(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記通信制御部が前記抽出された情報により規定される確立情報を用いて前記無線通信路を確立した後、前記取得部による前記音響信号の取得、又は前記抽出部による前記確立情報を規定する情報の抽出を停止し、当該抽出された情報に含まれる期限情報が示す当該確立情報の有効期限に応じたタイミングで当該停止を解除する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の通信端末。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、無線通信システム1の概略構成を示す図である。
無線通信システム1は、例えば或る飲食店内で、無線LANを利用したネットワークへの接続サービスを提供するものである。
無線通信システム1は、通信端末10と、無線アクセスポイント20と、サーバ装置30とにより構成される。通信端末10は、例えばスマートフォンであり、IEEE802.11に準拠した無線通信により無線アクセスポイント20に接続する移動通信端末である。無線アクセスポイント20は、無線LANアクセスポイントとも呼ばれる無線機である。無線アクセスポイント20は、通信端末10と無線通信を行う一方、通信ネットワーク90に接続してネットワーク通信を行う。すなわち、通信端末10は、無線アクセスポイント20経由で通信ネットワーク90に接続し、通信ネットワーク90に接続された各装置と相互に通信を行う。サーバ装置30は、無線アクセスポイント20と通信ネットワーク90を介して接続され、例えば各種のコンテンツを無線アクセスポイント20経由で通信端末10に提供する。
なお、
図1には、無線通信システム1に含まれる無線アクセスポイント20を1台だけ図示するが、複数存在していてもよい。また、通信ネットワーク90は、単独の通信ネットワークではなく、通信方式が異なる複数の通信ネットワークを相互接続したものであってもよい。
【0014】
図2は、通信端末10の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、通信端末10は、制御部11と、UI(User Interface)部12と、無線通信部13と、マイクロホン14と、スピーカ15と、記憶部16とを備える。
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)を含む演算装置やメモリ、計時部を備える制御装置である。演算装置は、メモリや記憶部16に記憶されたプログラムを実行することにより、通信端末10を制御する。計時部は、例えばリアルタイムクロックを備え、計時する機能を有している。UI部12は、例えばタッチパネルを備え、ユーザからの操作を受け付けるとともに、画像や音により情報を報知する。無線通信部13は、無線通信回路やアンテナを備え、無線アクセスポイント20に接続するためのインタフェースである。具体的には、無線通信部13は、無線アクセスポイント20を通信相手として無線通信路(つまり、無線リンク)を確立し、確立した無線通信路を介して無線アクセスポイント20と無線通信を行う。無線通信部13は、本発明の無線通信部の一例であり、無線通信を行うための電波が届く範囲の通信相手と無線通信を行う。マイクロホン14は、通信端末10で接続された収音部であり、音波を検出する検出部に相当するものでもある。マイクロホン14は、通信端末10の位置で例えば受話音声などの音波を検出し、検出した音波を表す音響信号を制御部11に出力するものである。この音響信号は、例えば、音波形を表すアナログ形式の波形信号である。アナログ形式の音響信号は、制御部11においてサンプリングされてデジタル形式の音響信号に変換される。スピーカ15は、送話音声などを放音する。
【0015】
記憶部16は、例えばEEPROM(Electronically Erasable and Programmable ROM)を備え、制御部11が用いる各種のプログラムを記憶する。このプログラムには、通信端末10が無線アクセスポイント20に接続するために用いられる接続アプリケーションプログラム161のほか、制御部11が実行することにより通信ネットワーク90への接続を要するアプリケーションプログラムが含まれる。このアプリケーションプログラムは、例えば、ブラウザや、楽曲配信サーバから楽曲をダウンロードするためのもの、他のユーザの端末との相互通信に対応したゲームに関するものである。
【0016】
図3は、無線アクセスポイント20の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、無線アクセスポイント20は、制御部21と、無線通信部22と、ネットワーク通信部23と、スピーカ24と、記憶部25とを備える。
制御部21は、CPUを含む演算装置やメモリ、計時部を備える制御装置である。演算装置は、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより、無線アクセスポイント20を制御する。計時部は、例えばリアルタイムクロックを備え、計時する機能を有している。無線通信部22は、無線通信回路やアンテナを備え、通信端末10に接続するためのインタフェースである。無線通信部22は、通信端末10を通信相手として無線通信路を確立し、確立した無線通信路を介して通信端末10と無線通信を行う。ネットワーク通信部23は、通信ネットワーク90に接続するためのインタフェースである。スピーカ24は、制御部21から供給される音響信号に応じて音波を放射する放音部として機能するものである。記憶部25は、例えばハードディスク装置を備え、制御部21が動作するためのプログラムや、無線通信路を確立するために必要な情報である確立情報を生成するための確立情報生成プログラム251を記憶する。
【0017】
確立情報は、通信端末10と無線アクセスポイント20との間に無線通信路を確立するために必要な情報である。すなわち、無線アクセスポイント20から確立情報を取得した通信端末10のみが、通信ネットワーク90を利用した接続サービスの提供を受けることができる。確立情報は、具体的には、SSID(Service Set Identifier)と、WEP(Wired Equivalent Privacy)に従う暗号化キーと、暗号化キーの有効期限を表す期限情報とを含む。SSIDは、IEEE802.11に準拠した無線通信システムの無線LANにおける無線アクセスポイント20の識別子である。SSIDは、複数の無線アクセスポイント20と交信可能になる混信状態の発生を避けるために用いられる。WEPは、RC4アルゴリズムをベースにした秘密鍵暗号方式であり、IEEE802.11のセキュリティシステムとして採用されるものである。期限情報は、暗号化キーの有効期限を表すものである。この実施形態では、暗号化キーは、時刻に応じて内容が変化する情報であり、或る期間毎(例えば、30分毎)に更新されるものである。
なお、ここでは、無線通信システム1においてはWEPである暗号方式に従うことが接続アプリケーションプログラム161内や確立情報生成プログラム251内にあらかじめ記述されており、この記述に従って、通信端末10と無線アクセスポイント20との双方がこの暗号方式を認識できるものとする。これに代えて、確立情報が、WEPである暗号方式を示す情報を含んでおり、接続アプリケーションプログラム161や確立情報生成プログラム251にどの暗号方式に従うかに関する記述がなされていない構成であってもよい。
【0018】
無線アクセスポイント20は、自機との無線通信を可能にするエリア(以下、「通信可能エリア」という。)内に位置する通信端末10に、確立情報を配布する機能を有している。ここでは、通信可能エリアは、店舗の室空間に形成され、店外の空間を含まないことが意図されている。この場合、通信可能エリア内に位置する通信端末10のみがこの確立情報を取得し、取得した確立情報を用いて無線アクセスポイント20との間に無線通信路を確立することができる。つまり、確立情報は、通信可能エリアの範囲をコントロールするために用いられるものでもある。
【0019】
図4は、無線アクセスポイント20の制御部21の機能的構成を示す機能ブロック図である。
図4に示すように、制御部21は、各種のプログラムを実行することにより、確立情報生成部211と、重畳部212と、放音制御部213と、通信制御部214とに相当する機能を実現する。
確立情報生成部211は、確立情報生成プログラム251を読み出し、確立情報生成プログラム251内に記述されるアルゴリズムに従って確立情報を生成する。ここでの確立情報は、確立情報が表す内容を符号化して「0」又は「1」の値を用いて表したビット列で表される。確立情報生成部211は、SSID、暗号化キー及び期限情報の内容を特定して、その内容を表す確立情報を生成する。
【0020】
重畳部212は、確立情報を規定する情報を音響信号に重畳する。重畳部212は、ここでは、確立情報生成部211により生成された確立情報を音響信号に重畳する。確立情報の重畳については、いわゆる音響透かしの技術を用いて実現することができる。例えば、重畳部212は、一定の巡回周期を持つ擬似乱数符号列であるM系列や、Gold系列などを拡散符号として用い、この拡散符号と確立情報とを乗算する。この処理は、拡散処理とも呼ばれ、確立情報の値によって拡散符号が巡回周期毎に位相変調されるとともに、確立情報の周波数スペクトルが拡散される。確立情報が重畳されることとなる音響信号については本発明で特定のものに限られないが、例えば音響信号は、店舗内で流されるBGM(Background Music)を表すものである。以上のような重畳部212は、本発明の重畳部の一例である。
なお、重畳部212は、音響信号に応じた放音に与える影響を少なくするように、例えば、音響信号の周波数成分よりも高い帯域に確立情報が重畳されるようにする。
【0021】
図5は、確立情報が重畳された音響信号の構造を模式的に表した図である。
図5に示すグラフにおいて、横軸は周波数fに対応し、縦軸は音圧レベルに対応する。
図5に示すように、確立情報が重畳された音響信号にあっては、周波数f
0よりも低い周波数帯域に、確立情報が重畳される前の音響信号に相当し人間が聴取することを目的とした音の周波数成分が含まれ、周波数f
0よりも高い周波数帯域に、確立情報の周波数成分が含まれている。音響信号は、例えば可聴帯域(およそ20Hz〜20kHz)に周波数成分を持ち、可聴帯域よりも高い帯域に確立情報を重畳する帯域が確保されている。周波数f
0は、例えば18.5kHz以上のように、可聴域の高域の限界付近以上であることが好ましい。この場合、確立情報が重畳された音響信号に応じた放音において、人間の耳には確立情報に相当する音をほとんど聴き取ることができないとともに、確立情報が音質を損なわせることがほぼないため、聴感上の悪影響を抑えることができる。ただし、音響信号を圧縮するときのエンコーダの特性や、A(アナログ)/D(デジタル)変換に用いるA/D変換器の特性などにより、可聴域外に重畳された確立情報を維持することができない場合などには、例えば15kHz以上のように可聴域内の比較的高周波の帯域に確立情報が重畳されてもよい。すなわち、確立情報がどの周波数帯域を用いて重畳されるかについて、本発明において特定の帯域に限定されることはない。また、音響信号において、人間が聴取することを目的とした音に対応する周波数成分と、確立情報に対応する周波数成分との音圧レベルは、その音響信号から確立情報が抽出可能である限り、特定の関係を有していなくてもよい。
【0022】
放音制御部213は、重畳部212により確立情報が重畳された音響信号をスピーカ24に出力し、その音響信号に応じてスピーカ24に放音させる。これにより、スピーカ24からは確立情報に対応する周波数成分を含む音が放音される。すなわち、スピーカ24からの音が届く空間領域にほぼ一致するように通信可能エリアが形成される。すなわち、放音制御部213は、本発明の放音制御部の一例である。
通信制御部214は、無線通信部22により通信端末10から取得した確立情報を用いて、通信端末10と無線アクセスポイント20との間に無線通信路を確立する。通信制御部214が通信端末10から取得する確立情報は、放音制御部213により放射された音波を表す音響信号から通信端末10により抽出された確立情報である。そして、通信制御部214は、確立した無線通信路を介して通信端末10と通信するよう無線通信部22を制御する。例えば、通信制御部214は、通信端末10を通信相手として許可するか否かなどの認証も行う。すなわち、通信制御部214は、本発明の通信制御部の一例である。
【0023】
図6は、通信端末10の制御部11の機能的構成を示す機能ブロック図である。
図6に示すように、制御部11は、接続アプリケーションプログラム161を実行することにより、音響信号取得部111と、抽出部112と、通信制御部113とに相当する機能を実現する。
音響信号取得部111は、マイクロホン14により収音(検出)された音波を表す音響信号を取得する。通信端末10が通信可能エリア内に位置する場合、スピーカ24から放音された確立情報に対応する周波数成分を含む音がマイクロホン14により収音される。すなわち、音響信号取得部111は、確立情報の周波数成分を含む音響信号を取得しうるものである。
なお、音響信号取得部111は、本発明の取得部の一例である。
【0024】
抽出部112は、音響信号取得部111により取得された音響信号から確立情報を規定する情報として、音響信号に重畳された確立情報を抽出する。抽出部112は、例えば遮断周波数をf
0とするHPF(High Pass Filter)を備える。抽出部112は、このHPFを用いたフィルタリング処理を施して、確立情報に相当する周波数成分を取り出す。そして、抽出部112は、重畳部212で用いられるものと同じ拡散符号を発生して、この拡散符号と音響信号との相関を求める。拡散符号として自己相関性の非常に高い信号が用いられたときにその音響信号と拡散符号との相関を求めると、急峻なピークの現れる波形が抽出される。この波形が音響信号に重畳された確立情報に対応し、抽出部112は、この波形から確立情報を復号して抽出する。これにより、抽出部112は、SSID、暗号化キー及び期限情報の3つの情報を、音響信号を介して無線アクセスポイント20から取得する。すなわち、抽出部112は、本発明の抽出部の一例である。
【0025】
通信制御部113は、抽出部112により抽出された確立情報を無線通信部13により送信して、通信端末10と無線アクセスポイント20との間に無線通信路を確立する。そして、通信制御部113は、確立した無線通信路を介して無線アクセスポイント20と通信するよう無線通信部13を制御する。すなわち、通信制御部113は、本発明の通信制御部の一例である。
なお、厳密に言うと、音響信号に応じてスピーカ24から放音された音が届き、かつ、無線アクセスポイント20の無線通信部22から発せられる無線LANの電波が伝搬する場所で、通信端末10は無線アクセスポイント20と無線通信を行うことができる。一般に、音波よりも無線LANのような通信に用いられる電波の方がその遮蔽をすることが難しい。よって、この実施形態では、少なくとも音響信号に応じて音が届く場所には、無線LANの電波が伝搬しているとする。
【0026】
図7は、無線通信システム1における処理の流れを示すシーケンスチャートである。
無線アクセスポイント20の制御部21は、確立情報生成プログラム251を実行して、SSID、暗号化キー及び期限情報を含む確立情報を生成する(ステップS1)。次に、制御部21は、記憶部25から例えば店舗内で再生する楽曲を表す音響信号を読み出して、読み出した音響信号に確立情報を重畳する(ステップS2)。次に、制御部21は、確立情報を重畳した音響信号をスピーカ24から音波として出力して、その音響信号に応じてスピーカ24に放音させる(ステップS3)。
【0027】
通信端末10の制御部11は、あらかじめ接続アプリケーションプログラム161を実行している。接続アプリケーションプログラム161の実行中に、マイクロホン14は音波を収音(検出)し、制御部11は当該音波を表す音響信号を取得する(ステップS4)。次に、制御部11は、取得した音響信号から確立情報を抽出する(ステップS5)。そして、制御部11は、抽出した確立情報に含まれる暗号化キー及びSSIDを含めた通信要求を、無線通信部13によって無線アクセスポイント20に送信する(ステップS6)。
なお、制御部11は、接続アプリケーションプログラム161の実行中には、マイクロホン14から音響信号継続して取得する。
【0028】
無線アクセスポイント20の制御部21は、無線通信部22により通信端末10から通信要求を受信すると、その正当性を認証する。ここで、制御部21は、SSID及び暗号化キーの両者が正当なものであると認証した場合に限り、その送信元である通信端末10との無線通信を許可する。通信端末10の制御部11は、この許可を無線アクセスポイント20から取得した場合に限り、その送信元である無線アクセスポイント20と無線通信を行う。この許可を受けて、制御部11は、無線通信部13によって無線アクセスポイント20の無線通信部22と通信端末10との間に無線通信路を確立する(ステップS7)。そして、通信端末10及び無線アクセスポイント20は、ステップS7の処理で確立した無線通信路を介して、相互に無線通信を行う(ステップS8)。
【0029】
ステップS8の処理では、通信端末10の制御部11は、無線アクセスポイント20経由で通信ネットワーク90からコンテンツをダウンロードしたり、ゲームに関するデータを送受信したりして、各種の無線通信を行う。また、無線アクセスポイント20の制御部21は、無線アクセスポイント20に応じたコンテンツをネットワーク通信部23によってサーバ装置30から受信し、これを無線通信部22により通信端末10に配信する。例えば、無線アクセスポイント20は、無線通信システム1が構成される店舗の広告やクーポン券などコンテンツを通信端末10に提供する。このコンテンツは、例えば、無線通信システム1が構成される場所に関連した内容である。
【0030】
なお、無線通信システム1では、確立情報に対応する周波数成分を含む音が継続してスピーカ24から放音されるので、通信端末10のユーザがいつ通信可能エリアに進入しても、速やかに通信端末10は無線通信路を確立することができる。ところで、無線アクセスポイント20側では定期的に暗号化キーを更新するが、その更新があるときには、その更新後の暗号化キーを含む確立情報が重畳された音響信号に応じて放音する。一方、通信端末10は、
期限情報が含まれる
確立情報を取得するから、一旦無線通信路を確立すれば、この期限情報が示す有効期限が到来するまでは、ステップS5の確立情報の抽出に関する処理を停止する。有効期限が到来するまでは、通信端末10が先に使用した確立情報によって無線通信路が確立されているから、新たに確立情報を抽出しなくても、有効期限が到来するまではその無線通信路が維持されるためである。このステップS5の処理における抽出の省略によって、これを省略しない場合に比べて、通信端末10における低消費電力化が実現される。また、この期間において、制御部11は、接続アプリケーションプログラム161の実行中であっても、マイクロホン14による収音を停止させてもよい。
【0031】
また、無線アクセスポイント20で暗号化キーを定期的に更新する構成としているのは、通信端末10がスピーカ24からの音が届く範囲で確立情報を取得した後、例えば店舗外へ出て無線通信システム1の接続サービスが利用されることを防ぐためでもある。つまり、暗号化キーの更新があるときに通信可能エリア内にいなければ、無線通信路が維持されないので、このように確立情報の少なくとも一部が時刻とともに変化することも、接続サービスを提供するエリアのコントロールに寄与している。もちろん、このような定期的な暗号化キーの更新は、暗号化キーが解読されて不正なアクセスを防ぐことにも貢献するものである。
なお、無線アクセスポイント20は無線通信に使用するチャネルや周波数などの無線通信路の確立に必要な情報を周期的に通信端末10に送信するが、これについては、制御部21が無線通信部22によって送信する。
【0032】
以上説明した第1実施形態によれば、無線アクセスポイント20は、自機との無線通信路の確立に必要な確立情報を音響信号に重畳して配布する。つまり、音響信号に応じた音が届くエリアのみに確立情報が配布されるから、例えば壁やパーテションなどを用いて遮音すれば、実質的に、無線通信に用いられる電波が届くエリアに対して通信可能なエリアを、人間が目視可能な手段であるエリア制限手段(つまり、壁やパーテションなどの遮音の効果を奏する部材)を用いて比較的容易に制限することができる。例えば、音響信号が店舗内で再生されるBGMとして用いられる場合、店舗内に通信可能エリアが形成されるが、店舗の出入口を閉じるなどにより音響信号に応じてスピーカ24から放射される音波を遮断すれば、確立情報が外部に漏れることを抑えられる。このように、無線通信システム1によれば、無線アクセスポイントとの無線通信を行うための電波が届く範囲をコントロールしなくとも、その無線通信が許可されるエリアを狭く制限することができる。更に、無線通信システム1によれば、確立情報が重畳された音の届く範囲を音量調整でコントロールすることも可能である。また、確立情報が重畳される比較的高い周波数帯は距離に応じた減衰が比較的大きいので、無線通信システム1によれば、通信可能エリアを狭い範囲に絞って形成することも可能である。また、屋外は暗騒音が高いため、このような理由からも店舗外のユーザに接続サービスが誤って利用される可能性を抑えることができる。更に、音波の性質上、壁面などで反射したり回折したりするから、確立情報が発せられる位置であるスピーカ24の位置から直接見渡せない場所に対しても、必要に応じて、無線アクセスポイント20は、確立情報を配布することができる。すなわち、確立情報を取得するために通信端末10のマイクの向きなどを精密に調整する必要がないから、この調整に関してユーザに強いられる手間も抑えられる。
【0033】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
上述した第1実施形態では、無線アクセスポイント20は、確立情報を重畳した音声信号に応じて放音していた。すなわち、通信端末10は、無線アクセスポイント20との無線通信路の確立に必要な確立情報を、音響信号から直接取得していた。これに代えて、通信端末10が、音響信号から直接、確立情報を取得しない構成としてもよい。本実施形態では、無線アクセスポイント20は、確立情報を規定する情報として、確立情報そのものに代えて、確立情報の代替となる情報(以下、「代替情報」という。)を音響信号に重畳する。通信端末10は、音響信号から抽出した代替情報を基に確立情報を生成する。このように、本実施形態では、確立情報の基となる代替情報と、通信端末10における確立情報の生成アルゴリズムとにより、無線通信システム1で用いられる確立情報が規定される、ということができる。
以下、本実施形態について詳細に説明する。本実施形態において、上述した第1実施形態と同じ符号を付した構成要素は、基本的には上述した第1実施形態と同等に機能するから、以下では相違点を主に説明する。なお、無線通信システム1の各装置のハードウェア構成は上述した第1実施形態と同じであり、その説明を省略する。ただし、接続アプリケーションプログラム161に記述されたアルゴリズムの内容は、上述した第1実施形態と相違する。また、無線アクセスポイント20では、確立情報生成プログラム251に代えて、代替情報を生成するための生成プログラムが記憶部25に記憶されている。
【0034】
図8は、無線アクセスポイント20の制御部21の機能的構成を示す機能ブロック図である。
図8に示すように、制御部21は、生成プログラムを含む各種のプログラムを実行することにより、代替情報生成部215と、重畳部212と、放音制御部213と、通信制御部214とに相当する機能を実現する
代替情報生成部215は、生成プログラムに記述されるアルゴリズムに従って、確立情報の代替情報を生成する。代替情報は、ここでは、無線通信システム1で用いられる確立情報と一対一で対応しており、「0」又は「1」の値を用いて表したビット列で表される。例えば、確立情報が所定の擬似乱数生成アルゴリズムに従って生成される擬似乱数で表現される場合、代替情報は、この擬似乱数の生成に用いられるシード値(すなわち、擬似乱数を生成するための初期値)とすることができる。また、代替情報は、確立情報を決められた規則に従って変換(例えば、暗号化)した情報であってもよい。本実施形態の代替情報は、確立情報を通信端末10で導出することのできる情報である限り、どのような情報であってもよい。ただし、ここでは、代替情報生成部215が生成する代替情報の情報量(つまり、ビット数)は、確立情報の情報量よりも少ないものとする。
なお、代替情報生成部215は、確立情報を基に代替情報を生成することを必須とするものでなく、結果として、代替情報が得られるような機能を実現するものであればよい。
【0035】
重畳部212は、代替情報生成部215により生成された代替情報を音響信号に重畳する。代替情報の重畳については、上述した第1実施形態と同様、音響透かしの技術を用いて実現することができる。放音制御部213は、重畳部212により代替情報が重畳された音響信号をスピーカ24に出力し、その音響信号に応じてスピーカ24に放音させる。通信制御部214は、放音制御部213の制御に応じてスピーカ24から音波として放射された音波を表す音響信号から、通信端末10により抽出された代替情報により規定される確立情報であって、無線通信部22により通信端末10から取得した確立情報を用いて、通信端末10と無線アクセスポイント20との間に無線通信路を確立する。
【0036】
図9は、通信端末10の制御部11の機能的構成を示す機能ブロック図である。
図9に示すように、制御部11は、接続アプリケーションプログラム161を実行することにより、音響信号取得部111と、抽出部112と、確立情報生成部114と、通信制御部113とに相当する機能を実現する。
音響信号取得部111は、マイクロホン14で検出された音波を表す音響信号を取得する。音響信号取得部111は、代替情報の周波数成分を含む音響信号を取得しうるものである。抽出部112は、音響信号取得部111により取得された音響信号から代替情報を抽出する。抽出部112での代替情報の抽出については、上述した第1実施形態と同様の手法で実現することができる。
【0037】
確立情報生成部114は、予め決められた処理を抽出部112により抽出された代替情報に施すことにより、確立情報を生成する。例えば、擬似乱数の生成に用いられるシード値が代替情報である場合、確立情報生成部114は、このシード値を用いて、所定の擬似乱数生成アルゴリズムに従って擬似乱数で表現される確立情報を生成する。また、代替情報が確立情報を決められた規則に従って変換した(例えば、暗号化した)情報である場合、確立情報生成部114は、この規則に従った変換処理(例えば、復号処理)を代替情報に施して、確立情報を生成する。
確立情報生成部114が代替情報を基に確立情報を生成できるようにするために、無線通信システム1では、代替情報と確立情報との対応関係があらかじめ取り決められ、この取り決めが接続アプリケーションプログラム161や生成プログラムのアルゴリズムに反映されている。以上の機能を実現する確立情報生成部114は、本発明の生成部の一例である。
【0038】
図10は、無線通信システム1における処理の流れを示すシーケンスチャートである。
無線アクセスポイント20の制御部21は、生成プログラムを実行して代替情報を生成する(ステップS11)。次に、制御部21は、記憶部25から読み出した音響信号に代替情報を重畳する(ステップS12)。次に、制御部21は、代替情報を重畳した音響信号をスピーカ24に出力して、その音響信号に応じてスピーカ24から音波として放音させる(ステップS13)。
【0039】
通信端末10の制御部11は、接続アプリケーションプログラム161の実行中にマイクロホン14で検出した音波を表す音響信号を取得する(ステップS14)。次に、制御部11は、取得した音響信号から代替情報を抽出する(ステップS15)。そして、制御部11は、予め決められた処理を抽出した代替情報に施して、確立情報を生成する(ステップS16)。そして、制御部11は、生成した確立情報に含まれる暗号化キー及びSSIDを含めた通信要求を、無線通信部13によって無線アクセスポイント20に送信する(ステップS17)。
以降、上述した第1実施形態のステップS7,S8の処理と同様にして、通信端末10と無線アクセスポイント20との間に無線通信路が確立され(ステップS18)、通信端末10及び無線アクセスポイント20は、ステップS18の処理で確立した無線通信路を介して、相互に無線通信を行う(ステップS19)。
【0040】
以上説明した第2実施形態の無線通信システム1では、確立情報がそのまま音響信号に重畳されているのではなく、通信端末10で生成される確立情報の基となる代替情報が音響信号に重畳される。通信端末10は代替情報を基に確立情報を生成するので、上述した第1実施形態と同様、この確立情報に基づいて、通信端末10と無線アクセスポイント20との間に無線通信路が確立される。また、本実施形態の無線通信システム1では、代替情報の情報量が確立情報の情報量よりも少ない。これにより、本実施形態の無線通信システム1では、第1実施形態の構成よりも狭い周波数帯域で必要な情報を音響信号に重畳することも可能である。換言すると、音響信号を用いての情報の伝送レートが低い場合であっても、無線アクセスポイント20は、通信端末10が確立情報を取得するための代替情報を配布することができる。これに関して、通信端末10が音響信号に応じて放音された音波を検出し、検出した音波を示す音響信号から情報を抽出するために要する時間を、上述した第1実施形態よりも短くすることもできる。更に、音響信号に応じた音波が伝搬する空間領域を、確立情報そのものが伝搬するわけではないので、仮に第三者によって不正に音響信号から代替情報が抽出されたとしても、確立情報そのものが直ちに取得されることがない。これにより、無線通信システム1では、より確実に、正当なユーザの通信端末10に対し無線アクセスポイント20との無線通信が許可されるようになる。
【0041】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を説明する。上述した第2実施形態では、無線アクセスポイント20が、確立情報を規定する情報として、通信端末10で生成される確立情報の基となる代替情報を音響信号に重畳していたが、代替情報はこれ以外の情報であってもよい。本実施形態では、通信端末10が音響信号から抽出した代替情報を用いて外部のサーバ装置(後述する、提供サーバ50)に問い合わせて、この代替情報に対応した確立情報をサーバ装置から取得する。このように、本実施形態では、代替情報とサーバ装置とにより、通信端末10が取得する確立情報が規定される。
以下、本実施形態について詳細に説明する。本実施形態において、上述した第1実施形態と同じ符号を付した構成要素は、基本的には上述した第1実施形態と同等に機能するかから、以下では相違点を主に説明する。なお、無線通信システム1aの各装置のハードウェア構成は上述した第1実施形態と同じであり、その説明を省略する。ただし、接続アプリケーションプログラム161に記述されたアルゴリズムの内容は、上述した第1実施形態と相違する。また、無線アクセスポイント20では、確立情報生成プログラム251に代えて、代替情報を生成するための生成プログラムが記憶部25に記憶されている。
【0042】
図11は、本実施形態の無線通信システム1aの概略構成を示す図である。
無線通信システム1aは、通信端末10と、無線アクセスポイント20と、コンテンツサーバ30aと、提供サーバ50とにより構成される。コンテンツサーバ30aは、上述した第1実施形態のサーバ装置30と同一のサーバ装置であるが、本実施形態では説明の便宜上、「コンテンツサーバ30a」と称している。通信端末10と、無線アクセスポイント20と、コンテンツサーバ30aとは、上述した第1実施形態と同一の接続関係にある。提供サーバ50は、無線通信ネットワーク80を介して通信端末10と接続されるサーバ装置である。提供サーバ50は、通信端末10からの要求に応じて、この通信端末10に確立情報を提供する。無線通信ネットワーク80は、ここでは3G回線であり、IMT−2000(International Mobile Telecommunication 2000)に準拠した3G(3rd Generation)と呼ばれる方式の無線通信網である。提供サーバ50と通信するため、本実施形態の通信端末10は、IMT−2000方式の通信規格に従って無線通信を行う機能を有している。このため、通信端末10の無線通信部13は、通信ネットワーク90に接続するためのインタフェースとともに、無線通信ネットワーク80に接続するためのインタフェースを有している。
なお、通信ネットワーク90と無線通信ネットワーク80とは互いに異なる通信網であるが、これらは図示せぬゲートウェイ装置などを接続されている。そして、無線通信システム1aでは、無線アクセスポイント20と提供サーバ50とは、通信ネットワーク90及び無線通信ネットワーク80経由で通信可能である。
【0043】
図12は、提供サーバ50の構成を示すブロック図である。
図12に示すように、提供サーバ50は、制御部51と、ネットワーク通信部52と、記憶部53とを備える。
制御部51は、CPUを含む演算装置やメモリを備える制御装置である。演算装置は、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより、提供サーバ50を制御する。ネットワーク通信部52は、無線通信ネットワーク80に接続するためのインタフェースであり、本発明の網通信部に相当する。記憶部53は、例えばハードディスク装置を備え、制御部51が動作するためのプログラムや、通信端末10に提供されうる確立情報が記述された確立情報管理テーブル531を記憶する。ここでの確立情報管理テーブル531は、一の無線アクセスポイント20に対応してひとつ用意され、無線アクセスポイント20毎に使い分けられるものとする。
【0044】
図13は、確立情報管理テーブル531の構造を示す図である。
図13に示すように、確立情報管理テーブル531は、「管理番号」と「確立情報」という各情報を対応付けた構造であり、このようなデータの組が複数記述されている。管理番号は、提供サーバ50で管理される各確立情報を区別するために割り当てられた番号であり、一の確立情報に一の管理番号が割り当てられる。確立情報管理テーブル531に記述された管理番号は、無線アクセスポイント20で音響信号に重畳された管理番号と一致する。確立情報は、上述した各実施形態と同等の情報である。
図13に示す確立情報管理テーブル531では、管理番号「No.001」〜「No.005」に対応付けて、確立情報「est001」〜「est005」がそれぞれ対応付けられている。
【0045】
無線アクセスポイント20は、利用可能な一の確立情報に対応した管理番号を配信する。提供サーバ50は、通信端末10から確立情報の送信要求があった場合、その送信要求で指定された管理番号に対応付けられた確立情報を確立情報管理テーブル531から特定して、通信端末10に提供する。よって、提供サーバ50は、その時点で利用可能な確立情報を通信端末10に提供することが可能となる。このように、確立情報管理テーブル531において確立情報に対応付けられた管理番号が、本発明の代替情報に相当する。
なお、本実施形態でも、管理番号の情報量が確立情報の情報量よりも少ない場合を想定する。このようにするのは、上述した第2実施形態と同様の理由によるものである。
【0046】
図14は、提供サーバ50の制御部51の機能的構成を示す機能ブロック図である。
図14に示すように、制御部51は、プログラムを実行することにより、要求取得部511と、確立情報特定部512と、提供部513とに相当する機能を実現する。
要求取得部511は、通信端末10からネットワーク通信部52により受信され、通信端末10において抽出された管理番号を指定した送信要求を取得する。管理番号は、抽出部112により音響信号から抽出された代替情報である。
【0047】
確立情報特定部512は、要求取得部511により取得された送信要求に応じた確立情報を特定する。具体的には、確立情報特定部512は、送信要求で指定された管理番号に対応付けて確立情報管理テーブル531に記憶された確立情報を特定する。
提供部513は、確立情報特定部512により特定された確立情報を、ネットワーク通信部52により送信して通信端末10に提供する。すなわち、提供部513は、本発明の提供部の一例である。
【0048】
図15は、無線通信システム1aにおける処理の流れを示すシーケンスチャートである。
無線アクセスポイント20の制御部21は、現時点で利用可能な確立情報に対応した管理番号を特定する(ステップS21)。ここでは、無線アクセスポイント20の制御部21は、利用可能な確立情報の代替となる管理番号を通知するよう、ネットワーク通信部53により提供サーバ50に要求する。この要求には、現時点で利用可能な確立情報が指定されているものとする。提供サーバ50の制御部51は、管理番号の通知が要求されると、その要求で指定された確立情報に対応付けられた管理番号を確立情報管理テーブル531を参照して特定し、特定した管理番号をネットワーク通信部52により無線アクセスポイント20に送信させる。制御部21は、無線アクセスポイント20から受信することで取得した管理番号を、ステップS21の処理で特定することとなる。
【0049】
次に、制御部21は、ステップS21の処理で特定した管理番号を音響信号に重畳する(ステップS22)。次に、制御部21は、管理番号を重畳した音響信号をスピーカ24に出力して、その音響信号に応じてスピーカ24から音波として放音させる(ステップS23)。
【0050】
通信端末10の制御部11は、接続アプリケーションプログラム161の実行中にマイクロホン14で収音検出した音波を表す音響信号を取得する(ステップS24)。次に、制御部11は、取得した音響信号から管理番号を抽出する(ステップS25)。そして、制御部11は、ステップS25の処理で抽出した管理番号を指定した確立情報の送信要求を、無線通信部13により提供サーバ50に送信する(ステップS26)。
【0051】
提供サーバ50の制御部51は、ネットワーク通信部52により確立情報の送信要求を受信してこれを取得すると、その送信要求で指定された管理番号に対応する確立情報を、記憶部53の確立情報管理テーブル531に基づいて特定する(ステップS27)。制御部51が管理番号「No.001」を指定した送信要求を取得したとすると、確立情報「est001」を特定する。制御部51は、特定した確立情報をネットワーク通信部52により通信端末10に送信する(ステップS28)。
【0052】
通信端末10の制御部11は、無線通信部13により確立情報を受信してこれを取得すると、以降、上述した第1実施形態のステップS6,S7の処理と同様にして、通信端末10と無線アクセスポイント20との間に無線通信路が確立され(ステップS29,S30)、通信端末10及び無線アクセスポイント20は、ステップS30の処理で確立した無線通信路を介して、相互に無線通信を行う(ステップS31)。
【0053】
以上説明した第3実施形態では、無線アクセスポイント20は、利用可能な確立情報に対応した管理番号を音響信号に重畳する。提供サーバ50は、確立情報を確立情報管理テーブル531によって管理し、通信端末10からの要求に応じて、無線アクセスポイント20で利用可能な確立情報を通信端末10に提供する。通信端末10は、抽出した管理番号を基に提供サーバ50から確立情報を取得、以降上述した第1,2実施形態と同様、この確立情報に基づいて、通信端末10と無線アクセスポイント20との間に無線通信路が確立される。また、無線通信システム1aにおいては、提供サーバ50で確立情報が管理されるので、その内容の更新等の管理も比較的容易に行える。また、音響信号に応じた音波が伝搬する空間領域を確立情報そのものが伝搬するわけではないので、上述した第2実施形態と同じ理由により、正当なユーザの通信端末10に対し無線アクセスポイント20との無線通信を許可することができる。
なお、本実施形態ではSSID、暗号化キー及び期限情報という3種類の情報を含む確立情報に対して一の管理番号が対応していたが、確立情報の一部の情報(ここでは、1種類又は2種類の情報)毎に一つずつ管理番号が対応していてもよい。
【0054】
<第3実施形態の変形例>
上述した第3実施形態の構成を、以下の(1)〜(5)で説明する構成に変形してもよい。また、以下に示す変形例は、各々を適宜に組み合わせてもよい。
(1)上述した第3実施形態では、無線アクセスポイント20毎に、提供サーバ50が確立情報管理テーブル531をひとつずつ記憶している構成であったが、この構成を以下のように変形してもよい。
図16は、この変形例の提供サーバ50が確立情報管理テーブル531に代えて記憶している、確立情報管理テーブル群532の構造を示す図である。確立情報管理テーブル群532は、管理番号に対応した確立情報管理テーブル532−iを複数有する。iは、各管理番号に一対一で対応して割り当てられた値である。
図16には、一例として、管理番号「No.001」に対応した確立情報管理テーブル532−1を示す。なお、管理番号「No.002」〜「No.005」に対応した確立情報管理テーブル532−2〜5も、確立情報管理テーブル532−1と同様の構造である。
【0055】
図16に示すように、確立情報管理テーブル532−1において、無線アクセスポイント20を識別する無線機IDと確立情報とが対応付けられている。ここでは、無線機IDとして「A」〜「E」までの5つを図示している。無線機IDは、例えば無線アクセスポイント20に割り当てられたMAC(Media Access Control addres
s)アドレスである。この場合、提供サーバ50は、予め無線アクセスポイント20との通信により取得したMACアドレスを確立情報管理テーブル群532に記述しておく。確立情報は、上述した第3実施形態と同等の情報である。
例えば、提供サーバ50が管理番号「No.001」を選択した場合、無線アクセスポイント20は管理番号「No.001」を音響信号に重畳して放音する。通信端末10は、管理番号及びこの管理番号の取得元の無線アクセスポイント20の無線機IDを指定した確立情報の送信要求を、提供サーバ50に送信する。提供サーバ50は、通信端末10から確立情報の送信要求を取得すると、この通信端末10における管理番号の取得元である無線アクセスポイント20の無線機IDに対応付けられた確立情報を、確立情報管理テーブル532−1から特定する。提供サーバ50は、特定した確立情報管理テーブル532−1から確立情報を提供する。例えば、提供サーバ50が管理番号「No.001」を選択した場合に、無線機ID「A」及び管理番号「No.001」を指定した送信要求を受信したときには、確立情報「est101」を提供し、無線機ID「B」及び管理番号「No.001」を指定した送信要求を受信したときには、確立情報「est201」を提供する。他の無線機IDや管理番号が送信要求で指定された場合であっても、提供サーバ50は同様の規則に従って確立情報を提供することとなる。
以上の無線通信システム1aでは、いずれか一の管理番号が選択されると、提供サーバ50は、その管理番号に対応した確立情報管理テーブル532−iに基づいて確立情報を提供する。よって、無線通信システム1aでは、複数の無線アクセスポイント20で一斉に、利用可能な確立情報が変更させられることとなる。
【0056】
本変形例の動作は、基本的には上述した第3実施形態と同じであるが、相違点を説明する。
無線通信システム1aでは、提供サーバ50が、例えば決められた期間が経過する毎にiを「1」ずつインクリメントして変更したり、乱数を用いてiの値をランダムに変更したりして、使用する確立情報管理テーブル532−iを選択する。提供サーバ50が確立情報管理テーブル532−iを選択した後の無線通信システム1aの処理の流れは、上述した第3実施形態と同様であり、選択中の確立情報管理テーブル532−iを基に利用可能な確立情報が特定される。この構成であっても、無線アクセスポイント20が配信する管理番号に確立情報管理テーブル群532で対応付けられた確立情報と、提供サーバ50によって提供される確立情報とが同期するので、上述の第3実施形態と同等の作用効果を奏する。
なお、無線機IDは、通信端末10が通信路を確立する前に無線アクセスポイント20から取得することができる情報であれば、MACアドレス以外の通信アドレスであってもよいし、通信アドレス以外の情報であってもよい。また、提供サーバ50が無線アクセスポイント20から無線機IDを取得して確立情報管理テーブル532群に記述してもよいし、提供サーバ50が無線機IDを生成して、生成した無線機IDを無線アクセスポイント20に提供してもよい。また、サーバ管理者等によって手動設定された無線機IDを、提供サーバ50が確立情報管理テーブル532群に記述するとともに、この無線機IDを無線アクセスポイント20に提供してもよい。
【0057】
(2)無線アクセスポイント20が配信する管理番号に確立情報管理テーブル531で対応付けられた確立情報と、提供サーバ50によって提供される確立情報とが同期するようにするための仕組みは、上述した第3実施形態のものに限定されない。
例えば、確立情報管理テーブル531を、無線アクセスポイント20と提供サーバ50とで共有する構成としてもよい。すなわち、無線通信システム1aを、無線アクセスポイント20と提供サーバ50とが、確立情報管理テーブル531を記憶する共通の記憶装置にアクセス可能な構成とする。この場合、無線アクセスポイント20が確立情報管理テーブル531に基づいて一の管理番号を配信すれば、無線アクセスポイント20と提供サーバ50とのステップS21の処理に相当するやりとりがなくとも、提供サーバ50はその管理番号に対応する確立情報を確立情報管理テーブル531から特定して、通信端末10に提供することができる。
【0058】
(3)通信端末10が提供サーバ50に送信する確立情報の送信要求は、代替情報の内容(つまり、管理番号)を指定したものでなくてもよい。例えば、無線通信システム1aは、通信端末10と提供サーバ50との双方が現時点で利用可能な確立情報を判別可能な構成の下で、通信端末10が音響信号から代替情報を抽出した旨を示す情報(例えば、パスワード)を用いて、提供サーバ50に確立情報の送信を要求する構成であってもよい。この場合、提供サーバ50は、この代替情報を抽出した旨を示す情報を用いて通信端末10からアクセスされたことを契機に、現時点で利用可能な確立情報をこの通信端末10に提供すればよい。
なお、通信端末10と提供サーバ50との双方が現時点で利用可能な確立情報を判別可能にするために、上述した第3実施形態で説明したステップS21の処理が行われてもよいし、上記(2)の項で説明した、無線アクセスポイント20と提供サーバ50とで確立情報管理テーブル531が共有する構成が採られてもよい。また、代替情報を抽出した旨を示す情報は、例えば、通信端末10が代替情報を抽出したことを契機に自動で生成される任意の情報とすることができる。
【0059】
(4)上述した第3実施形態では、提供サーバ50において、確立情報管理テーブル531において管理番号と確立情報とのデータの組が複数記述されていたが、少なくとも一組のデータが記述されていればよい。このデータの組が一つだけである場合、提供サーバ50はいつでも同一の確立情報を提供することになる。
(5)また、コンテンツサーバ30aと提供サーバ50とで実現される機能が、一のサーバ装置で実現されてもよい。
【0060】
[変形例]
本発明は、上述した実施形態と異なる形態で実施することが可能である。また、以下に示す変形例は、各々を適宜に組み合わせてもよい。
(変形例1)
上述した各実施形態では、無線アクセスポイント20はスピーカ24からの放音という態様で確立情報を規定する情報を配布していたが、本発明を以下のように変形してもよい。
図17は、本変形例の構成の概要を説明する図である。
図17に示すように、ここでは、通信可能エリアをファーストフード店などの飲食店に構成する場合について説明する。飲食店には、
図17に示すようなテーブル100及び椅子200が、複数組配置されている。飲食店の客である通信端末10のユーザは、椅子200に着席して、テーブル100に注文品を置き、通信端末10を利用することがある。この飲食店では、入店客に対して、商品の注文時に音響加振器40がテーブル100ひとつあたりに1個ずつ配布される。ユーザは、配布された音響加振器40を自身の利用するテーブル100に装着する。
図17に示すように、ユーザは、例えば、テーブル100の裏面の自身に比較的近い位置に音響加振器40を装着する。音響加振器40は、無線アクセスポイント20の制御の下で、音響加振器40が装着された部材を振動で加振し、この部材から確立情報を規定する情報を含む音響信号に応じて音波を放射させるものである。この部材は、ここでは、音響加振器40が装着されたテーブル100であり、当該部材(テーブル100)と音響加振器40とは互いに接触して、一体となって振動する。したがって、この変形例では、テーブル100と音響加振器40とで放音部が構成される。
【0061】
図18は、音響加振器40の構成を示すブロック図である。
図18に示すように、音響加振器40は、制御部41と、無線通信部42と、加振部43とを備える。制御部41は、CPUを含む演算装置やメモリを備える制御装置である。演算装置は、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより、音響加振器40を制御する。無線通信部42は、無線通信回路やアンテナを備え、無線アクセスポイント20と無線通信を行うインタフェースである。加振部43は、制御部41の制御信号に応じた振動を発生させ、発生させた振動を外部に作用させる。
【0062】
本変形例では、無線アクセスポイント20は、テーブル100から音響信号に応じてテーブル100を加振するように音響加振器40を制御する。具体的には、放音制御部213は、確立情報を規定する情報が重畳された音響信号を搬送波で変調し、この送信信号を無線通信部22によって送信する。音響加振器40の制御部41は、無線通信部42によってこの送信信号を受信すると、確立情報を規定する情報が重畳された音響信号を復調する。そして、制御部41は、復調した音響信号が表す音がテーブル100から放音されるように、加振部43に加振させる。椅子200に着席するユーザは、自身の通信端末10をテーブル100の近傍で保持するか、又はテーブル100の上に置いているから、制御部11は、テーブル100から放音されてマイクロホン14により収音された音を表す音響信号を取得することになる。よって、上述した各実施形態と同じ作用により、通信端末10は無線アクセスポイント20と無線通信をすることができる。
なお、この変形例において、無線アクセスポイント20は、無線通信部22により確立情報を規定する情報を音響加振器40に送信することにより、音響加振器40を制御するので、音響信号に応じて音波を放射させるためのスピーカ24を備えていなくてよい。
【0063】
本変形例の構成によれば、確立情報を規定する情報が配布される通信可能エリアが、例えばテーブル100の近傍に制限されることになる。つまり、テーブル100付近にいるユーザしか無線通信システム1を利用することができなくなり、テーブル100を利用する者、すなわち、商品を注文した者に絞って無線通信サービスを提供することができる。これにより、テーブル100付近にいない、単に店舗に立ち入ったユーザに対しては接続サービスを提供しないようにすることもできるから、通信可能エリアの範囲を更に制限することが可能となり、併せて商品の販売などの店舗の営業活動の一環として本サービスを提供する場合にも好適であると言える。
【0064】
(変形例2)
上述した変形例1の構成を、テーブル100に音響加振器を装着させたままにし、ユーザが椅子200に着席するタイミングで、その音響加振器が加振を開始する構成としてもよい。
図19は、本変形例の構成の概要を説明する図である。本変形例では、ユーザがカウンタで注文して受け取った商品をトレイ300に載せて、自身の席に運んで飲食するという場合を想定する。ここで、トレイ300には、
図19に示すように、RFID(Radio Frequency IDentification)素子310が設けられている。RFID素子310は、トレイ300に設けられたことを識別する情報があらかじめ書き込まれている。
【0065】
図20は、音響加振器40aの構成を示すブロック図である。
図20に示すように、音響加振器40aは、制御部41と、無線通信部42と、加振部43と、読取部44とを備える。このうち制御部41、無線通信部42及び加振部43の構成は、変形例1と同じである。読取部44は、いわゆるRFIDリーダであり、RFID素子310に書き込まれた情報を読み取る。
【0066】
音響加振器40aにおいては、誰も椅子200に着席しないときなど、トレイ300が付近にないときには、無線通信部42を停止させた状態で、読取部44がRFID素子310の情報の読み取りを試みる。やがて、ユーザがトレイ300をテーブル100に置き、読取部44がトレイ300のRFID素子310の情報を読み取ると、その情報を読み取ったことを示す読取信号を制御部41に出力する。制御部41は、読取信号を受け取ったことを契機に、ユーザがテーブル100の利用を開始し、そのテーブル100に装着された音響加振器40aの加振が可能になったため、音響加振器40aによる加振を開始することを、無線通信部42によって無線アクセスポイント20に通知する。無線アクセスポイント20の制御部21は、無線通信部22によってこの通知を受信したことを契機に、確立情報を規定する情報を重畳した音響信号に応じてテーブル100を加振するよう音響加振器40aを制御する。この制御の内容は、上記変形例1と同じでよい。また、無線アクセスポイント20は、音響信号に応じて音波を放射させるためのスピーカ24を備えていなくてよい。
やがて、ユーザがトレイ300を持って離席すると、制御部41は読取部44によりRFID素子310が読み取られなくなり読取信号が供給されなくなるから、これを契機にユーザが椅子200に着席していないと判断する。そして、制御部41は、無線通信部42による無線通信を停止させて、読取部44に読み取りを行わせないよう制御する。
【0067】
以上の構成により、無線アクセスポイント20は、ユーザが音響加振器40aのオンオフ操作なしに、必要な場合にのみ確立情報を規定する情報を配布することができる。これにより、テーブル100に着席したものの、注文した商品を載せたトレイ300をテーブル100に置いていないなど、確立情報を規定する情報を配布する必要のない場合に、音響加振器40aがテーブル100を加振しないで済むから、音響加振器40aの低消費電力化を期待することができる。また、トレイ300を利用しない者、つまり、商品を注文せずサービス提供の対象でない者が本サービスを利用する可能性を、より一層減らすことができ、通信可能なエリアの範囲を更に制限することが可能となる。
なお、本変形例において、音響加振器40aの音響加振のオンオフをRFID素子310及び読取部44を用いて切り替えていたが、例えば、赤外線通信方式や、接触式又は非接触式のICチップを用いた通信方式や、近距離無線通信方式などで実現してもよい。また、ユーザが手動で音響加振器40aの音響加振のオンオフを切り替える構成であってもよい。また、本変形例においても、商品を注文した者に対して音響加振器40aが配布されてもよい。また、本変形例では、トレイ300にRFID素子310が設けられていたが、他の持ち運び可能な部材に設けられてもよい。
【0068】
(変形例3)
上述した各実施形態において、音波を検出する検出部はマイクロホン14であり、確立情報を規定する情報が重畳された音響信号に応じて音波を放射する放音部はスピーカ24であった。この場合、マイクロホン14は気体(より具体的には、空気)の振動である音波を検出するものであり、スピーカ24は気体(より具体的には、空気)の振動である音波を放射するものである。これに対し、本変形例の検出部/放音部は、固体や液体の振動を検出/放射するものであってもよい。このとき、放音部は、外部に振動を与える振動子と、この振動子により振動させられる媒体とにより実現される。すなわち、振動子は、部材に弾性波を伝搬させることで音波を放射する。一方、検出部は、例えば振動ピックアップ(振動検出子)であり、部材を伝搬する弾性波である音波を検出する。この構成では、音響信号取得部111は、この検出部により検出された音波を表す音響信号を取得する。
このような検出部/放音部の構成であっても、音響信号が確立情報を規定する情報の周波数成分を含んでいれば、通信端末10が音響信号から確立情報を規定する情報を抽出し、この確立情報を規定する情報を用いて無線通信路を確立することができる。変形例1,2の構成を応用すれば、音響加振器が固体の部材に音響信号が示す音波である振動を与える。そして、振動検出子を有し、テーブル100に接触する通信端末が、この直接振動を検出して、この直接振動を表す音響信号を取得する、という具合である。
以上説明したように、本発明の音波は、気体、固体及び液体のどれを伝搬するものであってもよい。また、本発明の音波は、可聴帯域だけではなく、可聴帯域外(具体的には、超音波や超低周波のみに周波数成分を持つもの)で、人間が知覚できないものであってもよい。例えば、本発明において確立情報を規定する情報が重畳される音波は、確立情報を規定する情報に相当する周波数成分のみを持つものであってもよい。
【0069】
(変形例4)
上述した各実施形態では、確立情報を規定する情報のすべての情報が音響信号に重畳されていたが、そのうちの一部の情報が別経路でユーザにより入手されてもよい。例えば、サービス事業者は、不特定多数のユーザでなく、あらかじめ会員登録したユーザのみにサービスを提供したい場合がある。この場合、ユーザは、事前に通信端末10を用いて所定のwebページにアクセスして、自身に割り当てられたIDを入手しておく。このIDは、通信端末10又はそのユーザを識別する識別子に対応する。そして、通信可能エリアに進入したときには、このIDを手動で通信端末10に入力する。通信端末10の制御部11は、このIDをメモリや記憶部16などの識別子記憶部に記憶する。一方、無線アクセスポイント20は、確立情報のうちID以外の情報を規定する情報を音響信号に重畳してスピーカ24に放音させる。無線アクセスポイント20では、このように配信した確立情報を規定する情報と、通信端末10にあらかじめ記憶されたIDとを取得してそれらの正当性を認証し、無線通信路の確立の可否を判断する。つまり、通信制御部113は、抽出部112により抽出された確立情報を規定する情報と、通信端末10が異なる方法で取得したIDとを用いて、無線通信路を確立する。
また、通信端末10は、無線通信部13によって外部サーバ(例えば、上述した第3実施形態の提供サーバ50)から期限情報を受信してこれを取得してもよい。
本変形例のように、無線アクセスポイント20が確立情報のすべてを規定する情報を音響信号に重畳することによって配布しなくてもよい。
【0070】
(変形例5)
上述した第1実施形態において、通信端末10が、一旦無線通信路を確立すれば、期限情報が示す有効期限が到来するまで、確立情報の抽出に関する処理を停止する態様について説明したが、通信端末10が以下のように動作するようにしてもよい。
図21は、通信端末10の動作手順を示すフローチャートである。通信端末10の制御部11は、接続アプリケーションプログラム161の実行を開始すると、マイクロホン14で検出した音波を表す音響信号の取得を開始する(ステップS41)。次に、制御部11は、取得した音響信号から確立情報を抽出する処理を開始する(ステップS42)。制御部11は、音響信号から確立情報の抽出を試みて、確立情報を抽出したか否かを判断する(ステップS43)。制御部11は、接続アプリケーションプログラム161の実行中は、確立情報を抽出するまでこれを繰り返す(ステップS43;NO)。
【0071】
そして、制御部11は、確立情報を抽出したと判断すると(ステップS43;YES)、ステップS41の処理で開始した音響信号を取得する処理と、ステップS42の処理で開始した音響信号から確立情報を抽出する処理とを停止する(ステップS44)。この停止期間も、通信端末10と無線アクセスポイント20との間に確立された無線通信路は維持される。
そして、制御部11は、ステップS43の処理で「YES」と判断する契機となった確立情報の期限情報が示す有効期限に近接したか否かを判断する(ステップS45)。ここでは、制御部11は、有効期限から予め決められた期間だけ前(例えば、3分前)になった場合に、有効期限に近接したと判断する。制御部11は、有効期限に近接するまではステップS45の処理で「NO」と判断し、音響信号を取得する処理と、音響信号から確立情報を抽出する処理とを停止させたままにする。
【0072】
そして、制御部11は、有効期限に近接したと判断すると(ステップS45;YES)、マイクロホン14で検出した音波を表す音響信号の取得、及び音響信号からの確立情報の抽出の停止を解除する(ステップS46)。すなわち、制御部11は、マイクロホン14から音響信号を取得する処理と、取得した音響信号から確立情報を抽出するための処理とを開始する。
以降も、制御部11は、(a)音響信号を取得し、取得した音響信号から確立情報を抽出→(b)音響信号を取得する処理と、音響信号から確立情報を抽出する処理とを停止→(c)有効期限に近接したか否かの判断→(d)有効期限に接近すると音響信号を取得する処理と、音響信号から確立情報を抽出する処理との停止を解除→・・・という、(a)〜(d)の処理を
順に、接続アプリケーションプログラム161の実行中において繰り返し実行する。この構成によれば、通信端末10が、音響信号を取得する処理と、音響信号から確立情報を抽出する処理とを継続して行う場合に比べて、通信端末10における低消費電力化が実現される。
【0073】
なお、制御部11は音響信号から抽出した期限情報に応じたタイミングで音響信号の取得、及び音響信号からの確立情報の抽出の停止を解除すればよいので、確立情報が変更された後も無線通信路が維持されるように、この解除のタイミングが決められていればよい。
また、ここでは、制御部11は、音響信号を取得する処理と、音響信号から確立情報を抽出する処理との双方を停止していたが、確立情報を抽出する処理のみを停止してもよい。また、ここでは、上述した第1実施形態のように、通信端末10が音響信号から確立情報を抽出する場合について説明したが、本変形例の構成は、上述の第2,3実施形態のように、通信端末10が音響信号から代替情報を抽出する構成にも適用することができる。
【0074】
(変形例6)
上述した各実施形態の無線通信システムにおいて、通信端末10が予め決められた音を検出する期間においてのみ、通信端末10と無線アクセスポイント20との間の無線通信路の確立が許可されてもよい。
実際、通信端末10が確立情報を取得していれば、期限情報が示す有効期限内である限り、通信可能エリア外であっても、電波の届く範囲で無線アクセスポイント20に接続することができる場合がある。そこで、無線アクセスポイント20などの放音機能を有する装置が、あらかじめ決められた特定の音(例えば、ビーコン音などの可聴音)を発し、通信端末10においてこの音が検出された期間においてのみ、通信端末10と無線アクセスポイント20との間に無線通信路が確立されるようにしてもよい。この場合、制御部11は、マイクロホン14で収音した音の音
響信号を解析し、この音波形が決められた波形に合致している場合にのみ、無線アクセスポイント20との無線通信路を維持させる。これ以外の周知の方法を用いて、通信端末10が特定の音を検出するようにしてもよい。
本変形例の構成によれば、通信端末10で音が検出されなくなったら、通信端末10と無線アクセスポイント20との間の無線通信路が切断されるので、不正に無線アクセスポイント20に接続されることをより確実に防ぐことができる。
【0075】
(変形例7)
本発明は、飲食物を販売する飲食店(すなわち、物品を販売する店舗)以外の場所に通信可能エリアを形成する目的に用いられてもよい。例えば、バスの停留所や駅などの車両の乗降場所に無線アクセスポイント20が設けられて、特定のサービスを提供する場所に通信可能エリアを形成する目的に用いられてもよい。この場合、無線アクセスポイント20は、その付近に来たユーザの通信端末10に対してのみ、車両の運行ダイヤや接近・遅延情報、車両の行き先に関する情報を配信することも可能である。これ以外にも、カフェやレストラン、駅構内、ホテルやオフィスのロビーなどの不特定多数の人物が出入りする場所に、無線通信システム1を構成してもよく、本発明において特定の場所に限定されることはない。
【0076】
また、いわゆるデジタルサイネージのようにして、本発明の無線通信システムを構成してもよい。この場合、無線アクセスポイント20の通信可能エリア内に通信端末10が進入したときに、無線アクセスポイント20は、その通信可能エリアが形成された場所に関連したコンテンツを通信端末10において表示させてもよい。この構成では、例えば、スーパーマーケットなどの商店の陳列棚に本発明の無線機を設置し、その陳列棚にある商品の生産元などの情報を含むコンテンツを当該無線機が通信端末10に配信する。
【0077】
また、無線アクセスポイント20が配信するコンテンツについては、サーバ装置30から通信によって取得したものであってもよいし、自機に装着された各種の記録媒体から取得したものであってもよく、配信対象とするコンテンツはどのようなものでもよい。
本変形例において、変形例1の構成のように音響加振器40,40aを用いる場合、音響加振器40,40aに加振される部材は、例えば各種の家具や室空間を構成する壁でもよく、通信可能エリア内に設置され、その加振に応じて放音するものであればよい。
【0078】
(変形例8)
上述した各実施形態では、無線アクセスポイント20は、時刻に応じて暗号化キーの内容を更新していたが、これを更新しない構成としてもよい。この場合、無線アクセスポイント20は確立情報に期限情報を含めなくてもよい。また、無線アクセスポイント20は、SSID及び暗号化キー以外の情報を確立情報に含めてもよく、例えばパスワードや通信端末10又はそのユーザの識別子などの通信相手を認証するための認証情報を確立情報に含めてもよい。また、確立情報は、時刻に応じて内容が変化する暗号化キー以外の情報と、その情報の有効期限を示す期限情報を含んでもよい。要するに、確立情報は、無線アクセスポイント20が通信相手として許可する通信端末を識別することのできる情報であればよく、無線通信路の確立の条件として必須となるものである。また、通信端末10と無線アクセスポイント20とも間の無線通信方式について、無線通信路の確立というプロセスを含む限り、本発明において特定の方式に限定されることはない。
【0079】
(変形例9)
上述した各実施形態では、無線アクセスポイント20が音響信号に応じた放音で確立情報を規定する情報を配布する機能と、無線通信を行う機能との両方を実現していたが、一方の機能を実現する装置と、他方の機能を実現する装置との協働により、本発明の無線機に相当するものが実現されてもよい。
また、無線アクセスポイント20は有線接続されたスピーカ24に放音させる構成以外に、無線接続されたスピーカ装置に音響信号に応じて放音させてもよい。
【0080】
(変形例10)
上述した各実施形態において、無線アクセスポイント20が確立情報を規定する情報を重畳するための構成を以下のように変形してもよい。例えば、重畳部212は、音響信号を搬送するための搬送波を表す搬送波信号を確立情報を規定する情報に基づいて位相変調して、確立情報を規定する情報を重畳してもよい。また、重畳部212は、直交周波数分割多重方式(OFDM変調:Orthogonal Frequency-Division Multiplexing)に従って音響信号に確立情報を規定する情報を重畳してもよい。
【0081】
(変形例11)
本発明の通信端末は、スマートフォン以外の端末であってもよく、例えば、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)やモバイルコンピュータ、ゲーム機、デジタルサイネージなどの、無線通信を行うことのできる種々の通信端末(無線通信端末)に本発明を適用することもできる。また、マイクロホン14に代えて通信端末に対して着脱可能なマイクロホンを用いてもよい。この構成において、通信端末に対してマイクロホンが有線・無線接続のいずれで接続されてもよい。また、無線アクセスポイント20において、スピーカ24に代えて無線アクセスポイントに対して着脱可能なスピーカを用いてもよい。
また、本発明の無線機は、無線アクセスポイントに限らず、本発明の通信端末と無線通信を行うことのできるものである限りその種類を問わない。また、上述した通信ネットワーク90及び無線通信ネットワーク80の通信網の種類は前掲のものに限定されない。また、通信ネットワーク90及び無線通信ネットワーク80が一体の通信網をなしていてもよい。
【0082】
上述した各実施形態における通信端末10の制御部11や、無線アクセスポイント20の制御部21、提供サーバ50の制御部51によって実行されるプログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスク(HDD、FD)など)、光記録媒体(光ディスク(CD、DVD)など)、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録した状態で提供し得る。また、インターネットのようなネットワーク経由でダウンロードさせることも可能である。このように制御部11や制御部21によって実現される機能は、1又は複数のソフトウェアにより実現されてもよいし、1又は複数のハードウェアにより実現されてもよい。