(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、案内分岐点を特定させる案内を行う場合には、案内を適切なタイミングで開始することが重要である。特に、上記特許文献1のように手前側分岐点に設置された信号機に基づく案内では、他の案内(例えば移動体から案内分岐点までの距離を用いた案内等)に比べて、案内の内容に従って案内を適切なタイミングで開始することが重要である。そして、案内を適切なタイミングで開始しないと、ユーザが案内分岐点を誤って認識する虞が高くなる。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1のように案内分岐点から所定距離手前の地点や、案内分岐点までの所要時間が所定時間となる地点を案内の開始地点とすると、適切なタイミングで案内を開始することが難しく、ユーザが案内分岐点を誤って認識する虞があった。
【0008】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、手前側分岐点に設置された信号機に基づく案内を、案内の内容に基づく適切なタイミングで開始することができ、ユーザに案内分岐点を正確に特定させることを可能にした移動案内システム、移動案内装置、移動案内方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る移動案内システム(1)は、
車両(71)の
走行を案内する案内経路と該案内経路上の案内分岐点を設定する案内経路設定手段(13)と、前記案内分岐点よりも前記案内経路の出発地側に存在する手前分岐点(73〜75)の退出側信号機(77〜79)の位置を取得する信号機位置取得手段(13)と、前記
車両の位置を取得する
車両位置取得手段(13)と、
前記車両に関する車両情報を取得する車両情報取得手段と、前記車両情報に基づいて、前記車両の乗員から前記手前分岐点の前記退出側信号機が視認できる状態から視認できなくなる状態へと切り替わる切替地点を特定する切替地点特定手段と、前記切替地点を前記案内分岐点の案内を開始する地点である案内開始地点
として取得する案内開始地点取得手段(13)と、前記
車両の位置と前記案内開始地点の位置とに基づいて、前記
車両が前記案内開始地点を通過したか否か判定する通過判定手段(13)と、前記通過判定手段により前記
車両が前記案内開始地点を通過したと判定された時に、前記案内分岐点の案内を開始する分岐点案内手段(13)と、を有することを特徴とする。
尚、「移動体」としては、車両以外に、歩行者や二輪車も含む。
また、「案内分岐点」とは、案内経路に従って移動体の移動の案内を行う際に、右左折指示等の案内を行う対象となる分岐点が該当する。
また、「退出側信号機」は、移動体の分岐点における通過方向において最も退出側に位置する信号機(即ち移動体が分岐点を通過する際に、その分岐点で最後に視認できる信号機)をいう。
【0010】
また、請求項2に係る移動案内システム(1)は、請求項1に記載の移動案内システムであって、前記手前分岐点(73〜75)において前記案内経路の出発地側に存在する地物(81〜83)を検出する地物検出手段(13)と、前記地物検出手段により前記地物を検出した後の前記
車両(71)の
走行距離を算出する距離算出手段(13)と、前記地物から前記案内開始地点までの距離である地物距離を取得する地物距離取得手段(13)と、を有し、前記通過判定手段(13)は、前記
走行距離と前記地物距離とに基づいて、前記
車両が前記案内開始地点を通過したか否か判定することを特徴とする。
尚、「地物」としては、道路上又は道路付近において位置や角度が固定されている物が該当し、障害物、建造物、道路標識(路面標示含む)等がある。
【0011】
また、請求項3に係る移動案内システム(1)は、請求項2に記載の移動案内システムであって、前記地物検出手段(13)は、前記
車両(71)に設置された撮像手段(19)より撮像した画像に基づいて、前記
車両が走行する道路に形成された前記地物(81〜83)を検出し、前記通過判定手段(13)は、前記地物検出手段により前記地物を検出した際の前記地物から前記
車両までの距離に前記
走行距離を加算した距離が前記地物距離以上となった場合に、前記
車両が前記案内開始地点を通過したと判定することを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に係る移動案内システム(1)は、請求項2又は請求項3に記載の移動案内システムであって、前記地物検出手段(13)によって検出された前記地物(81〜83)と該地物の位置情報とが対応付けられた地物情報を取得する地物情報取得手段(13)を有し、前記信号機距離取得手段(13)は、前記地物情報と前記手前分岐点(73〜75)の前記退出側信号機(77〜79)の位置情報とに基づいて前記信号機距離を取得することを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に係る移動案内システム(1)は、請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の移動案内システムであって、前記地物(81〜83)は、前記
車両(71)が走行する路面に形成された路面標示であることを特徴とする。
尚、「路面標示」としては、停止線、横断歩道、文字列、最高速度等がある。
【0014】
また、請求項6に係る移動案内システム(1)は、請求項5に記載の移動案内システムであって、前記地物検出手段(13)は、前記路面標示として停止線を検出することを特徴とする。
【0016】
また、請求項
7に係る移動案内装置(1)は、
車両(71)の
走行を案内する案内経路と該案内経路上の案内分岐点を設定する案内経路設定手段(13)と、前記案内分岐点よりも前記案内経路の出発地側に存在する手前分岐点(73〜75)の退出側信号機(77〜79)の位置を取得する信号機位置取得手段(13)と、前記
車両の位置を取得する
車両位置取得手段(13)と、
前記車両に関する車両情報を取得する車両情報取得手段と、前記車両情報に基づいて、前記車両の乗員から前記手前分岐点の前記退出側信号機が視認できる状態から視認できなくなる状態へと切り替わる切替地点を特定する切替地点特定手段と、前記切替地点を前記案内分岐点の案内を開始する地点である案内開始地点
として取得する案内開始地点取得手段(13)と、前記
車両の位置と前記案内開始地点の位置とに基づいて、前記
車両が前記案内開始地点を通過したか否か判定する通過判定手段(13)と、前記通過判定手段により前記
車両が前記案内開始地点を通過したと判定された時に、前記案内分岐点の案内を開始する分岐点案内手段(13)と、を有することを特徴とする。
【0017】
また、請求項
8に係る移動案内方法は、
案内経路設定手段が、車両(71)の
走行を案内する案内経路と該案内経路上の案内分岐点(72)を設定す
るステップと、
信号機位置取得手段が、前記案内分岐点よりも前記案内経路の出発地側に存在する手前分岐点(73〜75)の退出側信号機(77〜79)の位置を取得す
るステップと、車両位置取得手段が、前記
車両の位置を取得す
るステップと、
車両情報取得手段が、前記車両に関する車両情報を取得するステップと、切替地点特定手段が、前記車両情報に基づいて、前記車両の乗員から前記手前分岐点の前記退出側信号機が視認できる状態から視認できなくなる状態へと切り替わる切替地点を特定するステップと、案内開始地点取得手段が、前記切替地点を前記案内分岐点の案内を開始する地点である案内開始地点
として取得す
るステップと、
通過判定手段が、前記
車両の位置と前記案内開始地点の位置とに基づいて、前記
車両が前記案内開始地点を通過したか否か判定す
るステップと、
分岐点案内手段が、前記通過判定
手段により前記
車両が前記案内開始地点を通過したと判定された時に、前記案内分岐点の案内を開始す
るステップと、を有することを特徴とする。
【0018】
更に、請求項
9に係るコンピュータプログラムは、コンピュータ
を、車両(71)の
走行を案内する案内経路と該案内経路上の案内分岐点(72)を設定する案内経路設定
手段と、前記案内分岐点よりも前記案内経路の出発地側に存在する手前分岐点(73〜75)の退出側信号機(77〜79)の位置を取得する信号機位置取得
手段と、前記
車両の位置を取得する
車両位置取得
手段と、
前記車両に関する車両情報を取得する車両情報取得手段と、前記車両情報に基づいて、前記車両の乗員から前記手前分岐点の前記退出側信号機が視認できる状態から視認できなくなる状態へと切り替わる切替地点を特定する切替地点特定手段と、前記切替地点を前記案内分岐点の案内を開始する地点である案内開始地点
として取得する案内開始地点取得
手段と、前記
車両の位置と前記案内開始地点の位置とに基づいて、前記
車両が前記案内開始地点を通過したか否か判定する通過判定
手段と、前記通過判定
手段により前記
車両が前記案内開始地点を通過したと判定された時に、前記案内分岐点の案内を開始する分岐点案内
手段と、
して機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
前記構成を有する請求項1に記載の移動案内システムによれば、手前分岐点に設置された退出側信号機に対する相対位置によって特定される案内開始地点を
車両が通過したタイミングで案内分岐点の案内を開始するので、案内の内容に基づく適切なタイミングで案内分岐点の案内を開始することが可能となる。従って、ユーザに案内分岐点を正確に特定させることが可能となる。
また、車両の乗員から手前分岐点の退出側信号機が視認できる状態から視認できなくなる状態へと切り替わる切替地点を案内開始地点とするので、手前分岐点の退出側信号機が視認できなくなった時点で案内分岐点の案内を開始することが可能となる。その結果、案内内容に基づく適切なタイミングで案内分岐点の案内を開始することが可能となる。特に信号機を用いた案内を行う場合には、その効果は顕著なものとなる。
【0020】
また、請求項2に記載の移動案内システムによれば、地物を検出した後の
車両の
走行距離と、地物から案内開始地点までの地物距離とに基づいて、
車両が案内開始地点を通過したか否か判定するので、手前分岐点に設置された地物を用いて、
車両と案内開始地点との位置関係を正確に特定することが可能となる。その結果、
車両が案内開始地点を通過した正確なタイミングで案内分岐点の案内を開始することが可能となる。
【0021】
また、請求項3に記載の移動案内システムによれば、
車両が撮像手段により地物を撮像することによって、地物を撮像した後の
車両の位置を、該地物に対する相対位置により正確に特定することが可能となる。その結果、
車両と案内開始地点との位置関係を正確に特定することが可能となり、
車両が案内開始地点を通過した正確なタイミングで案内分岐点の案内を開始することが可能となる。
【0022】
また、請求項4に記載の移動案内システムによれば、地物と該地物の位置情報とが対応付けられた地物情報に基づいて、地物から案内開始地点までの地物距離を取得するので、別途に地物距離を算出する為の特別な処理を行うことなく、地物情報から地物距離を容易に算出することが可能となる。
【0023】
また、請求項5に記載の移動案内システムによれば、路面に形成された路面標示を検出した後の
車両の
走行距離と、路面標示から案内開始地点までの地物距離とに基づいて、
車両が案内開始地点を通過したか否か判定するので、手前分岐点に設置された停止線や横断歩道等の路面標示を用いて、
車両と案内開始地点との位置関係を正確に特定することが可能となる。
【0024】
また、請求項6に記載の移動案内システムによれば、路面に形成された停止線を検出した後の
車両の
走行距離と、停止線から案内開始地点までの地物距離とに基づいて、
車両が案内開始地点を通過したか否か判定するので、手前分岐点に設置された停止線を用いて、
車両と案内開始地点との位置関係を正確に特定することが可能となる。また、停止線は信号機の設置された分岐点周辺の路面に描かれている可能性が極めて高いので、
車両が手前分岐点を通過する際に、
車両と案内開始地点との位置関係を確実に特定することが可能となる。
【0026】
また、請求項
7に記載の移動案内装置によれば、手前分岐点に設置された退出側信号機に対する相対位置によって特定される案内開始地点を
車両が通過したタイミングで案内分岐点の案内を開始するので、案内の内容に基づく適切なタイミングで案内分岐点の案内を開始することが可能となる。従って、ユーザに案内分岐点を正確に特定させることが可能となる。
また、車両の乗員から手前分岐点の退出側信号機が視認できる状態から視認できなくなる状態へと切り替わる切替地点を案内開始地点とするので、手前分岐点の退出側信号機が視認できなくなった時点で案内分岐点の案内を開始することが可能となる。その結果、案内内容に基づく適切なタイミングで案内分岐点の案内を開始することが可能となる。特に信号機を用いた案内を行う場合には、その効果は顕著なものとなる。
【0027】
また、請求項
8に記載の移動案内方法によれば、手前分岐点に設置された退出側信号機に対する相対位置によって特定される案内開始地点を
車両が通過したタイミングで案内分岐点の案内を開始するので、案内の内容に基づく適切なタイミングで案内分岐点の案内を開始することが可能となる。従って、ユーザに案内分岐点を正確に特定させることが可能となる。
また、車両の乗員から手前分岐点の退出側信号機が視認できる状態から視認できなくなる状態へと切り替わる切替地点を案内開始地点とするので、手前分岐点の退出側信号機が視認できなくなった時点で案内分岐点の案内を開始することが可能となる。その結果、案内内容に基づく適切なタイミングで案内分岐点の案内を開始することが可能となる。特に信号機を用いた案内を行う場合には、その効果は顕著なものとなる。
【0028】
更に、請求項
9に記載のコンピュータプログラムによれば、手前分岐点に設置された退出側信号機に対する相対位置によって特定される案内開始地点を
車両が通過したタイミングで案内分岐点の案内を開始させるので、案内の内容に基づく適切なタイミングで案内分岐点の案内を開始させることが可能となる。従って、ユーザに案内分岐点を正確に特定させることが可能となる。
また、車両の乗員から手前分岐点の退出側信号機が視認できる状態から視認できなくなる状態へと切り替わる切替地点を案内開始地点とするので、手前分岐点の退出側信号機が視認できなくなった時点で案内分岐点の案内を開始することが可能となる。その結果、案内内容に基づく適切なタイミングで案内分岐点の案内を開始することが可能となる。特に信号機を用いた案内を行う場合には、その効果は顕著なものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る移動案内システム及び移動案内装置をナビゲーション装置に具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係るナビゲーション装置1の概略構成について
図1を用いて説明する。
図1は本実施形態に係るナビゲーション装置1を示したブロック図である。
【0031】
図1に示すように本実施形態に係るナビゲーション装置1は、ナビゲーション装置1が搭載された車両の現在位置を検出する現在位置検出部11と、各種のデータが記録されたデータ記録部12と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーションECU13と、ユーザからの操作を受け付ける操作部14と、ユーザに対して車両周辺の地図や施設の関する施設情報を表示する液晶ディスプレイ15と、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ16と、記憶媒体であるDVDを読み取るDVDドライブ17と、プローブセンタやVICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタ等の情報センタとの間で通信を行う通信モジュール18と、から構成されている。また、ナビゲーション装置1には後述する路面標示を検出する為のバックカメラ19が接続されている。
【0032】
以下に、ナビゲーション装置1を構成する各構成要素について順に説明する。
現在位置検出部11は、GPS21、車速センサ22、ステアリングセンサ23、ジャイロセンサ24等からなり、現在の車両の位置、方位、車両の走行速度、現在時刻等を検出することが可能となっている。ここで、特に車速センサ22は、車両の移動距離や車速を検出する為のセンサであり、車両の駆動輪の回転に応じてパルスを発生させ、パルス信号をナビゲーションECU13に出力する。そして、ナビゲーションECU13は発生するパルスを計数することにより駆動輪の回転速度や移動距離を算出する。尚、上記5種類のセンサをナビゲーション装置1が全て備える必要はなく、これらの内の1又は複数種類のセンサのみをナビゲーション装置1が備える構成としても良い。
【0033】
また、データ記録部12は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された地図情報DB31、地物DB32、案内フレーズ条件テーブル33、地物テーブル34及び所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。尚、データ記録部12をハードディスクの代わりにメモリーカードやCDやDVD等の光ディスクにより構成しても良い。
【0034】
ここで、地図情報DB31は、例えば、道路(リンク)に関するリンクデータ35、ノード点に関するノードデータ36、各分岐点に関する分岐点データ37、施設等の地点に関する地点データ、地図を表示するための地図表示データ、経路を探索するための探索データ、地点を検索するための検索データ等が記憶された記憶手段である。
【0035】
ここで、リンクデータ35としては、例えば、該リンクを識別するリンクID、該リンクの端部に位置するノードを特定する端部ノード情報、該リンクを構成する道路の道路種別、車線数等が記憶される。また、ノードデータ36としては、該ノードを識別するノードID、該ノードの位置座標、該ノードがリンクを介して接続される接続先ノードを特定する接続先ノード情報等が記憶される。また、分岐点データ37としては、該分岐点(交差点)を形成するノードを特定する該当ノード情報、該分岐点に接続されるリンク(以下、接続リンクという)を特定する接続リンク情報、分岐点の周辺に設置された信号機に関する信号機情報38等が記憶される。
【0036】
また、信号機情報38としては、全国の各分岐点(交差点)の周辺に設置された信号機について、信号機の設置された方向(即ち、信号機のライトが向いている方向であり、以下、設置方向という)や灯数(3灯式、1灯式等)や信号機の設置された位置座標(以下、設置座標という)等が記憶される。更に、一の分岐点に対して複数の信号機が設置されている場合には、複数の信号機毎に上記設置方向や設置座標等が記憶される。例えば、
図2に示すように片側2車線の道路が交差する分岐点51では、8個の信号機52〜59が設置されている。従って、分岐点51の信号機情報38としては、信号機52〜59の設置方向や設置座標等が記憶される。
【0037】
尚、信号機情報38としては、分岐点からの退出方向毎に、最も退出側にある信号機(即ち車両が分岐点を通過する際に最後に視認できる信号機であり、以下、退出側信号機という)に関する情報のみを記憶する構成としても良い。例えば、
図2に示す分岐点51では、図の下から上への退出方向に対して退出側信号機である信号機53に関する情報を記憶し、図の上から下への退出方向に対して退出側信号機である信号機55に関する情報を記憶し、図の左から右への退出方向に対して退出側信号機である信号機57に関する情報を記憶し、図の右から左への退出方向に対して退出側信号機である信号機59に関する情報を記憶する。即ち、8個の信号機52〜59の内、信号機53、55、57、59の設置方向と設置座標のみを記憶する構成としても良い。また、分岐点からの進入方向毎に、最も進入側(即ち出発地側)にある信号機(即ち車両が最初に視認できる信号機であり、以下、進入側信号機という)に関する情報のみを記憶する構成としても良い。更に、信号機の代わりに停止線に関する情報を記憶する構成としても良い。
そして、ナビゲーションECU13は、後述のように地図情報DB31に記憶された各データに基づいて、車両の進行方向前方にある案内分岐点と該案内分岐点よりも案内経路の出発地側に存在する分岐点(以下、手前分岐点という)を特定する。また、案内分岐点や手前分岐点の周辺にある信号機の信号機情報38を取得する。そして、特定された案内分岐点や手前分岐点に関する情報や取得した信号機情報38に基づいて、後述の地物テーブル34(
図8参照)を作成する。尚、案内分岐点とは、ナビゲーション装置1に設定されている案内経路に従ってナビゲーション装置1が走行の案内を行う際に、右左折指示等の案内を行う対象となる分岐点である。
【0038】
また、地物DB32は、路面上に形成された地物である路面標示に関する情報が記憶されたDBである。ここで、
図3は地物DB32の記憶領域の一例を示した図である。
図3に示すように、地物DB32は、路面標示の位置を地図上で特定する座標データと、路面上に形成された路面標示の種類(例えば、停止線、横断歩道、文字列、最高速度)を識別する為の種類情報と、識別IDと、路面標示に関連付けられた制御対象物(停止線、コーナ、分岐点、信号機等)と、路面標示に関連付けられた制御対象物までの道なり距離から構成される。
【0039】
例えば、
図3に示す例では、座標(x1,y1)には「停止線(ID:123)」の路面標示が形成されており、且つその路面標示には8m前方に制御対象物として「分岐点」が対応付けられていることを示す。そして、ナビゲーションECU13はバックカメラ19で撮像した撮像画像から地物DB32に記録されたいずれかの路面標示を認識した場合に、認識した路面標示に関連付けられた制御対象物までの道なり距離に基づいて車両から制御対象物までの詳細な距離を間接的に算出する。そして、算出された距離に基づいて案内や車両制御を行う。
【0040】
また、案内フレーズ条件テーブル33は、案内分岐点の案内について、発話されるフレーズの内容とともに、案内の発話を開始する条件等がそれぞれ対応付けられて記憶されたテーブルである。以下に、案内フレーズ条件テーブル33について具体例を挙げてより詳細に説明する。
図4は案内フレーズ条件テーブル33の一例を示した図である。
図5は、
図4に示す案内フレーズ条件テーブル33で規定された案内開始地点を説明した図である。尚、
図4では、案内分岐点で行われる案内の内、特に案内分岐点に信号機が設置されている場合であって、該信号機を用いた表現内容で右左折の案内を行う場合に出力される案内について示す。また、以下の実施例の説明では、案内分岐点及び手前分岐点はいずれも信号機の設置された分岐点であり、案内分岐点の一つ手前側(案内経路に沿った出発地側)の分岐点を第1手前分岐点と称し、第1手前分岐点の更に一つ手前側(案内経路に沿った出発地側)の分岐点を第2手前分岐点と称し、第2手前分岐点の更に一つ手前側(案内経路に沿った出発地側)の分岐点を第3手前分岐点と称して説明する。
【0041】
図4に示すように、例えば、「2つ目の信号を左(右)方向です」との案内を行う場合には、案内分岐点に進入するまでに案内分岐点を含めて2箇所の信号機をユーザがカウントできる状態にある間に、案内の発話を開始する必要がある。従って、「2つ目の信号を左(右)方向です」との案内フレーズは、第2手前分岐点の退出側信号機に対して設定された案内開始地点を車両が通過したことを条件として案内を開始する。また、本実施形態において、第2手前分岐点の退出側信号機に設定された案内開始地点は、車両の乗員(特に運転手)から第2手前分岐点の退出側信号機が視認できる状態から視認できなくなる状態へと切り替わる地点が相当する。ここで、車両の乗員から第2手前分岐点の退出側信号機が視認できる状態から視認できなくなる状態へと切り替わる地点は、退出側信号機に対する相対的な位置関係によって特定されるが、その地点は車種毎に(より具体的には車の形状やフロントウィンドウの形状によって)異なる。例えば、第2手前分岐点の退出側信号機の5m手前の地点を車両が通過する時点で、車両の乗員から第2手前分岐点の退出側信号機が視認できる状態から視認できなくなる状態へと切り替わる場合には、
図5に示すように、案内分岐点61に対して2つ手前側の第2手前分岐点62の退出側信号機63の5m手前の地点Aを案内開始地点とし、地点Aを車両が通過した時点で、案内分岐点の案内が開始される。その結果、案内を受けたユーザは、案内分岐点61に進入するまでに第1手前分岐点64と案内分岐点61の2箇所の信号機の設置された分岐点をカウントすることが可能となり、案内文中の『2つ目の信号』が案内分岐点61に設置された進入側信号機65であることを明確に特定することが可能となる。
尚、案内フレーズ中の信号機の数は、分岐点単位での信号機の数とすることが望ましい。即ち、大型の道路等において同一分岐点に複数の信号機が設けられている場合には、該複数の信号機は1の信号機としてカウントすることが望ましい。その場合には、案内フレーズ中の信号機の数は、信号機の設置された分岐点(即ち、信号機交差点)の数に相当する。但し、分岐点単位でカウントする場合であっても、分岐点以外に設置された信号機(例えば押しボタン式信号機等)も信号機の数としてカウントすることが望ましい。以下の説明でも同様である。
案内フレーズ条件テーブル33には、同様にして他の案内フレーズについても記憶されている。尚、案内分岐点の案内方向は、左(右)方向以外に、右(左)斜め方向や右(左)手前方向等も存在する。
【0042】
また、地物テーブル34は、後述のように車両が案内分岐点に対して所定距離以内(例えば1.47km以内)に到達した時点でナビゲーションECU13によって作成される。そして、地物テーブル34は、車両の進行方向前方にある案内分岐点を基準にして、該案内分岐点及び手前分岐点にある停止線及び退出側信号機の相対的な位置関係を特定したテーブルである(
図8参照)。尚、地物テーブル34の詳細については後述する。
【0043】
一方、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)13は、ナビゲーション装置1の全体の制御を行う電子制御ユニットであり、演算装置及び制御装置としてのCPU41、並びにCPU41が各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM42、制御用のプログラムのほか、後述の分岐点案内処理プログラム(
図6、
図7参照)等が記録されたROM43、ROM43から読み出したプログラムを記憶するフラッシュメモリ44等の内部記憶装置を備えている。尚、ナビゲーションECU13は、処理アルゴリズムとしての各種手段を構成する。例えば、案内経路設定手段は、車両(移動体)の移動を案内する出発地(例えば、車両の現在位置)から目的地までの案内経路及び案内分岐点を設定する。信号機位置取得手段は、案内分岐点よりも案内経路の出発地側に存在する手前分岐点の退出側信号機の位置を取得する。移動体位置取得手段は、移動体(車両)の位置を取得する。案内開始地点取得手段は、手前分岐点に設置された退出側信号機に対する相対位置によって特定される案内開始地点の位置を取得する。通過判定手段は、移動体の位置と案内開始地点の位置とに基づいて、移動体が案内開始地点を通過したか否か判定する。分岐点案内手段は、通過判定手段により移動体が案内開始地点を通過したと判定された時に、案内分岐点の案内を開始する。地物検出手段は、手前分岐点において案内経路の出発地側に存在する地物(例えば停止線)を検出し、距離算出手段は、地物検出手段により地物を検出した後の移動体の移動距離を算出する。地物距離取得手段は、地物から案内開始地点までの距離(地物距離)を取得する。地物情報取得手段は、地物検出手段によって検出された地物と該地物の位置情報とが対応付けられた地物情報を取得する。車両情報取得手段は、車両に関する車両情報を取得し、切替地点特定手段は、車両情報に基づいて、車両の乗員から手前分岐点の退出側信号機が視認できる状態から視認できなくなる状態へと切り替わる切替地点を特定する。
【0044】
操作部14は、走行開始地点としての出発地及び走行終了地点としての目的地を入力する際等に操作され、各種のキー、ボタン等の複数の操作スイッチ(図示せず)から構成される。そして、ナビゲーションECU13は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。尚、操作部14は液晶ディスプレイ15の前面に設けたタッチパネルによって構成することもできる。また、マイクと音声認識装置によって構成することもできる。
【0045】
また、液晶ディスプレイ15には、道路を含む地図画像、交通情報、操作案内、操作メニュー、キーの案内、出発地から目的地までの案内経路、案内経路に沿った案内情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。特に本実施形態では、案内分岐点が車両の進行方向前方の所定距離以内(例えば300m)に接近した場合には、案内分岐点付近の拡大図や車両の案内分岐点における進行方向について表示する。
【0046】
また、スピーカ16は、ナビゲーションECU13からの指示に基づいて案内経路に沿った走行を案内する音声ガイダンスや、交通情報の案内を出力する。特に本実施形態では、案内分岐点が車両の進行方向前方にある場合には、案内内容に基づく所定の案内の開始タイミング(例えば、「2つ目の信号を左方向です」との音声案内を出力する場合には、第2手前分岐点の退出側信号機を車両の乗員が視認できなくなるタイミング)で案内分岐点の音声案内を出力する。
【0047】
また、DVDドライブ17は、DVDやCD等の記録媒体に記録されたデータを読み取り可能なドライブである。そして、読み取ったデータに基づいて音楽や映像の再生、地図情報DB31の更新等が行われる。
【0048】
また、通信モジュール18は、交通情報センタ、例えば、VICSセンタやプローブセンタ等から送信された渋滞情報、規制情報、交通事故情報等の各情報から成る交通情報を受信する為の通信装置であり、例えば携帯電話機やDCMが該当する。
【0049】
また、バックカメラ19は、例えばCCD等の固体撮像素子を用いたものであり、車両の後方に装着されたナンバープレートの上中央付近に取り付けられ、視線方向を水平より所定角度下方に向けて設置される。そして、走行時に車両の進行方向と逆方向となる車両後方を撮像する。そして、撮像画像の画像認識処理を行うことによって、車両の周囲にある地物の種類や位置を検出する。そして、検出された地物に基づいて、車両から制御対象物(停止線、コーナ、分岐点、信号機等)までの詳細な道なり距離を間接的に算出する。
【0050】
続いて、前記構成を有するナビゲーション装置1においてナビゲーションECU13が実行する分岐点案内処理プログラムについて
図6に基づき説明する。
図6は本実施形態に係る分岐点案内処理プログラムのフローチャートである。ここで、分岐点案内処理プログラムは車両のACCがONされた後に所定間隔(例えば車両の現在位置の検出周期毎)で繰り返し実行され、案内経路上にある案内分岐点に対する案内を行うプログラムである。尚、以下の
図6、
図7にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーション装置1が備えているRAM42やROM43に記憶されており、CPU41により実行される。
【0051】
先ず、分岐点案内処理プログラムではステップ(以下、Sと略記する)1において、CPU41は、ナビゲーション装置1において設定された案内経路に基づく経路案内が行われているか否か判定する。ここで、案内経路は、出発地(例えば自車の現在位置)からユーザに選択された目的地までの推奨経路であり、経路探索処理の結果に基づいて設定される。また、経路探索処理は、地図情報DB31に記憶されたリンクデータ35やノードデータ36、VICSセンタから取得した交通情報等を用いて、公知のダイクストラ法等により行われる。
【0052】
そして、ナビゲーション装置1において設定された案内経路に基づく経路案内が行われていると判定された場合(S1:YES)には、S2へと移行する。それに対して、ナビゲーション装置1において設定された案内経路に基づく経路案内が行われていないと判定された場合(S1:NO)には、当該分岐点案内処理プログラムを終了する。
【0053】
S2においてCPU41は、車両の現在位置を現在位置検出部11の検出結果に基づいて取得する。尚、車両の現在位置を地図データ上で特定するマップマッチング処理についても行う。更に、車両の現在位置は、後述のように高精度ロケーション技術を用いて詳細に特定することが望ましい。ここで、高精度ロケーション技術とは、車両後方のバックカメラ19から取り込んだ白線や路面ペイント情報を画像認識により検出し、更に、白線や路面ペイント情報を予め記憶した地物DB32と照合することにより、走行車線や高精度な車両位置を検出可能にする技術である。
【0054】
次に、S3においてCPU41は、ナビゲーション装置1において設定されている案内経路(案内経路中の案内分岐点を含む)を取得する。
【0055】
続いて、S4においてCPU41は、前記S2で取得した車両の現在位置と前記S3で取得した案内経路に基づいて、車両の進行方向前方の所定距離以内(例えば、1.47km以内)に案内分岐点が有るか否か判定する。尚、案内分岐点とは、前記したようにナビゲーション装置1に設定された案内経路に従ってナビゲーション装置1が走行の案内を行う際に、右左折指示等の案内を行う対象となる分岐点である。
【0056】
そして、車両の進行方向前方の所定距離以内に案内分岐点が有ると判定された場合(S4:YES)には、S5へと移行する。それに対して、車両の進行方向前方の所定距離以内に案内分岐点が無いと判定された場合(S4:NO)には、当該分岐点案内処理プログラムを終了する。
【0057】
S5においてCPU41は、車両の進行方向前方にある案内分岐点に対する案内が既に行われたか否か判定する。尚、前記S5では、案内分岐点に対する案内の内、特に案内分岐点での右左折等を指示する音声案内が行われたか否かを判定する。
【0058】
そして、車両の進行方向前方にある案内分岐点に対する案内が既に行われたと判定された場合(S5:YES)には、当該分岐点案内処理プログラムを終了する。それに対して、車両の進行方向前方にある案内分岐点に対する案内が行われていないと判定された場合(S5:NO)には、S6へと移行する。
【0059】
S6においてCPU41は、後述の分岐点案内判定処理(
図7)を実行する。尚、分岐点案内判定処理は、後述のように車両の進行方向前方に位置する案内分岐点の案内を開始するタイミングとなったか否かを、高精度ロケーション技術を用いて判定し、案内を開始するタイミングとなったと判定した場合に、案内分岐点の案内を開始する処理である。
【0060】
次に、前記S6において実行される分岐点案内判定処理のサブ処理について
図7に基づき説明する。
図7は分岐点案内判定処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【0061】
先ず、S11においてCPU41は、車両の進行方向前方に位置する案内分岐点に対する地物テーブル34が作成されているか否か判定する。ここで、地物テーブル34は、後述のS12において作成され、車両の進行方向前方にある案内分岐点を基準にして、該案内分岐点及び手前分岐点にある停止線及び退出側信号機の相対的な位置関係を特定したテーブルである。
【0062】
そして、車両の進行方向前方に位置する案内分岐点に対する地物テーブル34が作成されていると判定された場合(S11:YES)には、S14へと移行する。それに対して、車両の進行方向前方に位置する案内分岐点に対する地物テーブル34が作成されていないと判定された場合(S11:NO)には、S12へと移行する。
【0063】
S12においてCPU41は、車両の進行方向前方に位置する案内分岐点と、該案内分岐点の手前側に位置する手前分岐点について、各分岐点の位置情報を地図情報DB31から取得する。また、案内分岐点及び手前分岐点に設置された退出側信号機に関する情報(位置座標、灯数等)を信号機情報38から取得する。更に、案内分岐点及び手前分岐点に配置された停止線(実停止線以外に仮想停止線も含む)に関する情報(位置座標、制御対象物である分岐点までの距離等)について地物DB32(
図3)から取得する。そして、取得した各情報に基づいて地物テーブル34を作成する。尚、地物テーブル34の作成対象とする手前分岐点は、車両の現在位置から案内分岐点までにある全ての手前分岐点としても良いし、所定の手前分岐点のみ(例えば第1手前分岐点から第3手前分岐点)としても良い。
【0064】
ここで、
図8は、前記S12において作成される地物テーブル34の一例を示した図である。
図8に示す地物テーブル34では、車両71の進行方向前方にある案内分岐点72を基準にして、該案内分岐点72及び第1手前分岐点73、第2手前分岐点74、第3手前分岐点75にある退出側信号機76〜79及び停止線80〜83の相対的な位置関係が記録されている。
例えば、案内分岐点72の退出側信号機76は、3灯式であり、案内分岐点72に対して出発地側と逆方向に10m離れた位置に設置されていることが記録される。また、第2手前分岐点74の停止線82は、「ID:345」の仮想停止線であり、案内分岐点72に対して出発地側に220m離れた位置に設置されていることが記録される。尚、退出側信号機76〜79の案内分岐点72からの相対距離は、例えば案内分岐点72の位置座標と信号機情報38から取得された各退出側信号機76〜79の位置座標とに基づいて算出される。また、停止線80〜83の案内分岐点72からの相対距離は、例えば各分岐点72〜75の位置座標と地物DB32(
図3)から取得した各停止線80〜83から制御対象物である各分岐点72〜75までの距離とに基づいて算出される。
【0065】
次に、S13においてCPU41は、前記S12で作成された地物テーブル34に基づいて、案内分岐点の案内を行う際の案内フレーズの内容と、案内分岐点の案内を開始する案内開始地点をそれぞれ決定する。例えば、案内経路が車両の進行方向前方にある案内分岐点で左折する経路であった場合には、案内フレーズとして「3つ目の信号を左方向です」、「2つ目の信号を左方向です」、「次の信号を左方向です」がそれぞれ決定される。また、「3つ目の信号を左方向です」との案内には、車両の乗員(特に運転手)から第3手前分岐点の退出側信号機が視認できる状態から視認できなくなる状態へと切り替わる地点を案内開始地点に決定する。同じく、「2つ目の信号を左方向です」との案内には、車両の乗員(特に運転手)から第2手前分岐点の退出側信号機が視認できる状態から視認できなくなる状態へと切り替わる地点を案内開始地点に決定する。同じく、「次の信号を左方向です」との案内には、車両の乗員(特に運転手)から第1手前分岐点の退出側信号機が視認できる状態から視認できなくなる状態へと切り替わる地点を案内開始地点に決定する。
【0066】
ここで、車両の乗員から手前分岐点の退出側信号機が視認できる状態から視認できなくなる状態へと切り替わる地点は、退出側信号機に対する相対的な位置関係によって特定されるが、その地点は車種毎に(より具体的には車の形状やフロントウィンドウの形状によって)異なる。具体的には、
図9に示すように、車両71が走行中に車両71の乗員85の視界から退出側信号機76〜79が外れる地点が案内開始地点となる。そして、案内開始地点の位置は、退出側信号機76〜79から出発地側への離間距離Xによって特定される。ここで、離間距離Xは車種毎に異なる値がデータ記録部12に記録されており、前記S13でCPU41は、データ記録部12から車両情報として離間距離Xを取得し、案内開始地点を決定する。尚、離間距離Xは固定値(例えば5m)としても良い。
【0067】
その後、S14においてCPU41は、前記S12で作成された地物テーブルと前記S2で取得した車両の現在位置に基づいて、車両が手前分岐点の停止線から前後40m以内に位置するか否か判定する。
【0068】
そして、車両が手前分岐点の停止線から前後40m以内に位置すると判定された場合(S14:YES)には、S15へと移行する。それに対して、車両が手前分岐点の停止線から前後40m以内に位置しないと判定された場合(S14:NO)には、S17へと移行する。
【0069】
S15においてCPU41は、当該分岐点案内処理プログラムと並行して所定間隔で実施されている地物認識処理において、手前分岐点の停止線を認識(検出)したか否か判定する。ここで、地物認識処理は、地物DB32(
図3)に記録されている路面標示の位置座標から所定距離以内(例えば40m以内)に車両が位置する場合に、バックカメラ19で撮像した画像から該当する路面標示を認識(検出)する処理である。
【0070】
そして、手前分岐点の停止線を認識(検出)したと判定された場合(S15:YES)には、S16へと移行する。それに対して、手前分岐点の停止線を認識(検出)していないと判定された場合(S15:NO)には、S17へと移行する。
【0071】
S16においてCPU41は、認識した手前分岐点の停止線を識別する識別IDを地物DB32から取得し、RAM42に記憶する。尚、新たに手前分岐点の停止線を認識した場合には、認識する度に新たな識別IDに上書きされる。即ち、最も新しく認識した手前分岐点の停止線の識別IDが記憶される。また、手前分岐点の停止線を認識した時点の車両の生涯走行距離についても取得する。尚、生涯走行距離は、車両が製造されてから現在までの累積走行距離であり、車両に搭載されたメモリ等から取得する。そして、取得した車両の生涯走行距離についても同様にRAM42に記憶する。
【0072】
次に、S17においてCPU41は、“最も新しく認識した手前分岐点の停止線から次の案内を行う案内開始地点までの距離M”を算出する。具体的には、前記S12で作成された地物テーブル34(
図8)と前記S13で決定された案内開始地点とに基づいて算出する。
以下に、前記S17における距離Mの算出方法について具体例を挙げて説明する。
例えば、
図10では、案内分岐点72へと向かう車両71が、第3手前分岐点75の停止線83を直前に認識しており、次に「2つ目の信号を左方向です」との案内を行う場合について示す。
図10に示す例では、次の案内を行う案内開始地点は上述したように第2手前分岐点74の退出側信号機78から所定距離X手前の地点となる。従って、CPU41は、地物テーブル34から先ず、停止線83から案内分岐点72までの距離Aと、退出側信号機78から案内分岐点72までの距離Bをそれぞれ取得する。そして、以下の式(1)により距離Mを算出する。
M=A−B−X・・・・(1)
【0073】
続いて、S18においてCPU41は、“最も新しく認識した手前分岐点の停止線から車両の現在位置までの距離N”を算出する。具体的には、前記S12で作成された地物テーブル34(
図8)と、前記S16で記憶した停止線の認識時点の車両の生涯走行距離と、新たに取得した現時点での車両の生涯走行距離と、停止線の画像認識処理の結果とに基づいて算出する。
以下に、前記S18における距離Nの算出方法について具体例を挙げて説明する。
先ず、CPU41は、車両のバックカメラ19によって停止線を認識した際の停止線から車両(特に運転席)までの距離を算出する。
図11は停止線83を撮像する車両を示した側面図であり、
図12は車両のバックカメラ19によって停止線83を撮像した撮像画像88を示した図である。
【0074】
バックカメラ19は、
図11に示すように車両71の後バンパー89付近から後方を撮像できるように光軸Lを水平から所定角度θ(例えば45度)下方向に向けるように取り付けられており、撮像範囲が固定されている。従って、バックカメラ19によって撮像された
図12に示す撮像画像中の画像データの位置(具体的には下縁からの画素数)から、被写体までの距離を計算することができる。
【0075】
ここで、停止線を含む各種路面標示には車両との距離を計測する為の測定開始点が予め定義され、路面標示を形成するライン(境界線)の角部や先端部に設けられている。例えば、停止線83では、停止線83と路面90との車両側の境界中央部分に設けられている。従って、CPU41は、
図7に示す停止線83を撮像した撮像画像中において、測定開始点Yの位置(具体的には下縁から測定開始点までの画素数)からバックカメラ19と測定開始点Yの間の距離D1を算出することが可能となる。
【0076】
また、CPU41は、バックカメラ19の位置から車両(特に運転席)までの距離D2を取得する。尚、バックカメラ19の位置から車両(特に運転席)までの距離D2は、車両情報として予めデータ記録部12に記憶されている。
【0077】
その後、CPU41は、現時点で新たに取得した車両の生涯走行距離と、前記S16で記憶した停止線の認識時点の車両の生涯走行距離との差分距離Eを算出する。尚、差分距離Eは、最も新しく停止線を認識してから現在までの車両の走行距離に相当する。そして、
図13に示すように以下の式(2)により距離Nを算出する。
N=D1+D2+E・・・・(2)
【0078】
次に、S19においてCPU41は、前記S18で算出された“最も新しく認識した手前分岐点の停止線から車両の現在位置までの距離N”が、前記S17で算出された“最も新しく認識した手前分岐点の停止線から次の案内を行う案内開始地点までの距離M”以上となったか否かを判定する。具体的に、前記S19では、前記S13で決定された案内開始地点を車両が通過したか否かが判定されることとなる。
【0079】
そして、前記S13で決定された案内開始地点を車両が通過したと判定された場合(S19:YES)には、S20へと移行する。それに対して、前記S13で決定された案内開始地点を車両が通過していないと判定された場合(S19:NO)には、当該分岐点案内処理プログラムを終了する。
【0080】
S20においてCPU41は、前記S13で決定された案内フレーズに基づいて、案内分岐点に関する案内を行う。具体的には、案内分岐点と車両の案内分岐点の退出方向とを特定する案内(即ち、車両が案内分岐点から退出する退出道路を特定させる為の案内)を行う。例えば、「2つ目の信号を左(右)方向です」とのフレーズをスピーカ16から出力する。更に、案内分岐点が車両の所定距離以内(例えば300m)に接近した場合には、案内分岐点付近の拡大図や車両の案内分岐点における進行方向について液晶ディスプレイ15に表示する。
その結果、案内分岐点及び該案内分岐点から車両が退出する道路をユーザに正確に特定させることが可能となる。
【0081】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るナビゲーション装置1、ナビゲーション装置1を用いた移動案内方法及びナビゲーション装置1で実行されるコンピュータプログラムによれば、手前分岐点に設置された退出側信号機に対する相対位置によって特定される案内開始地点と、その案内開始地点で開始する案内分岐点の案内フレーズをそれぞれ決定するとともに(S13)、停止線を認識対象とした高精度ロケーションシステムを用いて、最も新しく認識した停止線から車両の現在位置までの距離を算出し(S18)、算出した距離を用いて車両が案内開始地点を通過したか否か判定し(S19)、車両が案内開始地点を通過したと判定された時に、案内分岐点の案内を開始する(S20)ので、案内の内容に基づく適切なタイミングで案内分岐点の案内を開始することが可能となる。従って、ユーザに案内分岐点を正確に特定させることが可能となる。
また、停止線を検出した後の車両の移動距離Eと、停止線から案内開始地点までの地物距離Mとに基づいて、車両が案内開始地点を通過したか否か判定するので、手前分岐点に設置された停止線を用いて、車両と案内開始地点との位置関係を正確に特定することが可能となる。その結果、車両が案内開始地点を通過した正確なタイミングで案内分岐点の案内を開始することが可能となる。
また、停止線を検出した際の停止線から車両までの距離(D1+D2)に停止線を検出した後の車両の移動距離Eを加算した距離Nが地物距離M以上となった場合に、車両が案内開始地点を通過したと判定する(S19)ので、車両がバックカメラ19により停止線を撮像することによって、停止線を撮像した後の車両の位置を、該停止線に対する相対位置により正確に特定することが可能となる。その結果、車両と案内開始地点との位置関係を正確に特定することが可能となり、車両が案内開始地点を通過した正確なタイミングで案内分岐点の案内を開始することが可能となる。
また、停止線と該停止線の位置情報とが対応付けられた地物情報に基づいて、停止線から案内開始地点までの地物距離Mを取得するので、別途に地物距離Mを算出する為の特別な処理を行うことなく、地物情報から地物距離Mを容易に算出することが可能となる。
また、停止線は信号機の設置された分岐点周辺の路面に描かれている可能性が極めて高いので、車両が手前分岐点を通過する際に、車両と案内開始地点との位置関係を確実に特定することが可能となる。
また、車両の乗員から手前分岐点の退出側信号機が視認できる状態から視認できなくなる状態へと切り替わる切替地点を案内開始地点とするので、手前分岐点の退出側信号機が視認できなくなった時点で案内分岐点の案内を開始することが可能となる。その結果、案内内容に基づく適切なタイミングで案内分岐点の案内を開始することが可能となる。特に信号機を用いた案内(例えば、車両の現在位置から案内分岐点までにある信号機(又は信号機の設置された分岐点)の数を用いた案内)を行う場合には、その効果は顕著なものとなる。
【0082】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態ではナビゲーション装置1による案内分岐点の案内をスピーカ16から音声案内により出力することにより行う構成としているが、液晶ディスプレイ15に文章を表示することにより案内を行う構成としても良い。
【0083】
また、本実施形態では、車両の現在位置を特定する為に認識対象とする地物として、特に停止線を用いているが、停止線以外の路面標示を用いても良い。また、路面標示以外の
障害物、建造物、道路標識等を用いても良い。但し、認識対象とする地物は、手前分岐点よりも出発地側にあり、且つ案内分岐点の手前側に所定間隔で複数個存在することが望ましい。
【0084】
また、本実施形態では、案内開始地点を、車両の乗員から手前分岐点の退出側信号機が視認できる状態から視認できなくなる状態へと切り替わる切替地点に設定しているが、車両の乗員から手前分岐点の退出側信号機が視認できない状態となる地点であれば、他の地点としても良い。例えば、切替地点から所定距離だけ案内分岐点側の地点としても良い。また、手前分岐点の退出側信号機の設置された位置を案内開始地点としても良い。
【0085】
また、本実施形態では信号機情報38として分岐点の周辺に配置された全ての信号機に関する情報を記憶する構成としているが、分岐点からの退出方向毎に最も退出側にある信号機に関する情報のみを記憶する構成としても良い。その場合には、本実施形態中の進入側信号機を退出側信号機に置き換えることによって、本発明を実施することが可能である。更に、分岐点への進入方向毎に最も進入側にある信号機に関する情報のみを記憶する構成としても良い。また、信号機の代わりに停止線に関する情報を記憶する構成としても良い。その場合には、本実施形態中の進入側信号機及び退出側信号機を停止線に置き換えることによって、本発明を実施することが可能である。尚、信号機の代わりに停止線を用いる場合であっても、案内は信号機や分岐点を用いて行うことが望ましい。
【0086】
また、本実施形態では、案内分岐点の案内として、車両の現在位置から車両の現在位置から案内分岐点までにある信号機(又は信号機の設置された分岐点)の数を用いた案内を行うこととしているが、他の案内を行うようにしても良い。但し、特に信号機を用いた案内を行う場合において、本願発明の効果は顕著なものとなる。
【0087】
また、本発明はナビゲーション装置以外に、案内経路に基づく経路案内を行う機能を有する装置に対して適用することが可能である。例えば、携帯電話機やPDA等の携帯端末、パーソナルコンピュータ、携帯型音楽プレイヤ等(以下、携帯端末等という)に適用することも可能である。また、サーバと携帯端末等から構成されるシステムに対しても適用することが可能となる。その場合には、上述した分岐点案内処理プログラム(
図6、
図7)の各ステップは、サーバと携帯端末等のいずれが実施する構成としても良い。また、本発明を携帯端末等に適用する場合には、車両以外の移動体、例えば、携帯端末等のユーザや2輪車等に対する走行案内を行う場合もある。