(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、金属層の腐食防止方法、本発明の積層体、半導体発光装置およびシリコーン樹脂組成物について詳細に説明する。
【0010】
まず、本発明の金属層の腐食防止方法について説明する。
本発明の金属層の腐食防止方法は、
第11族の金属から得られる金属層を、
(A)エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシル基およびフェノール基から選ばれる反応性官能基を1分子中に少なくとも1つ以上有するオルガノポリシロキサン100質量部と、(B)亜鉛化合物0.01〜5質量部とを含有するシリコーン樹脂組成物から得られるシリコーン樹脂層で覆い、
前記金属層の腐食を防止する方法である。
【0011】
本願発明者らは、シリコーン樹脂層に含まれる亜鉛化合物が、空気に含まれる腐蝕性ガスを捕捉して金属の耐腐蝕性(例えば、耐硫化性、耐アミン性)を維持することを見出した。本発明において、シリコーン樹脂層が亜鉛化合物を含有することによって、シリコーン樹脂層はその硬度を硬くしなくても十分な耐腐蝕性(特に耐硫化性)を有する。
本発明において、シリコーン樹脂層は外気と金属層との間にあって、空気がシリコーン樹脂層を透過するのに伴い、空気中の腐蝕性ガス(例えば、硫化水素、アミン類のような非共有電子対を有するガス)をシリコーン樹脂層中の亜鉛化合物がキャッチして、腐蝕性ガスが金属層を腐食(例えば、変色)することを防止することができると本願発明者は考える。
なお上記メカニズムは本願発明者の推測であり、仮にメカニズムが上記以外のものであっても本発明の範囲内である。
【0012】
本発明の金属層の腐食防止方法に使用されるシリコーン樹脂組成物は、(A)エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシル基およびフェノール基から選ばれる反応性官能基を1分子中に少なくとも1つ以上有するオルガノポリシロキサン100質量部と、(B)亜鉛化合物0.01〜5質量部とを含有する。
なお、本発明の金属層の腐食防止方法に使用されるシリコーン樹脂組成物は、本発明の積層体、本発明の半導体発光装置に使用されるものと同じである。本発明の金属層の腐食防止方法に使用されるシリコーン樹脂組成物は本発明のシリコーン樹脂組成物と組成が同じであるので、本発明の金属層の腐食防止方法に使用されるシリコーン樹脂組成物を本発明のシリコーン樹脂組成物として以下に説明する。
【0013】
シリコーン樹脂組成物(本発明のシリコーン樹脂組成物)に含有されるオルガノポリシロキサンは、(A)エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシル基およびフェノール基から選ばれる反応性官能基を1分子中に少なくとも1つ以上有し、オルガノポリシロキサン骨格を有するシリコーンである。
【0014】
オルガノポリシロキサンが有する炭化水素基は特に制限されない。例えば、フェニル基のような芳香族基;アルキル基;アルケニル基が挙げられる。
オルガノポリシロキサンは例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーンレジンのいずれであってもよい。オルガノポリシロキサンはジオルガノポリシロキサンであるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
オルガノポリシロキサンの主鎖は直鎖、分岐、三次元のいずれであってもよい。
オルガノポリシロキサンとしては、例えば、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシル基およびフェノール基から選ばれる反応性官能基を1分子中に少なくとも1つ以上有するオルガノポリジアルキルシロキサンが挙げられる。
硬化性に優れるという観点から、オルガノポリシロキサンは2個以上の反応性官能基を有するオルガノポリジアルキルシロキサンであるのが好ましい。
反応性官能基はオルガノポリシロキサンの末端または両末端に結合することができ、側鎖として結合することができる。反応性官能基は有機基を介してオルガノポリシロキサンに結合することができる。有機基は特に制限されない。例えば、2価の、脂肪族炭化水素基(鎖状、分岐を含む)、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられる。反応性官能基としてのカルボキシル基は、例えば無水コハク酸基、無水マレイン酸基のような酸無水物基を含む。
オルガノポリシロキサンは、例えば、下記式(3)で表されるものが挙げられる。
【0015】
(式中、R
4は同一または異なり、炭素数1〜18のアルキル基またはアリール基を示し、X
1、X
2、X
3はそれぞれ独立にエポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシル基およびフェノール基から選ばれる反応性官能基を示し、反応性官能基は有機基を介してケイ素原子と結合してもよくこの場合X
1、X
2、X
3はそれぞれ有機基を含むことができ、nは1以上の整数であり、mは0以上の整数であり、m+nは1以上の整数であり、a、b、cはそれぞれ0以上の整数であり、a+b+cは1以上の整数である。)
【0016】
式(3)中、R
4で表される炭素数1〜18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。R
4で表されるアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基が挙げられる。アリール基はその炭素数を18以下とすることができる。このうち、R
4で表される基はメチル基またはフェニル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。R
4は同一でも異なっていてもよい。
また、式(3)中、nはオルガノポリシロキサンの重量平均分子量に対応する数値とすることができる。作業性、耐クラック性に優れるという観点から、m+nは10〜15,000の整数であるのが好ましい。
【0017】
オルガノポリシロキサンはその製造について特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
オルガノポリシロキサンの分子量は、耐熱着色安定性に優れ、硬化時間、可使時間が適切な長さとなり硬化性に優れ、硬化物物性に優れるという観点から、500〜1,000,000であるのが好ましく、6,000〜100,000であるのがより好ましい。なお、本発明において、ポリシロキサンの分子量は、クロロホルムを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量であるものとする。
【0018】
オルガノポリシロキサンは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
オルガノポリシロキサンを2種以上組み合わせる場合、2種以上のオルガノポリシロキサンは互いに同じ反応性官能基を有してもよいし、異なる反応性官能基を有してもよい。
また、ある1種類の反応性官能基を有するオルガノポリシロキサンに対して、その反応性官能基と反応し、硬化剤として働く反応性官能基を有するオルガノポリシロキサンを組み合わせることができる。例えば、エポキシ基含有オルガノポリシロキサンと、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシル基およびフェノール基から選ばれる反応性官能基を1分子中に少なくとも1つ以上有するオルガノポリシロキサンとの組み合わせ;(メタ)アクリロイル基含有オルガノポリシロキサンと、メルカプト基含有オルガノポリシロキサンとの組み合わせが挙げられる。
【0019】
ある1種類の反応性官能基を有するオルガノポリシロキサンに対して、その反応性官能基と反応し、硬化剤として働く反応性官能基を有するオルガノポリシロキサンを組み合わせる場合、硬化剤として働く反応性官能基を有するオルガノポリシロキサンの量は、その反応性官能基が、ある1種類の反応性官能基を有するオルガノポリシロキサンが有する反応性官能基に対して、0.1〜2当量となる量とすることができる。
【0020】
シリコーン樹脂組成物(本発明のシリコーン樹脂組成物)に含有される亜鉛化合物について以下に説明する。
亜鉛化合物は、亜鉛を含む化合物であれば特に制限されない。例えば、亜鉛塩;亜鉛錯体;亜鉛アルコラート;亜鉛華、スズ酸亜鉛などの亜鉛酸化物が挙げられる。なかでも、耐硫化性、透明性により優れるという観点から、亜鉛塩および/または亜鉛錯体であるのが好ましい。亜鉛塩は亜鉛と酸(無機酸、有機酸を含む。)とから形成される塩であれば特に制限されない。亜鉛錯体は亜鉛と配位子とから形成されるキレート化合物であれば特に制限されない。
【0021】
亜鉛化合物としては、具体的には例えば、下記式(1)、式(2)で表されるもの、サリチル酸化合物の亜鉛錯体、ジアミン化合物の亜鉛錯体が挙げられる。
式(1)で表される亜鉛化合物は以下のとおりである。
Zn(O−CO−R
1)
2 (1)
式(1)中、R
1が炭素数1〜18のアルキル基、アリール基である。炭素数1〜18のアルキル基、アリール基は上記と同義である。式中のCOはカルボニル基(C=O)である。
式(1)で表される亜鉛化合物が塩である場合、亜鉛塩としては例えば、下記式(1′)が挙げられる。
【化1】
上記式(1′)中、R
1は式(1)と同様である。
式(1)で表される亜鉛化合物としては、例えば、亜鉛アセテート、亜鉛2−エチルヘキサノエート、亜鉛オクトエート、亜鉛ネオデカネート;亜鉛アセチルアセテート;亜鉛(メタ)アクリレート;亜鉛サリチレート等のカルボン酸塩が挙げられる。
【0022】
式(2)で表される亜鉛化合物は以下のとおりである。
Zn(R
2COCHCOR
3)
2 (2)
式(2)中、R
2、R
3は同一または異なる炭素数1〜18の1価の炭化水素基、アルコキシ基である。式中のR
2COCHCOR
3は、それぞれ、
R
2−C(−O−)=CH−C(=O)−R
3または
R
2−C(=O)−CH=C(−O−)−R
3である。R
2COCHCOR
3はC−O−で亜鉛と結合する(C−O−Zn)。
式(2)で表される亜鉛化合物が錯体である場合、亜鉛錯体としては例えば、下記式(2′)が挙げられる。
【化2】
上記式(2′)中、R
2、R
3は式(2)と同様であり、同一の(R
2COCHCOR
3)内にあるR
2、R
3は入れ替わっていてもよい。
炭素数1〜18の1価の炭化水素基としては例えば炭素数1〜18のアルキル基、アリール基が挙げられる。炭素数1〜18のアルキル基、アリール基は上記と同義である。
アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が挙げられる。
式(2)で表される亜鉛化合物としては、例えば、ビス(アセチルアセトナート)亜鉛錯体、2,2,6,6,6テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート亜鉛錯体等が挙げられる。
【0023】
亜鉛化合物は、金属層の耐硫化性をより優れたものとし、金属層の腐食(例えば変色)をより抑制することができるという観点から、式(1)または式(2)で表されるもの、これらの併用であるのが好ましく、亜鉛アセテート、亜鉛2−エチルヘキサノエート、亜鉛オクトエート、亜鉛ネオデカネート、亜鉛アセチルアセテート、亜鉛(メタ)アクリレート、亜鉛サリチレート、ビス(アセチルアセトナート)亜鉛錯体、2,2,6,6,6テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート亜鉛錯体がより好ましい。
亜鉛化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
本発明において、亜鉛化合物の量はオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.01〜5質量部である。このような範囲の場合、耐硫化性、透明性に優れる。
耐硫化性、透明性により優れるという観点から、亜鉛化合物の量はオルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.1〜1質量部であるのが好ましい。
【0025】
シリコーン樹脂組成物(本発明のシリコーン樹脂組成物)はさらに硬化剤を含有することができる。硬化剤は特に制限されない。オルガノポリシロキサンが有する反応性官能基の種類に応じて適宜選択することができる。
硬化剤としては、例えば、ポリアミン化合物、ポリアミド化合物、ジシアンジアミド、酸無水物、カルボン酸化合物、フェノール樹脂が挙げられる。具体的には例えば、エポキシ基含有オルガノポリシロキサン用の硬化剤としては、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、ダイマー酸変性エチレンジアミン、N−エチルアミノピペラジン、イソホロンジアミン等の脂肪族アミン類;メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェノルスルホン、4,4’−ジアミノジフェノルメタン、4,4’−ジアミノジフェノルエーテル等の芳香族アミン類;メルカプトプロピオン酸エステル、エポキシ樹脂の末端メルカプト化合物等のメルカプタン類;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA、ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のフェノール樹脂類;前記フェノール樹脂類の芳香環を水素化したポリオール類;ポリアゼライン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物等の脂環式酸無水物類;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の芳香族酸無水物類;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類及びその塩類、上記脂肪族アミン類、芳香族アミン類、及び/又はイミダゾール類とエポキシ樹脂との反応により得られるアミンアダクト類;アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジン類;ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン等の第3級アミン類;トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0026】
上記化合物を、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシル基およびフェノール基から選ばれる反応性官能基を1分子中に少なくとも1つ以上有するオルガノポリシロキサンの硬化剤として使用することができる。
【0027】
硬化剤(オルガノポリシロキサンを硬化剤として使用する場合はその合計量)の量は、硬化性に優れるという観点から、オルガノポリシロキサンが有する反応性官能基に対して硬化剤が有する官能基が0.1〜2当量となる量であるのが好ましい。
【0028】
シリコーン樹脂組成物(本発明のシリコーン樹脂組成物)は、上記の成分以外に、本発明の目的や効果を損なわない範囲で必要に応じてさらに添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、亜鉛化合物以外の亜鉛を含む化合物、亜鉛以外の金属を含む金属化合物および2元金属化合物[例えば、Zn−M−OCORのようなものが挙げられる。Mは亜鉛以外の金属であり、Rは炭化水素基である。]からなる群から選ばれる少なくとも1種との併用;ラジカル開始剤(熱ラジカル開始剤、光ラジカル開始剤を含む。)、無機フィラー、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、熱光安定剤、分散剤、帯電防止剤、重合禁止剤、消泡剤、硬化促進剤、溶剤、蛍光物質(無機物、有機物を含む。)、老化防止剤、ラジカル禁止剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定性改良剤、オゾン老化防止剤、増粘剤、可塑剤、放射線遮断剤、核剤、カップリング剤、導電性付与剤、リン系過酸化物分解剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤が挙げられる。各種添加剤は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0029】
無機蛍光物質としては、例えば、LEDに広く利用されている、イットリウム、アルミニウム、ガーネット系のYAG系蛍光体、ZnS系蛍光体、Y
2O
2S系蛍光体、赤色発光蛍光体、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体が挙げられる。
【0030】
シリコーン樹脂組成物(本発明のシリコーン樹脂組成物)は、貯蔵安定性に優れるという観点から、実質的に水を含まないのが好ましい態様の1つとして挙げられる。本発明において実質的に水を含まないとは、シリコーン樹脂組成物中における水の量が0.1質量%以下であることをいう。
また、シリコーン樹脂組成物は、作業環境性に優れるという観点から、実質的に溶媒を含まないのが好ましい態様の1つとして挙げられる。本発明において実質的に溶媒を含まないとは、シリコーン樹脂組成物中における溶媒の量が1質量%以下であることをいう。
【0031】
シリコーン樹脂組成物(本発明のシリコーン樹脂組成物)は、その製造について特に制限されない。例えば、オルガノポリシロキサンと亜鉛化合物と必要に応じて使用することができる、硬化剤、添加剤とを混合することによって製造することができる。
シリコーン樹脂組成物は、1液型または2液型として製造することが可能である。
【0032】
シリコーン樹脂組成物(本発明のシリコーン樹脂組成物)を適用することができる被着体としては、例えば、金属(例えば、第11族の金属)、ガラス、プラスチック、ゴム、半導体(例えば、半導体発光素子)が挙げられる。シリコーン樹脂組成物から得られるシリコーン樹脂層は被着体と接着することができる。
第11族の金属は、銅、銀および金からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
【0033】
本発明の金属層の腐食防止方法において、第11族の金属から得られる金属層をシリコーン樹脂組成物(本発明のシリコーン樹脂組成物)から得られるシリコーン樹脂層で覆う。
本発明の金属層の腐食防止方法によって、第11族の金属から得られる金属層をシリコーン樹脂組成物(本発明のシリコーン樹脂組成物)から得られるシリコーン樹脂層で覆ったものは、本発明の積層体と同じである。
以下、本発明の金属層の腐食防止方法を説明することによって、本発明の積層体、その製造方法;本発明の半導体発光装置、その製造方法を説明するものとする。
【0034】
本発明の金属層の腐食防止方法において、シリコーン樹脂層は金属層を直接覆ってもよい。また、シリコーン樹脂層と金属層との間に例えば別の透明な層(例えば、樹脂層、ガラス層、空気層)や半導体発光素子を有してもよい。
本発明の金属層の腐食防止方法において、金属層をシリコーン樹脂層で覆う方法は特に制限されない。例えば、金属層にシリコーン樹脂組成物を付与し、シリコーン樹脂組成物が付与された金属層を加熱および/または光照射をしてシリコーン樹脂組成物を硬化させてシリコーン樹脂層とし、積層体(本発明の積層体)を得る方法が挙げられる。
【0035】
本発明の金属層の腐食防止方法(本発明の積層体、本発明の半導体発光装置)において、シリコーン樹脂組成物を金属層に付与する方法は特に制限されない。例えば、ディスペンサーを使用する方法、ポッティング法、スクリーン印刷、トランスファー成形、インジェクション成形が挙げられる。
【0036】
本発明の金属層の腐食防止方法(本発明の積層体、本発明の半導体発光装置)において、シリコーン樹脂組成物を加熱する際の温度は、硬化性(例えば、密閉系内における硬化性)、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスに優れ、硬化時間、可使時間を適切な長さとすることができ、縮合反応による副生成物であるアルコールが発泡するのをより抑制でき、硬化物のクラックを抑制でき、硬化物の平滑性、成形性、物性に優れるという観点から、80℃〜150℃付近で硬化させるのが好ましく、150℃付近がより好ましい。
【0037】
本発明の金属層の腐食防止方法(本発明の積層体、本発明の半導体発光装置)において、シリコーン樹脂組成物を光照射で硬化させる場合用いる光は特に制限されない。例えば、紫外線、電子線が挙げられる。
【0038】
本発明の金属層の腐食防止方法(本発明の積層体、本発明の半導体発光装置)において、硬化は、硬化性、透明性に優れるという観点から、実質的に無水の条件下で行うことができる。本発明において、硬化が実質的に無水の条件下でなされるとは、加熱および/または光照射における環境の大気中の湿度が10%RH以下であることをいう。
【0039】
本発明の金属層の腐食防止方法(本発明の積層体、本発明の半導体発光装置)において使用されるシリコーン樹脂組成物(本発明のシリコーン樹脂組成物)は、
前記金属層の上に前記シリコーン樹脂組成物を厚さ1mmに付与し硬化させて、前記金属層とシリコーン樹脂層とを有する積層体とし、
前記積層体を560ppmの硫化水素ガス中に23℃の条件下で置く耐硫化試験を行い、前記耐硫化試験の前および前記耐硫化試験開始から24時間後における、前記積層体の分光反射率を分光反射率計を用いて測定し、前記分光反射率を式[分光反射率維持率=耐硫化試験後の分光反射率/耐硫化試験前の分光反射率×100]に当てはめ算出される分光反射率維持率が80%以上であるのが好ましい。
【0040】
本発明において分光反射率維持率は以下の方法で測定された。
<積層体の作製>
すなわち、まず、前記金属層の上に前記シリコーン樹脂組成物を厚さ1mmに付与し十分に硬化させて、前記金属層とシリコーン樹脂層とを有する積層体とした。なお同じ積層体のサンプルを2つ作製した。積層体の硬化は、シリコーン樹脂組成物が加熱硬化型である場合、または熱ラジカル開始剤を含有する場合は、150℃の条件下で3時間加熱するとする。シリコーン樹脂組成物が光照射で硬化する場合、その硬化は高圧水銀灯照射条件下で積算光量8,000mJ/cm
2で光照射をするとする。シリコーン樹脂組成物がカチオン重合で重合する場合、その硬化は150℃の条件下で3時間加熱するとする。
<耐硫化試験>
次に、サンプルのうちの1つの積層体を用いて、これを560ppmの硫化水素ガス中に23℃の条件下で置く耐硫化試験を行った。
耐硫化試験の詳細は以下のとおりである。
耐硫化試験:10Lのデシケーターの底に粉状に粉砕した硫化鉄を10g程度(塩酸0.5mmolに対して大過剰)を置き、この硫化鉄の上方に、硫化鉄に接触しないように目皿(貫通孔を有する)をデシケーター内に取り付け、この目皿の上に積層体(硬化後のサンプル)を置いた。次に、大過剰の硫化鉄に0.5mmolの塩酸を滴下することにより、0.25mmolの硫化水素(濃度:560ppm)を発生させた(反応式:FeS+2HCl→FeCl
2+H
2S)。
本発明において耐硫化試験での硫化水素の濃度は理論値であるものとする。耐硫化試験では塩酸を0.5mmol添加しているので硫化水素は0.25mmol(0.25mmol×22.4リットル=5.6ミリリットル)生成する。故に硫化水素の濃度は
[5.6ミリリットル/10リットル(デシケータの容積)]×10
6=560ppm
となる。
<分光反射率の測定>
そして、前記耐硫化試験の前および前記耐硫化試験開始(硫化水素の発生開始)から24時間後における、前記積層体の分光反射率を分光反射率計を用いて測定した。
<評価方法>
得られた、耐硫化試験後の分光反射率および耐硫化試験前の分光反射率を式[分光反射率維持率=(耐硫化試験後の分光反射率/耐硫化試験前の分光反射率)×100]に当てはめて分光反射率維持率を算出した。
算出された分光反射率維持率が80%以上である場合、耐硫化性が良好であると評価した。
【0041】
本発明において、金属層の変色による耐硫化性の評価は以下のように行われた。
まず、分光反射率維持率の測定と同様に、積層体を作製し、耐硫化試験を行った。耐硫化試験開始から24時間後における、シリコーン樹脂層でおおわれた金属層の変色を目視で確認した。
耐硫化試験開始から24時間後において、耐硫化試験をした積層体の金属層の面が、耐硫化試験をしていない積層体と比べて変色しなかったものを「○」、変色したものを「×」とした。
【0042】
シリコーン樹脂組成物(本発明のシリコーン樹脂組成物)を用いて得られる硬化物[シリコーン樹脂層、封止材](硬化物の厚さが2mmである場合)は、JIS K0115:2004に準じ紫外・可視吸収スペクトル測定装置(島津製作所社製、以下同様。)を用いて波長400nmにおいて測定された透過率が、80%以上であるのが好ましく、85%以上であるのがより好ましい。
【0043】
また、シリコーン樹脂組成物を用いて得られる硬化物[シリコーン樹脂層、封止材]は、初期硬化の後耐熱試験[初期硬化後の硬化物(厚さ:2mm)を100℃の条件下に500時間置く試験]を行いその後の硬化物について、JIS K0115:2004に準じ紫外・可視スペクトル測定装置を用いて波長400nmにおいて測定された光透過率が、80%以上であるのが好ましく、85%以上であるのがより好ましい。
【0044】
シリコーン樹脂組成物を用いて得られる硬化物[シリコーン樹脂層、封止材]は、その光透過性保持率(耐熱試験後の光透過率/初期硬化の際の光透過率×100)が、70〜100%であるのが好ましく、80〜100%であるのがより好ましい。
【0045】
シリコーン樹脂組成物(本発明のシリコーン樹脂組成物)は、例えば、接着剤、プライマー、封止材(例えば、半導体発光装置用)として使用することができる。シリコーン樹脂組成物(本発明のシリコーン樹脂組成物)を適用することができる半導体発光素子としては、例えば、発光ダイオード(LED)、有機電界発光素子(有機EL)、レーザーダイオード、LEDアレイが挙げられる。LEDチップの種類としては、例えば、ハイパワーLED、高輝度LED、汎用輝度LEDが挙げられる。
また、シリコーン樹脂組成物(本発明のシリコーン樹脂組成物)は、例えば、ディスプレイ材料、光記録媒体材料、光学機器材料、光部品材料、光ファイバー材料、光・電子機能有機材料、半導体集積回路周辺材料等の用途に用いることができる。
【0046】
本発明の積層体について以下に説明する。
本発明の積層体は、
第11族の金属から得られる金属層と、
本発明のシリコーン樹脂組成物を用いて得られるシリコーン樹脂層とを有する積層体である。
【0047】
本発明の積層体に使用されるシリコーン樹脂組成物は本発明のシリコーン樹脂組成物であれば特に制限されない。
本発明の積層体に使用される金属層は本発明の金属層の腐食防止方法に使用される金属層と同じである。
本発明の積層体は、金属層とシリコーン樹脂層との間に半導体発光素子を有するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。半導体発光素子は特に制限されない。例えば、上記と同義のものが挙げられる。
【0048】
本発明の積層体について添付の図面を用いて以下に説明する。
図1は、本発明の積層体の一例を模式的に示す断面図である。
図1において、積層体100は金属層120とシリコーン樹脂層102とを有する。
【0049】
図2は、本発明の積層体の別の一例を模式的に示す断面図である。
図2において、積層体200は金属層220と半導体発光素子203とシリコーン樹脂層202とを有する。積層体200は半導体発光素子203とシリコーン樹脂層202との間にさらに透明な層(図示せず。)を有することができる。透明な層としては、例えば、樹脂層、ガラス層、空気層が挙げられる。
【0050】
本発明の半導体発光装置について以下に説明する。
本発明の半導体発光装置は、
半導体発光素子と、凹部を有する枠体と、封止材とを有し、
前記半導体発光素子は前記凹部の底部に配置され、
前記枠体は前記凹部の側面および/または底面に第11族の金属から得られるリフレクタを備え、
前記封止材は前記半導体発光素子および前記リフレクタを封止し、
前記封止材が、本発明のシリコーン樹脂組成物を用いて得られる半導体発光装置である。
【0051】
本発明の半導体発光装置に使用されるシリコーン樹脂組成物は本発明のシリコーン樹脂組成物であれば特に制限されない。
本発明の半導体発光装置に使用されるリフレクタは本発明の金属層の腐食防止方法に使用される金属層とその材質が同じである。
【0052】
本発明の半導体発光装置について添付の図面を用いて以下に説明する。
図3は、本発明の半導体発光装置の一例を模式的に示す断面図である。
図3において、半導体発光装置300は、半導体発光素子303と、凹部302を有する枠体304と、封止材308とを有し、半導体発光素子303は凹部302の底部(図示せず。)に配置され、枠体304は凹部302の側面および/または底面(図示せず。)に第11族の金属から得られるリフレクタ320を備え、封止材308は半導体発光素子303およびリフレクタ320を封止する。
封止材308は、本発明のシリコーン樹脂組成物を硬化させたものである。凹部302において斜線部306まで本発明のシリコーン樹脂組成物で充填してもよい。または符号308の部分を他の透明な層とし斜線部306を本発明の半導体発光装置が有する封止材とすることができる。封止材は蛍光物質等を含有することができる。
半導体発光装置は1個当たり、1個のまたは複数の半導体発光素子を有することができる。半導体発光素子は発光層(マウント部材と接する面の反対面)を上にして枠体内に配置すればよい。
半導体発光素子303は、枠体304と基板310とから形成される、凹部302の底部(図示せず。)に配置され、マウント部材301で固定されている。
枠体304が有する端部312、314が一体的に結合して、リフレクタが底面、または側面および底部を形成する場合リフレクタの底部の上に半導体発光素子を配置することができる。
リフレクタ320は凹部302の底部(図示せず。)から遠ざかるほど断面寸法が大きくなる、テーパ状の開口端(図示せず。)を有するものとすることができる。
マウント部材としては例えば銀ペースト、樹脂が挙げられる。半導体発光素子303の各電極(図示せず。)と外部電極309とは導電性ワイヤー307によってワイヤーボンディングされている。
【0053】
半導体発光装置300は、凹部302を封止材308、306または302(部分308と部分306とを合わせた部分)で封止することができる。
半導体発光装置をこのように封止することによって、耐硫化性を高めリフレクタ(金属層、特に銀、銀メッキ層)の腐食(例えば、変色。具体的には銀の変色)を抑制することができ、半導体発光装置の輝度や透明性を低下させることがない。
また、凹部を封止材で封止することによって、封止材は低硬度で硬化収縮が小さいため、封止材が硬化収縮によって凹部からのハガレたり、ワイヤーを断線するのを抑制することができる。
【0054】
図4は、本発明の半導体発光装置の別の一例を模式的に示す断面図である。
図4において、半導体発光装置400は
図3に示す半導体発光装置300の上にレンズ401を有する。レンズ401は本発明のシリコーン樹脂組成物を用いて形成されてもよい。
【0055】
図5は、本発明の半導体発光装置の別の一例を模式的に示す断面図である。
図5において、半導体発光装置500は、半導体発光素子503と、凹部(図示せず。)を有する枠体(図示せず。)を含む基板510と、封止材502とを有し、半導体発光素子503は凹部の底部(図示せず。)に配置され、枠体は凹部の側面および/または底面(図示せず。)に第11族の金属から得られるリフレクタ520を備え、封止材502は半導体発光素子503およびリフレクタ520を封止し、ランプ機能を有する樹脂506の内部に基板510、インナーリード505を有し、封止材502が上述のシリコーン樹脂組成物から得られ、耐硫化性を有する半導体発光装置である。
図5において、枠体(図示せず。)と基板510とを一体に形成することができる。
半導体発光素子503は、基板510上にマウント部材501で固定されている。マウント部材としては、例えば、銀ペースト、樹脂が挙げられる。
半導体発光素子503の各電極(図示せず。)はインナーリード505と導電性ワイヤー507によってワイヤーボンディングさせている。
樹脂506を本発明のシリコーン樹脂組成物を用いて形成することができる。
【0056】
本発明のシリコーン樹脂組成物および/または本発明の半導体発光装置をLED表示器に利用する場合について添付の図面を用いて説明する。
【0057】
図6は、本発明のシリコーン樹脂組成物および/または本発明の半導体発光装置を用いたLED表示器の一例を模式的に示す図である。
図6において、LED表示器600は、半導体発光装置601を筐体604の内部にマトリックス状に配置し、半導体発光装置601を封止材606で封止し、筐体604の一部に遮光部材605を配置して構成されている。本発明のシリコーン樹脂組成物を封止材606に使用することができる。また、半導体発光装置601として本発明の半導体発光装置を使用することができる。
【0058】
本発明の半導体発光装置の用途としては、例えば、自動車用ランプ(ヘッドランプ、テールランプ、方向ランプ等)、家庭用照明器具、工業用照明器具、舞台用照明器具、ディスプレイ、信号、プロジェクターが挙げられる。
【実施例】
【0059】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
1.オルガノポリシロキサンの製造
両端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサン(重量平均分子量28,000、商品名ss70、信越化学工業社製)100質量部、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(商品名KBM503、信越化学工業社製)4質量部、および触媒として2−エチルへキサン酸スズ(関東化学社製)0.01質量部を反応容器に入れ、圧力を10mmHg、温度を80℃に保ちながら6時間反応させた。
得られた反応物について
1H−NMR分析を行い、ポリジメチルシロキサンの両末端がメタクリルオキシプロピルジメトキシシリル基であることを確認した。
得られたポリジメチルシロキサンを(A)ポリシロキサン4とする。
(A)ポリシロキサン4の重量平均分子量は、クロロホルムを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算(以下同様)で、35,000であった。
【0060】
2.評価
以下に示す方法で分光反射率維持率、耐硫化性(金属の変色の評価)、透明性を評価した。結果を第1表に示す。
2.1.分光反射率維持率
硬化サンプル作製:銀メッキ上に下記のとおり製造したシリコーン樹脂組成物を厚さ1mm程度になるよう塗布し、シリコーン樹脂組成物を以下の硬化条件で硬化させて、硬化サンプルを作製した。
【0061】
硬化条件
・シリコーン樹脂組成物(ポリシロキサン)がエポキシ基を有する場合:150℃で3時間
・シリコーン組成物が熱ラジカル開始剤を含有する場合:150℃で3時間
【0062】
耐硫化試験:10Lのデシケーターの底に粉状に粉砕した硫化鉄を10g程度(塩酸0.5mmolに対して大過剰)を置き、この硫化鉄の上方に、硫化鉄に接触しないように目皿(貫通孔を有する)をデシケーター内に取り付け、この目皿の上に硬化サンプルを置いた。次に、大過剰の硫化鉄に0.5mmolの塩酸を滴下することにより、0.25mmolの硫化水素(濃度の理論値:560ppm)を発生させた(反応式:FeS+2HCl→FeCl
2+H
2S)。耐硫化試験における温度は23℃とする。
分光反射率の測定:そして、前記耐硫化試験の前および前記耐硫化試験開始(硫化水素の発生開始)から24時間後における、前記積層体の分光反射率を分光反射率計(ウシオ電機社製のURE−30)を用いて475nmの条件で測定した。
評価方法:得られた、耐硫化試験後の分光反射率および耐硫化試験前の分光反射率を式[分光反射率維持率=(耐硫化試験後の分光反射率/耐硫化試験前の分光反射率)×100]に当てはめて分光反射率維持率を算出した。
算出された分光反射率維持率が95%以上である場合を「◎」、80%以上95%未満である場合を「○」、65%以上80%未満である場合を「△」、65%未満である場合を「×」と評価した。
【0063】
2.2.耐硫化性(金属の変色の評価)
まず、分光反射率維持率の測定と同様に、積層体を作製し、耐硫化試験を行った。耐硫化試験開始から24時間後における、シリコーン樹脂層でおおわれた金属層の変色を目視で確認した。
目視により試験開始から24時間後に変色が確認されなかったものを「○」、目視により試験開始から24時間後に変色が確認されたものを「×」とした。
【0064】
2.2.透明性(光透過率評価試験)
光透過率評価試験において、下記のようにして得られたシリコーン樹脂組成物を150℃の条件下で12時間硬化させて得られた初期硬化物、および耐熱試験(初期硬化物をさらに150℃の条件下で10日間加熱する試験。)後の硬化物(いずれも厚さが2mm。)についてそれぞれ、JIS K0115:2004に準じ紫外・可視吸収スペクトル測定装置(島津製作所社製)を用いて波長400nmにおける透過率を測定した。また、耐熱試験後の光透過率の初期の光透過率に対する保持率を下記計算式によって求めた。
光透過率保持率(%)=[(耐熱試験後の光透過率)/(初期の光透過率)]×100
透明性の評価結果として上記のようにして得られた光透明率保持率(%)を第1表に示す。
【0065】
3.シリコーン樹脂組成物の製造
下記第1表に示す成分を同表に示す量(単位:質量部)で用い、これらを真空かくはん機で均一に混合してシリコーン樹脂組成物を製造した。
【0066】
【表1】
【0067】
第1表に示されている各成分の詳細は以下のとおりである。
・ポリシロキサン1:x−22−163C(エポキシ変性シリコーン、信越化学社製)、重量平均分子量5,400、平均官能基数2個
・ポリシロキサン2:X−22−169B(エポキシ変性シリコーン、信越化学社製)、重量平均分子量3,400、平均官能基数2個
・ポリシロキサン3:x−22−161A(アミノ変性シリコーン、信越化学社製)、重量平均分子量1,600、平均官能基数2個
・ポリシロキサン4:上記のとおり製造したメタクリル化シリコーン、重量平均分子量35,000、平均官能基数2個
・ポリシロキサン5:KF−2001(メルカプト変性シリコーン、信越化学社製)、重量平均分子量6,000、平均官能基数3個
・ポリシロキサン6:x−22−3701E(カルボキシル変性シリコーン、信越化学社製)、重量平均分子量30,000、平均官能基数7個
・ポリシロキサン7:DMS−Z21(両末端無水コハク酸変性シリコーン、Gelest社製)、下記構造式で表されるポリシロキサン、重量平均分子量700、平均官能基数2個
【化3】
・(B)亜鉛金属化合物1:亜鉛錯体、Znビスアセチルアセトナート(関東化学製)
・(B)亜鉛金属化合物2:亜鉛塩、ビス(エチルヘキサン酸)Zn、(ホープ製薬製)
・(E)アルミ化合物:Alアセチルアセトナート
・(E)マグネシウム化合物:ビス(2−エチルヘキサン酸)Mg(商品名:ニッカオクチックスマグネシウム、日本化学産業社製)
・ラジカル開始剤:熱ラジカル開始剤、化合物名1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、商品名パーオクタO(日油社製)
・アミン化合物:特殊アミン、サンアプロ社製
【0068】
4.結果
第1表に示す結果から明らかなように、亜鉛化合物を含有しない比較例1〜7の組成物を用いて得られたシリコーン樹脂層で覆われた、第11族の金属から得られる金属層は、変色してしまい耐硫化性が低かった。
これに対して、
参考例1、実施例1〜
6の組成物を用いて得られたシリコーン樹脂層で覆われた、第11族の金属から得られる金属層は、変色がなく耐硫化性が高い。また、
参考例1、実施例1〜
6の組成物を用いて得られたシリコーン樹脂層は透明性に優れた。
また、
参考例1、実施例1〜
6の組成物を用いて得られたシリコーン樹脂層について目視で状態を確認したところ、シリコーン樹脂層にクラックの発生はなかった。
また、分光反射率維持率の評価で使用された硬化サンプルのシリコーン樹脂層の厚さを1mmから0.8mmに代えたほかは
参考例1、実施例1〜
6と同様にして分光反射率維持率を評価した場合も
参考例1、実施例1〜
6と同様の結果が得られた。
【0069】
このように、本発明の金属層の腐食防止方法によれば、金属層の腐食(例えば、変色)を抑制することができるので、金属層の腐食による例えば金属層の光反射性を経時的に維持して光源(例えば半導体発光装置)の輝度が低下するのを抑制することができる。また、本発明の金属層の腐食防止方法において得られるシリコーン樹脂層は透明性に優れ、例えば光源の輝度を低下させることがない。また、本発明の金属層の腐食防止方法において得られるシリコーン樹脂層は、硬さが適切でクラックが発生しにくく、例えば半導体発光装置内のワイヤー等を断線させることがない。
本発明の積層体、本発明の半導体発光装置、本発明のシリコーン樹脂組成物は、本発明の金属層の腐食防止方法と同様の効果を達成することができる。