(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は半導体装置の第1構成例を示す図である。
図1には、半導体装置の第1構成例の断面を模式的に図示している。
図1に示す半導体装置(半導体モジュール)10aは、回路基板(モジュール基板)11、半導体素子12、シールド層13、アンテナ素子14、及び接続部15を有している。
【0010】
モジュール基板11には、ここでは図示を省略するが、内部に配線及びビア等の導電部によって形成された所定の回路が設けられており、また、表裏面に電極パッド11aが設けられている。このようなモジュール基板11の上に、半導体素子12が実装されている。半導体素子12は、ここでは一例として、その下面(配線層等が形成された回路面)側にモジュール基板11の電極パッド11aに対応して設けられたバンプ12a及び電極パッド12b、及び接合部11bを介して、フリップチップ実装されている場合を示している。
【0011】
このようにしてモジュール基板11に実装された半導体素子12の、少なくとも上面(半導体基板面)に、シールド層13が設けられている。シールド層13は、半導体素子12に向かって入射してくる電磁波をシールドし、或いは半導体素子12で発生する電磁波の外部への放射をシールドする。シールド層13は、このような電磁波シールドが可能な材料、例えば磁性体材料や金属材料を用いて形成される。
【0012】
例えばシールド層13には、磁性体粒子を樹脂中に分散させた層(シート)、磁性体材料からなる磁性体層、銅(Cu)等の金属材料からなる金属層等を用いることができる。またシールド層13には、その一部に、磁性体粒子を樹脂中に分散させたシート、磁性体層、又は金属層を含むものを用いることもできる。金属層をシールド層13の一部に用いる場合、その金属層は、例えばシールド層13の表層部に設けることが望ましい。
【0013】
シールド層13上にはアンテナ素子14が設けられている。アンテナ素子14は、外部の電磁波を受信するアンテナの機能を有している。アンテナ素子14には、電磁波を受信する、例えば所定の導波パターン(導波路)が形成された、少なくとも1層のアンテナ層が設けられる。アンテナ層は、CuやCuを主体とする金属材料を用いて形成することができる。アンテナ層は、例えば樹脂等の誘電体層の表面や表裏面に設けることができる。また、表裏面に設けたアンテナ層を、間の誘電体層を貫通するように設けた導通部で電気的に接続することもできる。
【0014】
アンテナ素子14は、接続部15を介して半導体素子12と電気的に接続されている。ここでは一例として、シールド層13を貫通し半導体素子12の内部に達する接続部15を設け、この接続部15にシールド層13上にてアンテナ素子14を電気的に接続することで、半導体素子12とアンテナ素子14とを電気的に接続した場合を示している。
【0015】
この場合、接続部15は、例えば、シールド層13、及び半導体素子12の半導体基板を貫通し、その半導体基板上(ここではモジュール基板11側)に設けられている配線層内の導電部に接続される、TSV(Through Silicon Via)とすることができる。
【0016】
上記のように、
図1の半導体モジュール10aは、モジュール基板11に実装された半導体素子12と、アンテナ素子14とを、半導体素子12の上面に設けたシールド層13を貫通する接続部15によって電気的に接続した構成を有している。アンテナ素子14で所定の電磁波が受信されることによって得られる電流等の電気信号は、接続部15を介して半導体素子12に供給される。アンテナ素子14で受信した電磁波の、半導体素子12への入射、或いは半導体素子12から生じる電磁波の放射は、シールド層13によって抑えられる。また、発信時のアンテナ素子14には、モジュール基板11から半導体素子12、更に接続部15を介して給電が行われる。
【0017】
このように半導体モジュール10aは、半導体素子12の上にシールド層13を設け、シールド層13の上にアンテナ素子14を設けることによって、シールド機能とアンテナ機能とを兼ね備えたモジュール構造とされている。従って、例えば、シールド機能を有するモジュールの外部に別途アンテナ部品を設けるような場合に比べ、モジュールサイズの小型化を図ることが可能になる。
【0018】
尚、ここでは一例として、半導体素子12の上面のみにシールド層13を設けた場合を示したが、シールド層13は、半導体素子12の上面のほか、その側面にも設けることができる。例えば、比較的厚みのある半導体素子12の場合、或いは外部の電磁波の側面からの入射や発生した電磁波の側面からの放射が看過できない半導体素子12の場合等には、半導体素子12の上面及び側面にシールド層13を形成する。
【0019】
また、
図1に示した接続部15の形成位置は一例であって、半導体素子12やアンテナ素子14の構造に応じて適宜設定することができる。例えば、半導体素子12の中央部よりも外側の端部に接続部15を設けるようにしてもよい。更に、接続部15は、次の
図2に示すように、半導体素子12の外部に設けることもできる。
【0020】
図2は半導体装置の第2構成例を示す図である。
図2には、半導体装置の第2構成例の断面を模式的に図示している。
図2に示す半導体装置(半導体モジュール)10bは、上面にシールド層13が設けられた半導体素子12が実装されているモジュール基板11と、シールド層13の上に設けられたアンテナ素子14とが、接続部15によって電気的に接続された構造を有している。モジュール基板11とアンテナ素子14の間の半導体素子12及び接続部15は、封止樹脂16によって封止されている。
【0021】
アンテナ素子14で電磁波が受信されて得られる電気信号は、接続部15からモジュール基板11を介して半導体素子12に供給される。また、発信時のアンテナ素子14には、モジュール基板11から接続部15を介して給電が行われる。
【0022】
このような構成を有する半導体モジュール10bによっても、上記の半導体モジュール10aと同様に、例えばアンテナ部品を別途モジュール外に設けるようなモジュール構造とした場合に比べ、モジュールサイズの小型化を図ることが可能になる。
【0023】
以下、半導体モジュールについて、より詳細に説明する。
まず、第1の実施の形態について説明する。
図3は第1の実施の形態に係る半導体モジュールの一例を示す図である。
図3には、第1の実施の形態に係る半導体モジュールの断面を模式的に図示している。
【0024】
図3に示す半導体モジュール(半導体装置)100aは、モジュール基板(回路基板)110、半導体素子120、シールド層130、アンテナ素子140、及び接続部150を有している。
【0025】
半導体モジュール100aのモジュール基板110は、その内部に配線及びビア等の導電部で形成された所定の回路(図示せず)を有している。モジュール基板110の表裏面には、外部接続端子である電極パッド111,112が設けられている。
【0026】
モジュール基板110の一方の面側には、半導体素子120が実装されている。半導体素子120は、その下面(配線層等が形成された回路面)側にモジュール基板110の電極パッド111に対応して設けられた電極パッド121及びバンプ122を介し、接合部113でフリップチップ実装されている。半導体素子120とモジュール基板110の間には、アンダーフィル樹脂170が充填されている。
【0027】
半導体素子120の上面(半導体基板面)には、シールド層130、例えば磁性体粒子を樹脂に含有させてシート状に形成されたシールド層130が設けられている。尚、シールド層130は、半導体素子120の形態に応じ、半導体素子120の上面のほか、側面に設けられていてもよい。このシールド層130上に、アンテナ素子140が設けられている。
【0028】
アンテナ素子140は、第1アンテナ層141、第2アンテナ層142、誘電体層143、及び導通部(ビア)144を有している。
第1アンテナ層141は、シールド層130上に設けられ、第1アンテナ層141上に、誘電体層143を介して第2アンテナ層142が設けられている。第1アンテナ層141及び第2アンテナ層142は、Cu又はCu主体の金属材料を用いて形成される。第1アンテナ層141と第2アンテナ層142は、誘電体層143を貫通する、Cuや半田等を用いた導通部144によって電気的に接続されている。
【0029】
第1アンテナ層141は、例えば、プレーン状に設けられ、第2アンテナ層142は、例えば、受信した電磁波を伝播させる所定の導波パターンが形成されて設けられる。尚、第2アンテナ層142の導波パターンについては後述する。
【0030】
アンテナ素子140は、接続部150を介して半導体素子120に電気的に接続されている。接続部150は、TSVとすることができる。このような接続部150が、アンテナ素子140の第1アンテナ層141、その下のシールド層130を貫通し、半導体素子120の内部に達するように設けられる。接続部150は、半導体素子120内の所定箇所、ここでは一例として図示しない配線に繋がっている電極パッド121の1つに、接続されている。接続部150の上端は、ここではアンテナ素子140の導通部144a(144)と接続されている。
【0031】
このような構成を有する半導体モジュール100aが、半田等のバンプ101を介して、マザー基板300の電極パッド301に電気的に接続され、実装されている。
上記半導体モジュール100aにおけるアンテナ素子140の第2アンテナ層142には、前述のように、所定の導波パターンが形成される。
【0032】
図4はアンテナ層の導波パターンの一例を示す図である。
図4には、アンテナ層の平面図の一例を模式的に図示している。
図4(A),(B)に示すアンテナ層400は、一対の長方形のスロット401a(開口部(貫通孔))を互いの長軸方向が交差するような向きで配置したスロットペア401を用いて、導波パターンが形成されている。
図4(A)には、複数のスロットペア401が並設された、いわゆるマルチスロットペアアンテナの導波パターンを示している。
図4(B)には、複数のスロットペア401が渦巻き状(点線で図示)に並設された、いわゆるラジアルラインスロットペアアンテナを示している。
【0033】
各スロットペア401のスロット401aの平面サイズ及び配置、複数スロットペア401の配置は、アンテナ層400による受発信対象の電磁波の周波数(波長)等に基づいて設計される。アンテナ層400では、各スロットペア401の近傍位置に設けられる導通部144、或いは中央部の導通部144a(144)を介して、受発信時の電気信号のやり取りが行われる。
【0034】
上記半導体モジュール100aにおけるアンテナ素子140の第2アンテナ層142には、例えば、この
図4に示すアンテナ層400のような導波パターンを形成することができる。
【0035】
図5はアンテナ素子及び接続部の説明図である。
図5には、アンテナ素子及び接続部の断面を模式的に図示している。
図5(A)には、第1アンテナ層141にプレーン状の導波パターンが形成され、第2アンテナ層142にスロット401a(スロットペア401)を含む導波パターンが形成されたアンテナ素子140を例示している。第1アンテナ層141及び第2アンテナ層142は、各スロットペア401の位置に設けられた導通部144で電気的に接続されている。中央部に位置する導通部144a(144)は、接続部150に電気的に接続されている。
【0036】
尚、接続部150と電気的に接続される、中央部の導通部144aの周囲には、この
図5に示したように、中空部145を設けるようにしてもよい。
また、接続部150と第1アンテナ層141の間には、それらを絶縁する構成、例えば、絶縁性の膜を設けたり、第1アンテナ層141のエッジを接続部150の側面から離間させたりする構成を採用してもよい。
【0037】
また、
図5(B)のように、第1アンテナ層141と第2アンテナ層142の間に導通部144(接続部150に接続される導通部144aを除く)を設けず、第1アンテナ層141と第2アンテナ層142をキャパシタ結合させて、アンテナ素子を構成してもよい。
【0038】
更にまた、シールド層130に、例えばその全部又は一部(表層部)がCu等の金属層であるものを用いる場合には、
図5(C)のように、第1アンテナ層141を設けない構成とすることもできる。この場合は、シールド層130、導通部144を含む誘電体層143、及び第2アンテナ層142により、アンテナ素子が構成される。即ち、シールド層130が、上記の第1アンテナ層141に代わってアンテナ素子の一部として機能する。尚、このようにシールド層130をアンテナ素子の一部として機能させる場合においても、導通部144(導通部144aを除く)を設けない構成とすることが可能である。
【0039】
半導体モジュール100aにおいて、アンテナ素子140で電磁波が受信されて得られる電気信号は、接続部150を介して半導体素子120に供給される。また、発信時には、アンテナ素子140に、モジュール基板110から半導体素子120、更に接続部150を介して給電が行われる。
【0040】
上記のような構成を有する半導体モジュール100aが、マザー基板(回路基板)300に実装されている。
半導体モジュール100aでは、モジュール基板110に実装した半導体素子120の上に、シールド層130、アンテナ素子140を設けることにより、モジュールサイズを小型化することが可能になる。
【0041】
続いて、第1の実施の形態に係る半導体モジュール100aの形成方法の一例について、
図6〜
図9を参照して説明する。
まず、
図6(A)に示すような半導体素子120を準備する。尚、
図6(A)には1つの半導体素子120のみを図示しているが、この準備段階では、個々の半導体素子120に個片化するダイシング前の、ウェハ状態のものを用いることができる。
【0042】
次いで、
図6(B)に示すように、半導体素子120(ウェハ状態)の上面(半導体基板面)にシールド層130を形成し、更にそのシールド層130上に第1アンテナ層141を形成する。シールド層130には、ここでは磁性体粒子(磁性体金属粉末)を樹脂中に分散させたシートを用いる。予め作製したこのようなシート(樹脂は半硬化状態)を半導体素子120の上面に接着し硬化させる、或いは、磁性体粒子を樹脂中に分散させたペースト状樹脂組成物を半導体素子120の上面に塗布し硬化させる。それにより、シールド層130を形成する。第1アンテナ層141は、Cu等を、無電解めっき法或いは蒸着法を用いて、シールド層130上に形成する。
【0043】
次いで、
図6(C)に示すように、上記の接続部150を形成する位置に、レーザ照射により、第1アンテナ層141及びシールド層130を貫通し、半導体素子120の内部に達する開口部151を形成する。ここでは一例として、このようなレーザ照射により、半導体素子120の下面(配線層等が形成された回路面)に表出する電極パッド121に達する開口部151を形成している。
【0044】
このレーザ照射により、例えば
図9に示すように、磁性体粒子131を樹脂132中に分散させたシールド層130の開口部151の側壁部が炭化され、炭化層133が形成される。シールド層130は、この炭化層133の部分では導電性を示すようになる(炭化層133以外の部分は絶縁性或いは高抵抗)。また、このレーザ照射により、半導体素子120(半導体基板124)の開口部151の側壁部は酸化され、酸化層(図示せず)が形成される。例えば、半導体基板124にシリコン(Si)基板が用いられている場合、酸化シリコン(SiO)層が形成されるようになる。また、このレーザ照射により、第1アンテナ層141の開口部151の側壁部にも酸化層(図示せず)が形成され得る。
【0045】
このようなレーザ照射による開口部151の形成後は、酸素(O
2)プラズマガスを用いたアッシングを実施してもよい。このようなアッシングを実施することにより、開口部151内面に露出する半導体基板124表面を酸化し、或いはレーザ照射時に形成された酸化層を安定化させ、開口部151内の半導体基板124表面の絶縁性を高める。また、このアッシングにより、第1アンテナ層141の表面(上面及び開口部151内面)も酸化され得る。
【0046】
次いで、
図6(D)に示すように、開口部151内に導電性材料を充填し、接続部150を形成する。例えば、開口部151内に、半田系の導電性ペーストを充填し、リフローを行うことで、接続部150を形成する。このとき、開口部151内面の半導体基板(
図9の半導体基板124)及び第1アンテナ層141に酸化層が形成されていることで、それらと接続部150とは電気的に絶縁される。
【0047】
次いで、
図7(A)に示すように、第1アンテナ層141(ウェハ状態)上に誘電体層143及び導通部144を形成する。例えば、予め誘電体層143とそれを貫通する導通部144を有するシートを形成しておき、これを第1アンテナ層141上に接着する。
【0048】
このようなシートは、例えば、樹脂等で形成した誘電体層143に対し、レーザ照射等で貫通孔を形成し、その貫通孔に半田系の導電性ペーストを充填して導通部144とすることによって、形成することができる。このシートを第1アンテナ層141上に接着し、リフローを行うことで、各導通部144を、第1アンテナ層141及び接続部150と接続させることができる。尚、シートの接着前に、第1アンテナ層141や接続部150の表面が酸化されている場合には、還元処理を行ったうえで、シートの接着を行うようにしてもよい。
【0049】
次いで、
図7(B)に示すように、導通部144を含む誘電体層143(ウェハ状態)上に、上記のようなスロットペア401を用いた導波パターンを有する第2アンテナ層142を形成する。第2アンテナ層142は、例えば、導通部144を含む誘電体層143上に、Cu等の層を無電解めっき法や蒸着法を用いて形成し、その形成した層に、レーザ照射等で所定の導波パターン(スロットペア401の開口)を形成することによって、形成する。或いは、支持テープ上にCu等の層を無電解めっき法や蒸着法を用いて形成し、その層に所定の導波パターンを形成したものを、導通部144を含む誘電体層143上に接着することで形成してもよい。第2アンテナ層142を形成することで、アンテナ素子140を得る。
【0050】
尚、ここでは、第1アンテナ層141の上に、導通部144を含む誘電体層143を形成し、その後、所定の導波パターンを有する第2アンテナ層142を形成するようにした。このほか、予め、導通部144を含む誘電体層143の上に、所定の導波パターンを有する第2アンテナ層142を形成したシートを作製しておき、これを第1アンテナ層141の上に接着するようにしてもよい。
【0051】
次いで、
図7(C)に示すように、半導体素子120の電極パッド121上にバンプ122を形成する。バンプ122には、スタッドバンプ、ボールバンプ、ポスト電極等、様々なものを用いることができる。バンプ122の形成は、例えば、ウェハ状態の半導体素子120に対して行い、その後、ダイシングが行われて、個々の半導体素子120に個片化される。或いは、ダイシングを行って個片化した後の半導体素子120に対してそれぞれバンプ122の形成を行うようにしてもよい。
【0052】
次いで、
図8(A)に示すように、モジュール基板110の電極パッド111に半田系の導電性ペースト等の接合部113を形成し、上記のようにしてバンプ122の形成まで行った半導体素子120を仮実装する。そして、
図8(B)に示すように、リフローを行うことで半導体素子120をモジュール基板110にフリップチップ実装する。最後に、
図8(C)に示すように、半導体素子120とモジュール基板110の間にアンダーフィル樹脂170を充填し、硬化する。
【0053】
以上の工程により、
図3に示したような半導体モジュール100aが形成される。このような半導体モジュール100aが、マザー基板300に実装される。
尚、ここではシールド層130として、磁性体粒子を樹脂中に分散させたシートを用いる場合を例にして、半導体モジュール100aの形成方法を説明した。このほか、シールド層130の全部又は一部(表層部)に金属層を用いた場合(シールド層130をアンテナ素子の一部として機能させる場合)にも、これと同様の流れでモジュール形成を行うことが可能である。即ち、上記
図6(B)の工程では、半導体素子120の上面に、金属層又は金属層を含むシールド層130をめっき法や蒸着法等で形成する。
図6(C)の工程では、レーザ照射により、そのシールド層130を貫通し半導体素子120の内部に達する開口部151の形成を行う。その後、O
2プラズマガスを用いたアッシングを実施して開口部151内面(半導体素子120の半導体基板、シールド層130)の絶縁性を確保し、接続部150を充填形成する。以降の工程は、上記同様に行うことが可能である。
【0054】
次に、第2の実施の形態について説明する。
図10及び
図11は第2の実施の形態に係る半導体モジュールの一例を示す図である。
図10には、第2の実施の形態に係る半導体モジュールの一例の断面を模式的に図示している。
図11には、第2の実施の形態に係る半導体モジュールの一例の上面から見た外観を模式的に図示している。尚、
図10は
図11のL1−L1断面に相当する断面模式図である。
【0055】
図10に示す半導体モジュール(半導体装置)100bは、モジュール基板110、半導体素子120、シールド層130、アンテナ素子140、接続部150、及び封止樹脂160を有している。
【0056】
図10に示すように、モジュール基板110には、フリップチップ実装された半導体素子120のほか、コンデンサ、インダクタ、抵抗器といった受動部品等の他の電子素子180が、半田等の接合部113を介して実装されている。このようなモジュール基板110に、接合部113を介して接続部150が設けられている。モジュール基板110に実装された、シールド層130が設けられた半導体素子120、電子素子180、及び接続部150は、接続部150の上端が表出するようにして、封止樹脂160で封止されている。この封止樹脂160の上に、第1アンテナ層141、導通部144を含む誘電体層143、及び第2アンテナ層142を有するアンテナ素子140が設けられている。接続部150は、その上端の第1アンテナ層141(第1アンテナ層141の他の部分から分離)、導通部144a(144)を介して、第2アンテナ層142に電気的に接続されている。尚、導通部144(導通部144aを除く)を設けずに、アンテナ素子を構成してもよい。
【0057】
モジュール基板110には、例えば、
図11に示すように、複数(ここでは一例として3つ)の半導体素子120が実装されている。尚、各半導体素子120の上面(半導体基板面)にシールド層130が設けられ、また、上面のほか側面にもシールド層130が設けられていてもよい。
【0058】
このような半導体モジュール100bでは、そのほぼ中央部に接続部150が設けられている。尚、接続部150の位置は、半導体素子120や他の電子素子180の配置に基づき、設定することができる。また、受発信対象の電磁波の周波数、接続部150の配置等に基づき、アンテナ素子140の第2アンテナ層142に形成するスロットペアのスロットサイズ、スロットペアの配置等を設定することができる。
【0059】
半導体モジュール100bにおいて、アンテナ素子140で電磁波が受信されて得られる電気信号は、接続部150からモジュール基板110を介して半導体素子120に供給される。また、発信時には、アンテナ素子140に、モジュール基板110から接続部150を介して給電が行われる。
【0060】
上記のような構成を有する半導体モジュール100bが、半田等のバンプ101を介して、マザー基板(回路基板)300の電極パッド301に電気的に接続され、実装されている。
【0061】
続いて、第2の実施の形態に係る半導体モジュール100bの形成方法の一例について、
図12〜
図16を参照して説明する。
まず、
図12(A)に示すような半導体素子120(ウェハ状態)を準備する。次いで、
図12(B)に示すように、半導体素子120の上面(半導体基板面)にシールド層130を形成する。シールド層130には、磁性体粒子を樹脂中に分散させたシートのほか、全部又は一部が磁性体層や金属層であるもの等を用いることができる。そして、
図12(C)に示すように、半導体素子120の下面(配線層等が形成された回路面)に設けた電極パッド121上にバンプ122を形成する。尚、バンプ122の形成は、ウェハ状態の半導体素子120に行うことができ、また、ダイシングで個片化した後の個々の半導体素子120に行うこともできる。ウェハ状態でバンプ122を形成した場合は、その後、ダイシングで個々の半導体素子120に個片化される。
【0062】
次いで、
図13(A)に示すように、モジュール基板110(ここでは一例として断面内に2つ分のモジュール基板110が一体となって含まれているものを図示)上に、上記のように半導体素子120、接続部150、及び受動部品等の電子素子180を実装する。例えば、モジュール基板110の電極パッド111に接合部113を形成し、バンプ122の形成まで行った半導体素子120、接続部150、電子素子180を仮実装し、その後、リフローを行うことで、各部品をモジュール基板110に実装する。
【0063】
尚、接続部150については、未実装のモジュール基板110上に、接続部150を形成する位置に開口部を有するマスク層を形成し、その開口部に印刷法やめっき法等で導電材料を充填した後、マスク層を除去することで、形成することも可能である。このようにして接続部150を形成したモジュール基板110に、シールド層130を設けた半導体素子120、電子素子180を実装する。
【0064】
シールド層130を設けた半導体素子120、接続部150、及び電子素子180のモジュール基板110への実装後は、
図13(B)に示すように、モジュール基板110と半導体素子120の間にアンダーフィル樹脂170を充填する。更に、シールド層130を設けた半導体素子120、接続部150、及び電子素子180を、封止樹脂160によって封止する。尚、アンダーフィル樹脂170の充填は、省略することもできる。
【0065】
次いで、
図14(A)に示すように、封止樹脂160の表層部を除去し、封止樹脂160で覆われていた接続部150の上端を表出させる。例えば、封止樹脂160に対するレーザ照射を行い、封止樹脂160の表層部を灰化して除去することによって、接続部150を表出させる。次いで、
図14(B)に示すように、表出させた接続部150周囲の封止樹脂160上に、レジストマスク500を形成する。このレジストマスク500は、例えば、接続部150が表出する封止樹脂160上にレジスト膜を形成し、露光、現像を行ってパターニングすることによって、形成することができる。
【0066】
次いで、
図15(A)に示すように、例えばCu等を無電解めっき法或いは蒸着法を用いて形成し、第1アンテナ層141を形成する。そして、
図15(B)に示すように、レジストマスク500を除去することによって、接続部150上に形成された部分がその周囲の部分から分離されたパターンを有する、最終的な第1アンテナ層141を形成する。
【0067】
次いで、
図16(A)に示すように、第1アンテナ層141の上に、導通部144を含む誘電体層143、及び第2アンテナ層142を形成する。その際は、例えば、導通部144を含む誘電体層143を形成し、その後、所定の導波パターンを有する第2アンテナ層142を形成する。或いは、予め、導通部144を含む誘電体層143の上に、所定の導波パターンを有する第2アンテナ層142を形成したシートを作製しておき、これを第1アンテナ層141の上に接着する。これにより、アンテナ素子140を完成させる。最後に、
図16(B)に示すように、ダイシングを行って、個々の半導体モジュール100bに個片化する。
【0068】
以上の工程により、
図10に示したような半導体モジュール100bが形成される。このような半導体モジュール100bが、マザー基板300に実装される。
上記のような構成を有する半導体モジュール100bによれば、マザー基板300上の少ないスペースに、シールド機能とアンテナ機能を組み込むことができる。ここで比較のため、別形態の半導体モジュールについて、
図17を参照して説明する。
【0069】
図17に示す半導体装置(電子装置)1000は、シールド機能を備えた半導体モジュール1100と、アンテナ部品1200とが、半田等のバンプ101を介して、マザー基板300の電極パッド301に電気的に接続され、実装されている。
【0070】
半導体モジュール1100は、モジュール基板1110に実装された半導体素子1120、及び受動部品等の電子素子1180が、電磁波をシールドするための金属ケース1190で覆われた構造を有している。このような半導体モジュール1100外部のマザー基板300上に、アンテナ部品1200が別途実装されている。半導体モジュール1100の半導体素子1120とアンテナ部品1200とは、マザー基板300を介して電気的に接続されている。
【0071】
図17に示した電子装置1000では、半導体素子1120及び電子素子1180を金属ケース1190で覆って電磁波のシールドを行う一方、外部の電磁波を受信するために、アンテナ部品1200を金属ケース1190の外側に実装するようにしている。このように電子装置1000では、マザー基板300上の異なる領域に、半導体モジュール1100とアンテナ部品1200がそれぞれ実装されるため、シールド機能とアンテナ機能を実現するために、マザー基板300上に比較的大きなスペースが必要になる。
【0072】
これに対し、上記第2の実施の形態に係る半導体モジュール100bでは、1モジュールにシールド機能とアンテナ機能が組み込まれる。そのため、マザー基板300上の比較的少ないスペースにおいて、シールド機能とアンテナ機能を実現することが可能になっている。
【0073】
また、このような半導体モジュール100bは、その形成にあたり、構成部品の複雑な加工や、構成部品間の複雑な電気的接続を行うことを要しない。
第2の実施の形態で述べたような構成及び形成方法によれば、比較的簡便に形成可能で、所望の特性及び信頼性を有する、小型の半導体モジュール100bを実現することができる。
【0074】
次に、第3の実施の形態について説明する。
図18及び
図19は第3の実施の形態に係る半導体モジュールの一例を示す図である。
図18には、第3の実施の形態に係る半導体モジュールの一例の断面を模式的に図示している。
図19には、第3の実施の形態に係る半導体モジュールの一例の上面から見た外観を模式的に図示している。尚、
図18は
図19のL2−L2断面に相当する断面模式図である。
【0075】
図18及び
図19に示す半導体モジュール(半導体装置)100cは、モジュール基板110と、アンテナ素子140の第1アンテナ層141とが、第2の接続部150c及び接合部113を介して電気的に接続された構成を有している。第3の実施の形態に係る半導体モジュール100cは、このような点で、上記第2の実施の形態に係る半導体モジュール100b(
図10及び
図11)と相違する。尚、この第3の実施の形態に係る半導体モジュール100cについても、導通部144(導通部144aを除く)を設けずに、アンテナ素子を構成してもよい。
【0076】
このような半導体モジュール100cでは、異なる周波数帯の電磁波による電気信号を、接続部150,150cのそれぞれを介して半導体素子120に供給することが可能になる。例えば、MHz帯電磁波の受発信時の電気信号を一方の接続部150を使って半導体素子120との間でやり取りし、GHz帯電磁波の受発信時の電気信号を他方の接続部150cを使って半導体素子120との間でやり取りすることが可能になる。
【0077】
接続部150,150cの位置は、半導体素子120や他の電子素子180の配置に基づき、設定することができる。受発信対象の電磁波の周波数、接続部150,150cの配置等に基づき、アンテナ素子140の第2アンテナ層142に形成するスロットペアの各スロットサイズ、スロットペアの配置等を設定することができる。
【0078】
半導体モジュール100cは、上記半導体モジュール100bについて
図12〜
図16で述べたのと同様の流れで形成することができる。即ち、第2の接続部150cを有する半導体モジュール100cの場合には、
図13(A)の工程において、第1の接続部150と同様にして、この第2の接続部150cをモジュール基板110上に実装、或いは形成する。以降の工程は、上記同様に行うことが可能である。
【0079】
第3の実施の形態で述べたような構成及び形成方法によっても、上記第2の実施の形態同様、比較的簡便に形成可能で、所望の特性及び信頼性を有する、小型の半導体モジュール100cを実現することができる。
【0080】
次に、第4の実施の形態について説明する。
図20及び
図21は第4の実施の形態に係る半導体モジュールの一例を示す図である。
図20には、第4の実施の形態に係る半導体モジュールの一例の断面を模式的に図示している。
図21には、第4の実施の形態に係る半導体モジュールの一例の上面から見た外観を模式的に図示している。尚、
図20は
図21(B)のL3−L3断面に相当する断面模式図である。
【0081】
図20に示す半導体モジュール(半導体装置)100dは、モジュール基板110、半導体素子120、シールド層130、アンテナ素子140、接続部150、及び封止樹脂160を有している。
【0082】
この半導体モジュール100dのアンテナ素子140は、次のような構成を有している。即ち、封止樹脂160上に設けられた第1アンテナ層141、封止樹脂160の一側面と第1アンテナ層141上の一部に設けられた誘電体層143、及び誘電体層143上に設けられた所定の導波パターン形状の第2アンテナ層142を含んでいる。
【0083】
このような構成を有するアンテナ素子140の第1アンテナ層141は、接続部150を介してモジュール基板110に電気的に接続されている。誘電体層143には、例えば樹脂層を用いることができる。第2アンテナ層142には、様々な導波パターンを採用することが可能であり、例えば
図21(A),(B)に示すような線状アンテナパターンを採用することが可能である。
【0084】
第2アンテナ層142には、例えば
図21(A)に示すように、モノポールアンテナパターンを採用することができる。各モノポールアンテナパターンの一端部が半田等の接合部113dを介してモジュール基板110に電気的に接続され、更にそのモジュール基板110を介して半導体素子120に電気的に接続される。また、第2アンテナ層142には、例えば
図21(B)に示すように、逆F型アンテナパターンを採用することもできる。このような逆F型アンテナパターンでは、各アンテナパターンの2点が接合部113dを介してモジュール基板110に電気的に接続される。
【0085】
このようなアンテナ素子140において、電磁波が受信されて得られる電気信号は、接合部113d及び接続部150からモジュール基板110を介して半導体素子120に供給される。また、発信時には、接合部113d及び接続部150を介して給電が行われる。尚、給電は、誘電体層143及び第2アンテナ層142の配置領域の中央部で行うと利得が大きくなる。
【0086】
第3の実施の形態に係るアンテナ素子140は、第1アンテナ層141上に誘電体層143を介して第2アンテナ層142が配置される構造である。この誘電体層143の誘電率と厚さ、及び第2アンテナ層142のパターンの配置と長さを適宜設計することで、受発信可能なアンテナ素子140が構成される。
【0087】
上記のような構成を有する半導体モジュール100dのアンテナ素子140は、封止樹脂160上に形成され、接続部150に繋がる第1アンテナ層141の上に、誘電体層143及び第2アンテナ層142を形成することで得られる。例えば、誘電体層143としてポリイミド等のフィルムを用い、このようなフィルム上に予め第2アンテナ層142のアンテナパターンを形成しておく。そして、このように第2アンテナ層142を形成した誘電体層143を、封止樹脂160上に形成した第1アンテナ層141、及び封止樹脂160の側面に接着する。第2アンテナ層142の所定の端子は、半田等の接合部113dによってモジュール基板110に電気的に接続する。これにより、
図20及び
図21に示したような半導体モジュール100dを得る。
【0088】
第4の実施の形態で述べたような構成及び形成方法によっても、比較的簡便に形成可能で、所望の特性及び信頼性を有する、小型の半導体モジュール100dを実現することができる。
【0089】
以上説明した実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) 回路基板と、
前記回路基板に実装された半導体素子と、
前記半導体素子の上面に配設されたシールド層と、
前記シールド層の上方に配設されたアンテナ素子と、
前記半導体素子と前記アンテナ素子とを電気的に接続する、前記シールド層を貫通した接続部と、
を含むことを特徴とする半導体装置。
【0090】
(付記2) 前記接続部は、TSVであることを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
(付記3) 前記接続部は、柱状であって、前記シールド層を貫通して前記半導体素子に電気的に接続され、当該接続部に前記アンテナ素子が電気的に接続されることを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
【0091】
(付記4) 前記半導体素子を封止する封止樹脂を含み、
前記アンテナ素子は、前記封止樹脂上に配設され、
前記接続部は、柱状であって、前記封止樹脂を貫通して前記回路基板に電気的に接続され、当該接続部に前記アンテナ素子が電気的に接続されることを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
【0092】
(付記5) 前記アンテナ素子は、
前記シールド層の上方に配設された第1アンテナ層と、
前記第1アンテナ層の上方に配設された第2アンテナ層と、
前記第1アンテナ層と前記第2アンテナ層の間に配設された誘電体層と、
を含むことを特徴とする付記1乃至4のいずれかに記載の半導体装置。
【0093】
(付記6) 前記アンテナ素子は、
前記シールド層の上方に配設されたアンテナ層と、
前記シールド層と前記アンテナ層の間に配設された誘電体層と、
を含むことを特徴とする付記1乃至3のいずれかに記載の半導体装置。
【0094】
(付記7) 前記アンテナ素子は、前記誘電体層を貫通する導通部を含むことを特徴とする付記5又は6に記載の半導体装置。
(付記8) 前記シールド層は、磁性体粒子を含有する樹脂層を含むことを特徴とする付記1乃至7のいずれかに記載の半導体装置。
【0095】
(付記9) 前記シールド層は、磁性体材料からなる磁性体層を含むことを特徴とする付記1乃至7のいずれかに記載の半導体装置。
(付記10) 前記シールド層は、金属材料からなる金属層を含むことを特徴とする付記1乃至7のいずれかに記載の半導体装置。
【0096】
(付記11) 半導体素子の上面にシールド層を配設する工程と、
前記シールド層を貫通して前記半導体素子に電気的に接続される柱状の接続部を配設する工程と、
前記シールド層の上方に、前記接続部に電気的に接続されるアンテナ素子を配設する工程と、
前記アンテナ素子の配設後、前記半導体素子を回路基板に実装する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記12) 前記柱状の接続部は、前記半導体素子を貫通するTSVであることを特徴とする付記11に記載の半導体装置の製造方法。
【0097】
(付記13) 半導体素子の上面にシールド層を配設する工程と、
前記シールド層の配設後、前記半導体素子を回路基板に実装する工程と、
前記回路基板上に柱状の接続部を電気的に接続する工程と、
前記半導体素子及び前記接続部を封止樹脂で封止する工程と、
前記封止樹脂の上方に、前記接続部に電気的に接続されるアンテナ素子を配設する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。