特許第5728869号(P5728869)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5728869
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】コンベヤベルト
(51)【国際特許分類】
   B65G 15/32 20060101AFI20150514BHJP
   B65G 15/42 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   B65G15/32
   B65G15/42 Z
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-214916(P2010-214916)
(22)【出願日】2010年9月27日
(65)【公開番号】特開2012-66926(P2012-66926A)
(43)【公開日】2012年4月5日
【審査請求日】2013年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴宏
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−218413(JP,A)
【文献】 特開2001−050351(JP,A)
【文献】 特開平10−324408(JP,A)
【文献】 特開平11−091975(JP,A)
【文献】 実開平04−125226(JP,U)
【文献】 特開2001−354314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G15/30−15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上カバーゴム層と下カバーゴム層とを有し、前記上カバーゴム層と前記下カバーゴム層とのゴム質が互いに異なり、前記下カバーゴム層を構成するゴム組成物に配合されるオイル量が前記上カバーゴム層を構成するゴム組成物に配合されるオイル量よりも多いコンベヤベルトにおいて、
前記上カバーゴム層と前記下カバーゴム層の少なくとも一方の表面に、この表面から突出する高さ1.0mm以下の突部を一体化して設けると共に、前記コンベヤベルトを平坦な状態にして前記上カバーゴム層と前記下カバーゴム層とを重ねた際に、重なった全面積に対する互いの表面同士が接触する面積の割合が30%以下であることを特徴とするコンベヤベルト。
【請求項2】
前記突部が、少なくともベルト長手方向へ延びる複数の突条を有する請求項1に記載のコンベヤベルト。
【請求項3】
前記突部が、少なくとも複数の突起を有する請求項1に記載のコンベヤベルト。
【請求項4】
前記突部が、該突部が設けられたカバーゴム層と同じゴム組成物から形成されている請求項1〜3のいずれかに記載のコンベヤベルト。
【請求項5】
前記突部が、該突部が設けられたカバーゴム層と異なるゴム組成物又は樹脂から形成されている請求項1〜3のいずれかに記載のコンベヤベルト。
【請求項6】
上カバーゴム層と下カバーゴム層とを有し、前記上カバーゴム層と前記下カバーゴム層とのゴム質が互いに異なり、前記下カバーゴム層を構成するゴム組成物に配合されるオイル量が前記上カバーゴム層を構成するゴム組成物に配合されるオイル量よりも多いコンベヤベルトにおいて、
前記上カバーゴム層と前記下カバーゴム層の少なくとも一方の表面に、この表面が平坦になるようにバリア層を一体化して設けると共に、前記コンベヤベルトを平坦な状態にして前記上カバーゴム層と前記下カバーゴム層とを重ねた際に、重なった全面積に対する互いの表面同士が接触する面積の割合が30%以下であることを特徴とするコンベヤベルト。
【請求項7】
前記バリア層が、ゴム100重量部に対して超高分子量ポリエチレン5〜30重量部を含有するゴム組成物からなる請求項6に記載のコンベヤベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンベヤベルトに関し、更に詳しくは、梱包及び開梱作業を繁雑にすることなく、ロール状に巻いたときに上下のカバーゴム層間における配合物の移行を抑えることができるコンベヤベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
コンベヤベルトを輸送、保管するときには、コンベヤベルトをドラムの周りにロール状に巻き付けた状態で梱包するのが一般的である(例えば特許文献1を参照)。このとき、コンベヤベルトの上カバーゴム層と下カバーゴム層とが広範囲で接触するため、両者のゴム質が異なっていると、ゴム組成物中の配合物が一方から他方へ移行して、カバーゴム層の性質や形状が変化してしまうという問題があった。
【0003】
例えば、上カバーゴム層に、張力及び抗引き裂き性などの物理的性能や耐摩耗性に優れた天然ゴムを主成分とするゴム組成物を、下カバーゴム層に、天然ゴムとの粘着性が低いスチレンブタジエンゴム(SBR)などの合成ゴム組成物を、それぞれ用いたコンベヤベルトがある。このコンベヤベルトでは、SBRなどの合成ゴム組成物からなる下カバーゴム層では、加工性を向上するために配合されるオイルの量が、上カバーゴム層のゴム組成物よりも多くなっている。このようなコンベヤベルトをロール状に巻くと、下カバーゴム層から上カバーゴム層へオイルが移行して、上カバーゴム層の物理的性能の低下や、上カバーゴム層の膨張によるコンベヤベルトの変形を招くことがある。
【0004】
このような問題を解決するには、コンベヤベルト間に織布などを挟んでロール状に巻くことにより、カバーゴム層間の配合物の移行を妨げることが考えられるが、梱包及び開梱時の作業が煩雑になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−298568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、梱包及び開梱作業を繁雑にすることなく、ロール状に巻いたときに上下のカバーゴム層間における配合物の移行を抑えることができるコンベヤベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する第1発明のコンベヤベルトは、上カバーゴム層と下カバーゴム層とを有し、前記上カバーゴム層と前記下カバーゴム層とのゴム質が互いに異なり、前記下カバーゴム層を構成するゴム組成物に配合されるオイル量が前記上カバーゴム層を構成するゴム組成物に配合されるオイル量よりも多いコンベヤベルトにおいて、前記上カバーゴム層と前記下カバーゴム層の少なくとも一方の表面に、この表面から突出する高さ1.0mm以下の突部を一体化して設けると共に、前記コンベヤベルトを平坦な状態にして前記上カバーゴム層と前記下カバーゴム層とを重ねた際に、重なった全面積に対する互いの表面同士が接触する面積の割合が30%以下であることを特徴とするものである。
【0008】
また、上記の目的を達成する第2発明のコンベヤベルトは、上カバーゴム層と下カバーゴム層とを有し、前記上カバーゴム層と前記下カバーゴム層とのゴム質が互いに異なり、前記下カバーゴム層を構成するゴム組成物に配合されるオイル量が前記上カバーゴム層を構成するゴム組成物に配合されるオイル量よりも多いコンベヤベルトにおいて、前記上カバーゴム層と前記下カバーゴム層の少なくとも一方の表面に、この表面が平坦になるようにバリア層を一体化して設けると共に、前記コンベヤベルトを平坦な状態にして前記上カバーゴム層と前記下カバーゴム層とを重ねた際に、重なった全面積に対する互いの表面同士が接触する面積の割合が30%以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
第1及び第2発明のコンベヤベルトによれば、ロール状に巻いた場合に、上カバーゴム層と下カバーゴム層との間に、所定の仕様の突部又はバリア層が介在するので、両者の接触面積が小さくなるため配合物の移行を抑えることができる。また、コンベヤベルトをロール状に巻き取る際に織布などを用いる必要がないため、梱包及び開梱作業が煩雑になることはない。
【0010】
上記の突部は、少なくともベルト長手方向へ延びる複数の突条、又は複数の突起を有することが望ましい。そのようにすることで、突部をカバーゴム層と一体化して容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1発明の実施形態からなるコンベヤベルトの斜視図である。
図2図1のコンベヤベルトをロール状に巻いた状態を示す側面図である。
図3図1のコンベヤベルトの別の例の斜視図である。
図4】第1発明の別の実施形態からなるコンベヤベルトの斜視図である。
図5図4のコンベヤベルトの別の例の斜視図である。
図6】第2発明の実施形態からなるコンベヤベルトの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、第1及び第2発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、第1発明の実施形態からなるコンベヤベルトを示す。
【0014】
このコンベヤベルト1Aは、運搬物が載置される上カバーゴム層2と、ベルトコンベヤのプーリーに接触する下カバーゴム層3とで芯体4を挟持した構造を有している。なお、複数の芯体4を中間ゴム層を介して積層する場合もある。上カバーゴム層2と下カバーゴム層3とは、配合物の種類や量が互いに異なるゴム組成物から形成されている。配合物としては、ゴムの他に、コンベヤベルトの要求品質に応じた種々のゴム薬品、例えば、カーボン、老化防止剤、加工助剤、オイル、加硫剤及び加硫促進剤などが適宜使用される。
【0015】
上カバーゴム層2と下カバーゴム層3の少なくとも一方の表面には、高さが1.0mm以下であってベルト長手方向へ延びる複数の突条5が一体化して設けられている。突条5の高さが1.0mm超になると、上カバーゴム層2では運搬物の障害になり、下カバーゴム層3ではプーリーを乗り越えるときに異常振動を発生する。
【0016】
更に、突条5は、コンベヤベルト1Aを平坦な状態にして上カバーゴム層2と下カバーゴム層3とを重ねた際に、重なった全面積に対する互いの表面同士が接触する面積の割合が30%以下となるような仕様になっている。この面積の割合が30%超になると、上カバーゴム層2と下カバーゴム層3とが直接に接触する面積が大きくなって、配合物の移行を抑える効果が不十分になる。
【0017】
突条5の本数及び位置については、限定するものではないが、図1のように、少なくとも3本の突条5をベルト幅方向の中心部及び両端部にそれぞれ配置したものが好ましく例示される。このような突条5は、コンベヤベルト1Aの成形時において、金型を用いて一体的に形成することができる。従って、突条5は、それが設けられたカバーゴム層2、3と異なるゴム組成物から形成することも可能ではあるが、製造を容易にする観点からは、同じゴム組成物から形成することが望ましい。
【0018】
このコンベヤベルト1Aを、図2に示すように、ドラム6の周りにロール状に巻いた場合には、上カバーゴム層2と下カバーゴム層3との間に突条5が介在するので、両者の接触面積が小さくなるため配合物の移行を抑えることができる。また、コンベヤベルト1Aをロール状に巻き取る際に、織布などを用いる必要がないため梱包及び開梱作業が煩雑になることはない。
【0019】
更に、図3に示すように、ベルト幅方向へ延びる突条7を、ベルト長手方向に所定の間隔で設けることで、上カバーゴム層2と下カバーゴム層3との接触面積を更に小さくすることができる。
【0020】
図4は、第1発明の別の実施形態からなるコンベヤベルトを示す。
このコンベヤベルト1Bは、上記の実施形態に係るコンベヤベルト1Aにおける突条5、7の代わりに、高さが1.0mm以下の複数の突起8を一体化して設けたものである。突起8は、コンベヤベルト1Bを平坦な状態にして上カバーゴム層2と下カバーゴム層3とを重ねた際に、重なった全面積に対する互いの表面同士が接触する面積の割合が30%以下となるような仕様になっている。
【0021】
突起8の形状及び配置については、限定するものではないが、図4のように、球欠状の突起8を千鳥状に配置したものや、図5のように、トラフ性を損なわないために、ベルト幅方向に向けて高さ及び/又は体積を小さくした球欠状の突起8を長手方向に間欠的に配置したものが好ましく例示される。
【0022】
図6は、第2発明の実施形態からなるコンベヤベルトを示す。
【0023】
このコンベヤベルト1Cは、上カバーゴム層2と下カバーゴム層3の少なくとも一方の表面に、その表面が平坦になるようにバリア層9を一体化して設けたものである。バリア層9は、コンベヤベルト1Cを平坦な状態にして上カバーゴム層2と下カバーゴム層3とを重ねた際に、重なった全面積に対する互いの表面同士が接触する面積の割合が30%以下となるような総面積を有している。
【0024】
バリア層9の形状及び配置は、更に限定するものではないが、図6のように、ベルト幅方向の中央部及び両端部に、ベルト長手方向に延びるように配置したものが好ましく例示される。
【0025】
このようなバリア層9を設けることで、コンベヤベルト1Cをロール状に巻いた場合には、上カバーゴム層2と下カバーゴム層3との間にバリア層9が介在するので、両者の接触面積が小さくなるため配合物の移行を抑えることができる。また、コンベヤベルト1Cをロール状に巻き取る際に、織布などを用いる必要がないため梱包及び開梱作業が煩雑になることはない。
【0026】
バリア層9としては、超高分子量ポリエチレン又はフッ素樹脂フィルムを用いることが望ましい。その場合のバリア層9の形成方法としては、フィルム状にしたものをカバーゴム層2、3の表面に埋め込んで加硫接着する方法が例示される。
【0027】
また、超高分子量ポリエチレンの場合には、カバーゴム層2、3の表面に超高分子量ポリエチレンを含有するゴム層を加硫させることもできるが、その場合には超高分子量ポリエチレンをゴム100重量部に対して5〜30重量部を含有させるのがよい。このように超高分子量ポリエチレンを含有させることで、超高分子量ポリエチレンがカバーゴム層2、3の表面に移行して、配合物の移行を阻止するバリア層9を形成すると共に、カバーゴム層2、3の表面の摩擦抵抗が小さくなって、コンベアベルト1Cの梱包及び開梱作業を容易にすることができる。
【0028】
超高分子量ポリエチレンの含有量が5重量部未満になると、超高分子量ポリエチレンのゴム層の表面への移行が少なくなってバリア層9が十分に形成されないため、配合物の移行を抑える効果が低くなる。また、含有量が30重量部超になると、加工中にゴムの焼けが発生しやすくなる。
【0029】
なお、更に脂肪酸アミドを5〜10重量部及び不飽和脂肪酸金属塩を5〜10重量部、それぞれ含有させることにより、バリア層9が容易かつ確実に形成されるようになると共に、カバーゴム層2、3の表面の摩擦抵抗を更に小さくすることができる。
【符号の説明】
【0030】
1A、1B、1C コンベヤベルト
2 上カバーゴム層
3 下カバーゴム層
4 芯体
5 (長手方向の)突条
6 ドラム
7 (幅方向の)突条
8 突起
9 バリア層
図1
図2
図3
図4
図5
図6