特許第5729296号(P5729296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5729296-白色フィルムおよびそれを用いた面光源 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5729296
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】白色フィルムおよびそれを用いた面光源
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/00 20060101AFI20150514BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20150514BHJP
   F21V 3/00 20150101ALI20150514BHJP
   F21V 3/04 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   C08J9/00 ACFD
   G02B5/08 A
   G02B5/08 C
   F21V3/00 530
   F21V3/04 131
【請求項の数】9
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2011-522316(P2011-522316)
(86)(22)【出願日】2011年2月18日
(86)【国際出願番号】JP2011053486
(87)【国際公開番号】WO2011105295
(87)【国際公開日】20110901
【審査請求日】2014年1月22日
(31)【優先権主張番号】特願2010-41581(P2010-41581)
(32)【優先日】2010年2月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大平 貴之
(72)【発明者】
【氏名】前川 茂俊
(72)【発明者】
【氏名】尾形 大輔
(72)【発明者】
【氏名】井澤 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】高橋 弘造
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−334570(JP,A)
【文献】 特開2001−342274(JP,A)
【文献】 特開2006−028523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/12
B29K 105/04
C08J 9/00
C08J 5/18
F21S 2/00
F21V 7/22
G02B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム内部に気泡を含有する白色フィルムであって、ポリエステル樹脂(A)と非相溶性成分(B)とを含有する組成物からなり、非相溶性成分(B)として、熱可塑性樹脂(B1)と無機粒子(B2)とを含み、前記熱可塑性樹脂(B1)が環状オレフィン共重合体樹脂(b1)、前記無機粒子(B2)が酸化チタン(b2)であって、下記式(i)〜(iii)を満足する白色フィルム。
(i)0.6≦nB/nA≦0.9
(ii)20≦nA
(iii)15≦nB
(ただし、nAはフィルム厚み方向の表層部10μmにおける界面数、nBはフィルム厚み方向の中央部±5μmにおける界面数)
【請求項2】
下記式(iv)を満たす、請求項1に記載の白色フィルム。
(iv)vB>vA
(ただし、vAはフィルム厚み方向の表層部10μmにおけるボイド率、vBはフィルム厚み方向の中央部±5μmにおけるボイド率)
【請求項3】
該白色フィルムの曲げ剛性が1.1(mN・m)以上である、請求項1または2に記載の白色フィルム。
【請求項4】
該白色フィルムが、単層フィルムである、請求項1〜3のいずれかに記載の白色フィルム。
【請求項5】
該白色フィルムが該非相溶性成分(B)の周りに気泡が形成されてなる、請求項1〜4のいずれかに記載の白色フィルム。
【請求項6】
該白色フィルムの比重が1.2以下である、請求項1〜のいずれかに記載の白色フィルム。
【請求項7】
該白色フィルムの全光線透過率が1.2以下である、請求項1〜のいずれかに記載の白色フィルム。
【請求項8】
該白色フィルムの厚みが30μm以上500μm以下である、請求項1〜のいずれかに記載の白色フィルム。
【請求項9】
請求項1〜のいずれかに記載の白色フィルムと光源とを備えた面光源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色フィルムに関し、さらに詳しくは面光源用反射部材として好適な白色フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、テレビ、携帯電話などの表示装置として、液晶を利用したディスプレイが数多く用いられている。これらの液晶ディスプレイは、裏側からバックライトと呼ばれる面光源を設置して光を照射することにより表示が可能となっている。バックライトは、画面全体を均一に照射せねばならないという要求に応えるため、サイドライト型もしくは直下型と呼ばれる面光源の構造をとっている。なかでも、薄型・小型化が望まれるノート型パソコン等に使用される薄型液晶ディスプレイ用途には、サイドライト型、つまり画面に対し側面に光源を設置するタイプのバックライトが適用されている。
【0003】
このサイドライト型バックライトでは、冷陰極線管またはLEDを光源とし、導光板のエッジから光を均一に伝播・拡散して、液晶ディスプレイ全体を均一に照射する。そして、光をより効率的に活用するため、光源の周囲に反射板が設けられ、更に導光板から拡散された光を液晶画面側に効率的に照射させるために導光板の背面に反射板が設けられている。これにより光源からの光のロスを少なくし、液晶画面を明るくする機能を付与している。
【0004】
一方、液晶テレビに用いられるような大画面用のバックライトでは、エッジライト方式の他に直下型ライト方式が採用されている。この方式は、液晶パネルの背面に冷陰極線管を並列に設け、さらにその冷陰極線管の背面に反射板を設置した構成によって、光源からの光を液晶画面側に効果的に照射させる。
【0005】
このような液晶ディスプレイ用バックライトに用いられる反射板においては、携帯電話およびノート型パソコンの薄型化、小型化やテレビの大画面化に伴い、薄膜であるにもかかわらず高い反射性、光の高隠蔽性、および高い剛性が要求されるようになってきた。
【0006】
従来、反射板には、フィルム内部に含有された微細な気泡とマトリックス樹脂との界面での屈折率差による光の反射を利用した構成が広く採用されている(特許文献1参照)。より高い反射性を達成するためには、その気泡の形状や数が重要であり、それを制御した反射板が存在する(特許文献2〜6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−40214号公報
【特許文献2】特開2000−135766号公報
【特許文献3】特開2001−334623号公報
【特許文献4】特開2003−160682号公報
【特許文献5】特開2009−173015号公報
【特許文献6】特開2001−288291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1〜6に記載の構成では、薄膜化とともに現在の市場が要求する反射性を十分に達成することはできない。また、反射性を向上させようとしてフィルム内部に多量の気泡を含有させた場合、フィルム破れが多発してシート化が困難であり、できたとしても隠蔽性、剛性、生産性、コストの面で劣るといった問題が生じやすい。
【0009】
本発明は、反射性・隠蔽性・製膜安定性を兼ね備えた、薄膜化が可能な白色フィルムを提供することを課題とする。また、その白色フィルムを用いることにより輝度特性に優れた面光源を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、かかる課題を解決するために、次のいずれかの構成を採用する。
(1) フィルム内部に気泡を含有する白色フィルムであって、ポリエステル樹脂(A)と非相溶性成分(B)とを含有する組成物からなり、非相溶性成分(B)として、熱可塑性樹脂(B1)と無機粒子(B2)とを含み、前記熱可塑性樹脂(B1)が環状オレフィン共重合体樹脂(b1)、前記無機粒子(B2)が酸化チタン(b2)であって、下記式(i)〜(iii)を満足する白色フィルム。
(i)0.6≦nB/nA≦0.9
(ii)20≦nA
(iii)15≦nB
(ただし、nAはフィルム厚み方向の表層部10μmにおける界面数、nBはフィルム厚み方向の中央部±5μmにおける界面数)
(2) 下記式(iv)を満たす、前記(1)に記載の白色フィルム。
(iv)vB>vA
(ただし、vAはフィルム厚み方向の表層部10μmにおけるボイド率、vBはフィルム厚み方向の中央部±5μmにおけるボイド率)
(3) 該白色フィルムの曲げ剛性が1.1(mN・m)以上である、前記(1)または(2)に記載の白色フィルム。
(4) 該白色フィルムが、単層フィルムである、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の白色フィルム。
(5) 該白色フィルムが該非相溶性成分(B)の周りに気泡が形成されてなる、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の白色フィルム。
) 該白色フィルムの比重が1.2以下である、前記(1)〜()のいずれかに記載の白色フィルム。
) 該白色フィルムの全光線透過率が1.2以下である、前記(1)〜()のいずれかに記載の白色フィルム。
) 該白色フィルムの厚みが30μm以上500μm以下である、前記(1)〜()のいずれかに記載の白色フィルム。
) 前記(1)〜()のいずれかに記載の白色フィルムと光源とを備えた面光源。
【発明の効果】
【0011】
本発明の白色フィルムは、フィルム厚み方向の界面数に特定の分布を有しているため、薄くても反射特性、隠蔽性、剛性および製膜安定性を兼ね備えた白色フィルムとなる。特にこの白色フィルムを面光源内の反射板として用いた時、液晶画面を明るく照らし、液晶画像をより鮮明かつ見やすくすることができ、有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明にかかる白色フィルムの表面付近のSEM断面写真。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1) 白色フィルム
(1.1) 白色フィルムの構成
本発明の白色フィルムは、フィルム内部に気泡を含有する必要がある。フィルム内部に気泡を含有することにより、高い反射特性を有する白色フィルムを、後述するように容易に製造することが可能である。
【0014】
本発明の白色フィルムにおいて、気泡は独立した気泡であっても良いし、複数の気泡が連続しているものであっても良い。気泡形状は特に限定されないが、フィルム厚み方向に多数の気泡と樹脂との界面を形成させるために、気泡の断面形状は、円状ないしフィルム面方向に対して伸長されている楕円状であることが好ましい。
【0015】
気泡の形成方法としては、当該技術分野で公知の方法を用いることができる。例えば、(I)白色フィルムを構成する主たる樹脂成分(例えばポリエステル樹脂(A))と、該樹脂成分に対して非相溶性成分(B)とを含有する混合物を溶融押出した後、少なくとも一方向に延伸し、内部に気泡を形成させる方法、(II)発泡性粒子を添加し、溶融押出することによってフィルム内部にて発泡させることにより、気泡を形成させる方法、(III)炭酸ガスなどの気体を注入して押出発泡させることにより、フィルム内部に気泡を形成させる方法、(IV)二成分以上のポリマーと、有機物もしくは無機物とを混合し、溶融押出した後、溶媒抽出により、少なくとも一成分を溶解させることより、フィルム内部に気泡を形成させる方法、(V)中空粒子を添加し、溶融押出することによって、気泡を形成させる方法、(VI)基材フィルムに透湿加工用ウレタン樹脂等をコーティングし、乾燥させることにより乾式多孔層を形成させるなどの方法、が挙げられる。
【0016】
本発明においては、より微細で扁平な気泡を生成させることが重要になるので、(I)の手法を用いるのが好ましい。(I)の手法は延伸中に白色フィルムを構成する主たる樹脂成分と非相溶性成分との界面で剥離が起こることを利用して、扁平状の気泡を生成させる手法である。したがって、(I)の手法を用いる場合は、気泡占有体積を増大させ、フィルム厚みあたりの界面数を増大させるために、一軸延伸よりも二軸延伸がより好ましく用いられる。
【0017】
以下、本発明の好ましい例として(I)の手法について詳述する。
【0018】
本発明の白色フィルムは、フィルム内部に気泡を含有し、下記式(i)〜(iii)を満足する必要がある。
(i)0.6≦nB/nA≦0.9
(ii)20≦nA
(iii)15≦nB
(ただし、nAはフィルム厚み方向の表層部10μmにおける界面数、nBはフィルム厚み方向の中央部±5μmにおける界面数)
本発明の白色フィルムにおいて、上記式を満足することにより、白色フィルムの反射性および隠蔽性を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0019】
本発明の白色フィルムにおいて、フィルム厚み方向の表層部10μmにおける界面数nAは20以上必要であり、より好ましくは25以上、さらに好ましくは30以上である。フィルム厚み方向の表層部10μmにおける界面数nAの上限は特に限定されるものではないが、製膜安定性の観点から、50以下が好ましい。フィルム厚み方向の表層部10μmにおける界面数nAが20に満たない場合、白色性や光反射特性、隠蔽性に劣ることがある。
【0020】
なお、フィルム厚み方向の表層部10μmとは、白色フィルムの表面から厚み方向に10μm以内の領域のことである。本発明においては、少なくとも一方の表層部が上記関係を満足すればよい。
【0021】
本発明の白色フィルムにおいて、フィルム厚み方向の中央部±5μmにおける界面数nBは15以上必要であり、より好ましくは20以上、さらに好ましくは25以上である。フィルム厚み方向の中央部±5μmにおける界面数nBの上限は、特に限定されるものではないが、製膜安定性の観点から、50以下が好ましい。フィルム厚み方向の中央部±5μmの領域における界面数nBが15に満たない場合、白色性や光反射特性、隠蔽性に劣ることがある。
【0022】
なお、フィルム厚み方向の中央部±5μmとは、白色フィルムの厚み方向の中心から±5μm以内の領域である。
【0023】
ここで、nAおよびnBを上述の範囲とするためには、例えば以下のようにすればよい。すなわち、界面の形成方法として前述の(I)の手法を用いた場合、後述するように非相溶性成分(B)の種類、含有量、粒子径等を制御することが挙げられる。具体的には、非相溶性成分(B)として、熱可塑性樹脂(B1)と無機粒子(B2)とを用いることが好ましい。さらに、熱可塑性樹脂(B1)の含有量が3重量%以上15重量%以下で体積平均粒径Dvが1.5μm以下であり、無機粒子(B2)の含有量が8重量%以上で平均粒子径が3μm以下であることが好ましい。非相溶性成分(B)の含有量や粒子径を上述のように制御することで、フィルム中に非相溶性成分(B)を核とした気泡を多数含有させることができ(すなわち、該相溶性成分(B)の周りに気泡を形成することができ)、フィルム厚み方向の表層部10μmにおける界面数nAおよびフィルム厚み方向の中央部±5μmにおける界面数nBを、容易に上述の範囲とすることができる。かかる範囲にすることにより、フィルム厚み方向に気泡と樹脂との界面を多数形成することでき、白色フィルムとしての白色性、反射特性、隠蔽性に優れ、また液晶表示装置に組み込んだ場合、輝度特性に優れたものとすることができる。
【0024】
さらに、本発明の白色フィルムにおいて、nAに対するnBの比率(nB/nA)は、0.6以上0.9以下である必要があり、より好ましくは0.6以上0.85以下、さらに好ましくは0.6以上0.8以下である。該比率を上述の範囲とすることは、フィルム厚み方向の表層部10μmにおける界面数をフィルム厚み方向の中央部±5μmにおける界面数よりも多く生成することを意味し、白色フィルムの反射性および隠蔽性を飛躍的に向上させることが可能となる。nB/nAを上述の範囲とするためには、後述する縦延伸時の赤外線ヒーターの出力を制御することが挙げられる。
【0025】
さらに、本発明の白色フィルムにおいては、フィルム厚み方向の表層部10μmにおけるボイド率vAおよびフィルム厚み方向の中央部±5μmにおけるボイド率vBが、vB>vAであることが好ましい。前記関係であることにより、フィルム全体のボイド率がvAであるフィルムより高い剛性のフィルムを得ることができる。なお、本発明においては、少なくとも一方の表層部が上記関係を満足すればよい。
【0026】
ここで、nA、nB、およびnB/nAを上述の範囲にし、同時にvB>vAとするためには、後述する白色フィルムの構成にもよるが、例えば以下のようにする。白色フィルムが単層フィルムである場合は、例えば後述するように、縦延伸時の赤外線ヒーターの出力を制御することに加えて、縦延伸時のロール予熱温度(すなわち、フィルムが実際に延伸される区間の上流側に設けられるロールによるフィルムの予熱温度)を制御することが挙げられる。
【0027】
具体的には、フィルム厚み方向にボイド率が一定の従来のフィルムに比べ、縦延伸時の予熱温度を低温化し、代わりにその下流側で高出力の赤外線ヒーターで加熱しながらフィルムを延伸すればよい。こうすることにより、フィルム厚み方向の表層部温度が通常延伸温度より高くマトリックスが軟化するため、表層部付近に生成する気泡のサイズが小さくなり、ボイド率vAが小さくなると同時に界面数nAの密度が高くなる。一方で、フィルム厚み方向の中央部では、赤外線ヒーターの影響が小さいため、表層部付近に比べて延伸温度が通常の延伸温度程度となり、気泡が出来やすく、また、気泡のサイズが膨らんで大きくなり、ボイド率vBが大きくなると同時に界面数nBの密度が低くなる。その結果、フィルム厚み方向でのボイド率および界面数の密度に差が出来るため、nAをnBよりも多く生成することができ、白色フィルムの反射性および隠蔽性を飛躍的に向上させることが可能となる。また、フィルム厚み方向の表層部の気泡のサイズが小さくボイド率も小さいため、剛性が高く、単層のフィルムであっても該表層部が積層フィルムにおける支持層のような役割を果たし、製膜安定性も向上することができる。
【0028】
また、白色フィルムが積層フィルムである場合は、縦延伸時に高出力の赤外線ヒーターで加熱しながら延伸することに加えて、非相溶性成分(B)の含有量や粒子径が異なる層を積層することによって、上述のnA、nB、vB、vAの関係を満足しやすくできる。例えば、三層積層の場合(ここで、三層積層の真ん中の層を内層、両表層を外層と呼ぶ)、外層に含有する非相溶性成分(B)の含有量を、内層に含有する非相溶性成分(B)の含有量よりも多くすることで、外層に、非相溶性成分(B)を核とした気泡をより多く含有させることができる。そのため、nAをnBよりも多くすることができ、白色フィルムの反射性および隠蔽性を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0029】
本発明の白色フィルムは、フィルム内部に気泡を含有していれば、単層フィルム、積層フィルムのどちらであってもよい。単層フィルムである場合、一つの押出機を用いて製造したフィルムでもよいし、同一組成の原料を供給した二つ以上の押出機を用いて製造したフィルムでもよい。一方、積層フィルムである場合は、nA、nB、およびnB/nAの比率を前述の範囲とするためにも、フィルム内部に含有する気泡の量が互いに異なる複数の層を積層した積層フィルムであることが好ましい。ただし、積層フィルムとすることで、原料や用役等の使用量が増加して環境及びコストへの負荷が増加し、プロセスが複雑になり、汎用性に乏しく、限られた装置でしか生産できない。そのため、本発明においては単層フィルムであることがより好ましい。
【0030】
なお、単層フィルムであるとは、気泡部分を除くフィルムを構成する樹脂および無機粒子の組成が厚み方向において均一(同じ組成)である構成を言う。均一(同一組成)であることを確認する方法としては、例えば、フィルムを厚み方向に3つの領域に等分し、各領域をクロロホルムなどの溶媒に抽出および沈殿した物質の質量、NMRおよびIRスペクトルを測定する方法が挙げられる。そして、それぞれの領域の組成について差異がない場合、同一の組成とみなすことが出来る。本発明においては、原料の組成が同じであれば、ボイド率やボイドの形状が厚み方向に異なっており一見複数層に見えたとしても単膜と見なす。
【0031】
本発明の白色フィルムの厚みは30〜500μmが好ましく、50〜300μmがより好ましい。厚みが30μm未満の場合、フィルムの平坦性を確保することが困難となり、面光源として用いた際に、明るさにムラが生じやすい。一方、500μmより厚い場合、光反射フィルムとして液晶ディスプレイなどに用いた場合、厚みが大きくなりすぎることがある。
【0032】
ここで、本発明の白色フィルムの厚みを上述の範囲とするためには、後述する製造方法において、押出成形の際の吐出量を増やすことや、製膜速度を遅くすることなどが挙げられる。
【0033】

(1.2) 白色フィルムを構成する主たる樹脂成分
本発明の白色フィルムにおいて、使用する樹脂は限らないが、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂などの熱可塑性樹脂が好ましく例示され、より好ましくはポリエステル樹脂である。特に上記(I)の方法でフィルム内部に気泡を形成させる場合、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0034】
本発明の白色フィルムにおいて、ポリエステル樹脂(A)とは、ジオール成分とジカルボン酸成分の重縮合によって得られるポリマーである。ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等が代表例として挙げられる。またジオール成分としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等が代表例として挙げられる。ポリエステル樹脂(A)の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(ポリエチレンナフタレート)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等を挙げることができる。
【0035】
ポリエステル樹脂は、ホモポリエステルであってもコポリエステルであってもよい。共重合成分としては、例えばジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール等のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸成分を用いることができる。
【0036】
ポリエステル樹脂(A)として、上述の樹脂を用いることにより、高い無着色性を維持しつつ、フィルムとしたときに高い機械強度を付与することができる。より好ましくは、安価でかつ耐熱性が優れるという点で、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートである。
【0037】
ポリエステル樹脂(A)は、複数のポリエステルの混合物であって良く、また、共重合ポリエステル樹脂が含有されていてもよい。好ましい共重合ポリエステルとしては、ジオール成分の主成分が脂環式グリコールである共重合ポリエステル樹脂や、ジカルボン酸成分が脂環式ジカルボン酸やイソフタル酸であるものが挙げられる。
【0038】
特に、非相溶性成分(B)として、環状オレフィン共重合体樹脂(b1)を用いる場合、ジオール成分に脂環式グルコールの一種であるシクロへキサンジメタノールを用いた非晶性の共重合ポリエステルが、成形性、非相溶性成分(B)の微分散化効果の点から、好ましく用いることができる。また、延伸性や製膜性を向上させることもできる。ジオール成分に占めるシクロヘキサンジメタノール成分は30モル%以上とすることが好ましい。かかる共重合ポリエステル樹脂を用いたときに非相溶性成分(B)が微分散する理由は、共重合ポリエステル樹脂の環式脂肪族炭化水素部分と、後述する環状オレフィン共重合体樹脂(b1)の環状オレフィン部分との相互作用により、非相溶性成分(B)がマトリックス中に微分散可能となるからである。その結果、高反射性、高白色性、軽量性を達成することができる。
【0039】
なお、共重合ポリエステルの含有量はマトリックスを構成する全材料を100重量%としたとき、1重量%以上50重量%未満であるのが好ましい。より好ましくは1.5重量%以上40重量%未満、更に好ましくは1.5重量%以上35重量%未満である。かかる共重合ポリエステルの含有量が1重量%に満たないと、後述する熱可塑性樹脂(B1)をマトリックス中に微分散するのが困難となる場合がある。また、50重量%を超えると耐熱性が低下し、寸法安定性を付与するためにフィルムの熱処理を実施した時に、マトリックスが軟化し、その結果、気泡が減少・または消失して、反射特性が低下したりする場合がある。また、反射特性を維持しようとして、熱処理温度を低温化すると、その場合にフィルムの寸法安定性が低下する場合がある。マトリックスを構成する全材料100重量%に対する共重合ポリエステルの含有量を上述の範囲に制御することによって、上述した非相溶成分の分散効果を十分に発揮させつつ、フィルム製膜性や機械特性を維持することができる結果、高い反射率と、寸法安定性がより両立しやすくなる。
【0040】

(1.3) 非相溶性成分(B)
上記(I)の方法でフィルム内部に気泡を形成させる場合に用いる非相溶性成分(B)としては、ポリエステル樹脂(A)などのマトリックスに非相溶なものであれば特に限定されず、マトリックスと非相溶の熱可塑性樹脂や無機粒子、いずれもが好ましく用いられる。上記成分は単独でも2種以上を併用してもよいが、非相溶性成分(B)として、マトリックスと非相溶の熱可塑性樹脂(B1)と無機粒子(B2)を併用することは、本発明の白色フィルムにおいてより好ましい形態の一つである。複数の非相溶成分(B)を含有することによって、より多くの気泡を形成出来るために高い反射性を得ることができるため好ましい。
【0041】

(1.3.1) 熱可塑性樹脂(B1)
ここで、非相溶性成分(B)として熱可塑性樹脂(B1)を用いる場合、その具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、シクロペンタジエンなどのような直鎖状、分鎖状あるいは環状のポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリスチレン、フッ素系樹脂などが好ましく用いられる。これらの非相溶性樹脂は単独重合体であっても共重合体であってもよく、さらには2種以上の非相溶性樹脂を併用してもよい。これらの中でも、透明性に優れ、かつ耐熱性に優れるという点で、ポリオレフィンが好ましく用いられる。具体的には、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、シクロオレフィン共重合体などが好ましく用いられる。
【0042】
熱可塑性樹脂(B1)は、結晶性の樹脂、非晶性の樹脂の何れでも良い。結晶性樹脂としては、透明性、耐熱性の観点から、ポリメチルペンテンがより好ましく用いられる。ここで、ポリメチルペンテンとしては、分子骨格中に4−メチルペンテン−1から誘導される二価の有機基を繰り返し単位として好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、特に好ましくは90モル%以上含むものが好ましい。また、その他の繰り返し単位としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、あるいは4−メチルペンテン−1以外で炭素数6〜12の炭化水素から誘導される二価の有機基などが例示される。ポリメチルペンテンは単独重合体であっても共重合体であってもよい。また、組成や、溶融粘度などの異なる複数のポリメチルペンテンを混合して用いたり、他のオレフィン系樹脂やその他樹脂と併用してもよい。
【0043】
また、熱可塑性樹脂(B1)が、非晶性樹脂の場合、環状オレフィン共重合体樹脂(b1)が特に好ましく用いられる。環状オレフィン共重合体とは、シクロアルケン、ビシクロアルケン、トリシクロアルケン及びテトラシクロアルケンからなる群から選ばれた少なくとも1種の環状オレフィンと、エチレン、プロピレン等の直鎖オレフィンからなる共重合体である。
【0044】
環状オレフィン共重合体樹脂(b1)における環状オレフィンの代表例としては、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、6−メチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、5,6−ジメチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、1−メチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、6−エチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、6−n−ブチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、6−i−ブチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、7−メチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、トリシクロ〔4,3,0,12.5 〕−3−デセン、2−メチル−トリシクロ〔4,3,0,12.5 〕−3−デセン、5−メチル−トリシクロ〔4,3,0,12.5 〕−3−デセン、トリシクロ〔4,4,0,12.5 〕−3−デセン、10−メチル−トリシクロ〔4,4,0,12.5 〕−3−デセン等がある。
【0045】
また、環状オレフィン共重合体樹脂(b1)における直鎖オレフィンの代表例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン等がある。
【0046】
熱可塑性樹脂(B1)としては、上述に挙げられるもののうち、非晶性樹脂である環状オレフィン共重合体樹脂(b1)が特に好ましい。環状オレフィン共重合体樹脂(b1)は、マトリックスに含まれる脂環式ジオールおよび/または脂環式ジカルボン酸との相互作用により、より微分散可能となり、その結果、反射特性をさらに高めることができる。
【0047】
環状オレフィン共重合体樹脂(b1)は、そのガラス転移温度Tgが110℃以上であることが好ましい。具体的には130℃以上が好ましく、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは170℃以上である。かかる範囲にすることにより、混練時においてマトリックス樹脂中により微細に分散し、延伸工程においてより確実に気泡を形成し、熱処理工程における気泡の消失をより抑制することができるためである。すなわち、該ガラス転移温度Tgが110℃に満たないと、寸法安定性を付与するためにフィルムに熱処理を施した時、核剤である環状オレフィン共重合体樹脂(b1)が変形し、その結果、それを核として形成された気泡が減少または消失して、反射特性が低下する場合がある。また、反射特性を維持しようとして、熱処理温度を低温化すると、その場合にフィルムの寸法安定性が低下する場合があるため好ましくない。該ガラス転移温度Tgを110℃以上とすることによって、高い反射率と、寸法安定性を両立することが可能となる。また該ガラス転移温度の上限は250℃が好ましい。250℃を越えると、製膜時の押出温度が高くなり加工性に劣るため好ましくない。
【0048】
該ガラス転移温度Tgを前述の範囲に制御するためには、例えば環状オレフィン共重合体中の環状オレフィン成分の含有量を多くし、エチレン等の直鎖オレフィン成分の含有量を少なくすることが挙げられる。具体的には、環状オレフィン成分は60モル%以上であり、エチレン等の直鎖オレフィン成分の含有量は40モル%未満であることが好ましい。より好ましくは、環状オレフィン成分は70モル%以上であり、エチレン等の直鎖オレフィン成分の含有量は30モル%未満、さらに好ましくは環状オレフィン成分が80モル%以上であり、エチレン等の直鎖オレフィン成分の含有量が20モル%未満である。特に好ましくは環状オレフィン成分が90モル%以上であり、エチレン等の直鎖オレフィン成分の含有量が10モル%未満である。かかる範囲にすることにより、環状オレフィン共重合体のガラス転移温度Tgを前述の範囲まで高めることができる。
【0049】
また、環状オレフィン共重合体樹脂(b1)を用いる場合、直鎖オレフィン成分は特に制限されるものではないが、反応性の観点からエチレン成分が好ましい。さらに、環状オレフィン成分も特に制限されるものではないが、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン(ノルボルネン)やその誘導体が生産性・透明性・高Tg化の点から好ましい。
【0050】
白色フィルム中に含有される環状オレフィン共重合体樹脂(b1)の体積平均粒径Dvは、1.5μm以下であることが好ましい。より好ましくは体積平均粒径Dvが1.4μm以下、更に好ましくは1.3μm以下である。該体積平均粒径Dvが1.5μmを上回ると、白色フィルム中に環状オレフィン共重合体樹脂(b1)を核とした気泡を多数含有させることが困難となったり、粗大な気泡が形成される結果、フィルム厚み方向に気泡と樹脂との界面を多数形成することが困難になり易い。そのため、白色フィルムとしての白色性、反射特性、軽量性に劣り、また液晶表示装置に組み込んでも輝度特性に劣ることがあるため好ましくない。該体積平均粒径Dvを1.5μm以下とすることによって、白色フィルムとしての高い反射特性を得ることができる。
【0051】
白色フィルムにおける環状オレフィン共重合体樹脂(b1)の体積平均粒径Dvを1.5μm以下とするためには、後述するように、共重合ポリエステル樹脂(C)及び分散剤(D)を含有させる方法が、好ましく用いられる。
【0052】
上述の熱可塑性樹脂(B1)は、白色フィルムを構成する全材料の合計重量100重量%において、3〜15重量%含有されていることが好ましい。好ましくは4〜10重量%、より好ましくは5〜10重量%である。該含有量が3重量%未満であると、フィルム内部に気泡が十分に生成されず、白色性や光反射特性に劣ることがある。一方、該含有量が15重量%を越えると、フィルムの強度が低下し、延伸時の破断が起こりやすくなることがある。含有量をかかる範囲内にすることにより、十分な白色性・反射性・軽量性を発現せしめることができる。
【0053】

(1.3.2) 無機粒子(B2)
本発明の白色フィルムにおいて、非相溶性成分(B)として、無機粒子(B2)を用いる場合、その例としては、ガラス、シリカ、硫酸バリウム、酸化チタン、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、タルクなどを挙げることができる。
【0054】
ここで、これらの無機粒子の中でも、特に、気泡形成、白色度、光学濃度など総合的効果の点から、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウムの適用がより好ましく、特に酸化チタン(b2)が最も好ましい。
【0055】
特に、非相溶性成分(B)として環状オレフィン共重合体樹脂(b1)および酸化チタン(b2)を共に用いることは、酸化チタン粒子による光散乱と気泡による光拡散の組み合わせによって、より高い反射率と光学濃度を同時に達成出来るため、好ましい。
【0056】
無機粒子(B2)は、フィルム中での体積平均粒子径が0.05〜3μmであることが好ましく、より好ましくは0.07〜1μmである。無機粒子(B2)の体積平均粒子径が上記範囲外である場合、凝集などによる無機粒子(B2)の均一分散性不良、あるいは粒子自身によってフィルム表面の光沢または平滑性が低下する場合がある。
【0057】
無機粒子(B2)は、白色フィルムを構成する全材料の合計重量を100重量%としたとき8〜22重量%含有されていることが好ましい。好ましくは12〜18重量%である。該含有量が8重量%未満であると、フィルム内部に気泡が十分に生成されず、白色性や光反射特性に劣ることがある。一方、該含有量が22重量%を越えると、フィルムの強度が低下し、延伸時の破断が起こりやすくなることがある。含有量をかかる範囲内にすることにより、十分な白色性・反射性・軽量性を発現せしめることができる。
【0058】

(1.4)その他添加物
本発明の白色フィルムにおいて、マトリックスに熱可塑性樹脂(B1)をより微分散させるためには、ポリエステル樹脂(A)にさらに分散剤(D)を含有せしめることが好ましい。分散剤(D)をポリエステル樹脂(A)中に含むことにより、熱可塑性樹脂(B1)の分散径をさらに小さくすることが可能となり、その結果、延伸により生成する扁平な気泡をより微細にでき、結果的にフィルムの白色性、反射性、軽量性を高めることができる。
【0059】
かかる分散剤(D)の種類は特に限定されないが、カルボキシル基やエポキシ基等の極性基やポリエステルと反応性のある官能基をもったオレフィン系の重合体または共重合体、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、界面活性剤および熱接着性樹脂等を用いることができる。もちろん、これらは単独でも2種以上を併用してもよい。
【0060】
中でも、ポリエステルセグメントとポリアルキレングリコールセグメントからなるポリエステル-ポリアルキレングリコールブロック共重合体(D1)が特に好ましい。
【0061】
この場合、ポリエステルセグメントとしては、炭素数が2〜6の脂肪族ジオール部分と、テレフタル酸および/またはイソフタル酸部分からなるポリエステルをセグメントとすることが好ましい。また、ポリアルキレングリコールセグメントとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等をセグメントとすることが好ましい。
【0062】
特に好ましい組み合わせとしては、ポリエステルセグメントにはエチレンテレフタレート単位もしくはブチレンテレフタレート単位を繰り返し単位としたポリエステル、ポリアルキレングリコールセグメントにはエチレングリコール単位もしくはテトラメチレングルコール単位を繰り返し単位としたものである。中でも、ポリブチレンテレフタレート−ポリテトラメチレングルコール共重合体、もしくはポリエチレンテレフタレート−ポリエチレングリコール共重合体が特に好ましい。
【0063】
分散剤(D)の含有量は特に限定されるものではないが、マトリックスを構成する全材料100重量%としたとき、0.1〜30重量%が好ましく、より好ましくは1〜25重量%であり、さらにより好ましくは1.5〜20重量%である。含有量が0.1重量%より少ない場合、気泡を微細化する効果が小さくなることがあるため好ましくない。また、含有量が30重量%より多い場合には、耐熱性が低下し、寸法安定性を付与するためにフィルムの熱処理を実施した時にマトリックスが軟化し、その結果、気泡が減少または消失して、反射特性が低下したりする場合がある。なお、反射特性を維持しようとして、熱処理温度を低温化すると、フィルムの寸法安定性が低下する場合があるため好ましくない。また、生産安定性の低下やコスト上昇などの問題が発生することがあるため、好ましくない。全マトリックス成分に対する分散剤(D)の含有量を上述の範囲に制御することによって、上述した熱可塑性樹脂(B1)の分散効果を十分に発揮させつつ、フィルム製膜性や機械特性を維持することができる結果、高い反射率と、寸法安定性を両立することが可能となる。
【0064】
なお、本発明の白色フィルムには、必要に応じて本発明の効果が損なわれない量での適宜な添加剤、例えば、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、有機系の易滑剤、有機系微粒子、充填剤、核剤、染料、分散剤、カップリング剤等が配合されていてもよい。
【0065】

(2)フィルム特性
本発明の白色フィルムは上述の構成からなるものであるが、該白色フィルムの全光線透過率は1.2%以下であることが好ましい。より好ましくは1.05%以下、更に好ましくは0.9%以下である。なお、ここでいう透過率とは、JIS K7361−1(1997)に基づいて測定された値である。該透過率を1.2%以下とすることによって、裏面への光抜けを抑えることができる結果、白色性、反射特性および隠蔽性に優れた白色フィルムとすることができ、特に液晶表示装置用として用いた場合に高い輝度向上効果を得ることができる。なお、下限としては0%が好ましいく、実質的な値として0.001%であることが好ましい。具体的には、例えば反射フィルム(本発明の白色フィルム)の更に背面に配置するバックライトユニットの筐体の形状による陰影が見えない事が好ましい。
【0066】
また、本発明の白色フィルムは相対反射率が100%以上であることが好ましい。より好ましくは100.5%以上、更に好ましくは101%以上である。ここでいう、相対反射率とは、内面が硫酸バリウム製の積分球、10°傾斜スペーサーを備えた分光光度計、標準白色板として酸化アルミニウムを用いて、入射角10°で光を入射させたときの反射率を波長560nmの範囲で測定し、標準白色板の反射率を100%としたときの相対反射率を、波長560nmで平均して得られる反射率のことである。本発明の白色フィルムにおいて、相対反射率を100%以上とすることによって、白色性、反射特性に優れた白色フィルムとすることができ、特に液晶表示装置用として用いた場合に高い輝度向上効果を得ることができる。
【0067】
ここで、本発明の白色フィルムの全光線透過率、相対反射率を上述の範囲のものとするためには、1)フィルム内部の樹脂粒子の分散径、密度を制御し、nA、nB、nB/nA、vAおよびvBを前述の範囲に制御する、2)フィルム厚みを厚くする、などによって得ることができる。ここで、従来、白色フィルムでは、相対反射率を上述の範囲に調整するためには、前記2)の方法しかなかった。しかしながら、本発明においては、フィルム内部の樹脂粒子の分散径、密度を前述の範囲に制御することによって、従来の白色フィルムでは達成し得ない、より薄膜で高隠蔽性能、高反射性能を有する白色フィルムとすることが可能となる。
【0068】
具体的には、本発明の白色フィルムは上述の透過率、反射率を厚み300μm以下で満たすことが好ましい。より好ましくは厚み250μm以下で満たすことが好ましく、更には厚み188μm以下で満たすことが好ましい。本発明によれば、このような厚みで上述の透過率、反射率を満たすことができ、すなわち、従来に比べてより薄膜で高反射性能を有する白色フィルムとすることができる。その結果、該白色フィルムを例えば液晶ディスプレイの反射部材として用いた場合には、高い輝度向上効果と、ディスプレイの薄膜化の両立が達成できる。
【0069】
また、本発明の白色フィルムの曲げ剛性は1.1(mN・m)以上が好ましい。ここでいう曲げ剛性とは、JIS P8125(2000)による曲げモーメント表示のこわさを厚み(μm)の3乗で除して、さらに一般的なフィルムの厚み188(μm)の3乗で乗じた、厚み188μmに換算した換算値である。該曲げ剛性は、より好ましくは1.2(mN・m)以上である。本発明の白色フィルムをバックライトの反射板として使用する場合等、製品組み立て時にフィルム自体の重みによりフィルムをつかむ部分に応力がかかり、折れ皺が発生しやすい。しかしながら、曲げ剛性が上記範囲であることによって、バックライト組み立て時にも折れ皺が発生しにくく、取り扱いやすい。そのため、バックライトなどの製品においても輝度ムラをより確実に防止できる。上限はしなやかさが損なわれる観点から30(mN・m)以下が好ましい。
【0070】
本発明の白色フィルムの曲げ剛性を上述の範囲のものとするためには、1)フィルム内部の樹脂粒子の分散径、密度を制御し、nA、nB、nB/nA、vAおよびvBを前述の範囲に制御する、2)フィルムのボイド率を低減し密度を高める。3)表層に気泡のない樹脂層を積層する方法が挙げられる。従来、白色フィルムでは、曲げ剛性を上述の範囲に調整するためには、前記2)、3)の方法しかなかったが、これらの方法では高い反射性能を得ることができない。しかしながら、本発明においては、フィルム内部の樹脂粒子の分散径、密度を前述の範囲に制御することによって、従来の白色フィルムでは達成し得ない、高い曲げ剛性と高反射性能を有する白色フィルムとすることが可能となる。
【0071】
また、本発明の白色フィルムの比重は1.2以下が好ましい。ここでいう比重とはJIS K7112(1980)に基づいて求めた値である。より好ましくは1.0以下、更に好ましくは0.9以下である。比重が1.2を越える場合にはボイド率が低すぎて反射率が低下し、面光源用の反射板として用いた場合に、輝度が不十分になる傾向にあるため好ましくない。なお、比重の下限は好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上である。0.3未満の場合にはフィルムとしての曲げ剛性が不十分であり、折れやすく取り扱い性に劣るなどの問題が生じる場合がある。
【0072】
本発明の白色フィルムの比重を上述の範囲のものとするためには、フィルム内部の樹脂粒子の分散径、密度、フィルム製膜時の延伸倍率を制御することによって得ることができる。
【0073】

(3)製造方法
本発明の白色フィルムの製造方法について、その一例を説明するが、本発明は、かかる例のみに限定されるものではない。
【0074】
本発明の白色フィルムは、例えば上述した(I)の方法により製造できる。この方法においては、少なくとも、ポリエステル樹脂(A)などのマトリックスとなる樹脂と非相溶性成分(B)とを含む混合物を、必要に応じて十分真空乾燥を行い、押出機(主押出機)を有する製膜装置の加熱された押出機に供給して、溶融押出する。非相溶性成分(B)の添加は、事前に均一に溶融混練して配合させて作製されたマスターチップを用いても、もしくは直接混練押出機に供給するなどしてもよい。ただし、ポリエステル樹脂(A)などのマトリックスとなる樹脂と非相溶成分(B)とを含む混合物を事前に均一に溶融混練したマスターチップを用いるほうが、非相溶成分(B)の分散が促進されるという点でより好ましい。溶融押出に際しては、前記混合物をメッシュ40μm以下のフィルターにて濾過した後に、Tダイ口金内に導入し、押出成形により溶融シートに成形することが好ましい。この溶融シートを表面温度10〜60℃に冷却されたドラム上で静電気により密着冷却固化し、未延伸フィルムを作製する。
【0075】
その後、未延伸フィルムを延伸工程に導く。ここで、本発明の白色フィルムを得るためには、例えば、縦延伸時の赤外線ヒーターの出力を制御することに加えて、縦延伸時のロール予熱温度(すなわち、フィルムが実際に延伸される区間の上流側に設けられるロールによるフィルムの予熱温度)を制御することが好ましい。すなわち、該未延伸フィルムを例えば60〜85℃の温度に加熱されたロール群に導き、長手方向(縦方向、すなわちフィルムの進行方向)に周速の異なる二本のロール間で延伸する。縦延伸時のロール予熱温度は、より好ましくは65〜80℃、さらに好ましくは68℃〜75℃である。ロール予熱温度が85度を超える場合、フィルム内部に気泡が生成しづらくなり反射率が低下するため好ましくない。また、この延伸中に8.5W/cm以上40W/cm以下の熱量Qで表面を加熱することが好ましい。より好ましくは10W/cm以上25W/cm以下である。本発明でいう熱量Qとはフィルム幅あたりの熱量を指す。
【0076】
フィルムが実際に延伸される区間における加熱のための熱源としては、赤外線ヒーターや熱風を用いることができるが、エネルギー効率の観点から赤外線ヒーターを用いることが好ましい。赤外線ヒーターの種類は特に限定されないが、近赤外線ヒーターやカーボンヒーターなどを用いることができる。加熱性能と寿命とのバランスからカーボンヒーターがより好ましい。赤外線ヒーターには背面に金反射膜が付いていることが好ましい。また、集光装置を用いても良い。かかるヒーターとしてヘレウス(株)製Twin Tube透明石英ガラス製カーボンヒーターが挙げられる。
【0077】
赤外線ヒーターとフィルムの距離は、好ましくは10〜50mmであり、さらに好ましくは10〜20mmである。赤外線ヒーターとフィルムの距離が50mm以上であると、後述する赤外線ヒーター出力範囲では赤外線がフィルムに届くまでに減衰し、フィルムの表面温度を上げることができないことがある。赤外線ヒーターとフィルムの距離が10mmを下回ると、上述した赤外線ヒーター出力範囲では、縦延伸時にフィルムが軟化してしまい、安定製膜できないため、好ましくない。
【0078】
赤外線ヒーターの出力は30〜150W/cmが好ましく、より好ましくは40〜100W/cm、さらに好ましくは45〜80W/cmである。縦延伸時の赤外線ヒーターの出力が150W/cmを超える場合、縦延伸時にフィルムが軟化してしまい、安定製膜できないため好ましくない。また、縦延伸時の赤外線ヒーターの出力が30W/cmに満たない場合、フィルム厚み方向の表層部における界面数をフィルム厚み方向の中央部における界面数よりも多く生成することができなくなる場合があるため好ましくない。加えて、フィルム表面にクレーターが形成されるため、粉発生等による工程汚染および後加工での取り扱い性悪化を生じる場合があるため好ましくない。
【0079】
本発明において、赤外線ヒーターを用いた場合の熱量Qは下記式によって求めた値を言う。また、熱量Qは片面あたりの熱量である。
Q=(赤外ヒーターの出力(W/cm))×(0.4−0.055×ln(赤外線ヒーターとフィルムとの距離(mm)))
赤外線ヒーターの本数は1本でも複数本でも特に限定されないが、照射ゾーンを通過する時間が0.2〜2秒間が好ましい。さらに好ましくは0.4秒〜1秒である。製膜速度が遅い場合は1本でもかまわないが、製膜速度が早い場合、複数本並べることが好ましい。上限は特に規定されないがロール間の空隙から実際は4本が上限である。本発明でいう照射ゾーンはヒーター1本あたり40mmとし、重複を除した距離をいう。通過する時間が0.2秒未満では昇温が十分にされず、また2秒以上ではフィルム内部の温度が高温になるため反射率が小さくなり好ましくない。
【0080】
また、赤外線ヒーターはフィルムの片面または両面に設置する。特に気泡を有する層がある側に設置することが求められる。
【0081】
上記のような方法によれば、延伸中に表面を加熱することで、表面部分の延伸張力が小さくなり、気泡の形成を阻害することができる。同時に、フィルム内部は、上流側での予熱により形成されはじめた気泡によって熱伝導率が小さくなるため、表面より低温になる。そのため、延伸によりフィルム表面よりフィルム内部に気泡が形成されやすくなり、上記したような本発明の構成のフィルムを製造することができる。図1に本構成のフィルムの断面SEM写真を示す。したがって、延伸中に加熱することが肝要である。
【0082】
上記方法では、加熱しながら長手方向に3.4〜4.5倍に延伸し、20〜50℃の温度のロール群で冷却する。3.4倍未満では十分な大きさに気泡が形成しにくく、十分な反射率を得ることが難しい。また、4.5倍超に延伸するとその後の横延伸において破れやすく生産性に優れないため好ましくない。
【0083】
続いて、フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、90〜150℃の温度に加熱された雰囲気中で、長手方向に直角な方向(幅方向)に3〜5倍に延伸する。3倍未満では気泡サイズが小さくなり易く、十分な反射率と得ることが難しい。また、5倍超に延伸すると破れやすくなり生産性に優れないため好ましくない。
【0084】
得られた二軸延伸フィルムの配向結晶化を完了させて平面性と寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内にて150〜240℃の温度で1〜30秒間の熱処理を行なう。この際、必要に応じて幅方向あるいは長手方向に3〜12%の弛緩処理を施してもよい。その後、均一に徐冷して室温まで冷却し、必要に応じて、他素材との密着性をさらに高めるためにコロナ放電処理などを行い、巻き取る。こうすることにより、本発明の白色フィルムを得ることができる。
【0085】
尚、熱寸法安定性を高くするため、本発明の白色フィルムは製膜工程において高温で熱処理されることが好ましい。熱処理温度は180℃以上240℃以下が好ましく、より好ましくは190℃以上230℃以下である。本発明の白色フィルムが例えば液晶ディスプレイなどに搭載されている面光源(バックライト)の反射フィルムとして用いられる場合、バックライトによってはバックライト内部の雰囲気温度が100℃程度まで上昇することがある。そのため、本発明の白色フィルムにも一定の熱寸法安定性を有することが望まれる。
【0086】

(4)面光源
上述の白色フィルムは、液晶ディスプレイ等のバックライト(面光源)に適用される。該バックライトとしては、サイドライト型および直下型があるが、本発明の白色フィルムはそのいずれにも適用可能である。
【0087】
サイドライト型バックライトは、筐体に本発明の白色フィルム、導光板がこの順に組み込まれてなり、白色フィルムは、前記nAを有する表面が導光板に対向するように組み込まれる。導光板の前面(白色フィルムとは反対側)には、拡散板、プリズムが複数枚設置されても良い。また導光板のエッジ部分には、冷陰極線管またはLEDなどの光源が設置される。
【0088】
一方、直下型バックライトは、筐体に本発明の白色フィルム、冷陰極線管などの光源がこの順に設置されてなり、白色フィルムは、前記nAを有する表面が面光源に対向するように設置される。光源の前面(白色フィルムとは反対側)には拡散板、プリズムが複数枚設置されても良い。
【実施例】
【0089】
以下実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定して解釈されるものではない。
【0090】
(測定方法)
A.フィルム内部の気泡−樹脂界面の数
ミクロトームを用いてフィルムTD方向(横方向)と平行方向の断面を切り出し、白金−パラジウムを蒸着した後、日本電子(株)製電界放射走査型電子顕微鏡”JSM−6700F”で適当な倍率(500〜10000倍)に拡大観察した。得られた画像上で、フィルム表面の一面から他の一面に向かって、フィルム表面に対して任意で垂直に直線を引き、線上に存在する界面の数を計数した。このとき、界面数の計測は、気相から固相への界面であっても、固相から気相への界面であっても、共に1界面と数える。熱可塑性樹脂(B1)によって生成した気泡による界面も、無機粒子(B2)によって生成した気泡による界面も界面として数えた。測定数はn=5とし、その平均値を求めた。ここで、フィルム厚み方向の表層部10μmにおける界面数をnAとし、フィルム厚み方向中央部±5μmにおける界面数をnBとした。
フィルム厚み方向の表層部10μmにおける界面数をnAが、
30以上の場合 A。
25以上30より少ない場合 B
20以上25より少ない場合 C
20より少ない場合 D
とし、フィルム厚み方向中央部±5μmにおける界面数をnBが、
25以上の場合 A
20以上25より少ない場合 B
15以上20より少ない場合 C
15より少ない場合 D
とし、フィルム厚み方向の表層部10μmにおける界面数nAに対するフィルム厚み方向の中央部±5μmにおける界面数nBの比率(nB/nA)が、
0.6以上0.8より小さい場合 A
0.8以上0.9より小さい場合 B
0.9以上の場合 D
とした。
【0091】
B.相対反射率
分光光度計U−3410((株)日立製作所)に、φ60積分球130−0632((株)日立製作所)(内面が硫酸バリウム製)および10°傾斜スペーサーを取りつけた状態で560nmの光反射率を求めた。なお、光反射率は白色フィルムの両面について求め、より高い数値を当該白色フィルムの反射率とした。白色フィルムは5枚準備し、それら反射率の平均値を相対反射率とした。標準白色板には(株)日立計測器サービス製の部品番号210−0740(酸化アルミニウム)を用いた。相対反射率は以下のように判定した。
相対反射率が
101%以上の場合 A
100.5%以上101%より小さい場合 B
100%以上100.5%より小さい場合 C
100%より小さい場合 D
とした。
【0092】
C.全光線透過率
ヘイズメーターNDH−5000(日本電色(株)製)を用いて、フィルム厚み方向の全光線透過率を測定した。なお、透過率は白色フィルムの両面について求め、より低い数値を当該白色フィルムの透過率とした。白色フィルムは5枚準備し、それら透過率の平均値を全光線透過率とした。全光線透過率は以下のように判定した。
全光線透過率が
0.90%以下の場合 A
0.90%より大きく1.05%以下の場合 B
1.05%より大きく1.20%以下の場合 C
1.20%より大きい場合 D
とした。
【0093】
D.比重
白色フィルムを5cm×5cmの大きさに切りだし、JIS K7112(1980)に基づいて電子比重計SD−120L(ミラージュ貿易(株)製)を用いて測定した。なお、各白色フィルムについて5枚用意し、それぞれを測定し、その平均値でもって該白色フィルムの比重とした。
比重が
0.9以下の場合 A
0.9より大きく1.0以下の場合 B
1.0より大きく1.2以下の場合 C
1.2より大きい場合 D
とした。
【0094】
E.製膜性
実施例・比較例において製膜した際に、フィルム破れがほとんど生じないもの(24時間製膜中に1回未満)をA、僅かに発生するもの(24時間製膜中に1回以上3回未満)をB、若干発生するもの(24時間製膜中に3回以上5回未満)をC、頻発するもの(24時間製膜中に5回以上)をDとした。大量生産にはB以上の製膜性が必要であり、Aであるとさらにコスト低減効果がある。
【0095】
F.曲げ剛性
曲げ剛性とはJIS P8125(2000)による曲げモーメント表示のこわさBを、下記式にて厚み188μmに換算した値を曲げ剛性度とした。なお、白色フィルムについて5枚用意し、それぞれを測定し、その平均値でもって該白色フィルムの曲げ剛性とした。測定にはテーパー式剛性度試験機TELEDYNE TABER MODEL150―D(NORTH Tonawanda, New York USA製)を使用した。
曲げ剛性(mN・m)=B(mN・m)×(188(mN・m))/(フィルム厚み(μm))
G.ボイド率
ミクロトームを用いて白色フィルム幅方向と平行方向のフィルム断面を切り出し、白金−パラジウムを蒸着した後、日本電子(株)製電界放射走査型電子顕微鏡”JSM−6700F”で、対象領域を2000倍〜3000倍の間の任意の倍率で観察し、断面観察写真を得た。得られた断面写真の上に、透明なフィルムやシートを重ねて、ボイドに該当する部分を油性インキ等で塗りつぶした。次いで、イメージアナライザー(ニレコ株式会社製:“ルーゼックス”(登録商標)IID)を用いて、当該領域におけるボイドの面積率(%)を求め、この値をボイド率とした。この際ボイドに該当する部分に粒子は含まない。なお、白色フィルムについて5枚用意し、それぞれを測定し、その平均値でもって該白色フィルムのボイド率とした。
【0096】
フィルム厚み方向の表層部10μmにおけるボイド率vA(%)とフィルム厚み方向の中央部±5μmにおけるボイド率vB(%)の関係が
vB>vAである場合 A
vB≦vAである場合 B
とした。
【0097】
H.耐折れ皺性
30cm四方にフィルムサンプルをカットし、1.5cm×1.5cmのチャックで任意の端部1辺の中央部をチャックする。チャック面が水平になるように設置し、フィルムが自重でたれるようにする。チャックを解放し、フィルムに長さ1mm以上の折れ皺が発生したか目視で確認する。フィルムサンプル12枚につき同様に行い、以下のように判定した。
折れ皺の発生したフィルムの枚数が12枚中
0枚の場合 A
1枚〜3枚の場合 B
4枚〜12枚の場合 C
とした。
【0098】
なお、本テストは、バックライトユニットの組み立て時における、白色フィルムの折れ皺発生率(不良品発生率)を想定したモデルテストである。本テストにおいて、折れ皺の発生したフィルムの枚数が少ないほど、バックライトユニットの組み立て時における、白色フィルムの折れ皺発生率も小さくなる。
【0099】
(原料)
・ポリエステル樹脂(A)
酸成分としてテレフタル酸を、グリコール成分としてエチレングリコールを用い、三酸化アンチモン(重合触媒)を得られるポリエステルペレットに対してアンチモン原子換算で300ppmとなるように添加し、重縮合反応を行い、極限粘度0.63dl/g、カルボキシル末端基量40当量/トンのポリエチレンテレフタレートペレット(PET)を得た。示差熱分析計を用いて結晶融解熱を測定したところ1cal/g以上であり、結晶性のポリエステル樹脂である。この樹脂の融点Tmを測定したところ、250℃であった。
・環状オレフィン共重合体樹脂(b1)
ガラス転移温度が178℃、MVR(260℃/2.16kg)が4.5ml/10mimである環状オレフィン樹脂「TOPAS」(ポリプラスチック社製)を用いた。なお、示差熱分析計を用いて結晶融解熱を測定したところ1cal/g未満であり、非晶性樹脂であった。
・共重合ポリエステル樹脂(C1)
CHDM(シクロヘキサンジメタノール)共重合PETを用いた。該共重合グリコール成分にシクロヘキサンジメタノールを30mol%共重合したPETである。示差熱分析計を用いて結晶融解熱を測定したところ1cal/g未満であり、非晶性樹脂であった。
・共重合ポリエステル樹脂(C2)
CHDM(シクロヘキサンジメタノール)共重合PETを用いた。該共重合グリコール成分にシクロヘキサンジメタノールを60mol%共重合したPETである。示差熱分析計を用いて結晶融解熱を測定したところ1cal/g未満であり、非晶性樹脂であった。
・共重合ポリエステル樹脂(C3)
イソフタル酸共重合PETを用いた。ジカルボン酸成分としてイソフタル酸を17.5mol%共重合したPETである。示差熱分析計を用いて結晶融解熱を測定したところ1cal/g未満であり、非晶性を示した。
・分散剤(D)
PBT-PAG(ポリブチレンテレフタレート−ポリアルキレングリコール)ブロック共重合体(D1)を用いた。該樹脂はPBTとPAG(主としてポリテトラメチレングリコール)のブロック共重合体である。示差熱分析計を用いて結晶融解熱を測定したところ1cal/g以上であり、結晶性樹脂であった。
【0100】
(実施例1)
表1に示した原料の混合物を180℃の温度で3時間真空乾燥した後に押出機に供給し、280℃の温度で溶融押出後30μmカットフィルターにより濾過を行った後に、Tダイ口金に導入した。
【0101】
次いで、Tダイ口金内より、シート状に押出して溶融単層シートとし、該溶融単層シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸単層フィルムを得た。続いて、該未延伸単層フィルムを70℃の温度に加熱したロール群で予熱した後、表2に示した赤外線ヒーターの条件で両面から照射しながら、長手方向(縦方向)に3.6倍延伸を行い、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。
【0102】
得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の95℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に105℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な方向(幅方向)に3.6倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで190℃で20秒間の熱処理を施し、さらに180℃の温度で6%幅方向に弛緩処理を行った後、更に140℃の温度で1%幅方向に弛緩処理を行った。次いで、均一に徐冷後、巻き取って、厚さ188μmの単層の白色フィルムを得た。
【0103】
製膜性は良好であった。この白色フィルムの断面を観察したところ、内部に微細な気泡を多数含有していた。また、フィルム厚み方向の表層部10μmにおける界面数nA、フィルム厚み方向の中央部±5μmにおける界面数nBおよびその比率を表3に示す。また、フィルムの各種特性を表3に示す。得られた白色フィルムは反射性・隠蔽性に優れるものであった。
【0104】
(実施例2、3)
それぞれ表2に示した赤外線ヒーターの条件とした以外は、実施例1と同様に製膜を行い、厚さ188μmの単層の白色フィルムを得た。製膜性はいずれも良好であった。この白色フィルムの断面を観察したところ、内部に微細な気泡を多数含有していた。また、フィルム厚み方向の表層部10μmにおける界面数nA、フィルム厚み方向の中央部±5μmにおける界面数nBおよびその比率を表3に示す。また、フィルムの各種特性を表3に示す。得られた白色フィルムは実施例1と同様に反射性・隠蔽性に優れるものであった。
【0105】
(実施例4、6)
それぞれ表1に示した原料組成とした以外は、実施例1と同様に製膜を行い、厚さ188μmの単層の白色フィルムを得た。製膜性はいずれも良好であった。この白色フィルムの断面を観察したところ、内部に微細な気泡を多数含有していた。また、フィルム厚み方向の表層部10μmにおける界面数nA、フィルム厚み方向の中央部±5μmにおける界面数nBおよびその比率を表3に示す。また、フィルムの各種特性を表3に示す。得られた白色フィルムは実施例1には及ばないものの、反射性・隠蔽性に優れるものであった。
【0106】
(実施例5、7)
それぞれ表1に示した原料組成とした以外は、実施例1と同様に製膜を行い、厚さ188μmの単層の白色フィルムを得た。製膜性は実施例1に比べてやや劣るが、概ね良好であった。この白色フィルムの断面を観察したところ、内部に微細な気泡を多数含有していた。また、フィルム厚み方向の表層部10μmにおける界面数nA、フィルム厚み方向の中央部±5μmにおける界面数nBおよびその比率を表3に示す。また、フィルムの各種特性を表3に示す。得られた白色フィルムは、反射性・隠蔽性に優れるものであった。特に、実施例5で得られた白色フィルムは反射性に優れ、実施例7で得られた白色フィルムは隠蔽性に優れるものであった。
【0107】
(実施例8、9、10、11)
それぞれ表1に示した原料組成とした以外は、実施例1と同様に製膜を行い、厚さ188μmの単層の白色フィルムを得た。製膜性はいずれも良好であった。この白色フィルムの断面を観察したところ、内部に微細な気泡を多数含有していた。また、フィルム厚み方向の表層部10μmにおける界面数nA、フィルム厚み方向の中央部±5μmにおける界面数nBおよびその比率を表3に示す。また、フィルムの各種特性を表3に示す。得られた白色フィルムは、実施例1よりも反射性・隠蔽性に優れるものであった。
【0108】
比較例12)
表1に示した原料組成の混合物を160℃の温度で3時間真空乾燥した後に押出機(A)に供給した。このとき硫酸バリウム粒子は粒径1.2μmを使用した。また、ポリエステル樹脂(A)を別途180℃の温度で3時間乾燥した後に押出機(B)に供給した。押出機(A)に供給した原料および押出機(B)に供給した原料を、それぞれ280℃の温度で溶融させ、フィードブロックに供給した。フィードブロックにて、厚さ方向に押出機(A)に供給した原料からなる層(A層)と、押出機(B)に供給した原料からなる層(B層)を、A層/B層の2層積層となるように積層し、Tダイ口金に導入した。
【0109】
次いで、Tダイ口金内より、シート状に押出して、A層/B層からなる溶融2層積層未延伸シートとした。溶融積層シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸積層フィルムを得た。このとき、B層表面がドラムに接し、A層表面が空気に接していた。すなわち、B層表面が裏面となり、A層表面がおもて面であった。
【0110】
続いて、未延伸積層フィルムを85℃の温度に加熱したロール群で予熱した後、表2に示した赤外線ヒーターの条件でA層表面側(おもて面)からのみ照射しながら、フィルム長手方向に、ロールの周速差を利用して、3.6倍延伸を行い、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。
【0111】
得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の95℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に105℃の温度の加熱ゾーンでフィルム長手方向に直角な方向(フィルム幅方向)に3.6倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンにて190℃で20秒間の熱処理を施し、さらに180℃の温度で6%幅方向に弛緩処理を行った後、さらに140℃の温度で1%幅方向に弛緩処理を行った。次いで、均一に徐冷後、巻き取った。こうして厚さ188μmの積層の白色フィルムを得た。
【0112】
得られた白色フィルムの硫酸バリウム粒子の含有量は白色フィルム全体に対して22重量%であった。また、この白色フィルムの断面を観察したところ、A層の内部に微細な気泡を多数含有しており、A層の厚みが168μm、B層の厚みが20μmであった。得られた白色フィルムはA層側の反射率が高かった。また、A層側の表層部10μmにおける界面数nA、フィルム厚み方向の中央部±5μmにおける界面数nB、およびその比率を表3に示す。B層側表層部10μmにはボイドが無かった。得られた白色フィルムは実施例1には及ばないものの、反射性・隠蔽性に優れるものであった。
【0113】
(比較例1、2)
それぞれ表2に示した赤外線ヒーターの条件とした以外は、実施例1と同様に製膜を行い、厚さ188μmの単層の白色フィルムを得た。製膜性は実施例1に比べ劣るものであった。この白色フィルムの断面を観察したところ、内部に微細な気泡を含有していた。また、フィルム厚み方向の表層部10μmにおける界面数nA、フィルム厚み方向の中央部±5μmにおける界面数nBおよびその比率を表3に示す。また、フィルムの各種特性を表3に示す。しかし、nB/nAが大きく、実施例1に比べて隠蔽性に劣るものであった。
【0114】
(比較例3)
表2に示した赤外線ヒーターの条件とした以外は、実施例1と同様に製膜を行ったが、長手方向(縦方向)への延伸時にフィルムが熱垂れを起こし、製膜することができなかった。
【0115】
(比較例4、6、8、10)
それぞれ表1に示した原料組成とした以外は、実施例1と同様に製膜を行い、厚さ188μmの単層の白色フィルムを得た。製膜性はいずれも良好であった。この白色フィルムの断面を観察したところ、内部に微細な気泡を含有していた。また、フィルム厚み方向の表層部10μmにおける界面数nA、フィルム厚み方向の中央部±5μmにおける界面数nBおよびその比率を表3に示す。また、フィルムの各種特性を表3に示す。しかし、nA、または、nAおよびnBの両者が小さく、実施例1に比べて、反射性・隠蔽性に大幅に劣るものであった。
【0116】
(比較例5、7、9)
それぞれ表1に示した原料組成とした以外は、実施例1と同様に製膜を行ったが、延伸時にフィルム破れが頻発し、製膜することができなかった。
【0117】
(比較例11)
表2に示した予熱ロール温度とした以外は、実施例1と同様に製膜を行い、厚さ188μmの単層の白色フィルムを得た。製膜性は良好であった。この白色フィルムの断面を観察したところ、内部に微細な気泡を含有していた。また、フィルム厚み方向の表層部10μmにおける界面数nA、フィルム厚み方向の中央部±5μmにおける界面数nBおよびその比率を表3に示す。また、フィルムの各種特性を表3に示す。しかし、nA、nBが小さく、実施例1に比べて、反射性・隠蔽性に大幅に劣るものであった。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の白色フィルムは、薄膜化が可能であるだけでなく、製膜性、白色性、反射性に優れているので、その白色フィルムを用いることにより輝度特性に優れた面光源を提供することができる。
【符号の説明】
【0122】
1 表層部10μmの範囲
図1