特許第5728870号(P5728870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5728870
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01F 29/12 20060101AFI20150514BHJP
   A01D 69/00 20060101ALI20150514BHJP
   A01F 12/40 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   A01F29/12 Z
   A01D69/00 302Z
   A01F12/40 302Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-218068(P2010-218068)
(22)【出願日】2010年9月29日
(65)【公開番号】特開2012-70668(P2012-70668A)
(43)【公開日】2012年4月12日
【審査請求日】2013年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】里路 久幸
【審査官】 青山 玲理
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−322373(JP,A)
【文献】 特開平10−243732(JP,A)
【文献】 特開2009−148184(JP,A)
【文献】 特開平09−065754(JP,A)
【文献】 実開昭60−022124(JP,U)
【文献】 特開平09−098641(JP,A)
【文献】 特開2004−065246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/00−69/12
A01F 3/00−29/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀装置(3)の前方に刈取装置(4)を備え、脱穀装置(3)の後部に脱穀後の排藁を切断処理する排藁細断装置(7)を備えたコンバインにおいて、前記排藁細断装置(7)の下部に左右側部のサイドカバー(9a,9b)と後部のリアカバー(9c)とからなる切断藁排出案内用のガイドカバー(9)を設け、該ガイドカバー(9)の下端に形成された切断藁の排出口(10)部の左右及び後側に、該排出口(10)から圃場面に近接する高さ位置までを覆う防塵カバー(11)を設け、刈取装置(4)及び脱穀装置(3)の駆動状態では、前記防塵カバー(11)の下端部が圃場面近くまで自動的に下降し、刈取装置(4)及び脱穀装置(3)の非駆動状態では、前記防塵カバー(11)の下端部が自動的に上昇するように連係する制御装置(27)を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記防塵カバー(11)を可撓性部材から形成し、該防塵カバー(11)の下端部に複数の切込み(15)を設けた請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記防塵カバー(11)が下降する下限位置を設定できるカバー下限設定ダイヤル(36)を設けた請求項1又は請求項2記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンバインの脱穀装置には、脱穀後の排稈を細かく切断処理した後、圃場に放出する排藁細断装置を設けている。例えば、特許文献1には、脱穀後の排藁を切断処理する排藁細断装置において、カッタ部の下方に、左右の側面カバーと背面カバーとからなり、これらの上下方向中間部位から外方に折り曲げ可能な切断藁排出用のガイドカバーを設けた構成のものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−322373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1記載の技術は、ガイドカバーの下端排出口が地面より比較的上方に高く位置しているため、排藁の切断時に発生する塵埃が多量に飛散し、作業環境の悪化を招く問題があった。
【0005】
本発明の課題は、排藁細断装置によって発生する塵埃の巻き上がりを防ぎ、良好な作業環境を維持しながら刈取収穫作業を行えるコンバインを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
【0007】
すなわち、請求項1記載の発明は、脱穀装置(3)の前方に刈取装置(4)を備え、脱穀装置(3)の後部に脱穀後の排藁を切断処理する排藁細断装置(7)を備えたコンバインにおいて、前記排藁細断装置(7)の下部に左右側部のサイドカバー(9a,9b)と後部のリアカバー(9c)とからなる切断藁排出案内用のガイドカバー(9)を設け、該ガイドカバー(9)の下端に形成された切断藁の排出口(10)部の左右及び後側に、該排出口(10)から圃場面に近接する高さ位置までを覆う防塵カバー(11)を設け、刈取装置(4)及び脱穀装置(3)の駆動状態では、前記防塵カバー(11)の下端部が圃場面近くまで自動的に下降し、刈取装置(4)及び脱穀装置(3)の非駆動状態では、前記防塵カバー(11)の下端部が自動的に上昇するように連係する制御装置(27)を設けたことを特徴とするコンバインとした。
【0008】
防塵カバー(11)は、ガイドカバー(9)の下端の排出口(10)から圃場面に近接する位置までを覆うため、切断藁の飛散がなくなり、特に、この防塵カバー(11)によって藁屑や埃の浮遊を確実に阻止することができる。
【0009】
刈取作業開始時に刈取脱穀クラッチを入りにすると、刈取装置(4)及び脱穀装置(3)が駆動すると共に、防塵カバー(11)の下端部が圃場面近くまで自動的に下降し、刈取脱穀クラッチを切りにすると、刈取装置(4)及び脱穀装置(3)の駆動が停止し、同時に防塵カバー(11)の下端部が上方に高く上昇移動する。
【0010】
刈取作業時には防塵カバー(11)の下端部を下方に下げて防塵効果を発揮するものでありながら、非刈取作業時には自動的に防塵カバー(11)の下端部を上げるので、畦超えや路上走行時等に防塵カバー(11)の下端が地面からの突出物や障害物に引っ掛って損傷されることがなくなる。
【0011】
請求項記載の発明は、前記防塵カバー(11)を可撓性部材から形成し、該防塵カバー(11)の下端部に複数の切込み(15)を設けた請求項1記載のコンバインとした。
【0012】
防塵カバー(11)が可撓性部材によるため、圃場面に接地させても圃場面の凹凸に対し滑らかに追従する。
【0013】
しかも、防塵カバー(11)の下端部には複数の切込み(15)が施されているので、左右方向の凹凸変化にも十分に対応できてシール性が向上し、防塵効果を高めることができる。
【0014】
請求項記載の発明は、前記防塵カバー(11)が下降する下限位置を設定できるカバー下限設定ダイヤル(36)を設けた請求項1又は請求項2記載のコンバインとした。
【0015】
カバー下限設定ダイヤル(36)を設けることで、圃場条件に応じて、防塵カバー(11)が下降する下限位置を任意に設定できる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、防塵カバー(11)は、ガイドカバー(9)の下端排出口(10)から圃場面に近接する位置までを覆う状態に設けられているため、切断藁が妄りに飛散することがなく、この防塵カバー(11)によって藁屑や埃の浮遊を確実に阻止することができ、衛生的な作業環境のもとに作業を続行することができる。
【0017】
また、刈取作業開始時に、刈取装置(4)及び脱穀装置(3)を駆動状態にすると、防塵カバー(11)の下端部が圃場面近くまで自動的に下降し、刈取装置(4)及び脱穀装置(3)を非駆動状態にすると、防塵カバー(11)の下端部が上方に高く上昇移動するので、刈取作業時には防塵カバー(11)の下端部を下方に下げて防塵効果を発揮するものでありながら、非刈取作業時には防塵カバー(11)の下端部を自動的に上げることによって、畦超えや路上走行時等に防塵カバー(11)の下端が地面からの突出物や障害物に引っ掛って損傷を招くことがない。
【0018】
請求項記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加え、防塵カバー(11)を可撓性部材で形成することによって、圃場面に接地させても圃場面の凹凸に順応し、しかも、防塵カバー(11)の下端部の切込み(15)によって、左右方向の凹凸変化にも十分に対応できてシール性が向上し、防塵効果を高めることができる。
【0019】
請求項記載の発明によれば、上記請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加え、カバー下限設定ダイヤル(36)を設けることで、圃場条件に応じて、防塵カバー(11)が下降する下限位置を任意に設定できる。
【0020】
これによって、防塵カバー(11)が圃場面に過大に接触することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】コンバインの側面図
図2】コンバインの背面図
図3】コンバインの平面図
図4】同上要部の背面図
図5】コンバイン要部の側面図
図6】コンバイン要部の背面図
図7】コンバイン要部の平面図
図8】コンバイン要部の側面図
図9】制御ブロック回路図
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1図3は、コンバイン要部の構成例を示すものであり、この走行車体1には、左右一対の走行クローラ2,2を備え、後部に搭載した脱穀部(脱穀装置)3の前方部に刈取部(刈取装置)4を設置し,脱穀部3の横側部には運転席5や操作ボックス6等からなる運転操作部を備え、更に、その運転操作部の後方には脱穀粒を一時的に貯留するグレンタンクGを装備している。また、脱穀部3の後部には脱穀後の排藁を切断処理する排藁細断装置7を装備している。
【0023】
排藁細断装置7のカッタケース8の下部には、左右のサイドカバー9a,9bと後部のリアカバー9cとの3面カバーからなる切断藁排出用のガイドカバー9が設けられている。ガイドカバー9の下端は、平面視で矩形状の排出口(以下に下端排出口とも云う)10が形成された構成になっている。
【0024】
前記ガイドカバー9の下端排出口10の左右及び後側には、該排出口から圃場面に近接する高さ位置まで覆うことのできる可撓性を有したシート状の防塵カバー11が吊り下げ状態にして設けられている。防塵カバー11は、左右の側面カバー11a,11bと背面カバー11cの3面体からなり、各カバー11a,11b,11cの上部には、巻き上げ可能な巻取リール12が設けられ、各カバーを上方に巻き上げたり、下方に吊り下げたりすることができるようになっている。各カバー11a,11b,11cの下端には丸パイプ状の重錘12が設けられている。上記構成によると、防塵カバー11下端の対地高さが任意に調整することができ、また、上方に巻取り収納することもできる。
【0025】
なお、前記防塵カバー11の内、左右の側面カバー11a,11bは、少なくとも走行クローラ2と側面視で前後方向にオーバラップする状態位置まで前方に延長することで、側面カバーとクローラ2との間に隙間がなくなり、埃の吹出しがなくなる。
【0026】
また、防塵カバー11は、図2の背面図及び図3の平面図でも示されているように、排藁細断装置7部を含むコンバインの機体横方向全幅に渡って覆うように幅広くし、カッタ部からの埃の吹き出しを防止するようにしている。
【0027】
図5図7に示す防塵カバー11は、左右及び後部の3面カバー下端が圃場面近くから上方外方に向けて開くように構成されたものであり、その3面カバーのうち、左右の側面カバー11a,11bは前後方向の前後軸17を支点として左右及び上下に揺動開閉し、背面カバー11cは左右横方向の横軸18を支点として前後及び上下に揺動開閉するようになっている。これら前後軸17及び横軸18は、駆動モータ19からギヤ伝動機構20、ベベルギヤ機構21,21を介して回転駆動可能に軸架されていて各カバーと一体的に回動するようになっている。 図例(図5図7)の防塵カバー11は、下端側のみフレキシブルなシート部材とし、所定間隔おきに切込み(切れ目)15を設けた構成としている。この数個の切込みによって、圃場面の凹凸に対する追従性が良くなり、防塵効果が向上する。
【0028】
なお、排藁細断装置7は、図7に示すように、防塵カバー11と共に上下方向の縦軸22芯回りに揺動開閉するようになっており、カッタ部のメンテナンスが容易に行える。
刈取部4及び脱穀部3が駆動されている状態では、防塵カバー11の下端部が圃場面近くまで下降し、刈取脱穀部の非駆動状態では防塵カバー11の下端部が上方に高く上昇移動するように連動構成している。つまり、刈取作業開始時に刈脱クラッチレバー24の操作によって刈取脱穀クラッチを入り(ON)にすると、刈取部4及び脱穀部3が駆動されると共に、刈取クラッチ検出センサ25、脱穀クラッチ検出センサ26の検出結果に基づき、制御装置27から出力される駆動モータ19の回転駆動によって防塵カバー11の下端部が圃場面近くまで自動的に下降し、刈取脱穀クラッチを切り(OFF)にすると、刈取脱穀部の駆動が停止し、同時に、駆動モータ19により防塵カバー11の下端部が上方に高く上昇移動するよう制御可能に連動構成されている(図9参照)。なお、上記構成において、刈取脱穀クラッチON時、車速検出センサ31により車速を検出すると、防塵カバー11が下方に移動するよう構成することもできる。
【0029】
また、刈取部又は脱穀部の穀稈搬送経路に設けられた穀稈検出センサ28が穀稈の存在を検出すると、防塵カバー11の下端部が圃場面近くまで自動下降し、穀稈検出センサ28が穀稈の不存在を検出すると、防塵カバーの下端部が上方に高く上昇移動するように連動構成している。要するに、上記穀稈検出センサ28が穀稈の存否により刈取作業状態であるか否かを検出し、そして、その検出結果に基づき、駆動モータ19の駆動によって防塵カバー11の下端が自動的に上下動するようになっている。
【0030】
機体後進時には、変速レバー29の操作で後進制御に切り替えると、後進検出センサ30がそれを検出し、駆動モータ19の駆動により防塵カバー11の下端が上方に上昇移動するように構成しておくと、障害物との干渉を避けることができる。
【0031】
また、刈取作業中での機体停止時には、車速検出センサ31の検出結果に基づき、駆動モータ19を駆動し、防塵カバーの下端が上昇移動するように構成することもできる。これによると、刈取作業中機体停止時でもカッタ部に排藁が遅れて移送されてくるので、防塵カバーが下がっていると切断藁が早期に堆積し詰まる恐れがあるが、本例では防塵カバーが上昇退避するので、かかる問題点を解消することができる。
【0032】
副変速装置(図示省略)が路上走行等の高速走行を行う走行位置に操作されている場合には、副変速位置検出センサ32により非刈取作業状態を検出し、防塵カバー11が自動的に上昇移動するように構成することもでき、操作性が向上する。
【0033】
脱穀クラッチ入り(ON)で、且つ車速検出センサ31が車速停止を検出している場合に、防塵カバー11の下端が自動的に上昇移動するように構成することもできる。これによると、枕刈穀稈を手扱ぎするとき、カッタ下方に切断藁が早期に堆積するのを防止することができる。
【0034】
排藁細断装置7の下方部近くに埃検出センサ33を設け、該埃検出センサ33が設定量の埃を検出すると、防塵カバー11が下方に移動して、防塵体勢となるように連動構成することもできる。
【0035】
また、図8に示すように、防塵カバー11の下端部に対地高さ検出センサ34を設けることにより、該カバーの下端が対地追従するように構成している。これによると、常に圃場面と防塵カバーとの隙間を一定に保ち、埃の発生を防止することができる。
【0036】
防塵カバー11の下方移動下限位置を任意に設定できるカバー下限検出センサ(ポテンショメータ)35及びカバー下限設定ダイヤル36を設けておくことで、圃場条件に応じて防塵カバーの下方への移動下限位置を任意に設定でき、防塵カバーが圃場面に過大に接触することを防止することができる。
【0037】
なお、図5中において、排藁細断装置7下方の切断藁排出経路中には、排塵ファン38からの排塵物や、揺動選別棚39終端のストローラック40からの藁屑や塵埃なども排出されるようになっており、多量の埃が発生する。従って、上記構成の防塵カバーの設置は有効である。
【符号の説明】
【0038】
3 脱穀部(脱穀装置)
4 刈取部(刈取装置)
7 排藁細断装置
9 ガイドカバー
9a サイドカバー
9b サイドカバー
9c リアカバー
10 排出口
11 防塵カバー
15 切込み
27 制御装置
36 カバー下限設定ダイヤル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9