(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の仮固定材について説明した後、前記仮固定材を用いた基材の処理方法、および前記基材の処理方法によって得られる電子部品について説明する。なお、本発明の仮固定材から形成された層を仮固定材層ともいう。
【0012】
〔仮固定材〕
本発明において仮固定材とは、半導体ウエハなどの基材を加工(例:ダイシング、裏面研削、フォトファブリケーション(例:レジストパターンの形成、メッキ等による金属バンプ形成、化学気相成長等による膜形成、RIEなどによる加工))や移動(例:ある装置から別の装置へ基材を移動)するに際して、支持体から基材がずれて動かないように基材を仮固定するために用いられる仮固定材のことである。基材の加工や移動終了後、支持体から基材を剥離するため、仮固定材には易剥離性も要求される。
【0013】
本発明の仮固定材は、低軟化点を有する非晶質体、すなわち低温で軟化する性質(低温軟化性)を有する非晶質体を含有する。本発明において「低軟化点」とは、例えば軟化点が300℃以下であることを意味する。非晶質体の軟化点は、好ましくは50〜250℃、より好ましくは80〜230℃である。軟化点の測定条件は実施例に記載したとおりである。
【0014】
本発明の仮固定材では、低軟化点を有する非晶質体が基材の仮固定および剥離に寄与する。すなわち、仮固定材を介して基材と支持体とを積層し、前記非晶質体の軟化点以上に仮固定材を加熱した後に冷却することにより、基材を仮固定することができる。他方、前記非晶質体の軟化点以上に仮固定材を加熱して例えば剪断力を付与することにより、基材を支持体から剥離することができる。
【0015】
本発明では低軟化点を有する非晶質体を用いているため、例えば300℃以下という温度で基材を支持体上に仮固定することができる。また、仮固定材の含有成分は非晶質体であるため、三次元実装等で使用される薬液に対する耐性(例:レジスト形成で使用される溶剤、バンプ形成で使用されるメッキ液)に本発明の仮固定材は優れている。
【0016】
また、前記非晶質体は剥離時の温度(例:軟化点以上)においても軟化はするものの固体であるため、仮固定材残渣が少なく、剥離時または剥離後に薬液により基材を洗浄して仮固定材を除去する必要は特にない。
【0017】
低軟化点を有する非晶質体としては、例えば、リン酸系ガラス、ビスマス系ガラスなどの無鉛ガラス、鉛ホウ酸ガラスなどの鉛含有ガラスが挙げられ、鉛フリーの観点から無鉛ガラスが好ましく、低軟化点を有し且つ耐薬品性に優れることからリン酸系ガラスがより好ましい。
【0018】
リン酸系ガラスとしては、例えば、シリコンリン酸系ガラス、バナジウムリン酸系ガラスが挙げられ、軟化点をコントロールしやすい点からシリコンリン酸系ガラスが好ましく、式(1)で表される二価の構造(A1)および式(2)で表される三価の構造(A2)から選ばれる少なくとも一種の構造を有するリン酸系ガラスが特に好ましい。
【0020】
式(1)中、複数あるR
1はそれぞれ独立に一価の有機基を示す。式(2)中、複数あるR
2はそれぞれ独立に一価の有機基を示す。式(1)および(2)中、破線は結合手を示す。
【0021】
上記リン酸系ガラスは、式(1)ではR
1を2つ含むシロキサン構造を、式(2)ではR
2を2つ含むシロキサン構造を有する。上記リン酸系ガラスがR
1(またはR
2)を2つ含むシロキサン構造を有しない場合、軟化点が大きくなり過ぎることがある。
【0022】
上記リン酸系ガラスにおいて、リン酸系ガラスの全繰り返し構造単位100質量%に対して、二価の構造(A1)の含有割合は好ましくは50〜100質量%、より好ましくは55〜100質量%、特に好ましくは60〜100質量%である。このように二価の構造(A1)および三価の構造(A2)の含有量を調整することにより、非晶質体の軟化点や分解温度を制御することができる。特に二価の構造(A1)の含有割合が前記範囲にある非晶質体は、低軟化点を有することから好ましい。前記の構造(A1)および(A2)の含有割合のほか、リン酸系ガラスの構造は、固体
29Si NMRおよび固体
13C NMRにて確認することができる。
【0023】
一価の有機基としては、例えば炭化水素基(好ましくは炭素数3〜20の炭化水素基)が挙げられ、より具体的には炭素数4以上、好ましくは4〜20の直鎖状アルキル基;炭素数3以上、好ましくは3〜20の分岐鎖状アルキル基;炭素数5以上、好ましくは5〜20のシクロアルキル基;炭素数6以上、好ましくは6〜20のアリール基が挙げられる。これらの中でも、リン酸系ガラスの合成が容易なことから、直鎖状アルキル基およびアリール基が好ましく、アリール基がより好ましい。
【0024】
直鎖状アルキル基としては、例えば、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−デカニル基が挙げられ;分岐鎖状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、t―ブチル基、ネオペンチル基が挙げられ;シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられ;アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基が挙げられる。
【0025】
低軟化点を有する非晶質体は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の仮固定材は、低軟化点を有する非晶質体を主成分として含有することが好ましい。本発明において「主成分」とは、仮固定材100質量%に対して、低軟化点を有する非晶質体の含有量が90質量%以上であることを意味する。低軟化点を有する非晶質体の含有量は、90〜100質量%が好ましく、95〜100質量%がより好ましい。
【0026】
非晶質体(A)の製造方法は特に限定されない。以下では一例としてシリコンリン酸系ガラスの製造方法について説明するが、下記製造方法に限定される訳ではない。シリコンリン酸系ガラスは無水酸塩基反応法およびゾルゲル法により好ましく製造することができる。
【0027】
〈無水酸塩基反応法〉
無水酸塩基反応法では、例えばR
2SiCl
2(Rは式(1)および(2)中のR
1またはR
2と同義である)と、リン酸(H
3PO
4)および亜リン酸(H
3PO
3)から選択される少なくとも1種の酸とを混合し、得られた混合物を加熱して脱HCl反応を行うことによりガラスネットワークを形成して、低軟化点を有するシリコンリン酸系ガラスを得ることができる。
【0028】
上記R
2SiCl
2と上記酸との量比は特に限定されないが、例えば、R
2SiCl
2:酸(モル比)=1:0.5〜20の割合で用いることができる。この場合、低温軟化性に優れた非晶質体を得ることができる。
【0029】
出発原料であるリン酸および亜リン酸の使用量は、目的とするシリコンリン酸系ガラスの二価の構造(A1)および三価の構造(A2)の含有割合に応じて適宜決定される。例えば、亜リン酸の使用量は、リン酸および亜リン酸の合計100質量%に対して、好ましくは10〜100質量%である。亜リン酸はリン酸に比べてOH基の数が一つ少なく、前駆体の種類が少ないため、出発原料として亜リン酸を用いることにより、構造の制御が容易となる。また、亜リン酸を多く用いるとシリコンリン酸系ガラス中の分岐構造が減るため、当該ガラスの軟化点を下げることができる。
【0030】
上記混合物の加熱温度は、通常300℃以下、好ましくは23〜300℃である。本発明ではこのように低温で反応を行うことができるため、環境負荷が小さく、また、水フリーで反応を行うことができるため、無水でかつ均一なシリコンリン酸系ガラスを容易に得ることができる。
【0031】
また、より緻密なバルク体が得られることから、上記混合物の加熱処理を2段階に分けて行ってもよく、例えば(第1段目)10〜100℃で0.1〜10時間加熱(好ましくは20〜50℃で0.5〜4時間加熱)し、続いて(第2段目)150〜300℃で0.1〜10時間加熱(好ましくは200〜270℃で0.5〜4時間加熱)してもよい。
【0032】
上記反応は、塩化スズ、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化ゲルマニウムなどの金属塩化物(塩基)の存在下に行ってもよい。これにより、より強固なガラスネットワークを形成することができる。本発明では、R
2SiCl
2の有機部分あるいは金属塩化物を適切に選択することにより、非常に広範囲な物性制御が可能となる。
【0033】
上記反応は、例えば、窒素雰囲気下で行うことができる。
〈ゾルゲル法〉
ゾルゲル法では、例えば、出発原料を混合してゲル体を得る混合工程、前記ゲル体を加熱して溶融状態とする溶融工程、および溶融状態のゲル体を熟成する熟成工程を経て、低軟化点を有するシリコンリン酸系ガラスを得ることができる。
【0034】
混合工程では、出発原料を混合および撹拌して加水分解−重縮合させ、ゲル体を得る。
ゾルゲル法での出発原料としては、シリコンアルコキシド(R
2Si(OR’)
2;Rは式(1)および(2)中のR
1またはR
2と同義であり、R’は炭素数1〜4のアルキル基等を示す)や、リン酸および亜リン酸から選択される少なくとも1種の酸が挙げられ、必要に応じてその他のシリコンアルコキシド、リン酸エステル、亜リン酸エステルを用いることができる。例えば、シリコンアルコキシドに、リン酸および亜リン酸から選択される少なくとも1種の酸、必要に応じて水やアルコール、塩酸などの触媒を加え、縮合反応させ、ゲル体を得る。
【0035】
混合工程の後に、ゲル体を室温〜100℃で1〜3日間乾燥させてもよい。
溶融工程および熟成工程では、ゲル体を溶融状態にして更に熟成する。溶融工程および熟成工程は通常は連続して行われ、これらの工程における加熱温度は通常60〜300℃である。ゲル体の溶融および熟成の後、適宜乾燥することにより、低軟化点を有するシリコンリン酸系ガラスが得られる。また、系内に反応活性な水酸基が残留している場合は、水酸基が加水分解−脱水縮合を起こしてクラックが生じることがあるが、熟成工程により前記クラックの発生を防止することができる。
【0036】
以上のようにして、低軟化点を有するシリコンリン酸系ガラスを得ることができる。
本発明の仮固定材は、低軟化点を有する非晶質体の他、必要に応じて密着助剤;酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ケイ素などの金属酸化物粒子;ポリスチレン架橋粒子などを含有してもよい。
【0037】
本発明の仮固定材は、溶剤を実質的に含有しないことが好ましい。本発明において「実質的に」とは、溶剤の含有量が通常5質量%以下であることを意味する。溶剤の含有量は1質量%以下がより好ましく、溶剤が含まれないことが特に好ましい。本発明の仮固定材には溶剤を含有させる必要がなく、高温処理時に分解する成分が実質的に存在しないため、メッキフローなどの高温処理時に分解物や揮発物による発泡がなく、より安定な仮固定が可能である。
【0038】
本発明の仮固定材は、例えば300℃以下という温度で基材を仮固定できるとともに、高温環境下(例:225℃以上、具体的には225〜300℃)でも、基材の処理時に基材を保持(若しくは保護)しうる保持力を維持できる。保持力は、例えば剪断接着力で評価される。さらに、前記仮固定材は、非晶質体の軟化点以上で剪断接着力が低下する(ただし、前述のように基材の処理時に付加される程度の剪断力に対しては基材を保持しうる。)ので、相応の加熱処理および剪断処理を行うことにより、基材を容易に支持体から剥離することができる。すなわち、本発明の仮固定材は、基材の処理(加工および/または移動等)時に付加される剪断力に対して充分な保持力(剪断接着力)を有する。
【0039】
本発明の仮固定材は、25℃近辺で用いられる基材の薄膜化、フォトファブリケーション、例えば、25〜300℃での温度範囲で用いられるエッチング加工やスパッタ膜の形成、225〜300℃での温度範囲で用いられるメッキ処理やメッキリフロー処理などにおいても、基材を支持体上に保持することができる。
【0040】
本発明の仮固定材は上記特性(例えば300℃以下での仮固定性、易剥離性、耐薬品性)を有するとともに、エッチング時のラジカル耐性、絶縁膜形成時やリフロー時における耐熱性、およびスパッタリング時における耐真空性を有する。
【0041】
本発明の仮固定材は、このような特性を有することから、現代の経済活動の場面で要求される様々な加工処理(例:各種材料表面の微細化加工処理、各種表面実装、半導体ウエハや半導体素子の運搬)などの際に、基材の仮止め材として好適に用いられる。
【0042】
〔基材の処理方法〕
本発明の基材の処理方法は、(1)本発明の仮固定材を介して、支持体上に基材を仮固定する工程、(2)前記基材を加工および/または移動する工程、ならびに(3)前記仮固定材を加熱することにより、支持体から基材を剥離する工程をこの順で有する。以下、前記各工程をそれぞれ、工程(1)、工程(2)、工程(3)ともいう。
【0043】
《工程(1)》
工程(1)では、例えば、(1-1)支持体および/または必要に応じて表面処理した基材の表面に本発明の仮固定材からなる仮固定材層を形成し、前記仮固定材層を介して基材と支持体とを貼り合せることにより、あるいは(1-2)支持体の表面に本発明の仮固定材からなる仮固定材層を形成し、前記仮固定材層上に基材を形成することにより、基材を支持体上に仮固定することができる。
【0044】
加工(移動)対象物である前記基材としては、半導体ウエハ、ガラス基板、樹脂基板、金属基板、金属箔、研磨パッド、樹脂塗膜などが挙げられる。半導体ウエハには、通常は配線や絶縁膜などが形成されている。樹脂塗膜としては、例えば、有機成分を主成分として含有する層が挙げられ;具体的には、感光性材料から形成される感光性樹脂層、絶縁性材料から形成される絶縁性樹脂層、感光性絶縁樹脂材料から形成される感光性絶縁樹脂層などが挙げられる。支持体としては、ガラスやシリコンなどの取扱いが容易で且つ硬くて平坦な面を有するものが挙げられる。
【0045】
本発明の仮固定材からなる仮固定層を基材上に形成するに際して、仮固定材の面内への広がりを均一にするため、基材表面を予め表面処理することもできる。表面処理の方法としては、基材表面に予め表面処理剤を塗布する方法などが挙げられる。
【0046】
上記表面処理剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどのカップリング剤が挙げられる。
【0047】
上述の仮固定層の形成方法としては、(i)仮固定材を支持体上および/または基材上に直接配置する方法、(ii)仮固定材を、離型処理が施されたPET(Polyethylene Terephthalate)フィルム上に一定膜厚で配置して成膜した後、支持体および/または基材へラミネート方式により転写する方法などが挙げられる。膜厚均一性の点から、上記(i)の方法が好ましい。
【0048】
上述の仮固低材の厚みは、基材の仮固定面のサイズ、加工処理などで要求される密着性の程度に応じて任意に選択することができる。仮固定材層の厚みは、通常は0.01μm〜2mm、好ましくは0.05μm〜1mm、より好ましくは0.1μm〜0.5mmである。仮固定材層の厚みが前記範囲にあると、保持力が充分であり、仮固定面からの基材の剥がれが生じることもない。
【0049】
基材と支持体とを貼り合せる方法としては、基材および支持体の何れか一方または双方に上述の仮固定材を配置して、両者を貼り合せる方法などが挙げられる。この際の温度は、上記非晶質体の軟化点などにより適宜選択され、例えば上記非晶質体の軟化点以上であり、通常は軟化点+100℃以下、好ましくは軟化点+50℃以下である。このようにして、基材が支持体上に強固に保持される。
【0050】
《工程(2)》
工程(2)は、上記のように支持体上に仮固定された基材を加工および/または移動する工程である。移動工程は、基材(例:半導体ウエハ)をある装置から別の装置へ支持体とともに移動する工程である。また、上記のようにして支持体上に仮固定された基材の加工処理としては、例えば、基材の薄膜化(例:裏面研削);エッチング加工、スパッタ膜の形成、メッキ処理およびメッキリフロー処理などから選ばれる一以上の処理を含むフォトファブリケーション;ならびにダイシングが挙げられる。
【0051】
特にフォトファブリケーションにおいては、メッキ液や有機溶剤などの薬液に対する耐性(耐薬品性)が必要であり、メッキリフロー処理などに対する耐性(耐熱性)が必要である。このため、本発明の仮固定材を用いた基材の処理方法は、溶媒に有機化合物を溶解あるいは分散させてなる仮止め用組成物から得られる仮固定材を用いた基材の処理方法に比べ、耐薬品性や耐熱性の点で優れている。
【0052】
基材の加工処理は、仮固定材の保持力が失われない温度で行えば特に限定されない。本発明では、上記仮固定材層が、低温および高温環境下においても加工処理時に基材を保持(若しくは保護)しうる保持力を有している。
【0053】
以下では、基材の加工処理として、半導体ウエハの三次元実装の際に行われる加工処理を一例として説明する。三次元実装では、半導体ウエハの表面に対して垂直方向に延びる貫通電極を形成し、その貫通電極の端部や配線上に、パッド電極やバンプなどの接続用電極を形成する。このようにして形成された接続用電極同士を接続することで、積層した半導体ウエハ相互間を接続する。
【0054】
(i)工程(1)で仮固定材を介して支持体上に仮固定された半導体ウエハからなる基材上にレジストを塗布し、露光処理および現像処理を行い、所定の形状にパターニングされたレジスト層を形成する。例えば、円形状のレジストパターンを基材上に複数形成すればよい。
【0055】
(ii)レジスト層をマスクとして、基材の所定形状にパターニングされた部分をエッチングし、開口部(ホール)を形成する。その後、レジスト層を剥離液あるいはアッシング(例:O
2アッシング)などにより剥離する。エッチングにはドライエッチングやウェットエッチングを使用することができる。
【0056】
(iii)基材の開口部を形成した面上に、SiO
2などからなる絶縁層を形成する。
(iv)絶縁層への導体の拡散を防ぐ目的で、TiWおよびTiNなどからなるバリア層をスパッタにより形成する。次に、銅などからなるシード層をスパッタにより形成する。
【0057】
(v)基材の開口部を形成した面上にレジストを塗布し、露光処理および現像処理を行い、基材の開口部に対応した形状にパターニングされたレジスト層を形成する。次に、メッキ処理(Sn/Cuメッキなど)を施して、基材の開口部に導体を充填し、貫通電極を形成する。その後、レジスト層を除去し、バリア層およびシード層をドライエッチングにより除去する。
【0058】
(vi)このようにして加工処理がなされた基材の貫通電極上に、リフローにより、パッド電極やバンプなどの接続用電極を形成する。次に、形成された接続用電極同士を接続することで、積層した半導体チップ相互間を接続することができる。
【0059】
《工程3》
基材の加工処理または移動後は、仮固定材の加熱処理により、支持体から基材を剥離する。このように、加熱処理により仮固定材の接着力を低減させながら、支持体と基材とをその仮固定面に略水平にずらすなどの剪断処理(通常は1〜100N/cm
2)により、支持体から基材を剥離すればよい。加熱処理は、仮固定材の含有成分である非晶質体の軟化点以上で行い、通常は軟化点+100℃以下、好ましくは軟化点+50℃以下で行う。なお、本発明において「剪断」とは、支持体と基材との仮固定面の略平行方向に力を作用させることをいう。
【0060】
〔電子部品〕
本発明の電子部品(例:半導体素子)は、本発明の基材の処理方法によって得られる。上述の仮固定材は半導体素子等の電子部品の剥離時に容易に除去されるため、前記半導体素子等の電子部品は仮固定材による汚染(例:シミ、焦げ)が極めて低減されたものとなっている。
【実施例】
【0061】
以下、本発明の一実施態様を、実施例をもとにより具体的に説明する。
(1)仮固定材の準備
[実施例1]
リン酸25質量部、亜リン酸20質量部、ジフェニルジクロロシラン10質量部を含む混合溶液を、23℃で1時間、さらに250℃で3時間加熱することにより、非晶質体からなる実施例1の仮固定材を得た。下記評価結果を表1に示す。
【0062】
[実施例2]
実施例1において、混合溶液の組成を表1に記載したとおりに変更したこと以外は実施例1と同様に行い、非晶質体からなる実施例2の仮固定材を得た。下記評価結果を表1に示す。
(2)評価
上記で得られた仮固定材について、下記(2−1)〜(2−7)の評価を行った。
(2−1)構造解析
非晶質体の構造を、固体
29Si NMRおよび固体
13C NMRにて確認した。
(2−2)軟化点
10℃/分で昇温した熱機械分析測定(TMA)での収縮量変化から軟化挙動開始点を求め、その開始温度を非晶質体の軟化点とした。
(2−3)耐薬品性
仮固定材をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)またはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に、23℃で1時間浸漬し、100℃で1時間乾燥した。浸漬前後での仮固定材の質量減少率(%)を、{浸漬前の仮固定材の質量−浸漬後の仮固定材の質量}/{浸漬前の仮固定材の質量}×100(単位:質量%)より算出した。評価基準は以下の通りである。
【0063】
A:質量減少率が1%未満。
B:質量減少率が1%以上。
(2−4)接着性
シリコンウェハを縦1cm、横1cmの大きさに切断して得られたチップと、ガラス基板とを、仮固定材を介して重ね合わせた。その後、ダイボンダー装置を用いて、表1に示す圧着条件でチップとガラス基板とを圧着し、ガラス基板、仮固定材から形成された仮固定材層およびチップをこの順に備える、剪断接着力の評価用基板を準備した。万能ボンドテスター(商品名「デイジ4000」、デイジ社製)を用いて、剪断接着力の評価用基板の25℃での仮固定材の剪断接着力を測定した。剪断力はガラス基板と平行方向に、500μm/秒の速度で加えた。評価基準は以下のとおりである。
【0064】
A:剪断接着力が1MPaより大きい。
B:剪断接着力が1〜0.1MPa。
C:剪断接着力が0.1MPa未満。
(2−5)発泡の有無
前記「(2−2)接着性」評価で準備した評価用基板を、高温雰囲気下(300℃)で5時間加熱した。加熱後の仮固定材を、ガラス基板側から目視にて観察した。評価基準は以下のとおりである。
【0065】
A:仮固定材に発泡痕がない。
B:仮固定材に発泡痕がある。
(2−6)耐熱性
仮固定材を高温雰囲気下(300℃)に5時間さらした。高温雰囲気下にさらす前後での仮固定材の質量減少率(%)を、{高温雰囲気下にさらす前の仮固定材の質量−高温雰囲気下にさらした後の仮固定材の質量}/{高温雰囲気下にさらす前の仮固定材の質量}×100(単位:質量%)より算出した。評価基準は以下のとおりである。
【0066】
A:質量減少率が1%未満。
B:質量減少率が1%以上。
(2−7)剥離性
前記「(2−2)接着性」評価で準備した評価用基板に対して、万能ボンドテスターを用いて、表1に示す剥離温度で、500μm/秒の速度で4N/cm
2の剪断力をガラス基板と平行方向に加え、ガラス基板とチップを剥離した。剥離後のチップの表面の状態を目視にて観察した。評価基準は以下のとおりである。
【0067】
A:仮固定材の付着なし。
B:仮固定材の付着あり。
実施例における以上の条件および評価結果を表1に示す。
【0068】
【表1】