(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5728943
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】ターボシステム及び切替式二段過給機ターボシステム
(51)【国際特許分類】
F02B 37/013 20060101AFI20150514BHJP
F02B 37/18 20060101ALI20150514BHJP
F02B 39/00 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
F02B37/00 301B
F02B37/12 301E
F02B39/00 F
F02B37/12 301G
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-293712(P2010-293712)
(22)【出願日】2010年12月28日
(65)【公開番号】特開2012-140889(P2012-140889A)
(43)【公開日】2012年7月26日
【審査請求日】2013年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】倉田 伊織
(72)【発明者】
【氏名】宇野 忍
【審査官】
寺町 健司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−100695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 33/00,32−44
F02B 37/00−14
F02B 39/00−16
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に過給機を接続したターボシステムにおいて、前記過給機のタービンをバイパスするバイパス通路を前記タービンに設け、前記バイパス通路に該バイパス通路の出口を開閉する切替弁を設け、該切替弁の全開側開度を調整する全開側開度調整機構を設けたことを特徴とするターボシステム。
【請求項2】
内燃機関に高圧段の過給機及び低圧段の過給機を接続した切替式二段過給機ターボシステムにおいて、前記高圧段の過給機のタービンの入口及び出口と隣接する排気バイパス用の入口及び出口を有する排気バイパス通路を前記タービンに設け、前記タービンの入口及び前記排気バイパス通路の入口と前記内燃機関の排気口とを第1のフランジ継ぎ手で接続し、前記タービンの出口及び前記排気バイパス通路の出口と前記低圧段の過給機のタービンの入口とを第2のフランジ継ぎ手で接続し、前記排気バイパス通路に該排気バイパス通路の出口を開閉する切替弁を設け、該切替弁の全開側開度を調整する全開側開度調整機構を設けたことを特徴とする切替式二段過給機ターボシステム。
【請求項3】
前記切替弁がアクチュエータにより駆動される開閉用のレバーを有し、前記全開側開度調整機構が前記レバーに当接して切替弁の全開側開度を調整するネジ調節式ストッパからなり、前記ネジ調節式ストッパが、前記高圧段のタービンの出口及び前記排気バイパス通路の出口を有する端部と、前記低圧段のタービンの入口とを接続するフランジ継ぎ手に一体形成されたブラケットと、該ブラケットに設けられた雌ねじ孔に螺合され先端部が前記レバーの開側端面に当接されるストッパネジとを備えていることを特徴とする請求項2に記載の切替式二段過給機ターボシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
ターボシステム及び切替式二段過給機ターボシステムに係り、特にその構造の簡素化及び信頼性の向上を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
切替式二段過給機ターボシステムは、内燃機関から排出される排気ガスを二段階に設置された過給機のタービンにそれぞれ通すことにより、排気エネルギを有効に回収することができるようにしたものである。このターボシステムの場合、排気ガスを高圧段の過給機のタービンに通さずに、低圧段の過給機のタービンに直接送るといった態様の制御を行うためにバイパスポートが別途必要となる。
【0003】
そのため、従来のターボシステムの場合、
図6に示すように内燃機関1の排気マニホールド3に高圧段の過給機のタービン(一段目のタービンともいう)10を接続するための第1の排気口26と、低圧段の過給機のタービン(二段目のタービンともいう)11を接続するための第2の排気口(バイパスポート)27とを設け、第1の排気口26には一段目のタービンの入口10aが接続され、第2の排気口27にはバイパス管28が接続され、このバイパス管28と一段目のタービン10の出口10bとが二段目のタービン11の入口11aに分岐管29を介して接続されている。
【0004】
また、一段目のタービン10の出口10bと分岐管29は接続管30を介して接続されている。そして、一段目のタービン10を通る通路とバイパス管28を通る通路を切り替えるために前記バイパス管28の出口側にはその出口を開閉する切替弁14が設けられ、この切替弁14はアクチュエータにより開閉駆動されている。
【0005】
なお、関連する技術としては、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−229250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記切替式二段過給機ターボシステムにおいては、切替弁の全開側開度を調整する機構を備えておらず、切替弁の全開位置はアクチュエータの内部の操作ロッド端部が底突き(衝突)することで規定されているに過ぎない。そのため、切替弁の全開側開度は、アクチュエータの内部の寸法のバラツキにより規定されるため、アクチュエータの内部寸法のバラツキが大の場合、全開側開度及びバイパス流量のバラツキも大となり、一段目又は二段目のタービンの回転数にバラツキが発生し、延いては過給圧やエンジン性能にバラツキが発生する問題がある。
【0008】
また、アクチュエータの内部での操作ロッド端部の底突きにより、アクチュエータの内部摩耗やダイアフラムの損傷を招く虞がある。なお、アクチュエータの内部摩耗を生じると、摩耗した分だけ全開側開度が大きくなり、アクチュエータのストローク量が一定の場合、全閉側で閉じきれなくなる虞もある。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、切替弁の全開側開度を切替弁の近傍で容易に調整することができる
ターボシステム及び切替式二段過給機ターボシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために、本発明は、内燃機関に高圧段の過給機及び低圧段の過給機を接続した切替式二段過給機ターボシステムにおいて、前記高圧段の過給機のタービンの入口及び出口と隣接する排気バイパス用の入口及び出口を有する排気バイパス通路を前記タービンに設け、前記タービンの入口及び排気バイパス通路の入口を有する端部を前記内燃機関の排気口接続し、前記タービンの出口及び排気バイパス通路の出口を有する端部を前記低圧段の過給機のタービンの入口に接続し、前記排気バイパス通路に該排気バイパス通路の出口を開閉する切替弁を設け、該切替弁の全開側開度を調整する全開側開度調整機構を設けたことを特徴とする。
【0011】
前記切替弁が前記アクチュエータにより駆動される開閉用のレバーを有し、前記全開側開度調整機構が前記レバーに当接して切替弁の全開側開度を調節するネジ調節式ストッパからなることが好ましい。
【0012】
前記ネジ調節式ストッパが、前記高圧段又は低圧段のタービンの出口及び排気バイパス通路の出口を有する端部と、前記低圧段のタービンの入口とを接続するフランジ継ぎ手に一体形成されたブラケットと、該ブラケットに設けられた雌ねじ孔に螺合され先端部が前記レバーの開側端面に当接されるストッパネジとを備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、切替弁の全開側開度を切替弁の近傍で容易に調整することができ、エンジン性能のバラツキを抑えることができると共にアクチュエータ内部での底突きを解消することができ、アクチュエータの内部摩耗及びダイアフラムの損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本願発明の実施形態に係る切替式二段過給機ターボシステムを概略的に示す図である。
【
図2】同切替式二段過給機ターボシステムの全体構成を概略的に示す図である。
【
図3】
図1のターボシステムにおける高圧側の過給機の構成を示す図である。
【
図4】切替弁及び全開側開度調整機構の一例を示す図である。
【
図5】切替弁及び全開側開度調整機構の他の例を示す図である。
【
図6】従来の切替式二段過給機ターボシステムを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための形態を添付図面に基いて詳述する。
【0016】
先ず、切替式二段過給機ターボシステムSの全体構成について、
図2に基いて説明すると、1は例えばディーゼルエンジン等の内燃機関であり、この内燃機関1の一側には吸気マニホールド2が設けられ、他側には排気マニホールド3が設けられている。吸気マニホールド2には吸気通路4が接続され、排気マニホールド3には排気通路5が接続されている。
【0017】
吸気通路4には、高圧段の過給機T1のコンプレッサ6と、低圧段の過給機T2のコンプレッサ7(一段目のコンプレッサともいう)とが吸気マニホールド2側から順に設けられていると共に、高圧段のコンプレッサ(二段目のコンプレッサともいう)6をバイパスするに吸気バイパス通路8が設けられ、この吸気バイパス通路8には吸気バイパス弁9が設けられている。
【0018】
また、排気通路5には、高圧段の過給機T1のタービン(一段目のタービンともいう)10と、低圧段の過給機T2のタービン(二段目のタービンともいう)11が排気マニホールド3側から順に設けられていると共に、一段目のタービン10をバイパスする大流量の排気バイパス通路12と、二段目のタービン11をバイパスする小流量のウエストゲート通路13とが設けられ、排気バイパス通路12には排気バイパス弁である切替弁14が設けられ、ウエストゲート通路13にはウエストゲート弁15が設けられている。
【0019】
この場合、
図1に示すように、排気マニホールド3には単一の排気口16が設けられている。また、一段目のタービン10にはその入口10a及び出口10bと隣接する排気バイパス用の入口12a及び出口12bを有する排気バイパス通路12が設けられている。
【0020】
タービン10はタービンケーシング10xと、このタービンケーシング10x内に回転可能に支持されたタービン翼車10yとからなっている。タービン10の入口10a及び出口10bは、タービンケーシング10xに一体形成されている。なお、バイパス通路12は、タービンケーシング10xとは別体に設けられていても良いが、タービンケーシング10xに一体形成されていることが構造の簡素化を図る上で好ましい。
【0021】
一段目のタービン10の入口10a及び排気バイパス通路12の入口12aを有する端部と排気口16が同形(同じ大きさ及び形状)に形成され、互いに接続可能とされている。この場合、一段目のタービン10の入口10a及び排気バイパス通路12の入口12aを有する端部と排気口16の端部とが第1のフランジ継ぎ手18により接続されている。この第1のフランジ継ぎ手18として、排気口16の端部に一方のフランジ部18aが形成され、一段目のタービン10の入口10a及び排気バイパス通路12の入口12aを有する端部に他方のフランジ部18bが形成されている。
【0022】
また、一段目のタービン10の出口10b及び排気バイパス通路12の出口12bを有する端部と二段目のタービン11の入口11aが同形に形成され、互いに接続可能とされている。この場合、一段目のタービン10の出口10b及び排気バイパス通路12の出口12bを有する端部と二段目のタービン11の入口11aの端部とが第2のフランジ継ぎ手19により接続されている。この第2のフランジ継ぎ手19として、一段目のタービン10の出口10b及び排気バイパス通路12の出口12bを有する端部に一方のフランジ部19aが形成され、二段目のタービン11の入口11aの端部に他方のフランジ部19bが形成されている。なお、二段目のタービン11はタービンケーシング11xとタービン翼車11yを備え、そのタービンケーシング11xに入口11aが一体に設けられている。
【0023】
排気バイパス通路12の出口12b側にはその出口12bを開閉して一段目のタービン10を通る通路とバイパス通路12を通る通路とを選択的に切り替える切替弁14が設けられている。この切替弁14は、
図3ないし
図4に示すように支軸20を介して揺動開閉可能に設けられたスイング式弁からなり、この切替弁14の弁体14aを支軸20を支点に開閉するレバー14bと、この開閉用のレバー14bを操作ロッド21を介して駆動するアクチュエータ22とを備えている。二段目のタービン11の入口11aのフランジ19b近傍には支軸20を回動自在に支持する支持部37が設けられている。
【0024】
アクチュエータ22は、切替弁14を開弁方向に付勢するバネ23及びそのバネ23の付勢力に抗して切替弁14を負圧により閉弁方向に駆動するダイアフラム24を備えている。アクチュエータ22は、高圧段過給機T1又は低圧段過給機T2の適当な個所に設置されている。
【0025】
切替弁14の近傍にはその切替弁14の全開側開度を調整する全開側開度調整機構32が設けられている。この全開側開度調整機構32は、切替弁14の開閉用のレバー14bの全開側開度を規制するネジ調節式ストッパ33からなっていることが好ましい。このネジ調節式ストッパ33は、高圧段又は低圧段のタービン10,11のタービンハウジング10x,11xにおけるバイパス通路12の出口側近傍に一体形成されたブラケット34と、このブラケット34に設けられた雌ねじ孔35に螺合され先端部がレバー14bの開側端面14xに当接されるストッパネジ36とを備えている。ストッパネジ36を締めることにより全開側開度を小さくし、ストッパネジ36を緩めることにより全開側開度を大きくすることができる。
【0026】
また、内燃機関1の運転状態に応じて切替式二段過給機ターボシステムSを制御する制御部25は、二段過給を行う時にはアクチュエータ22に負圧をかけ、バネ23の付勢力に抗して切替弁14を閉じ(仮想線で示す状態)、排気ガスを一段目及び二段目のタービン10,11に順に通すように構成されており、一段過給を行う時にはアクチュエータ22に負圧をかけないことによりバネ23の付勢力で切替弁14を開け、排気マニホールド3からの排気ガスを排気バイパス通路12を介して二段目のタービン11に直接送るように構成されている。この切替弁14の開弁時に、全開側開度調整機構32であるネジ調整式ストッパ33のストッパネジ36の先端部に切替弁14の開閉用のレバー14bが当接することにより、切替弁14の全開位置が規定される。
【0027】
以上の構成からなる切替式二段過給機ターボシステムSによれば、内燃機関1に高圧段の過給機T1及び低圧段の過給機T2を接続した切替式二段過給機ターボシステムSにおいて、高圧段の過給機T1のタービン10にその入口10a及び出口10bと隣接する排気バイパス用の入口12a及び出口12bを有する排気バイパス通路12を設け、タービン10の入口10a及び排気バイパス通路12の入口12aを有する端部を内燃機関1の排気口16に接続し、タービン10の出口10b及び排気バイパス通路12の出口12bを有する端部を低圧段の過給機T2のタービン11の入口11aに接続し、排気バイパス通路12の出口側に該出口12aを開閉する切替弁14を設け、その切替弁14の近傍に切替弁14の全開側開度を調整する全開側開度調整機構32を設けているため、切替弁14の全開側開度を切替弁14の近傍で容易に調整することができる。
【0028】
また、切替弁14がアクチュエータ22により駆動される開閉用のレバー14bを有し、全開側開度調整機構32がレバー14bに当接して切替弁14の全開側開度を調節するネジ調節式ストッパ33からなっているため、切替弁14の全開側開度を容易に調整することができる。
【0029】
更に、ネジ調節式ストッパ33が、高圧段又は低圧段のタービン10,11のタービンハウジング10x、11xにおけるバイパス通路12の出口側近傍に一体形成されたブラケット34と、そのブラケット34に設けられた雌ねじ孔35に螺合され先端部がレバー14bの開側端面14xに当接されるストッパネジ36とを備えているため、切替弁14の全開側開度を簡単な構成で容易に調整することができる。
【0030】
この場合、一段目のタービン10の入口10aと排気バイパス通路12の入口12aとが隣接し、一段目のタービン10の出口10bと排気バイパス通路12の出口12bとが隣接するようにタービンケーシング10xにバイパス通路12が一体に設けられているため、一段目のタービン10に排気バイパス通路12を容易に設けることができ、バイパス通路12を有する一段目のタービン10を鋳物成形により容易に形成することができる。
【0031】
一段目のタービン10の入口10a及び排気バイパス通路12の入口12aを有する端部と排気口16が第1のフランジ継ぎ手18により接続されているため、接続点(フランジ数)を減らすことができ、信頼性の向上が図れる。
【0032】
一段目のタービン10の出口10b及び排気バイパス通路12の出口12bを有する端部と第二段目のタービン11の入口11aの端部とが第2のフランジ継ぎ手19により接続されているため、接続点を減らすことができ、信頼性の向上が図れる。
【0033】
なお、切替弁14は、
図5に示すようにバイパス通路12の内部に設けられていても良い。図示例の場合、バイパス通路の出口14b側の内部に拡径された弁座部38を有する弁室39が形成され、この弁室39内に切替弁14が支軸20を介して回動開閉自在に設けられている。バイパス通路の外側部にはブラケット34が一体形成され、このブラケット34に設けられた雌ねじ孔35にストッパネジ36が螺合されている。その他の構成は前記実施例と同様である。
【符号の説明】
【0034】
S 切替式二段過給機ターボシステム
T1 高圧段の過給機
T2 低圧段の過給機
1 内燃機関
3 排気マニホールド
10 一段目のタービン
11 二段目のタービン
12 排気バイパス通路
14 切替弁
14b レバー
16 排気口
20 支軸
21 操作ロッド
22 アクチュエータ
32 全開側開度調整機構
33 ネジ式調整ストッパ
34 ブラケット
35 雌ねじ孔
36 ストッパネジ