【0008】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。
図1及び
図2にはコンバインの全体図を示しており、左右一対のゴム製履帯式の走行装置2を備える機体フレーム1の上部一側に脱穀装置を備え、他側に穀粒貯留タンク3とこの穀粒貯留タンク3から穀粒を機外へ排出する穀粒排出装置9を備えている。穀粒貯留タンクの前側には、操縦席6を備え、脱穀装置4及び操縦席6の前側には刈取装置5を設けている。
(刈取装置の基本構造)
4条刈りの刈取装置5には前端に分草体7と分草された穀稈を引起す引起装置8を備え、引起した穀稈を挟み込んで後方へ搬送する掻込装置10と掻込装置10の下側のバリカン式刈刃装置11を備え、刈刃装置11によって植立穀稈の株元側部位を切断する。切断された穀稈は、2条ずつ左右の株元搬送装置12L,12Rと左右の穂先搬送装置13L,13Rによって搬送されて、合流点Jを経て株元側は調節搬送装置14に引継がれる。株元搬送装置12L,12Rは、無端チェンとこれに対向する狭持ガイドとにより構成し、穂先搬送装置13L,13Rは無端チェンに起伏自在に取り付けた複数の搬送ラグを起立させて搬送するラグチェン式のものである。
(刈取装置の搬送形態)
合流点よりも搬送方向下手側では、穀稈の穂先側は右側の穂先搬送装置13Rによって搬送され、株元側は調節搬送装置14から株元引継搬送装置15へと引継がれる構成であり、穂先搬送装置13R及び株元引継搬送装置15で搬送した穀稈は脱穀装置4の一側に設けた供給搬送装置16で、脱穀装置4に内蔵する扱室(図示省略)に穀稈の穂先側を挿入した状態で脱穀処理を行う。調節搬送装置14は前側支点で後側を上下回動自在として、株元引継搬送装置15に引き継ぐ際の穀稈の狭持位置を変更し、扱室への穀稈挿入長さを調節可能にしている。
(刈取装置の伝動構造)
刈取装置5は機体フレーム1の前部に設けた刈取懸架台の刈取支持軸23に回転自在に支持した縦伝動筒体21の中間部と機体フレーム1との間に設けた刈取昇降シリンダ17の伸縮によって昇降自在な構成としている。縦伝動筒体21の先端には、左右方向に沿う横伝動筒体22を固定している。縦伝動筒体21の内部には縦伝動軸21aを設け、横伝動筒体22の内部には横伝動軸22aを設けている。エンジンEからの駆動力は変速装置を介して縦伝動軸21aに入力され、横伝動軸22aに伝達される。
横伝動軸21aの左右側端部には、前記刈刃装置11のバリカン刃を左右往復運動させる駆動機構を備える。また、横伝動軸22aの左側端部からは、横伝動軸22aと引起装置8の上部を繋ぐ引起支持伝動筒体24を延出しており、この引起支持伝動筒体24の引起支持伝動軸24aによって引起変速軸26aを経て、引起装置上部に設けた左右方向に沿う引起上部伝動筒体25の上部伝動軸25aに駆動力を伝達する。引起変速軸26aは上部伝動軸25aと平行で、軸上に摺動自在に設けた複数のギアを軸方向に移動させて、上部伝動軸25a側のギアと噛合わせて伝達する回転速度を変更する構成である。
なお、右側の穂先搬送装置13R及び株元引継搬送装置15は、刈取支持軸23より駆動し、調節搬送装置14及び右側の株元搬送装置12Rは縦伝動軸21aより駆動し、左側の穂先搬送装置13L及び左側の株元搬送装置12Lは引起支持伝動軸24aより駆動する構成である。
(引起装置に至る伝動経路)
前記上部伝動軸25aから引起装置8に至る駆動経路について説明する。引起装置8の上部の左右方向に沿う上部伝動軸25aから垂下した吊下伝動軸27(27L,27C,27R)に駆動力を伝達し、各吊下伝動軸の下端部に設けた引起駆動軸28(28L,28CL,28CR,28R)より引起装置8の各駆動スプロケット29を駆動する。吊下伝動軸27のうち、右吊下伝動軸27R及び左吊下伝動軸27Lは、夫々対応する単一の引起装置8を駆動する。一方、中央吊下伝動軸27Cは下端部に左右方向の分岐伝動軸29から、中央2条分の引起装置8を駆動する。
(引起装置)
引起装置8は、
図5及び
図7に示すように、引起前側ケース36と引起後側ケース35とを所定間隔を空けて固定し、引起後側ケース35に駆動スプロケット30と従動ローラ31を軸支している。駆動スプロケット30と同軸で、回転自在に設けたテンションアーム32aの先端にはテンションスプロケット32を設け、テンションアーム32の先端側を、基端部を引起後側ケース35に固定したテンションスプリング34の先端部を取付ている。これら駆動スプロケット30及び従動ローラ31及びテンションスプロケット32に所定間隔毎に複数の起伏切換自在のラグを備える引起ラグチェン33を巻きかけている。
引起しラグチェン33は、前記引起後側ケース35と引起前側ケース36との間に配置し、この間隙から引起ラグチェン33の起立したラグが引起穀稈通路Kに向けて突出し、穀稈を引起す構成である。引起ラグチェン33は、非搬送通路側では、ラグがチェンの移動方向に沿う、倒伏姿勢であり、従動ローラ31により起立状態となって、従動ローラ31から駆動スプロケット30に至る、引起穀稈通路K側では、図示せぬ起立レールによって起立状態を維持して移動する。すなわち、非搬送通路側の従動ローラ31の軸心高さ位置で起立状態に切り替わる。
引起後側ケース35は、引起ラグチェン33の非搬送通路側部分を切り欠いた形状となっており、引起装置8の背面に解放部を形成することで、引起装置8の内部に入り込んだ藁屑を後方に排出するようになっている。37は前面に平滑な面を形成した引起前カバーであり、引起装置8の前方を覆い、分草された穀稈の穂先を引起穀稈通路に案内するものである。
(中央の引起装置)
引起装置8のうち、中央吊下伝動軸27Cより駆動される2条分の引起装置8CL及び8CRについて
図7に基づき更に詳細に説明する。
中央吊下伝動軸27Cを内装する中央吊下伝動筒体(吊下伝動筒体)38の下部に分岐伝動軸29を内装する分岐伝動筒体39を固定しており、この分岐伝動筒体39の左右側端部に、引起伝動ケース40,40を固定している。引起伝動ケース40には、前後方向の引起駆動軸28CL,28CRを内装している。
この引起駆動軸28CL,28CR及び引起し伝動ケース40からなる出力部40aと引起装置8の引起後側ケースに設けた入力部41bを接続することで引起装置8が駆動される。これら出力部40aと入力部41bを備える伝動継手部57について、
図8に基づき説明する。
引起駆動軸28CL,28CRは先端部を断面多角形状に形成した角軸としており、引起後側ケース35側に軸支した先端軸41に設けた角孔41aに同心上で嵌め合う。
しかして、引起伝動ケース40と、引起後側ケース35を密接させて、引起駆動軸28CL或いは28CRを、対応する角孔41aに挿入すると、引起駆動軸の回転によって先端軸41が一体回転する。
引起し装置8CL,8CRは、連結部材42u及び42lによって両者を結合させ、一体的に着脱できるようにすると、更に着脱が容易になる。
(引起装置の取付構造)
引起装置8CL,8CRは、刈取収穫作業時には刈取装置5に取付られている。すなわち、上部取付部8uと下部取付部8lとを夫々上部固定部45aと下部固定部44aに着脱自在に構成している。
引起装置8CLと引起装置8CRとは同様の取付構造であるため、引起装置8CLについてのみ、機体左側面方向視の図で説明する。
下部固定部44aは横伝動筒体22から前方に延出した分草フレーム42から上方に立ち上げた下部支持部材43の上部に固定した左右方向に沿う下部支持フレーム44に固定し、上部固定部45aは引起伝動ケース40の下方に位置して、引起伝動ケースと、下部支持フレーム44とを繋ぐ連結フレーム45の上端部近傍に設けている。
下部取付部8l及び下部固定部44aについて
図10を用いて詳説する。
引起装置8側の下部取付部8lには、下部取付部材46を設け、下部固定部44aを設けた下部支持フレーム44に固定する。下部取付部材46は、下部支持フレーム44に引起装置8CL,8CRを載せて支持するための側面視円弧上の当接部49と、レバー部48と、該レバー部48に引き寄せて、下部支持フレーム44に引起装置8CL,8CRを固定する係合部47を設けている。
レバー部48には固定操作を行うレバー48bと、このレバーに回動自在に取り付けた環状フック48aからなり、レバー48bの操作によって環状フック48aがレバーの回動支点48sを跨いで移動する。
係合部47は、取付部材46に支点47sまわりに回動自在に取り付けた開閉部材47b及びその先端側に設けた係合片47aにより構成され、前記レバー部48の環状フック48aと係合片47aが係合することによって下部取付部8lの固定がなされる。
なお、下部支持フレーム44の両側端部にはフランジ状の規制部材56を設けており、下部取付部材46は、この規制部材56と連結フレーム45とにより、左右方向に移動不能となるため、引起装置8CL,8CRの左右位置が変化せず、振動を低減できる。
下部取付部8lの下部支持フレーム44側又は下部取付部材46側にゴムなど制振部材を設けた構成としておくと、引起装置8の振動や騒音を防止でき好ましい。
上部取付部8u及び上部固定部45aについて
図11を用いて詳説する。
上部取付部8uは、下部取付部8lのレバー部48と同様の構造で、連結フレーム45側に設けた第二レバー部50と引起装置8CL,8CR側に設けた第二係合部51により構成され、環状フック50aと溝部51aが係合することで、上部取付部8uの固定がなされる。
上記構成によって刈取装置5と引起装置8CL,8CRとを固定するが、下部取付部8lは、円柱状の下部支持フレーム44の外周面に、下部取付部材46の当節部49と、開閉部材47bとによって形成される円筒状内周面で固定する。
したがって、上部取付部8uを取り外した状態では引起装置8CL,8CRは、下部支持フレーム44まわりに回動自在な構成となっている。
なお、上部取付部8u及び上部固定部45aを引起装置8を固定した状態において、中央吊下伝動筒体と引起後側カバー35の間となる位置に配置すると、意図せず固定が解除される虞がない。
(引起装置のフレーム構造)
刈取装置5は
図6に示すように、分岐伝動筒体39と一対の連結フレーム45と下部支持フレーム44とにより正面視矩形状の枠組を形成しており、刈取装置5全体の剛性を高めている。また、下部支持フレーム44の左右の部位と、引起伝動ケース40,40とを連結フレーム45によって繋ぐことで、引起駆動軸28CL,28CRとの距離が変化しにくく、引起装置8CL,8CRを刈取装置5に取付ける作業を行うにあたって、駆動軸や取付部の位置合わせを容易に行うことができる。
連結フレーム45は
図14に示すように、前述の引起後側ケース35の解放部と背面視重合しない位置に設けている。従って、後方に排出される藁屑の流れを阻害したり、連結フレーム35に藁屑が引っかかる虞がない。その上、引起後側ケース35と所定間隔を空けて側面視平行に配置したので、藁屑の引っ掛かりを更に効果的に防止することができる。穀稈センサ55も連結フレーム44の引起後側ケース35の開放部と反対側に取り付けており、藁屑の引っ掛りを可及的減少させることで、誤検知を防止して穀稈センサ55が正確に植立穀稈のみを検出することができる。
また、下部支持フレーム44は、引起装置8CL,8CRの従動ローラ31の軸心高さよりも上側としている。前述の通り、引起ラグチェン33のラグはこの従動ローラ31の軸心高さ位置から起立状態に切り替わるが、それよりも上側位置とすることで、引き起こされる植立穀稈に下部支持フレーム44や、下部取付部材46が干渉しにくく円滑に穀稈を引き起こすことができる。
また、下部支持部材43を分草フレーム42と、下部支持フレーム44の連結フレーム45取付部位とを繋ぐ形状とし、二本の支持部材としてもよくこれによれば、更に刈取装置5の剛性を高めることができる。
また、55は畦際の穀稈を刈取る場合などに引起穀稈通路Kの穀稈存在を検出する穀稈センサである。58は引起ラグチェン33に向けて潤滑油を噴出させる注油ノズルであり、引起後側ケース35の開放部から引起装置8を刈取装置5側に取付けた状態では引起装置内に突出した状態となる。この注油ノズルの位置は任意であり駆動スプロケット30近傍や従動ローラ31近傍とすると的確な位置に注油することができ、潤滑効果が高まる。
(引起装置のフレーム構造別実施例)
また、
図12に示すように、連結フレーム45を正面視中間部で交差させ、X字型を成すように構成してもよく、これによると下部支持フレーム44や分岐伝動筒体39の捻れを防止でき、多量の穀稈を引起こす場合にも引起装置8の強度が高まるために円滑に引起こすことができる。
なお、この場合、穀稈センサ55等は、分岐伝動筒体39近傍などから穀稈搬送通路に向けて突出させて設ける等して、前記引起後側ケース35の解放部を避けた位置とするのが望ましい。
また、連結フレームを分岐伝動筒体39の左右両側端部と、下部支持フレーム44の中央部を繋ぐ正面視Y字形状としても良い。
(引起装置上部カバー)
前記上部伝動筒体25の前側には、該上部伝動筒体25の略全幅にわたり上部伝動カバー(上部カバー)52を設けている。この上部伝動カバーは上部伝動筒体25の後側の回動軸52aで回動自在に支持し、前側の内側面に設けたクリップ52bを設け、クリップ52bと上部伝動筒体25の係止杆53をクリップ52bで挟み込んで固定する構成としている。
引起装置8CL,8CRを刈取装置5に取り付けた状態で、上部伝動カバー52先端の下端部は引起装置8CL,8CRの引起前カバー37の上端部と正面視重合した状態となる。このため、引起装置37によって引起す穀稈の穂先を引起前カバー37の上縁で扱き、穀粒を脱落させる虞がない。
上部伝動カバー52を解放すると、引起前カバー37上端より離間し、引起装置8CL,8CRを前側に引出し可能となる。また、このとき、クリップ52bの先端が係止杆53に当接し、この状態で、引起装置8CL,8CRを前側に引き出すことができる。
(分草ガイド杆と分草体)
刈取装置5の最前方に位置する分草体7は前記分草フレーム42の先端に取り付けている。この分草体7には、分草ガイド杆54を一体的に取り付けている。
分草体7はピン7aで分草フレーム42に回動自在に取り付けており、締結ボルト7bで固定している。締結ボルト7bは分草フレーム42と、分草体7の円弧孔7cに挿通させ、図示せぬナットを螺合している。従って、締結ボルト7bを緩めると、分草体7及び分草ガイド杆54が、円弧孔7cが締結ボルト7bの移動を許容する範囲内で前方回動可能となる。分草ガイド杆54は、
図13にしめすように、引起装置8CL,8CRの左右方向中央部に位置しており、吊下伝動筒体38と正面視で重なる位置としている。
そのため、分草体7及び分草ガイド杆54によって分草された穀稈を前記引起前カバー37に沿って引起搬送経路Kに案内することができ、適切な搬送姿勢で穀稈を刈取ることができる。
(引起装置の着脱作業)
上述の如く構成した刈取装置5における引起装置8の着脱作業を説明する。
締結ボルト7bを緩め、分草体7及び分草ガイド杆54を前方へ回動させて、引起装置8と分草体7及び分草ガイド杆54の間隔を広げる。続いて、上部伝動カバー52の契合状態を解除して、上部伝動カバー52のクリップ52bの先端を係止杆53に当接させる。
次に、引起装置8の背面の上部取付部8uの連結を解除すると、下部取付部8lは下部支持フレーム44に回動自在に取り付けているため引起装置8の上部を前倒れに回動させると、引起駆動軸28CL,28CRと先端軸41が分離する。この状態で、下部取付部8lの連結状態を解除して引起装置8の取り外しが完了する。取付はこの逆の手順で行えば良い。
なお、下部取付部8lは上部取付部8uと同時に着脱操作を行ってもよく、下部取付部8lを外した状態でも引起装置8を当節部49で支持することができるので、容易に引起駆動軸28CL,28CRと先端軸41を分離させて引起装置8を取り外すことができ、作業が容易である。