(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5729033
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】薄膜フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20150514BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20150514BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20150514BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/30 A
B32B27/32 C
C08J5/18CEY
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-56062(P2011-56062)
(22)【出願日】2011年3月15日
(65)【公開番号】特開2012-192528(P2012-192528A)
(43)【公開日】2012年10月11日
【審査請求日】2014年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】野間田 匡
(72)【発明者】
【氏名】戸祭 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】小泉 夕夏
【審査官】
家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−102233(JP,A)
【文献】
特開昭61−246033(JP,A)
【文献】
特開2004−244462(JP,A)
【文献】
特公平07−081019(JP,B2)
【文献】
特公平04−000453(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C08J 5/00− 5/02,5/12−5/22
B29C41/00
B29C47/00−47/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアクリロニトリル樹脂と、LDPE、LLDPEまたはCPPからなる樹脂とを共押出法により積層押出する工程と、
前記共押出法により形成された前記ポリアクリロニトリル樹脂の層から、前記LDPE、LLDPEまたはCPPからなる樹脂の剥離層を剥離する工程と
を有し、
前記LDPE、LLDPEまたはCPPからなる樹脂は、接着性ポリオレフィンとのブレンド物であり、前記接着性ポリオレフィンの添加量は、前記LDPE、LLDPEまたはCPPからなる樹脂に対し5質量%〜10質量%である
薄膜フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアクリロニトリル樹脂の薄膜を容易に形成可能とする薄膜フィル
ムの製造方法に関する
。
【背景技術】
【0002】
ポリアクリロニトリル樹脂(PAN)は、バリア性、非吸着性能に優れ、薬効成分の包材への吸着が薬品品質に大きく影響する医薬包材に広く使用されている。
しかしながら、PANは、耐熱性が悪く、かつ、製膜性能が悪いため、製膜方法はインフレーション製膜に限られ、薄膜化、偏肉制御も困難であった。
そのため、PANフィルムは高価となり、付加価値の大きい高価な商材にしか使用できなかった。
そこで、PANを低コストでしかも容易に薄膜化することができるならば、安価で、非吸着性能に優れた包装材料を提供することができる。
【0003】
なお、下記特許文献1には、剥離性を有する少なくとも2層以上より成る熱可塑性樹脂積層体を共押出法により積層押出し、然る後、剥離層を剥離する事により製造される薄膜フィルムにおいて、剥離層がエチレン−プロピレンブロック共重合体であることを特徴とするマットな表面を有する薄膜フィルムの製造方法が開示されている。しかしながら下記特許文献1には、PANと本発明で使用される特定の剥離層との組み合わせを何ら開示または示唆していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−81019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ポリアクリロニトリル樹脂の薄膜を容易にかつ低コストで形成可能とする薄膜フィルムおよびその製造方法を提供することにある。
また本発明の別の目的は、前記薄膜フィルムを用い、適度なバリア性、吸着防止性能を有し、コスト的に優れ、かつ、外観不良が比較的発生しにくい包装材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項
1に記載の発明は、
ポリアクリロニトリル樹脂と、LDPE、LLDPEまたはCPPからなる樹脂
とを共押出法により積層押出する工程と、
前記共押出法により形成された前記ポリアクリロニトリル樹脂の層から、前記LDPE、LLDPEまたはCPPからなる樹脂の剥離層を剥離する工程と
を有し、
前記LDPE、LLDPEまたはCPPからなる樹脂は、接着性ポリオレフィンとのブレンド物であり、前記接着性ポリオレフィンの添加量は、前記LDPE、LLDPEまたはCPPからなる樹脂に対し5質量%〜10質量%である
薄膜フィルムの製造方法である
。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ポリアクリロニトリル樹脂の薄膜を容易にかつ低コストで形成可能とする薄膜フィルムおよびその製造方法を提供することができる。
また本発明によれば、前記薄膜フィルムを用い、適度なバリア性、吸着防止性能を有し、コスト的に優れ、かつ、外観不良が比較的発生しにくい包装材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
上述のように、PANは、バリア性、非吸着性能に優れ、薬効成分の包材への吸着が薬品品質に大きく影響する医薬包材に広く使用されている。しかしながら、PANは、耐熱性が悪く、かつ、製膜性能が悪いため、製膜方法はインフレーション製膜に限られ、薄膜化、偏肉制御も困難であった。
本発明では、PANと、剥離層としてLDPE(低密度ポリエチレン)、LLDPE(線状低密度ポリエチレン)またはCPP(無延伸ポリプロピレン)からなる樹脂とを共押出法により積層押出し、PANから剥離層を剥離することにより、薄膜化されたPANを得ることができる。なお、剥離層を形成する樹脂は、接着性ポリオレフィンとのブレンド物であってもよく、その場合、該接着性ポリオレフィンの添加量は、該樹脂に対し10質量%以下である。接着性ポリオレフィンは公知の樹脂であり、酸等の官能基をポリオレフィンに導入して接着性を付与した、変性ポリエチレン・変性ポリプロピレン等の変性ポリオレフィンである。該変性ポリオレフィンは市販されており、例えば三井化学(株)からアドマーシリーズとして入手できる。また本発明において共押出法の条件は、使用する樹脂により適宜決定すればよい。形成されたPANと剥離層との積層体は、比較的低いラミネート強度を有しており、そのラミネート強度としては、例えば0.01〜1N/15mm、好ましくは、0.1〜0.3N/15mmである。また、PANの層の厚みは20μm以下で薄膜化が可能であり、好ましい厚みは3μm〜20μmである。得られた薄膜化されたPANは、適度なバリア性、吸着防止性能を有し、コスト的に優れ、かつ、外観不良が比較的発生しにくいので、包装材料として有用となる。
【実施例】
【0010】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。
なお、下記実施例1は参考例である。
【実施例1】
【0011】
図1に示す包装材料を作成した。
厚さ12μmの2軸延伸PET(1)にグラビア用インキにより印刷層(2)を形成した。この印刷側にポリウレタン系樹脂のアンカーコート剤(3)を0.5g/m
2の塗布量で塗布した。このフィルムのアンカーコート剤塗布面に、2種2層の共押出機により、PAN(4)(三井化学 バレックス#3000、共押出後の厚み=10μm)とMI8のLLDPE(共押出後の厚み=20μm)(5)とを共押出ラミネートにより積層し、本発明の包装材料を得た。
【実施例2】
【0012】
図2に示す包装材料を作成した。
厚さ12μmの2軸延伸PET(1)にグラビア用インキにより印刷層(2)を形成した。この印刷側にポリウレタン系樹脂のアンカーコート剤(3)を0.5g/m
2の塗布量で塗布した。このフィルムのアンカーコート剤塗布面に、2種2層の共押出機により、PAN(4)(三井化学 バレックス#3000、共押出後の厚み=10μm)とMI8のLLDPE(接着性ポリオレフィンとして三井化学 アドマーSF600を5質量%の割合でブレンドしたもの。共押出後の厚み=20μm)(6)とを共押出ラミネートにより積層し、本発明の包装材料を得た。
【実施例3】
【0013】
図3に示す包装材料を作成した。
厚さ12μmの2軸延伸PET(1)にグラビア用インキにより印刷層(2)を形成した。この印刷側にポリウレタン系樹脂のアンカーコート剤(3)を0.5g/m
2の塗布量で塗布した。このフィルムのアンカーコート剤塗布面に、2種2層の共押出機により、PAN(4)(三井化学 バレックス#3000、共押出後の厚み=10μm)とMI8のLLDPE(接着性ポリオレフィンとして三井化学 アドマーSF600を10質量%の割合でブレンドしたもの。共押出後の厚み=20μm)(7)とを共押出ラミネートにより積層し、本発明の包装材料を得た。
[比較例1]
【0014】
図4に示す包装材料を作成した。
厚さ12μmの2軸延伸PET(1)にグラビア用インキにより印刷層(2)を形成した。この印刷側にポリウレタン系樹脂のアンカーコート剤(3)を0.5g/m
2の塗布量で塗布した。このフィルムのアンカーコート剤塗布面に、2種2層の共押出機により、PAN(4)(三井化学 バレックス#3000、共押出後の厚み=10μm)とMI8のLLDPE(接着性ポリオレフィンとして三井化学 アドマーSF600を15質量%の割合でブレンドしたもの。共押出後の厚み=20μm)(8)とを共押出ラミネートにより積層した。
[比較例2]
【0015】
厚さ12μmの2軸延伸PET(1)にグラビア用インキにより印刷層(2)を形成した。この印刷側にポリウレタン系樹脂のアンカーコート剤(3)を0.5g/m
2の塗布量で塗布した。このフィルムのアンカーコート剤塗布面に、押出機により、PAN(4)(三井化学 バレックス#3000)を10μmの厚みとなるように押出したところ、膜切れが発生し、製膜できなかった。
[比較例3]
【0016】
図5に示す包装材料を作成した。
厚さ12μmの2軸延伸PET(1)にグラビア用インキにより印刷層(2)を形成した。この印刷側にポリウレタン系樹脂のドライラミネート接着剤(9)を2g/m
2の塗布量で塗布し、そこにPANフィルム(10)(タマポリ ハイトロンBX 30μm)をドライラミネートにより積層した。
【0017】
実施例1〜3および比較例1の包装材料の共押出界面のラミネート強度を測定した。また、スリッター機を利用して、剥離層の剥離テストを実施した。その結果、接着性樹脂を0〜10質量%の割合でブレンド(実施例1〜3)したものは、ラミネート強度がそれぞれ0.1N/15mm、0.3N/15mm、0.8N/15mmと低強度であり、スリッター機の2軸を利用して剥離テストを行ったところ、実施例1および2の包装材料は100m/minでの巻取りが可能であった。実施例3の包装材料は75m/15mimでの巻取りが可能であった。比較例1のラミネート強度は、1.2N/15mmであり、剥離テストでは、ポリ切れが発生し、スリッター機による剥離ができなかった。結果をまとめて表1に示す。
【0018】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の薄膜フィルムは、薬効成分などの低吸着性が求められる薬剤等の包装材料に広く利用が可能である。
【符号の説明】
【0020】
1…基材(PET)
2…印刷層
3…アンカー剤
4…PAN
5…線状低密度ポリエチレン(LLDPE)
6…接着性ポリオレフィンを5質量%の割合でブレンドしたLLDPE
7…接着性ポリオレフィンを10質量%の割合でブレンドしたLLDPE
8…接着性ポリオレフィンを15質量%の割合でブレンドしたLLDPE
9…接着剤
10…PAN(ハイトロンBX)