なお、上記反応式(3)における、Pは、共役ジエン単位を含む重合体(具体的には、共役ジエンの重合体、あるいは共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体)を示している。
【0056】
同様に、リビング重合体末端(例えば、P
−Li
+)と、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタンとの反応は、下記反応式(4)で表すことができる。
【0057】
【化6】
【0058】
また、上記した1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタンは、2分子のリビング重合体末端と反応することができ、そのときには下記反応式(5)で表すことができる。
【0059】
【化7】
【0060】
また、本実施形態の変性共役ジエン系重合体の製造方法に用いられる共役ジエン系重合体は、例えば、共役ジエン、あるいは共役ジエンと芳香族ビニル化合物とを含む炭化水素溶媒中に、下記一般式(6)又は一般式(7)で表されるリチウムアミド開始剤を添加してアニオン重合させて重合体を得、得られた重合体を、下記一般式(8)で表されるアルコキシシラン化合物を添加してリビング重合体末端に反応させることによって得ることができる。
【0061】
【化8】
【0062】
但し、一般式(6)において、R
1、R
4、R
5、及びR
6の定義は前記一般式(1)に同じである。
【0063】
【化9】
【0064】
但し、一般式(7)において、R
1の定義は前記一般式(1)に同じであり、R
7及びR
8は、各々独立に水素又は炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基であり、dは1〜7の整数である。
【0065】
【化10】
【0066】
但し、一般式(8)において、R
2及びR
3の定義は前記一般式(1)に同じであり、Xはハロゲン原子であり、cは0〜2の整数であり、bは1〜4の整数である〔但し、c+bは2〜4の整数である〕。
【0067】
このようにして得られる共役ジエン系重合体は、共役ジエン、あるいは共役ジエンと芳香族ビニル化合物、及び場合により共重合可能な第3モノマーを重合して得られた重合体である。
【0068】
共役ジエン系重合体を構成する共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、及びこれらの混合物等を挙げることができる。共役ジエン単位の含有量としては、全単量体中に40〜100質量%であることが好ましく、50〜95質量%であることが更に好ましい。40質量%未満では、得られる変性共役ジエン系重合体の転がり抵抗、耐摩耗性が悪化し、また低温時にゴムが硬化してグリップ性能、ウェットスキッド抵抗が悪化することがある。
【0069】
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、tert−ブトキシスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4−ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、N,N−ジメチルアミノエチルスチレン、2−t−ブチルスチレン、3−t−ブチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、ビニルピリジン及びこれらの混合物等を挙げることができる。これらのうち、スチレンが特に好ましい。このような芳香族ビニル化合物の使用量は、全単量体中に60質量%以下であることが好ましく、50〜5質量%であることが更に好ましい。
【0070】
また、第3モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、及びアクリル酸ヒドロキシエチル等を挙げることができる。第3モノマーの使用量は、全単量体中に25質量%未満であることが好ましく、15質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
【0071】
[1−1A]共役ジエン系重合体の製造方法:
次に、本実施形態の変性共役ジエン系重合体の製造方法に用いられる共役ジエン系重合体を製造する方法(第一の方法)について説明する。
【0072】
共役ジエン系重合体を得るための、重合反応、及び第1級アミノ基(保護された第1級アミノ基)とアルコキシシリル基とを有する化合物との反応は、一定温度条件下でも上昇温度条件下でもよい。具体的な反応温度としては、0〜120℃であることが好ましい。保護された第1級アミノ基を脱保護させるための加水分解の温度は、80〜150℃であることが好ましく、90〜120℃であることが更に好ましい。この加水分解は、上記温度範囲にて、保護された第1級アミノ基とアルコキシシリル基を有する化合物の2倍モル以上の水もしくは酸性水などを添加し、反応させることにより行われる。反応時間は、10分間以上であることが好ましく、30分間以上であることが更に好ましい。重合方式は、バッチ重合方式又は連続重合方式のいずれでもよい。
【0073】
重合に使用される有機アルカリ金属及び有機アルカリ土類金属の開始剤の例としては、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウムなどのアルキルリチウム、1,4−ジリチオブタンなどのアルキレンジリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム、リチウムナフタレン、ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン、n−ブチルマグネシウム、n−ヘキシルマグネシウム、エトキシカルシウム、ステアリン酸カルシウム、t−ブトキシストロンチウム、エトキシバリウム、イソプロポキシバリウム、エチルメルカプトバリウムt−ブトキシバリウム、フェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ステアリン酸バリウム等を挙げることができる。
【0074】
また、上記開始剤としての有機アルカリ金属は、第2級アミン化合物又は第3級アミン化合物との反応生成物として、共役ジエンと芳香族ビニル化合物の共重合に使用することができる。上記第2級アミン化合物又は第3級アミン化合物と反応させる有機アルカリ金属としては、有機リチウム化合物が好ましい。より好ましくは、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウムを挙げることができる。
【0075】
有機アルカリ金属と反応させる第2級アミン化合物の例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−(2−エチルヘキシル)アミン、ジシクロヘキシルアミン、N−メチルベンジルアミン、ジアリルアミン、モルホリン、ピペラジン、2,6−ジメチルモルホリン、2,6−ジメチルピペラジン、1−エチルピペラジン、2−メチルピペラジン、1−ベンジルピペラジン、ピペリジン、3,3−ジメチルピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、1−メチル−4−(メチルアミノ)ピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ピロリジン、2,5−ジメチルピロリジン、アゼチジン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン、5−ベンジルオキシインドール、3−アザスピロ[5,5]ウンデカン、3−アザビシクロ[3.2.2]ノナン、カルバゾール等を挙げることができる。
【0076】
また、有機アルカリ金属と反応させる第3級アミン化合物の例としては、N,N−ジメチル−o−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルジエチルアミン、ベンジルジプロピルアミン、ベンジルジブチルアミン、(o−メチルベンジル)ジメチルアミン、(m−メチルベンジル)ジメチルアミン、(p−メチルベンジル)ジメチルアミン、N,N−テトラメチレン−o−トルイジン、N,N−ヘプタメチレン−o−トルイジン、N,N−ヘキサメチレン−o−トルイジン、N,N−トリメチレンベンジルアミン、N,N−テトラメチレンベンジルアミン、N,N−ヘキサメチレンベンジルアミン、N,N−テトラメチレン(o−メチルベンジル)アミン、N,N−テトラメチレン(p−メチルベンジル)アミン、N,N−ヘキサメチレン(o−メチルベンジル)アミン、N,N−ヘキサメチレン(p−メチルベンジル)アミン等を挙げることができる。
【0077】
また、重合には、必要に応じて、ジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2,2−(ビステトラヒドロフルフリル)プロパン、ビステトラヒドロフルフリルホルマール、テトラヒドロフルフリルアルコールのメチルエーテル、テトラヒドロフルフリルアルコールのエチルエーテル、テトラヒドロフルフリルアルコールのブチルエーテル、α−メトキシテトラヒドロフラン、ジメトキシベンゼン、ジメトキシエタン等のエーテル化合物及び/又はトリエチルアミン、ピリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、N,N−ジエチルエタノールアミンのメチルエーテル、N,N−ジエチルエタノールアミンのエチルエーテル、N,N−ジエチルエタノールアミンのブチルエーテル等の第3級アミン化合物を、重合系中に添加して、共役ジエン系重合体の共役ジエン部分のミクロ構造(ビニル結合含量)を調整することができる。
【0078】
炭化水素溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等を挙げることができる。これらのうち、シクロヘキサン、ヘプタンが好ましい。
【0079】
共役ジエン系重合体を製造する際において、使用する開始剤の反応性を向上させようとする場合、あるいは重合体中に導入される芳香族ビニル化合物をランダムに配列するか又は芳香族ビニル化合物の単連鎖を付与させようとする場合に、重合開始剤とともにカリウム化合物を添加してもよい。重合開始剤とともに添加されるカリウム化合物としては、例えば、カリウムイソプロポキシド、カリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−アミロキシド、カリウム−n−ヘプタオキシド、カリウムベンジルオキシド、カリウムフェノキシドに代表されるカリウムアルコキシド、カリウムフェノキシド;イソバレリアン酸、カプリル酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレイン酸、安息香酸、フタル酸、2−エチルヘキサン酸等のカリウム塩;ドデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸のカリウム塩;亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジイソプロピル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジラウリル等の、有機亜リン酸部分エステルのカリウム塩等が用いられる。
【0080】
これらのカリウム化合物は、開始剤のアルカリ金属1グラム原子当量あたり、0.005〜0.5モルの量で添加することが好ましい。0.005モル未満では、カリウム化合物の添加効果(開始剤の反応性向上、芳香族ビニル化合物のランダム化又は単連鎖付与)が現れないことがあり、一方0.5モルを超えると、重合活性が低下し、生産性を大幅に低下させることになるとともに、重合体末端を官能基で変性する反応を行う際の変性効率が低下する。
【0081】
共役ジエン系重合体を製造する際には、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物(以下、「アミノ基含有アルコキシシラン化合物」ということがある)と併用してカップリング剤を添加することも可能である。カップリング剤の具体例は、以下のとおりである。なお、このカップリング剤は、上記したアミノ基含有アルコキシシラン化合物によって共役ジエン系重合体を生成する段階で(具体的には、アミノ基含有アルコキシシラン化合物よりも前に)添加される。
【0082】
すなわち、アミノ基含有アルコキシシラン化合物と併用して、重合活性末端に反応させるカップリング剤としては、(a)イソシアナート化合物及びイソチオシアナート化合物の少なくとも一方、(b)アミド化合物及びイミド化合物の少なくとも一方、(c)ピリジル置換ケトン化合物及びピリジル置換ビニル化合物の少なくとも一方、(d)ケイ素化合物、(e)エステル化合物、(f)ケトン化合物並びに(g)スズ化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物が挙げられる。
【0083】
これらの化合物のうち、(a)成分であるイソシアナート化合物又はチオイソシアナート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメリックタイプのジフェニルメタンジイソシアナート(C−MDI)、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、1,3,5−ベンゼントリイソシアナート、フェニル−1,4−ジイソチオシアナート等を好適例として挙げることができる。
【0084】
(b)成分であるアミド化合物又はイミド化合物としては、コハク酸アミド、フタル酸アミド、N,N,N’,N’−テトラメチルフタル酸アミド、オキサミド、N,N,N’,N’−テトラメチルオキサミドなどのアミド化合物、コハク酸イミド、N−メチルコハクイミド、マレイミド、N−メチルマレイミド、フタルイミド、N−メチルフタルイミドなどのイミド化合物等を好適例として挙げることができる。
【0085】
(c)成分であるピリジル置換ケトン化合物又はピリジル置換ビニル化合物としては、ジベンゾイルピリジン、ジアセチルピリジン、ジビニルピリジン等を好適例として挙げることができる。
【0086】
(d)成分であるケイ素化合物としては、ジブチルジクロロケイ素、メチルトリクロロケイ素、メチルジクロロケイ素、テトラクロロケイ素、トリエトキシメチルシラン、トリフェノキシメチルシラン、トリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、4,5−エポキシヘプチルメチルジメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド等を好適例として挙げることができる。
【0087】
(e)成分であるエステル化合物としては、アジピン酸ジエチル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジエチル、グルタル酸ジエチル、マレイン酸ジエチル等を好適例として挙げることができる。
【0088】
(f)成分であるケトン化合物の具体例としては、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、N,N,N’,N’−テトラエチル(4,4’−ジアミノ)−ベンゾフェノン、N,N−ジメチル−1−アミノベンゾキノン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノベンゾキノン、N,N−ジメチル−1−アミノアントラキノン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ジアミノアントラキノン等を好適例として挙げることができる。
【0089】
(g)成分であるスズ化合物としては、テトラクロロスズ、テトラブロムスズ、トリクロロブチルスズ、トリクロロメチルスズ、トリクロロオクチルスズ、ジブロムジメチルスズ、ジクロロジメチルスズ、ジクロロジブチルスズ、ジクロロジオクチルスズ、1,2−ビス(トリクロロスタニル)エタン、1,2−ビス(メチルジクロロスタニルエタン)、1,4−ビス(トリクロロスタニル)ブタン、1,4−ビス(メチルジクロロスタニル)ブタン、エチルスズトリステアレート、ブチルスズトリスオクタノエート、ブチルスズトリスステアレート、ブチルスズトリスラウレート、ジブチルスズビスオクタノエート、ジブチルスズビスステアレート、ジブチルスズビスラウレート等を好適例として挙げることができる。
【0090】
アミノ基含有アルコキシシラン化合物と併用して、重合活性末端に反応させるこれらの化合物は、一種単独で使用することも、あるいは二種以上を併用することもできる。
【0091】
上記カップリング剤の使用量は、開始剤のアルカリ金属1グラム原子当量あたり、カップリング剤中のカップリング可能な置換基の量として1モル以下、好ましくは、0.1〜0.5モルの量で添加できる。1モルを超えると、上記一般式(1)で表される化合物及び上記一般式(2)で表される化合物の反応率が低下し、期待する性能が得られないことがある。
【0092】
次に、共役ジエン系重合体を製造する他の方法(第二の方法)について説明する。共役ジエン系重合体を製造する他の方法としては、炭化水素溶媒中で、共役ジエン、あるいは共役ジエンと芳香族ビニル化合物を、上記一般式(6)又は上記一般式(7)で表されるリチウムアミド開始剤を用いて、アニオン重合させて重合体を得、得られた重合体を、上記一般式(8)で表されるアルコキシシラン化合物を添加してリビング重合体末端に反応させる。第1級アミノ基が保護されたリチウムアミド開始剤による重合反応、及びアルコキシシラン化合物との反応は、一定温度条件下でも上昇温度条件下でもよい。具体的な反応温度としては、0〜120℃であることが好ましい。保護された第1級アミノ基を脱保護させるための加水分解の温度は、80〜150℃であることが好ましく、90〜120であることが更に好ましい。この加水分解は、上記温度範囲にて、第1級アミノ基が保護されたリチウムアミド開始剤の2倍モル以上の水もしくは酸性水等を添加し、反応させることにより行われる。反応時間は、10分間以上であることが好ましく、30分間以上であることが更に好ましい。重合方式は、バッチ重合方式又は連続重合方式のいずれでもよい。
【0093】
なお、以下に説明すること以外の事項は、上記した方法(第一の方法)にて記載した事項がそのままあるいは当業者に自明の変更を加えて適用されると理解されるべきである。
【0094】
上記一般式(6)で表されるリチウムアミド開始剤としては、例えば、3−[N,N−ビス(トリメチルシリル)]−1−プロピルリチウム、3−[N,N−ビス(トリメチルシリル)]−2−メチル−1−プロピルリチウム、3−[N,N−ビス(トリメチルシリル)]−2,2−ジメチル−1−プロピルリチウム、4−[N,N−ビス(トリメチルシリル)]−1−ブチルリチウム、5−[N,N−ビス(トリメチルシリル)]−1−ペンチルリチウム、8−[N,N−ビス(トリメチルシリル)]−1−オクチルリチウムを挙げることができる。
【0095】
また、上記一般式(7)で表されるリチウムアミド開始剤としては、例えば、3−(2,2,5,5,−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン)−1−プロピルリチウム、2−メチル−3−(2,2,5,5,−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン)−1−プロピルリチウム、2,2−ジメチル−3−(2,2,5,5,−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン)−1−プロピルリチウム、4−(2,2,5,5,−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン)−1−ブチルリチウム、6−(2,2,5,5,−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン)−1−ヘキシルリチウム等を挙げることができる。
【0096】
また、上記リチウムアミド開始剤は、対応するハライドと有機リチウム化合物を炭化水素溶媒中で反応させた合成体を使用してもよい。なお、ハライドと有機リチウムの反応は、重合リアクターと別の反応容器にて予め行ってもよい。
【0097】
更に、上記式(8)で表されるアルコキシシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラトルイロキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、アリルトリフェノキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、フェニルトリフェノキシシラン、トリメトキシクロロシラン、トリエトキシクロロシラン、トリプロポキシクロロシラン、トリブトキシクロロシラン、トリフェノキシクロロシラン、ジメトキシジクロロシラン、ジプロポキシジクロロシラン、ジフェノキシジクロロシランを挙げることができる。
【0098】
なお、これまでに説明した共役ジエン系重合体としては、例えば、本出願人による国際出願にかかる国際公開公報03/029299号パンフレットに記載された共役ジオレフィン(共)重合ゴムを好適に用いることができる。
【0099】
[1−2]金属ハロゲン化合物:
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の製造方法において、上記した共役ジエン系重合体と反応させるために用いられる金属ハロゲン化合物は、加水分解によってハロゲン化水素を発生するものを用いることが好ましい。このような金属ハロゲン化合物を用いることによって、共役ジエン系重合体と金属ハロゲン化合物との反応を良好に行うことができる。
【0100】
また、金属ハロゲン化合物としては、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、及びジルコニウム(Zr)からなる群より選択される少なくとも一種の金属原子を含むものを用いることが好ましい。
【0101】
具体的には、例えば、トリメチルシリルクロライド、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、四塩化ケイ素、メチルジクロロシラン、四塩化スズ、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、塩化亜鉛、四塩化チタン、チタノセンジクロライド、四塩化ジルコニウム、及びジルコノセンジクロライドからなる群より選択される少なくとも一種の化合物を挙げることができる。
【0102】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の製造方法においては、これまでに説明した共役ジエン系重合体、例えば、上記した開始剤を用いて得られた共役ジエン系重合体に、共役ジエン系重合体に結合された保護されていてもよい第1級アミノ基の総モル数に対して、ハロゲン原子の総モル数が1〜10倍となる量の金属ハロゲン化合物を反応させて変性共役ジエン系重合体を得
る。ハロゲン原子の総モル数が1倍未満であると、共役ジエン系重合体と金属ハロゲン化合物との反応が十分に行われず、ムーニー粘度が高く、形状安定性に優れた変性共役ジエン系重合体を得ることが困難になる。また、ハロゲン原子の総モル数が10倍を超えると、遊離したハロゲン化水素の発生量が増加するため好ましくない。
【0103】
[1−3]変性共役ジエン系重合体の製造:
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の製造方法においては、これまでに説明したような、少なくとも共役ジエン単位を含む重合体に、アルコキシシリル基と保護されていてもよい第1級アミノ基が結合された、重量平均分子量が15万〜200万の共役ジエン系重合体に、上記金属ハロゲン化合物を反応させて変性共役ジエン系重合体を製造する。
【0104】
なお、本実施形態の変性共役ジエン系重合体の製造方法においては、金属ハロゲン化合物を反応させた後、共役ジエン系重合体の製造における公知の脱溶媒(例えば、スチームストリッピング等)、乾燥操作により、変性共役ジエン系重合体を回収することができる。
【0105】
共役ジエン系重合体と、金属ハロゲン化合物とを反応させる方法としては、特に制限はなく、例えば、重合体溶液中に水を直接又は溶媒に溶解させて添加してから混合することによって、或いは、重合体を回収する際のスチームストリッピング等によって行うことができる。
【0106】
また、反応時の温度は、10〜150℃であることが好ましく、80〜120℃であることが更に好ましい。
【0107】
この工程において、使用される共役ジエン系重合体は、共役ジエン系重合体を調製する際に得られた重合体溶液を、脱溶媒しないまま、重合体溶液の状態で用いてもよいし、上記重合体溶液を、スチームストリッピング等により脱溶媒を行い、更に乾燥して得られた共役ジエン系重合体を、シクロヘキサン等の溶媒に再度溶解させて用いてもよい。
【0108】
[2]変性共役ジエン系重合体:
本実施形態の変性共役ジエン系重合体は、これまでに説明した変性共役ジエン系重合体の製造方法によって得られた変性共役ジエン系重合体である。このような変性共役ジエン系重合体は、ムーニー粘度が高く、形状安定性に優れ、加工性が良好なものである。
【0109】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、35〜150であることが好ましく、40〜120であることが更に好ましい。ムーニー粘度(ML1+4,100℃)が35未満であると、破壊特性を始めとするゴム物性が低下する傾向にある。一方、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)が150を超えるものであると、作業性が悪くなり、配合剤とともに混練りすることが困難になることがある。
【0110】
[3]ゴム組成物:
本発明のゴム組成物の一実施形態は、ゴム成分として前述の変性共役ジエン系重合体を含むものである。以下、その詳細について説明する。
【0111】
[3−1]ゴム成分:
本実施形態のゴム組成物に含有されているゴム成分は、本発明の一実施形態である、前述の変性共役ジエン系重合体を含むものである。このゴム成分中の変性共役ジエン系重合体の含有割合は、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、40質量%以上であることが特に好ましい。ゴム成分中の変性共役ジエン系重合体の含有割合が20質量%未満であると、ゴム組成物の引張強さ・引張伸び等の機械的特性、耐亀裂成長性、及び耐摩耗性が不十分となる傾向にある。
【0112】
また、このゴム成分には、一種類の変性共役ジエン系重合体が含有されていても、二種類以上の変性共役ジエン系重合体が含有されていてもよい。また、変性共役ジエン系重合体以外にも、他のゴム成分が含有されていてもよい。他のゴム成分としては、天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−α−オレフィン共重合ゴム、エチレン−α−オレフィン−ジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴム、及びハロゲン化ブチルゴム、並びにこれらの混合物等を挙げることができる。
【0113】
[3−2]その他成分(カーボンブラック、シリカ):
本実施形態のゴム組成物は、カーボンブラックとシリカとの少なくとも一方を更に含有するものであることが好ましい。カーボンブラックの具体例としては、SRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等の各グレードのカーボンブラックを挙げることができる。また、ヨウ素吸着量(IA)が60mg/g以上であり、ジブチルフタレート吸油量(DBP)が80ml/100g以上のカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックを用いることにより、ゴム組成物のグリップ性能、及び耐破壊特性の改良効果は大きくなる。なお、耐摩耗性に優れるHAF、ISAF、SAFが特に好ましい。カーボンブラックは、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0114】
シリカの具体例としては、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等を挙げることができる。これらのうち、耐破壊特性の改良効果、ウェットグリップ性、及び低転がり抵抗性の両立効果が最も顕著である湿式シリカが好ましい。シリカは、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0115】
本実施形態のゴム組成物においては、ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックとシリカとの少なくとも一方を20〜120質量部含有するものであることが好ましく、補強性とそれによる諸物性の改良効果の観点から、25〜100質量部含有するものであることが更に好ましい。なお、カーボンブラック及びシリカのいずれか一方又はその両方の含有割合が少ないと、耐破壊特性等の向上効果が不十分となる傾向にある。一方、上記含有割合が多いと、ゴム組成物の加工性が低下する傾向にある。
【0116】
本実施形態のゴム組成物に、補強用充填剤としてシリカを含有させる場合、補強効果を更に向上させるために、シランカップリッグ剤を配合することが好ましい。このシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド等を挙げることができる。これらのうち、補強性改善効果等の点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドが好適である。なお、これらのシランカップリング剤は、単独で又は二種以上組み合わせて用いることができる。
【0117】
シランカップリング剤の配合量は、シランカップリング剤の種類等により異なるが、シリカ100質量%に対して、1〜20質量%とすることが好ましく、3〜15質量%とすることが更に好ましい。1質量%未満であると、カップリング剤としての効果が十分に発揮され難くなる傾向にある。一方、20質量%超であると、ゴム成分がゲル化し易くなる傾向にある。
【0118】
本実施形態のゴム組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、ゴム工業界で通常用いられている各種の薬品や添加剤等を加えることができる。本実施形態のゴム組成物に加えることのできる各種薬品や添加剤等としては、例えば、加硫剤、加硫助剤、加工助剤、加硫促進剤、プロセス油、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸等を挙げることができる。
【0119】
加硫剤としては、通常、硫黄が使用され、その使用量は、原料ゴム(ゴム成分)100質量部に対して、0.1〜3質量部であることが好ましく、0.5〜2質量部であることが更に好ましい。加硫助剤及び加工助剤としては、一般的にステアリン酸が用いられ、その使用量は、原料ゴム(ゴム成分)100質量部に対して、0.5〜5質量部である。また、加硫促進剤は、特に限定されないが、好ましくはM(2−メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジサルファイド)、CZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)などのチアゾール系加硫促進剤を挙げることができ、その使用量は、原料ゴム(ゴム成分)100質量部に対して、通常、0.1〜5質量であり、0.2〜3質量部であることが好ましい。
【0120】
本発明のゴム組成物は、ロールをはじめとする開放式混練機、バンバリーミキサーをはじめとする密閉式混練機等の混練機を使用し、混練することによって製造することができる。また、成形加工後に加硫することによって、各種ゴム製品に適用可能である。本実施形態のゴム組成物は、例えば、タイヤトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部等のタイヤ用途;防振ゴム、防舷材、ベルト、ホース、その他の工業品等の用途に好適である。本実施形態のゴム組成物は、特に、タイヤトレッド用ゴムとして好適に使用される。
【実施例】
【0121】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、各種物性値の測定方法、及び評価方法を以下に示す。
【0122】
[結合スチレン含量(%)]:270MHz
1H−NMRによって求めた。
【0123】
[ビニル含量(%)]:270MHz
1H−NMRによって求めた。
【0124】
[変性反応前ピーク分子量]:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(商品名:HLC−8120GPC(東ソー社製))を使用して得られたGPC曲線の、多官能単量体、シリカと反応し得る化合物、及びカップリング剤との反応により分子量が増加したポリマーを除いたポリマー部分に相当する山の部分の頂点に相当する保持時間から、ポリスチレン換算で求めた。
【0125】
[ムーニー粘度(ML1+4,100℃)]:JIS K6300に準拠し、Lローターを使用して、予熱1分、ローター作動時間4分、温度100℃の条件で求めた。
【0126】
[コールドフロー(C/F)]:圧力3.5ポンド/平方インチ、温度50℃で重合体を1/4インチオリフィスに通して押し出すことによりコールドフロー(C/F)を測定した。定常状態にするために、10分間放置後、押し出し速度を測定し、値を毎分のミリグラム数(mg/min)で示した。なお、コールドフロー値は、その値が小さいほど、形状安定性(貯蔵安定性)が良好であることを示す。
【0127】
[ゴム組成物の特性の評価及び測定]:
(i)[配合ムーニー粘度]:加硫前の配合ゴムを測定用試料とし、JIS K6300に準拠し、Lローターを使用して、予熱1分、ローター作動時間4分、温度100℃の条件で測定した。指数で表示し、数値が大きいほど加工性が良好である。
【0128】
(ii)[70℃tanδ]:加硫ゴムを測定用試料とし、動的スペクトロメーター(米国レオメトリックス社製)を使用し、引張動歪0.7%、角速度100ラジアン毎秒、70℃の条件で測定した。指数で表示し、数値が大きいほど転がり抵抗性が小さく良好である。
【0129】
(iii)[0℃tanδ]:加硫ゴムを測定用試料とし、動的スペクトロメーター(米国レオメトリックス社製)を使用し、引張動歪0.14%、角速度100ラジアン毎秒、0℃の条件で測定した。指数で表示し、数値が大きいほどウェットスキッド抵抗性が大きく良好である。
【0130】
(iv)[DIN摩耗試験]:加硫ゴムを測定用試料とし、DIN摩耗試験機(東洋精機社製)を使用し、JIS K6264に準拠し、荷重10Nで25℃にて測定した。指数で表示し、数値が大きいほど耐摩耗性が良好である。
【0131】
(実施例1)
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン2500g、テトラヒドロフラン25g、スチレン100g、1,3−ブタジエン390gを仕込んだ。反応器内容物の温度を10℃に調整した後、n−ブチルリチウム335mgを添加して重合を開始した。重合は断熱条件で実施し、最高温度は85℃に達した。重合転化率が99%に達した時点(重合開始から26分経過後)で、1,3−ブタジエン10gを2分間かけて追加し、更に、3分間重合させた後、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン1400mgを加えて15分間反応を行って、共役ジエン系重合体を含む重合体溶液を得た。この共役ジエン系重合体の変性反応前ピーク分子量は、20万であった。
【0132】
なお、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランが、共役ジエン系重合体と結合しているかについての確認は、ポリマー溶液中のN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランの残量をガスクロマトグラフィーによって測定して逆算することによって行った。
【0133】
得られた共役ジエン系重合体を含む重合体溶液に、金属ハロゲン化合物として四塩化ケイ素460mg、及び、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを同時に添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールで乾燥することにより変性共役ジエン系重合体(実施例1)を得た。得られた変性共役ジエン系重合体の各種物性値等を表1に示す。なお、四塩化ケイ素460mgは、n−ブチルリチウム(有機アルカリ金属)335mgに含まれる
金属の総モル数に対して、塩素原子の総モル数が2.1倍(Cl/Liモル比2.1)となる量である。
【0134】
【表1】
【0135】
(実施例2)
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン2500g、テトラヒドロフラン25g、スチレン100g、1,3−ブタジエン390gを仕込んだ。反応器内容物の温度を10℃に調整した後、n−ブチルリチウム335mgを添加して重合を開始した。重合は断熱条件で実施し、最高温度は85℃に達した。重合転化率が99%に達した時点(重合開始から26分経過後)で、1,3−ブタジエン10gを2分間かけて追加し、更に、3分間重合させた後、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン1400mgを加えて15分間反応を行った。反応後の重合体溶液に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを添加して共役ジエン系重合体を含む重合溶液を得た。この共役ジエン系重合体の変性反応前ピーク分子量は、20万であった。
【0136】
得られた共役ジエン系重合体を含む重合溶液を10リットルのポリビンに移した後、金属ハロゲン化合物として四塩化ケイ素460mgを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールで乾燥することにより変性共役ジエン系重合体(実施例2)を得た。得られた変性共役ジエン系重合体の各種物性値等を表1に示す。
【0137】
(実施例3)
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン2500g、テトラヒドロフラン25g、スチレン100g、1,3−ブタジエン390gを仕込んだ。反応器内容物の温度を10℃に調整した後、n−ブチルリチウム335mgを添加して重合を開始した。重合は断熱条件で実施し、最高温度は85℃に達した。重合転化率が99%に達した時点(重合開始から26分経過後)で、1,3−ブタジエン10gを2分間かけて追加し、更に、3分間重合させた後、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン1400mgを加えて15分間反応を行った。反応後の重合体溶液に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを添加し、次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールで乾燥することにより共役ジエン系重合体を得た。
【0138】
得られた共役ジエン系重合体を、シクロヘキサン3000gに溶解させ、金属ハロゲン化合物として四塩化ケイ素460mgを添加した。次いで、再度、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールで乾燥することにより変性共役ジエン系重合体(実施例3)を得た。得られた変性共役ジエン系重合体の各種物性値等を表1に示す。
【0139】
(実施例4)
金属ハロゲン化合物として四塩化ケイ素920mgを添加したこと以外は、実施例1と同様の方法により変性共役ジエン系重合体(実施例4)を得た。得られた変性共役ジエン系重合体の各種物性値等を表1に示す。なお、四塩化ケイ素920mgは、n−ブチルリチウム(有機アルカリ金属)335mgに含まれる
金属の総モル数に対して、塩素原子の総モル数が4.1倍(Cl/Liモル比4.1)となる量である。
【0140】
(実施例5)
四塩化ケイ素460mgに変えて、金属ハロゲン化合物としてジメチルジクロロシラン700mgを添加したこと以外は、実施例1と同様の方法により変性共役ジエン系重合体(実施例5)を得た。得られた変性共役ジエン系重合体の各種物性値等を表1に示す。なお、ジメチルジクロロシラン700mgは、n−ブチルリチウム(有機アルカリ金属)335mgに含まれる
金属の総モル数に対して、塩素原子の総モル数が2.1倍(Cl/Liモル比2.1)となる量である。
【0141】
(実施例6)
四塩化ケイ素460mgに変えて、金属ハロゲン化合物として四塩化スズ700mgを添加したこと以外は、実施例1と同様の方法により変性共役ジエン系重合体(実施例6)を得た。得られた変性共役ジエン系重合体の各種物性値等を表1に示す。なお、四塩化スズ700mgは、n−ブチルリチウム(有機アルカリ金属)335mgに含まれる
金属の総モル数に対して、塩素原子の総モル数が2.1倍(Cl/Liモル比2.1)となる量である。
【0142】
(実施例7)
四塩化ケイ素460mgに変えて、金属ハロゲン化合物としてジエチルアルミニウムクロライド1300mgを添加したこと以外は、実施例1と同様の方法により変性共役ジエン系重合体(実施例6)を得た。得られた変性共役ジエン系重合体の各種物性値等を表1に示す。なお、ジエチルアルミニウムクロライド1300mgは、n−ブチルリチウム(有機アルカリ金属)335mgに含まれる
金属の総モル数に対して、塩素原子の総モル数が2.1倍(Cl/Liモル比2.1)となる量である。
【0143】
(比較例1)
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン2500g、テトラヒドロフラン25g、スチレン100g、1,3−ブタジエン390gを仕込んだ。反応器内容物の温度を10℃に調整した後、n−ブチルリチウム335mgを添加して重合を開始した。重合は断熱条件で実施し、最高温度は85℃に達した。重合転化率が99%に達した時点(重合開始から26分経過後)で、1,3−ブタジエン10gを2分間かけて追加し、更に、3分間重合させた後、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン1400mgを加えて15分間反応を行った。
【0144】
反応後の重合体溶液に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールで乾燥することにより共役ジエン系重合体(比較例1)を得た。得られた共役ジエン系重合体の各種物性値等を表1に示す。なお、比較例1によって得られた重合体は、金属ハロゲン化合物による変性反応が行われていない共役ジエン系重合体である。
【0145】
(ゴム組成物(加硫物)の調製)
実施例1〜7によって得られた変性共役ジエン系重合体、及び比較例1によって得られた共役ジエン系重合体を用いて、ゴム組成物(加硫物)を調製した。このゴム組成物の配合処方を表2に示す。調製方法は、250mlラボプラストミルを使用してゴム組成物(配合ゴム)を調製し、得られたゴム組成物(配合ゴム)を更に加硫してゴム組成物(加硫物)を調製した。なお、A練りは100℃×50rpmで約3分間行い、その際のダンプの計器温度は約140℃、実温度は約150℃であった。また、A練り後の配合ゴムに硫黄と加硫促進剤を追加してから行う練り(「B練り」ともいう)は、70℃×60rpmで1分間行った。さらに、加硫は160℃で30分間行った。得られたゴム組成物(加硫物)の加工性、転がり抵抗性、ウェットスキッド抵抗性、及び耐摩耗性を評価した。結果を表3に示す。
【0146】
【表2】
【0147】
【表3】
【0148】
(考察)
実施例1〜7によって得られた変性共役ジエン系重合体は、比較例1によって得られた共役ジエン系重合体と比較して、ムーニー粘度が高く、且つコールドフローの値が低い(形状安定性が優れている)にも関わらず、得られたゴム組成物の加工性(配合ムーニー粘度)と物性は比較例1のゴム組成物に対して略同程度の値を示している。具体的には、比較例1におけるゴム組成物の各特性値を100とした場合に、実施例1〜7におけるゴム組成物の各特性値は、98〜102の範囲に収まっている。このように、本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、得られたゴム組成物の加工性(配合ムーニー粘度)と物性を低下させることなく、ムーニー粘度が高く、且つコールドフローの値が低い(形状安定性が優れている)変性共役ジエン系重合体を製造することができるということが確認された。