(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、出入口が正面壁の左右側部の一方に寄せて配置され、この出入口が寄せられた側の側壁にアテンダントシートが取着される場合がある。
アテンダントシートは客室乗務員が座る箇所であり、客室乗務員は事故の際に乗客を助けるなどの重要な任務があることから、アテンダントシートが取着される側壁の箇所に剛性を持たせる必要がある。
また、アテンダントシートに座っている客室乗務員に、正面壁の左右方向で出入口から離れる方向に荷重が加わり、この荷重により出入口側の側壁が変形すると、化粧室ユニット内の光が機内に洩れる不具合が生じるため、特に、出入口側の側壁の前部に剛性を持たせる必要がある。
【0005】
そこで、出入口側の側壁の前部に、断面が箱型を呈する金属製の部材を用いて上下に縦長の枠状の補強フレームを設け、側壁の前部の剛性を高めることが考えられる。
しかしながら、航空機の機内に設置される化粧室ユニットには、軽量化が厳しく要求されており、このような断面が箱型を呈する金属製の部材からなる上下に縦長の枠状の補強フレームを用いると重量増となる。
また、補強フレームとコアとの接着作業も面倒な作業となり、作業員による接着作業のばらつきにより均一な品質の化粧室ユニットが得難くなる。
本発明はこのような事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、均一な品質の化粧室ユニットを得る上で有利で、しかも、軽量化を図りつつ光漏れを防止する上で有利な航空機用の化粧室ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため本発明は、ドアにより開閉される出入口が設けられた正面壁と、前記正面壁に対向する背面壁と、それら正面壁と背面壁とを接続する左右の側壁とを備え、前記左右の側壁は、ハニカム構造のコアと、前記コアの両面に取着された繊維強化プラスチックからなる表面板とを含んで構成され、前記出入口は前記正面壁の左右側部の一方に寄せて配置され、前記出入口が寄せられた側の側壁にアテンダントシートが配置され、前記出入口が寄せられた側の側壁の
前記正面壁側の端部である前部の上端から下端にわたって前記コアの厚さ方向の両面と表面板との間にそれぞれ単一の薄肉補強板が設けられ、前記薄肉補強板は、前記出入口が寄せられた側の側壁の前部の補強フレームを構成すると共に前記前部におけるアテンダントシートの取り付け部を構成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
薄肉補強板を用いた本発明によれば、断面が箱型を呈する金属製の部材からなる上下に縦長の枠状の補強フレームを設ける場合に比べ、側壁前部の軽量化を図りつつ側壁前部の剛性を高めることができ、軽量化が厳しく要求される航空機用の化粧室ユニットとして好適となる。
また、アテンダントシートに座っている客室乗務員に出入口から離れる方向に荷重が加わっても、薄肉補強板により側壁前部の剛性が高められるので、この荷重による出入口側の側壁の変形を防止でき、化粧室ユニット内の光が機内に洩れる不具合を防止する上で有利となる。
また、薄肉補強板の接着は面と面との接着となるため、その接着は簡単になされ、作業員によるばらつきが接着作業に生じることはなく、均一な品質の化粧室ユニットを得る上で有利となる。
また、薄肉補強板は、出入口が寄せられた側の側壁の前部におけるアテンダントシートの取り付け部を構成しているので、アテンダントシートを取り付けるに際して何ら別個の補強フレームを設ける必要がなくなり、構造の簡素化を図る上でも有利となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態を添付図面に従って説明する。
図1に示すように、航空機の機内に化粧室ユニット10が設けられ、化粧室ユニット10にアテンダントシート12が設けられている。
化粧室ユニット10は、正面壁14、機内の側壁に沿った背面壁16、左右の側壁18、天井壁20、底壁22を有し、それらの壁により化粧室ユニット10の内部に化粧室が形成されている。
化粧室には、便器や化粧台などが設けられ、化粧室ユニット10の底壁22は、従来公知の様々な構成によりシートトラックなどの機体側の部材に強固に結合されている。
化粧室ユニット10を構成するそれらの壁は、合成繊維材または金属材からなるハニカム構造のコアと、コアの両面に取着された繊維強化プラスチックからなる表面板とを含んで構成されている。
【0010】
正面壁14には、ドア24により開閉される出入口26が設けられている。
出入口26は正面壁14の左右側部の一方に寄せて配置され、出入口26が寄せられた側の側壁18により出入口26の一側部が仕切られている。
アテンダントシート12は、出入口26が寄せられた側の側壁18に配置されている。
アテンダントシート12は2人掛け用であり、その一部は正面壁14よりも前方に突出している。
【0011】
この前方に突出するアテンダントシート12の部分の背面に位置するように、出入口26側の側壁18の前端で上下中間部から下部にわたって正面壁14よりも前方に突出する突出部18Bが設けられている。
したがって、出入口26が寄せられた側の側壁18は、正面壁14と背面壁16間を接続する本体部18Aと、本体部18Aから突出する突出部18Bとを含んで構成され、突出部18Bは、本体部18Aと同一の厚さで形成されている。
図2に示すように、突出部18Bは、本体部18Aと同様に、合成繊維材からなるハニカム構造のコア1802と、前記コア1802の両面に取着された繊維強化プラスチックからなる表面板1804とを含んで構成されている。
【0012】
そして、
図2、
図3に示すように、本体部18Aの前部の上端から下端にわたっておよび突出部18Bの全域で、コア1802の厚さ方向の両面と表面板1804との間にそれぞれ単一の薄肉補強板30が設けられ、薄肉補強板30は、本体部18Aの前部および突出部18Bの補強フレームを構成している。より詳細には、薄肉補強板30は、本体部18Aの前部の上端から下端にわたって延在する本体部30Aと、本体部30Aから突出する突出部30Bとを有している。
薄肉補強板30は、表面板1804よりも強度、剛性を有しかつ軽量な材料で形成されている。このような材料として従来公知の様々な金属材料やGFRP(ガラス繊維補強プラスチック)などのFRPが採用可能である。本実施の形態では、薄肉補強板30としてアルミ合金製のものを用いており、厚さは、0.8mmである。なお、薄肉補強板30がアルミ合金製である場合、その厚さは0.5〜4.0mm、好ましくは0.5〜2.0mmの範囲内において適宜選定される。なお、後述する雌ねじ部材40やボルト42が位置する箇所では、薄肉補強板30を部分的に厚くしてもよく、あるいは、2枚重ねて用いるようにしてもよい。
【0013】
より詳細に説明すると、本体部18Aおよび突出部18Bの両面の表面板1804が平坦な平面となるように、薄肉補強板30が設けられたコア1802の箇所1802Aは、薄肉補強板30が設けられていない本体部18Aのコア1802の箇所1802Bに比べて2枚の薄肉補強板30の厚さ分だけ薄い薄肉部となっており、この薄肉部の厚さ方向の両面に、フィルム接着剤32を介して薄肉補強板30が取着されている。
なお、薄肉補強板30が設けられたコア1802の箇所1802Aと、薄肉補強板30が設けられていない本体部18Aのコア1802の箇所1802Bとは、一体成形してもよく、あるいは、別体とし、
図2に示すように、発泡接着剤34によりそれらコア1802の箇所を取着してもよい。
そして、表面板1804が、薄肉補強板30が設けられていない本体部18Aのコア1802の箇所1802Bと、薄肉補強板30の表面とにわたり取着され、表面板1804は、薄肉補強板30の表面にフィルム接着剤32を介して取着されている。
【0014】
図1に示すように、アテンダントシート12は、フレーム36と、フレーム36に取着された背もたれ38Aと、フレーム36に起立倒伏可能に取着された座部38Bとを含んで構成されている。
図4(A)に示すように、前方のフレーム36は、突出部18Bにおいて両側の表面板1804、薄肉補強板30に貫通する雌ねじ部材40とボルト42を介して側壁18の前部である突出部18Bに取着されている。
雌ねじ部材40は、頭部と先部とが、それぞれ表面板1804および薄肉補強板30に、側壁18の厚さ方向と直交する方向に移動不能に係止しかつ化粧室の外方向に移動不能に係止して配置され、接着剤により両側の表面板1804、薄肉補強板30、コア1802に接着されている。
そして、ボルト42がフレーム36を貫通し、雌ねじ部材34の雌ねじに螺合することで、フレーム36が側壁18(突出部18B)に取着されている。
したがって、薄肉補強板30の突出部30Bは、出入口26が寄せられた側の側壁18の前部におけるアテンダントシート12の取り付け部を構成している。
アテンダントシート12に座っている2人の客室乗務員に、正面壁14の左右方向で出入口26から離れる方向に荷重が加わった場合、ボルト42から雌ねじ部材40に伝達される。そして、この荷重は雌ねじ部材40から両側の薄肉補強板30に分散して伝達される。ここで両側の薄肉補強板30は接着剤により側壁18と一体化されているので、この分散された荷重は、さらに分散されて側壁18に伝達される。したがって、アテンダントシート12に、化粧室ユニット10から離れる方向に荷重がかかった場合、応力集中が生じることなく薄肉補強板30および薄肉補強板30の周囲の側壁18の箇所でこの荷重を分散して受ける。
【0015】
図4(B)に示すように、背面壁16寄りのフレーム36の部分は、両側の表面板1804とコア1802との間にそれぞれフィルム接着剤32を介して取着された金属製取り付け板44と雌ねじ部材40とボルト42を介して側壁18に取着されている。金属製取り付け板44は、表面板1804よりも強度、剛性を有しかつ軽量な金属材料からなり、雌ねじ部材40とボルト42とは前記と同様な構成である。
雌ねじ部材40は、頭部と先部とが、それぞれ表面板1804および金属製取り付け板44に、側壁18の厚さ方向と直交する方向に移動不能に係止しかつ化粧室の外方向に移動不能に係止して配置され、接着剤により両側の表面板1804、金属製取り付け板44、コア1802に接着されている。
そして、ボルト42がフレーム36を貫通し、雌ねじ部材40の雌ねじに螺合することで、フレーム36が側壁18に取着されている。
アテンダントシート12に座っている2人の客室乗務員に、正面壁14の左右方向で出入口26から離れる方向に荷重が加わった場合、この荷重はボルト42から雌ねじ部材40に伝達される。そして、この荷重は雌ねじ部材40から両側の金属製取り付け板44に分散して伝達される。ここで両側の金属製取り付け板44は接着剤により側壁18と一体化されているので、この分散された荷重は、さらに分散されて側壁18に伝達される。したがって、アテンダントシート12に、化粧室ユニット10から離れる方向に荷重がかかった場合、応力集中が生じることなく金属製取り付け板44および金属製取り付け板44の周囲の側壁18の箇所でこの荷重を分散して受ける。
【0016】
本実施の形態によれば、薄肉補強板30により出入口26が寄せられた側の側壁18の前部の補強フレームが構成され、側壁18の前部の剛性が高められる。
すなわち、薄肉補強板30を側壁18の前部の補強フレームとした本実施の形態によれば、断面が箱型を呈する金属製の部材を用い、本体部18Aの前部で上端から下端にわたって延在させた上下に縦長の枠状の第1の補強フレームを設けると共に、この補強フレームに連結され突出部18Bの周囲に沿って矩形枠状に延在させた第2の補強フレームを設ける場合に比べ、側壁18の前部の軽量化を図りつつ側壁18の前部の剛性を高めることができ、軽量化が厳しく要求される航空機用の化粧室ユニット10として好適となる。
また、アテンダントシート12に座っている客室乗務員に、正面壁14の左右方向で出入口26から離れる方向に荷重が加わっても、薄肉補強板30により側壁18の前部の剛性が高められているので、この荷重による出入口26側の側壁18の変形を防止でき、化粧室ユニット10内の光が機内に洩れる不具合を防止する上で有利となる。
また、薄肉補強板30をコア1802の厚さ方向の両面に接着剤で取着し、その上に表面板1804を取着する構成であり、薄肉補強板30の接着は面と面との接着となるため、その接着は簡単になされ、作業員によるばらつきが接着作業に生じることはなく、均一な品質の航空機用の化粧室ユニット10を得る上で有利となる。
また、薄肉補強板30は、本体部18Aの前部および突出部18Bにおけるアテンダントシート12の取り付け部を構成しているので、アテンダントシート12を取り付けるに際して何ら別個の補強フレームを設ける必要がなくなり、構造の簡素化を図る上でも有利となる。
【0017】
なお、実施の形態では、薄肉補強板30が、本体部18Aの前部の上端から下端にわたって延在する本体部30Aと、本体部30Aから突出する突出部30Bとを有し、この突出部30Bが側壁18の突出部18Bの全域に位置している場合について説明したが、
図5(A)に示すように、突出部30Bは、アテンダントシート12の取り付け部を構成する側壁18の突出部18Bの箇所のみに位置するように突出させてもよい。この場合には、出入口26が寄せられた側の側壁18の前部におけるアテンダントシート12の取り付け部を構成する薄肉補強板30の箇所は突出部30Bとなる。
また、本実施の形態では、出入口26が寄せられた側の側壁18にアテンダントシート12が取着され、この側壁18は、正面壁14と背面壁16間を接続する本体部18Aと、本体部18Aから突出する突出部18Bとを備えている場合について説明したが、側壁18が突出部18Bを備えておらず、本体部18Aのみを備えている場合にも本発明は無論適用される。この場合には、
図5(B)に示すように、薄肉補強板30は、本体部18Aの前部の上端から下端にわたって延在する本体部30Aのみを備えることになり、薄肉補強板30は、出入口26が寄せられた側の側壁18の前部の補強フレームを構成すると共に側壁18の前部におけるアテンダントシート12の取り付け部を構成することになる。