(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記後側シーブ部材は、前記移送方向に対する傾斜角度を変更自在とし、前記センサが検出した前記被処理物の厚みが大きくなるにしたがって、前記後側シーブ部材の傾斜角度が緩傾斜となる構成とした請求項4に記載の脱穀装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。以下において、下とは鉛直方向(重力が作用する方向)側であり、上とは鉛直方向反対側(重力が作用する方向とは反対方向)側である。
【0017】
<コンバインの全体構成>
コンバイン1は、機体フレーム2に走行装置3及び本実施形態に係る脱穀装置5等が取り付けられている。走行装置3は、コンバイン1に搭載される内燃機関等の動力発生源からの動力を、左右一対の履帯4に伝えてコンバイン1を走行させる。コンバイン1の前方側、すなわち、運転席8Aから操作装置8Bに向かう方向側に、刈取装置6が取り付けられている。脱穀装置5の側部には、脱穀装置5が脱穀した穀粒を一時的に貯蔵するためのグレンタンク7が配置されている。グレンタンク7の後側(操作装置8Bから運転席8Aへ向かう方向側)には、穀粒排出装置が設けられている。穀粒排出装置は、筒体の内部に螺旋軸を有した装置である。前記螺旋軸は、自身が回転することによって、グレンタンク7内の穀粒を搬送し、グレンタンク7の外部へ排出させる。次に、脱穀装置5について説明する。
【0018】
<脱穀装置>
脱穀装置5は、
図1に示す刈取装置6が刈り取った穀稈から穀粒を切り離し(脱粒)、藁等の夾雑物と穀粒とを分離する装置である。脱穀装置5は、
図1に示すグレンタンク7が配置されている側とは反対側に、穀稈供給装置9が配置されている。穀稈供給装置9は、挟扼杆9Bと供給搬送チェーン9Cとを有している。穀稈供給装置9は、刈取装置6が刈り取った穀稈を挟扼杆9Bと供給搬送チェーン9Cとの間に挟み込み、供給搬送チェーン9Cによって脱穀装置5に搬送し、供給する。脱穀装置5を通過し、穀粒が扱ぎ取られた穀稈(排藁)は、穀稈供給装置9の後方側(
図1に示す操作装置8Bから運転席8Aに向かう方向側)配置された排藁搬送装置22A、22Bによって、
図1に示すコンバイン1の後方側に配置されている排藁切断装置23へ搬送される。排藁切断装置23は、複数の回転刃23A、23Bを備えている。一対の回転刃23A、23Bは、回転軸方向から見ると、一部が重なり合っている。排藁搬送装置22A、22Bから排藁切断装置23に投入された排藁は、回転刃23A、23Bの間で切断され、例えば、圃場に放出される。
【0019】
脱穀装置5は、脱穀部5Aと選別部5Bとを有する。脱穀部5Aは、扱室5Dと、
図3に示す二番処理室5Pと、同じく
図3に示す排塵処理室5Wとを含んでいる。選別部5Bは、選別棚(揺動選別棚)18と、唐箕13と、排塵排出手段としての排塵ファン24と、一番回収部19と、二番回収部21とを含んでいる。選別部5Bは、脱穀部5Aの下方、すなわち、鉛直方向(矢印Gで示す方向)側に配置されている。脱穀部5Aは、穀稈の穂先部から穀粒を脱粒させる。選別部5Bは、選別部5Bで脱粒された穀粒を含む被処理物から夾雑物を除去して、穀粒を回収する。被処理物とは、脱穀装置5の扱胴10が穀稈から脱穀したものである。まず、脱穀部5Aについて説明する。
【0020】
<脱穀部>
脱穀部5Aの扱室5Dと、二番処理室5Pと、排塵処理室5Wとは、脱穀装置5の筐体5Cで囲まれる空間である。扱室5Dの内部には、扱胴10が配置されている。扱胴10は、円筒形状の構造物であり、外周面から複数の扱歯10Bが径方向外側に向かって延出している。扱胴10は、
図6に示す回転軸Zrを中心に回転する回転体である。本実施形態において、扱胴10の回転方向は
図6の矢印Rで示す方向である。扱胴10は、
図1に示すコンバイン1の動力発生手段から取り出された動力により駆動されて回転する。
【0021】
図2に示すように、扱胴10の下方側には、扱網11が配置されている。より具体的には、
図7に示すように、扱網11は、扱胴10の下方から二番処理室5Pの上方まで、扱胴10の外側を包囲している。扱網11は、扱胴10が脱穀した被処理物に含まれる穀粒寸法の大きい藁屑を取り除き、被処理物に含まれる穀粒及び寸法の小さい藁屑等を選別部5Bに落下させるものである。
【0022】
二番処理室5P及び排塵処理室5Wは、脱穀装置5の第1の側部側に設けられる。第1の側部は、後述する選別部5Bの選別棚18が被処理物を移送する方向(移送方向、
図2、
図3等の矢印Mで示す方向)に対して片側の側部である。排塵処理室5Wは、二番処理室5Pの後方に配置される。二番処理室5Pの後方は、二番処理室5Pの移送方向における上手側である。二番処理室5P内には、二番処理胴29が配置され、排塵処理室5W内には排塵処理胴30が配置される。二番処理胴29及び排塵処理胴30は、いずれも円筒形状の構造体であり、それぞれの外周面から径方向外側に向かって複数の処理歯が延出している。本実施形態において、二番処理胴29と排塵処理胴30とは一体の構造物であり、両者はともに回転する。二番処理胴29及び排塵処理胴30の回転軸は、扱胴10の回転軸Zrと平行な軸である。二番処理胴29及び排塵処理胴30は、扱胴10と同様に、
図1に示すコンバイン1の動力発生手段から取り出された動力により駆動されて回転する。
【0023】
二番処理室5Pは、後述する選別部5Bの二番回収部21で回収された被処理物が移送される。二番回収部21で回収された被処理物は、
図3に示す二番還元装置26が、二番処理室5Pへ移送する。二番処理室5P内の二番処理胴29は、回転する過程で、二番回収部21で回収された被処理物に含まれる穀粒に付着している枝梗を取り除く。
図6に示すように、排塵処理室5Wは、一部が扱室5Dの後端部近傍と連通部Tで連通している。扱網11を通過しなかった寸法の大きい藁屑は、連通部Tから排塵処理室5Wへ移動する。排塵処理室5Wの排塵処理胴30は、扱室5Dから移動してきた寸法の大きい藁屑を細かく切断して、選別棚18に戻す。次に、選別部5Bについて説明する。
【0024】
<選別部>
選別部5Bは、脱穀部5Aの下方に、唐箕13からの送風等により穀粒と異物とを風選することができる風選室5Sを有している。選別部5Bは、選別棚18の揺動運動と、唐箕13による選別風及び排塵ファン24による吸引の作用により、脱穀部5Aからの被処理物から穀粒を選別する。選別部5Bの選別棚18は、風選室5S内に配置されており、
図1に示すコンバイン1の動力発生手段から取り出された動力により駆動されて、コンバイン1の前後方向に揺動する。扱室5Dからの被処理物は、選別棚18の前後方向の揺動によって、コンバイン1の後方に向かう方向である移送方向Mへ移送される。選別棚18は、移送棚18Tと、前側第1シーブ15と、前側第2シーブ16と、後側シーブ17とを含む。前側第1シーブ15と前側第2シーブ16とを合わせて、前側シーブということもある。前側第1シーブ15は、移送方向Mの上手側に配置され、後側シーブ17は、移送方向Mの下手側に配置される。前側第2シーブ16は、前側第1シーブ15と後側シーブ17との間に配置される。移送棚18Tは、前側第1シーブ15よりも移送方向Mの上手側に配置される。すなわち、移送棚18Tと、前側第1シーブ15と、前側第2シーブ16と、後側シーブ17とは、移送方向Mの下手側に向かってこの順に配置される。
【0025】
前側シーブ(前側第1シーブ15及び前側第2シーブ16)は、扱網11よから落下した被処理物に含まれる穀粒及び異物から穀粒を選別して、一番回収部19又は二番回収部21へ落下させるものである。後側シーブ17は、排塵処理室5Wから排出された被処理物に含まれる穀粒及び裁断された排藁から穀粒を選別して二番回収部21へ落下させるものである。後側シーブ17は、穀粒の選別性能がストローラックよりも高いため、二番回収部21に混入する夾雑物の量を低減することができる。その結果、二番回収部21から二番処理室5Pに移送された処理物から二番処理胴29が夾雑物を除去する際の負荷を低減できる。また、後側シーブ17が穀粒を選別するので、穀粒の回収効率も向上する。
【0026】
図2、
図5に示すように、移送棚18Tは、唐箕カバー13Cの上方に配置される。移送棚18Tは、移送棚18Tの移送方向の下手側に配置された前側第1シーブ15に向けて扱網11から落下する被処理物を移送する。移送棚18Tは、例えば、移送方向Mの下手側に向かうにしたがって下側に傾斜させたり、移送棚18Tの上面に突起又は凹凸等を有したりしてもよい。
図4、
図5に示すように、前側第1シーブ15は、複数の前側シーブ部材として、複数の第1フィン15Pを有している。前側第2シーブ16は、複数の前側シーブ部材として、複数の複数の第2フィン16Pを有している。また、後側シーブ17は、複数の後側シーブ部材として、複数の複数の後側フィン17Pを有している。第1フィン15P、第2フィン16P及び後側フィン17Pは、いずれも平面視が長方形の板状部材であり、長手方向が移送方向と交差(本実施形態では直交)する方向(
図3、
図4のWで示す方向)に延在している。
【0027】
第1フィン15P、第2フィン16P及び後側フィン17Pは、いずれも移送方向に向かって所定の間隔をおいて夫々配置されている。移送方向において隣接する後側シーブ部材同士の間隔は、移送方向において隣接する前側シーブ部材同士の間隔よりも大きく設定されている。具体的には、
図10に示すように、後側シーブ部材としての後側フィン17P同士の間隔Pcは、前側シーブ部材としての第1フィン15P同士の間隔Pa及び前側シーブ部材としての第2フィン16P同士の間隔Pbよりも大きい。このように、前側シーブ部材同士の間隔を後側シーブ部材同士の間隔よりも大きくすることで、前側シーブ部材からの藁屑の落下を抑制することができる。また、枝梗が付着した穀粒及び鍵叉粒が後側シーブ17から落下せずに後方へ移送されると、脱穀装置5の外部に排出されてしまい、穀粒の回収率が低下するおそれがある。後側シーブ17が有する後側フィン17P同士の間隔Pcを第1フィン15P同士の間隔Pa及び第2フィン16P同士の間隔Pbよりも大きくすることにより、枝梗が付着した穀粒及び鍵叉粒を、隣接する後側フィン17Pの間から二番回収部21に落下させて、前記回収効率の低下を抑制することができる。
【0028】
第1フィン15P、第2フィン16P及び後側フィン17Pは、いずれも移送方向の下手側に向かうにしたがって、移送方向の下手側(後側)が上方、すなわち脱穀部5Aに向かって傾斜している。本実施形態において、第1フィン15P及び後側フィン17Pは傾斜の程度が一定となるように固定されているが、第2フィン16Pは傾斜の程度が変更できるようになっている。なお、後述するように、後側フィン17Pも、傾斜の程度が変更できるようにしてもよい。
【0029】
図5に示すように、後側フィン17Pは、移送方向(
図5の矢印Mで示す方向)の上手側における端部が、移送方向の下手側に向かって折れ曲がっている。このようにすることで、後側フィン17Pの移送方向Mの上手側の折れ曲がり部が、後側シーブ17からの穀粒の放出を抑制するので、穀粒の回収効率が向上する。また、前記折れ曲がり部が選別風の流れを乱すことにより、後側フィン17Pの上部に処理物が滞留する時間を長くすることができる。その結果、選別棚18での選別時間を確保できるので、穀粒の選別精度が向上する。
【0030】
選別棚18が有する第1フィン15P、第2フィン16P及び後側フィン17Pは、選別方向下手側に向かうにしたがって、選別方向下手側の端部が上方に向かって傾斜している。また、第2フィン16P及び後側フィン17Pは、選別方向下手側に向かうにしたがって、選別方向下手側の端部の高さが高くなっている。このように、第1フィン15P、第2フィン16P及び後側フィン17Pは、移送方向の下手側の部位ほど高くなるように傾斜させられている。このようにすることで、穀粒の回収効率を向上させている。
【0031】
前側シーブ、すなわち前側第1シーブ15及び前側第2シーブ16の下方には、精選別網12が配置されている。より具体的には、
図2、
図5に示すように、精選別網12は、前側第1シーブ15及び前側第2シーブ16と一番回収部19との間に配置される。精選別網12は、扱網11よりも目合いが細かい網である。精選別網12は、前側シーブを通過し、夾雑物(主として比重の小さい藁屑)が除去された被処理物から、穀粒を通過させて一番回収部19へ落下させる。精選別網12を通過する穀粒は、清粒が大半である。清粒とは、枝梗(細かい枝)等がない、籾のみの穀粒である。次に、選別部5Bの唐箕13について説明する。
【0032】
唐箕13は、回転することにより、選別棚18に向かって風(選別風)を送る。唐箕13から送られる風により、脱穀部5Aを通過した被処理物から穀粒が比重選別される。唐箕13は、
図1に示すコンバイン1の動力発生手段から取り出された動力により駆動されて回転する。唐箕13が選別風を吹き出す部分には、導風板としてのフラッパ14が設けられている。フラッパ14は、唐箕13から送られる選別風の向きを変更して、選別棚18に送る装置である。すなわち、フラッパ14は、唐箕13から送られる選別風の流れ方向(送風方向)上流側(唐箕13よりも選別風の送風方向下流側)に設けられて、前記選別風の送風方向を選別棚18における移送方向の上手側の部位と下手側の部位との間で変更可能な装置である。
【0033】
フラッパ14は、第1導風板14Uと、第2導風板14Bと、連結部材14Jとを含む。第1導風板14U及び第2導風板14Bは、いずれも板状の部材である。第1導風板14Uは、第2導風板14Bよりも上方、すなわち、選別棚18側に配置されている。第1導風板14Uは、選別風の流れ方向における中央部分よりも選別風の流れ方向上流側(軸Zuの位置)で、筐体5Cによって回動可能に支持されている。このため、第1導風板14Uは、軸Zuの周りを回動することができる。また、第2導風板14Bは、第1導風板14Uよりも、選別風の流れ方向における中央部分側(軸Zbの位置)で、筐体5Cによって回動可能に支持されている。このため、第1導風板14Uは、軸Zbの周りを回動することができる。連結部材14Jは、第1導風板14Uと第2導風板14Bとをピン結合により連結している。
【0034】
本実施形態では、
図7に示すように、第2導風板14Bにシャフト14Sが取り付けられている。シャフト14Sの中心軸は、軸Zuである。シャフト14Sに入力部材14Aが取り付けられている。入力部材14Aを軸Zbの周りに回動させると、シャフト14Sが第2導風板14Bとともに軸Zbの周りを回動する。第2導風板14Bが回動すると、その動きが連結部材14Jを介して第1導風板14Uに伝達され、第1導風板14Uが軸Zuの周りを回動する。このような構造により、第1導風板14Uと第2導風板14Bとは、連動して同じ方向に回動することができる。
【0035】
また、第1導風板14Uは、選別風の流れ方向における上流側の軸Zuを中心として回動するのに対し、第2導風板14Bは、選別風の流れ方向における中央近傍の軸Zbを中心として回動する。このため、選別風の流れ方向の上流側における第1導風板14Uの端部は、軸Zuからの距離はほとんど離れていないため、第1導風板14Uが回動してもほとんど位置は変化しない。これに対して、選別風の流れ方向の上流側における第2導風板14Bの端部は、軸Zbからの距離が離れているため、第2導風板14Bが回動すると、選別風の流れ方向の上流側における第1導風板14Uの端部よりも位置が大きく変化する。その結果、
図5に示す、第1導風板14U側における選別風の入口(第1入口)14UIの開口面積と、第2導風板14B側における選別風の入口(第2入口)14BIの開口面積とは、第1導風板14U及び第2導風板14Bの回動によって変化する。第1導風板14U及び第2導風板14Bを回動させることによって、フラッパ14を通過した後における選別風が流れる方向(例えば、
図5のWIで示す方向)を変化させることができる。これに加え、第1導風板14U及び第2導風板14Bの回動により、第1入口14UIの開口面積と第2入口14BIの開口面積とが変化するので、第1導風板14U側における選別風の出口(第1出口)14UEから流出する選別風の流量及び第2導風板14B側における選別風の出口(第2出口)14BEから流出する選別風の流量も変化する。その結果、フラッパ14は、選別風が流れる方向とともに、移送方向の上手側と下手側とを流れる選別風の流量も変更することができるという機能を有する。
【0036】
フラッパ14は、上述したような機能により、後述する一番回収棚19Lに沿って流す選別風の風量と風向とが同時に調整できる。例えば、被処理物が少ない場合、選別風が選別棚18の後寄りの部位、すなわち移送方向Mの下手側に流れてしまうと、三番排塵口53及び排塵ファン24から穀粒も排出されてしまうおそれがある。このような場合、第1導風板14U及び第2導風板14Bの第1出口14UE及び第2出口14BE側の端部を上方、すなわち選別棚18側に移動させることにより、選別風が流れる方向は、移送方向Mの上手側に変更される。同時に、移送方向Mの上手側に流れる選別風の風量が多くなり、一番回収棚19Lに沿って流れる選別風の風量は少なくなる。その結果、選別棚18から一番回収部19に落下してきた穀粒が、選別風で後方に流されることを低減できるので、三番排塵口53及び排塵ファン24から排出される穀粒の量を低減して、穀粒の損失を低減できる。
【0037】
また、例えば、移送棚18T上の被処理物の量が多い場合、一番回収部19には、穀粒とともに藁屑等の夾雑物も混入しやすくなる。このような場合、第1導風板14U及び第2導風板14Bの第1出口14UE及び第2出口14BE側の端部を下方、すなわち選別棚18から遠ざかる方向に移動させて、選別風が流れる方向を、移送方向Mの下手側に変更する。すると、移送方向Mの上手側に流れる選別風の風量が少なくなり、一番回収棚19Lに沿って流れる選別風の風量が多くなる。すると、被処理物中の夾雑物(藁屑等)は後方、すなわち移送方向Mの下手側に吹き飛ばされて二番回収部21で回収されたり、排塵ファン24により脱穀装置5の外部に放出されたりする。その結果、一番回収部19に混入する夾雑物を低減して、穀粒の選別効率が向上する。また、選別風が流れる方向が、移送方向Mの下手側に変更されると、二番還元量、すなわち、二番回収部21から二番処理室5Pへ移送される処理物の量が抑制される。
【0038】
本実施形態において、フラッパ14は、選別風の送風方向を選別棚18における移送方向Mの最も下手側としたときには、選別風の少なくとも一部を後側シーブ17に向かわせるようにすることが好ましい。例えば、移送棚18T上の被処理物の量が増えた場合、フラッパ14の傾斜が一番回収棚19Lと平行に近くなることにより、一番回収棚19L先の選別風の風量が増加する。上述したように、フラッパ14が、選別風の方向を移送方向Mの最も下手側としたときにおいて、選別風の少なくとも一部を後側シーブ17に向かわせるようにすると、後側シーブ17に衝突した選別風が後側シーブ17によって上方(脱穀部5A側)に向かう。その結果、後側シーブ17で上方に向かう選別風の流れが生成されるので、脱穀装置5の外部に放出される穀粒の量を抑制することができる。次に、排塵ファン24について説明する。
【0039】
図2に示す排塵ファン24は、唐箕13からの選別風によって上方(脱穀部5A側)に吹き飛ばされた藁屑を吸引して、脱穀装置5の外部へ排出する装置である。排塵ファン24は、
図1に示すコンバイン1の動力発生手段から取り出された動力により駆動されて回転する。排塵ファン24は、
図3、
図4、
図9に示すように、移送方向M(
図3、
図4の矢印Mで示す方向)と交差する方向(
図3、
図4の矢印Wで示す方向)の一方側、かつ後側シーブ17の上方(脱穀部5A側)に吸引口24I(
図3、
図9)が開口している。本実施形態において、排塵ファン24は、排塵処理室5Wと対向している。すなわち、本実施形態において、排塵ファン24は移送方向Mと交差(本実施形態では直交)する方向の一方側に配置され、排塵処理室5Wは移送方向Mと交差(本実施形態では直交)する方向の他方側に配置される。なお、排塵ファン24は移送方向Mに対して右側に、排塵処理室5Wは移送方向Mに対して左側に配置される。
【0040】
排塵ファン24は、移送方向Mと交差する方向の一方側に配置されているので、移送方向Mと交差する方向(本実施形態では直交する方向)から選別部5B内の空気を吸引する。また、排塵処理室5Wは、排塵ファン24と対向して配置されて、排塵処理胴30の後端部(移送方向Mの下手側における端部)から排出される藁屑等を多く含んだ被処理物を、選別棚18の後側シーブ17上に排出する。排塵処理室5Wは、移送方向Mと交差(本実施形態では直交)する方向に延在している後側シーブ17上に被処理物を排出することで、篩い選別が促進されるとともに、穀粒が選別された藁屑等の夾雑物は後側フィン17Pの間から流出する選別風によって浮き上がり、排塵処理室5Wと対向する位置に配置されている排塵ファン24に吸引される。また、後側シーブ17は、穀粒の選別性能がストローラックよりも高いため、排塵処理室5Wが排出した被処理物から穀粒を効率よく選別することができる。さらに、排塵ファン24によって、選別棚18による前後方向(移送方向Mに対する両方向)の動きと交差(本実施形態では直交)する方向の流れができるので、被処理物の選別工程を長くすることができる。これらの作用により、被処理物から穀粒を選別する精度が向上するとともに、選別処理の能力も向上する。さらに、排塵ファン24は、排塵処理室5Wと対向する位置に配置されているので、排塵処理室5Wの排出方向の延長線上で藁屑等の夾雑物を吸引することができる。このため、排塵ファン24による夾雑物の排出効率が向上するので、二番回収部21に落下する夾雑物の量を低減できる。その結果、二番処理室5Pでの処理量を低減できるので、穀粒の選別効率を向上させることができる。次に、一番回収部19について説明する。
【0041】
一番回収部19は、
図2に示すように、一番回収棚19Lと、一番回収装置20とを含む。これらは、選別棚18及び精選別網12の下方に配置される。一番回収棚19Lは、
図2に示すように、移送方向Mの下手側に向かって上方、すなわち選別棚18に向かって傾斜している。そして、一番回収棚19Lは、棚先が後側シーブ17に向かっている。このようにすることで、移送棚18T上の被処理物が増加して、フラッパ14の傾斜が緩くなり(第1出口14E及び第2出口14BE側の端部が下方に移動する)、一番回収棚19Lに沿って流れる選別風の風量が増加しても、後部シーブ17が選別風を立ち上げる、すなわち、より上方に向けて流すことができる。その結果、脱穀装置5の外部へ排出される穀粒の量を低減して、穀粒の損失を抑制できる。
【0042】
一番回収棚19Lの底部には、一番回収装置20が配置される。
図6に示すように、一番回収装置20は、脱穀装置5の幅方向(
図6の矢印Wで示す方向)に延在する螺旋軸である。脱穀装置5の幅方向は、移送方向Mと直交する方向である。なお、
図6は、便宜上、
図3のA−Aにおける断面と、一番回収装置20と、一番揚穀装置25と、一番揚穀筒25Tとを同じ図面に示している。一番回収装置20は、
図1に示すコンバイン1の動力発生手段から取り出された動力により駆動されて回転する。一番回収装置20は、回転することによって、一番回収棚19Lの底部に貯まった穀粒を、
図1に示すグレンタンク7が配置される側(排塵処理室5W側であり、移送方向Mの下手側に向かって左側)に移送する。
【0043】
図6に示すように、一番回収装置20の排塵処理室5W側における端部は、一番揚穀装置25の一端部と向かい合っている。
図6、
図3に示す一番揚穀装置25は、螺旋軸であって円筒形状の一番揚穀筒25Tの内部に配置されている。一番回収装置20の排塵処理室5W側における端部と一番揚穀装置25の一端部とは、例えば、傘歯車を介してつながっており、一番回収装置20が回転すると一番揚穀装置25も回転する。一番回収装置20と一番揚穀装置25とは、それぞれの回転軸が互いに直交している。一番回収装置20によって排塵処理室5W側まで移送されてきた穀粒は、一番回収装置20の排塵処理室5W側における端部で90度向きを変えて、一番揚穀装置25によって上方に移送されて、
図1に示すグレンタンク7内へ投入される。次に、二番回収部21について説明する。
【0044】
二番回収部21は、
図2に示すように、二番回収棚21Lと、二番回収装置22とを含む。これらは、前側第2シーブ16及び後側シーブ17の下方に配置される。二番回収部21は、一番回収部19に落下せず、選別棚18上を後方、すなわち移送方向Mの下手側に移送された被処理物(枝梗付着粒及び鍵叉等)の一部が落下する。なお、二番回収部21に落下しなかった残りの被処理物は、選別棚18の後方に開口した三番排塵口53から排出される。
【0045】
二番回収棚21Lは、
図2に示すように、移送方向Mの下手側に向かって上方、すなわち後側シーブ17に向かって傾斜している。二番回収装置22は、二番回収棚21Lの底部であって一番回収棚19Lの下方に配置されている。二番回収装置22は、一番回収装置20と同様に、脱穀装置5の幅方向に延在する螺旋軸である。二番回収装置22は、
図1に示すコンバイン1の動力発生手段から取り出された動力により駆動されて回転する。二番回収装置22は、回転することによって、二番回収棚21Lの底部に貯まった被処理物を、
図1に示すグレンタンク7が配置される側に移送する。グレンタンク7が配置される側は、
図7に示す二番処理室5P側であり、移送方向Mの下手側に向かって左側である。なお、
図7には、便宜上、
図3のB−Bにおける断面と、二番還元装置26と、二番還元筒26Tとを同じ図面に示している。
【0046】
図7、
図3に示す二番還元装置26は、螺旋軸であって円筒形状の二番還元筒26Tの内部に配置されている。二番回収装置22の排塵処理室5W側における端部と二番還元装置26の一端部とは、例えば、傘歯車を介してつながっており、二番回収装置22が回転すると二番還元装置26も回転する。二番回収装置22と二番還元装置26とは、それぞれの回転軸が互いに直交している。二番回収装置22によって二番処理室5P側まで移送されてきた被処理物は、二番回収装置22の二番処理室5P側における端部で90度向きを変えて、二番還元装置26によって上方に移送されて、
図7に示す二番処理室5P内へ投入される。二番処理室5P内へ投入された被処理物は、二番処理胴29が回転することによって脱穀装置5の前方、すなわち、選別棚18における移送方向Mとの上手側に移送される過程で穀粒に付着している枝梗の分離(穀粒の単純化)が行われる。枝梗が分離された穀粒は、選別棚18、より具体的には選別棚18の移送棚18Tに放出されて、扱室5Dから落下してきた被処理物と合流する。これらは、選別棚18の前側第1シーブ15、前側第2シーブ16及び後側シーブ17で穀粒が夾雑物と選別される。次に、選別部5Bの他の構造について説明する。
【0047】
<選別部の他の構造>
図4、
図2に示すように、選別部5Bは、排塵処理室5Wの前方(移送方向Mの上手側)かつ脱穀部5A(より具体的には扱胴10)の下方に、平板状の受け板50を有している。受け板50は、前側第1シーブ15の後側と前側第1シーブ16の前側との間に配置される。また、受け板50の上方には、排塵ファン24に向かって傾斜する一対の寄せ板51、52が立設している。排塵処理室5Wの前方からは、排塵処理胴30で裁断された藁屑等の被処理物が選別棚18上に排出される。扱網11から落下する被処理物は穀粒が多いが、排塵処理室5Wから排出される被処理物は藁屑が多いため、受け板50は排塵処理室5Wからの被処理物を一旦受けて、扱網11から落下する被処理物との混合を抑制する。このようにすることで、穀粒の選別精度及び選別能力が向上する。また、一対の寄せ板51、52は、排塵処理室5Wからの被処理物を排塵ファン24に向かって導く機能を有している。この機能により、排塵処理室5Wからの被処理物に多く含まれる藁屑は、排塵ファン24によって効率よく脱穀装置5の外部へ放出される。
【0048】
図2、
図4、
図7に示すように、選別棚18の移送棚18Tの上方には、移送棚18T上の被処理物の厚みを計測するための厚み検出装置28が設けられている。厚み検出装置28は、センサとしての層厚センサ28Sと、検出体28Tとを有する。層厚センサ28Sは、入力シャフトの回転角度又は回転量を検出するものである。検出体28Tは、層厚センサ28Sの入力シャフトに取り付けられており、移送棚18Tの表面に向かって層厚センサ28Sから垂下されている。移送棚18T上の被処理物は、検出体28Tと接触する。移送棚18Tの被処理物が移送棚18T上を移送されると、検出体28Tは、被処理物の厚みに応じて回動軸Zaを中心として回動する。検出体28Tの回動量は、被処理物の厚みと相関があるので、検出体28Tの回動量を層厚センサ28Sが検出することにより、移送棚18T上の被処理物の厚みを検出することができる。
【0049】
また、厚み検出装置28は、移送棚18Tよりも検出体28Tの回動中心を高い位置に配置しているので、移送棚18T上の被処理物の移送を阻害しない。また、層厚センサ28Sのシャフトは、排塵ファン24に向かって傾斜する一対の寄せ板51、52に対して直交している。このため、厚み検出装置28の検出体28Tは、寄せ板51、52と平行な方向に回動する。その結果、二番処理室5Pからの被処理物と扱室5Dからの被処理物との厚みを正確に検出することができる。また、検出体28Tは、二番処理室5Pの排出口よりも移送方向Mの下手側に配置されるので、二番処理室5Pからの被処理物と扱室5Dからの被処理物との厚みを正確に検出することができる。
【0050】
図4、
図5に示すように、前側第1シーブ15が有する複数の第1フィン15Pのうち少なくとも1つは、清掃部材としてのスクレーパ31を有している。本実施形態では、すべての第1フィン15Pがスクレーパ31を備えている。スクレーパ31は、第1フィン15Pの上手側の表面(上面)と接し、かつ第1フィン15Pが延在する方向と平行な方向に往復運動可能な部材である。すなわち、スクレーパ31は、第1フィン15Pをレール(案内体)として、第1フィン15Pの延在方向と平行な方向に移動することができる。
【0051】
複数のスクレーパ31は、スクレーパ支持体32に取り付けられて、スクレーパ支持体32よって支持される。スクレーパ支持体32の下方からは、一番回収部19に向かってピン32Pが突出している。ピン32Pは、スクレーパ駆動体33が有する溝33Sと係り合っている。スクレーパ駆動体33は、平面視が長方形である第1の板状部材と、第1の板状部材と直交して第1の板状部材の長手方向中央部近傍から延出する平面視が長方形である第2の板状部材とを有している。このように、スクレーパ駆動体33は、平面視が略T字形状の部材である。溝33Sは、第2の板状部材の一端部に設けられる。
【0052】
第1の板状部材は、長手方向中央近傍で回動できるように支持されている。また、第1の板状部材の両端部には、それぞれ駆動ワイヤ34が取り付けられている。一方の駆動ワイヤ34を引っ張ることにより、第1の板状部材及び第2の板状部材が回動する。第2の板状部材が回動することにより、第2の板状部材の一端部に設けられている溝33Sと係り合っているピン32Pは、第1フィン15Pの延在方向と平行な方向に移動するので、ピン32Pと連結されているスクレーパ支持体32もピン32Pと同様に移動する。その結果、複数のスクレーパ31は、第1フィン15Pの延在方向と平行な方向に移動する。一方の駆動ワイヤ34と他方の駆動ワイヤ34とを交互に引っ張ることにより、複数のスクレーパ31を第1フィン15Pが延在する方向と平行な方向に往復運動させることができる。
【0053】
スクレーパ31は、それぞれの第1フィン15Pに付着して、隣接する第1フィン15Pの間を閉塞する藁屑を取り除き、第1フィン15Pを清掃する機能を有する。スクレーパ31の前記機能により、穀粒の回収ロスが軽減される。すなわち、湿った穀稈の脱穀作業では、それぞれの第1フィン15Pに藁屑が付着しやすく、この付着した藁屑により穀粒の落下が阻害され、穀粒の回収効率が低下するおそれがある。スクレーパ31は、脱穀作業中に第1フィン15Pに付着した湿った藁屑等を除去して、それぞれの第1フィン15P間の隙間を確保して、穀粒の落下を円滑にさせて、穀粒の回収効率を向上させることができる。また、脱粒後の被処理物は、扱室5Dに供給された穀稈の穂先側、すなわち二番処理室5P側に偏って選別棚18上に落下する傾向がある。スクレーパ31は、第1フィン15Pが延在する方向と平行な方向に往復運動することで、移送棚18Tから移送されてきた被処理物を、前側第1シーブ15の幅方向(
図4の矢印Wで示す方向)に均等に拡散する。その結果、脱穀装置5は穀粒の選別効率が向上する。
【0054】
スクレーパ31は、三角錐台形状の部材である。より具体的には、スクレーパ31は、三角形状の底面と、前記底面と相似形かつ前記底面よりも小さい頂面と、前記底面及び前記頂面のそれぞれの辺を接続する3個の側面とを含んでいる。スクレーパ31の側面は、底面及び頂面に対して傾斜している。スクレーパ31は、三角形状の頂面及び底面の1つの頂点が、移送方向Mの下手側に向くように配置されている。スクレーパ31は、底面が第1フィン15Pの表面(移送方向Mの上手側における表面)と接している。このため、スクレーパ31の側面は、第1フィン15Pの表面に対して傾斜している。このため、スクレーパ31が第1フィン15Pの表面で往復運動すると、スクレーパ31の底面とスクレーパ31の移動方向に位置する側面との間に形成される端縁によって、第1フィン15Pの表面に付着した被処理物をそぎ取る。また、この端縁に対する垂線が、移送方向Mの下手側を向いているため、スクレーパ31がそぎ取った被処理物の後方へ跳ね飛ばす効果があり、前側第1シーブ15での被処理物の移送を促進する。なお、スクレーパ31と第1フィン15Pとが接する部分は、直線ではなくジグザグの形状としてもよい。このようにすると、スクレーパ31は、第1フィン15Pの表面に付着した被処理物をより効果的に除去することができる。
【0055】
<後側シーブの傾斜変更機構>
図11に示す後側シーブ17が有する複数の後側フィン17Pは、それぞれの傾斜が変更できるようにしてもよい。それぞれの後側フィン17Pは、移送方向M(矢印Mで示す方向)下手側における端部(後端部)17T側に回動軸17aを有する。このため、それぞれの後側フィン17Pは、回動軸17Saを中心として回動できるようになっている。それぞれの後側フィン17Pは、移動方向上手側における端部(前端部)17Sb側で、後側フィン連結部材40によってピン結合されている。このような構造により、後側シーブ17が有する複数の後側フィン17Pは、それぞれの回動軸17Saを中心として同時に回動する。
【0056】
最も移動方向上手側の後側フィン17Pには、傾斜変更入力部材39が取り付けられている。傾斜変更入力部材39は、最も移動方向上手側の後側フィン17Pとともに、回動軸17Saを中心として回動する。回動軸17Saとは反対側には、傾斜変更入力ワイヤ38が連結されている。また、傾斜変更入力部材39には、リターンスプリング48が取り付けられている。リターンスプリング48は、傾斜変更入力ワイヤ38が引き出される方向とは反対方向の力を傾斜変更入力部材39に与える。このような構造により、傾斜変更入力ワイヤ38を引っ張ると、それぞれの後側フィン17Pは、後端部17Tが下方に向かい、
図5に示す一番回収棚19Lに対する傾斜が緩い傾斜(より一番回収棚19Lと平行に近くなる)になる。また、傾斜変更入力ワイヤ38を緩めると、それぞれの後側フィン17Pは、後端部17Tが上方に向かい、
図5に示す一番回収棚19Lに対する傾斜が急傾斜(一番回収棚19Lとのなす角度がより大きくなる)になる。このようにすることで、後側シーブ17が有する後側フィン17Pの傾斜を変更することができる。後側シーブ17の傾斜を変更できるようにすると、二番還元量を調整することができるので、処理効率の向上を図ることができる。なお、
図11に示すように、本実施形態において、隣接する後側フィン17Pの後端部17Tにおける高さは、移送方向Mの下手側に進むにしたがってhずつ高くなる。
【0057】
上述したように、前側第2シーブ16が有する複数の第2フィン16Pは、それぞれ傾斜が変更できるようになっている。第2フィン16Pの傾斜変更機構は、上述した後側フィン17Pの傾斜変更機構と同様である。すなわち、それぞれの第2フィン16Pは、後側端部側の回動軸16Sを中心として回動できるようになっている。そして、それぞれの第2フィン16Pは、前側端部側で第2フィン連結部材43とピン結合されている。最も移送方向Mの上手側の第2フィン16Pには、傾斜変更入力部材42が取り付けられている。また、傾斜変更入力部材42には、リターンスプリング44及び傾斜変更入力ワイヤ47が取り付けられている。このような構造により、複数の第2フィン16Pは、それぞれ傾斜が変更できる。
【0058】
<フラッパの開度変更機構>
図12に示すフラッパ14は、第2導風板14Bに取り付けられたシャフト14Sを介して、入力部材14Aから開度変更の入力がなされる。入力部材14Aの一端部はシャフト14Sに取り付けられており、他端部は、棒状の部材である入力伝達部材35の一端部とピン結合されている。入力伝達部材35の他端部は、外周部の一部に入力ギヤ36Gを有するとともに、回動軸Zcを中心として回動する半円形状の回動部材36にピン結合されている。回動部材36の入力ギヤ36Gは、電動機37の出力軸に取り付けられた出力ギヤ37Gと噛み合っている。このような構造により、電動機37が回転すると、回動部材36が回動軸Zcを中心として回動するので、入力伝達部材35がその長手方向に向かって移動する。すると、入力伝達部材35の一端部とピン結合された入力部材14Aが軸Zbを中心としてシャフト14Sを回動させる。シャフト14Sは、第2導風板14Bに取り付けられているので、シャフト14Sの回動により、軸Zbを中心として第2導風板14Bは回動する。連結部材14Jによって第2導風板14Bと連結されている第1導風板14Uは、第2導風板14Bが回動する方向と同じ方向に、軸Zaを中心として回動する。このようにして、フラッパ14の開度が変更される。なお、フラッパ14は、電動機37以外の動力発生源によって開度が変更されてもよい。
【0059】
図12に示す回動部材36は、回動軸Zcに対して入力伝達部材35の他端部がピン結合されている部分と対向する部分に、後側シーブ17が有する後側フィン17Pの傾斜を変更するために用いる傾斜変更入力ワイヤ38がピン結合されている。このような構造により、フラッパ14の開度と後側フィン17Pの傾斜とを連動して変更することもできる。なお、後側フィン17Pの傾斜は、フラッパ14の開度とは別個独立に変更できてもよい。また、後側フィン17Pの傾斜は、前側第2シーブ16が有する第2フィン16Pの傾斜と別個独立に変更できてもよいし、第2フィン16Pの傾斜と連動して変更できてもよい。さらに、第2フィン16Pの傾斜は、フラッパ14の開度とは別個独立に変更できてもよいし、連動して変更できてもよい。フラッパ14の開度と、後側フィン17Pの傾斜と、第2フィン16Pの傾斜とをそれぞれ別個独立に変更できるようにすることで、制御の自由度が向上する。また、フラッパ14の開度と、後側フィン17Pの傾斜と、第2フィン16Pの傾斜とのうち少なくとも2つを連動して変更できるようにすることで、これらの駆動に用いる電動機等のアクチュエータの数を低減することができるので、脱穀装置5の製造コストを低減できる。また、後側シーブ17の傾斜を第2シーブ16の傾斜と別個独立に変更できるようにすると、選別状態を良好に保ちつつ、二番還元量を調整することができるので、処理効率の向上を図ることができる。
【0060】
図13に示すように、フラッパ14の開度、前側第2シーブ16及び後側シーブ17の傾斜は、制御装置41によって制御することができる。制御装置41は、例えば、マイクロコンピュータである。制御装置41は、例えば、層厚センサ28Sが検出した移送棚18T上の被処理物の厚みに応じて、フラッパ14の開度又は後側シーブ17の傾斜を変更する。
【0061】
<第1の制御>
第1の制御は、脱穀装置5が小型で、処理能力が高くない場合に有効である。なお、脱穀装置5の処理能力は、選別棚18の長さと幅とで決定される。第1の制御において、例えば、制御装置41は、層厚センサ28Sが検出した被処理物の厚みが大きくなるにしたがって、
図2、
図5に示す唐箕13から放出される選別風の方向を、選別棚18における移送方向Mの下手側の部位に向かわせる。制御装置41は、フラッパ14が有する第1導風板14U及び第2導風板14Bの第1出口14UE及び第2出口14BE側の端部を下方、すなわち選別棚18から遠ざかる方向に移動させて、選別風の方向を、移送方向Mの下手側に向かわせる。このようにすることで、二番還元量を抑制することができる。このとき、制御装置41は、後側シーブ17を緩傾斜、すなわち、それぞれの後側フィン17Pの後端部17Tを下方に向かわせることで、二番還元量をより抑制することができる。すなわち、後側シーブ17は、層厚センサ28Sが検出した被処理物の厚みが大きくなるにしたがって、緩傾斜となることが好ましい。このようにすれば、二番還元量をより効果的に抑制できる。被処理物の厚みが大きい場合、脱穀装置5が小型で処理能力が低いと、選別処理ができなくなるおそれがある。第1の制御のようにすることで、二番還元量を抑制して、二番還元装置26及び二番処理室5Pにおける処理負荷を軽減するとともに選別棚18の選別精度を確保する。
【0062】
また、層厚センサ28Sが検出した被処理物の厚みが小さくなるにしたがって、制御装置41は、フラッパ14が有する第1導風板14U及び第2導風板14Bの第1出口14UE及び第2出口14BE側の端部を上方、すなわち選別棚18に接近する方向に移動させて、選別風の方向を、移送方向Mの上手側に向かわせる。このようにすれば、二番還元量を増加させることで、移送棚18T上の被処理物の量を適正な値まで増加させることができる。このとき、制御装置41は、後側シーブ17を急傾斜、すなわち、それぞれの後側フィン17Pの後端部17Tを上方に向かわせることで、移送棚18T上の被処理物を増加させることができる。なお、第1の制御においては、第1導風板14U及び第2導風板14Bが一番回収棚19Lと平行になるようにフラッパの開度が変更されたとき、後側シーブ17が緩傾斜となるように両者が連動して動作する機構(例えば、
図12に示す機構)とすることが好ましい。
【0063】
また、前側第2シーブ16の傾斜とは別個独立に後側シーブ17の傾斜を調整する場合、穀粒の種類、すなわち、脱穀対象である穀物の種類に応じて、傾斜の程度、より具体的には基準とする傾斜(基準傾斜)の程度を異ならせることが好ましい。すなわち、移送棚18T上の被処理物の厚みが同じであっても、後側シーブ17の傾斜の程度を穀物の種類によって変更する。例えば、麦は稲よりも基準傾斜を小さくする。この場合、移送棚18T上の被処理物の厚みが同じであっても、麦の場合は後側シーブ17を稲よりも緩傾斜とする。例えば、麦の場合、後側シーブ17での夾雑物の割合が多く、かつ移送棚18T上の被処理物の厚みも大きい。このため、麦の場合は後側シーブ17を稲よりも緩傾斜とすることにより、二番還元量を適正にできるとともに、移送棚18T上の被処理物の厚みを良好な状態に維持することができる。
【0064】
<第2の制御>
第2の制御は、脱穀装置5が大型で、処理能力が高い場合に有効である。第2の制御において、例えば、制御装置41は、層厚センサ28Sが検出した被処理物の厚みが大きくなるにしたがって、
図2、
図5に示す唐箕13から放出される選別風の方向を、移送方向Mの下手側に向かわせる場合、後側シーブ17を急傾斜、すなわち、それぞれの後側フィン17Pの後端部17Tを上方に向かわせる。このようにすることで、前側第2シーブ16で回収できなかった穀粒を回収して、脱穀装置5の外部へ放出される穀粒の量を抑制することができる。また、層厚センサ28Sが検出した被処理物の厚みが小さくなるにしたがって、制御装置41は、選別風の方向を、移送方向Mの上手側に向かわせるようにフラッパ14の開度を変更するとともに、後側シーブ17を緩傾斜、すなわち、それぞれの後側フィン17Pの後端部17Tを上方に向かわせる。このようにすることで、二番回収部21に落下する夾雑物の量を抑制して、選別状態を良好に保つことができる。第2の制御においても、第1導風板14U及び第2導風板14Bが一番回収棚19Lと平行になるようにフラッパの開度が変更されたとき、後側シーブ17が急傾斜となるように両者が連動して動作する機構とすることが好ましい。このように、第1の制御と第2の制御とは、脱穀装置5の大きさ又は処理能力によって適切な方を用いることが好ましい。
【0065】
<篩い体>
図14、
図15に示すように、後側シーブ17の上方には、移送方向M(
図14、
図15の矢印Mで示す方向)に向かって延在し、かつ移送方向Mと直交する方向(
図14の矢印Wで示す方向)に配列される複数の線状の篩い体45を配置してもよい。このようにすることで、
図2等に示す排塵処理胴30の後端(移送方向Mの下手側における端部)から排出される粗大な排塵及び選別棚18の前方(移送方向Mの上手側)から移送され、前側第1シーブ15及び前側第2シーブ16で除去し切れなかった被処理物を、篩い体45で予め選別することができる。その結果、後側シーブ17における穀粒の回収が良好になるとともに、排塵ファン24による排塵の吸い込みも良好となり、処理効率が向上する。
【0066】
このとき、複数の篩い体45は、
図14に示すように、排塵処理室5W側よりも排塵ファン24の吸入口24I側の方が、隣接する篩い体45同士の間隔tを大きくすることが好ましい。すなわち、反排塵処理室側の部位において隣接する篩い体45同士の間隔は、排塵処理室5W側の部位において隣接する篩い体45同士の間隔よりも大きく設定されることが好ましい。排塵ファン24側は吸い込み効率が高く、排塵を吸い込みやすいので、排塵ファン24へ向かうにしたがって間隔tを大きくすることで、排塵ファン24による吸い込みを適切にすることができる。その結果、排塵ファン24によって脱穀装置5の外部へ排出される穀粒の量を抑制することができる。また、
図15に示すように、篩い体45の基準面HP(例えば、
図2に示す移送棚18Tの上面)に対する角度θbは、後側シーブ17が有する複数の後側フィン17Pの配列角度θa以上とすることが好ましい。配列角度θaは、複数の後側フィン17Pの後端部17Tを、それぞれの後側フィン17Pが配列される方向に向かって結んだ面と、基準面HPとのなす角度である。θa≦θbとすることにより、篩い体45による篩い効果が促進されるので、穀粒を効率的に回収することができる。
【0067】
また、後側シーブ17の傾斜の程度を変更できるようにした場合、複数の篩い体45も、後側シーブ17が有する後側フィン17Pと連動して傾斜の程度が変更されるようにしてもよい。また、上述した層厚センサ28Sが検出した被処理物の厚みに応じて、篩い体45の傾斜が変更されるようにしてもよい。このようにすれば、選別棚18の移送棚18T上の被処理物の量に応じて一番回収部19又は二番回収部21における回収具合を変更して、移送棚18T上の被処理物の厚みを適正にすることができる。