特許第5729145号(P5729145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5729145
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】送風機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/66 20060101AFI20150514BHJP
   F04D 29/28 20060101ALI20150514BHJP
   F04D 29/62 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   F04D29/66 M
   F04D29/28 J
   F04D29/62 F
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-125175(P2011-125175)
(22)【出願日】2011年6月3日
(65)【公開番号】特開2012-251494(P2012-251494A)
(43)【公開日】2012年12月20日
【審査請求日】2013年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 真範
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 功治
(72)【発明者】
【氏名】村山 真也
(72)【発明者】
【氏名】中村 耕平
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−032999(JP,A)
【文献】 実開昭63−098498(JP,U)
【文献】 独国特許出願公開第03413388(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/66
F04D 29/28
F04D 29/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転することで空気に運動量を与えるファン()と、
前記ファン()の回転軸となるシャフト(32)と、
前記ファン()の外部にて前記シャフト(32)を支える軸受(314)と、
前記ファン()の回転方向に移動可能な錘(61、63、65)とを備え、
前記ファン(1)は、前記回転軸の回りに配置された多数枚の翼部(11)と、前記多数枚の翼部(11)を連結する主板(13)とを有し、前記ファン(1)の径方向外側へ空気を吹き出す遠心式多翼ファンであり、
前記錘(61、63、65)は、前記ファン()のうち前記軸受(314)側の端部(13)よりも前記軸受(314)の反対側であって、前記ファン(1)における前記多数枚の翼部(11)よりも内側となるファン内側部位に配置されていることを特徴とする送風機。
【請求項2】
前記主板(13)は、前記シャフト(32)が結合されるボス(24)を有し、
前記錘(61、63)は前記ボス(24)に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の送風機。
【請求項3】
前記錘(65)は、前記主板(13)に形成された溝に収容されていることを特徴とする請求項に記載の送風機。
【請求項4】
前記錘(61、63)を収容する錘収容部(62、64)と
前記ファン(1)の軸方向一端側に配置されて空気を吸入する吸入口(411)とを備え、
前記主板(13)は前記ファン(1)の軸方向他端側に配置され、前記錘収容部(62、64)は、前記主板(13)から前記吸入口(411)側に向かって突出していることを特徴とする請求項1または2に記載の送風機。
【請求項5】
前記錘収容部(62)は、前記吸入口(411)側に向かって先細る形状になっていることを特徴とする請求項に記載の送風機。
【請求項6】
回転することで空気に運動量を与える第1、第2ファン(1、2)と、
前記第1、第2ファン(1、2)それぞれの回転軸となるシャフト(32)と、
前記第1、第2ファン(1、2)の外部にて前記シャフト(32)を支える軸受(314)と、
前記第1、第2ファン(1、2)の回転方向に移動可能な錘(61、63、65)とを備え、
前記第1、第2ファン(1、2)および前記軸受(314)は、前記シャフト(32)の軸方向に、前記第1ファン(1)、前記第2ファン(2)、前記軸受(314)の順に並んで配置されており、
前記錘(61、63、65)は前記第1ファン(1)に設けられていることを特徴とする送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バランス調整用の錘を備える送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の送風機は、回転体であるファンとモータの振動を打ち消すために、ファンにバランスウェイトを追加(プラスバランス調整)するか、または余剰ウェイトを除去(マイナスバランス調整)して、バランス調整を行っていた。例えば特許文献1には、マイナスバランス調整する遠心式送風機が記載されている。
【0003】
一方、特許文献2には、ファンと、ファンを固定するワッシャとの間に、錘を移動可能に配設することによって自動的にバランス調整する電動送風機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−30587号公報
【特許文献2】特開2005−94983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2の従来技術によると、製造過程におけるバランス調整の手間が少なくなるというメリットがある。しかしながら、錘によって回転体の重量が増加するので、送風機の効率が悪化するという問題がある。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、錘による重量増加を抑制することのできる送風機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、回転することで空気に運動量を与えるファン()と、
ファン()の回転軸となるシャフト(32)と、
ファン()の外部にてシャフト(32)を支える軸受(314)と、
ファン()の回転方向に移動可能な錘(61、63、65)とを備え、
ファン(1)は、回転軸の回りに配置された多数枚の翼部(11)と、多数枚の翼部(11)を連結する主板(13)とを有し、ファン(1)の径方向外側へ空気を吹き出す遠心式多翼ファンであり、
錘(61、63、65)は、ファン()のうち軸受(314)側の端部(13)よりも軸受(314)の反対側であって、ファン(1)における多数枚の翼部(11)よりも内側となるファン内側部位に配置されていることを特徴とする。
【0008】
これによると、錘(61、63、65)がファン()と軸受(314)との間に位置している場合に比べ、軸受(314)から錘(61、63、65)までの距離を大きく取ることができるので、錘(61、63、65)によるバランス調整効果を有効に発揮することができる。このため、錘(61、63、65)による重量増加を抑制することができる。
しかも、錘(61、63、65)を多数枚の翼部(11)よりも内側となるファン内側部位に配置しているから、ファン内側空間を有効に活用して遠心式多翼ファン(1)の径方向寸法を大型化することなく、錘(61、63、65)を効率的に配置することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、主板(13)は、シャフト(32)が結合されるボス(24)を有し、
錘(61、63)はボス(24)に設けられていることを特徴とする。
【0010】
ここで、本発明における「錘はボスに設けられている」は、錘がボス自体に設けられていることのみを意味するものではなく、錘がボスの近傍に設けられていることも含む意味のものである。
【0011】
これによると、空気の流れが比較的弱い領域に錘(61、63)が設けられることとなるので、錘(61、63)がファン()による空気の流れを乱して送風騒音を増加させることを抑制することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明では、請求項に記載の発明において、錘(65)は、主板(13)に形成された溝に収容されていることを特徴とする。
【0017】
これにより、錘(61、63)を一層効率的に配置することができる。
【0018】
請求項に記載の発明では、請求項1または2に記載の発明において、錘(61、63)を収容する錘収容部(62、64)を備え、
錘収容部(62、64)は、主板(13)からファン(1)の空気吸入側に向かって突出していることを特徴とする。
【0019】
これにより、錘(61、63)がファン(1)による空気の流れを乱して送風騒音を増加させることを抑制することができるとともに、ファン内部の空間を有効に活用して錘(61、63)を効率的に配置することができる。
【0020】
請求項に記載の発明では、請求項に記載の発明において、錘収容部(62)は、ファン(1)の空気吸入側に向かって先細る形状になっていることを特徴とする。
【0021】
これにより、ファン(1)による空気の流れを錘収容部(62)によって整えて送風騒音を抑制することができる。
【0022】
請求項に記載の発明では、回転することで空気に運動量を与える第1、第2ファン(1、2)と、
第1、第2ファン(1、2)それぞれの回転軸となるシャフト(32)と、
第1、第2ファン(1、2)の外部にてシャフト(32)を支える軸受(314)と、
第1、第2ファン(1、2)の回転方向に移動可能な錘(61、63、65)とを備え、
第1、第2ファン(1、2)および軸受(314)は、シャフト(32)の軸方向に、第1ファン(1)、第2ファン(2)、軸受(314)の順に並んで配置されており、
錘(61、63、65)は第1ファン(1)に設けられていることを特徴とする。
【0023】
これによると、錘(61、63、65)がファン(1、2)と軸受(314)との間に位置している場合に比べ、軸受(314)から錘(61、63、65)までの距離を大きく取ることができる。
特に、請求項6に記載の発明では、錘(61、63、65)を第2ファン(2)を挟んで軸受(314)と反対側の部位に配置することができるので、「軸受(314)から錘(61、63、65)までの距離」を第2ファン(2)が介在することで、より一層拡大できる。したがって、請求項6に記載の発明によれば、錘(61、63、65)による重量増加をより一層抑制することができる。
【0026】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態における送風機を示す断面図である。
図2図1のA−A断面図である。
図3図3は、図1の送風機の構成を簡潔なモデルで示したものである。
図4】第1実施形態による振動低減効果を示すグラフである。
図5】第2実施形態における送風機を示す断面図である。
図6】第3実施形態における送風機を示す断面図である。
図7】第4実施形態における送風機を示す断面図である。
図8】第5実施形態における送風機を示す断面図である。
図9】第6実施形態における送風機を示す断面図である。
図10】第7実施形態における送風機を示す断面図等である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態を説明する。図1に示す送風機は、車両用空調装置の室内ユニット(図示せず)に用いられ、室内ユニットの内外気切替箱により導入された外気および内気を吸入し、吸入した空気を室内ユニットの空調ユニットに向けて送風する。図1に示す上下の矢印は、車両搭載状態における各方向を示している。
【0029】
送風機は、車室外空気(外気)および車室内空気(内気)の両方を区分して吸入可能な内外気2層式送風機であり、第1ファン1、第2ファン2、電動モータ3およびケーシング4等を有している。
【0030】
第1ファン1および第2ファン2は、電動モータ3により回転駆動されて遠心方向に空気を吹き出す遠心式多翼ファンである。第1ファン1および第2ファン2は同軸状に配置されている。送風機の車両搭載状態では、第1ファン1が第2ファン2の上方側に位置している。本例では、第1ファン1および第2ファン2は樹脂にて一体成形されている。
【0031】
電動モータ3は、モータ本体部31と、モータ本体部31から突出するシャフト32とを有している。シャフト32は、第1ファン1および第2ファン2の回転軸をなすものであり、送風機の車両搭載状態では上下方向に延びている。モータ本体部31は、送風機の車両搭載状態では第1ファン1および第2ファン2の下方側に位置している。
【0032】
ケーシング4は、第1ファン1を収容する第1スクロール部41と、第2ファン2を収容する第2スクロール部42と、電動モータ3のモータ本体部31を収容するモータ収容部43とを有している。
【0033】
第1スクロール部41には、ファン軸方向の一端側(電動モータ3の反対側)に向かって開口した第1吸入口411が形成されている。第1吸入口411の外縁部には、第1ファン1の内側に向かって延びるベルマウスが形成されている。第1スクロール部41の内部には、第1ファン1から吹き出された空気を集合させる渦巻き状の流路が形成されている。
【0034】
第2スクロール部42には、ファン軸方向の他端側(電動モータ3側)に向かって開口した第2吸入口421が形成されている。第2吸入口421の外縁部には、第2ファン2の内側に向かって延びるベルマウスが形成されている。第2スクロール部42の内部には、第1ファン1から吹き出された空気を集合させる渦巻き状の流路が形成されている。
【0035】
ケーシング4の内部において、第2スクロール部41、42の外側には、第2吸入口421へ空気を導く導入通路44が形成されている。
【0036】
モータ収容部43は、ケーシング4の壁面を第2吸入口421側に向かって窪ませることによって形成されている。
【0037】
第1ファン1は、回転軸の周りに板状の翼部11(ブレード)が多数枚配置された構成になっている。多数枚の翼部11は、第1吸入口411側の端部が側板12によって連結され、その反対側の端部が主板13によって連結されている。
【0038】
側板12は、多数枚の翼部11を第1ファン1の外周側から締める箍の役割を果たすように環状に形成されている。主板13は、多数枚の翼部11を第1ファン1の底面側(反空気吸入側)から覆う円板状に形成されている。
【0039】
本例では、側板12は、ファン軸方向と平行な直線状の断面形状になっている。側板12は、翼部11間の空気流路の断面積がファン径方向の内側から外側に向かって縮小するように、翼部11間を流通する主流の流線に沿うような略円弧状の断面形状になっていてもよい。
【0040】
第2ファン2も、第1ファン1と同様に回転軸の周りに板状の翼部21(ブレード)が多数枚配置された構成になっている。第2ファン2の翼部21は、第2吸入口421側の端部が箍状の側板22によって連結され、その反対側の端部が円板状の主板23によって連結されている。
【0041】
主板23の中心部には、電動モータ3のシャフト32が結合される円筒状のボス24が形成されている。ボス24は、第1ファン1の主板13の中心部に連結されている。
【0042】
電動モータ3のモータ本体部31は、コア311、ロータ312、マグネット313、軸受314およびセンターピース315等を有している。コア311は、センターピース315を介してケーシング4に固定されている。センターピース315には2つの軸受314が固定されている。2つの軸受314は、第1、第2ファン1、2の外部にてシャフト32を支持している。ロータ312はシャフト32に固定され、マグネット313はロータ312に固定されている。
【0043】
シャフト32、軸受314、回路部(図示せず)などのモータ構成部品を外部の塵、汚れから保護するために、ケーシング4にはモータカバー5が取り付けられている。
【0044】
外部電源(図示せず)によりコア311に通電すると磁束変化が生じ、マグネット313を引き寄せる力が発生するので、マグネット313、ロータ312、シャフト32およびファン1、2がシャフト32の中心軸回りに一体となって回転運動する。
【0045】
ボス24の近傍(ファンボス部)には、回転による振動を低減するためのバランサ6が設けられている。具体的には、バランサ6は、第1ファン1の内側かつ主板13の中心部に設けられている。換言すれば、バランサ6は、ボス24よりも電動モータ3から離れた側(反モータ側)に配置されている。また、バランサ6は、第2ファン2よりも電動モータ3から離れた側(反モータ側)に配置されている。
【0046】
バランサ6は、ファン1、2の回転方向に移動可能なボール61(球状の錘)と、ボール61を収容するボール収容部62(錘収容部)とを有するボールバランサであり、ボール61がボール収容部62に形成された環状の収容空間621を移動することによってバランスを自動調整する。収容空間621は、ファン1、2と同軸状に形成されている。
【0047】
ボール収容部62は、主板13から第1吸入口411側(第1ファン1の空気吸入側)に向かって先細り状に突出している。図1の例では、ボール収容部62は円錐台状になっているが、円柱の角を落とした形状(R面取り、C面取り)になっていてもよい。
【0048】
本例では、ボール収容部62は、主板13の中心部を肉厚にし、その肉厚部に環状の溝を形成し、環状の溝をカバー部材で覆うことによって構成されている。
【0049】
図2は、図1のA−A断面図である。ボール61は収容空間621を自由に動き回る(転がる)ことができるようになっている。図2(a)はボール61が2個の場合の例を示し、図2(b)はボール61が3個の場合、図2(c)はボール61が4個の場合の例を示している。
【0050】
次に、上記構成における作動を説明する。電動モータ3がファン1、2を回転駆動すると、ファン1、2の翼部11、21が空気に運動量を与える。これにより、スクロール部41、42の吸入口41、42から空気が吸引され、ファン1、2の外周部から空気が送り出される。送り出された空気はスクロール部41、42の渦巻き状の流路に集められ、スクロール部41、42の吐出口(図示せず)から空調ユニット(図示せず)に送り出される。
【0051】
ここで、ファン1、2の回転バランスについて説明する。図3は、上記構成を簡潔なモデルで示したものである。図3(a)は、ファン1、2、シャフト32、ロータ312およびマグネット313からなる回転体Rの静止状態(回転速度ω=0)の状態を示し、図3(b)は回転体Rの回転速度ωが危険速度ωcより低い状態(ω<ωc)を状態を示し、図3(c)は回転体Rの回転速度ωが危険速度ωcより大きい状態(ω>ωc)を示している。
【0052】
図3(a)に示すように、ファン1、2、シャフト32、ロータ312およびマグネット313からなる回転体Rの慣性主軸Aは、シャフト32の中心軸と微小なズレを持つ。この微小なズレは、製造上の誤差等に起因するものである。
【0053】
そのため、図3(b)、(c)に示すように、回転体Rが回転することで発生する遠心力Fcによりモーメントが発生し、軸受314を支える支持部材(図1の例ではセンターピース315)が変形して、2つの軸受314間の特定の点Cを中心にシャフト32の中心軸は傾いて振れ回る。
【0054】
図3(b)に示すように、回転体Rは、危険速度ωcより低い回転速度ω(回転数)では遠心力FcによるモーメントはジャイロモーメントMgよりも大きいため、重心G及び慣性主軸Aはシャフト32の中心軸の外側を振れ回る。換言すれば、重心G及び慣性主軸Aは、傾いている実際のシャフト32の中心軸に対して、回転速度ω=0で傾いていないのときの仮想のシャフト32の中心軸(図3(b)の一点鎖線)の反対側に位置する。
【0055】
それに対し、図3(c)に示すように、回転体Rは、危険速度ωcより大きい回転速度ω(回転数)ではジャイロモーメントMgが遠心力Fcによるモーメントよりも大きいため、重心G及び慣性主軸Aはシャフト32の中心軸の内側に入る。換言すれば、重心G及び慣性主軸Aは、傾いている実際のシャフト32の中心軸と、回転速度ω=0で傾いていないのときの仮想のシャフト32の中心軸(図3(c)の一点鎖線)との間に位置する。
【0056】
このとき、バランサ6のボール61は遠心力によって重心Gと釣合う位置に自動的に配置されるので、バランサ6のボール61と重心Gおよび慣性主軸Aが釣合いの位置関係になる。そのため、シャフト32の振れ幅を小さくして振動を低減することができる。
【0057】
しかも、バランサ6は、軸受314から離れたファンボス部に配置されているので、シャフト32の傾き中心Cからボール61までの距離を大きく取ることができる。このため、ボール61によるバランス調整効果を有効に発揮することができる。
【0058】
また、バランサ6によって重量が増加するので、傾き中心C回りの慣性モーメントが増加してジャイロモーメントMgも増加する。このため、危険速度以上の回転数での振動を更に低減することができる。しかも、バランサ6は、軸受314から離れたファンボス部に配置されているので、小さい重量増加量で効率良く慣性モーメントを増加させることができる。
【0059】
本実施形態による振動低減効果の例を図4に示す。図4の比較例は、バランサ6がない送風機における振動を示している。図4からわかるように、本実施形態では、比較例に比べて危険速度が低下するとともに、危険速度ωcより大きい回転速度ωでの振動が低減する。
【0060】
さらに、本実施形態では、バランサ6がファンボス部(空気の流れが比較的弱い領域)に配置されているので、バランサ6が第1ファン1および第2ファン2による空気の流れ(吸入口41、42からファン外周側に向かう空気の流れ)を乱して送風騒音を増加させることを極力抑制することができるとともに、ファン内部の空間を有効に活用してバランサ6を効率的に配置することができる。
【0061】
さらに、ボール収容部62は、第1ファン1の空気吸入側(第1吸入口411側)に向かって細くなる円錐台状に形成されているので、第1ファン1による空気の流れをボール収容部62によって整えて送風騒音を抑制することができる。
【0062】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、バランサ6がファンボス部(ボス24の近傍)に設けられているが、本第2実施形態では、図5に示すように、バランサ6が側板12(ファン上部外周)に設けられている。具体的には、バランサ6のボール収容部62は、側板12に環状の溝を形成することによって構成されている。また、環状の溝には、ボール61の脱落を防止する返し形状が設けられている。
【0063】
本実施形態によると、上記第1実施形態に比べてシャフト32の傾き中心Cからボール61までの距離を一層大きく取ることができる。そのため、ボール61によるバランス調整効果を一層有効に発揮できるとともに、慣性モーメントを一層増加させることができるので、一層効率良く振動を低減することができる。
【0064】
また、バランサ6が第1ファン1および第2ファン2による空気の流れ(吸入口41、42からファン外周側に向かう空気の流れ)を乱して送風騒音を増加させることを極力抑制することができるとともに、ケーシング内部の空間を有効に活用してバランサ6を効率的に配置することができる。
【0065】
(第3実施形態)
本第3実施形態では、図6に示すように、収容空間621が仕切り部622によってボール61と同数個の空間にファン周方向に仕切られ、仕切られた各空間にボール61が1個ずつ収容され、仕切り部622の壁面に弾性体623が取り付けられている。
【0066】
本実施形態によると、ボール61の衝突による衝撃を仕切り部622および弾性体623によって緩和することができるので、危険速度においてボール61が不安定な挙動を示す場合にボール61同士あるいはボール61と仕切り部622が衝突することで振動が増加することを防止できる。
【0067】
(第4実施形態)
上記第3実施形態では、収容空間621がファン周方向に仕切られているが、本第4実施形態では、図7に示すように、収容空間621がファン径方向に仕切られている。これにより、ボール61同士が衝突することを防止できる。
【0068】
(第5実施形態)
上記第3、第4実施形態では、収容空間621がファン周方向またはファン径方向に仕切られているが、本第5実施形態では、図8に示すように、収容空間621がファン軸方向に仕切られている。これにより、ボール61同士が衝突することを防止できる。
【0069】
(第6実施形態)
上記第1〜第5実施形態では、バランサ6がボールバランサで構成されているが、本第6実施形態では、図9に示すように、バランサ6は、錘をなす流体63と、流体63を収容する流体収容部64(錘収容部)とを有する流体バランサで構成されている。
【0070】
流体63は、流体収容部64に形成された円柱状の収容空間641を移動することによってバランスを自動調整する。収容空間641は、ファン1、2と同軸状に形成されている。
【0071】
本例では、ボール収容部62は、主板13の中心部に円筒形状部を形成し、円筒形状部の開口部をカバー部材で覆うことによって構成されている。また、カバー部材には、収容空間641を密閉するためのOリング642が配置されている。
【0072】
本実施形態においても、バランサ6のバランス調整効果によって振動を低減することができる。
【0073】
(第7実施形態)
本第7実施形態では、図10に示すように、バランサ6が、主板13、23に形成された溝64と、溝64に摺動可能な錘65とで構成されている。
【0074】
本例では、溝64が複数個形成され、各溝64に錘65が1個ずつ配置されている。溝64は、ファン1、2と同軸の円弧状に形成されている。
【0075】
また、本例では、第1ファン1の主板13の中心側部位が第2ファン2側に窪んでいて第2ファン2の主板23と一体化されており、主板13、23が一体化されている部位に溝64が形成されている。
【0076】
本実施形態によると、錘65が溝64の形成範囲を移動することによってバランス調整効果を発揮することができる。
【0077】
また、本実施形態においても、バランサ6が第1ファン1および第2ファン2による空気の流れ(吸入口41、42からファン外周側に向かう空気の流れ)を乱して送風騒音を増加させることを極力抑制することができるとともに、ファン内部の空間を有効に活用してバランサ6を効率的に配置することができる。
【0078】
なお、本実施形態において、バランサ6を覆うカバーを設け、そのカバーによって空気の流れ(吸入口41、42からファン外周側に向かう空気の流れ)を整えるようにしてもよい。
【0079】
(他の実施形態)
なお、バランサ6の錘は微小粒体(砂粒等)であってもよい。ただし、微小粒体は、互いに付着しないさらさらのもの(湿気や粘り気がないもの)であるのが好ましい。
【0080】
また、バランサ6は振り子式バランサであってもよい。すなわち、バランサ6の錘を、シャフト32の中心軸回りに回転する振り子で構成してもよい。
【0081】
また、ファン1、2は遠心式多翼ファンに限定されるものではなく、軸流ファンや貫流ファン等の種々の形式のファンであってもよい。すなわち、遠心式多翼ファン以外の種々の形式のファンにおいても、軸受から錘までの距離を大きく取ることで錘による重量増加を抑制することができ、さらに空気の流れが比較的弱い領域であるボスの近傍に錘を設けることで錘による送風騒音の増加を抑制することができる。
【0082】
また、送風機は、2つのファンを備える内外気2層式送風機に限定されるものではなく、ファンが1つの単層式送風機であってもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 第1ファン(ファン)
2 第2ファン(ファン)
13 主板
24 ボス
32 シャフト
61 ボール(錘)
62 ボール収容部(錘収容部)
314 軸受
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10